【解決手段】SOxを含むガスが脱硫装置100内のフィルタ111を通過する際にフィルタ111がSOxを吸着する。少なくとも1つのフィルタ111の洗浄は、他のフィルタ111でSOxの吸着が行われる間に実施される。洗浄されるフィルタ111に第2散布部170及び第3散布部180が水を散布して、フィルタ111全面に水膜が形成され、ガスが遮断される。第1散布部160はフィルタ111上流側でガス中に水を散布して、ガスを冷却する。フィルタ111に吸着したSOxと水とが反応して硫酸及び亜硫酸が生成する。硫酸及び亜硫酸を含む水はフィルタ111下方に流れ、下部固定部材114に受け止められる。
前記フィルタの下方に設置され、前記フィルタを前記ケーシング内の所定位置に固定するとともに、前記フィルタから流れ落ちる前記硫酸または前記亜硫酸を含む前記水を受け止める下部固定部材を更に備える請求項1または請求項2に記載の脱硫装置。
前記脱硫装置からの前記硫酸及び前記亜硫酸を含む前記水を受け入れ、前記硫酸及び前記亜硫酸を含む前記水に石灰石を投入して硫酸カルシウムまたは亜硫酸カルシウムを生成させる硫酸処理装置を備える請求項4に記載のガス処理システム。
前記硫酸または前記亜硫酸を含む前記水は、前記フィルタの下方に設置されて前記フィルタを支持する前記下部固定部材に受け止められて回収される請求項7または請求項8に記載の脱硫方法。
前記硫酸カルシウム及び前記亜硫酸カルシウムを含む前記水が前記硫酸処理装置から抜き出され、前記抜き出された水中の前記亜硫酸カルシウムが酸化されて硫酸カルシウムが生成され、前記硫酸カルシウムを含む前記水が前記集塵装置の上流側の煙道に供給される硫酸カルシウム送給工程を更に含む請求項10または請求項11に記載のガス処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
活性炭法は高価な吸収剤を必要とせず、SO
2を硫酸として回収できる。簡易なシステムを構築できれば、活性炭法は他の方式に比べて有利であると言える。活性炭法では上述のように再生が必要である。しかしながら、活性炭法を採用した脱硫装置を用いて連続的に脱硫を行うためには、活性炭を収容する吸脱着装置がガスの流れ方向に並列に複数設置され、交互に活性炭の再生を行うなどの設備上の考慮が必要である。このため、脱硫装置が大型化するとともに、各吸脱着装置に対してガスの流れを制御するダンパや再生用設備等を設置する必要があり、装置構成が複雑化し制御が煩雑となる。あるいは、活性炭を流動させ、吸着・再生を繰り返す必要があり、設備が煩雑となる。
【0008】
本発明は、活性炭法を用いて連続的に脱硫を実施することができる脱硫装置及びこれを備えるガス処理システム、並びに、脱硫方法及びガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、ガス中からSOxを除去する脱硫装置であって、ケーシングと、該ケーシング内に収容され、前記SOxを吸着する活性炭または活性炭素繊維を含む複数のフィルタを備えるSOx除去部と、前記フィルタを洗浄する洗浄部とを備え、前記フィルタは前記ケーシング内を前記ガスが移動する方向と略直交する方向に配列し、前記フィルタの前記ガスの上流側であって前記フィルタの端部よりも前記ガスの下流側に排ガス空間が形成され、前記フィルタの前記ガスの下流側であって前記フィルタの端部よりも前記ガスの上流側に清浄ガス空間が形成され、前記洗浄部は、前記SOx除去部の前記ガスの上流側に前記排ガス空間の各々に対応して設置されて、前記ガス中に水を散布する複数の第1散布部と、各々の前記フィルタの上方に設置され、前記フィルタに水を散布する複数の第2散布部と、前記フィルタの前記ガスの下流側において、前記清浄ガス空間の各々に対応して設置され、前記清浄ガス空間に向かって水を散布する複数の第3散布部と、前記第1散布部、前記第2散布部、及び、前記第3散布部に前記水を供給する水供給部とを備え、前記第2散布部及び前記第3散布部は、前記フィルタの全面に水膜が形成されて前記ガスの流れが遮断されるように前記フィルタに前記水を散布するとともに、前記フィルタに吸着した前記SOxと前記水とが反応して硫酸または亜硫酸が生成する脱硫装置である。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様の脱硫装置を用いて前記ガス中から前記SOxを除去する脱硫方法であって、前記フィルタに前記ガスを通過させて、前記フィルタに前記SOxを吸着させる吸着工程と、少なくとも1つの前記フィルタを洗浄する洗浄工程と、を含み、前記洗浄工程が行われている間に、他の前記フィルタでは前記吸着工程が実施され、前記洗浄工程が、洗浄が行われる前記フィルタに対応して設置される前記第1散布部が、前記ガス中に前記水を散布し、前記ガスの温度を低下させる第1水散布工程と、前記洗浄が行われるフィルタの上方に位置する前記第2散布部が、前記洗浄が行われるフィルタに対して前記水を散布する第2水散布工程と、前記洗浄が行われるフィルタの前記ガス下流側に位置する前記清浄ガス空間に対応して設置される第3散布部が、前記清浄ガス空間に向かって前記水を散布する第3水散布工程と、を含み、前記洗浄工程で、前記第2散布部及び前記第3散布部から散布された前記水が前記フィルタに付着して、前記フィルタの全面に水膜が形成されて前記ガスの流れが遮断されるとともに、前記フィルタに吸着した前記SOxと前記水とが反応して硫酸または亜硫酸が生成し、前記洗浄工程が行われた前記フィルタが、前記吸着工程で前記ガスに曝されることにより乾燥される脱硫方法である。
【0011】
本発明のフィルタの洗浄では、第1散布部でガス中に水を散布してガス温度を低下させるとともに、第2散布部及び第3散布部からフィルタに水を供給する。これにより、フィルタ上での水とSOxとの反応により硫酸及び亜硫酸が生成され、硫酸及び亜硫酸を含む水がフィルタから流れ落ちる。このとき、第2散布部及び第3散布部から散布された水によりフィルタ全面に水膜を形成すれば、洗浄を行うフィルタではガスの透過を遮断できるとともに、全てのフィルタ表面が洗浄される。洗浄されたフィルタは、洗浄後に行われる吸着工程で高温(100〜150℃)のガスに曝されて乾燥される。
本発明に依れば、1つのケーシング内で、少なくとも1つのフィルタについて吸着したSOxを除去する洗浄工程を実施するのと同時に、他のフィルタではSOxの吸着工程を実施することができる。このため、本発明の脱硫装置は装置容積を低減できるとともに、装置構成を簡略化することができる。また、本発明の脱硫方法は処理が簡略化できるとともに処理効率が向上するので有利である。
【0012】
第1の態様において、前記水供給部は更に前記硫酸または亜硫酸を含む前記水を回収し収容する循環水タンクを備え、第2散布部が、前記循環水タンク内の前記硫酸及び前記亜硫酸を含む前記水を前記フィルタに散布することが好ましい。
【0013】
第2の態様において、前記水供給部が更に前記硫酸または前記亜硫酸を含む前記水を回収し収容する循環水タンクを備え、前記硫酸及び前記亜硫酸を含む前記水が回収されて、前記循環水タンクに収容され、前記循環水タンク中の水が前記第2散布部に供給される循環工程を含むことが好ましい。
【0014】
下部固定部材が受け止めた水を回収してフィルタの洗浄に再利用することにより、系内で使用する水量が低減される。この結果、脱硫装置から排出される排水量を削減することが可能である。
【0015】
第1の態様において、前記フィルタの下方に設置され、前記フィルタを前記ケーシング内の所定位置に固定するとともに、前記フィルタから流れ落ちる前記硫酸または前記亜硫酸を含む前記水を受け止める下部固定部材を更に備えることが好ましい。
【0016】
第2の態様において、前記硫酸または前記亜硫酸を含む前記水は、前記フィルタの下方に設置されて前記フィルタを支持する前記下部固定部材に受け止められて回収されることが好ましい。
【0017】
このように下部固定部材がフィルタに付着し流れ落ちる硫酸及び亜硫酸を含む水を受け止めて、下部固定部材を介して硫酸及び亜硫酸を含む水が回収されることにより、装置構成を簡略にできる。
【0018】
本発明の第3の態様は、硫黄分を含む燃料が燃焼して発生した、SOx及び煤塵を含むガスから前記煤塵を除去する集塵装置と、前記集塵装置の前記ガス下流側に設置される、第1の態様の脱硫装置とを有するガス処理システムである。
【0019】
本発明の第4の態様は、第3の態様のガス処理システムを用いたガス処理方法であって、前記集塵装置が前記SOx及び前記煤塵を含む前記ガスから前記煤塵を除去する集塵工程と、前記脱硫装置において前記ガスから前記SOxを除去する脱硫工程と、を含み、前記脱硫工程が、前記フィルタに前記ガスを通過させて、前記フィルタに前記SOxを吸着させる吸着工程と、少なくとも1つの前記フィルタを洗浄する洗浄工程と、を含み、前記洗浄工程が行われている間に、他の前記フィルタでは前記吸着工程が実施され、前記洗浄工程が、洗浄が行われる前記フィルタに対応して設置される前記第1散布部が、前記ガス中に前記水を散布し、前記ガスの温度を低下させる第1水散布工程と、前記洗浄が行われるフィルタの上方に位置する前記第2散布部が、前記洗浄が行われるフィルタに対して前記水を散布する第2水散布工程と、前記洗浄が行われるフィルタの前記ガス下流側に位置する前記清浄ガス空間に対応して設置される第3散布部が、前記清浄ガス空間に向かって前記水を散布する第3水散布工程と、を含み、前記洗浄工程で、前記第2散布部及び前記第3散布部から散布された前記水が前記フィルタに付着して、前記フィルタの全面に水膜が形成されて前記ガスの流れが遮断されるとともに、前記フィルタに吸着した前記SOxと前記水とが反応して硫酸または亜硫酸が生成し、前記洗浄工程が行われた前記フィルタが、前記吸着工程で前記ガスに曝されることにより乾燥される。
【0020】
上述のように、本発明の脱硫装置を備えることにより、ガス処理システムの装置容積を低減できるとともに、装置構成を簡略化することができる。また、本発明の脱硫方法を含んでガスを処理することにより、フィルタの洗浄とSOx除去とを同一ケーシング内で同時に行えるので、処理が簡略化できる。
さらに、集塵装置の後に本発明の脱硫装置を設置すると、集塵後でもガス中に残留する煤塵や水銀等も活性炭素繊維を含むフィルタで吸着させることができる。この結果、ガス処理システム全体での処理効率が向上するという効果を奏する。
【0021】
第3の態様において、前記脱硫装置からの前記硫酸及び前記亜硫酸を含む前記水を受け入れ、前記硫酸及び前記亜硫酸を含む前記水に石灰石を投入して硫酸カルシウムまたは亜硫酸カルシウムを生成させる硫酸処理装置を備えることが好ましい。
【0022】
第4の態様において、前記脱硫装置からの前記硫酸及び前記亜硫酸を含む前記水が硫酸処理装置に搬送され、前記硫酸処理装置において、前記水に石灰石を投入して硫酸カルシウムまたは亜硫酸カルシウムを生成させる硫酸処理工程を更に含むことが好ましい。
【0023】
上記態様では、脱硫で回収された水を中和するとともに、硫酸カルシウム及び亜硫酸カルシウムを生成させることができる。亜硫酸カルシウムは酸化により硫酸カルシウムとなる。この硫酸カルシウム(石膏)は回収され、有価物として多用途に利用可能である。
【0024】
第3の態様において、前記硫酸処理装置と前記集塵装置の上流側の煙道とを連絡する石膏搬送部を更に備え、前記石膏搬送部は、前記硫酸カルシウム及び前記亜硫酸カルシウムを含む前記水を前記硫酸処理装置から搬出する搬出部と、前記搬出された前記硫酸カルシウム及び前記亜硫酸カルシウムを含む前記水を収容し、前記亜硫酸カルシウムを酸化させて硫酸カルシウムを生成させる反応槽と、前記反応槽から前記硫酸カルシウムを含む前記水を前記煙道に送給する送給部とを備えることが好ましい。
【0025】
上記第4の態様において、前記硫酸カルシウム及び前記亜硫酸カルシウムを含む前記水が前記硫酸処理装置から抜き出され、前記抜き出された水中の前記亜硫酸カルシウムが酸化されて硫酸カルシウムが生成され、前記硫酸カルシウムを含む前記水が前記集塵装置の上流側の煙道に供給される硫酸カルシウム送給工程を更に含むことが好ましい。
【0026】
上記態様によれば、ガス処理システムからの排水量を削減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の脱硫装置では、同一のケーシング内で脱硫と活性炭フィルタの再生を行っており、フィルタに水を供給して水膜を形成することにより再生を行うフィルタでガスを遮断させている。従って、本発明の脱硫装置及びガス処理システムは装置容積が小さくて済み、設備が簡易化するという利点がある。また、洗浄後の水を水膜の形成に用いれば、洗浄工程で使用する水量を低減させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明の一実施形態に係るガス処理システムのブロック図である。ガス処理システム10は、ボイラ(燃焼炉)11の下流側の煙道に設けられる。ボイラ11は、硫黄分を比較的多く含有する燃料、例えば石炭を燃焼させるボイラである。
【0030】
ガス処理システム10は、集塵装置13及び脱硫装置100を有する。
集塵装置13として、ガス中の煤塵を静電気力によって捕集する乾式電気集塵装置、煤塵を濾布で捕集するバグフィルタ等が採用できる。
【0031】
ボイラ11と集塵装置13との間に、エアヒータ12が設置されても良い。エアヒータ12は、ガスと燃焼用空気とを熱交換させるものである。これにより、燃焼用空気は燃焼ガスの顕熱によって加熱されてからボイラ11へと供給され、ガスは冷却されて後段の集塵装置13及び脱硫装置100で処理される。
【0032】
脱硫装置100で処理された後のガスは煙突へと搬送され、大気放出される。
【0033】
ガス処理システム10は、脱硫装置100から排出された硫酸を含む排水を処理する硫酸処理装置20を備えていても良い。具体的に、
図1の硫酸処理装置20は、吸収剤充填槽21と貯留槽22とを有する。貯留槽22と吸収剤充填槽21との間に循環ライン23が設けられ、貯留槽22中の液体が吸収剤充填槽21に搬送可能となっている。
【0034】
また
図1に示すように、貯留槽22と集塵装置13の上流側煙道とを連絡する石膏搬送部30が設けられても良い。石膏搬送部30は、反応槽34と、貯留槽22内の水を反応槽34に搬出する搬出部31と、反応槽34内の水を上記煙道に送給する送給部35とを備える。搬出部31及び送給部35は、それぞれ配管32,36と、ポンプ33,37とを備える。
【0035】
<第1実施形態>
図2及び
図3は、第1実施形態に係る脱硫装置を説明する概略図である。
脱硫装置100は、ケーシング110と、洗浄部150と、制御部190とを備える。
図2及び
図3の脱硫装置100においては、ケーシング110の底部に設けられるガス導入口115が煙道を通じて集塵装置13と接続され、ケーシング110の上部に設けられるガス排出口116が煙道を通じて煙突に接続される。従って、脱硫装置100のケーシング110に導入されたガスは、ケーシング110内を下から上に向かって移動する。本実施形態の変形例として、ケーシング110内のガス移動方向が水平方向となるように、ガス導入口115及びガス排出口116が配置されていても良い。
【0036】
図2はケーシング110を一方向から見た断面図であり、
図3のケーシング110は、
図2と略直交する方向から見た場合の断面図である。ケーシング110はSOx除去部を収容する。
【0037】
SOx除去部は、複数のフィルタ111(111−1〜10)と、フィルタ支持材112と、上部固定部材113と、下部固定部材114とで構成される。
フィルタ111−1〜10はSOxを吸着可能である活性炭または活性炭素繊維を含み、通気性を有する。フィルタ111は例えば、孔を有するケーシング内に粒状の活性炭が充填されたもの、フェルト状や織物状の活性炭素繊維などである。
複数のフィルタ111−1〜10はV字型に組み合わされ、上述したガスの移動方向と略直交する方向に配列される。フィルタ111−1〜10の配列は
図2に示すV字型に限定されない。例えば複数のフィルタ111−1〜10が対向配置されても良い。
【0038】
フィルタ111−1〜10のガス上流側の面には、フィルタ111−1〜10を支持するためのフィルタ支持材112がフィルタ111−1〜10と接触して設置される。
図2,3に示すように、フィルタ111−1〜10はフィルタ支持材112によってシート状に保持されている。フィルタ支持材112は、ガスが透過可能な孔が複数形成された部材であり、例えば金網やパンチングメタルなどである。
【0039】
フィルタ111−1〜10の上端部には、フィルタ111−1〜10をケーシング内の所定位置で固定する上部固定部材113が設置される。
図2,3において、上部固定部材113はV字型の断面を有し、
図2の奥行方向(上述したガスの移動方向及びフィルタ111−1〜10の配列方向のそれぞれに略直交する方向)に延在する。上部固定部材113の形状は、フィルタ111−1〜10の配列状態に合わせて変えられることができる。
【0040】
フィルタ111−1〜10の下方には、フィルタ111−1〜10をケーシング内の所定位置に固定する下部固定部材114が設けられる。
図2,3における下部固定部材114は、後述するようにフィルタ111−1〜10から流れ落ちる液体(水)を回収する機能をも兼ねる。フィルタ111−1〜10の下端は下部固定部材114内に位置する。
図2,3に示すように、下部固定部材114は
図2の奥行方向(上述したガスの移動方向及びフィルタ111−1〜10の配列方向のそれぞれに略直交する方向)に延在する樋形状となっている。下部固定部材114の一方端部はケーシング110を貫通し、配管を通じて硫酸処理装置20に接続する。硫酸処理装置20を設置しない場合、下部固定部材114の一方端部に接続する配管は、ガス処理システム10の系外に通じる。
【0041】
図2に示すように、フィルタ111−1〜10の配列方向の末端に位置する下部固定部材114(上部固定部材113であっても良い)は、ケーシング110に隙間なく取り付けられる。上部固定部材113及び下部固定部材114はそれぞれ、
図2の奥行方向の両端部がケーシング110に隙間なく取り付けられる。上部固定部材113及び下部固定部材114は、ガスが透過できない材料(例えば金属板)で作製される。また、フィルタ111−1〜10は、
図2の奥行方向の両端部でケーシング110との間に隙間が形成されないように固定される。こうすることにより、ケーシング110内を流通するガスはフィルタ支持材112及びフィルタ111−1〜10を通過することになる。
【0042】
以下では、フィルタ111−1〜10のガス上流側であってフィルタ111−1〜10の端部よりもガス下流側(
図2においては下部固定部材114よりもガス下流側)に位置する空間を排ガス空間120と定義し、フィルタ111−1〜10のガス下流側であってフィルタ111−1〜10の端部よりもガス上流側(
図2においては下部固定部材114と反対側のフィルタ111−1〜10の端部よりもガス上流側)に位置する空間を清浄ガス空間130と定義する。
【0043】
洗浄部150は、水供給部、第1散布部160、第2散布部170及び第3散布部180を備える。水供給部はケーシング110の外側に配置される。第1実施形態において、水供給部は水(工業用水)を収容する水タンク151である。
【0044】
第1散布部160は配管161を有し、配管161の一端部がケーシング110内に配置される。ケーシング110内において、配管161(161−1〜5)は
図3に示すように、
図2の奥行方向(上述したガスの移動方向及びフィルタ111−1〜10の配列方向のそれぞれに略直交する方向)に延在する。配管161−1〜5は、排ガス空間120の各々に対して設置される。配管161−1〜5は、排ガス空間120の中心軸(ガス移動方向に沿った中心軸)上に配置されていることが好ましい。
【0045】
ケーシング110内の配管161(161−1〜5)には複数のノズルが取り付けられている。ノズルの先端は排ガス空間120に向けられる。第1散布部160のノズルは排ガス空間120に向けられる。後述するようにガス冷却時間を十分確保するために、配管161−1〜5はこの排ガス空間120の入口よりもガス上流側で、排ガス空間120と離間して配置される。
【0046】
第1散布部160の配管161−1〜5の他端部はケーシング110を貫通する。ケーシング110の外側において配管161−1〜5は合流し、合流した後の配管が水タンク151に接続する。合流後の配管にポンプ162が設置される。ケーシング110の外側において、各配管161−1〜5にバルブV1が設けられる。ポンプ162及びバルブV1は制御部190に接続する。制御部190は例えばコンピュータである。
【0047】
第2散布部170は配管171を有し、配管171の一端部がケーシング110内に配置される。ケーシング110内において、配管171(171−1〜10)は
図3に示すように、
図2の奥行方向(上述したガスの移動方向及びフィルタ111−1〜10の配列方向のそれぞれに略直交する方向)に延在する。
【0048】
ケーシング110内において配管171(171−1〜10)は、各フィルタ111−1〜10の上方に設置される。第2散布部170のノズルはフィルタ111−1〜10に向けられる。
【0049】
第2散布部170の配管171−1〜10の他端部はケーシング110を貫通する。ケーシング110の外側において配管171−1〜10は合流し、合流した後の配管が水タンク151に接続する。合流後の配管にポンプ172が設置される。ケーシング110の外側において、各配管171−1〜10にバルブV2が設けられる。ポンプ172及びバルブV2は制御部190に接続する。
【0050】
第3散布部180は配管181を有し、配管181の一端部がケーシング110内に配置される。ケーシング110内において、配管181(181−1〜6)は
図3に示すように、
図2の奥行方向(上述したガスの移動方向及びフィルタ111−1〜10の配列方向のそれぞれに略直交する方向)に延在する。
【0051】
第3散布部180はフィルタ111−1〜10のガス下流側に設置される。散布した水がフィルタ111−1〜10に到達するのであれば、第3散布部180の配管181−1〜6は清浄ガス空間130の内側であっても外側であっても良い。また、配管181−1〜6が外側に設けられる場合は、第2散布部170の配管171−1〜10に対してガス下流側に設置されても良いし、ガス上流側に設置されても良い。好ましくは、配管181−1〜6から散布される水がフィルタ111−1〜10の全体に供給できる位置に、配管181−1〜6が設置されることが好ましい。
図2に示すように、配管181−1〜6は、清浄ガス空間130の中心軸(ガス移動方向に沿った中心軸)上に配置されていることが好ましい。第3散布部180は、上記中心軸に沿って複数の配管181を配列する構成としても良い。また、配管181は、フィルタの洗浄が可能であればノズルは空間清浄ガス空間130側(下方)に向けられて設置されても良いし、フィルタ111−1〜10側に向けられても良い。
【0052】
第3散布部180の配管181−1〜6の他端部はケーシング110を貫通する。ケーシング110の外側において配管181−1〜6は合流し、合流した後の配管が水タンク151に接続する。合流後の配管にポンプ182が設置される。ケーシング110の外側において、各配管181−1〜6にバルブV3が設けられる。ポンプ182及びバルブV3は制御部190に接続する。
【0053】
第1実施形態のガス処理システムを用いたガス処理方法を以下で説明する。
石炭などの硫黄分を含有する燃料がボイラ11で燃焼され、SOx(SO
2、SO
3)及び煤塵を含むガスが生成する。
【0054】
<集塵工程>
ガスはエアヒータ12での熱交換により冷却された後、集塵装置13に搬送される。集塵装置13により煤塵が除去された後、SOxを含むガスが脱硫装置100に搬送される。
【0055】
<吸着工程>
制御部190はバルブV1,V2,V3を閉鎖し、ポンプ162,172,182を停止する。従って、第1散布部160、第2散布部170及び第3散布部180からケーシング110内に水は散布されていない。
図2では、全てのフィルタ111に対して水の散布が行われていない例を示している。
【0056】
SOxを含むガスは、
図2に示すケーシング110の下部からケーシング110内に導入される。ガスはケーシング110内を上方に向かって流通し、フィルタ支持材112の孔を通過してフィルタ111−1〜10に到達する。ガスがフィルタを透過する際に、SOxがフィルタ表面に吸着される。集塵装置13で捕集できなかった煤塵や水銀等がガス中に含まれる場合、煤塵や水銀等はフィルタ111−1〜10に吸着されてガスから除去される。
【0057】
フィルタ111−1〜10を通過しSOxが除去された清浄ガスは、ケーシング110上方に向かって流通する。清浄ガスはケーシング110から排出され、煙道を通じて煙突からガス処理システム10の系外(大気)に排出される。
【0058】
<洗浄工程>
吸着工程を継続することにより活性炭表面に吸着するSOxが増加し、脱硫効率が低下する。所定時間経過後、あるいは、脱硫装置100下流側でのSOx濃度計測値が規制値を超える場合に、洗浄工程が実施される。
【0059】
図4は洗浄工程を説明するタイミングチャートの例であり、各ノズルの開度及びフィルタ下流側の空間内の温度を示す。
図5は洗浄工程を説明する概略図であり、フィルタ111−2,111−3を洗浄している場合を示している。
【0060】
以下では、
図5の紙面左側から順に洗浄工程を実施する場合を例に挙げる。ノズル1−1、ノズル1−2は、配管161−1、配管161−2に設置されるノズルである。ノズル2−1、ノズル2−2、ノズル2−3はそれぞれ、配管171−1、配管171−2、配管171−3に設置されるノズルである。ノズル3−1、ノズル3−2は、配管181−1、配管181−2に設置されるノズルである。
図5において、紙面左側から順に、清浄ガス空間130−1、130−2と称する。
【0061】
制御部190はポンプ162を起動し、第1散布部160のノズル1−1が設置される配管161−1のバルブV1を開放する。これにより、水タンク151中の水がノズル1−1からケーシング110内に散布される。散布された水は気化することによりガスを冷却する。ノズル1−1からの水散布により、清浄ガス空間130−1内の温度(ガス温度)が水露点温度付近(水露点(約50度)から水露点+10℃程度の範囲)まで冷却される。
【0062】
本実施形態では、
図4に示すようにバルブV1の開度が徐々に大きくする。脱硫装置100に導入されるガス温度は100〜150℃である。洗浄工程開始直後に第1散布部160から多量の水が散布されると、ガス温度及び部材温度が急激に低下し、フィルタ支持材112、フィルタ111−1などが熱変形を受ける恐れがある。そこで。こうすることにより、水の散布量を徐々に増加させて、部材の熱変形を防止する。第1散布部160からの水散布により水露点温度付近まで冷却することにより、この後に噴霧される洗浄水による部材の急激な熱変形が防止される。また、後述するフィルタ111−1を洗浄する水の蒸発が防止される。
【0063】
制御部190は、清浄ガス空間130−1内の温度(ガス温度)を監視する。例えば、清浄ガス空間130−1内の温度が公知の方法により計測され、温度値が制御部190に送信される。清浄ガス空間130−1内の温度が水露点温度付近の所定温度に到達すると、制御部190はポンプ172を起動し、第2散布部170のノズル2−1が設置される配管171−1のバルブV2を開放する。これにより、水タンク151中の水がノズル2−1からフィルタ111−1に向かって散布される。
図4では、ノズル2−1からの水散布の影響で、清浄ガス空間130−1内のガス温度が更に冷却され、水露点温度に到達している。
【0064】
ガス温度をリアルタイムで監視する代わりに、制御部190には予め取得された第1散布部160のノズルからの散布流量と冷却後のガス流量との相関が格納されていても良い。当該相関は、第1散布部160のノズルからの散布流量、ガス流量及び脱硫装置100に導入されるガス温度を用いて算出される。この場合制御部190は、第1散布部160のノズル1−1からの散布流量が所定量を超えた場合に、清浄ガス空間130−1内のガス温度が上述の水露点付近の温度に到達したと判定し、ポンプ172の起動及び配管171−1のバルブV2の開放を行う。
【0065】
バルブV2の開放から所定時間遅れて、制御部190はポンプ182を起動し、第3散布部180のノズル3−1が設置される配管181−1のバルブV3を開放する。これにより、水タンク151中の水がノズル3−1から清浄ガス空間130−1内に散布される。
【0066】
図5のようにフィルタ111−1〜10はV字型に組み合わされているので、ノズル2−1から散布された水は主としてフィルタ支持材112側を通って下方に流れる。また、ノズル3−1から散布された水はフィルタ111−1のガス下流側の面に付着し、フィルタ内を経由してノズル2−1から散布される水と合流して、フィルタ支持材112−1およびその面に接する部分に一様な水膜を形成する。ノズル2−1から散布される水量は、確実にフィルタ支持材112−1の全面に水が流れて水膜を形成するように調整される。ノズル3−1からの水散布によってフィルタ111−1の全面を確実に水洗することを保証する役割を果たすように、ノズル3−1からの散布水量が調整される。ノズル2−1及びノズル3−1からの散布水量は、フィルタ面積、ガス流量等を考慮して決定される。
【0067】
このように、フィルタ支持材112−1の全面に水膜が形成されると、ガスはフィルタ111−1を透過することができず空間130−1へのガスが遮断され、フィルタ111−1全体が洗浄される。フィルタ111−1のガス遮断により、フィルタ111−1に向かうガス流量が低下する。水膜の形成が不十分であると、水膜が形成されていない部分で洗浄が行われず、フィルタの再生が不十分となる。
【0068】
フィルタ111−1に吸着されたSOxと、フィルタ111−1を流れる水とが反応して、硫酸(H
2SO
4)及び亜硫酸(H
2SO
3)が生成する。硫酸及び亜硫酸は水に溶解する。下部固定部材114はフィルタ111−1を流れた硫酸及び亜硫酸を含む水を受け入れる。
【0069】
ノズル2−1及びノズル3−1からの散布時間は、硫酸及び亜硫酸がフィルタから除去できる期間で実施される。散布時間は例えば、試運転時や洗浄工程中に下部固定部材114で回収された水の分析結果から設定される。まず、バルブV3が閉鎖され、ポンプ182が停止されて、ノズル3−1からの散布が停止される。その後、バルブV2が閉鎖され、ポンプ172が停止されてノズル2−1からの散布が停止される。ノズル2−1及び3−1からの水散布が停止されると、フィルタ111−1表面の水膜が消失し、フィルタ111−1をガスが流通可能となる。
【0070】
その後、バルブV1が徐々に閉じられ、ノズル1−1からの散布水量が徐々に低下される。こうすることにより、
図4に示すように清浄ガス空間130−1内の温度が徐々に上昇する。このため、部材がガスにより急激に加熱されて熱変形が発生することが防止される。バルブV1が閉鎖されてフィルタ111−1の洗浄工程が終了し、フィルタ111−1が再生する。
【0071】
フィルタ111の洗浄は1つずつ実施されても良いし、複数のフィルタ111の洗浄が同時に実施されても良い。
【0072】
一方、他のフィルタ111−2〜−10では上述の吸着工程が実施されている。
図5を参照すると、第1散布部160の配管161−1はフィルタ111−1及び111−2に対応している。フィルタ111−1の洗浄時に第1散布部160のノズル1−1から水が散布されると、冷却されたガスがフィルタ111−2にも到達することになる。清浄ガス空間130−2にはフィルタ111−2を通過するガスとフィルタ111−3を通過するガスとが流入する、このため、ノズル1−1から水散布されている間、清浄ガス空間130−2のガス温度も低下する。但し、空間130−2にはフィルタ111−2及びフィルタ111−3からのガスが到達する。配管161−1に設置されるノズル1−1から水が噴霧されているのでフィルタ111−2には冷却されたガスが到達するが、配管161−2に設置されるノズル1−2からは水が散布されていないため、フィルタ111−3には高温のガスが到達する。このため、空間130−2のガス温度は空間130−1のガス温度よりも高くなる。
【0073】
図4及び
図5は、フィルタ111−1の洗浄工程に続いて2つのフィルタ111−2、111−3を洗浄する場合を示している。フィルタ111−2及びフィルタ111−3は、清浄ガス空間130−2を形成している。
【0074】
制御部190は、第1散布部160の配管161−1及び161−2のバルブV1を開放する。上記で説明したように、各バルブV1の開度を徐々に大きくする。
【0075】
ノズル1−1及びノズル1−2からの散布により清浄ガス空間130−2内の温度が水露点温度付近に到達すると、制御部190はポンプ172を起動し、第2散布部170の配管171−2及び配管171−3のバルブV2を開放する。これにより、水タンク151中の水がノズル2−2からフィルタ111−2に向かって散布され、ノズル2−3からフィルタ111−3に向かって散布される。これにより、空間130−2内のガス温度が水露点に到達する。バルブV3の開放から所定時間遅れて、制御部190はポンプ182を起動し、第3散布部180の配管181−2のバルブV3を開放する。これにより、水タンク151中の水がノズル3−2から清浄ガス空間130−2内に散布される。
【0076】
第2散布部170及び第3散布部180から散布された水によって、フィルタ111−2及びフィルタ111−3に水膜が形成され、ガスの通過が遮断される。フィルタ111−2及びフィルタ111−3に付着したSOxと水とが反応して硫酸及び亜硫酸が生成する。硫酸及び亜硫酸を含む水はフィルタ111−2,111−3を流れ、下部固定部材114が硫酸及び亜硫酸を含む水を受け入れる。
【0077】
フィルタ111−2,111−3の洗浄中、他のフィルタ111−1,111−4〜111−10での吸着工程が実施される。
【0078】
所定時間経過後、上記と同様の工程でノズル2−2、ノズル2−3、及び、ノズル3−2からの水散布が停止される。その後、バルブV1が徐々に閉じられ、ノズル1−1及びノズル1−2からの水散布が停止され、フィルタ111−2及び111−3の洗浄工程が終了する。
【0079】
図4に示すように、フィルタ111−2の洗浄中は、洗浄工程が行われた後のフィルタ111−1にはノズル1−1からの水散布により冷却された到達することになる。このため、空間130−1のガス温度は水露点付近(水露点(約50度)から水露点+10℃程度の範囲)となる。
フィルタ111−2の洗浄が終了すればノズル1−1からの水散布は停止されるので、フィルタ111−1は100〜150℃の高温ガスに曝される。これにより、洗浄工程後のフィルタ111−1が乾燥されて、フィルタ111−1の活性炭または活性炭素繊維表面へSOxが吸着するようになる。
同様に、洗浄が終了したフィルタ111−2及びフィルタ111−3は、吸着工程が再開されて高温ガスがフィルタ111−2,111−3に到達することによって乾燥される。フィルタ111−2,111−3が乾燥されると、活性炭または活性炭素繊維にSOxが吸着するようになる。
【0080】
図6は洗浄工程のタイミングチャートの別の例である。十分にガスが冷却され、部材の熱変形が発生する懸念がない場合には、第1散布部160からの水散布は、第2散布部170から水散布が行われている間に停止されることができる。ノズル1−1,1−2からの水散布は、
図6の例のようにノズル3−1,3−2からの水散布前に停止されても良く、ノズル3−1,3−2からの水散布開始後に停止されても良い。
【0081】
例えばフィルタ111−1の洗浄においてノズル1−1からの水散布が停止されても、ノズル2−1及びノズル3−1からの水散布の影響により、清浄ガス空間130−1のガス温度は上昇せず、水露点近傍の温度に維持される。
【0082】
一方、フィルタ111−1の洗浄中において、空間130−2はノズル1−1からの水散布の影響によりガス温度が低下するが、フィルタ111−3を通過した高温のガスが到達するので、空間130−1のガス温度よりも高くなる。フィルタ111−1の洗浄中にノズル1−1からの水散布が停止されると、冷却されていないガスがフィルタ111−2を通過することになるので、清浄ガス空間130−2の温度が急激に上昇する。
【0083】
フィルタ111−2及びフィルタ111−3の洗浄中において、空間130−1にはノズル1−1からの水散布の影響により冷却されたガスが到達することになるので、
図6に示すように空間130−1中のガス温度は水露点温度付近まで冷却される。そしてノズル1−1からの水散布が停止されると清浄ガス空間130−1の温度が急激に上昇する。
【0084】
上述のように第1散布部160からの水散布を制御すると、洗浄工程で使用される水量を削減することが可能である。
【0085】
<硫酸処理工程>
下部固定部材114が受け入れた硫酸及び亜硫酸を含む水は、下部固定部材114及び下部固定部材114に接続する配管を経由して硫酸処理装置20に搬送される。
【0086】
硫酸及び亜硫酸を含む水は、まず吸収剤充填槽21に搬送される。吸収剤充填槽21に吸収剤として石灰石(CaCO
3)が投入されて、排水中に石灰石が溶解しながら排水が貯留槽22に搬送され貯留される。循環ライン23を介して貯留槽22内の水を吸収剤充填槽21に循環させることにより、石灰石の溶解効率が向上する。上記の過程で、石灰石と硫酸及び亜硫酸とが反応して、硫酸カルシウム(CaSO
4)及び亜硫酸カルシウム(CaSO
3)が生成する。亜硫酸カルシウムの一部は空気酸化され、硫酸カルシウムとなる。吸収剤充填槽21及び貯留槽22では石灰石の投入量により排水のpHが中性程度に調整されていることが好ましい。
【0087】
硫酸カルシウム及び亜硫酸カルシウムは水に対して難溶性である。粒径の小さい硫酸カルシウム及び亜硫酸カルシウムは貯留槽22の水中に浮遊するが、ある程度の大きさに成長した硫酸カルシウム及び亜硫酸カルシウムは貯留槽22の底部に沈殿する。沈殿した硫酸カルシウム及び亜硫酸カルシウムはスラッジとして回収される。
【0088】
<硫酸カルシウム送給工程>
石膏搬送部30が設置される場合は、搬出部31が硫酸カルシウム及び亜硫酸カルシウムを含む水を貯留槽22から反応槽34に搬出する。反応槽34に貯留された水にエアが供給され、水中に含まれる亜硫酸カルシウムが完全に酸化される(すなわち、硫酸カルシウムとなる)。また、反応槽34に工業用水が供給されて、水中の硫酸カルシウム濃度が調整されても良い。
【0089】
硫酸カルシウムを含む水は送給部35により反応槽34から排出され、集塵装置13の上流側煙道でガス中に噴霧される。この煙道中は高温(100〜150℃)のガスが流通しているため、噴霧された液滴から水が蒸発し、固形分(硫酸カルシウム)が析出する。析出した硫酸カルシウムは、集塵装置13で煤塵とともに捕集される。従って、石膏搬送部30を設けることにより、ガス処理システム10の排水量を低減することができる。
【0090】
なお、上記の硫酸処理装置20や石膏搬送部30を設けずに、脱硫装置100からの硫酸及び亜硫酸を含む排水が、集塵装置13で捕集された煤塵を貯蔵する灰捨て場に直接搬送されても良い。こうすることにより、煤塵により硫酸及び亜硫酸を中和することができ、ガス処理に必要な薬剤量を低減させることができる。
【0091】
<第2実施形態>
図7は第2実施形態に係る脱硫装置の概略図である。
図2,3と同じ構成には同じ符号を付す。
第2実施形態の脱硫装置200の洗浄部210は、水供給部として水タンク151と循環水タンク211とを有する。下部固定部材114及び第2散布部170が循環水タンク211と接続する。循環水タンク211は、配管212を介して水タンク151に接続する。配管212にはバルブV4が設置される。また、循環水タンク211は配管を介して硫酸処理装置20に接続する。上記以外の構成は第1実施形態と同じである。
【0092】
第2実施形態の脱硫装置200を用いたガス処理方法は、洗浄工程が循環工程を備える点で第1実施形態と異なる。
【0093】
循環工程では、制御部190がポンプ172を起動して配管171のバルブV2を開放する。これにより、循環水タンク211中の水が配管171を通じて第2散布部170に搬送され、第2散布部170のノズルからフィルタ111に向かって散布される。循環水タンク211中には下部固定部材114を経由して回収された、硫酸及び亜硫酸を含む水が貯留される。従って、第2実施形態では、硫酸及び亜硫酸を含む水を用いて、フィルタ111に液膜を形成してガスの流れが遮断される。
【0094】
このように洗浄液を循環利用すれば、脱硫装置200から排出される排水量を削減することができる。但し、第2実施形態の場合、硫酸及び亜硫酸を含む水を洗浄に用いているので、例えばフィルタ支持材112などの金属部材が腐食される恐れがある。そこで、腐食対策として、循環水タンク211に貯留される水のpHを管理すること、第2散布部170からの水供給量を調整するなどが実施される。循環水タンク211中に貯留される水のpHは、水タンク151から工業用水を供給すること等により調整される。
【0095】
なお、脱硫装置200の運転初期で循環水タンク211に十分な量の水が貯留されていない場合は、制御部190はバルブV4を開放し、水タンク151中の工業用水を循環水タンク211を経由して第2散布部170に送給する。
【0096】
循環水タンク211に貯留された硫酸及び亜硫酸を含む水は、硫酸処理装置20に搬送され、第1実施形態と同様の硫酸処理工程や硫酸カルシウム送給工程が実施される。