【解決手段】複数の蓄電池1,2と、各蓄電池と複数の負荷との間に介在され、各負荷に蓄電池の少なくともいずれかから電力を供給する電源ボックス3とを備えた自動車の電源装置において、各蓄電池1,2から供給される電力を、電源ボックス3から各負荷8毎に一本の電源配線7で供給し、各蓄電池から各負荷への電力の供給を許容するとともに各蓄電池間の電流の回り込みを阻止する電流制御手段4,5を備えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された電源装置では、バッテリーが失陥した場合には、バックアップ電源を充電することができないため、負荷に安定して電力を供給することができない。
また、電源の冗長化を図るために、バッテリーとバックアップ電源から各負荷に電力を供給するためにそれぞれ2本ずつの電源配線が必要となるため、電源供給配線の本数が増大し、コストも上昇する。
【0006】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は負荷に対し安定して電力を供給可能としながら、電源供給配線の本数を削減し得る自動車の電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する自動車の電源装置は、複数の蓄電池と、前記各蓄電池と複数の負荷との間に介在され、前記各負荷に前記蓄電池の少なくともいずれかから電力を供給する電源ボックスとを備えた自動車の電源装置において、前記各蓄電池から供給される電力を、前記電源ボックスから前記各負荷に一本の電源配線で供給し、前記各蓄電池から前記各負荷への電力の供給を許容するとともに各蓄電池間の電流の回り込みを阻止する電流制御手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成により、一本の電源配線で各蓄電池の少なくともいずれかから各負荷に電力を供給可能となるとともに、各蓄電池間の電流の回り込みを阻止可能となる。
また、上記の自動車の電源装置において、前記電流制御手段は、前記電源配線と前記各蓄電池との間にそれぞれ介在される複数のスイッチ手段と、前記各蓄電池の出力電圧を監視する電源監視部と、前記電源監視部が、前記各蓄電池の出力電圧に電位差を検知したとき、出力電圧が低い蓄電池に接続されるスイッチ手段を不導通とするスイッチ制御部とを備え、少なくとも前記スイッチ手段を前記電源ボックス内に設けることが好ましい。
【0009】
この構成により、各蓄電池からスイッチ手段及び電源配線を介して負荷に電力が供給され、蓄電池に電位差が生じると、出力電圧が低い蓄電池に接続されるスイッチ手段が不導通となって、電流の回り込みが阻止される。
【0010】
また、前記電源監視部は、前記各蓄電池の出力電圧を比較する比較器を備えることが好ましい。
この構成により、各蓄電池の出力電圧が比較器で比較されて、出力電圧の低い蓄電池に接続されるスイッチ手段が比較器の出力信号に基づいて不導通となる。
【0011】
また、上記の自動車の電源装置において、前記電源監視部は、前記各蓄電池の出力電圧、あるいは出力電圧の電位差が異常範囲となったことを検知したとき、当該蓄電池に接続されるスイッチ手段を不導通状態とする電源監視部を前記電源ボックス内に備えることが好ましい。
【0012】
この構成により、電源監視部で蓄電池の出力電圧が監視され、出力電圧が異常範囲となったとき、あるいは出力電圧の電位差が異常範囲となったとき、出力電圧が低い蓄電池に接続されるスイッチ手段が不導通となる。
【0013】
また、上記の自動車の電源装置において、前記蓄電池のうち、いずれか一つの蓄電池はスタータモータと直接接続され、該いずれか一つの蓄電池に接続されるスイッチ手段は、前記スタータモータの作動時に不導通状態とされることが好ましい。
【0014】
この構成により、スタータモータの作動時に、該スタータモータに電力を供給する蓄電池に接続されるスイッチ手段が不導通となる。
また、上記の自動車の電源装置において、前記電流制御手段は、前記各蓄電池側にアノードがそれぞれ接続され、前記電源配線側にカソードが接続されさる複数のダイオードで構成してなることが好ましい。
【0015】
この構成により、蓄電池からダイオードを介して負荷に電力が供給されるとともに、蓄電池間の電流の回り込みがダイオードにより阻止される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自動車の電源装置によれば、負荷に対し安定して電力を供給可能としながら、電源供給配線の本数を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施形態)
以下、自動車の電源装置の第一の実施形態を
図1に従って説明する。メインバッテリー1及びサブバッテリー2は、電源ボックス3に接続される。電源ボックス3内には、ダイオード(電流制御部)4,5とヒューズ6が配設され、前記メインバッテリー1の出力電力がダイオード4のアノードに供給され、前記サブバッテリー2の出力電力がダイオード5のアノードに供給される。
【0019】
前記ダイオード4,5のカソードは共通のヒューズ6の一端に接続され、そのヒューズ6の他端は電源ボックス3外に延設される電源配線7を介して負荷(ECU)8に接続される。負荷8には、一つの負荷に対し一本の電源配線7で電力が供給され、電源ボックス3から多数の負荷に電力が供給される場合は、電源配線7が分岐されて、各負荷毎に1本の電源配線で電力が供給される。なお、この実施形態の負荷8は、電力消費の少ない小電力容量の負荷である。
【0020】
メインバッテリー1及びサブバッテリー2は、例えば回生動作時にオルタネータ(図示しない)から電力が供給されて充電される。
次に、上記のように構成された電源装置の作用を説明する。
【0021】
メインバッテリー1及びサブバッテリー2が正常に充電されてほぼ同電圧を出力している状態では、メインバッテリー1及びサブバッテリー2の少なくともいずれかからダイオード4,5及びヒューズ6を介して負荷8に電力が供給される。
【0022】
例えば、サブバッテリー2が正常に充電されている状態で、メインバッテリー1の出力電圧が低下した場合、あるいはメインバッテリー1が失陥した場合には、サブバッテリー2からダイオード5及びヒューズ6を介して負荷8に電力が供給される。
【0023】
このとき、ダイオード4の作用により、サブバッテリー2からメインバッテリー1への電流の流れ込みが阻止されるので、メインバッテリー1とともにサブバッテリー2が失陥することはない。
【0024】
同様に、メインバッテリー1が正常に充電されている状態で、サブバッテリー2の出力電圧が低下した場合、あるいはサブバッテリー2が失陥した場合には、メインバッテリー1からダイオード4及びヒューズ6を介して負荷8に電力が供給される。
【0025】
このとき、ダイオード5の作用により、メインバッテリー1からサブバッテリー2への電流の流れ込みが阻止されるので、サブバッテリー2とともにメインバッテリー1が失陥することはない。
【0026】
上記のような自動車の電源装置では、次に示す効果を得ることができる。
(1)メインバッテリー1とサブバッテリー2のいずれか一方の出力電圧が低下し、あるいは失陥した場合、他方のバッテリーから負荷8に電力を供給することができる。従って、電源の冗長化を図り、負荷8に所要の電力を安定して供給することができる。
(2)電源ボックス3から負荷8まで1本の電源配線7で電力を供給することができる。従って、電源配線7の本数を削減することができるので、自動車の車両重量の低減に寄与するとともに、コストを低減することができる。
(3)ダイオード4,5の動作により、メインバッテリー1とサブバッテリー2との間の電流の回り込みを阻止することができる。従って、一方のバッテリーが失陥した場合、あるいは出力電圧が低下した場合に、他方のバッテリーの無用な放電を阻止して、当該バッテリーを保護することができる。
(第二の実施形態)
図2及び
図3は、第二の実施形態を示す。この実施形態は、第一の実施形態のダイオードに代えて、リレーを使用したものである。第一の実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明する。
【0027】
電源ボックス11にはリレー12,13と比較器14,15が配設されている。リレー12の接点t1の一方の端子にはメインバッテリー1が接続され、リレー13の接点t2の一方の端子にはサブバッテリー2が接続されている。
【0028】
比較器14,15には、メインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svがそれぞれ入力されている。
比較器14はメインバッテリー1とサブバッテリー2の出力電圧mv,svを比較し、メインバッテリー1の出力電圧mvがサブバッテリー2の出力電圧svより低いとき、Hレベルの出力信号を出力することにより、リレー12のコイルに励磁電流を流すように動作する。
【0029】
そして、リレー12ではコイルに励磁電流が流れると、リレー12の接点t1が不導通状態となるように制御される。
比較器15はメインバッテリー1とサブバッテリー2の出力電圧mv,svを比較し、サブバッテリー2の出力電圧svがメインバッテリー1の出力電圧mvより低いとき、Hレベルの出力信号を出力することにより、リレー13のコイルに励磁電流を流すように動作する。
【0030】
そして、リレー13ではコイルに励磁電流が流れると、リレー13の接点t2が不導通状態となるように制御される。
なお、リレー12,13は、メインバッテリー1とサブバッテリー2の出力電圧mv,svに基づく比較器14,15の動作により、いずれか一方が導通状態となる。メインバッテリー1とサブバッテリー2の出力電圧mv,svがほぼ同一であるとき、リレー12,13の切り替わり動作が頻繁に繰り返されないように、各バッテリー1,2の短周期の電圧変動を吸収するフィルター手段を各比較器14,15の入力端子に接続するとよい。
【0031】
また、比較器14,15にはリレー12,13のコイルに充分な励磁電流を供給可能とする出力回路を備える必要がある。
前記リレー12,13の接点t1,t2の他方の端子は互いに接続されるとともに、ヒューズ16,17の一端に接続されている。
【0032】
ヒューズ16の他端は、負荷リレー18の接点及び電源配線20を介して負荷(例えばワイパーモータ)22に接続される。ヒューズ17の他端は、負荷リレー19の接点及び電源配線21を介して負荷(ランプ)23に接続されている。モータ22及びランプ23は電力容量の大きい負荷である。また、前記負荷リレー18,19は、運転者の操作に基づいて開閉されるリレーである。
【0033】
次に、上記のように構成された電源装置の作用を説明する。
メインバッテリー1及びサブバッテリー2が正常に充電されてほぼ同電圧を出力している状態では、リレー12,13の接点t1,t2のいずれかが導通状態となる。すると、メインバッテリー1及びサブバッテリー2のいずれかから、ヒューズ16,17及び負荷リレー18,19を介して負荷22,23に電力を供給可能となる。
【0034】
図3に示すように、メインバッテリー1が地絡状態となって出力電圧mvがサブバッテリー2の出力電圧svより大きく低下すると、比較器14,15の動作によりリレー12の接点が不導通状態となり、リレー13の接点t2が導通状態となる。
【0035】
この状態では、サブバッテリー2からリレー13、ヒューズ16,17及び負荷リレー18,19を介して負荷22,23に電力を供給可能となる。
また、リレー12の接点t1が不導通状態となるため、サブバッテリー2からメインバッテリー1への電流の回り込みが防止され、サブバッテリー2が保護される。
【0036】
一方、サブバッテリー2が地絡状態となって出力電圧svが低下すると、比較器14,15の動作によりリレー13の接点t2が不導通状態となり、リレー12の接点t1が導通状態となる。
【0037】
この状態では、メインバッテリー1からリレー12、ヒューズ16,17及び負荷リレー18,19を介して負荷22,23に電力を供給可能となる。
また、リレー13の接点t2が不導通状態となるため、メインバッテリー1からサブバッテリー2への電流の回り込みが防止され、メインバッテリー1が保護される。
【0038】
上記のような自動車の電源装置では、次に示す効果を得ることができる。
(1)メインバッテリー1とサブバッテリー2のいずれか一方の出力電圧が低下し、あるいは失陥した場合、他方のバッテリーから負荷22,23に電力を供給することができる。従って、電源の冗長化を図り、負荷に所要の電力を安定して供給することができる。
(2)電源ボックス11から各負荷22,23まで1本の電源配線20,21で電力を供給することができる。従って、電源配線20,21の本数を削減することができるので、自動車の車両重量の低減に寄与するとともに、コストを低減することができる。
(3)比較器14,15の動作に基づいて開閉されるリレー12,13により、メインバッテリー1とサブバッテリー2との間の電流の回り込みを阻止することができる。従って、一方のバッテリーが失陥した場合、あるいは出力電圧が低下した場合に、他方のバッテリーの無用な放電を阻止して、当該バッテリーを保護することができる。
(4)リレー12,13の接点t1,t2に充分な電力容量を確保することが容易であるため、モータやランプのような大電流の供給を必要とする負荷22,23に対し、電源の冗長化を図りながら、電源配線20,21の本数を削減することができる。
(第三の実施形態)
図4〜
図9は、第三の実施形態を示す。この実施形態は、第二の実施形態の比較器14,15に代えてマイコンでリレー12,13を開閉制御する構成としたものである。第二の実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0039】
図4に示すように、電源ボックス31内にはマイコン32が備えられ、そのマイコン32には電源監視部33とリレー制御部34が設けられている。
電源監視部33には、メインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svが入力される。そして、電源監視部33は各出力電圧mv,svに基づいてリレー制御部34を駆動して、リレー12,13のコイルに励磁電流を供給し、各リレー12,13の接点t1,t2のいずれかあるいは両方が導通状態となるように制御する。
【0040】
前記電源監視部33には、リレー12,13を開閉制御するプログラムが複数備えられ、いずれかのプログラムを選択してリレー12,13の開閉動作を制御することが可能である。以下に、各プログラムに基づく開閉制御動作について説明する。
【0041】
[第一の開閉制御]
図7に示すように、電源監視部33はメインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svを監視しながら、メインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svとを比較する(ステップ1,2)。
【0042】
そして、ステップ2において、メインバッテリー1の出力電圧mvがサブバッテリー2の出力電圧svより高い電圧であると、リレー12の接点t1を導通状態とし、リレー13の接点t2を不導通とする(ステップ3,4)。この状態では、メインバッテリー1から負荷22,23に電力を供給可能である。
【0043】
また、ステップ2において、サブバッテリー2の出力電圧svがメインバッテリー1の出力電圧mvより高い電圧であると、リレー12の接点t1を不導通状態とし、リレー13の接点t2を導通状態とする(ステップ5,6)。この状態では、サブバッテリー2から負荷22,23に電力を供給可能である。このような開閉制御動作は、第二の実施形態と同様である。
【0044】
[第二の開閉制御]
図8に示すように、電源監視部33はメインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svを監視しながら、メインバッテリー1の出力電圧mvとあらかじめ設定されたしきい値電圧vtとを比較する(ステップ11,12)。
【0045】
しきい値電圧vtは、メインバッテリー1及びサブバッテリー2の出力電圧mv,svが正常であると判定するための下限電圧である。
図5に示すように、ステップ12で、メインバッテリー1の出力電圧mvがしきい値電圧より低いと、メインバッテリー1が正常に動作していないと判定して、リレー12の接点t1を不導通状態とする(ステップ13)。
【0046】
また、メインバッテリー1の出力電圧mvがしきい値電圧vtより高ければ、メインバッテリー1が正常に動作していると判定して、リレー12の接点t1を導通状態とする(ステップ14)。
【0047】
次いで、サブバッテリー2の出力電圧svとあらかじめ設定されたしきい値電圧vtとを比較する(ステップ15)。
ステップ15で、サブバッテリー2の出力電圧svがしきい値電圧vtより低いと、サブバッテリー2が正常に動作していないと判定して、リレー13の接点t2を不導通状態として(ステップ16)、開閉制御動作を終了する。
【0048】
また、サブバッテリー2の出力電圧svがしきい値電圧vtより高ければ、サブバッテリー2が正常に動作していると判定して、リレー13の接点t2を導通状態として(ステップ17)、開閉制御動作を終了する。
【0049】
このような開閉制御動作では、メインバッテリー1及びサブバッテリー2の出力電圧mv,svがともにしきい値電圧vtより高ければ、リレー12,13の接点t1,t2はともに導通状態となる。従って、モータ22及びランプ23にはメインバッテリー1及びサブバッテリー2から電力が供給される。
【0050】
また、メインバッテリー1及びサブバッテリー2の出力電圧mv,svのいずれか一方がしきい値電圧vtより低くなると、出力電圧が正常に維持されているバッテリーから電力が供給される。
【0051】
このとき、出力電圧がしきい値電圧vtより低くなったバッテリーに接続されるリレーの接点は不導通状態となるため、正常なバッテリーから異常状態にあるバッテリーヘの電流の回り込みが阻止される。
【0052】
また、メインバッテリー1及びサブバッテリー2の出力電圧mv,svがいずれもしきい値電圧vtより低い場合には、リレー12,13の接点t1,t2はともに不導通状態となり、負荷への電力供給が遮断される。
【0053】
[第三の開閉制御]
図9に示すように、電源監視部33はメインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svを監視しながら、メインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svの電位差vdを算出する(ステップ21,22)。
【0054】
次いで、算出された電位差vdが予め設定されたしきい値vdt以下であるか否かを判定する(ステップ23)。しきい値vdtは、メインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリーの出力電圧svの電位差vdの上限を設定するものであり、電位差vdがしきい値vdtを超えるときには、メインバッテリー1とサブバッテリー2のいずれかの出力電圧が大きく低下している場合である。
【0055】
図6に示すように、ステップ23で電位差vdがしきい値vdt以下である場合には、リレー12,13の接点t1,t2をともに導通状態とする(ステップ24,25)。
ステップ23で、電位差vdがしきい値vdtより大きい場合には、ステップ26に移行して、メインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svを比較する。
【0056】
そして、メインバッテリー1の出力電圧mvがサブバッテリー2の出力電圧svより高い場合には、サブバッテリー2の出力電圧svが異常であると判定して、リレー12の接点t1を導通状態とし、リレー13の接点t2を不導通とする。すると、負荷22,23にはメインバッテリー1から電力を供給可能となる。
【0057】
ステップ26で、サブバッテリー2の出力電圧svがメインバッテリー1の出力電圧mvより高い場合には、メインバッテリー1の出力電圧mvが異常であると判定して、リレー13の接点t2を導通状態とし、リレー12の接点t1を不導通とする。すると、負荷22,23にはサブバッテリー2から電力を供給可能となる。
【0058】
上記のような自動車の電源装置では、第二の実施形態で得られた効果の(1)(2)及び(4)に加えて、次に示す効果を得ることができる。
(1)電源監視部33の動作に基づいて開閉されるリレー12,13により、メインバッテリー1とサブバッテリー2との間の電流の回り込みを阻止することができる。従って、一方のバッテリーが失陥した場合、あるいは出力電圧が低下した場合に、他方のバッテリーの無用な放電を阻止して、当該バッテリーを保護することができる。
(2)第二の開閉制御では、メインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリーの出力電圧svがしきい値電圧vtより低くなったとき、すなわち異常電圧となったときにリレー12,13の接点t1,t2を不導通とする。従って、メインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svがともにしきい値電圧vtより高ければ、接点t1,t2をともに導通状態として、メインバッテリー1及びサブバッテリー2から負荷に電力を供給することができる。
(3)第三の開閉制御では、メインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svの電位差vdに基づいてリレー12,13の接点t1,t2を開閉制御する。従って、メインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svがともに低下しても、その電位差vdがしきい値vdtを超えなければ、メインバッテリー1及びサブバッテリー2から負荷に電力を供給することができる。また、メインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svがともに低下し、かつ電位差vdがしきい値vdtを超えた場合にも、出力電圧の高い一方のバッテリーから負荷に電力を供給することができる。
(第四の実施形態)
図10〜
図12は、第四の実施形態を示す。この実施形態は、電源ボックス外に備えられた電源監視ECUにより電源ボックス内のリレーを開閉制御する構成としたものである。第三の実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
メインバッテリー1及びサブバッテリー2の出力電圧mv,svは、電源ボックス41の外部に配設される電源監視ECU44に入力される。
また、メインバッテリー1から電力が供給されるスタータモータ45は、その始動時にスタータ始動信号stを電源監視ECU44に出力する。
【0060】
電源監視ECU44は、メインバッテリー1及びサブバッテリー2の出力電圧mv,svと、スタータ始動信号st及びあらかじめ設定されているプログラムに基づいて、電源ボックス41内のリレー12,13を開閉制御する。
【0061】
次に、電源監視ECU44の作用を
図11及び
図12に従って説明する。
図12に示すように、メインバッテリー1の出力電圧mvとサブバッテリー2の出力電圧svを監視している(ステップ31,32)。
【0062】
ステップ32で、メインバッテリー1の出力電圧mvの低下が検出されると、電源監視ECU44はリレー12の接点t1を不導通状態とし(ステップ33)、ステップ35に移行する。
【0063】
また、ステップ32で、メインバッテリー1の出力電圧mvの低下が検出されないと、電源監視ECU44はリレー12の接点t1を導通状態とし(ステップ34)、ステップ35に移行する。
【0064】
ステップ35で、サブバッテリー2の出力電圧svの低下が検出されると、電源監視ECU44はリレー13の接点t2を不導通状態とし(ステップ36)、ステップ38に移行する。
【0065】
また、ステップ35で、サブバッテリー2の出力電圧mvの低下が検出されないと、電源監視ECU44はリレー13の接点t2を導通状態とし(ステップ37)、ステップ38に移行する。
【0066】
次いで、ステップ38ではスタータ始動信号stの入力を監視している。
図11に示すように、スタータ始動信号stが入力されると(ステップ39)、サブバッテリー2の出力電圧svが正常であるか否かを判定し(ステップ40)、正常である場合には、リレー12の接点t1を不導通状態とする(ステップ41)。
【0067】
この状態で、スタータモータ45が作動すると、
図11に示すように、メインバッテリー1の出力電圧mvが一時的に低下する電源ノイズNが発生するが、接点t1が不導通状態であるので、この電源ノイズNは負荷に影響を及ぼすことはない。そして、スタータモータ45の作動の終了後は、接点t1は導通状態に復帰する。
【0068】
ステップ39で、スタータ始動信号stが入力されない場合は、接点t1を導通状態に維持する(ステップ42)。また、ステップ40でサブバッテリー2の出力電圧svが正常ではない場合には、ステップ42に移行して、接点t1を導通状態に維持する。
【0069】
従って、スタータ始動時にサブバッテリー2が正常に電力供給できないときには、メインバッテリー1から各負荷に電力を供給することにより、負荷への電力供給が継続可能となる。
【0070】
上記のような自動車の電源装置では、電源監視ECU44に第三の実施形態の電源監視部と同様な機能を持たせることにより、第三の実施形態と同様な効果を得ることができるとともに、次に示す効果を得ることができる。
(1)メインバッテリー1から電力が供給されるスタータモータ45の始動に先立って、リレー12の接点t1を不動通状態とすることができる。従って、スタータモータ45の動作によりメインバッテリー1の出力電圧mvに発生する電源ノイズNを負荷に伝達しないようにすることができる。負荷として電源ノイズの影響を受けやすい電子機器を接続する場合に有用である。
(2)サブバッテリー2が正常に電力を供給できない場合には、スタータモータ45の始動時にも、リレー12の接点t1を導通状態に維持することができる。従って、スタータモータ45の始動時に負荷への電力供給が遮断されないようにすることができる。
【0071】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・第二〜第四の実施形態において、リレー12,13に代えて、
図13に示すパワーMOSFET46を使用してもよい。
・第四の実施形態において、メインバッテリー1及びサブバッテリー2に接続されるバッテリーセンサーで各バッテリーから出力される電流を検出する(ステップ32)ことにより、各バッテリー1,2の出力電圧を検出するようにしてもよい。第一〜第三の実施形態においても同様である。