パウチのシール部を収納部の一方のフィルム面側に折り曲げるパウチの折り曲げ加工方法において、搬送されるパウチの折り曲げ端部を局部的に加熱することを特徴とするパウチの折り曲げ加工方法。
パウチのシール部を収納部の一方のフィルム面側に折り曲げるパウチの折り曲げ加工装置において、パウチを搬送する搬送機構と、該搬送機構によって搬送されるパウチのシール部を収納部の一方のフィルム面側に折り曲げる折り曲げ機構と、該折り曲げ機構によって形成した折り曲げ端部を局部的に加熱する加熱機構と、を備えていることを特徴とするパウチの折り曲げ加工装置。
前記加熱機構は、折り曲げ機構によって形成した折り曲げ部の形状を維持する第1ガイド部、第2ガイド部、折り曲げ端部に当接する加熱用アウター金型、及びインナー金型を備えている請求項4に記載のパウチの折り曲げ加工装置。
前記インナー金型が、前記出口ガイドへ切り替えられ、前記出口ガイドは、角度が漸次減少し、折り曲げ部をパウチ収納部に接触するように折り曲げる請求項5または6に記載のパウチの折り曲げ加工装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、姿勢良く立たせたり、剛性を高めたり、掴んだ際の手触りを良くしたりするために、パウチのシール部を折り曲げたパウチが知られている。
このシール部を折り曲げる方法として、本出願人はすでに特許文献1に記載のような連続的な折り曲げ加工方法及び折り曲げ加工装置を提案している。
前記折り曲げ加工方法及び折り曲げ加工装置は、パウチを一方向に搬送する搬送機構と、搬送しながらパウチを折り曲げる金型を備えた折り曲げ機構と、折り曲げ部の形状を維持した状態で加熱する加熱機構と、によって構成されている。前記金型には、パウチのシール部を連続的に折り曲げる螺旋状の隙間が設けられ、前記隙間に侵入したシール部を、搬送方向に進むにつれて徐々に折り曲げて、出口側でパウチの収納部側へ折り返すようになっている。
【0003】
前記折り曲げ機構には、前記金型を加熱するヒータを有し、シール部全体を加熱して軟化させながら折り曲げて、さらに、加熱機構において、折り曲げ形状を維持した状態で、折り曲げ部とその近傍をさらに加熱して応力を緩和し、スプリングバックによる形状戻りを低減し、所定の折り曲げ形状を維持する構成となっている。
【0004】
しかしながら、この従来の方法では、前記加熱機構において、折り曲げ部とその近傍を広範囲で加熱していたため、軟化した折り曲げ部近傍が加熱金型の隙間の面との摩擦によって、パウチ表面にシワを発生する場合があった。
シワの発生を防止するために、加熱機構の加熱温度を下げると折り曲げ部のスプリングバックが大きくなってしまい、応力緩和させるためには加熱時間を長くする必要がある。また、高温で加熱すると、フィルムの組織が結晶化して白化するおそれや、パウチの折り曲げ形状を安定させるための冷却時間も長くなり生産効率が低下する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係るパウチ1は、
図1(A)に示すように、シール部がヒートシールされる前後一対の前面フィルム2Aと後面フィルム2Bを有し、このシール部4,4の間に収納部6が構成されている。ここでは、収納部6のシール部4,4が折り曲げられる側のフィルム面を後面、シール部4、4が見えなくなる側のフィルム面を前面としている。また、前面フィルム2Aと後面フィルム2Bの下端部には二つ折り状態で熱溶着される底面フィルム3が設けられ、前面フィルム2A,後面フィルム2Bと底面フィルム3が底部シール部3aにてヒートシールされている。前面フィルム2A、後面フィルム2Bの上端は開放され、内容物が充填された後にヒートシールされる。
なお、上述した前面フィルム2A,後面フィルム2B及び底面フィルム3は、一般的には、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン樹脂の軟質樹脂層と、ポリエステル,ナイロン等の硬質樹脂層が積層された積層フィルムが使用され、軟質樹脂層がヒートシールされている。
そして、
図1(B)、(C)に示すように、左右のシール部4、4が、収納部6の一方のフィルム面である後面フィルム2B側に折り曲げられている。
【0011】
このシール部4,4は直線的に伸びる折り曲げ予定線7aを境にして折り曲げられており、折り曲げ予定線7aは、
図1(D)に示すように、シール部4、4の内側縁4iから所定寸法だけ僅かに収納部6側に位置している。フィルムの厚みにもよるが、折り曲げ予
定線7aは、シール内側縁4iから2.5mm程度収納部側へ離れた位置が好ましい。
【0012】
折り曲げ部7は、
図1(C)に示すように、折り曲げ予定線7aで折り曲げられたシール部4が、収納部6を構成する後面フィルム2Bのフィルム面に面接触する形状となっている。そして、折り曲げ部7の外側縁に折り曲げ端部7bが形成される。
図示例では、左右のシール部4,4が、いずれも後面フィルム2B側に折り曲げられているが、前面側と後面側にそれぞれ別々に折り曲げてもよい。
【0013】
次に、本発明のパウチの折り曲げ加工方法について説明する。
本発明の折り曲げ加工方法は、外力を加えてシール部4を折り曲げる折り曲げ工程と、折り曲げ形状を維持した状態で折り曲げ端部7bを局部的に加熱して応力を緩和させ、折り曲げ部7の形状を保持させる加熱工程とを備えた加工方法である。
【0014】
折り曲げ工程は、
図2(A)、(B)に示すように、シール部4を折り曲げ予定線7aに沿って直線的に、収納部6に接触するまで折り曲げて折り曲げ部7を形成する。この折り曲げ部7は、折り曲げ加工金型を出るとスプリングバックによって、鋭角に折り曲げた形状となる。
【0015】
次工程の加熱工程は、
図2(C)に示すように、折り曲げ部7が鋭角に折り曲げられた状態から、ガイド部410によって折り曲げ形状を維持しながら、加熱用アウター金型420を折り曲げ端部7bに当接させて加熱する。ガイド部410は、折り曲げ部7外面を案内する第1ガイド411と、収納部6の前面フィルム2Aの側縁部を案内する第2ガイド412によって折り曲げ形状が維持される。
そして、パウチ1が搬送され、
図2(D)、(E)に示すように、折り曲げ部7を鋭角に折り曲げた形状から、収納部6まで折り曲げた形状まで、折り曲げ端部7bを加熱しながら折り曲げ角度を漸次減少させ、折り曲げ部7を形成する。
【0016】
また、折り曲げ端部7bの内側を加熱用インナー金型440で支持して加熱することで、応力緩和が効率的に進行する。そして、加熱用インナー金型440は一定区間パウチを加熱すると、後述する出口ガイド413(
図5(C)参照)に置き換えられ、出口ガイド413の角度を漸次減少させることで、最終的に折り曲げ部7を収納部6まで折り曲げる。
なお、加熱用インナー金型440に変えて、加熱を行わないインナー金型を用いて、折り曲げ部7の折り曲げ形状を内側から維持するだけでもよい。
【0017】
次に、本発明のパウチの折り曲げ加工装置の全体構成について説明する。
折り曲げ加工装置は、パウチ1を搬送する搬送機構20と、パウチ1を予熱するプレヒート機構10と、パウチ1のシール部4を折り曲げる折り曲げ機構30と、折り曲げ機構30によって形成した折り曲げ端部7bを局部的に加熱する加熱機構40と、加熱機構40の下流側に適宜配置される冷却機構50と、を備えている。
【0018】
プレヒート機構10は、
図3(B)に示すように、シール部4が通過する隙間11を有するプレヒート型12と、プレヒート型12を加熱するヒータ13とを有し、シール部4とその近傍を所定温度まで加熱する。加熱温度は、パウチ内面材の融点近傍であり、後段の折り曲げ機構30でシワを発生させない程度に軟化させる。
搬送機構20は、搬送方向に所定間隔を隔てて、パウチ1の表裏面のそれぞれに配置される一対の搬送ローラ21a,21bからなる搬送手段21(
図5参照)が、プレヒート機構10から冷却機構50まで複数配置されており、パウチ1を搬送手段21の搬送ローラ21a,21bで挟んで搬送駆動する。なお、図示していないが、搬送手段21と干渉しないように、パウチを案内する搬送ガイドを設けることができる。また、搬送手段21
は、シール部4を折り曲げた折り曲げ部7を避けて、パウチの収納部6の中央領域を挟んで搬送する。
搬送機構20としては、搬送方向に所定の駆動力を得られれば、特に上述したローラ搬送方式である必要はなく、ベルト駆動やエア搬送機構等、種々の搬送方式を採用することができる。
【0019】
折り曲げ機構30は、搬送するパウチ1のシール部4に対して、それぞれ平行に配置される金型310を備えている。
図4(A)、(B)に示すように、金型310は、シール部4の折り曲げ方向の外側に設けた外型312と、シール部4の折り曲げ方向の内側に設けた内型313と、を備え、これら外型312と内型313との間に隙間311が形成される。
搬送されるパウチ1は、
図4(C)に示すように、シール部4が、外型312と内型313との間の隙間311を通過する過程で、搬送方向Xと平行な折り曲げ線予定線7aにて内側に折り曲げられる。そして、シール部4は、内型313の終端を通り過ぎた位置で、外型312により収納部まで折り曲げられる。
【0020】
加熱機構40は、
図5に示すように、折り曲げ機構30によって形成した折り曲げ部7の形状を維持するガイド部410と、折り曲げ端部7bに当接して加熱する加熱用アウター金型420と、加熱用アウター金型420を加熱する加熱手段としてのヒータ430と、を備えている。
【0021】
ガイド部410は、パウチ1の収納部6の後面フィルム2B側に折り曲げ部7の外面側を案内する第1ガイド411と、パウチ1の収納部6の前面フィルム2Aの側縁部を案内する第2ガイド412と、を備えている。第1ガイド411、第2ガイド412および後述する出口ガイド413は耐熱樹脂によって構成されるが、これに限定されず、パウチに熱を伝えないために熱伝導の低い材料から構成すればよい。
また、折り曲げ部7と収納部6の後面フィルム2Bと間には、加熱用インナー金型440が配置され、加熱用インナー金型440と加熱用アウター金型420とによって折り曲げ端部7bの外側と内側を挟む構成となっている。
なお、上述したように、加熱用インナー金型440に変えて、加熱を行わないインナー金型を用いて折り曲げ部7の折り曲げ形状を内側から維持するだけでもよい。
【0022】
さらに、加熱用インナー金型440は、収納部6の後面フィルム2Bに生じる弛みを、収納部6の中央側に寄せる構成となっている。
折り曲げ部7は、後面フィルム2Bと前面フィルム2Aを2枚重ねで折り曲げて形成するため、折り曲げ部7の周長は前面フィルム2Aが後面フィルム2Bより長くなる。この周長差によって、前面フィルム2A側が伸ばされ、後面フィルム2B側に弛みが生じ、折り曲げ部7にてシワが発生しやすくなる。そのため、加熱用インナー金型440が、その弛みを収納部6の中央側に寄せることにより、シワの発生を抑制することができる。
【0023】
また、フレーム450は上フレーム451と下フレーム452に分割されており、上フレーム451に、第2ガイド412と加熱用アウター金型420が組みつけられ、下フレーム452に、第1ガイド411、加熱用インナー金型440及びヒータ430が組みつけられユニット化されている。
【0024】
また、加熱機構40の第1ガイド部411の出口側端部には、出口ガイド413が設けられ、加熱用インナー金加型440が出口ガイド413へと切り替わり、出口ガイ413の角度が漸次減少し、出口側端部は第1ガイド411と第2ガイド412によりパウチが挟持される。
【0025】
折り曲げ機構30にて形成したパウチ1の折り曲げ部7は、次工程の加熱機構40の第1ガイド411と第2ガイド412及び加熱用インナー金型440の隙間に侵入し、折り曲げ端部7bが加熱用アウター金型420に当接し、この加熱用アウター金型420によって、折り曲げ端部7bが加熱される。折り曲げ端部7bの内側が加熱用インナー金型440によって支持されるので、折り曲げ端部7bを加熱用アウター金型420と確実に押し当てることができ、効率的に折り曲げ端部7bを加熱することができる。また、加熱機構40に侵入したパウチ1の折り曲げ部7の近傍は、第1ガイド411及び第2ガイド412に沿って、スムースに案内される。
【0026】
さらに、パウチ1が加熱機構40の出口側に達すると、加熱用インナー金型440から出口ガイド413へ切り替わり、出口ガイド413の角度が漸次小さくなり、第1ガイド411と第2ガイド412とによって、折り曲げ部7は最終的に収納部6まで折り曲げられる。出口ガイド413を通過する間も、折り曲げ端部7bには加熱用アウター金型420が押し当てられており、折り曲げ端部7bの応力が緩和され、折り曲げ部7の形状が保持される。
加熱機構40を通過したパウチ1は、冷却機構50に送られて冷却され、折り曲げ部7の形状の安定化が行われる。冷却機構50としては、搬送ガイドと、搬送ガイドを冷却水や冷却ガスなどの冷却媒体を流すクーラーや、冷却ファンなどの冷却装置に相当する部品(熱交換ブロック)を冷却するように構成されたものを採用できる。要するに、パウチのシール部の折り曲げ形態を維持した状態で冷却できるものであればよい。
【0027】
本発明の加熱機構40によれば、加熱用インナー金型440で折り曲げ部7の内側で支持して、加熱用アウター金型420で折り曲げ端部7bを加熱する構成なので、加熱機構40でのパウチ搬送する際のシワの発生が抑制される。また、より低温で効率よく折り曲げ部7の応力が緩和され、フィルムの白化も防止できる。さらに、下述するように、折り曲げ端部7bの加熱温度が低温化されるため、折り曲げ形状の安定のための冷却機構50の冷却時間も短縮化でき、生産効率を高めることができる。
加熱温度としては、従来の方法では170℃程度に加熱する必要があったが、本実施形態のように折り曲げ端部7bを加熱する場合は、140℃程度に加熱するだけで、折り戻しが無くなり、20℃から30℃程度、低温化が可能となった。
【0028】
[他の実施形態]
図6は、本発明のパウチにおいて、ビード部8を形成する加工の実施形態を示している。以下の説明では、上記実施の形態と異なる点のみについて説明し、同一の構成部分については同一の符号を付して説明は省略するものとする。
本実施形態では、
図6(B)に示すように、シール部4を折り曲げた折り曲げ部7の収納部6側の縁部近傍に、外側に張り出すビード部8が形成されている。このビード部8は、折り曲げ部7の全長にわたって延びており、折り曲げ部7の端縁と収納部6のフィルム面との隙間を覆うように形成される。このビード部8は、折り曲げ部7の前面フィルム2Aと後面フィルム2Bの周長差によって、後面フィルム2Bに生じる弛みを利用して形成する。
【0029】
図6(A)に示すように、加熱機構40の加熱用インナー金型440が、パウチ1の折り返された折り曲げ端部7bから収納部側の所定の位置まで当接しており、収納部6の前面フィルム2Aと後面フィルム2Bの折り曲げ部7の周長差によって生じる後面フィルム2Bの弛みが中央寄りに寄せられ、この結果、搬送手段21と加熱用インナー金型440との間に湾曲部9が形成される。
そして、加熱用インナー金型440内側端部が、後面フィルム2Bの側縁部(湾曲部9の外側)を押すことによって、ビード部8が形成される。
このビード部8の形成は、加熱用インナー金型440の角部の接触領域8aが、ヒータ
430から伝熱される熱によって加熱され、次いで、加熱用インナー金型440を通過後に冷却される。そして、この加熱、冷却の過程で、後面フィルム2Bの内面と外面の収縮量の差による引き連れ現象によって盛り上がり、ビード部8が形成される。特に、後面フィルム2Bの内面をポリエチレン等の軟質の熱融着性の樹脂フィルムとすると、融点以下の加熱時に軟化する樹脂フィルムは、収縮時に熱融着しやすいため、内面の樹脂フィルムの収縮量が大きくなって、ビード部8の形成が助長される。
【0030】
また、上述したように、折り曲げ部7を形成する際に、前面フィルムAと後面フィルム2Bには、周長差を生じ、この周長差によって後面フィルム2Bに湾曲部9が形成され、湾曲部9がビード部8の形成を助長する方向に付勢する。さらにビード部8を形成することによって、上述した周長差が吸収されると共に、パウチ収納部6の弛みが解消され、パウチの平面形態を維持できるという利点を有する。
なお、図示しないが、他にビード部8を形成するためのビード成形用金型を別途設けてもよい。
そして、
図6(D)に示すように、このようなビード部8を設けることにより、上位に重なったパウチ1はビード部8によって折り曲げ部7と後面フィルム2Bのフィルム面との隙間へのはまり込みが防止される。
パウチ1にビード部8が無い場合、
図6(C)に示すように、上位のパウチの折り曲げ端部7bが、下位のパウチの折り曲げ部7と後面フィルム2Bのフィルム面との隙間にはまり込む恐れがある。しかし、ビード部8を形成したパウチ1が重なった場合、上位のパウチ1の折り曲げ部7の折り曲げ端部7bが、下位のパウチ1の折り曲げた折り曲げ部7の隙間に入ることを防止することができる。
【0031】
なお、上記実施形態においては、1段階での折り曲げ加工を行う場合を例にして説明したが、2段階の折り曲げ(2本の折り曲げ予定線での2段階の折り曲げ加工)でもよく、3段階以上の多段階での折り曲げ加工(3つ以上の折り曲げ線での折り曲げ加工)を行うようにしてもよい。
また、シール部としてサイドシール部を例示して説明したが、サイドシール部に限定されず、トップシール部等パウチの縁部のシール部について適用可能である。
また、折り曲げ機構30については、シール部4を収納部6に接触するまで折り曲げる構成について説明したが、鋭角に折り曲げる程度としてもよい。
さらに、折り曲げ機構30と、加熱機構40を一体のユニットとし、現状の折り曲げ機構30の後半部分の完全に180°折り曲げない中途段階で、加熱機構40を組み付ける構成としてもよい。その場合には、ヒータは加熱機構40の加熱用アウター金型420のみを加熱するようにヒータを配置することが好ましい。