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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-213850(P2015-213850A)
(43)【公開日】2015年12月3日
(54)【発明の名称】ガス分離体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/52 20060101AFI20151106BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20151106BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20151106BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20151106BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20151106BHJP
【FI】
   B01D71/52
   B01D69/10
   B01D69/12
   B01D69/02
   C08J9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-96233(P2014-96233)
(22)【出願日】2014年5月7日
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】永井 雅之
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】山延 健
(72)【発明者】
【氏名】坂村 拓映
【テーマコード(参考)】
4D006
4F074
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MA03
4D006MA06
4D006MA09
4D006MA31
4D006MB03
4D006MB04
4D006MB16
4D006MC45X
4D006MC48
4D006NA21
4D006NA45
4D006NA47
4D006PB19
4F074AA57
4F074CA03
4F074CA05
4F074CA06
4F074CC02Y
4F074CC04Y
4F074CE02
4F074DA10
4F074DA20
4F074DA43
(57)【要約】
【課題】優れたCO分離能、CO透過性及び機械強度を同時に確保できるガス分離体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】非多孔質層と、非多孔質層を支持する多孔質層とを備える積層体で構成され、非多孔質層がポリアセタール樹脂を含み、ポリアセタール樹脂において、オキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量が1.5〜10モルであるガス分離体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非多孔質層と、前記非多孔質層の片側又は両側に設けられ、前記非多孔質層を支持する多孔質層とを備える積層体で構成され、
前記非多孔質層がポリアセタール樹脂を含み、
前記ポリアセタール樹脂において、オキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量が1.5〜10モルであるガス分離体。
【請求項2】
前記非多孔質層の厚さが20μm以下である請求項1に記載のガス分離体。
【請求項3】
前記多孔質層がポリアセタール樹脂を含む、請求項1又は2に記載のガス分離体。
【請求項4】
前記多孔質層が、前記非多孔質層のCO透過率より大きいCO透過率を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス分離体。
【請求項5】
非多孔質層と、前記非多孔質層の片側又は両側に設けられ、前記非多孔質層を支持する多孔質層とを備える積層体を形成する積層体形成工程を含み、
前記非多孔質層がポリアセタール樹脂を含み、
前記ポリアセタール樹脂において、オキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量が1.5〜10モルの導入量であるガス分離体の製造方法。
【請求項6】
前記非多孔質層の厚さが20μm以下である請求項5に記載のガス分離体の製造方法。
【請求項7】
前記多孔質層がポリアセタール樹脂を含む、請求項5又は6に記載のガス分離体の製造方法。
【請求項8】
前記積層体形成工程の前に行われ、ポリアセタール樹脂を含む非多孔質の第1前駆体層の少なくとも一部を被加熱部として加熱しながら2軸延伸することにより多孔化した延伸部からなる前記多孔質層を形成する多孔質層形成工程をさらに含み、
前記積層体形成工程が、
前記多孔質層を前記非多孔質層の前駆体である第2前駆体層と接触させてなるプレ積層体を形成するプレ積層体形成工程と、
前記プレ積層体を、前記多孔質層の融点未満の温度で加熱することによって前記多孔質層及び前記第2前駆体層を互いに接着させて前記積層体を形成する接着工程とを含む、請求項7に記載のガス分離体の製造方法。
【請求項9】
前記多孔質層形成工程において、前記第1前駆体層の前記延伸部に対して下記式(1)で定義される実質2軸延伸倍率を、25倍を超える値とする請求項8に記載のガス分離体の製造方法。
実質2軸延伸倍率=dbefore/dafter・・・(1)
(上記式(1)中、dbeforeは前記第1前駆体層における2軸延伸前の厚さを表し、dafterは前記第1前駆体層における2軸延伸後の延伸部の最小厚さを表す)
【請求項10】
前記第1前駆体層に含まれるポリアセタール樹脂において、オキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量が、前記第2前駆体層中におけるオキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量よりも小さい、請求項8又は9に記載のガス分離体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械特性、耐薬品性、耐磨耗性等に優れ、また成形加工性も良いことから、エンジニアリングプラスチックスとして機械工業部品、自動車部品、電気機器部品、その他の産業用製品の成形材料として広く用いられている。
【0003】
近年、ポリアセタール樹脂は、炭酸ガス(CO)の分離膜の用途としても期待されるようになっている。例えば下記特許文献1には、オキシメチレンユニット100モルに対するオキシアルキレンユニットの導入量が1.5〜10モルであるポリアセタール樹脂を主成分とする気体分離膜により、Nに対するCO分離能(以下、単に「COの分離能」と呼ぶ)及び透過速度を高くすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/047265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の気体分離膜は以下に示す課題を有していた。
【0006】
すなわち、上記特許文献1に記載の気体分離膜は、COの分離能に優れるものの、CO透過性の点で改善の余地を有していた。ここで、COの透過性を向上させるためには、気体分離膜を薄肉化することが考えられるが、この場合、気体分離膜の機械強度が低下することになる。
【0007】
従って、優れたCO分離能、CO透過性及び機械強度を同時に確保できるガス分離体の開発が求められていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れたCO分離能、CO透過性及び機械強度を同時に確保できるガス分離体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、非多孔質層と、前記非多孔質層の片側又は両側に設けられ、前記非多孔質層を支持する多孔質層とを備える積層体で構成され、前記非多孔質層がポリアセタール樹脂を含み、前記ポリアセタール樹脂において、オキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量が1.5〜10モルであるガス分離体である。
【0011】
このガス分離体によれば、非多孔質層は優れたCO分離能を有する。ここで、非多孔質層が薄くなっても、非多孔質層はCO分離能を低下させずに、非多孔質層のCO透過性を向上させることができる。一方、非多孔質層が薄くなり非多孔質層自体の強度が低下しても、非多孔質層は多孔質層で支持されて補強される。さらに本発明のガス分離体によれば、非多孔質層を透過したCOは多孔質層を通過することも可能となる。
【0012】
また上記ガス分離体において、前記多孔質層が、前記非多孔質層のCO透過率より大きいCO透過率を有することが好ましい。
【0013】
この場合、多孔質層のCO透過率が非多孔質層のCO透過率以下である場合に比べて、ガス分離体のCO透過性をより向上させることができる。
【0014】
また本発明は、非多孔質層と、前記非多孔質層の片側又は両側に設けられ、前記非多孔質層を支持する多孔質層とを備える積層体を形成する積層体形成工程を含み、前記非多孔質層がポリアセタール樹脂を含み、前記ポリアセタール樹脂において、オキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量が1.5〜10モルであるガス分離体の製造方法である。
【0015】
この製造方法によれば、得られたガス分離体において、非多孔質層は優れたCO分離能を有する。ここで、非多孔質層が薄くなっても、非多孔質層はCO分離能を低下させずに、非多孔質層のCO透過性を向上させることができる。一方、非多孔質層が薄くなり非多孔質層自体の強度が低下しても、非多孔質層は多孔質層で支持されて補強される。さらに本発明のガス分離体によれば、非多孔質層を透過したCOは多孔質層を通過することが可能となる。
【0016】
前記非多孔質層の厚さは20μm以下であることが好ましい。
【0017】
この場合、非多孔質層の厚さが20μmを超える場合に比べて、CO透過性をより向上させることができる。
【0018】
前記多孔質層はポリアセタール樹脂を含むことが好ましい。
【0019】
この場合、多孔質層と非多孔質層との密着性をより向上させることが可能となる。
【0020】
上記ガス分離体の製造方法は、前記積層体形成工程の前に行われ、ポリアセタール樹脂を含む非多孔質の第1前駆体層の少なくとも一部を被加熱部として加熱しながら2軸延伸することにより多孔化してその延伸部からなる前記多孔質層を形成する多孔質層形成工程をさらに含み、前記積層体形成工程が、前記多孔質層を前記非多孔質層の前駆体である第2前駆体層と接触させてなるプレ積層体を形成するプレ積層体形成工程と、前記プレ積層体を、前記多孔質層の融点未満の温度で加熱することによって前記多孔質層及び前記第2前駆体層を互いに接着させて前記積層体を形成する接着工程とを含むことが好ましい。
【0021】
この場合、多孔質層形成工程において、ポリアセタール樹脂を含む非多孔質の第1前駆体層の少なくとも一部が被加熱部として加熱されながら2軸延伸されることにより多孔化されて多孔質層が形成されるため、優れたCO透過性を実現させることが可能となる。また、延伸部は、第1前駆体層の被加熱部を2軸延伸することにより形成されるため、多孔質層の高強度化が可能となり、得られる積層体の強度を、非多孔質層単独の場合に比べて十分に増加させることができる。さらに接着工程において、プレ積層体を、多孔質層の融点未満の温度で加熱することによって多孔質層及び第2前駆体層を互いに接着させて積層体が形成されるため、多孔質層の孔が閉塞されることが十分に抑制される。このため、CO透過性が低下することが十分に抑制される。
【0022】
上記多孔質層形成工程においては、第1前駆体層の前記延伸部に対して下記式(1)で定義される実質2軸延伸倍率を、25倍を超える値とすることが好ましい。すなわち、第1前駆体層の前記被加熱部に対して下記式(1)で定義される実質2軸延伸倍率が25倍を超える値となるように2軸延伸を行うことが好ましい。
実質2軸延伸倍率=dbefore/dafter・・・(1)
(上記式(1)中、dbeforeは前記第1前駆体層における2軸延伸前の厚さを表し、dafterは前記第1前駆体層における2軸延伸後の延伸部の最小厚さを表す)
なお、実質2軸延伸倍率とは、同体積変化を仮定して算出した、直交する2つの延伸軸の延伸倍率の積を意味する。
【0023】
この場合、第1前駆体層の被加熱部に対する実質2軸延伸倍率が25倍以下となるように2軸延伸が行われる場合に比べて、ガス分離体のCO透過性を、非多孔質層のCO透過性とほぼ等しくすることが可能となり、より優れたCO透過性を有するガス分離体を得ることができる。また多孔質層をより高強度化することが可能となり、得られる積層体の強度を、非多孔質層単独の場合に比べてより十分に増加させることができる。
【0024】
前記第1前駆体層に含まれるポリアセタール樹脂においては、オキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量が、前記第2前駆体層中におけるオキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量よりも小さいことが好ましい。
【0025】
この場合、第1前駆体層の延伸性がより向上するため、第1前駆体層の被加熱部を2軸延伸する際の実質2軸延伸倍率をより大きくすることができる。このため、多孔質層をより高強度化することが可能となり、得られる積層体の強度を、非多孔質層単独の場合に比べてより十分に増加させることができる。また多孔質層に対してより優れたCO透過性を付与することも可能となる。
【0026】
なお、「多孔質層の融点」とは、プレ積層体において、第2前駆体層の両側に設けられる2つの多孔質層の融点が同一であればその融点を、異なるのであればそのうち低い方の融点を言う。
【0027】
また「融点」とは、多孔質層又は第2前駆体層を構成する材料についてDSCで測定された値を言い、具体的には、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で30〜200℃の温度範囲内で測定された融解ピークのピーク温度を言う。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、優れたCO分離能、CO透過性及び機械強度を同時に確保できるガス分離体及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のガス分離体の第1実施形態を示す断面図である。
図2図1のガス分離体の製造方法に用いられる第1前駆体層を2軸延伸している状態を示す平面図である。
図3図1のガス分離体の製造方法に用いられるプレ積層体を示す断面図である。
図4】本発明のガス分離体の第2実施形態を示す断面図である。
図5】本発明のガス分離体の第3実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のガス分離体の第1実施形態を示す断面図である。
【0031】
図1に示すように、本実施形態のガス分離体100は、平板状の積層体50を備えており、積層体50は、第1多孔質層10と、第2多孔質層20と、第1多孔質層10と第2多孔質層20とによって挟まれるように設けられる非多孔質層30とを備えている。すなわち、非多孔質層30の両側には、第1多孔質層10及び第2多孔質層20がそれぞれ設けられている。第1多孔質層10及び第2多孔質層20は非多孔質層30を支持している。
【0032】
また非多孔質層30はポリアセタール樹脂を含んでおり、ポリアセタール樹脂において、オキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量が1.5〜10モルである。さらに本実施形態では、第1多孔質層10及び第2多孔質層20はポリアセタール樹脂を含んでいる。
【0033】
このガス分離体100によれば、非多孔質層30は優れたCO分離能を有する。ここで、非多孔質層30が薄くなっても、非多孔質層30はCO分離能を低下させずに、非多孔質層30のCO透過性を向上させることができる。一方、非多孔質層30が薄くなり非多孔質層30自体の強度が低下しても、非多孔質層30は第1多孔質層10及び第2多孔質層20で支持されて補強される。さらにガス分離体100によれば、非多孔質層30を透過したCOは第1多孔質層10及び第2多孔質層20を通過することも可能となる。
【0034】
また第1多孔質層10、非多孔質層30、及び、第2多孔質層20はいずれもポリアセタール樹脂を含むため、第1多孔質層10と非多孔質層30との密着性をさらに向上させることが可能となるとともに、第2多孔質層20と非多孔質層30との密着性をさらに向上させることも可能となる。
【0035】
次に、第1多孔質層10、非多孔質層30、及び、第2多孔質層20について詳細に説明する。
【0036】
(非多孔質層)
非多孔質層30は非多孔質となっている。非多孔質層30はポリアセタール樹脂を含む。ここで、ポリアセタール樹脂においては、オキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量が1.5〜10モルとなっている。ここで、「炭素数が2以上」とは、炭素原子数が複数個であることを意味する。炭素数が2以上のオキシアルキレンユニットとしては、例えばオキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニット、及び、オキシブチレンユニットなどが挙げられる。
【0037】
非多孔質層30の厚さは特に制限されるものではないが、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。この場合、非多孔質層30の厚さが20μm以下であると、20μmを超える場合に比べて、非多孔質層30のCO透過性をより向上させることができる。
【0038】
非多孔質層30は、ポリアセタール樹脂以外の熱可塑性樹脂をさらに含んでもよい。このような熱可塑性樹脂としては、例えばポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えばポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、及びポリグリコール酸などが挙げられる。またポリエーテル樹脂としては、例えばポリジオキソラン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。熱可塑性樹脂は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して1〜200質量部の割合で配合されていることが好ましい。
【0039】
非多孔質層30は、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、核剤、可塑剤、蛍光増白剤、又はペンタエリスリトールテトラステアレート等の脂肪酸エステル系又はシリコン系化合物等の離型剤、摺動剤、ポリエチレングリコール、グリセリンのような帯電防止剤、高級脂肪酸塩、ペンゾトリアゾール系またはペンゾフェノン系化合物のような紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系のような光安定剤等の添加剤を必要に応じてさらに含んでいてもよい。
【0040】
(第1多孔質層)
第1多孔質層10は多孔質となっている。第1多孔質層10はポリアセタール樹脂を含む。
【0041】
第1多孔質層10に含まれるポリアセタール樹脂において、オキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量(以下、「R1」と呼ぶことがある)が、非多孔質層30中におけるオキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量(以下、「R2」と呼ぶことがある)以上であってもよいし、R2より小さくてもよいが、R1はR2より小さいことが好ましい。
【0042】
第1多孔質層10も、非多孔質層30と同様の添加剤を必要に応じてさらに含んでいてもよい。
【0043】
第1多孔質層10のCO透過率(以下「T1」と呼ぶことがある)は、非多孔質層30のCO透過率(以下「T2」と呼ぶことがある)よりも大きくても、T2以下であってもよいが、T2よりも大きいことが好ましい。この場合、T1をT2以下とする場合に比べて、ガス分離体100のCO透過性をより向上させることができる。
【0044】
第1多孔質層10は、ポリアセタール樹脂以外の熱可塑性樹脂をさらに含んでもよい。このような熱可塑性樹脂としては、非多孔質層30で用いられる熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。
【0045】
第1多孔質層10は、非多孔質層30に直接接着されていてもよいし、接着剤(図示せず)を介して間接的に接着されていてもよい。
【0046】
(第2多孔質層)
第2多孔質層20は多孔質となっている。第2多孔質層20もポリアセタール樹脂を含む。このポリアセタール樹脂は第1多孔質層10のポリアセタール樹脂と同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
第2多孔質層20に含まれるポリアセタール樹脂において、オキシメチレンユニット100モルに対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの導入量(以下、「R3」と呼ぶことがある)が、R2以上であってもよいし、R2より小さくてもよいが、R3はR2より小さいことが好ましい。
【0048】
第2多孔質層20も、非多孔質層30と同様の添加剤を必要に応じてさらに含んでいてもよい。
【0049】
第2多孔質層20のCO透過率(以下「T3」と呼ぶことがある)は、T2よりも大きくても、T2以下であってもよいが、T2よりも大きいことが好ましい。この場合、T3をT2以下とする場合に比べて、ガス分離体100のCO透過性をより向上させることができる。
【0050】
第2多孔質層20は、ポリアセタール樹脂以外の熱可塑性樹脂をさらに含んでもよい。このような熱可塑性樹脂としては、非多孔質層30で用いられる熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。
【0051】
第2多孔質層20は、非多孔質層30に直接接着されていてもよいし、接着剤(図示せず)を介して間接的に接着されていてもよい。
【0052】
次に、上述したガス分離体100の製造方法について図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、図1のガス分離体の製造方法に用いられる第1前駆体層を2軸延伸している状態を示す平面図、図3は、図1のガス分離体の製造方法に用いられるプレ積層体を示す断面図である。
【0053】
ガス分離体100の製造方法においては、まずポリアセタール樹脂を含む非多孔質の第1前駆体層を2枚用意する。
【0054】
次に、図2に示すように、第1前駆体層110,120のうちの少なくとも一部を被加熱部115として加熱しながら2軸延伸することにより多孔化した延伸部からなる第1多孔質層10及び第2多孔質層20をそれぞれ形成する(多孔質層形成工程)。
【0055】
次に、図3に示すように、第1多孔質層10及び第2多孔質層20で非多孔質層30の前駆体である第2前駆体層130を挟んでなるプレ積層体150を形成する(プレ積層体形成工程)。すなわち、第1多孔質層10及び第2多孔質層20をそれぞれ非多孔質層30の前駆体である第2前駆体層130と接触させてなるプレ積層体150を形成する。
【0056】
次に、プレ積層体150を、第1多孔質層10及び第2多孔質層20の融点未満の温度で加熱することによって第1多孔質層10、第2多孔質層20及び第2前駆体層130を互いに接着させて積層体50を形成する(接着工程)。
【0057】
こうして積層体50で構成されるガス分離体100が得られる。
【0058】
上記のようにしてガス分離体100を製造すると、以下の効果が得られる。
【0059】
すなわち、多孔質層形成工程において、ポリアセタール樹脂を含む非多孔質の第1前駆体層110,120の少なくとも一部が被加熱部115として加熱されながら2軸延伸されることにより多孔化されて第1多孔質層10及び第2多孔質層20が形成されるため、優れたCO透過性を実現させることが可能となる。また、第1多孔質層10及び第2多孔質層20は、第1前駆体層110,120を2軸延伸することにより形成されるため、第1多孔質層10及び第2多孔質層20の高強度化が可能となり、得られるガス分離体100の強度を、非多孔質層30単独の場合に比べて十分に増加させることができる。さらに接着工程において、プレ積層体150を、第1多孔質層10及び第2多孔質層20の融点未満の温度で加熱することによって第1多孔質層10、第2多孔質層20及び第2前駆体層130を互いに接着させて積層体50が形成される。第1多孔質層10及び第2多孔質層20が溶融されない。このため、第1多孔質層10及び第2多孔質層20の孔が閉塞されることが十分に抑制される。その結果、ガス分離体100において、CO透過性が低下することが十分に抑制される。
【0060】
以下、上記多孔質層形成工程、プレ積層体形成工程及び接着工程について詳細に説明する。
【0061】
(多孔質層形成工程)
第1前駆体層110,120のメルトフローレート(以下、「MFR」と呼ぶ)は、特に制限されるものではないが、通常は、0.1〜30g/10分であり、好ましくは1〜10g/10分である。
【0062】
第1前駆体層110,120は、例えば第1前駆体層110,120を構成する材料を溶融プレス成形することによって得ることができる。溶融プレス成形は、例えば上記材料を、離型フィルムを介して加圧板で挟み、得られた構造体を、上記材料を溶融しながらプレス機でプレスした後、室温まで徐冷することによって得ることができる。溶融プレス成形は、1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。
【0063】
多孔質層形成工程においては、第1前駆体層110,120の延伸部に対する実質2軸延伸倍率は、下記式(1)で定義される。
実質2軸延伸倍率=dbefore/dafter・・・(1)
(上記式(1)中、dbeforeは第1前駆体層110,120における2軸延伸前の厚さを表し、dafterは第1前駆体層110,120における2軸延伸後の延伸部の最小厚さを表す)
【0064】
ここで、実質2軸延伸倍率は1倍より大きければ特に制限されるものではないが、25倍を超える値とすることが好ましい。すなわち、第1前駆体層110,120の被加熱部115は、実質2軸延伸倍率が25倍を超える値となるように2軸延伸されることが好ましい。この場合、実質2軸延伸倍率が25倍以下となるように被加熱部115が2軸延伸される場合に比べて、ガス分離体100のCO透過性を、非多孔質層30のCO透過性とほぼ等しくすることが可能となり、より優れたCO透過性を有するガス分離体100を得ることができる。また第1多孔質層10及び第2多孔質層20をより高強度化することが可能となり、得られる積層体50の強度を、非多孔質層30単独の場合に比べてより十分に増加させることができる。
【0065】
実質2軸延伸倍率は40倍以上であることがより一層好ましく、60倍以上であることが特に好ましい。
【0066】
但し、実質2軸延伸倍率は500倍以下であることがより好ましい。この場合、第1前駆体層110,120がより破断しにくくなる。
【0067】
なお、本明細書においては、下記式(2)に従って2つの延伸軸A,Bに沿ったチャック間距離を基準として算出する延伸倍率を見かけ2軸延伸倍率として表記する。
見かけ2軸延伸倍率=(L1/L2)×(L3/L4)・・・(2)
(上記式(2)中、L1、L3はそれぞれ2つの延伸軸A,Bに沿った2軸延伸後の2つのチャック同士間の距離を表し、L2、L4はそれぞれ2つの延伸軸A,Bに沿った2軸延伸前の2つのチャック同士間の距離を表す)
【0068】
ここで、2つの延伸軸A,Bは互いに直交している。また、見かけ2軸延伸倍率における(L1/L2)と(L3/L4)は、それぞれ、1以上であればよく、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0069】
上記多孔質層形成工程において、第1前駆体層110,120の一部のみが被加熱部115である場合には、2軸延伸後の第1前駆体層110,120のうちその延伸部のみが切り出され、この延伸部が第1多孔質層10又は第2多孔質層20とされる。この場合、上記式(1)における実質2軸延伸倍率は、上記式(2)における見かけ2軸延伸倍率((L1/L2)と(L3/L4)の積)よりも大きくなる。このことは、被加熱部115は加熱されることで十分に延伸されて薄くなり、被加熱部115以外の部分は十分に加熱されないため、十分に延伸されずに薄くならないことを意味する。
【0070】
また第1前駆体層110,120は、その全部が被加熱部115であってもよく、その一部のみが被加熱部115であってもよい。ここで、2軸延伸後の第1前駆体層110,120の全部が延伸部である場合、第1前駆体層110,120全体がそれぞれそのまま第1多孔質層10又は第2多孔質層20とされる。なお、2軸延伸後の第1前駆体層110,120の全部が延伸部となる場合、上記式(1)における実質2軸延伸倍率は、上記式(2)における見かけ2軸延伸倍率と等しくなる。
【0071】
被加熱部115の延伸速度は、特に制限されるものではないが、より十分な生産性を確保する観点から、1mm/分以上であることが好ましい。但し、延伸速度は、第1前駆体層110,120の被加熱部115を破断させることなく均一に2軸延伸するという観点からは、500mm/分以下であることが好ましい。なお、本発明の2軸延伸における延伸速度は、チャック間距離を基準にして算出した値である。
【0072】
また第1前駆体層110,120に含まれるポリアセタール樹脂においては、R1及びR3がいずれもR2よりも小さいことが好ましい。
【0073】
この場合、第1前駆体層110,120の延伸性がより向上するため、第1前駆体層110,120の被加熱部115を2軸延伸する際の実質2軸延伸倍率をより大きくすることができる。このため、第1前駆体層110,120をより高強度化することが可能となり、得られる積層体50の強度を、非多孔質層30単独の場合に比べてより十分に増加させることができる。また第1多孔質層10及び第2多孔質層20に対してより優れたCO透過性を付与することも可能となる。
【0074】
第1前駆体層110,120の被加熱部115に対する2軸延伸は、積層体50を形成する前に行われればよく、同時に行われてもよいし、順次行われてもよい。
【0075】
(プレ積層体形成工程)
非多孔質層30の前駆体である第2前駆体層130は、例えば非多孔質層30を構成する材料を押出加工して得られる層状押出物をそのまま使用することができる。すなわち層状押出物は未延伸のまま第2前駆体層130として使用することができる。押出加工としては、例えばTダイキャスト法を用いることができる。
【0076】
第2前駆体層130の融点(Tm2)は、第1多孔質層10の融点(T1)及び第2多孔質層20の融点(T2)のうちいずれか低い方の融点よりも低ければよい。T1−Tm2、T2−Tm2は特に制限されるものではないが、それぞれ5〜25℃であることが好ましい。
【0077】
ここで、第2前駆体層130の融点(Tm2)は通常は140〜165℃である。
【0078】
(接着工程)
接着工程では、プレ積層体150を、第1多孔質層10及び第2多孔質層20の融点未満の温度で加熱することによって第1多孔質層10、第2多孔質層20及び第2前駆体層130を互いに接着させて積層体50を形成する。
【0079】
また接着工程は、第1多孔質層10、第2多孔質層20及び第2前駆体層130を加圧しながら行っても加圧しなくてもよいが、加圧しながら行うことが好ましい。この場合、第1多孔質層10及び第2多孔質層20をそれぞれ第2前駆体層130により密着させることができる。
【0080】
接着工程は、例えばプレス成形法、ロール圧延法などを用いて行うことができる。接着工程を、ロール圧延を用いて行う場合、接着工程では、例えばロールの回転速度を0.1〜100rpmとすればよい。またロールの温度は、第1多孔質層10及び第2多孔質層20の細孔を潰さず第2前駆体層130と第1多孔質層10及び第2多孔質層20とを接着させる温度であればよく、例えば第1多孔質層10及び第2多孔質層20の融点未満の温度であって、第2前駆体層130が部分融解状態にある第2前駆体層130の融点近傍かつ融点未満の温度であればよい。
【0081】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ガス分離体100において、非多孔質層30の両側にそれぞれ第1多孔質層10及び第2多孔質層20が設けられているが、図4に示すガス分離体200のように、第2多孔質層20が省略されてもよい。もちろん、第2多孔質層20が残され、第1多孔質層10が省略されてもよい。また、図5に示すガス分離体300のように、第1多孔質層10が2枚の非多孔質層30によって挟まれていてもよい。この場合、ガス分離体300は、以下のようにして製造される。すなわち、まず第1前駆体層110の被加熱部を2軸延伸することにより多孔化して延伸部を形成し、その延伸部からなる第1多孔質層10を形成する。そして、第1多孔質層10を、2つの非多孔質層30の前駆体である第2前駆体層130で挟んだプレ積層体を形成する。そして、プレ積層体を、第1多孔質層10の融点未満の温度で加熱することによって第1多孔質層10及び第2前駆体層130を互いに接着させてガス分離体300が形成される。ここで、第1多孔質層10に代えて、第2多孔質層20が用いられてもよい。
【0082】
また上記実施形態では、第1多孔質層10及び第2多孔質層20に含まれる樹脂としてポリアセタール樹脂が用いられているが、ポリアセタール樹脂に代えて、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレンなどの多孔質化が可能な樹脂が用いられてもよい。これらは1種類単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。また第1前駆体層110,120は、多孔質化に必要な溶剤や可塑剤、無機フィラーなどを含んでもよい。また、未延伸フィルムと第2前駆体層との接着性を向上させるために、未延伸フィルムのうち第2前駆体層との接着面に対してプラズマ処理、コロナ放電処理、酸処理やアルカリ処理等の表面処理を行ってもよい。逆に、第2前駆体層に対しても、このような表面処理を行うことが可能である。
【0083】
また上記実施形態では、積層体50が平板状となっているが、積層体50は円筒状であってもよい。
【0084】
本発明のガス分離体は、火力発電所や工場等から多量に排出される排ガス中のCO分離膜などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0086】
実施例及び比較例で用いたポリアセタール樹脂(以下、「POM」と呼ぶ)は以下の通りとした。なお、以下、「オキシメチレンユニット」を「OM」、「オキシアルキレンユニット」を「OA」と略称する。また、以下、MFRは、ASTM−D1238規格に基づき、190℃、2.16kgの条件で測定された値を言う。
(1)POM1
以下の特性を有するアセタールコポリマー
OM100モルに対するOAの導入量:1.4モル
MFR:2.5g/10分
融点:165℃
(2)POM2
以下の特性を有するアセタールコポリマー
OM100モルに対するOAの導入量:1.4モル
MFR:9g/10分
融点:165℃
(3)POM3
以下の特性を有するアセタールコポリマー
OM100モルに対するOAの導入量:2.1モル
MFR:2.5g/10分
融点:163℃
(4)POM4
以下の特性を有するアセタールコポリマー
OM100モルに対するOAの導入量:2.7モル
MFR:2.5g/10分
融点:160℃
(5)POM5
以下の特性を有するアセタールコポリマー
OM100モルに対するOAの導入量:6.0モル
MFR:9g/10分
融点:153℃
(6)POM6
以下の特性を有するアセタールコポリマー
OM100モルに対するOAの導入量:10.0モル
MFR:9g/10分
融点:135℃
【0087】
(実施例1〜6)
まず120mm×120mm×厚さ2mmの正方形ステンレス板の上に、厚さ125μmの離型用ポリイミドフィルムを置き、次に120mm×120mm×厚さ0.50mmの正方形ステンレス板に105mm×105mmの窓をくり抜いたものを置き、その窓内に、表1の第1多孔質層又は第2多孔質層の種類の欄に示されるPOMからなるペレットを約10g置いた。その上に厚さ125μmの離型用ポリイミド膜を置き、さらにその上に120mm×120mm×厚さ2mmの正方形ステンレス板を置いた。こうして第1構造体を得た。
【0088】
こうして得られた第1構造体を、卓上プレス装置に設置された上下のプレス機構の間に挟み、160℃にて5分間保持した後、2.5MPa(シリンダー圧力30MPa)の圧力で5分間溶融プレス成形し、室温まで徐冷してから取出した。こうして厚さ500μmの第1フィルムを形成した。
【0089】
この第1フィルムから、52mm×58mm×500μmの部分を第2フィルムとして切り出した。
【0090】
次に、直径110mm×厚さ2mmの円盤状ステンレス板の上に、厚さ125μmの離型用ポリイミドフィルムを置き、次に直径110mm×厚さ0.30mmの円盤状ステンレス板に70mm×70mmの窓をくり抜いたものを置き、その窓内に上記第2フィルムを置いた。その上に厚さ125μmの離型用ポリイミド膜を置き、さらにその上に直径110mm×厚さ2mmの円盤状ステンレス板を置いた。こうして第2構造体を得た。そして、この第2構造体を200℃にて5分間保持した後、2.5MPa(シリンダー圧力30MPa)の圧力で5分間溶融プレス成形し、室温まで徐冷してから取り出した。こうして、厚さ300μmのプレスフィルムを作製した。そして、このプレスフィルムから、35mm×35mm×300μmの部分を切り出し、これを第1前駆体層とした。
【0091】
次に、上記と同様にして第1前駆体層をもう1枚用意した。そして、上記のようにして用意した2枚の第1前駆体層の各々に対して2軸延伸機(アイランド工業社製、製品名「BIX704S」)を用いて以下のようにして2軸延伸を行い、2枚の延伸フィルムを得た。すなわち、まず室温にて2軸延伸機の4つのチャックで1枚の第1前駆体層を挟んでセットした後、この第1前駆体層の一部を被加熱部としてこの被加熱部に熱風を吹き付けることにより被加熱部を表1の第1多孔質層に示される延伸温度まで昇温し、この温度で5分間保持した後に上記第1前駆体層の被加熱部に対して実質2軸延伸倍率が表1の第1多孔質層の欄に示される値となるように且つ延伸速度20mm/分で同時2軸延伸を行った。そして、2軸延伸後の第1前駆体層から、被加熱部を延伸して得られる延伸部を切り出した。こうして表1の第1多孔質層の厚さの欄に示される厚さを有する延伸部からなる延伸フィルムを得た。なお、表1には、第1前駆体層全体の見かけ2軸延伸倍率((L1/L2)×(L3/L4))も示した。
【0092】
一方、室温にて2軸延伸機のチャックにもう1枚の第1前駆体層を挟んでセットした後、この第1前駆体層の一部を被加熱部としてこの被加熱部に熱風を吹き付けることにより被加熱部を表1の第2多孔質層に示される延伸温度まで昇温し、この温度で5分間保持した後に上記第1前駆体層の被加熱部に対して実質2軸延伸倍率が表1の第2多孔質層の欄に示される値となるように且つ延伸速度20mm/分で同時2軸延伸を行った。そして、2軸延伸後の第1前駆体層から、被加熱部を延伸して得られる延伸部を切り出した。こうして表1の第2多孔質層の厚さの欄に示される厚さを有する延伸部からなる延伸フィルムを得た。なお、表1には、第1前駆体層全体の見かけ2軸延伸倍率((L1/L2)×(L3/L4))も示した。
【0093】
こうして得られた2枚の延伸フィルムについて原子間力顕微鏡(AFM)で観察したところ、2枚の延伸フィルムはいずれも多孔化していることが分かった。以下、2枚の延伸フィルムをそれぞれ「第1多孔質層」及び「第2多孔質層」と呼ぶこととする。
【0094】
一方、表1の非多孔質層の種類の欄に示されるPOMからなるペレットを、Tダイキャスト法を用いて押出加工し、厚さ24μmの未延伸フィルム(第2前駆体層)を得た。
【0095】
そして、上記のようにして得られた2枚の第1多孔質層及び第2多孔質層で上記未延伸フィルムを挟み込み、プレ積層体を得た。続いて、このプレ積層体に対してロール圧延加工を行った。具体的には、加熱された2本のロールの間に、プレ積層体を導入することで圧延を行い、プレ積層体を加圧しながら加熱して2枚の第1多孔質層及び第2多孔質層と未延伸フィルムとを接着させた。このとき、2本のローラは150℃に加熱し、ローラの回転速度は1rpmとした。こうして第1多孔質層、非多孔質層及び第2多孔質層からなる積層体を得た。得られた積層体において、非多孔質層の厚さは表1に示す通りであった。
【0096】
(比較例1)
POM5からなるペレットを、Tダイキャスト法を用いて押出加工し、厚さ100μmの未延伸フィルムを得た。
【0097】
(比較例2)
POM5からなるペレットを、Tダイキャスト法を用いて押出加工し、厚さ5μmの未延伸フィルムを得た。
【0098】
(比較例3)
未延伸フィルムを構成する材料をPOM4からPOM1に変更することにより、OM100モルに対するOAの導入量を2.7モルから1.4モルに変更したこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体において、第1多孔質層、非多孔質層及び第2多孔質層の厚さはそれぞれ表1に示す通りであった。
【0099】
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた積層体又は未延伸フィルムについて以下のようにして特性評価を行った。
【0100】
[特性評価]
(1)機械強度
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた積層体又は未延伸フィルムから、5mm×30mmの部分を切り出し、試験片を得た。そして、この試験片に対して引張試験を行い、引張強度を測定した。結果を表1に示す。なお、機械強度の合格基準は以下の通りとした。
(合格基準) 引張強度が20MPa以上
【0101】
(2)CO透過性
CO透過性は、CO透過率を指標とした。そして、CO透過率の測定は、JIS K7126に準拠した差圧法を用いて行った。詳細に述べると、CO透過率は、ガスクロマトグラフを検出器とし、差圧式ガス・蒸気透過率測定装置(製品名「GTR−30XAD、G6800T・F(S)」、GTRテック株式会社・ヤナコテクニカルサイエンス株式会社製)を用いて測定した。試験差圧は1atmとし、COとしては乾燥状態のものを用いた。試験温度は23±2℃、透過面積は1.52×10−3(φ4.4×10−2m))とした。結果を表1に示す。なお、CO透過性の合格基準は以下の通りとした。
(合格基準) CO透過率が10000cm/m・24h・atm以上
【0102】
(3)CO分離能
CO分離能は、N透過率に対するCO透過率の比を指標とした。ここで、N透過率は、COをNとしたこと以外はCO透過率と同様にして測定した。結果を表1に示す。なお、CO分離能の合格基準は以下の通りとした。
(合格基準) N透過率に対するCO透過率の比が70以上

【表1】
【0103】
表1に示す結果より、実施例1〜6で得られた積層体は、機械強度、CO透過性及びCO分離能の全ての点で合格基準に達していた。これに対し、比較例1〜3で得られた積層体又は未延伸フィルムはいずれも機械強度、CO透過性及びCO分離能のうちいずれかの点で合格基準に達していなかった。
【0104】
従って、本発明のガス分離体によれば、優れたCO分離能、CO透過性及び機械強度を同時に確保できることが確認された。
【符号の説明】
【0105】
10…第1多孔質層(多孔質層)
20…第2多孔質層(多孔質層)
30…非多孔質層
50…積層体
100,200,300…ガス分離体
110,120…第1前駆体層
115…被加熱部
130…第2前駆体層
150…プレ積層体
A,B…延伸軸
図1
図2
図3
図4
図5