特開2015-214270(P2015-214270A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-214270(P2015-214270A)
(43)【公開日】2015年12月3日
(54)【発明の名称】車両用制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/36 20060101AFI20151106BHJP
【FI】
   B60T8/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-98676(P2014-98676)
(22)【出願日】2014年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】駒沢 雅明
(72)【発明者】
【氏名】神谷 雄介
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA11
3D246HA38A
3D246HA39A
3D246JB53
3D246LA33Z
3D246LA42Z
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コイルを大型化することなく、制動力への影響を抑制しつつ、コイルの発熱を抑制することができる車両用制動装置を提供する。
【解決手段】車両の車輪に付与される制動力に関連する液圧が発生する液圧室から低圧源に作動液が流出することを閉弁によって阻止する常開型の電磁弁を備え、電磁弁のコイルの電気抵抗を導出し、導出されている電気抵抗に基づいて電磁弁のコイルに導通させるコイル電流を制御する車両用制動装置であって、コイル電流は、電磁弁が閉弁状態において、液圧差に対応して設定された開弁電流と、加算電流との和で構成され、電流制御部は、指示取得部により増圧指示又は保持指示が取得されている場合に、コイル温度取得部により取得されているコイルdの温度が高いほど、加算電流を小さくする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪に付与される制動力に関連する液圧が発生する液圧室から低圧源に作動液が流出することを閉弁によって阻止する常開型の電磁弁を備え、前記常開型の電磁弁のコイルの電気抵抗を導出し、導出されている前記電気抵抗に基づいて前記常開型の電磁弁のコイルに導通させるコイル電流を制御する車両用制動装置であって、
前記液圧室の液圧を増大させる増圧指示又は前記液圧室の液圧を保持する保持指示を取得する指示取得部と、
前記常開型の電磁弁のコイルの温度を取得するコイル温度取得部と、
前記常開型の電磁弁の前記液圧室側と前記低圧源との液圧差に対応する前記コイル電流を制御する電流制御部と、
を備え、
前記常開型の電磁弁が閉弁状態である場合の前記コイル電流は、前記常開型の電磁弁が閉弁状態から開弁するときの電流に相関し前記液圧差に対応して設定された開弁電流と、加算電流との和で構成され、
前記電流制御部は、前記指示取得部により前記増圧指示又は前記保持指示が取得されている場合に、前記コイル温度取得部により取得されている前記コイルの温度が高いほど、前記加算電流を小さくすることを特徴とする車両用制動装置。
【請求項2】
前記常開型の電磁弁が開弁しているか否かを判定する開弁判定部を備え、
前記電流制御部は、前記指示取得部により前記増圧指示又は前記保持指示が取得されている場合に、前記コイル温度取得部により取得されている前記コイルの温度に応じて、前記コイル電流を、前記開弁判定部により前記常開型の電磁弁が開弁していると判定されるまで小さくし、前記開弁判定部により前記常開型の電磁弁が開弁していると判定された場合に、開弁判定部により前記常開型の電磁弁が開弁していると判定されなくなるまで前記コイル電流を大きくする請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記液圧室に作動液が流入することを閉弁によって阻止する電磁弁であって、第二コイル電流により開閉が制御される常閉型の電磁弁を備え、
前記電流制御部は、前記指示取得部により前記増圧指示又は前記保持指示が取得されている場合に、前記コイル温度取得部により取得されている前記コイルの温度に応じて、前記常開型の電磁弁が開弁状態になるまで前記加算電流を小さくするとともに、前記加算電流の減少に応じた前記第二コイル電流を前記常閉型の電磁弁に導通させて前記常閉型の電磁弁を開弁させる請求項1又は2に記載の車両用制動装置。
【請求項4】
前記電流制御部は、前記指示取得部により前記増圧指示又は前記保持指示が取得され且つ前記温度判定部により前記コイルの温度が所定温度以上である場合、前記加算電流を所定量小さくする請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項5】
車両の車輪に付与される制動力に関連する液圧が発生する液圧室から低圧源に作動液が流出することを閉弁によって阻止する常開型の電磁弁を備え、前記常開型の電磁弁のコイルの電気抵抗を導出し、導出されている前記電気抵抗に基づいて前記常開型の電磁弁のコイルに導通させるコイル電流を制御する車両用制動装置であって、
前記液圧室の液圧を増大させる増圧指示又は前記液圧室の液圧を保持する保持指示を取得する指示取得部と、
前記常開型の電磁弁のコイルの温度を取得するコイル温度取得部と、
前記常開型の電磁弁の前記液圧室側と前記低圧源との液圧差に対応する前記コイル電流を制御する電流制御部と、
前記液圧室に作動液が流入することを閉弁によって阻止する常閉型の電磁弁と、
を備え、
前記電流制御部は、前記指示取得部により前記増圧指示又は前記保持指示が取得されている場合に、前記コイル温度取得部により取得されている前記コイルの温度に応じて、前記常開型の電磁弁が開弁状態になるまで前記コイル電流を小さくするとともに、前記指示取得部が取得した前記増圧指示又は前記保持指示に基づいて前記常閉型の電磁弁を開弁させることを特徴とする車両用制動装置。
【請求項6】
車両の車輪に付与される制動力に関連する液圧が発生する液圧室から低圧源に作動液が流出することを閉弁によって阻止する常開型の電磁弁を備え、前記電磁弁のコイルの電気抵抗を導出し、導出されている前記電気抵抗に基づいて前記電磁弁のコイルに導通させるコイル電流を制御する車両用制動装置であって、
前記液圧室の液圧を増大させる増圧指示又は前記液圧室の液圧を保持する保持指示を取得する指示取得部と、
前記常開型の電磁弁のコイルの温度を取得するコイル温度取得部と、
前記常開型の電磁弁の前記液圧室側と前記低圧源との液圧差に対応する前記コイル電流を制御する電流制御部と、
を備え、
前記常開型の電磁弁が閉弁状態である場合の前記コイル電流は、前記常開型の電磁弁が閉弁状態から開弁するときの電流に相関し前記液圧差に対応して設定された開弁電流と、加算電流との和で構成され、
前記電流制御部は、前記指示取得部により前記増圧指示又は前記保持指示が取得されている場合に、制御結果として、通常制御と、前記コイル温度取得部により取得された前記コイルの温度が前記通常制御での温度より高く且つ前記加算電流が前記通常制御での前記加算電流より小さい高温制御とが含まれる発熱抑制制御を実行することを特徴とする車両用制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用制動装置としては、例えば、マスタシリンダと、サーボ室内の液圧に対応する力により駆動されてマスタ室の容積を変化させる出力ピストンと、出力ピストンとの間に作動液(ブレーキ液)で満たされる第一液圧室を区画しブレーキ操作部材の操作に連動する入力ピストンと、パイロット室に入力されている液圧に応じた液圧をサーボ室に出力するレギュレータと、入力されている制御信号に対応する液圧をパイロット室に発生させるパイロット圧発生部と、を備えたものがある。ここでパイロット圧発生部は、例えば、電磁弁と高圧力源と低圧力源等で構成されている。このような車両用制動装置は、特開2011−240873号公報に記載されている。
【0003】
パイロット圧の制御に用いられる電磁弁は、いわゆるソレノイドバルブであり、コイル(ソレノイド)に供給される制御電流(コイル電流)により、流量又は出入口間の差圧が制御される。換言すると、当該電磁弁は、コイルに流す電流値に応じて発生差圧を変化可能なリニアソレノイドバルブである。常開型の電磁弁は、制御電流が開弁電流以下であれば開弁状態であり、開弁電流より大きい電流であれば閉弁状態である。開弁電流は、電磁弁の出入口の差圧により決まる値であるが、ほとんどの場合、電子制御において、設計的に推定された推定値で設定されている。したがって、常開型の電磁弁を確実に閉弁させるために、当該電磁弁に供給される制御電流は、開弁電流(推定値)に所定の加算電流を加えた値となる。パイロット室等の液圧室に設置された常開型の電磁弁に対しては、確実性を保つため、閉弁させる際に、設定された開弁電流よりも大きな制御電流を供給する。
【0004】
このような電磁弁のコイルには、ブレーキ操作に応じて高い制御電流が印加される。例えば、停車中では、高踏力で長時間のブレーキ操作が為される可能性がある。この場合、ホイールシリンダに高踏力に対する高い液圧をかける制御が連続的に行われる。これにより、高液圧を保つべき液圧室に設けられた常開型の電磁弁に対しては、作動液の流出を阻止し続けるため、高い制御電流が導通し続ける。電磁弁に長時間、高電流が導通することにより、電磁弁のコイルの発熱が懸念される。
【0005】
特開2001−30889号公報に記載のブレーキ装置は、車両停止状態において、マスタシリンダと増圧装置との間に配置された常開型の電磁弁に対して、マスタシリンダから増圧装置への作動液の供給を減少又は停止させる制御を実行する。つまり、このブレーキ装置では、車両停止中に、増圧装置への作動液の供給を減少又は停止させるほど制御電流を小さく又は停止して、電磁弁の発熱を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−240873号公報
【特許文献2】特開2001−30889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記ブレーキ装置では、車両停止中に、増圧装置への作動液供給量が減少する又は0となり、増圧装置の制御への影響が大きくなる。また、制動力に関連する液圧が発生するパイロット室等の液圧室に対しては、上記ブレーキ装置の制御方法では、常開型の電磁弁の制御がダイレクトに液圧に影響し、ひいては制動力に影響してしまう。
【0008】
一方、上記のような液圧室に設置される常開型の電磁弁に対してもコイルを大型化することで、発熱による故障発生に対応することも考えられるが、体格(設置スペース)やコストの面から現実的ではない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、コイルを大型化することなく、制動力への影響を抑制しつつ、コイルの発熱を抑制することができる車両用制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の様相1に係る車両用制動装置は、車両の車輪に付与される制動力に関連する液圧が発生する液圧室から低圧源に作動液が流出することを閉弁によって阻止する常開型の電磁弁を備え、前記電磁弁のコイルの電気抵抗を導出し、導出されている前記電気抵抗に基づいて前記電磁弁のコイルに導通させるコイル電流を制御する車両用制動装置であって、前記液圧室の液圧を増大させる増圧指示又は前記液圧室の液圧を保持する保持指示を取得する指示取得部と、前記常開型の電磁弁のコイルの温度を取得するコイル温度取得部と、前記常開型の電磁弁の前記液圧室側と前記低圧源との液圧差に対応する前記コイル電流を制御する電流制御部と、を備え、前記常開型の電磁弁が閉弁状態である場合の前記コイル電流は、前記常開型の電磁弁が閉弁状態から開弁するときの電流に相関し前記液圧差に対応して設定された開弁電流と、加算電流との和で構成され、前記電流制御部は、前記指示取得部により前記増圧指示又は前記保持指示が取得されている場合に、前記コイル温度取得部により取得されている前記コイルの温度が高いほど、前記加算電流を小さくすることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、電磁弁のコイルが発熱した場合、コイル温度取得部によりコイルの温度が取得されて、当該電磁弁に導通させるコイル電流が小さくなる。これにより、コイルの発熱は抑制される。さらに、上記様相1によれば、コイル電流のうち、加算電流だけが小さくなるため、少なくとも開弁電流が保持され、常開型の電磁弁の閉弁状態が維持され易い。したがって、発熱が抑制されるとともに、液圧室の液圧への影響が抑制され、制動力への影響も抑制される。また、発熱が抑制されるためコイルは通常のもので良く、コイルの大型化による故障対策は不要となる。
【0012】
本発明の様相2に係る車両用制動装置は、上記様相1において、前記常開型の電磁弁が開弁しているか否かを判定する開弁判定部を備え、前記電流制御部は、前記指示取得部により前記増圧指示又は前記保持指示が取得されている場合に、前記コイル温度取得部により取得されている前記コイルの温度に応じて、前記コイル電流を、前記開弁判定部により前記常開型の電磁弁が開弁していると判定されるまで小さくし、前記開弁判定部により前記常開型の電磁弁が開弁していると判定された場合に、開弁判定部により前記常開型の電磁弁が開弁していると判定されなくなるまで前記コイル電流を大きくする。
【0013】
この構成によれば、電磁弁が開弁していると判定されない状態(すなわち閉弁状態)が維持可能な極力小さいコイル電流(例えば実際の開弁電流より若干大きい値)で、電磁弁の閉弁状態が維持可能となる。これにより、液圧及び制動力への影響が抑制されるとともに、コイルの発熱はさらに抑制される。
【0014】
本発明の様相3に係る車両用制動装置は、上記様相1又は2において、前記液圧室に作動液が流入することを閉弁によって阻止する電磁弁であって、第二コイル電流により開閉が制御される常閉型の電磁弁を備え、前記電流制御部は、前記指示取得部により前記増圧指示又は前記保持指示が取得されている場合に、前記コイル温度取得部により取得されている前記コイルの温度に応じて、前記常開型の電磁弁が開弁状態になるまで前記加算電流を小さくするとともに、前記加算電流の減少に応じた前記第二コイル電流を前記常閉型の電磁弁に導通させて前記常閉型の電磁弁を開弁させる。
【0015】
この構成によれば、常開型の電磁弁の加算電流が小さくなりコイル電流が「実際の開弁電流」以下となった際、すなわち常開型の電磁弁が開弁して作動液が液圧室から漏れ出た際、加算電流の減少に応じた第二コイル電流が常閉型の電磁弁に流れる。これにより、常閉型の電磁弁が開弁され、少なくとも液圧室から漏れ出た作動液が常閉型の電磁弁を介して補填される。上記様相3によれば、常開型の電磁弁を介して作動液が液圧室に流入して液圧の減少が抑制されるとともに、常開型の電磁弁と常閉型の電磁弁とで発熱が分散され、常開型の電磁弁のコイルの発熱はさらに抑制される。
【0016】
本発明の様相4に係る車両用制動装置は、上記様相1において、前記電流制御部は、前記指示取得部により前記増圧指示又は前記保持指示が取得され且つ前記温度判定部により前記コイルの温度が所定温度以上である場合、前記加算電流を所定量小さくする。
【0017】
この構成によれば、コイルが通常の温度範囲であるときと、コイルが高温であるときの2種類の制御パターンが実行されることにより、コイル電流が開弁電流より大きい値に保たれる上、高温時のコイル電流が小さくなる。つまり、上記様相4によれば、液圧及び制動力の影響が抑制され且つコイルの発熱が抑制されるとともに、制御の複雑化が極力抑制され、製造コストが抑制される。
【0018】
本発明の様相5に係る車両用制動装置は、車両の車輪に付与される制動力に関連する液圧が発生する液圧室から低圧源に作動液が流出することを閉弁によって阻止する常開型の電磁弁を備え、前記常開型の電磁弁のコイルの電気抵抗を導出し、導出されている前記電気抵抗に基づいて前記常開型の電磁弁のコイルに導通させるコイル電流を制御する車両用制動装置であって、前記液圧室の液圧を増大させる増圧指示又は前記液圧室の液圧を保持する保持指示を取得する指示取得部と、前記常開型の電磁弁のコイルの温度を取得するコイル温度取得部と、前記常開型の電磁弁の前記液圧室側と前記低圧源との液圧差に対応する前記コイル電流を制御する電流制御部と、前記液圧室に作動液が流入することを閉弁によって阻止する常閉型の電磁弁と、を備え、前記電流制御部は、前記指示取得部により前記増圧指示又は前記保持指示が取得されている場合に、前記コイル温度取得部により取得されている前記コイルの温度に応じて、前記常開型の電磁弁が開弁状態になるまで前記コイル電流を小さくするとともに、前記指示取得部が取得した前記増圧指示又は前記保持指示に基づいて前記常閉型の電磁弁を開弁させることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、常開型の電磁弁のコイル電流が実際の開弁電流以下となった際、常閉型の電磁弁が増圧指示又は保持指示に応じて開弁する。例えば、常開型の電磁弁が開弁した際、常閉型の電磁弁のコイルには指示に応じた電流(第二コイル電流)が流れ、常閉型の電磁弁が開弁する。上記様相5によれば、常開型の電磁弁を介して作動液が液圧室に流入して増圧指示又は保持指示が実現されるとともに、常開型の電磁弁と常閉型の電磁弁とで発熱が分散され、常開型の電磁弁のコイルの発熱はさらに抑制される。
【0020】
本発明の様相6に係る車両用制動装置は、車両の車輪に付与される制動力に関連する液圧が発生する液圧室から低圧源に作動液が流出することを閉弁によって阻止する常開型の電磁弁を備え、前記電磁弁のコイルの電気抵抗を導出し、導出されている前記電気抵抗に基づいて前記電磁弁のコイルに導通させるコイル電流を制御する車両用制動装置であって、前記液圧室の液圧を増大させる増圧指示又は前記液圧室の液圧を保持する保持指示を取得する指示取得部と、前記常開型の電磁弁のコイルの温度を取得するコイル温度取得部と、前記常開型の電磁弁の前記液圧室側と前記低圧源との液圧差に対応する前記コイル電流を制御する電流制御部と、を備え、前記常開型の電磁弁が閉弁状態である場合の前記コイル電流は、前記常開型の電磁弁が閉弁状態から開弁するときの電流に相関し前記液圧差に対応して設定された開弁電流と、加算電流との和で構成され、前記電流制御部は、前記指示取得部により前記増圧指示又は前記保持指示が取得されている場合に、制御結果として、通常制御と、前記コイル温度取得部により取得された前記コイルの温度が前記通常制御での温度より高く且つ前記加算電流が前記通常制御での前記加算電流より小さい高温制御とが含まれる発熱抑制制御を実行することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、発熱抑制制御により、温度が比較的低く加算電流が比較的大きい通常制御と、温度が比較的高く加算電流が比較的小さい高温制御の少なくとも2つが含まれた制御結果が実現される。また、当該発熱抑制制御では、コイル電流が開弁電流以上に維持される。これにより、液圧及び制動力の影響が抑制されるとともに、コイルの発熱は抑制される。また、発熱が抑制されるためコイルは通常のもので良く、コイルの大型化による発熱対策は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一実施形態の車両用制動装置の構成を示す構成図である。
図2】電磁弁の一例を説明するための概念図である。
図3】第一実施形態のレギュレータの詳細構成を示す断面図である。
図4】第一実施形態の車両用制動装置のブレーキ制御(液圧制御)を説明するための説明図である。
図5】第一実施形態の発熱抑制制御を説明するためのタイムチャートである。
図6】第一実施形態の発熱抑制制御を説明するためのフローチャートである。
図7】第二実施形態の車両用制動装置の構成を示す構成図である。
図8】第二実施形態の発熱抑制制御を説明するためのタイムチャートである。
図9】第二実施形態の発熱抑制制御を説明するためのフローチャートである。
図10】第三実施形態の発熱抑制制御を説明するためのタイムチャートである。
図11】本実施形態の変形態様を説明するための説明図である。
図12】本実施形態の変形態様を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。また、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0024】
<第一実施形態>
図1に示すように、第一実施形態の車両用制動装置は、車輪5FR,5FL,5RR,5RLに液圧制動力を発生させる液圧制動力発生装置BFと、液圧制動力発生装置BFを制御するブレーキECU6と、を備えている。
【0025】
(液圧制動力発生装置BF)
液圧制動力発生装置BFは、図1に示すように、マスタシリンダ1と、反力発生装置2と、第一制御弁22と、第二制御弁23と、サーボ圧発生装置4と、液圧制御部5と、各種センサ71〜76等により構成されている。
【0026】
(マスタシリンダ1)
マスタシリンダ1は、ブレーキペダル10の操作量に応じて作動液を液圧制御部5に供給する部位であり、メインシリンダ11、カバーシリンダ12、入力ピストン13、第1マスタピストン14、および第2マスタピストン15等により構成されている。ブレーキペダル10は、運転手がブレーキ操作可能なブレーキ操作手段であれば良い。
【0027】
メインシリンダ11は、前方が閉塞されて後方に開口する有底略円筒状のハウジングである。メインシリンダ11の内周側の後方寄りに、内向きフランジ状に突出する内壁部111が設けられている。内壁部111の中央は、前後方向に貫通する貫通孔111aとされている。また、メインシリンダ11の内部の内壁部111よりも前方に、内径がわずかに小さくなっている小径部位112(後方)、113(前方)が設けられている。つまり、小径部位112、113は、メインシリンダ11の内周面から内向き環状に突出している。メインシリンダ11の内部には、小径部位112に摺接して軸方向に移動可能に第1マスタピストン14が配設されている。同様に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に第2マスタピストン15が配設されている。
【0028】
カバーシリンダ12は、略円筒状のシリンダ部121、蛇腹筒状のブーツ122、およびカップ状の圧縮スプリング123で構成されている。シリンダ部121は、メインシリンダ11の後端側に配置され、メインシリンダ11の後側の開口に同軸的に嵌合されている。シリンダ部121の前方部位121aの内径は、内壁部111の貫通孔111aの内径よりも大とされている。また、シリンダ部121の後方部位121bの内径は、前方部位121aの内径よりも小とされている。
【0029】
防塵用のブーツ122は蛇腹筒状で前後方向に伸縮可能であり、その前側でシリンダ部121の後端側開口に接するように組み付けられている。ブーツ122の後方の中央には貫通孔122aが形成されている。圧縮スプリング123は、ブーツ122の周りに配置されるコイル状の付勢部材であり、その前側がメインシリンダ11の後端に当接し、後側はブーツ122の貫通孔122aに近接するように縮径されている。ブーツ122の後端および圧縮スプリング123の後端は、操作ロッド10aに結合されている。圧縮スプリング123は、操作ロッド10aを後方に付勢している。
【0030】
入力ピストン13は、ブレーキペダル10の操作に応じてカバーシリンダ12内を摺動するピストンである。入力ピストン13は、前方に底面を有し後方に開口を有する有底略円筒状のピストンである。入力ピストン13の底面を構成する底壁131は、入力ピストン13の他の部位よりも径が大きくなっている。入力ピストン13は、シリンダ部121の後方部位121bに軸方向に摺動可能かつ液密的に配置され、底壁131がシリンダ部121の前方部位121aの内周側に入り込んでいる。
【0031】
入力ピストン13の内部には、ブレーキペダル10に連動する操作ロッド10aが配設されている。操作ロッド10aの先端のピボット10bは、入力ピストン13を前側に押動できるようになっている。操作ロッド10aの後端は、入力ピストン13の後側の開口およびブーツ122の貫通孔122aを通って外部に突出し、ブレーキペダル10に接続されている。ブレーキペダル10が踏み込み操作されたときに、操作ロッド10aは、ブーツ122および圧縮スプリング123を軸方向に押動しながら前進する。操作ロッド10aの前進に伴い、入力ピストン13も連動して前進する。
【0032】
第1マスタピストン14は、メインシリンダ11の内壁部111に軸方向に摺動可能に配設されている。第1マスタピストン14は、前方側から順番に加圧筒部141、フランジ部142、および突出部143が一体となって形成されている。加圧筒部141は、前方に開口を有する有底略円筒状に形成され、メインシリンダ11の内周面との間に間隙を有し、小径部位112に摺接している。加圧筒部141の内部空間には、第2マスタピストン15との間にコイルばね状の付勢部材144が配設されている。付勢部材144により、第1マスタピストン14は後方に付勢されている。換言すると、第1マスタピストン14は、設定された初期位置に向けて付勢部材144により付勢されている。
【0033】
フランジ部142は、加圧筒部141よりも大径で、メインシリンダ11の内周面に摺接している。突出部143は、フランジ部142よりも小径で、内壁部111の貫通孔111aに液密に摺動するように配置されている。突出部143の後端は、貫通孔111aを通り抜けてシリンダ部121の内部空間に突出し、シリンダ部121の内周面から離間している。突出部143の後端面は、入力ピストン13の底壁131から離間し、その離間距離dは変化し得るように構成されている。
【0034】
ここで、メインシリンダ11の内周面、第1マスタピストン14の加圧筒部141の前側、および第2マスタピストン15の後側により、「第1マスタ室1D」が区画されている。また、メインシリンダ11の内周面(内周部)と小径部位112と内壁部111の前面、および第1マスタピストン14の外周面により、第1マスタ室1Dよりも後方の後方室が区画されている。第1マスタピストン14のフランジ部142の前端部および後端部は後方室を前後に区分しており、前側に「第二液圧室1C」が区画され、後側に「サーボ室1A」が区画されている。さらに、メインシリンダ11の内周部、内壁部111の後面、シリンダ部121の前方部位121aの内周面(内周部)、第1マスタピストン14の突出部143(後端部)、および入力ピストン12の前端部により「第一液圧室1B」が区画されている。
【0035】
第2マスタピストン15は、メインシリンダ11内の第1マスタピストン14の前方側に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に配置されている。第2マスタピストン15は、前方に開口を有する筒状の加圧筒部151、および加圧筒部151の後側を閉塞する底壁152が一体となって形成されている。底壁152は、第1マスタピストン14との間に付勢部材144を支承している。加圧筒部151の内部空間には、メインシリンダ11の閉塞された内底面111dとの間に、コイルばね状の付勢部材153が配設されている。付勢部材153により、第2マスタピストン15は後方に付勢されている。換言すると、第2マスタピストン15は、設定された初期位置に向けて付勢部材153により付勢されている。メインシリンダ11の内周面、内底面111d、および第2マスタピストン15により、「第2マスタ室1E」が区画されている。
【0036】
マスタシリンダ1には、内部と外部を連通させるポート11a〜11iが形成されている。ポート11aは、メインシリンダ11のうち内壁部111よりも後方に形成されている。ポート11bは、ポート11aと軸方向の同様の位置に、ポート11aに対向して形成されている。ポート11aとポート11bは、メインシリンダ11の内周面とシリンダ部121の外周面との間の環状空間を介して連通している。ポート11aおよびポート11bは、配管161に接続され、かつリザーバ171(「低圧源」に相当する)に接続されている。
【0037】
また、ポート11bは、シリンダ部121および入力ピストン13に形成された通路18により第一液圧室1Bに連通している。通路18は入力ピストン13が前進すると遮断され、これによって第一液圧室1Bとリザーバ171とが遮断される。
【0038】
ポート11cは、内壁部111より後方かつポート11aよりも前方に形成され、第一液圧室1Bと配管162とを連通させている。ポート11dは、ポート11cよりも前方に形成され、サーボ室1Aと配管163とを連通させている。ポート11eは、ポート11dよりも前方に形成され、第二液圧室1Cと配管164とを連通させている。
【0039】
ポート11fは、小径部位112の両シール部材91、92の間に形成され、リザーバ172とメインシリンダ11の内部とを連通している。ポート11fは、第1マスタピストン14に形成された通路145を介して第1マスタ室1Dに連通している。通路145は、第1マスタピストン14が前進するとポート11fと第1マスタ室1Dが遮断される位置に形成されている。ポート11gは、ポート11fよりも前方に形成され、第1マスタ室1Dと配管51とを連通させている。
【0040】
ポート11hは、小径部位113の両シール部材93、94の間に形成され、リザーバ173とメインシリンダ11の内部とを連通させている。ポート11hは、第2マスタピストン15の加圧筒部151に形成された通路154を介して第2マスタ室1Eに連通している。通路154は、第2マスタピストン15が前進するとポート11hと第2マスタ室1Eが遮断される位置に形成されている。ポート11iは、ポート11hよりも前方に形成され、第2マスタ室1Eと配管52とを連通させている。
【0041】
また、マスタシリンダ1内には、適宜、Oリング等のシール部材(図面黒丸部分)が配置されている。シール部材91、92は、小径部位112に配置され、第1マスタピストン14の外周面に液密的に当接している。同様に、シール部材93、94は、小径部位113に配置され、第2マスタピストン15の外周面に液密的に当接している。また、入力ピストン13とシリンダ部121との間にもシール部材95、96が配置されている。
【0042】
ストロークセンサ71は、運転者によりブレーキペダル10が操作された操作量(ストローク)を検出するセンサであり、検出信号をブレーキECU6に送信する。ブレーキストップスイッチ72は、運転者によるブレーキペダル10の操作の有無を2値信号で検出するスイッチであり、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0043】
(反力発生装置2)
反力発生装置2は、ブレーキペダル10が操作されたとき操作力に対抗する反力を発生する装置であり、ストロークシミュレータ21を主にして構成されている。ストロークシミュレータ21は、ブレーキペダル10の操作に応じて第一液圧室1Bおよび第二液圧室1Cに反力液圧を発生させる。ストロークシミュレータ21は、シリンダ211にピストン212が摺動可能に嵌合されて構成されている。ピストン212は圧縮スプリング213によって前方に付勢されており、ピストン212の前面側に反力液圧室214が形成される。反力液圧室214は、配管164およびポート11eを介して第二液圧室1Cに接続され、さらに、反力液圧室214は、配管164を介して第一制御弁22および第二制御弁23に接続されている。
【0044】
(第一制御弁22)
第一制御弁22は、非通電状態で閉じる構造の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。第一制御弁22は、配管164と配管162との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第二液圧室1Cに連通し、配管162はポート11cを介して第一液圧室1Bに連通している。また、第一制御弁22が開くと第一液圧室1Bが開放状態になり、第一制御弁22が閉じると第一液圧室1Bが密閉状態になる。したがって、配管164および配管162は、第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとを連通するように設けられている。
【0045】
第一制御弁22は通電されていない非通電状態で閉じており、このとき第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとが遮断される。これにより、第一液圧室1Bが密閉状態になって作動液の行き場がなくなり、入力ピストン13と第1マスタピストン14とが一定の離間距離dを保って連動する。また、第一制御弁22は通電された通電状態では開いており、このとき第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとが連通される。これにより、第1マスタピストン14の進退に伴う第一液圧室1Bおよび第二液圧室1Cの容積変化が、作動液の移動により吸収される。
【0046】
圧力センサ73は、第二液圧室1Cおよび第一液圧室1Bの反力液圧を検出するセンサであり、配管164に接続されている。圧力センサ73は、第一制御弁22が閉状態の場合には第二液圧室1Cの圧力を検出し、第一制御弁22が開状態の場合には連通された第一液圧室1Bの圧力も検出することになる。圧力センサ73は、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0047】
(第二制御弁23)
第二制御弁23は、非通電状態で開く構造の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。第二制御弁23は、配管164と配管161との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第二液圧室1Cに連通し、配管161はポート11aを介してリザーバ171に連通している。したがって、第二制御弁23は、第二液圧室1Cとリザーバ171との間を非通電状態で連通して反力液圧を発生させず、通電状態で遮断して反力液圧を発生させる。
【0048】
(サーボ圧発生装置4)
サーボ圧発生装置4は、減圧弁(「常開型の電磁弁」に相当する)41、増圧弁(「常閉型の電磁弁」に相当する)42、圧力供給部43、およびレギュレータ44等で構成されている。減圧弁41は、非通電状態で開く常開型の電磁弁(常開弁)であり、ブレーキECU6により流量(又は圧力)が制御される。減圧弁41の一方は配管411を介して配管161に接続され、減圧弁41の他方は配管413に接続されている。つまり、減圧弁41の一方は、配管411、161、およびポート11a、11bを介してリザーバ171に連通している。減圧弁41は、閉弁することで、後述する第1パイロット室4Dから作動液が流出することを阻止する。なお、配管411は、リザーバ171ではなく、後述するリザーバ434に接続されていても良い。この場合、リザーバ434が低圧力源に相当する。また、リザーバ171とリザーバ434が同一のリザーバであっても良い。
【0049】
増圧弁42は、非通電状態で閉じる常閉型の電磁弁(常閉弁)であり、ブレーキECU6により流量(又は圧力)が制御されている。増圧弁42の一方は配管421に接続され、増圧弁42の他方は配管422に接続されている。減圧弁41は、後述する第1パイロット室4Dに作動液が流出することを閉弁によって阻止する電磁弁である。増圧弁42は、後述する第1パイロット室4Dに作動液が流入することを閉弁によって阻止する電磁弁である。
【0050】
ここで、減圧弁41に用いられる常開型の電磁弁の一例を、模式的に説明する。電磁弁(減圧弁41)は、図2に示すように、弁部材aと、弁座bと、弁部材aを開弁側(弁座bから離れる方向)に付勢するスプリングcと、電流が導通することで弁部材aを閉弁側に押す電磁駆動力を発生するコイル(ソレノイド)dと、を備えている。コイルdに流れる電流が実際の開弁電流以下の場合には、スプリングcの付勢力により弁部材aと弁座bとが離間しており、電磁弁は開弁状態となっている。コイルdに実際の開弁電流より大きい電流が流れると、コイルdに発生する弁部材aを閉弁側に押す電磁駆動力が、スプリングcの付勢力と、電磁弁の出入口間の差圧に応じた差圧作用力との和よりも大きくなり、弁部材aが弁座bに当接し、電磁弁が閉弁する。
【0051】
開弁電流は、電磁弁の出入口間の差圧で決まる。また、常開型の電磁弁において、設定値(推定値)でない「実際の開弁電流」は、開弁状態となる最大の制御電流であり、閉弁させるための最小の制御電流(最小閉弁電流)にも相当する。つまり、実際の開弁電流は、開閉が切り替わる制御電流といえる。本明細書において、「開弁電流」とは、電磁弁が閉弁状態から開弁したときの制御電流に相関する値であって差圧に応じて設定された値である。また、本明細書において「実際の開弁電流」とは、設定値(推定値)でなく、実際に電磁弁の開閉が切り替わる電流値である。したがって、「開弁電流」と「実際の開弁電流」は一致しない場合もある。
【0052】
このように、減圧弁41及び増圧弁42は、コイルdに電流を流すことにより発生する電磁駆動力と、スプリングcの付勢力と、電磁弁の出入口間の差圧に応じた差圧作用力とのつりあい関係により開閉が決まり、コイルdに供給される電流(制御電流)により制御される。なお、付勢力と電磁駆動力の向きは、電磁弁の構造(常開弁や常閉弁等)により様々である。
【0053】
圧力供給部43は、レギュレータ44に主に高圧の作動液を供給する部位である。圧力供給部43は、アキュムレータ(高圧力源)431、液圧ポンプ432、モータ433、およびリザーバ434等で構成されている。
【0054】
アキュムレータ431は、高圧の作動液を蓄積するタンクである。アキュムレータ431は、配管431aによりレギュレータ44および液圧ポンプ432に接続されている。液圧ポンプ432は、モータ433によって駆動され、リザーバ434に貯留された作動液を、アキュムレータ431に圧送する。配管431aに設けられた圧力センサ75は、アキュムレータ431のアキュムレータ液圧を検出し、検出信号をブレーキECU6に送信する。アキュムレータ液圧は、アキュムレータ431に蓄積された作動液の蓄積量に相関する。
【0055】
アキュムレータ液圧が所定値以下に低下したことが圧力センサ75によって検出されると、ブレーキECU6からの指令に基づいてモータ433が駆動される。これにより、液圧ポンプ432は、アキュムレータ431に作動液を圧送して、アキュムレータ液圧を所定値以上に回復する。
【0056】
レギュレータ(機械式調圧装置)44は、図3に示すように、シリンダ441、ボール弁442、付勢部443、弁座部444、制御ピストン445、およびサブピストン446等で構成されている。
【0057】
シリンダ441は、一方(図面右側)に底面をもつ略有底円筒状のシリンダケース441aと、シリンダケース441aの開口(図面左側)を塞ぐ蓋部材441bと、で構成されている。シリンダケース441aには、内部と外部を連通させる複数のポート4a〜4hが形成されている。蓋部材441bも、略有底円筒状に形成されており、筒状部の複数のポート4a〜4hに対向する各部位に各ポートが形成されている。
【0058】
ポート4aは、配管431aに接続されている。ポート4bは、配管422に接続されている。ポート4cは、配管163に接続されている。配管163は、サーボ室1Aと出力ポート4cとを接続している。ポート4dは、配管414を介して配管161に接続されている。ポート4eは、配管424に接続され、さらにリリーフバルブ423を経由して配管422に接続されている。ポート4fは、配管413に接続されている。ポート4gは、配管421に接続されている。ポート4hは、配管51から分岐した配管511に接続されている。なお、配管414は、配管161ではなく、リザーバ434に接続されていても良い。
【0059】
ボール弁442は、ボール型の弁であり、シリンダ441内部のシリンダケース441aの底面側(以下、「シリンダ底面側」とも称する)に配置されている。付勢部443は、ボール弁442をシリンダケース441aの開口側(以下、「シリンダ開口側」とも称する)に付勢するバネ部材であって、シリンダケース441aの底面に設置されている。弁座部444は、シリンダケース441aの内周面に設けられた壁部材であり、シリンダ開口側とシリンダ底面側を区画している。弁座部444の中央には、区画したシリンダ開口側とシリンダ底面側を連通させる貫通路444aが形成されている。弁部材444は、付勢されたボール弁442が貫通路444aを塞ぐ形で、ボール弁442をシリンダ開口側から保持している。貫通路444aのシリンダ底面側の開口部には、ボール弁442が離脱可能に着座(当接)する弁座面444bが形成されている。
【0060】
ボール弁442、付勢部443、弁座部444、およびシリンダ底面側のシリンダケース441aの内周面で区画された空間を「第1室4A」とする。第1室4Aは、作動液で満たされており、ポート4aを介して配管431aに接続され、ポート4bを介して配管422に接続されている。
【0061】
制御ピストン445は、略円柱状の本体部445aと、本体部445aよりも径が小さい略円柱状の突出部445bとからなっている。本体部445aは、シリンダ441内において、弁座部444のシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的に、軸方向に摺動可能に配置されている。本体部445aは、図示しない付勢部材によりシリンダ開口側に付勢されている。本体部445aのシリンダ軸方向略中央には、両端が本体部445a周面に開口した径方向(図面上下方向)に延びる通路445cが形成されている。通路445cの開口位置に対応したシリンダ441の一部の内周面は、ポート4dが形成されているとともに、凹状に窪んでいる。この窪んだ空間を「第3室4C」とする。
【0062】
突出部445bは、本体部445aのシリンダ底面側端面の中央からシリンダ底面側に突出している。突出部445bの径は、弁座部444の貫通路444aよりも小さい。突出部445bは、貫通路444aと同軸上に配置されている。突出部445bの先端は、ボール弁442からシリンダ開口側に所定間隔離れている。突出部445bには、突出部445bのシリンダ底面側端面中央に開口したシリンダ軸方向に延びる通路445dが形成されている。通路445dは、本体部445a内にまで延伸し、通路445cに接続している。
【0063】
本体部445aのシリンダ底面側端面、突出部445bの外周面、シリンダ441の内周面、弁座部444、およびボール弁442によって区画された空間を「第2室4B」とする。第2室4Bは、突出部445bとボール弁442とが当接していない状態で、通路445d,445c、および第3室4Cを介してポート4d、4eに連通している。
【0064】
サブピストン446は、サブ本体部446aと、第1突出部446bと、第2突出部446cとからなっている。サブ本体部446aは、略円柱状に形成されている。サブ本体部446aは、シリンダ441内において、本体部445aのシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的、軸方向に摺動可能に配置されている。
【0065】
第1突出部446bは、サブ本体部446aより小径の略円柱状であり、サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面中央から突出している。第1突出部446bは、本体部445aのシリンダ開口側端面に当接している。第2突出部446cは、第1突出部446bと同形状であり、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面中央から突出している。第2突出部446cは、蓋部材441bと当接している。
【0066】
サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面、第1突出部446bの外周面、制御ピストン445のシリンダ開口側の端面、およびシリンダ441の内周面で区画された空間を「第1パイロット室(「液圧室」に相当する)4D」とする。第1パイロット室4Dは、ポート4fおよび配管413を介して減圧弁41に連通し、ポート4gおよび配管421を介して増圧弁42に連通している。
【0067】
一方、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面、第2突出部446cの外周面、蓋部材441b、およびシリンダ441の内周面で区画された空間を「第2パイロット室4E」とする。第2パイロット室4Eは、ポート4hおよび配管511、51を介してポート11gに連通している。各室4A〜4Eは、作動液で満たされている。圧力センサ74は、サーボ室1Aに供給されるサーボ圧を検出するセンサであり、配管163に接続されている。圧力センサ74は、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0068】
このように、レギュレータ44は、第1パイロット室4Dの圧力(「パイロット圧」とも称する)に対応する力とサーボ圧に対応する力との差によって駆動される制御ピストン445を有し、制御ピストン445の移動に伴って第1パイロット室4Dの容積が変化し、第1パイロット室4Dに流入出する液体の流量が増大すると、パイロット圧に対応する力とサーボ圧に対応する力とが釣り合っている平衡状態における制御ピストン445の位置を基準とする同制御ピストン445の移動量が増大して、サーボ室1Aに流入出する液体の流量が増大するように構成されている。
【0069】
レギュレータ44は、アキュムレータ431から第1パイロット室4Dに流入する液体の流量が増大するほど、第1パイロット室4Dが拡大するとともにアキュムレータ431からサーボ室1Aに流入する液体の流量が増大し、第1パイロット室4Dからリザーバ171に流出する液体の流量が増大するほど、第1パイロット室4Dが縮小するとともにサーボ室1Aからリザーバ171に流出する液体の流量が増大するように構成されている。
【0070】
また、制御ピストン445は、第1パイロット室4Dに面する壁部にダンパ装置(図示せず)を有している。ダンパ装置は、ストロークシミュレータのような構成であり、付勢部材で第1パイロット室4Dに向けて付勢されたピストン部を有する。ダンパ装置が設けられることで、第1パイロット室4Dの剛性はパイロット圧に応じて変化する。
【0071】
(液圧制御部5)
マスタシリンダ液圧(マスタ圧)を発生する第1マスタ室1D、第2マスタ室1Eには、配管51、52、ABS(Antilock Brake System)53を介してホイールシリンダ541〜544が連通されている。ホイールシリンダ541〜544は、車輪5FR〜5RLのブレーキを構成している。具体的には、第1マスタ室1Dのポート11g及び第2マスタ室1Eのポート11iには、それぞれ配管51、52を介して、公知のABS53が連結されている。ABS53には、車輪5FR〜5RLを制動するブレーキを作動させるホイールシリンダ541〜544が連結されている。
【0072】
ABS53は、車輪速度を検出する車輪速度センサ76を各輪に備えている。車輪速度センサ76により検出された車輪速度を示す検出信号はブレーキECU6に出力されるようになっている。
【0073】
このように構成されたABS53において、ブレーキECU6は、マスタ圧、車輪速度の状態、及び前後加速度に基づき、各保持弁、減圧弁の開閉を切り換え制御し、モータを必要に応じて作動して各ホイールシリンダ541〜544に付与するブレーキ液圧すなわち各車輪5FR〜5RLに付与する制動力を調整するABS制御(アンチロックブレーキ制御)を実行する。ABS53は、マスタシリンダ1から供給された作動液を、ブレーキECU6の指示に基づいて、量やタイミングを調整して、ホイールシリンダ541〜544に供給する装置である。
【0074】
後述する「ブレーキ制御」では、サーボ圧発生装置4のアキュムレータ431から送出された液圧が増圧弁42及び減圧弁41によって制御されてサーボ圧がサーボ室1Aに発生することにより、第1マスタピストン14及び第2マスタピストン15が前進して第1マスタ室1D及び第2マスタ室1Eが加圧される。第1マスタ室1D及び第2マスタ室1Eの液圧はポート11g、11iから配管51、52及びABS53を経由してホイールシリンダ541〜544へマスタ圧として供給され、車輪5FR〜5RLに液圧制動力が付与される。
【0075】
(ブレーキECU6)
ブレーキECU6は、電子制御ユニットであり、マイクロコンピュータを有している。マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリー等の記憶部を備えている。
【0076】
ブレーキECU6は、各電磁弁22、23、41、42、及びモータ433等を制御するため、各種センサ71〜76と接続されている。ブレーキECU6には、ストロークセンサ71から運転者によりブレーキペダル10の操作量(ストローク量)が入力され、ブレーキストップスイッチ72から運転者によるブレーキペダル10の操作の有無が入力され、圧力センサ73から第二液圧室1Cの反力液圧又は第一液圧室1Bの圧力(又は反力液圧)が入力され、圧力センサ74からサーボ室1Aに供給されるサーボ圧が入力され、圧力センサ75からアキュムレータ431のアキュムレータ液圧が入力され、車輪速度センサ76から各車輪5FR,5FL,5RR,5RLの速度が入力される。
【0077】
(ブレーキ制御)
ここで、ブレーキECU6のブレーキ制御について説明する。ブレーキ制御は、通常の液圧制動力の制御である。すなわち、ブレーキECU6は、第一制御弁22に通電して開弁し、第二制御弁23に通電して閉弁した状態とする。第二制御弁23が閉状態となることで第二液圧室1Cとリザーバ171とが遮断され、第一制御弁22が開状態となることで第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとが連通する。このように、ブレーキ制御は、第一制御弁22を開弁させ、第二制御弁23を閉弁させた状態で、減圧弁41及び増圧弁42を制御してサーボ室1Aのサーボ圧を制御するモードである。減圧弁41及び増圧弁42は、第1パイロット室4Dに流入出させる作動液の流量を調整する弁装置ともいえる。このブレーキ制御において、ブレーキECU6は、ストロークセンサ71で検出されたブレーキペダル10の操作量(入力ピストン13の移動量)またはブレーキペダル10の操作力から、運転者の要求制動力を算出する。そして、要求制動力に基づいて目標サーボ圧が設定され、圧力センサ74で測定されたサーボ圧である実サーボ圧(「実圧」に相当する)を目標サーボ圧に近づけるように減圧弁41及び増圧弁42が制御される。
【0078】
詳細に説明すると、ブレーキペダル10が踏まれていない状態では、上記のような状態、すなわちボール弁442が弁座部444の貫通路444aを塞いでいる状態となる。また、減圧弁41は開状態、増圧弁42は閉状態となっている。つまり、第1室4Aと第2室4Bは隔離されている。
【0079】
第2室4Bは、配管163を介してサーボ室1Aに連通し、互いに同圧力に保たれている。第2室4Bは、制御ピストン445の通路445c、445dを介して第3室4Cに連通している。したがって、第2室4B及び第3室4Cは、配管414、161を介してリザーバ171に連通している。第1パイロット室4Dは、一方が増圧弁42で塞がれ、他方が減圧弁41を介してリザーバ171に連通している。第1パイロット室4Dと第2室4Bとは同圧力に保たれる。第2パイロット室4Eは、配管511、51を介して第1マスタ室1Dに連通し、互いに同圧力に保たれる。
【0080】
この状態から、ブレーキペダル10が踏まれると、ブレーキECU6は、目標サーボ圧に基づいて、減圧弁41及び増圧弁42を制御する。すなわち、ブレーキECU6は、減圧弁41を閉じる方向に制御し、増圧弁42を開ける方向に制御する。
【0081】
増圧弁42が開くことでアキュムレータ431と第1パイロット室4Dとが連通する。減圧弁41が閉じることで、第1パイロット室4Dとリザーバ171とが遮断される。アキュムレータ431から供給される高圧の作動液により、第1パイロット室4Dの圧力を上昇させることができる。第1パイロット室4Dの圧力が上昇することで、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動する。これにより、制御ピストン445の突出部445b先端がボール弁442に当接し、通路445dがボール弁442により塞がれる。そして、第2室4Bとリザーバ171とは遮断される。
【0082】
さらに、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動することで、突出部445bによりボール弁442がシリンダ底面側に押されて移動し、ボール弁442が弁座面444bから離間する。これにより、第1室4Aと第2室4Bは弁座部444の貫通路444aにより連通する。第1室4Aには、アキュムレータ431から高圧の作動液が供給されており、連通により第2室4Bの圧力が上昇する。なお、ボール弁442の弁座面444bからの離間距離が大きくなる程、作動液の流路が大きくなり、ボール弁442の下流の流路の液圧が高くなる。つまり、第1パイロット室4Dの圧力(パイロット圧)が大きくなる程、制御ピストン445の移動距離が大きくなり、ボール弁442の弁座面444bからの離間距離が大きくなり、第2室4Bの液圧(サーボ圧)が高くなる。
【0083】
ブレーキECU6は、ストロークセンサ71で検知された入力ピストン13の移動量(ブレーキペダル10の操作量)が大きくなる程、第1パイロット室4Dのパイロット圧が高くなるように、増圧弁42下流の流路が大きくなるように増圧弁42を制御するとともに、減圧弁41下流の流路が小さくなるように減圧弁41を制御する。つまり、入力ピストン13の移動量(ブレーキペダル10の操作量)が大きくなる程、パイロット圧が高くなり、サーボ圧も高くなる。サーボ圧は、圧力センサ74により取得でき、パイロット圧に換算することができる。
【0084】
第2室4Bの圧力上昇に伴って、それに連通するサーボ室1Aの圧力も上昇する。サーボ室1Aの圧力上昇により、第1マスタピストン14が前進し、第1マスタ室1Dの圧力が上昇する。そして、第2マスタピストン15も前進し、第2マスタ室1Eの圧力が上昇する。第1マスタ室1Dの圧力上昇により、高圧の作動液が後述するABS53及び第2パイロット室4Eに供給される。第2パイロット室4Eの圧力は上昇するが、第1パイロット室4Dの圧力も同様に上昇しているため、サブピストン446は移動しない。このように、ABS53に高圧(マスタ圧)の作動液が供給され、摩擦ブレーキが作動して車両が制動される。「ブレーキ制御」において第1マスタピストン14を前進させる力は、サーボ圧に対応する力に相当する。
【0085】
ブレーキ操作を解除する場合、反対に、減圧弁41を開状態とし、増圧弁42を閉状態として、リザーバ171と第1パイロット室4Dとを連通させる。これにより、制御ピストン445が後退し、ブレーキペダル10を踏む前の状態に戻る。
【0086】
第一実施形態のブレーキ制御は、ブレーキペダル10の操作及びストロークに応じて目標サーボ圧を設定し、サーボ圧が目標サーボ圧に達するように、減圧弁41及び増圧弁42を制御してパイロット圧を変化させる制御である。目標サーボ圧は、マップ等に基づいて設定される。また、第一実施形態において、上述のとおり、減圧弁41及び増圧弁42は、出入口間の差圧によって実際の開弁電流(又は最小開弁電流)が変化する電磁弁である。
【0087】
また、ブレーキECU6では、図4に示すように、目標サーボ圧に対して所定の不感帯が設定されている。ブレーキECU6は、液圧制御を行うにあたり、実サーボ圧が不感帯の範囲内に入ると実質的に目標サーボ圧に達したものと認識する。このような不感帯を設定することで、目標サーボ圧を一点に設定する場合よりも液圧制御のハンチングを抑制することができる。
【0088】
ブレーキECU6は、ブレーキ制御において、目標サーボ圧と実サーボ圧との偏差が不感帯の範囲外にある場合には当該偏差を不感帯の範囲に収めるように実サーボ圧を制御し、目標サーボ圧と実サーボ圧との偏差が不感帯の範囲にある場合には実サーボ圧を保持するように実サーボ圧を制御する。ブレーキECU6は、圧力センサ74の値を監視しながら減圧弁41及び増圧弁42を制御するフィードバック制御を行っている。
【0089】
ブレーキECU6は、実サーボ圧が不感帯の範囲外で且つ目標サーボ圧よりも小さい場合、実サーボ圧を目標サーボ圧に向けて増大させる「増圧モード(増圧指示)」となる。また、ブレーキECU6は、実サーボ圧が不感帯の範囲外で且つ目標サーボ圧よりも大きい場合、実サーボ圧を目標サーボ圧に向けて減少させる「減圧モード(減圧指示)」となる。ブレーキECU6は、実サーボ圧が不感帯の範囲内にある場合、実サーボ圧を保持する「保持モード(保持指示)」となる。具体例を挙げると、ブレーキECU6は、増圧モードにおいては増圧弁42を開弁させ減圧弁41を閉弁させ、減圧モードにおいては増圧弁42を閉弁させ減圧弁41を開弁させ、保持モードにおいては増圧弁42及び減圧弁41を閉弁させる。
【0090】
(発熱抑制制御)
ブレーキECU6は、機能として、電流制御部61と、電流検出部62と、電圧印加部63と、指示取得部64と、コイル温度取得部65と、を備えている。電流制御部61は、減圧弁41及び増圧弁42に印加する制御電流(「コイル電流」に相当する)を制御して、上記「ブレーキ制御」を実行している。制御電流は、電磁弁のコイルdに流れる電流であるため、コイル電流ともいえる。電流制御部61は、目標サーボ圧及び制御モードに基づいて、減圧弁41及び増圧弁42に対する目標の制御電流(目標制御電流)を設定する。また、電流制御部61は、所定条件の下で発熱抑制制御を実行する。これについては後述する。
【0091】
減圧弁41を閉弁させたい場合、目標制御電流は、要求制動力に応じて、減圧弁41の出入口の差圧に対応して設定された開弁電流より大きい値に設定される。換言すると、目標制御電流は、減圧弁41を閉弁させたい場合、開弁電流と加算電流(例えば差圧数MPa分の電流)との和で設定される。一方、減圧弁41を開弁させたい場合、目標制御電流は、要求制動力に応じて、開弁電流以下に設定される。電流制御部61には、減圧弁41における差圧と開弁電流の関係(マップ)が記憶されている。電流制御部61に記憶されている開弁電流は、設計的に推定された推定値である。
【0092】
増圧弁42を閉弁させたい場合、目標制御電流は、要求制動力に応じて、増圧弁42の出入口の差圧に対応して設定された最小開弁電流未満に設定される。増圧弁42を開弁させたい場合、目標制御電流は、要求制動力に応じて、最小開弁電流より大きい値に設定される。電流制御部61には、増圧弁42における差圧と最小開弁電流の関係(マップ)も記憶されている。
【0093】
電流検出部62は、例えば電流センサであり、減圧弁41のコイルdに流れる電流を検出する。電圧印加部63は、電流制御部61が設定した目標電流値と、電流検出部62が検出した電流(検出電流)に基づいて、制御電流が目標電流値となるように、減圧弁41のコイルdに電圧を印加する。制御電流は印加電圧とコイルdの抵抗により決まり、コイルdの抵抗は温度により変化する。電圧印加部63は、バッテリ(図示せず)から給電され、印加電圧をPWMにより制御する。
【0094】
指示取得部64は、パイロット圧を増大させる増圧指示又はパイロット圧を保持する保持指示を取得する。換言すると、指示取得部64は、現在の制御モードが、何モード(増圧モード、保持モード、又は減圧モード)であるかという情報を取得する。指示取得部64は、電流制御部61の機能の一部ともいえる。
【0095】
コイル温度取得部65は、減圧弁41のコイルdの温度を取得する。具体的に、コイル温度取得部65は、まず、電流検出部62が検出した電流と電圧印加部63が印加した電圧に基づいて、減圧弁41のコイルdの抵抗を導出する。コイル温度取得部65は、電流検出部62の検出電流が安定した場合に、その検出電流と印加電圧から抵抗を算出する。抵抗の導出(算出)は、オームの法則(V=IR)により可能である。コイル温度取得部65は、コイルdの抵抗を定期的に導出する。「電流が安定したか否か」は、例えば、所定時間検出電流が一定レベルであったか否か、所定時間目標制御電流を維持したか否か、又は所定時間印加電圧が一定レベルであったか否かなどで判定できる。
【0096】
コイル温度取得部65は、コイルdの抵抗と検出電流(又は印加電圧)に基づいてコイルdの温度を推定する。コイルdの温度は、算出したコイルdの抵抗と、ECU起動時の抵抗値又は予め記憶されている抵抗値との比較で推定できる。このように、第一実施形態のコイル温度取得部65は、定期的に、コイルdの抵抗からコイルdの温度を取得する。コイルdの温度は、コイルdの抵抗に基づいて公知の方法で推定できる。
【0097】
ここで、電流制御部61は、指示取得部64により増圧指示又は保持指示が取得されている場合に、発熱抑制制御を実行する。発熱抑制制御は、コイル温度取得部65により取得されているコイルdの温度が高いほど、制御電流(目標制御電流)における加算電流を小さくする制御である。換言すると、電流制御部61は、コイルの温度に応じて、制御電流を、開弁電流以上を保ちつつ、小さくする。以下、より具体的に説明する。
【0098】
電流制御部61は、図5に示すように、発熱抑制制御において、コイル温度取得部65により取得された温度が所定温度以上である場合、加算電流を所定量小さくする。換言すると、電流制御部61は、取得温度が所定温度以上となった場合(t1)、目標制御電流における加算電流を、通常加算電流値(例えば差圧5MPa分の加算電流)から高温加算電流値(例えば差圧2MPa分の加算電流)に切り替える。高温加算電流値は、通常加算電流値よりも所定量だけ小さい。その結果、制御電流は、通常の制御電流(開弁電流値+通常加算電流値)から、それよりも小さい高温時の制御電流(開弁電流値+高温加算電流値)に変更される。
【0099】
ブレーキECU6による発熱抑制制御の流れについて説明する。図6に示すように、ブレーキECU6は、増圧モード又は保持モードである場合(S101:Yes)、コイル温度取得部65が取得した温度が所定温度以上であるか否かを判定する(S102)。取得温度が所定温度以上である場合(S102:Yes)、目標制御電流における加算電流を通常加算電流から高温加算電流に変更して小さくする(S103)。
【0100】
第一実施形態によれば、増圧モード又は保持モードにおいてコイルdの温度が所定温度以上になった場合、加算電流が小さくなることで、コイルdに流れる電流が通常時よりも小さくなる。これにより、コイルdの発熱ペースを下げることができる。さらに、第一実施形態によれば、制御電流のうち加算電流を小さくするため、開弁電流は維持される。これにより、発熱抑制制御中であっても、減圧弁41の閉状態が維持され易く、パイロット圧への影響は抑制される。特に、第一実施形態のように、制動力の大小に直接関係するパイロット圧を制御するための常開型の電磁弁(減圧弁41)では、作動液の流量が直接制動力に影響するため、閉弁状態を維持できる効果は大きい。また、上記制御により発熱が抑制されるため、コイルの大型化は不要となる。
【0101】
なお、電流制御部61は、減圧弁41への加算電流を小さくするに際して、図11に示すように、コイル温度取得部65の取得温度に対してリニアに当該加算電流を小さくしても良い。また、電流制御部61は、減圧弁41への加算電流を小さくするに際して、図12に示すように、コイル温度取得部65の取得温度に対して多段的に当該加算電流を小さくしても良い。
【0102】
<第二実施形態>
第二実施形態の車両用制動装置は、主に、発熱抑制制御において加算電流を小さくした後、さらに温度が上昇した場合に、さらに制御電流全体を徐々に小さくする点で、第一実施形態と異なっている。したがって、異なっている部分について説明する。
【0103】
第二実施形態のブレーキECU6は、図7に示すように、第一実施形態に加えてさらに、開弁判定部66を備えている。開弁判定部66は、発熱抑制制御において、減圧弁41が開弁しているか否かを判定する。具体的に、開弁判定部66は、圧力センサ74により実サーボ圧を監視し、保持モードの場合には実サーボ圧が所定圧以上小さくなったか否かを判定する。開弁判定部66は、保持モードにおいて実サーボ圧が安定している場合、減圧弁41が開弁していると判定しない(すなわち閉弁していると判定する)。また、開弁判定部66は、電流検出部62が検出した制御電流(又は目標制御電流)が、開弁電流に所定電流(例えば高温加算電流)を加算した値以上となっている場合に、減圧弁41が開弁していると判定しない。なお、開弁判定部66は、増圧モードの場合、目標サーボ圧の変化割合(傾き)に対する実サーボ圧の変化割合の変化に基づいて、減圧弁41が開弁しているか否かを判定する。
【0104】
図8に示すように、t1において加算電流が所定量小さくなった後、それでもなお温度が上昇し、コイル温度取得部65が取得した温度が第二所定温度以上となった場合(t2)、電流制御部61は、目標制御電流を徐々に小さくする。電流制御部61がゆっくりと(例えばブレーキ踏込時の1/3以下の傾きでも良い)目標制御電流下げると、目標制御電流が開弁電流を下回ると、減圧弁41が開弁し、実サーボ圧が下がり始める。開弁判定部66は、実サーボ圧が所定圧下がった際(t3)に、減圧弁41が開弁していると判定する。第二所定温度は、所定温度より高い温度であり、所定温度とともにブレーキECU6に記憶されている。
【0105】
電流制御部61は、減圧弁41が開弁していると判定されると(t3)、一度、目標制御電流を高温時の制御電流(開弁電流+高温加算電流)に戻す。その後、電流制御部61は、開弁判定部66により減圧弁41が開弁していると判定されてない場合に、目標制御電流を、開弁判定部66が減圧弁41が開弁していると判定した時から所定時間前の目標制御電流に設定する。
【0106】
圧力センサ74は検出する実サーボ圧が所定圧減少するのは、減圧弁41が開弁した後、少し時間が経過してからである。したがって、開弁が判定されてから少しの時間前の制御電流が、実際の開弁電流(すなわち最小閉弁電流)であると推定できる。電流制御部61は、開弁が判定されてから所定時間前の目標制御電流を、実際に閉弁状態を維持できる最小の値(実際の開弁電流に若干電流を加算した値)と仮定して、現状の保持モードにおける目標制御電流に設定する。この開弁判定の所定時間前の目標制御電流を、「仮定閉弁電流」と称する。なお、電流制御部61は、t3において、目標制御電流を、高温時の制御電流に上げることなく、仮定閉弁電流に設定しても良い。このように、電流制御部61は、開弁判定後、開弁判定がなくなるまで制御電流(目標制御電流)を上げる。
【0107】
第二実施形態の発熱抑制制御の流れについて説明する。図9に示すように、ブレーキECU6は、増圧モード又は保持モードである場合(S201:Yes)、コイル温度取得部65が取得した温度が所定温度以上であるか否かを判定する(S202)。取得温度が所定温度以上である場合(S202:Yes)、目標制御電流における加算電流を通常加算電流から高温加算電流に変更して小さくする(S203)。
【0108】
続いて、制御モードが増圧モード又は保持モードである場合(S204:Yes)、電流制御部61は、コイル温度取得部65の取得温度が第二所定温度以上であるか否かを判定する(S205)。取得温度が第二所定温度以上である場合(S205:Yes)、電流制御部61は、開弁判定部66が減圧弁41の開弁を検知するまで、目標制御電流を徐々に小さくしていく(S206)。開弁判定部66が減圧弁の開弁を検知すると(S207:Yes)、電流制御部61は、目標制御電流を減圧弁41が閉弁するのに十分な値(例えば高温時の制御電流)にまで上げ、減圧弁41を閉弁させる(S208)。つまり、電流制御部61は、閉弁可能な制御電流を印加する。その後、電流制御部61は、保持モードが維持されていることを前提に、目標制御電流を、仮定開弁電流に設定する(S209)。
【0109】
第二実施形態によれば、加算電流を所定量下げた後もコイルdの温度が上昇する場合、さらに制御電流を小さくし、発熱を抑制することができる。また、第二実施形態によれば、制御電流を小さくして、減圧弁41が開弁した場合、それを検知して再び減圧弁41を閉弁させるため、パイロット圧への影響は抑制され、パイロット圧及び制動力への影響も抑制される。また、第二実施形態によれば、開弁判定の所定時間前の目標制御電流(仮定閉弁電流)を、実際に閉弁を維持できる最小の電流値として目標制御電流に設定するため、閉弁を維持しつつ、制御電流を極力小さくし、コイルdの発熱を効果的に抑制することができる。
【0110】
なお、電流制御部61は、制御電流を徐々に小さくするに際して、図11又は図12に示すように、コイル温度取得部65の取得温度に対してリニアに又は多段的に制御電流を小さくしても良い。
【0111】
<第三実施形態>
第三実施形態の車両用制動装置は、第二実施形態と比較して、主に図8のt3以後の制御が異なっている。したがって、異なっている部分について説明する。
【0112】
第三実施形態の電流制御部61は、図8のt2以降のように制御電流を徐々に小さくしていき、例えば停車状態の維持を困難とするような所定条件が満たされると、増圧弁42に対する目標制御電流を増圧弁42の最小開弁電流(増圧弁42が開弁する最小の値)以上の値に設定する。すなわち、電流制御部61は、図10に示すように、取得温度が第二所定温度以上となると減圧弁41に対する制御電流を徐々に小さくし(t2〜t4)、所定条件が満たされると増圧弁42を開弁させる(t4)。
【0113】
所定条件は、車輪速度センサ76が車速を検出すること、あるいは実サーボ圧が不感帯の範囲外となることである。電流制御部61は、所定条件が満たされたか否かを判定する。通常のブレーキ制御では、実サーボ圧が不感帯の範囲外(下方)に位置した場合、制御モードは保持モードから増圧モードとなり、増圧弁42が開弁され、減圧弁41が閉弁される。しかし、第三実施形態の電流制御部61は、制御電流を徐々に小さくする発熱抑制制御中の場合、モードが変更されても減圧弁41を閉弁させない。
【0114】
電流制御部61は、増圧弁42を開弁するとともに、減圧弁41に対する制御電流の減少を停止し、車両停止に必要なパイロット圧となるようにパイロット圧を増大させる。つまり、電流制御部61は、減圧弁41及び増圧弁42をともに開弁状態とする。これにより、第三実施形態の車両用制動装置は、車両停止の維持に必要な液圧(パイロット圧)を維持しつつ、コイルdの発熱を減圧弁41と増圧弁42に分散させることができ、減圧弁41のコイルdの発熱をさらに抑制することができる。
【0115】
電流制御部61は、制御モードに応じて増圧弁42を開弁させる。電流制御部61は、増圧モード又は保持モードである際、減圧弁41が開弁しても当該制御モード(増圧モード又は保持モード)が維持されるように増圧弁42を開弁させる。換言すると、電流制御部61は、減圧弁41が開弁した際、制御モードに応じて増圧弁42に制御電流を導通させる。この構成の作用効果は、加算電流の設定の有無によらず発揮される。
【0116】
また、設定された開弁電流が実際の開弁電流以下に設定されていた場合、加算電流の減少により減圧弁41が開弁する。したがって、電流制御部61は、減圧弁41が開弁するまで加算電流のみを小さくしていき、その加算電流の減少に応じた制御電流(「第二コイル電流」に相当する)を増圧弁42に導通させ、少なくとも減圧弁41の開弁により流出した作動液を補填するように、増圧弁42を開弁させても良い。この際、増圧モードであれば流出量以上の作動液が充填されるように増圧弁42が開弁され、保持モードであれば流出量を補填する量の作動液が充填されるように増圧弁42が開弁される。
【0117】
なお、電流制御部61は、所定条件によらず、例えば減圧弁41への制御電流を徐々に小さくする制御の開始とともに、増圧弁42への制御電流を徐々に大きくするあるいは最小開弁電流以上にするように設定されていても良い。また、所定条件に、開弁判定部66の判定を加えても良い。また、電流制御部61は、減圧弁41への制御電流を徐々に小さくするに際して、図11又は図12に示すように、コイル温度取得部65の取得温度に対してリニアに又は多段的に当該制御電流を小さくしても良い。
【0118】
このように第三実施形態の電流制御部61は、指示取得部64により増圧指示又は保持指示が取得されている場合に、コイル温度取得部65により取得されているコイルdの温度に応じて減圧弁41の開弁電流よりも小さな制御電流を減圧弁41に導通させ、当該導通させるに際し、増圧弁42にその最小開弁電流よりも大きな制御電流を導通させる。
【0119】
<その他変形態様>
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、コイル温度取得部65は、コイルdの抵抗から温度を推定するのではなく、例えばエンジンルームの雰囲気温度等から推定しても良い。コイル温度取得部65は、例えば、イグニションがオンされてからコイルdに流れた制御電流の積算(積算値)に基づいてコイルdの温度を推定しても良い。また、コイル温度取得部65は、上記雰囲気温度と上記積算値とに基づいてコイルdの温度を推定しても良い。また、コイル温度取得部65は、上記各推定方法に加えて、コイルdの放熱量を算出し、当該放熱量にも基づいてコイルdの温度を推定しても良い。その他、温度の取得には、コイルdの温度を直接的に検出するものを利用しても良い。
【0120】
なお、本発明における「温度が高いほど電流を小さくする」には、少なくとも、温度の変化に応じて電流を一段階変化させること(図5参照)、温度の変化に対応して電流をリニアに変化させること(図11参照)、及び温度の変化に応じて電流を多段階変化させること(図12参照)が含まれる。
【0121】
また、本発明の発熱抑制制御は、換言すると、指示取得部64により増圧指示又は保持指示が取得されている場合に、制御結果として、図5に示すように、通常制御Aと、コイル温度取得部65により取得されたコイルdの温度が通常制御での温度より高く且つ加算電流が通常制御での加算電流より小さい高温制御Bとが含まれる制御といえる。この構成であっても、上記実施形態と同様の効果が発揮される。
【符号の説明】
【0122】
1:マスタシリンダ、 11:メインシリンダ、 12:カバーシリンダ、
13:入力ピストン、 14:第1マスタピストン、
15:第2マスタピストン、 1A:サーボ室、 1B:第一液圧室、
1C:第二液圧室、 1D:第1マスタ室、 1E:第2マスタ室、
10:ブレーキペダル、 171:リザーバ(低圧源)、
2:反力発生装置、 22:第一制御弁、 3:第二制御弁、
4:サーボ圧発生装置、 41:減圧弁(常開型の電磁弁)、
42:増圧弁(常閉型の電磁弁)、 431:アキュムレータ、
44:レギュレータ、 445:制御ピストン、 4D:第1パイロット室(液圧室)、
541、542、543、544:ホイールシリンダ、
5FR、5FL、5RR、5RL:車輪、 BF:液圧制動力発生装置、
6:ブレーキECU(制御部)、 61:電流制御部、 62:電流検出部、
63:電圧印加部、 64:指示取得部、 65:コイル温度取得部、
66:開弁判定部、 71:ストロークセンサ、
73、74、75:圧力センサ、 76:車輪速度センサ、 d:コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12