は環を形成していてもよく、(AO)nは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも2種のオキシアルキレン基がランダム重合してなるポリオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、3〜400の数である。)
前記付加反応は、酸触媒下でヒドロキシル基にジヒドロピラン、2,3−ジヒドロフラン、アルキルビニルエーテル又はアルキルプロペニルエーテルを付加させる反応である請求項8に記載の非イオン性界面活性剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の非イオン性界面活性剤は、末端に一般式(1)で示される構造を有することを特徴とする。
【化8】
(式中、R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成していてもよく、(AO)nは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも2種のオキシアルキレン基がランダム重合してなるポリオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、3〜400の数である。)
【0031】
本発明の非イオン性界面活性剤におけるAO(オキシアルキレン基)は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシブチレン基である。
AOが複数個結合してなるポリオキシアルキレン鎖[(AO)n]は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも2種のオキシアルキレン基がランダム重合してなる。
【0032】
ここで、本明細書において、オキシアルキレン基がランダム重合してなるポリオキシアルキレン鎖を有する界面活性剤(以下、本明細書において、単にランダム重合界面活性剤ともいう)は、以下のように定められる。
ランダム重合界面活性剤は、ポリオキシアルキレン鎖の構造が制御されておらず、オキシアルキレン基に含まれるオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基の並び方の順序が異なる複数の化合物の混合物である。
【0033】
さらに、界面活性剤が、オキシアルキレン基がブロック重合してなるポリオキシアルキレン鎖を有する化合物のみを含む場合は、ランダム重合界面活性剤には該当しない。
本明細書において、オキシアルキレン基がブロック重合してなるポリオキシアルキレン鎖を有する界面活性剤を、ブロック重合界面活性剤ともいう。
【0034】
「オキシアルキレン基がブロック重合してなるポリオキシアルキレン鎖」の構造を説明すると、下記式(a)〜(l)のような構造のポリオキシアルキレン鎖は、オキシアルキレン基がブロック重合してなるポリオキシアルキレン鎖である。
−(EO)x−(PO)y− (a)
−(PO)y−(EO)x− (b)
−(EO)x−(BO)z− (c)
−(BO)z−(EO)x− (d)
−(PO)y−(BO)z− (e)
−(BO)z−(PO)y− (f)
−(EO)x−(PO)y−(BO)z− (g)
−(EO)x−(BO)z−(PO)y− (h)
−(PO)y−(EO)x−(BO)z− (i)
−(PO)y−(BO)z−(EO)x− (j)
−(BO)z−(EO)x−(PO)y− (k)
−(BO)z−(PO)y−(EO)x− (l)
(上記式(a)〜(l)において、(EO)x、(PO)y、(BO)zはそれぞれオキシエチレン基xモルが連続してブロック重合してなる構造、オキシプロピレン基yモルが連続してブロック重合してなる構造、オキシブチレン基zモルが連続してブロック重合してなる構造をそれぞれ表す。)
【0035】
そして、一般式(1)に示す構造においてポリオキシアルキレン鎖[(AO)n]が上記式(a)〜(l)のような構造を有する界面活性剤は、ブロック重合界面活性剤であり、本発明の界面活性剤(ランダム重合界面活性剤)には該当しない。
また、一般式(1)に示す構造においてポリオキシアルキレン鎖[(AO)n]が上記式(a)〜(l)のような構造を有するブロック重合界面活性剤のみが複数種類混合されてなる界面活性剤も、ブロック重合界面活性剤に分類され、本発明の界面活性剤(ランダム重合界面活性剤)には該当しない。
ただし、ランダム重合界面活性剤の中に、ブロック重合界面活性剤が含まれている場合は、本発明の界面活性剤(ランダム重合界面活性剤)に該当する。
【0036】
また、ポリオキシアルキレン鎖が−(PO)
o1−(EO)
p1−(PO)
q1−(o1、p1及びq1は1以上の整数である)の構造、−(EO)
o2−(PO)
p2−(EO)
q2−(o2、p2及びq2は1以上の整数である)構造等の、いわゆるプルロニック型の界面活性剤のように、EO、PO又はBOの繰り返し単位がポリオキシアルキレン鎖の複数箇所に存在する構造の化合物は、ランダム重合界面活性剤に分類する。
【0037】
オキシアルキレン基の平均付加モル数nは、3〜400であり、nの好ましい範囲は3〜100、より好ましい範囲は5〜50である。
通常、本発明の非イオン性界面活性剤は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基の付加モル数の合計n、すなわちAOの付加モル数nが異なる複数の化合物の混合物である。
非イオン性界面活性剤の分子のそれぞれに含まれるAOの付加モル数は整数値であるが、AOの付加モル数を測定した場合の測定値は、非イオン性界面活性剤の分子のそれぞれに含まれるAOの付加モル数の平均値(平均付加モル数)として測定される。本発明の対象物である非イオン性界面活性剤のAOの平均付加モル数を測定して、測定値が3〜400の間に入っていることを確認できれば、AOの付加モル数nは3〜400の数であると判断できる。
また、本発明の非イオン性界面活性剤は、AOの種類が異なる複数の化合物の混合物であってもよい。具体的には、AOとしてオキシエチレン基とオキシプロピレン基を含む化合物、オキシエチレン基とオキシブチレン基を含む化合物、オキシプロピレン基とオキシブチレン基を含む化合物、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とオキシブチレン基を含む化合物の4種類が考えられるが、これら4種類のうちの2種類又は3種類が界面活性剤に含まれていてもよい。
これらの中では、AOとしてオキシエチレン基とオキシプロピレン基を含む界面活性剤が望ましく、ポリオキシアルキレン鎖がオキシエチレン基及びオキシプロピレン基がランダム重合してなる構造を有する界面活性剤が望ましい。
【0038】
また、オキシアルキレン基に含まれるオキシエチレン基の割合の望ましい下限値は、50モル%であり、より望ましい下限値は75モル%である。また、オキシエチレン基の割合の望ましい上限値は95モル%であり、より望ましい上限値は90モル%である。
オキシエチレン基の割合が50モル%以上であると、オキシアルキレン基部分の親水性が高まり、親水基部分の構造として適した構造となる。
【0039】
オキシアルキレン基に含まれるオキシエチレン基の割合は、AO(オキシアルキレン基)としてオキシエチレン基(EO)を含み、オキシプロピレン基(PO)及び/又はオキシブチレン基(BO)を含む場合に、AOに含まれるオキシエチレン基の平均付加モル数x、オキシプロピレン基の平均付加モル数y、オキシブチレン基の平均付加モル数zを用いて“[x/(x+y+z)]×100(%)”で示される値である。
【0040】
一般式(1)におけるR
1は、水素原子またはアルキル基である。
R
1がアルキル基である場合、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であれば特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0041】
上記一般式(1)で示される構造は、アセタール構造である。
アセタール構造は、ヒドロキシル基の保護基として用いられる構造であり、ヒドロキシル基末端をアセタール構造とすることでヒドロキシル基が塩素剤と反応することによる塩素剤の失活を防止することができる。
【0042】
アセタール構造は中性及びアルカリ性下で安定な構造であるため、中性及びアルカリ性の洗浄剤組成物に使用することに適した界面活性剤とすることができる。
また、アセタール構造は、アルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基に対する付加反応により生成させることができる。この付加反応は反応率が高いため、アルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基が残存しないように末端を封鎖させることができる。
すなわち、アセタール構造は、「中性及びアルカリ性環境下での安定性が高い」という特徴と「付加反応により形成されるためヒドロキシル基が残存しない」という特徴を有する。
【0043】
有機合成の分野で用いられる、ヒドロキシル基を保護するための保護基としてアセタール構造以外の保護基(例えば、メチル基、ベンジル基、アセチル基、トリメチルシリル基等)が挙げられる。しかしながら、アセタール構造以外の保護基は、アセタール構造の特徴である「中性及びアルカリ性環境下での安定性が高い」という特徴、又は、「付加反応により形成されるためヒドロキシル基が残存しない」という特徴のいずれかを満足しないため、ヒドロキシル基末端を封鎖するための構造として適していない。すなわち、アセタール構造でヒドロキシル基末端を封鎖している本発明の界面活性剤には、他の保護基でヒドロキシル基末端を封鎖した界面活性剤にはない有利な効果が存在する。
【0044】
一般式(1)で示される構造には、R
2とR
3が環を形成してなる環状アセタール構造とR
2とR
3が環を形成していない鎖状アセタール構造が含まれる。
はじめに、環状アセタール構造を有する本発明の非イオン性界面活性剤について説明する。
【0045】
環状アセタール構造を有する本発明の非イオン性界面活性剤は、末端に一般式(8)で示される構造を有することが望ましい。
【化9】
一般式(8)におけるR
2は、エーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、一般式(1)においてR
2とR
3が結合して環を形成した部分をまとめてR
2と示している。R
2は炭素及び水素のみからなるアルキレン基であってもよく、エーテル結合を含むアルキレン基であってもよい。また、R
2自体に環状構造が含まれていてもよく、環状構造の例としては、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
R
2自体に環状構造が含まれる場合は、一般式(8)で示される構造の末端が縮合環となっていてもよい。また、R
4は環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子又は置換基であって、R
4は複数個存在していてもよい。
R
1は水素原子またはアルキル基、(AO)nは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも2種のオキシアルキレン基がランダム重合してなるポリオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、3〜400の数である。
【0046】
一般式(8)に含まれるアセタール構造として望ましい構造は、一般式(8)においてR
2が炭素及び水素のみからなるアルキレン基である構造である。
また、R
1が水素原子であることが望ましい。
具体的な例としては、下記一般式(2)に示される6員環構造、又は、下記一般式(3)に示される5員環構造であることが望ましい。
【化10】
(R
4は環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子又は置換基であって、R
4は複数個存在していてもよい。)
【化11】
(R
4は環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子又は置換基であって、R
4は複数個存在していてもよい。)
【0047】
環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子以外の置換基(R
4)としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)又はハロゲン(F−、Cl−、Br−又はI−)が望ましい。
【0048】
一般式(2)で示される界面活性剤の6員環構造のうち、さらに望ましい構造は、下記一般式(9)で示すような、R
1及びR
4が全て水素原子である環構造(テトラヒドロピラニルエーテル)である。
【化12】
テトラヒドロピラニルエーテルは、中性及びアルカリ性環境下での安定性が高く、また、アセタール構造の原料となるジヒドロピランが安価で入手しやすいため、好ましい。
この構造は、後述するように、酸触媒下でヒドロキシル基にジヒドロピランを付加させることにより得られる。
なお、本明細書におけるジヒドロピランとは3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(DHP)を意味する。
【0049】
一般式(3)で示される界面活性剤の5員環構造のうち、さらに望ましい構造は、下記一般式(10)で示すような、R
1及びR
4が全て水素原子である構造(テトラヒドロフラニルエーテル)である。
【化13】
この構造は、後述するように、酸触媒下でヒドロキシル基に2,3−ジヒドロフランを付加させることにより得られる。
【0050】
一般式(1)に含まれる界面活性剤の構造としては、下記一般式(11)、(12)で示される構造も挙げられる。
【化14】
【化15】
【0051】
式(11)で示す構造は、一般式(8)において、R
2がエーテル結合を含むアルキレン基である構造であり、酸触媒下でヒドロキシル基に2,3−ジヒドロ―1,4−ジオキシンを付加させることにより得られる。
式(12)で示す構造は、一般式(8)において、R
2がR
2自体に環状構造を含む構造であり、一般式(8)で示される構造の末端が縮合環となる構造の一例である。
この構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2,3−ベンゾフランを付加させることにより得られる。
【0052】
続いて、鎖状アセタール構造を有する本発明の非イオン性界面活性剤について説明する。
【0053】
鎖状アセタール構造を有する本発明の非イオン性界面活性剤は、末端に一般式(13)で示される構造を有することが望ましい。
【化16】
(一般式(13)中、R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成しておらず、(AO)nは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも2種のオキシアルキレン基がランダム重合してなるポリオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、3〜400の数である。)
【0054】
上記一般式(13)で示される構造においては、R
1が水素原子であってもアルキル基であってもよく、R
1がアルキル基である場合、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であれば特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0055】
上記一般式(13)におけるR
2及びR
3は、R
1がアルキル基であるか否かに関係なく、炭化水素基であれば特に限定されるものではなく、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、環状炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
また、R
2及びR
3は、エーテル結合を含む炭化水素基であってもよい。
【0056】
また、一般式(13)においてR
1がアルキル基である構造のうち、末端に下記一般式(4)に示される構造を有することが特に望ましい。
【化17】
上記一般式(4)で示される構造は、一般式(13)においてR
1とR
2が共にメチル基である構造である。
【0057】
上記一般式(4)で示される構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にイソプロペニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0058】
上記一般式(4)で示される構造の具体的な例としては、下記一般式(14)〜(18)で示される構造等が挙げられる。
【化18】
上記一般式(14)で示される構造は、一般式(4)においてR
3がエチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にエチルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0059】
【化19】
上記一般式(15)で示される構造は、一般式(4)においてR
3がシクロヘキシル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にシクロヘキシルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0060】
【化20】
上記一般式(16)で示される構造は、一般式(4)においてR
3がフェニル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にフェニルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0061】
【化21】
上記一般式(17)で示される構造は、一般式(4)においてR
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にメチルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0062】
【化22】
上記一般式(18)で示される構造は、一般式(4)においてR
3がベンジル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にベンジルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0063】
また、上記一般式(13)に含まれる構造のうち、末端に一般式(5)で示される構造を有することも望ましい。
【化23】
上記一般式(5)で示される構造は、一般式(13)においてR
1が水素原子、R
2がメチル基である構造である。
【0064】
上記一般式(5)で示される構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0065】
上記一般式(5)で示される構造の具体的な例としては、下記一般式(19)〜(22)で示される構造等が挙げられる。
【化24】
上記一般式(19)で示される構造は、一般式(5)においてR
3がエチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にエチルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0066】
【化25】
上記一般式(20)で示される構造は、一般式(5)においてR
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にメチルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0067】
【化26】
上記一般式(21)で示される構造は、一般式(5)においてR
3がイソプロピル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にイソプロピルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0068】
【化27】
上記一般式(22)で示される構造は、一般式(5)においてR
3がイソブチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にイソブチルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0069】
上記一般式(5)で示される構造を得るために用いることができるビニルエーテルのその他の例としては、ジビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−アミルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−オクタデシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0070】
上記一般式(13)で示される構造の他の具体的な例としては、下記一般式(23)〜(24)で示される構造等が挙げられる。
【化28】
上記一般式(23)で示される構造は、一般式(13)においてR
1がメチル基、R
2がエチル基、R
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2−メトキシ−1−ブテンを付加させることにより得られる。
【0071】
【化29】
上記一般式(24)で示される構造は、一般式(13)においてR
1がメチル基、R
2がペンチル基、R
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2−メトキシ−1−ヘプテンを付加させることにより得られる。
【0072】
本発明の非イオン性界面活性剤は、末端に一般式(1)で示される構造を有することを特徴としているが、非イオン性界面活性剤全体の構造としては、下記一般式(6)で示される構造を有することが望ましい。
【化30】
(式中、Xはアルコールの残基又はアルキルフェノールの残基である。R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成していてもよく、(AO)nは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも2種のオキシアルキレン基がランダム重合してなるポリオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、3〜400の数である。)
【0073】
一般式(6)におけるXのうち、アルコールの残基の好ましい具体例としては、アルコールからヒドロキシル基を除いた残基である構造が挙げられる。
アルコールの望ましい例としては、オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデシルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エライドリノレニルアルコール、リシノレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール(エイコサノール)、2−オクチルドデカン−1−オール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール(1−ドコサノール)、エルシルアルコール、トリコサノール、リグノセリルアルコール(1−テトラコサノール)、ペンタコサノール、セリルアルコール、1−ヘプタコサノール、モンタニルアルコール(1−オクタコサノール)、1−ノナコサノール、ミリシルアルコール(1−トリアコンタノール)、1−ヘントリアコンタノール、1−ドトリアコンタノール、ゲジルアルコール(1−テトラトリアコンタノール)等が挙げられる。
【0074】
アルキルフェノールの残基の好ましい具体例としては、アルキルフェノールからヒドロキシル基を除いた残基である構造が挙げられる。
アルキルフェノールの望ましい例としては、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、オクチルフェノール、オクチルクレゾール等が挙げられる。
【0075】
また、本発明の非イオン性界面活性剤は、Xとしてこれらのアルコールの残基又はアルキルフェノールの残基のうちの1種類のみを有する化合物であってもよく、異なるアルコールの残基又はアルキルフェノールの残基を有する複数の化合物の混合物であってもよい。
【0076】
また、アルコールの残基又はアルキルフェノールの残基は置換基を有してもよく、置換基としては、ハロゲン(F−、Cl−、Br−又はI−)が望ましい。また、アルコールの残基又はアルキルフェノールの残基の中にはエーテル結合を含んでいてもよい。
【0077】
以下、本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法について説明する。
まず、出発物質として、末端に下記一般式(7)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤を準備する。
【化31】
(式中、(AO)nは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択された少なくとも2種のオキシアルキレン基がランダム重合してなるポリオキシアルキレン鎖であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、3〜400の数である。)
【0078】
一般式(7)で示される構造を有する非イオン性界面活性剤としては、市販されている界面活性剤を使用することができる。例えば、商品名「エマルミン」(三洋化成工業株式会社製)、商品名「ワンダーサーフ」(青木油脂工業株式会社製)、商品名「ブラウノン」(青木油脂工業株式会社製)、商品名「ファインサーフ」(青木油脂工業株式会社製)、商品名「アデカノール」(株式会社ADEKA製)、商品名「プルラファック」「プルロニック」(BASFジャパン株式会社製)、商品名「ノイゲン」(第一工業製薬株式会社製)、商品名「ペレテックス」(ミヨシ油脂株式会社製)等が挙げられる。
【0079】
また、市販の非イオン性界面活性剤にアルキレンオキサイドをさらに付加させて、オキシアルキレン基の平均付加モル数やオキシアルキレン基に含まれるオキシエチレン基、オキシプロピレン基、又は、オキシブチレン基の割合を調整した上で使用してもよい。この場合、ブロック重合界面活性剤として販売されている市販の非イオン性界面活性剤にアルキレンオキサイドを複数種類ランダム重合させてもよく、そのように製造された非イオン性界面活性剤はランダム重合界面活性剤となる。
【0080】
上記非イオン性界面活性剤のアルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基に対して、付加反応を行うことによりヒドロキシル基を封鎖して、一般式(1)で示される構造を得る。
付加反応の具体的な手順は、ヒドロキシル基に付加反応させて得るアセタール構造によって異なるが、例えば、一般式(9)で示される構造(テトラヒドロピラニルエーテル)は、非イオン性界面活性剤のヒドロキシル基末端にジヒドロピラン(DHP)を酸触媒と共に有機溶媒下で反応させることにより得ることができる。
【0081】
上記酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、塩酸、酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。この中では、扱いが容易であり、安価であるためp−トルエンスルホン酸が望ましい。
【0082】
上記反応に用いる有機溶媒としては、一般的な有機溶媒を用いることができ、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、メチルtert−ブチルエーテル等を用いることができる。
【0083】
反応の終了は、酸触媒の中和により行う。中和に用いる塩基としては特に限定されるものではないが、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の粉末またはそれらの溶液等を用いることができる。
【0084】
反応条件は、出発物質の種類や量により適宜定めることができるが、例えば、非イオン性界面活性剤としてワンダーサーフRL100、50〜100gを塩化メチレン溶液25〜100ml中で反応させる場合、ワンダーサーフRL100に対して7〜30gのジヒドロピランと酸触媒として1〜10mol%のp−トルエンスルホン酸を加えて、0.1時間〜終夜(10時間)室温にて撹拌した後、炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、溶媒を留去する方法が挙げられる。
【0085】
続いて、本発明の非イオン性界面活性剤を用いた洗浄剤組成物の一例について説明する。
洗浄剤組成物には、例えば、(A)本発明の非イオン性界面活性剤、(B)塩素剤を配合することができる。アルカリ性の洗浄剤組成物とする場合は、(C)アルカリ剤を含有することができる。
【0086】
洗浄剤組成物中における非イオン性界面活性剤(A)の濃度は、特に限定されるものではないが、0.1〜5.0重量%であることが望ましい。
界面活性剤が複数種類用いられている場合、界面活性剤の濃度は各界面活性剤の濃度の合計値として定められる。
【0087】
塩素剤(B)としては、例えば、塩素化イソシアヌール酸塩(塩素化イソシアヌール酸ナトリウム、塩素化イソシアヌール酸カリウム等)、トリクロロイソシアヌール酸、次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等)等が挙げられる。
また、これらの塩素剤のうちの1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の非イオン性界面活性剤はその末端にヒドロキシル基を有さず、アセタール構造を有しており、アセタール構造は塩素剤(B)と反応しないので、洗浄剤組成物中の塩素剤(B)の失活が防止される。その結果、界面活性剤による洗浄効果と塩素剤による漂白、殺菌効果をともに発揮することのできる洗浄剤組成物となる。
洗浄剤組成物中における塩素剤の濃度は、特に限定されるものではないが、洗浄剤組成物100重量%中、純分で0.1〜30重量%であることが望ましく、4.0〜20重量%であることがより望ましい。
塩素剤が複数種類用いられている場合、塩素剤の濃度は各塩素剤の濃度の合計値として定められる。
【0088】
アルカリ剤(C)としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を用いることができ、その種類は特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が望ましい。
これらのアルカリ剤は、水和物となっていてもよい。
これらの中でも、水酸化カリウム、オルソケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム及びこれらの水和物からなる群から選択された少なくとも1種が望ましい。これらのアルカリ剤を使用するとpHを12を超えて高くしやすくなるためである。
また、これらのアルカリ剤のうちの1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の洗浄剤組成物中におけるアルカリ剤(C)の濃度は、特に限定されるものではないが、2〜90重量%であることが望ましく、5〜80重量%であることがより望ましく、12〜80重量%であることがさらに望ましい。
アルカリ剤が複数種類用いられている場合、アルカリ剤の濃度は各アルカリ剤の濃度の合計値として定められる。
【0089】
洗浄剤組成物はpHが12以上であることが望ましく、13以上であることがより望ましい。
pHが12以上と高い洗浄剤組成物は、アルカリ性洗浄剤として油汚れ等の除去に特に効果的である。洗浄剤組成物に含まれる本発明の非イオン性界面活性剤の末端のアセタール構造は、このような高いpHの下においても安定であるため、塩素安定性が高く、泡立ち抑制効果の高いアルカリ性の洗浄剤組成物とすることができる。また、非イオン性界面活性剤と塩素剤が高いpHの下で共に安定に存在するため、界面活性剤による油汚れ等に対する洗浄効果と塩素剤による漂白、殺菌効果をともに発揮させることができる。
pHの測定は、市販のpHメーター等を用いて行えばよいが、例えば、株式会社堀場製作所製、D−21型を用いて測定することができる。
【0090】
洗浄剤組成物は、必要に応じて高分子分散剤(D)、キレート剤(E)、溶媒/工程剤(F)、可溶化剤(G)等の、洗浄剤組成物に配合される他の成分を含有してもよい。また、非イオン性界面活性剤(A)以外の界面活性剤を含有していてもよい。
高分子分散剤(D)としては、ポリアクリル酸、ポリアコニット酸、ポリイタコン酸、ポリシトラコン酸、ポリフマル酸、ポリマレイン酸、ポリメタコン酸、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、ポリビニルホスホン酸、スルホン化ポリマレイン酸、オレフィン−マレイン酸共重合体、無水マレイン酸ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸スチレン共重合体、無水マレイン酸メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸エチレン共重合体、無水マレイン酸エチレンクロスリンク共重合体、無水マレイン酸酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸アクリロニトリル共重合体、無水マレイン酸アクリル酸エステル共重合体、無水マレイン酸ブタジエン共重合体、無水マレイン酸イソプレン共重合体、無水マレイン酸と一酸化炭素から誘導されるポリ−β−ケトカルボン酸、イタコン酸、エチレン共重合体、イタコン酸アコニット酸共重合体、イタコン酸マレイン酸共重合体、イタコン酸アクリル酸共重合体、マロン酸メチレン共重合体、イタコン酸フマール酸共重合体、エチレングリコールエチレンテレフタレート共重合体、ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、これらの金属塩等があげられる。なかでも、コスト面、経済性の点から、ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量Mw=3,000〜30,000)、ポリマレイン酸−アクリル酸ナトリウム、オレフィン−マレイン酸ナトリウム共重合体等が好適に用いられる。
キレート剤(E)としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、トリポリリン酸、ポリアクリル酸及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、並びに、下記式(25)で示されるポリアスパラギン酸系化合物、下記式(26)で示されるイミノジコハク酸系化合物、下記式(27)で示されるイミノジ酢酸系化合物が挙げられる。
【0091】
【化32】
[式(25)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。s、tは整数である。]
【化33】
[式(26)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。]
【化34】
[式(27)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。]
【0092】
洗浄剤組成物中におけるキレート剤の濃度は、特に限定されるものではないが、0〜80重量%であることが望ましく、0〜70重量%であることがより望ましく、15〜50重量%であることがさらに望ましい。
溶媒(F)としては、水や一般的に用いられる有機溶媒が挙げられる。工程剤(F)は、剤形が固体の場合の増量剤であり、pHが中性であるものが望ましく、硫酸ナトリウム、粉末シリカ等が挙げられる。
可溶化剤(G)としては、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、カプリル酸、オクチル酸及びこれらの塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0093】
本発明の洗浄剤組成物の剤形は、液体、固体(錠剤、粉末等)のいずれでもよく、液体に限定されるものではない。
洗浄剤組成物が固体であり、洗浄剤組成物のpHを直接測定できない場合、洗浄剤組成物のpHは、洗浄剤組成物10gを水90gと混合した状態(洗浄剤組成物の濃度が10重量%)で測定したpHと定める。
【実施例】
【0094】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
(実施例1)
原料としての非イオン性界面活性剤として、青木油脂工業株式会社製ワンダーサーフRL100(30g)を準備し、上記非イオン性界面活性剤の塩化メチレン溶液(50ml)に10gのジヒドロピラン(DHP)と、触媒として1mol%のp−トルエンスルホン酸を加えて、終夜(10時間)、室温にて撹拌した。炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、溶媒を留去して目的生成物を得た。
原料としての非イオン性界面活性剤は、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基とオキシプロピレン基をモル比率EO:PO=9:2.5で含み、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がランダム重合してなるポリオキシアルキレン鎖を有している。オキシアルキレン基の平均付加モル数は11.5である。
また、アルコール残基(一般式(6)のX)としてドデシルアルコール及びテトラデシルアルコールの残基を有している。
得られた生成物は、上記非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基とDHPが反応してなる、末端に環状アセタール構造を有する非イオン性界面活性剤である。
なお、上記のオキシエチレン基とオキシプロピレン基のモル比率及びアルコール残基は、非イオン性界面活性剤をエーテル結合開裂試薬で処理した後、ガスクロマトグラフィー分析を行い、得られたクロマトグラムのピーク面積及び保持時間から決定した(参考文献:「小西一生,油化学,22(9),549(1973)」)。また、オキシアルキレン基の平均付加モル数は、非イオン性界面活性剤の平均分子量、オキシエチレン基とオキシプロピレン基のモル比率及びアルコール残基の平均分子量から逆算して決定した。
例えば平均分子量1000、ドデシルアルコール残基(分子量=185)、オキシエチレン基とオキシプロピレン基のモル比率が5/1の非イオン性界面活性剤の場合、オキシアルキレン基部分の平均分子量=1000−185=815だから、オキシエチレン基の平均付加モル数をx、オキシプロピレン基の平均付加モル数をyとすると、44(オキシエチレン基分子量)×x+58(オキシプロピレン基分子量)×y=815、x/y=5/1という連立方程式が得られる。これを解くと、x=15、y=3となり、オキシアルキレン基の平均付加モル数は18となる。
【0096】
(実施例2、3)
実施例1において、非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基に付加させる物質として、2,3−ジヒドロフラン又はエチルビニルエーテルを用いた他は実施例1と同様にして末端にアセタール構造を有する非イオン性界面活性剤を得た。
【0097】
(比較例1)
後述する評価試験で使用する非イオン性界面活性剤として、実施例1で用いた、末端にヒドロキシル基を有する原料としての非イオン性界面活性剤(青木油脂工業株式会社製ワンダーサーフRL100)を比較例1とした。
【0098】
(比較例2)
原料としての非イオン性界面活性剤を以下のように調製した。
出発物質としての青木油脂工業株式会社製ブラウノンEL1509(120g)に、100gのプロピレンオキサイドと、触媒として10mol%のカリウムtert−ブトキシドを加えて、4日間室温にて撹拌した。オキシエチレン基とオキシプロピレン基のモル比率がEO:PO=9:2.5になるまでプロピレンオキサイドが付加されたことを確認し、硫酸を加えて反応を終了させ、濾過した後、余剰のプロピレンオキサイドを留去して非イオン性界面活性剤を得た。
オキシエチレン基とオキシプロピレン基のモル比率の確認は、上記したガスクロマトグラフィー分析を行い、得られたクロマトグラムのピーク面積及び保持時間から決定する方法により行った。
出発物質である青木油脂工業株式会社製ブラウノンEL1509はオキシアルキレン基としてオキシエチレン基のみを有しており、これにプロピレンオキサイドを付加しているため、非イオン性界面活性剤のポリオキシアルキレン鎖の構造は、オキシエチレン基のブロックとオキシプロピレン基のブロックを有する構造(式(a)で示す構造)となる。そのため、この非イオン性界面活性剤はEO−POブロック重合界面活性剤である。
また、オキシアルキレン基の平均付加モル数は11.5である。
また、得られたブロック重合界面活性剤はアルコール残基(一般式(6)のX)としてドデシルアルコール及びテトラデシルアルコールの残基を有している。
【0099】
上記手順により得たブロック重合界面活性剤である非イオン性界面活性剤を原料として用いて、実施例1の手順と同様にして非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基とDHPが反応してなる、末端に環状アセタール構造を有する非イオン性界面活性剤を得た。
比較例2で得た非イオン性界面活性剤と、実施例1で得た非イオン性界面活性剤は、ポリオキシアルキレン鎖の構造がブロック重合であるかランダム重合であるか以外は、ほぼ同様の構造を有する非イオン性界面活性剤である。
【0100】
(比較例3、4)
比較例1において、非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基に付加させる物質として、2,3−ジヒドロフラン又はエチルビニルエーテルを用いた他は比較例1と同様にして末端にアセタール構造を有する非イオン性界面活性剤を得た。
比較例3、4で得た非イオン性界面活性剤と、実施例2、3で得た非イオン性界面活性剤は、ポリオキシアルキレン鎖の構造がブロック重合であるかランダム重合であるか以外は、ほぼ同様の構造を有する非イオン性界面活性剤である。
【0101】
(比較例5)
非イオン性界面活性剤として、比較例2で用いた、末端にヒドロキシル基を有する原料としてのEO−POブロック重合界面活性剤である非イオン性界面活性剤を比較例5とした。
【0102】
表1には、実施例1〜3及び比較例1〜5の非イオン性界面活性剤の構造を示した。
表1に示す非イオン性界面活性剤は、オキシエチレン基の平均付加モル数x、オキシプロピレン基の平均付加モル数y、オキシアルキレン基の平均付加モル数nは全て同程度の界面活性剤である。
【0103】
(泡立ち性試験)
泡立ち性試験は、ロスマイルス法(JIS K3362に準拠)を用いて、各非イオン性界面活性剤について25℃における0分後の泡立ち性を評価することにより行った。
泡高さが低いほど、泡立ちが少ないといえる。
ロスマイルステストの結果を表1に示した。
【0104】
【表1】
【0105】
(実施例4)
実施例1において、原料としての非イオン性界面活性剤として、青木油脂工業株式会社製ワンダーサーフID50を使用した他は実施例1と同様にして、非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基とDHPが反応してなる、末端に環状アセタール構造を有する非イオン性界面活性剤を製造した。
原料としての非イオン性界面活性剤は、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基とオキシプロピレン基をモル比率EO:PO=3.5:1で含み、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がランダム重合してなるポリオキシアルキレン鎖を有している。オキシアルキレン基の平均付加モル数は4.5である。
また、アルコール残基(一般式(6)のX)としてデシルアルコールの残基を有している。
得られた生成物は、上記非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基とDHPが反応してなる、末端に環状アセタール構造を有する非イオン性界面活性剤である。
オキシエチレン基とオキシプロピレン基のモル比率、アルコール残基、オキシアルキレン基の平均付加モル数の決定法は、実施例1に記載した方法と同様である。
【0106】
(比較例6)
非イオン性界面活性剤として、実施例4で用いた、末端にヒドロキシル基を有する原料としての非イオン性界面活性剤(青木油脂工業株式会社製ワンダーサーフID50)を比較例6とした。
【0107】
(比較例7)
原料としての非イオン性界面活性剤を以下のように調製した。
比較例2において、加えるプロピレンオキサイドの重量及びプロピレンオキサイドとの反応時間を変更し、出発物質としての非イオン性界面活性剤を青木油脂工業株式会社製ファインサーフD35に変更した他は比較例2と同様にして非イオン性界面活性剤を得た。
出発物質である青木油脂工業株式会社製ファインサーフD35はオキシアルキレン基としてオキシエチレン基のみを有しており、これにプロピレンオキサイドを付加しているため、非イオン性界面活性剤のポリオキシアルキレン鎖の構造は、オキシエチレン基のブロックとオキシプロピレン基のブロックを有する構造(式(a)で示す構造)となる。そのため、この非イオン性界面活性剤はEO−POブロック重合界面活性剤である。
また、オキシアルキレン基の平均付加モル数は4.5である。
また、得られたブロック重合界面活性剤はアルコール残基(一般式(6)のX)としてデシルアルコールの残基を有している。
【0108】
上記手順により得たブロック重合界面活性剤である非イオン性界面活性剤を原料として実施例1の手順と同様にして非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基とDHPが反応してなる、末端に環状アセタール構造を有する非イオン性界面活性剤を得た。
比較例7で得た非イオン性界面活性剤と、実施例4で得た非イオン性界面活性剤は、ポリオキシアルキレン鎖の構造がブロック重合であるかランダム重合であるか以外は、ほぼ同様の構造を有する非イオン性界面活性剤である。
【0109】
(比較例8)
非イオン性界面活性剤として、比較例7で用いた、末端にヒドロキシル基を有する原料としてのEO−POブロック重合界面活性剤である非イオン性界面活性剤を比較例8とした。
【0110】
表2には、実施例4及び比較例6〜8の非イオン性界面活性剤の構造、及び、ロスマイルステストの結果を示した。
表2に示す非イオン性界面活性剤は、オキシエチレン基の平均付加モル数x、オキシプロピレン基の平均付加モル数y、オキシアルキレン基の平均付加モル数nは全て同程度の界面活性剤である。
ロスマイルステストは実施例1等と同様の方法により行った。
【0111】
【表2】
【0112】
(実施例5)
実施例1において、原料としての非イオン性界面活性剤として、青木油脂工業株式会社製ワンダーサーフS1400を使用した他は実施例1と同様にして、非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基とDHPが反応してなる、末端に環状アセタール構造を有する非イオン性界面活性剤を製造した。
原料としての非イオン性界面活性剤は、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基とオキシプロピレン基をモル比率EO:PO=10:1で含み、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がランダム重合してなるポリオキシアルキレン鎖を有している。オキシアルキレン基の平均付加モル数は11である。
また、アルコール残基(一般式(6)のX)としてトリデシルアルコールの残基を有している。
得られた生成物は、上記非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基とDHPが反応してなる、末端に環状アセタール構造を有する非イオン性界面活性剤である。
オキシエチレン基とオキシプロピレン基のモル比率、アルコール残基、オキシアルキレン基の平均付加モル数の決定法は、実施例1に記載した方法と同様である。
【0113】
(比較例9)
非イオン性界面活性剤として、実施例5で用いた、末端にヒドロキシル基を有する原料としての非イオン性界面活性剤(青木油脂工業株式会社製ワンダーサーフS1400)を比較例9とした。
【0114】
(比較例10)
原料としての非イオン性界面活性剤を以下のように調製した。
比較例2において、加えるプロピレンオキサイドの重量及びプロピレンオキサイドとの反応時間を変更し、出発物質としての非イオン性界面活性剤を青木油脂工業株式会社製ファインサーフTD100に変更した他は比較例2と同様にして非イオン性界面活性剤を得た。
出発物質である青木油脂工業株式会社製ファインサーフTD100はオキシアルキレン基としてオキシエチレン基のみを有しており、これにプロピレンオキサイドを付加しているため、非イオン性界面活性剤のポリオキシアルキレン鎖の構造は、オキシエチレン基のブロックとオキシプロピレン基のブロックを有する構造(式(a)で示す構造)となる。そのため、この非イオン性界面活性剤はEO−POブロック重合界面活性剤である。
また、オキシアルキレン基の平均付加モル数は11である。
また、得られたブロック重合界面活性剤はアルコール残基(一般式(6)のX)としてトリデシルアルコールの残基を有している。
【0115】
上記手順により得たブロック重合界面活性剤である非イオン性界面活性剤を原料として用いて、実施例1の手順と同様にして非イオン性界面活性剤の末端のヒドロキシル基とDHPが反応してなる、末端に環状アセタール構造を有する非イオン性界面活性剤を得た。
比較例10で得た非イオン性界面活性剤と、実施例5で得た非イオン性界面活性剤は、ポリオキシアルキレン鎖の構造がブロック重合であるかランダム重合であるか以外は、ほぼ同様の構造を有する非イオン性界面活性剤である。
【0116】
(比較例11)
非イオン性界面活性剤として、比較例10で用いた、末端にヒドロキシル基を有する原料としてのEO−POブロック重合界面活性剤である非イオン性界面活性剤を比較例11とした。
【0117】
表3には、実施例5及び比較例9〜11の非イオン性界面活性剤の構造、及び、ロスマイルステストの結果を示した。
表3に示す非イオン性界面活性剤は、オキシエチレン基の平均付加モル数x、オキシプロピレン基の平均付加モル数y、オキシアルキレン基の平均付加モル数nは全て同程度の界面活性剤である。
ロスマイルステストは実施例1等と同様の方法により行った。
【0118】
【表3】
【0119】
表1〜3から、アルコール残基の炭素数及びポリオキシアルキレン鎖のオキシエチレン基の数、オキシプロピレン基の数が同様の非イオン性界面活性剤について、それぞれ泡立ち性を比較すると、非イオン性界面活性剤の末端がアセタール構造であり、ポリオキシアルキレン鎖の構造がランダム重合である場合に、泡立ちが少なくなることが分かる。
【0120】
(塩素安定性試験1)
塩素安定性試験1では、実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2及び比較例5の非イオン性界面活性剤のいずれかを含む洗浄剤組成物を調製し、各洗浄剤組成物について塩素安定性を評価した。
洗浄剤組成物の組成は、非イオン性界面活性剤を1.3重量%、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度12%)を44.2重量%、水酸化ナトリウム水溶液(濃度48重量%)を10.0重量%、可溶化剤(キシレンスルホン酸塩水溶液(濃度40重量%))を30.0重量%、水を14.5重量%とした。
【0121】
(塩素安定性試験2)
塩素安定性試験2では、実施例4、比較例6、比較例7及び比較例8の非イオン性界面活性剤いずれかを含む洗浄剤組成物を調製し、各洗浄剤組成物について塩素安定性を評価した。
洗浄剤組成物の組成は、非イオン性界面活性剤を2.0重量%、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度12%)を44.2重量%、水酸化ナトリウム水溶液(濃度48重量%)を2.0重量%、水酸化カリウム水溶液(濃度48重量%)を8.0重量%、可溶化剤(キシレンスルホン酸塩水溶液(濃度40重量%))を30.0重量%、水を13.8重量%とした。
【0122】
塩素安定性試験1、2で調製した各洗浄剤組成物につき、有効塩素濃度を下記に示すヨウ素滴定法で測定した。
上記洗浄剤組成物約1gに、ヨウ化カリウム水溶液(濃度約2重量%)50mL及び酢酸10mLを添加して充分に混合することにより混合液を作製した。次に、0.1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で混合液を滴定し、褐色が消えて無色になった点を終点とした。その時のチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量に基づき、次式(1)によって有効塩素濃度を算出した。
有効塩素濃度[%]=チオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量[mL]×0.3546/洗浄剤組成物採取量[g]・・・(1)
【0123】
上記方法による有効塩素濃度の測定を、洗浄剤組成物の調製直後(0日)、3日、7日、10日経過後にそれぞれ実施した。
洗浄剤組成物は、45℃のインキュベータ内で所定日数保管した。
洗浄剤組成物の調製直後の有効塩素濃度を100(%)とし、洗浄剤組成物の調製直後の有効塩素濃度に対する、3日、7日、10日経過後の有効塩素濃度の割合(%)を有効塩素残存率(%)として求めた。
塩素安定性試験1における有効塩素濃度の残存率を表4に、塩素安定性試験2における有効塩素濃度の残存率を表5にそれぞれ示した。
図1には、塩素安定性試験1における有効塩素残存率の経時変化を示すグラフを示した。
図2には、塩素安定性試験2における有効塩素残存率の経時変化を示すグラフを示した。
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
表4、5から、アルコール残基の炭素数及びポリオキシアルキレン鎖のオキシエチレン基の数、オキシプロピレン基の数が同様の非イオン性界面活性剤について、それぞれ塩素安定性を比較すると、非イオン性界面活性剤の末端がアセタール構造であり、ポリオキシアルキレン鎖の構造がランダム重合である場合に、塩素安定性に優れていることが分かる。