【課題】別途のクランプ装置が不要であり、クランプ力発生範囲の全域にわたって略一定のクランプ力でワークをクランプでき、しかも装置の小型軽量化を図ることができる溶接ガンを提供する。
【解決手段】溶接ガン10Aは、駆動部14の出力部の直線変位をクランプアーム16の回動変位へと変換する駆動力伝達機構18を備える。駆動力伝達機構18は、出力部の直線変位と一体的に変位するとともに出力部の変位方向に対して傾斜した傾斜部94と、傾斜部94によって押圧される被押圧部96とを有する。クランプアーム16は、変位する傾斜部94によって押圧される被押圧部96の移動に伴って回動し、クランプ力を発生する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る溶接ガンについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る溶接ガン10Aの斜視図である。
図2は、溶接ガン10Aのクランプ時の一部断面図である。
図3は、溶接ガン10Aの分解斜視図である。
【0019】
この溶接ガン10Aは、中空状のボディ12と、ボディ12の端部に設けられた駆動部14と、ボディ12に対して回動自在に設けられるクランプアーム16と、駆動部14の軸方向(矢印A、B方向)に沿った駆動力をクランプアーム16へと伝達する駆動力伝達機構18と、クランプアーム16に取り付けられた可動側電極20(第1電極)と、可動側電極20との間でワークWを把持する固定側電極22(第2電極)とを含む。
【0020】
ボディ12は、例えば、所定幅寸法で断面略長方形状に形成され、その内部には収容室24が形成される。収容室24は、ボディ12の一端部(矢印A側の端面12a)に設けられた開口部23にて開口しており、当該開口部23を閉塞するように駆動部14が連結される。該開口部23と略直交した側面12bには、収容室24に連通し、支持体28が連結される連結孔25が開口している。収容室24には駆動力伝達機構18が収納される。
図3に示すように、ボディ12には、連結孔25の開口方向と略直交する側面12cに一組のボルト孔26が形成されている。
【0021】
ボディ12の側面12bには、断面略T字状の支持体28が着脱自在に設けられている。この支持体28は、ボディ12の側面12bに対して側方に突出するように設けられ、ボディ12に対して水平方向(矢印C方向)に突出した支持部30と、支持部30に対して略直交して下方(矢印A方向)へと延在した取付部32とを有する。
【0022】
支持部30は、例えば、所定長さで一直線状に形成される。支持部30にはその一端部に形成された取付孔34を介して、電極ユニット36が着脱可能に固定される。電極ユニット36は、固定側電極22と、固定側電極22を保持する電極ホルダ38とを有しており、通電ケーブル40の一端が接続される。固定側電極22は、支持部30から上方(矢印B方向)に突出するように設けられる。
【0023】
支持部30の他端部には、側方に向かって開口した一組の固定用ねじ孔44が形成されている(
図3参照)。すなわち、固定用ねじ孔44は、取付孔34と略直交するように形成される。組立工程において、支持部30は、その他端部がボディ12の側面12bに開口した連結孔25へと挿入された後、ボディ12のボルト孔26を通じて固定用ねじ孔44に固定用ねじ46が挿入され螺合されることで支持体28がボディ12に対して固定される。
【0024】
取付部32は、例えば、支持部30の長手方向(矢印C方向)に沿った略中央部に形成され、該支持部30に対して所定長さだけクランプアーム16とは反対方向(矢印A方向)へと突出するように形成される。取付部32の端部には支持部30と略平行に貫通した取付用ねじ孔48が形成される。この取付用ねじ孔48は、溶接ガン10Aを製造ライン等で使用する際、他の部材に固定するために設けられている。
【0025】
駆動部14は、例えば、
図2に示されるように、軸方向(矢印A、B方向)に貫通するシリンダ孔50が形成された筒状のシリンダチューブ52と、該シリンダチューブ52の内部(シリンダ孔50)に軸方向に変位自在に設けられるピストン54と、ピストン54に連結されるピストンロッド56と、シリンダ孔50の一端部(
図2で下端部)に配置されたキャップ58と、シリンダ孔50の他端部(
図2で上端部)に配置されピストンロッド56を変位自在に支持するロッドカバー60とを有する。
【0026】
シリンダチューブ52は、その一端部がボディ12の端面に当接するように設けられる。
図1に示すように、シリンダチューブ52には、軸方向に沿って貫通した一対の貫通孔61が形成されており、当該貫通孔61の各々に挿通された締結ボルト62がボディ12に対して螺合されることで駆動部14がボディ12に対して連結される。
【0027】
シリンダ孔50の一端部(矢印A側の端部)には、例えばプレート状のキャップ58が気密に装着されることによって、シリンダ孔50の一端部が塞がれている。シリンダ孔50の他端部(矢印B側の端部)には、ロッドカバー60が気密に装着されることによって、シリンダ孔50の他端部が塞がれている。シリンダ孔50において、ピストン54とキャップ58との間に第1圧力室64が形成され、ピストン54とロッドカバー60との間に第2圧力室65が形成される。
【0028】
図2に示すように、シリンダチューブ52の一側面には、圧力流体(気体又は液体)が供給及び排出されるクランプ用ポート66及びアンクランプ用ポート68が、シリンダチューブ52の軸方向と直交するように形成される。
【0029】
クランプ用ポート66及びアンクランプ用ポート68には、例えば、図示しない配管を介して圧力流体の供給状態を切り換える流路切換装置が接続される。そして、クランプ用ポート66又はアンクランプ用ポート68に圧力流体が選択的に供給されることによって、ピストン54及びピストンロッド56が軸方向に駆動される。具体的には、クランプのために、クランプ用ポート66に圧力流体が供給され、アンクランプのために、アンクランプ用ポート68に圧力流体が供給される。
【0030】
クランプ用ポート66は第1圧力室64に連通し、アンクランプ用ポート68は第2圧力室65に連通する。従って、クランプ用ポート66へと供給された圧力流体は第1圧力室64へと導入される。また、アンクランプ用ポート68へと供給された圧力流体は第2圧力室65へと導入される。
【0031】
図1に示すように、シリンダチューブ52の幅方向(矢印D方向)両側の各側面には、軸方向に沿って延在するセンサ取付溝70がそれぞれ形成される。センサ取付溝70には、磁気センサ72が着脱可能に装着される。なお、
図1では、シリンダチューブ52の各側面につき1本のセンサ取付溝70が形成されているが、各側面につき複数本のセンサ取付溝70が形成されてもよい。
【0032】
図2に示すロッドカバー60は、環状の部材であり、シリンダ孔50の他端部に固定されており、その内周部において、ピストンロッド56を軸方向に変位自在に支持する。ロッドカバー60の外周部に装着された外側シールリング73によって、ロッドカバー60とシリンダチューブ52(シリンダ孔50の内周面)との間を通じた圧力流体の外部への漏れが防止される。
【0033】
ピストンロッド56は、ロッドカバー60の中心に軸方向に貫通形成されたロッド孔70aに挿通される。ロッドカバー60の内周部に装着された内側シールリング74によって、ロッドカバー60とピストンロッド56との間を通じた圧力流体の外部への漏れが防止される。
【0034】
ピストン54は、ロッド孔18aを有する中空状の部材であり、カシメやボルト等の適宜の固定手段によって、ピストン54の一端側に固定される。ピストン54の外周部に装着された環状のパッキン76によって、ピストン54とシリンダチューブ52(シリンダ孔50の内周面)との間を通じた圧力流体の外部への漏れが防止される。
【0035】
また、ピストンロッド56には、ピストン54に隣接してマグネットホルダ78が配置される。マグネットホルダ78に形成された環状のマグネット溝79にマグネット80が装着される。溶接ガン10Aの使用時、シリンダチューブ52に取り付けられた磁気センサ72でマグネット80の磁気を検出することにより、ピストン54の軸方向の位置を検知することができる。
【0036】
ピストンロッド56は、ロッドカバー60によって軸方向(矢印A、B方向)に往復移動可能に支持される。ピストンロッド56の他端部(ピストン54が連結される側とは反対側の端部)には、環状に窪んだ首部82と、該首部82に対して拡径して先端に形成された拡径部83とを有した連結部84が形成される。なお、首部82及び拡径部83は、それぞれ異なる直径を有した断面円形状に形成される。
【0037】
駆動力伝達機構18は、
図2に示すように、ボディ12の収容室24に設けられ、ピストンロッド56の他端部に連結されるジョイント86と、ジョイント86の上部に回転自在に設けられる一対のガイドローラ88と、ガイドローラ88とともにジョイント86に軸支されるリンクアーム90と、リンクアーム90とクランプアーム16とを接続するレバーアーム92とを含む。
【0038】
ジョイント86は、断面略長方形状に形成され、その下端部にはピストンロッド56の連結部84が連結される連結凹部86aが形成される。この連結凹部86aは、ジョイント86の端面側(矢印A方向)及び一側面側に開口するように形成され、該端面側に形成された小径部及び大径部とからなる。
【0039】
そして、ジョイント86の連結凹部86aにピストンロッド56の他端部が連結される際、その小径部にピストンロッド56の首部82が係合され、大径部に前記ピストンロッド56の拡径部83が係合される。
【0040】
一方、ジョイント86の上部には、
図2に示されるように、クランプアーム16に臨む側面には、ピストンロッド56の変位方向(軸方向)に対して傾斜し、上端部に向かって徐々に先狭状となる傾斜部94が形成される。傾斜部94には、クランプアーム16がアンクランプ状態(
図4参照)からクランプ状態(
図2参照)へと回動する際に、レバーアーム92に設けられた被押圧部96が当接する。
【0041】
ガイドローラ88は、ボディ12の内面に軸方向に沿って形成されたローラ溝95に配置されることで、ジョイント86が移動する際に鉛直方向(矢印A、B方向)に沿って案内される。
【0042】
ジョイント86には、駆動部14の軸方向に対して垂直な方向(C方向)に延在するリンク溝98が形成される。ガイドローラ88及びリンクアーム90は、リンク溝98に配置された軸部99を介して、ジョイント86に回動自在に支持される。軸部99は、矢印C方向に沿ってリンク溝98内を移動可能である。従って、ガイドローラ88及びリンクアーム90の一端部は、矢印C方向に所定距離だけ移動自在である。
【0043】
リンクアーム90は、ピストンロッド56の変位方向に対して交差する方向(本実施形態では、ピストンロッド56の変位方向に対して直交する方向)に変位可能であり、且つジョイント86に対して回動可能に支持される。リンクアーム90は、ジョイント86の上部とレバーアーム92との間に接続される。リンクアーム90とレバーアーム92とは、リンクピン100を介して互いに回動可能である。リンクアーム90は、ピストンロッド56の直線運動をジョイント86を介してクランプアーム16の回動運動へと変換する。
【0044】
レバーアーム92は、軸部102を介してボディ12に回転自在に支持されるとともに、リンクアーム90とクランプアーム16の一端部とを接続する。レバーアーム92の途中には被押圧部96が設けられる。本実施形態において具体的には、被押圧部96は、レバーアーム92に回転可能に支持されたサブローラ97である。
【0045】
サブローラ97は、ジョイント86に設けられた傾斜部94に押圧される部材であり、ジョイント86の軸方向への変位に伴って傾斜部94に当接して回転する。レバーアーム92とクランプアーム16とは、断面矩形状の係合ピン104(
図1参照)を介して、互いに相対回転不可能に連結される。
【0046】
上述のように、クランプアーム16は、ボディ12に対して回動可能に支持されるとともにレバーアーム92に対して回転不可能に連結されており、当該レバーアーム92には、傾斜部94によって押圧される被押圧部96が設けられる。この構成により、クランプアーム16は、ピストンロッド56と一体的に変位する傾斜部94によって押圧される被押圧部96の移動に伴って回動し、クランプ力を発生する。
【0047】
クランプアーム16は、
図1〜
図3に示されるように、例えば、ボディ12の両側に配置された一対のアーム部106と、アーム部106の他端部同士を連結する連結体108とを有し、断面U字状を呈する。
【0048】
アーム部106の一端部(回動中心側の端部)は、ボディ12の一側面及び他側面と直交した両側面にそれぞれ形成された窪み部110に収容される。窪み部110は、ボディ12の前記両側面に対してアーム部106の厚さ分だけ内側に窪んで形成されている。そのため、アーム部106がボディ12の両側面から外側に突出することがなく収納される。アーム部106は、ボディ12の両側で、間隔をおいて互いに平行に対向して配置される。
【0049】
図3に示すように、アーム部106の一端部には、断面矩形状の係合ピン104が挿入される支持孔112が形成される。アーム部106の他端部には、厚さ方向に貫通した挿通孔114が形成される。
【0050】
連結体108は、例えば、断面略長方形状のブロック体からなる。この連結体108は、本体部116と、該本体部116に対して幅方向にそれぞれ突出した一対の鍔部118とを有する。本体部116には幅方向と直交する方向に沿って取付孔120が形成されるとともに、アーム部106に臨む両側面にはそれぞれ固定用ねじ孔122が形成されている。
【0051】
本体部116は、2つのアーム部106間に配置されるとともに、各アーム部106の先端部に形成された段部115に鍔部118が配置された状態で、アーム部106の挿通孔114に挿通された固定用ねじ117が固定用ねじ孔122へとそれぞれ螺合される。これにより、一組のアーム部106の間に連結体108が一体的に連結される。固定用ねじ117を緩めると、アーム部106から連結体108を取り外すことができる。すなわち、連結体108は、アーム部106に対して着脱自在である。
【0052】
連結体108には、取付孔120を介して電極ユニット124が着脱可能に固定される。電極ユニット124は、可動側電極20と、この可動側電極20を保持する電極ホルダ126とを有しており、通電ケーブル128の一端が接続される。可動側電極20は、連結体108から突出するように設けられる。
【0053】
固定側電極22及び可動側電極20は、
図2に示されるワークWのクランプ時において対峙するように設けられる。従って、クランプアーム16が所定角度だけ回動したクランプ状態において、固定側電極22と可動側電極20との間にワークWがクランプされる。
【0054】
図1〜
図3に示すように、溶接ガン10Aには、クランプ解除機構130が設けられてもよい。クランプ解除機構130は、ボディ12の上部に内部まで貫通した孔部132と、孔部132を閉塞可能な開閉蓋134とを有する。
【0055】
このクランプ解除機構130では、ジョイント86の上面に臨むようにボディ12に孔部132が貫通して形成され、孔部132を通じて図示しない作業者が治具等でジョイント86を駆動部14側(矢印A方向)へと押圧することが可能である。
【0056】
開閉蓋134は、例えば、略矩形状に形成され、その角部がボディ12の上面に対して蓋固定用ボルト136で支持されることで、蓋固定用ボルト136を支点として回転自在に設けられている。クランプ解除機構130を使用しない場合には、開閉蓋134によって孔部132を閉塞することで塵埃やスパッタ等が該孔部132を通じてボディ12の内部へと進入することが防止される。一方、開閉蓋134を移動させ孔部132を開放することで、孔部132を通じてクランプ状態の解除を行うことができる。
【0057】
本実施形態に係る溶接ガン10Aは、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、以下の説明においては、
図4に示すアンクランプ状態を初期位置として説明する。
【0058】
溶接ガン10Aの初期位置において、アンクランプ用ポート68に圧力流体が供給され、ピストン54が下降することで駆動力伝達機構18を介してクランプアーム16が、支持体28に対して略直交するように離間している。
【0059】
ます、
図4に示される溶接ガン10Aの初期位置から、図示しない切換装置の切換作用下に圧力流体をクランプ用ポート66へと供給し、アンクランプ用ポート68は大気開放状態とする。これにより、クランプ用ポート66から第1圧力室64へと導入された圧力流体によってピストン54がボディ12側(矢印B方向)に向かって押され、ピストン54及びピストンロッド56がボディ12側へと一体的に変位する。
【0060】
このピストンロッド56の変位に伴って、ローラ溝95に対するガイドローラ88のガイド作用下に、ジョイント86が駆動部14から離れる方向(矢印B方向)へと移動する。また、ジョイント86の移動に伴って、リンクアーム90がジョイント86に軸支された部位を支点として
図4で時計回りに回動しながら矢印B方向へと移動し始める。このリンクアーム90の移動に伴って、レバーアーム92が回動し、該レバーアーム92の回動によってクランプアーム16が軸部102を支点として時計回りに回動する(第1動作)。
【0061】
そして、ピストンロッド56の変位に伴ってジョイント86が矢印B方向へとさらに移動すると、やがてサブローラ97がジョイント86の傾斜部94に当接する。変位する傾斜部94によってサブローラ97は押圧され、これにより、レバーアーム92に連結されたクランプアーム16が支持部30に対して閉じる方向に回動する(第2動作)。これにより、
図2に示すように、クランプアーム16に取り付けられた可動側電極20がワークWへと当接し、固定側電極22と可動側電極20との間にワークWが挟持されたクランプ状態となる。
【0062】
このように、クランプアーム16を閉じる際の溶接ガン10Aの動作は、ジョイント86の直線変位がリンクアーム90を介してクランプアーム16の回動変位へと変換されて伝達される第1動作と、ジョイント86の直線変位が傾斜部94及び被押圧部96を介してクランプアーム16の回動変位へと変換されて伝達される第2動作とを有する。溶接ガン10Aは、傾斜部94及び被押圧部96の作用下にクランプアーム16を回動させる第2動作の範囲において、クランプ力を発生する。
【0063】
そして、固定側電極22と可動側電極20との間でワークWをクランプしたら、クランプ状態を維持したままた、固定側電極22及び可動側電極20を介してワークWに所定時間通電することにより、ワークWの通電箇所をスポット溶接する。この場合、例えば、ワークWの厚さは0.2mm以下(好ましくは0.15〜0.2mm)であり、クランプ力は100N程度(好ましくは、90〜110N)であり、溶接電流は2500〜4000Aであり、溶接電圧は6.3〜10Vであり、溶接時間は20〜80msである。
【0064】
溶接後、
図2に示されるワークWのクランプ状態を解除する場合には、図示しない切換装置の切換作用下にクランプ用ポート66へ供給されていた圧力流体をアンクランプ用ポート68へ供給するとともに、クランプ用ポート66を大気開放状態とする。このアンクランプ用ポート68へ供給された圧力流体が第2圧力室65へと導入されることで、ピストン54がボディ12から離間する方向(矢印A方向)へと押圧され、ピストン54とともにピストンロッド56が一体的に後退移動する。
【0065】
そして、ピストンロッド56の変位に伴って、ローラ溝95に対するガイドローラ88のガイド作用下に、ジョイント86がシリンダチューブ52側へと移動し、それに伴って、リンクアーム90がジョイント86に軸支された部位を支点として
図2で反時計回りに回動する。それに伴って、クランプアーム16がレバーアーム92を介して軸部102を支点として
図2で反時計回りに所定角度だけ回動する。これにより、クランプアーム16が支持体28から離間してワークWのクランプ状態が解除される。
【0066】
なお、クランプするワークWの形状の変更に応じて、溶接ガン10Aにおける支持体28及びクランプアーム16を交換してもよい。例えば、より大きなワークWを溶接ガン10Aでクランプし溶接する場合には、支持体28及びクランプアーム16をボディ12から取り外し、クランプアーム16をボディ12の代わりに、支持体28及びクランプアーム16よりも大きい(長い)別の支持体及びクランプアームをボディ12に連結すればよい。
【0067】
上記のように構成された溶接ガン10Aによれば、ワークWを電極間で所定のクランプ力でクランプするとともに、ワークWに通電して溶接をすることができる。従って、クランプ装置を別途設けることなく、溶接ガン10AのみでワークWのクランプと溶接の両方を実施することができる。よって、設備コストを低減できるとともに、比較的小型のワークWに対する溶接を実施しやすい。また、溶接ガン10Aによれば、ワークWをクランプするのと同時に溶接をすることができるため、別構成のクランプ装置と溶接ガンを用いる場合と比較して、サイクルタイムを短縮することができる。
【0068】
図5は、本実施形態に係る溶接ガン10Aのクランプ力の特性(ワーク厚さとクランプ力との関係)を示すグラフである。
図5の実線で示す特性曲線のように、傾斜部94の楔作用によってクランプ力を発生する溶接ガン10Aの場合、クランプ力発生範囲において、クランプ力は略一定である。すなわち、可動側電極20が取り付けられるクランプアーム16は、直線的に変位する傾斜部94によって押圧される被押圧部96の移動に伴って回動し、楔作用によってクランプ力を発生するため、クランプ力発生範囲の略全域にわたって、略一定のクランプ力を発生することができる。
【0069】
従って、この溶接ガン10Aによれば、ワーク厚さや電極摩耗量に関して対応可能な許容範囲が広い。このため、ワーク厚さの変更や電極20、22の摩耗が生じた場合でも、当該許容範囲内では部品の位置調整(電極ユニット36、124の位置調整)や部品交換(電極20、22の交換等)をすることなく、略一定のクランプ力でワークWをクランプすることができる。また、この溶接ガン10Aによれば、クランプ力発生範囲においてワーク厚さに対してクランプ力が略一定であるため、安定した溶接品質が得られやすいとともに、電極20、22の寿命の伸長化が期待できる。
【0070】
これに対し、動力伝達機構としてトグル機構によりクランプ力を発生する構成の場合、
図5において点線で示す特性曲線のように、クランプ力発生範囲においてクランプ力の変動が大きい。すなわち、ワーク厚さに対してクランプ力が一定ではない。このため、ワーク厚さや電極20、22の摩耗具合によってクランプ力が変動し、溶接にバラツキが生じるため、安定した溶接品質が得られにくい。あるいは、クランプ力を一定にするためには、ワーク厚さや電極20、22の摩耗具合に応じて部品の位置調整や電極の交換が必要である。
【0071】
さらに、本実施形態に係る溶接ガン10Aの場合、駆動部14の出力部(ピストンロッド56)の直線変位をクランプアーム16の回動変位に変換する過程で、被押圧部96に対する傾斜部94の押圧作用、すなわち楔作用によって、クランプ力発生範囲の略全域で駆動部14の駆動力が増幅される。従って、必要なクランプ力に対する駆動部14の駆動力が小さくて済むため、小型軽量の駆動部14を採用することができる。よって、溶接ガン10Aによれば、クランプ装置と溶接装置の機能を兼ね備えつつ、小型軽量化を図ることができる。
【0072】
溶接ガン10Aは、例えば、自動車用部品のうち、車体フレーム等の大型で板厚の厚い部品ではなく、比較的小型で板厚の薄い部品(例えば、排気系部品等)を溶接対象のワークWにすると好適である。例えば板厚0.2mm以下の薄いワークWを対象とする場合、必要なクランプ力及び電流も比較的小さくて済むため、傾斜部94の楔作用を利用することによる上記効果と相俟って、溶接ガン10Aの一層の小型軽量化が可能である。従って、例えば、溶接ガン10Aの全長を200mm以下(好ましくは150mm以下)、重量を1kg以下〜数kg程度とすることができ、ロボットを用いずに、作業員が持って取り扱うことも可能である。
【0073】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係る溶接ガン10Bの斜視図である。
図7は、溶接ガン10Bの一部断面図である。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の部分については、共通の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0074】
この溶接ガン10Bは、複数のピストン54を有する駆動部138を備える点で、ピストン54を1つだけ有する駆動部14を備える溶接ガン10Aと異なる。
【0075】
溶接ガン10Bの駆動部138は、軸方向(矢印A、B方向)に貫通するシリンダ孔140が形成された筒状のシリンダチューブ141と、該シリンダチューブ141の内部(シリンダ孔140)に軸方向に変位自在に設けられる複数のピストン54(第1ピストン54a、第2ピストン54b)と、複数のピストン54に連結されるピストンロッド142と、シリンダ孔140の一端部に配置されピストンロッド142を変位自在に支持するロッドカバー60と、シリンダ孔140の他端部を気密に閉じるキャップ58と、シリンダ孔140においてロッドカバー60とキャップ58との間に配置された仕切部材144とを有する。
【0076】
シリンダチューブ141は、その一端部がボディ12の端面に当接するように設けられる。
図6に示すように、シリンダチューブ141には、軸方向に沿って貫通した一対の貫通孔146が形成されており、当該貫通孔146の各々挿通された締結ボルト148がボディ12に対して螺合されることで駆動部138がボディ12に対して連結される。
【0077】
シリンダチューブ141は、軸方向に直列に連結された中空状の第1チューブ141aと第2チューブ141bとを有する。上記の貫通孔146は、第1チューブ141a及び第2チューブ141bを軸方向に貫通して形成される。貫通孔146に挿通された締結ボルト148がボディ12に螺合し、締結ボルト148の頭部とボディ12とによって第1チューブ141aと第2チューブ141bが挟圧されることにより、第1チューブ141aと第2チューブ141bとが連結固定される。
【0078】
シリンダ孔140のボディ12側の端部(第1チューブ141aのボディ12側の端部)にロッドカバー60が気密に配置される。ボディ12側とは反対側のシリンダ孔140の端部(ボディ12側とは反対側の第2チューブ141bの端部)にキャップ58が気密に配置される。
【0079】
仕切部材144は、第1チューブ141aと第2チューブ141bとの間に配置される。具体的には、仕切部材144の外周部に設けられた環状突起145が、第1チューブ141aと第2チューブ141bの連結側の端部内面に形成された環状凹部150に係合することで、仕切部材144が第1チューブ141a及び第2チューブ141bに対して固定される。
【0080】
仕切部材144の内周部には内周側シールリング152が装着され、仕切部材144の外周部には外周側シールリング154が装着されており、これにより、ピストン54の外周部と仕切部材144の内周部との間、及び仕切部材144の外周部とシリンダチューブ141の内周部との間がそれぞれ気密にシールされている。
【0081】
シリンダ孔140において、ロッドカバー60と仕切部材144との間に第1シリンダ室161が形成され、仕切部材144とキャップ58との間に第2シリンダ室162が形成される。第1ピストン54aは第1シリンダ室161に配置され、第2ピストン54bは第2シリンダ室162に配置される。
【0082】
シリンダチューブ141の側面には、クランプ用ポート66a、66bと、アンクランプ用ポート68a、68bとが形成される。一方のクランプ用ポート66aと一方のアンクランプ用ポート68aは、第1シリンダ室161と連通する。他方のクランプ用ポート66bと他方のアンクランプ用ポート68bは、第2シリンダ室162と連通する。クランプ用ポート66a、66b及びアンクランプ用ポート68a、68bは、それぞれ図示しない配管を介して圧力流体供給源に接続される。
【0083】
溶接ガン10Bの使用において、図示しない圧力流体供給源からクランプ用ポート66a、66b又はアンクランプ用ポート68a、68bに対して選択的に圧力流体が供給され、シリンダ孔140へと導入される。具体的には、クランプのために、クランプ用ポート66a、66bに圧力流体が供給され、アンクランプのために、アンクランプ用ポート68a、68bに圧力流体が供給される。なお、2つのアンクランプ用ポート68a、68bのうちいずれか一方にのみ圧力流体を供給することによっても、アンクランプすることができる。
【0084】
第1ピストン54a及び第2ピストン54bは、第1実施形態におけるピストン54と同様に構成され得る。
【0085】
ピストンロッド142は、第1ピストン54aが固定される第1ロッド142aと、第2ピストン54bが固定される第2ロッド142bとを有する。第1ロッド142aと第2ロッド142bとは、適宜の固定手段(例えば、ねじ嵌合等)により相互に連結固定される。第1ピストン54aは第1ロッド142aの端部に固定され、第2ピストン54bは第2ロッド142bの端部に固定される。
【0086】
上記のように構成された溶接ガン10Bにおいて、アンクランプ状態からクランプ状態へと切り換える場合、クランプ用ポート66a、66bへそれぞれ圧力流体を供給することで、第1ピストン54a及び第2ピストン54bが第1ロッド142a及び第2ロッド142bと一体的且つ同時にボディ12側(矢印B方向)に向かって変位することとなり、単一のピストン54を有した駆動部14と比較して、約2倍の推力が得られ、該推力に伴ってクランプアーム16によるクランプ力も増大させることができる。
【0087】
なお、3つ以上のピストン54及びシリンダ室を軸方向に間隔をおいて設けることで、推力をさらに増大させてもよい。
【0088】
第2実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0089】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。