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特開2015-213531残像除去装置、残像除去方法、および残像除去プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-213531(P2015-213531A)
(43)【公開日】2015年12月3日
(54)【発明の名称】残像除去装置、残像除去方法、および残像除去プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20151106BHJP
【FI】
   A61B6/00 300S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-96137(P2014-96137)
(22)【出願日】2014年5月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】東芝電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】鬼橋 浩志
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA13
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB17
4C093FC11
4C093FC19
4C093FD08
4C093FD11
4C093FD13
(57)【要約】
【課題】簡易、且つ精度の高い残像の除去を行うことができる残像除去装置、残像除去方法、および残像除去プログラムを提供することである。
【解決手段】実施形態に係る残像除去装置は、入射が1回だけの場合の画像データに関する第1の残像減衰関数を格納する格納部と、過去における入射による残像が含まれた画像データに関する第2の残像減衰関数と、前記第1の残像減衰関数と、の差から前記過去における入射による残像を演算し、前記過去における入射による残像が含まれた画像データから前記演算された残像を除去する演算部と、を備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射が1回だけの場合の画像データに関する第1の残像減衰関数を格納する格納部と、
過去における入射による残像が含まれた画像データに関する第2の残像減衰関数と、前記第1の残像減衰関数と、の差から前記過去における入射による残像を演算し、前記過去における入射による残像が含まれた画像データから前記演算された残像を除去する演算部と、
を備えた残像除去装置。
【請求項2】
前記第2の残像減衰関数により、少なくとも第1の画素値と、第2の画素値と、を抽出する抽出部をさらに備え、
前記演算部は、前記第1の残像減衰関数により、前記第1の画素値に対応する第3の画素値と、前記第2の画素値に対応する第4の画素値と、を演算し、
前記第1の画素値と、前記第3の画素値と、の差と、前記第2の画素値と、前記第4の画素値と、の差と、に基づいて、前記過去における入射による残像を演算する請求項1記載の残像除去装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記第1の画素値と、前記第3の画素値と、の差だけ前記第1の残像減衰関数を前記第2の残像減衰関数側にシフトさせ、
前記シフトさせた前記第1の残像減衰関数により、前記第4の画素値に対応する第5の画素値を演算し、
前記第2の画素値と、前記第5の画素値と、の差から前記過去における入射による残像を演算する請求項2記載の残像除去装置。
【請求項4】
入射が1回だけの場合の画像データに関する第1の残像減衰関数を求める工程と、
過去における入射による残像が含まれた画像データに関する第2の残像減衰関数と、前記第1の残像減衰関数と、の差から前記過去における入射による残像を演算し、前記過去における入射による残像が含まれた画像データから前記演算された残像を除去する工程と、
を備えた残像除去方法。
【請求項5】
前記第2の残像減衰関数により、少なくとも第1の画素値と、第2の画素値と、を抽出する工程をさらに備え、
前記残像を除去する工程において、前記第1の残像減衰関数により、前記第1の画素値に対応する第3の画素値と、前記第2の画素値に対応する第4の画素値と、を演算し、
前記第1の画素値と、前記第3の画素値と、の差と、前記第2の画素値と、前記第4の画素値と、の差と、に基づいて、前記過去における入射による残像を演算する請求項4記載の残像除去方法。
【請求項6】
前記残像を除去する工程において、前記第1の画素値と、前記第3の画素値と、の差だけ前記第1の残像減衰関数を前記第2の残像減衰関数側にシフトさせ、
前記シフトさせた前記第1の残像減衰関数により、前記第4の画素値に対応する第5の画素値を演算し、
前記第2の画素値と、前記第5の画素値と、の差から前記過去における入射による残像を演算する請求項5記載の残像除去方法。
【請求項7】
コンピューターに、
入射が1回だけの場合の画像データに関する第1の残像減衰関数を取得させることと、
過去における入射による残像が含まれた画像データに関する第2の残像減衰関数と、前記第1の残像減衰関数と、の差から前記過去における入射による残像を演算させ、前記過去における入射による残像が含まれた画像データから前記演算された残像を除去させることと、
を実行させる残像除去プログラム。
【請求項8】
前記第2の残像減衰関数により、少なくとも第1の画素値と、第2の画素値と、を抽出させることをさらに実行させ、
前記残像を除去させる際に、前記第1の残像減衰関数により、前記第1の画素値に対応する第3の画素値と、前記第2の画素値に対応する第4の画素値と、を演算させ、
前記第1の画素値と、前記第3の画素値と、の差と、前記第2の画素値と、前記第4の画素値と、の差と、に基づいて、前記過去における入射による残像を演算させる請求項7記載の残像除去プログラム。
【請求項9】
前記残像を除去させる際に、前記第1の画素値と、前記第3の画素値と、の差だけ前記第1の残像減衰関数を前記第2の残像減衰関数側にシフトさせ、
前記シフトさせた前記第1の残像減衰関数により、前記第4の画素値に対応する第5の画素値を演算させ、
前記第2の画素値と、前記第5の画素値と、の差から前記過去における入射による残像を演算させる請求項8記載の残像除去プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、残像除去装置、残像除去方法、および残像除去プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器に放射線が入射すると、残像が発生する場合がある。
そのため、発生した残像を除去するために、オフセットデータを用いた画像補正処理が行われている。
オフセットデータとは、放射線が入射していないときに放射線検出器から出力された画像データであり、暗画像、あるいはダークなどとも呼ばれている。
画像補正処理においては、実際の画像データからオフセットデータを減算処理している。
ところが、残像の場合は、ノイズの場合と違って時間の経過とともに残像量が減衰して行く性質を持っている。
そのため、時間の経過とともに変化する残像量を推定して画像の補正を行う技術が提案されている。
しかしながら、放射線が複数回入射する場合(連続照射の場合)には、先に入射した放射線による残像と、後に入射した放射線による残像とが重なることになる。
そのため、放射線が1回だけ入射した場合の残像減衰関数から残像量を推定すると、画像補正の精度が悪くなるおそれがある。
この場合、先に入射したすべての放射線に対する残像減衰関数を考慮して残像の除去を行う様にすれば、処理の複雑化、処理時間の増大、高コスト化などを招くことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−135748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、簡易、且つ精度の高い残像の除去を行うことができる残像除去装置、残像除去方法、および残像除去プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る残像除去装置は、入射が1回だけの場合の画像データに関する第1の残像減衰関数を格納する格納部と、過去における入射による残像が含まれた画像データに関する第2の残像減衰関数と、前記第1の残像減衰関数と、の差から前記過去における入射による残像を演算し、前記過去における入射による残像が含まれた画像データから前記演算された残像を除去する演算部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施の形態に係る残像除去装置100と、X線検出器1を例示するための模式斜視図である。
図2】アレイ基板2の回路図である。
図3】信号処理部3のブロック図である。
図4】残像除去装置100を例示するためのブロック図である。
図5】X線が4回入射した場合の残像減衰関数を例示するための模式グラフ図である。
図6】残像減衰関数F(t)から乖離した分の演算方法を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本発明の実施形態に係る残像除去装置、残像除去方法、および残像除去プログラムは、放射線検出器における残像の除去に用いることができる。
ただし、残像除去装置、残像除去方法、および残像除去プログラムの用途は、放射線検出器に限定されるわけではなく、残像が発生し得る各種の検出器に用いることができる。 例えば、本発明の実施形態に係る残像除去装置、残像除去方法、および残像除去プログラムは、ガイガーカウンタなどの検出器や、光量の検出器などにも用いることができる。 また、放射線は、例えば、X線やγ線などの各種放射線とすることができる。
以下においては、一例として、X線検出器1における残像の除去を例にとり説明をする。そのため、以下の実施形態の「X線」を「他の放射線」に置き換えることにより、他の放射線にも適用させることができる。
【0008】
また、以下に例示をするX線検出器1は、X線画像を検出するX線平面センサである。X線平面センサには、大きく分けて直接変換方式と間接変換方式がある。
直接変換方式は、入射X線により光導電膜内部に発生した光導電電荷(信号電荷)を高電界により電荷蓄積用の蓄積キャパシタに直接導く方式である。
間接変換方式は、X線をシンチレータにより蛍光(可視光)に変換し、蛍光をフォトダイオードなどの光電変換素子により信号電荷に変換し、信号電荷を蓄積キャパシタに導く方式である。
以下においては、一例として、間接変換方式のX線検出器1における残像の除去を例示するが、直接変換方式のX線検出器における残像の除去にも適用することができる。
また、X線検出器1は、例えば、一般医療用途などに用いることができるが用途に限定はない。
【0009】
図1は、本実施の形態に係る残像除去装置100と、X線検出器1を例示するための模式斜視図である。
図2は、アレイ基板2の回路図である。
図3は、信号処理部3のブロック図である。
まず、X線検出器1について説明する。
図1に示すように、X線検出器1には、アレイ基板2、信号処理部3、画像伝送部4、およびシンチレータ層5が設けられている。
【0010】
アレイ基板2は、シンチレータ層5によりX線から変換された可視光(蛍光)を電気信号に変換する。
アレイ基板2は、基板2a、光電変換部2b、制御ライン(又はゲートライン)2c1、およびデータライン(又はシグナルライン)2c2を有する。
【0011】
基板2aは、板状を呈し、ガラスなどの透光性材料から形成されている。
光電変換部2bは、基板2aの一方の表面に複数設けられている。
光電変換部2bは、矩形状を呈し、制御ライン2c1とデータライン2c2とで画された領域に設けられている。複数の光電変換部2bは、マトリクス状に並べられている。
なお、1つの光電変換部2bは、1つの画素(pixel)に対応する。
【0012】
複数の光電変換部2bのそれぞれには、光電変換素子2b1と、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)2b2が設けられている。
また、図2に示すように、光電変換素子2b1において変換した信号電荷を蓄積する蓄積キャパシタ2b3を設けることができる。蓄積キャパシタ2b3は、例えば、矩形平板状を呈し、各薄膜トランジスタ2b2のそれぞれの下に設けることができる。ただし、光電変換素子2b1の容量によっては、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタ2b3を兼ねることができる。
【0013】
光電変換素子2b1は、例えば、フォトダイオードなどとすることができる。
薄膜トランジスタ2b2は、蛍光が光電変換素子2b1に入射することで生じた電荷の蓄積および放出のスイッチングを行う。薄膜トランジスタ2b2は、アモルファスシリコン(a−Si)やポリシリコン(P−Si)などの半導体材料を含むものとすることができる。
図2に示すように、薄膜トランジスタ2b2は、ゲート電極2b2a、ソース電極2b2b及びドレイン電極2b2cを有している。薄膜トランジスタ2b2のゲート電極2b2aは、対応する制御ライン2c1と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のソース電極2b2bは、対応するデータライン2c2と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のドレイン電極2b2cは、対応する光電変換素子2b1と蓄積キャパシタ2b3とに電気的に接続される。
【0014】
制御ライン2c1は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。制御ライン2c1は、X方向(例えば、行方向)に伸びている。
複数の制御ライン2c1は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d1のそれぞれと電気的に接続されている。複数の配線パッド2d1には、フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線の一端がそれぞれ電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線の他端は、信号処理部3に設けられた制御回路31とそれぞれ電気的に接続されている。
【0015】
データライン2c2は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。データライン2c2は、X方向に直交するY方向(例えば、列方向)に伸びている。
複数のデータライン2c2は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d2とそれぞれ電気的に接続されている。複数の配線パッド2d2には、フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線の一端がそれぞれ電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線の他端は、信号処理部3に設けられた増幅・変換回路32とそれぞれ電気的に接続されている。
制御ライン2c1とデータライン2c2は、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成することができる。
【0016】
また、光電変換部2b、制御ライン2c1、およびデータライン2c2を覆う図示しない保護層を設けることができる。
保護層は、例えば、窒化ケイ素(SiN)やアクリル系樹脂などの絶縁性材料から形成することができる。
【0017】
信号処理部3は、基板2aの光電変換部2bが設けられる側とは反対側に設けられている。
図3に示すように、信号処理部3には、制御回路31と、増幅・変換回路32とが設けられている。
制御回路31は、複数のゲートドライバ31aと行選択回路31bとを有する。
ゲートドライバ31aは、対応する制御ライン2c1に制御信号S1を印加する。
行選択回路31bは、X線画像の走査方向に従って、対応するゲートドライバ31aに外部からの制御信号S1を送る。
例えば、制御回路31は、フレキシブルプリント基板2e1と制御ライン2c1とを介して、制御信号S1を各制御ライン2c1毎に順次印加する。制御ライン2c1に印加された制御信号S1により薄膜トランジスタ2b2がオン状態となり、光電変換素子2b1からの信号電荷(画像データ信号S2)が受信できるようになる。
【0018】
増幅・変換回路32は、複数の積分増幅器32aと、複数のA/D変換器32bを有する。
積分増幅器32aは、データライン2c2と配線パッド2d2とフレキシブルプリント基板2e2とを介して、各光電変換素子2b1からの画像データ信号S2を増幅し出力する。積分増幅器32aから出力された画像データ信号S2は、並列/直列変換されてA/D変換器32bに入力される。
A/D変換器32bは、入力された画像データ信号S2(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。
【0019】
ここで、本実施の形態に係る残像除去装置100は、配線100aを介して、信号処理部3の増幅・変換回路32と電気的に接続されている。
残像除去装置100は、X線が入射することで発生した残像を除去する。
なお、残像除去装置100に関する詳細は後述する。
【0020】
画像伝送部4は、配線4aを介して、残像除去装置100と電気的に接続されている。なお、信号処理部3と、残像除去装置100と、画像伝送部4とは、一体化されていてもよい。
画像伝送部4は、複数のA/D変換器32bによりデジタル信号に変換され、残像除去装置100により残像が除去された画像データ信号S2に基づいて、X線画像を合成する。合成されたX線画像のデータは、画像伝送部4から外部の機器に向けて出力される。
【0021】
シンチレータ層5は、光電変換素子2b1の上に設けられ、入射するX線を可視光すなわち蛍光に変換する。シンチレータ層5は、基板2a上の複数の光電変換部2bが設けられた領域を覆うように設けられている。
シンチレータ層5は、例えば、ヨウ化セシウム(CsI):タリウム(Tl)、あるいはヨウ化ナトリウム(NaI):タリウム(Tl)などを用いて形成することができる。この場合、真空蒸着法などを用いて、柱状結晶の集合体が形成されるようにすることができる。
シンチレータ層5の厚み寸法は、例えば、600μm程度とすることができる。柱状結晶の柱(ピラー)の太さ寸法は、例えば、最表面で8〜12μm程度とすることができる。
【0022】
その他、蛍光の利用効率を高めて感度特性を改善するために、シンチレータ5の表面側(X線の入射面側)を覆うように図示しない反射層を設けることができる。
また、空気中に含まれる水蒸気により、シンチレータ5と図示しない反射層の特性が劣化するのを抑制するために、シンチレータ5と図示しない反射層を覆う図示しない防湿体を設けることができる。
【0023】
次に、本実施の形態に係る残像除去装置100について説明する。
図4は、残像除去装置100を例示するためのブロック図である。
図4に示すように、残像除去装置100には、記憶部101、抽出部102、時間経過監視部103、データ格納部104、演算部105が設けられている。
記憶部101は、信号処理部3の増幅・変換回路32から送られてきた画像データ信号S2(デジタル信号)における画素値のデータ(画像データ)を一時的に記憶する。
なお、記憶部101は、信号処理部3に設けるようにしてもよい。
抽出部102は、記憶部101に記憶されているX線が入射した際の画素値のデータを抽出する。抽出されたX線が入射した際の画素値のデータは、演算部105に送られる。 また、抽出部102は、オフセットデータOC(X線が入射していない時の画素値のデータ)を抽出する。例えば、抽出部102は、X線の入射が行われなくなってから長時間が経過した後や、X線検出器1の起動時などにおいてオフセットデータOCを抽出する。 この場合、過去において抽出したオフセットデータOCとの差を比較して、所定の基準値以下ならば残像の影響はないと判断することができる。
抽出されたオフセットデータOCは、例えば、データ格納部104に格納することができる。
また、抽出部102は、所定の抽出タイミング(例えば、図5中のt1、t2)における画素値のデータ(例えば、図5中のOR1(第1の画素値の一例に相当する)、OR2(第2の画素値の一例に相当する))を抽出する。抽出された所定の検出タイミングにおける画素値のデータは、演算部105に送られる。
時間経過監視部103は、抽出部102に抽出タイミングを指示する。
データ格納部104は、演算部105において行われる演算に関するデータを格納する。
演算部105は、抽出部102により抽出された画素値のデータと、データ格納部104に格納されているデータを用いて、残像を除去する。
例えば、演算部105は、過去における入射による残像が含まれた画像データに関する残像減衰関数と、残像減衰関数F(t)との差から過去における入射による残像を演算する。
そして、演算部105は、過去における入射による残像が含まれた画像データから、演算された残像を除去する。
【0024】
次に、残像の除去、すなわち、演算部105における演算についてさらに説明する。
まず、残像について説明する。
図5は、X線が4回入射した場合の残像減衰関数を例示するための模式グラフ図である。
なお、縦軸は画素値であり、横軸は時間である。
画素値は、1つの画素(1つの光電変換部2b)に蓄積された電荷量で表される値である。
【0025】
残像は、ノイズと違って時間とともに減衰して行く性質を持っている。
例えば、残像減衰関数は、A・exp(t/B)とすることができる。
なお、tはX線の入射からの経過時間であり、AとBは係数である。
ただし、残像減衰関数は、例示をしたものに限定されるわけではない。
残像減衰関数は、X線の入射からの経過時間と、X線の入射後の画素値とから得られた残像の近似予測式であればよい。
例えば、残像減衰関数は、経過時間tを変数とした多項式近似式、累乗近似式関数、前述したexp関数、べき乗関数、またはこれらの組み合わせなどとすることができる。
【0026】
この場合、残像減衰関数は、実験やシミュレーションを行うことで予め求めることができる。
そのため、X線の入射が1回だけの場合には、予め求めた残像減衰関数に基づいて、残像を求め、残像を含む画像データから残像分を減算処理することで、残像を除去することができる。
【0027】
ところが、X線が複数回入射する場合(連続照射の場合)には、先に入射したX線による残像と、後に入射したX線による残像とが重なることになる。
例えば、図5に示すように、4回目のX線の入射による残像減衰関数204(第2の残像減衰関数の一例に相当する)は、1回目のX線の入射による残像減衰関数201と、2回目のX線の入射による残像減衰関数202と、3回目のX線の入射による残像減衰関数203による影響を受けることになる。
すなわち、残像減衰関数204は、過去におけるX線の入射による残像が含まれた画像データに関するものとなる。
そのため、残像減衰関数204は、X線の入射が1回だけの場合の画像データに関する残像減衰関数F(t)(第1の残像減衰関数の一例に相当する)とは異なるものとなる。 この場合、先に入射したすべてのX線に対する残像減衰関数201〜203を考慮して残像の除去を行う様にすれば、処理の複雑化、処理時間の増大、高コスト化などを招くことになる。
【0028】
そこで、本実施の形態に係る残像除去装置100においては、以下の様にして残像を除去している。
まず、X線の入射が1回だけの場合の残像減衰関数F(t)を予め求め、求められた残像減衰関数F(t)をデータ格納部104に格納しておく。
残像減衰関数F(t)は、実験やシミュレーションを行うことで求めることもできるし、X線検出器1にX線を1回だけ入射させて実測値に基づいて求めることもできる。
【0029】
次に、時間経過監視部103は、所定の抽出タイミングt1、t2を抽出部102に指示する。
抽出部102は、記憶部101に格納されている画像データから抽出タイミングt1における画素値OR1を抽出する。
また、抽出部102は、記憶部101に格納されている画像データから抽出タイミングt2における画素値OR2を抽出する。
抽出された画素値OR1、OR2は、演算部105に送られる。
【0030】
次に、演算部105は、データ格納部104に格納されている残像減衰関数F(t)を取得する。
次に、演算部105は、残像減衰関数F(t)と、抽出タイミングt1、t2とに基づいて、画素値OR1a(第3の画素値の一例に相当する)、画素値OR2a(第4の画素値の一例に相当する)をそれぞれ演算する。
すなわち、演算部105は、残像減衰関数F(t)により、画素値OR1に対応する画素値OR1aと、画素値OR2に対応する画素値OR2aとを演算する。
この場合、過去に無視できない程度のX線照射履歴があると、抽出タイミングt1における画素値OR1は、残像減衰関数F(t)により予測された画素値OR1aよりも大きくなる。また、抽出タイミングt2における画素値OR2は、残像減衰関数F(t)により予測された画素値OR2aよりも大きくなる。
【0031】
前述したように、最後のX線の入射による残像減衰関数には、過去におけるX線の入射による残像の影響が含まれている。
そのため、残像減衰関数F(t)から乖離した分は、過去におけるX線の入射による残像と考えられる。
次に、演算部105は、残像減衰関数F(t)から乖離した分を求め、これを残像減衰関数204から減算して、過去におけるX線の入射による残像が除去されたデータを求める。
【0032】
次に、演算部105は、過去におけるX線の入射による残像が除去されたデータから、オフセットデータOCを減算する。
この場合、オフセットデータOCは、データ格納部104に格納されていたものを用いることができる。
オフセットデータOCの減算は、過去におけるX線の入射による残像を除去する前に行うこともできる。
以上のようにして、残像を除去するためのデータを演算する。
【0033】
次に、演算部105は、記憶部101に記憶されている増幅・変換回路32から送られてきた画像データと、演算された残像を除去するためのデータとから残像が除去されたデータを演算する。
次に、演算部105は、演算されたデータを画像伝送部4に送る。
画像伝送部4は、残像が除去されたデータに基づいてX線画像を合成する。
【0034】
ここで、前述したように、演算部105は、残像減衰関数F(t)により、画素値OR1に対応する画素値OR1aと、画素値OR2に対応する画素値OR2aと、を演算することができる。
そして、演算部105は、画素値OR1と画素値OR1aとの差と、画素値OR2と画素値OR2aとの差と、に基づいて、過去における入射による残像(乖離した分)を演算することができる。
【0035】
しかしながら、抽出タイミングt1における画素値OR1の値は大きく、また、画素値OR1と画素値OR1aとの差は小さい。
そのため、抽出タイミングt1においては、過去におけるX線の入射による残像を無視し得る。
【0036】
そこで、以下の様にして、残像減衰関数F(t)から乖離した分を求めるようにすることもできる。
図6は、残像減衰関数F(t)から乖離した分の演算方法を例示するための模式図である。
図6に示すように、残像減衰関数F(t)における画素値OR1aの位置が、残像減衰関数204における画素値OR1の位置となるように、残像減衰関数F(t)をシフトさせる。
そして、残像減衰関数204の抽出タイミングt2における画素値OR2と、シフトさせた残像減衰関数F1(t)の抽出タイミングt2における画素値OR2a1(第5の画素値の一例に相当する)と、の差REを求める。
すなわち、演算部105は、画素値OR1と画素値OR1aとの差だけ残像減衰関数F(t)を残像減衰関数204側にシフトさせる。
そして、演算部105は、シフトさせた残像減衰関数F(t)により、画素値OR2aに対応する画素値OR2a1を演算し、画素値OR2と画素値OR2a1との差REから過去における入射による残像(乖離した分)を演算する。
この様にすれば、より容易に、残像減衰関数F(t)から乖離した分を求めることができる。
【0037】
なお、以上においては、X線が4回入射した場合について例示をしたが、X線の入射回数はこれに限定されるわけではない。
X線の入射回数は、2回以上であってもよい。
この場合、X線の入射回数が多くなれば、過去におけるX線の入射による残像の影響が大きく、且つ複雑になる。
【0038】
本実施の形態に係る残像除去装置100によれば、その様な場合であっても、簡易、且つ精度の高い残像の除去を行うことができる。
また、以上においては、抽出タイミングの数を2つ(t1、t2)としたが、抽出タイミングの数は3つ以上とすることもできる。
抽出タイミングの数を増加させれば、さらに高い精度で残像の除去を行うことができる。
また、次回のX線の入射による残像を予測する方法ではないため、常時残像を演算させる必要はない。そのため、複数のアレイ基板2に1つの残像除去装置100を接続し、残像の除去を行う際に切り換えて使用する場合であっても、記憶部101の容量を小さくすることができる。
また、過去におけるX線の入射による残像を除去するので、大線量のX線が入射した時の画像データであっても、被写体と直接線領域の境界でアーチファクトが発生し不自然な画像となることはない。
また、薄い被写体の場合であっても、残像に係る部分を減算しすぎて、コントラストのない画像となることもない。
【0039】
なお、アレイ基板2が1つの場合を例示したが、複数のアレイ基板2に1つの残像除去装置100を接続することもできる。
この場合、残像除去の対象となるアレイ基板2に切り換える切り換えスイッチを設けるようにすればよい。
【0040】
次に、本実施の形態に係る残像除去方法について例示をする。
本実施の形態に係る残像除去方法は、例えば、前述した残像除去装置100において実施することができる。
本実施の形態に係る残像除去方法は、例えば、以下の工程を備えたものとすることができる。
入射が1回だけの場合の画像データに関する残像減衰関数F(t)を求める工程。
過去における入射による残像が含まれた画像データに関する残像減衰関数204と、残像減衰関数F(t)と、の差から過去における入射による残像を演算し、過去における入射による残像が含まれた画像データから演算された残像を除去する工程。
【0041】
また、本実施の形態に係る残像除去方法は、例えば、残像減衰関数204により、少なくとも画素値OR1と画素値OR2とを抽出する工程をさらに備えることができる。
そして、前述した残像を除去する工程において、残像減衰関数F(t)により、画素値OR1に対応する画素値OR1aと、画素値OR2に対応する画素値OR2aと、を演算する。
そして、画素値OR1と画素値OR1aとの差と、画素値OR2と画素値OR2aとの差とに基づいて、過去における入射による残像を演算する。
【0042】
また、前述した残像を除去する工程において、以下の様にして残像を演算することもできる。
まず、画素値OR1と画素値OR1aとの差だけ残像減衰関数F(t)を残像減衰関数204側にシフトさせる。
次に、シフトさせた残像減衰関数F(t)により、画素値OR2aに対応する画素値OR2a1を演算する。
次に、画素値OR2と画素値OR2a1との差REから過去における入射による残像を演算する。
なお、各工程における内容は、前述したものと同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0043】
次に、本実施の形態に係る残像除去プログラムについて例示をする。
本実施の形態に係る残像除去プログラムは、コンピュータに、前述した残像除去方法を実行させるものである。
残像の除去を実行させるために、残像除去プログラムが、例えば、コンピュータに設けられた格納部に格納される。残像除去プログラムは、例えば、記録媒体に格納された状態でコンピュータに供給され、読み出されることでコンピュータに設けられた格納部に格納される。なお、LAN(Local Area Network)などを介して、コンピュータに設けられた格納部に格納されるようにすることもできる。
【0044】
コンピュータに設けられた格納部には、以下の手順を実行する残像除去プログラムが格納される。
入射が1回だけの場合の画像データに関する残像減衰関数F(t)を、格納部から取得させる手順。
過去における入射による残像が含まれた画像データに関する残像減衰関数204と、残像減衰関数F(t)と、の差から過去における入射による残像を演算させ、過去における入射による残像が含まれた画像データから演算された残像を除去させる手順。
【0045】
また、本実施の形態に係る残像除去プログラムは、例えば、残像減衰関数204により、少なくとも画素値OR1と画素値OR2とを抽出させる手順をさらに備えることができる。
そして、前述した残像を除去させる際に、残像減衰関数F(t)により、画素値OR1に対応する画素値OR1aと、画素値OR2に対応する画素値OR2aと、を演算させる。
そして、画素値OR1と画素値OR1aとの差と、画素値OR2と画素値OR2aとの差とに基づいて、過去における入射による残像を演算させる。
【0046】
また、前述した残像を除去させる際に、以下の様にして残像を演算させることもできる。
まず、画素値OR1と画素値OR1aとの差だけ残像減衰関数F(t)を残像減衰関数204側にシフトさせる。
次に、シフトさせた残像減衰関数F(t)により、画素値OR2aに対応する画素値OR2a1を演算させる。 、
次に、画素値OR2と画素値OR2a1との差REから過去における入射による残像を演算させる。
【0047】
なお、以上の手順の内容は、前述したものと同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
また、以上の手順は、記載された順序に従って時系列的に実行されてもよいし、並列的あるいは個別に実行されてもよい。
本実施の形態に係る残像除去プログラムは、単一の演算手段により処理されるものであってもよいし、複数の演算手段によって分散処理されるものであってもよい。
本実施の形態に係る残像除去プログラムを実行することで、前述した残像除去方法が実施される。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 X線検出器、2 アレイ基板、2a 基板、2b 光電変換部、2c1 制御ライン、2c2 データライン、3 信号処理部、4 画像伝送部、5 シンチレータ層、100 残像除去装置、101 記憶部、102 抽出部、103 時間経過監視部、104 データ格納部、105 演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6