【課題】引戸枠6の方立10に戸袋Sの側壁12となる壁材13の戸先側端部13aを固定する場合に、既存の四角柱の方立10を使用しつつ、壁材13を方立10に対し壁材13の外面にビスVが見えないように固定して、見映えの良い施工ができるようにする。
【解決手段】方立10に壁材13の戸先側端部13aを引戸出入口S1から固定するための戸袋用施工部材20を設ける。戸袋用施工部材20は、方立10に取付固定される方立固定部21と、方立固定部21に壁材位置決め部22を介して接続され、ビスVを引戸出入口S1よりも戸先側から引戸出入口S1を経由して挿通させて壁材13の戸先側端部13aにおいて戸袋S内の内面に固着させることで壁材13に取付固定される壁材固定部23と、壁材固定部23に接続され、ビスVによる壁材固定部23の固着時に先端24aで壁材13内面に当接して壁材固定部23が変形するのを阻止する支持部24とを備える。
戸先側及び戸尻側縦枠と、横枠と、引戸を収納する戸袋の引戸出入口を形成する方立とを備えた引戸枠における上記方立に、戸袋の側壁となる壁材の戸先側端部を上記引戸出入口から固着具を介して固定するための戸袋用施工部材であって、
方立に取付固定される方立固定部と、
上記方立固定部に接続され、上記固着具を引戸出入口よりも戸先側から該引戸出入口を経由して挿通させて壁材の戸先側端部において戸袋内に位置する内面に固着させることで、該壁材に取付固定される壁材固定部とを備えたことを特徴とする戸袋用施工部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のL型方立では、その挿入部の外面に壁材の戸先側端部をビス等で固定できるので、壁材の戸先側端部の外面側から斜め方向に方立にビス等で固定するのに比べて、ビス等の斜め打ちがない分だけ施工が容易となり、壁材の端部が破損することもない。
【0007】
しかし、壁材の戸先側端部をその外面からビス等で固定するので、やはりその部分の見映えが悪くなるのは避けられない。しかも、方立をL型にするための加工が必要であること、及び専用の方立が必要で既存の形状の方立が使用できないことから、施工が面倒になる。
【0008】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的は、壁材を方立に固定するときの新しい部材を工夫することにより、既存の四角柱の方立を使用しながら、壁材を方立に対し壁材の外面にビス等の固着具が見えないように固定して、見映えの良い施工ができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成すべく、この発明では、一側部が方立に、また他側部が壁材にそれぞれ固定されて方立と壁材とを連結する部材を設け、この部材に対し壁材を内面から固定するようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明は、戸先側及び戸尻側縦枠と、横枠と、引戸を収納する戸袋の引戸出入口を形成する方立とを備えた引戸枠における上記方立に、戸袋の側壁となる壁材の戸先側端部を上記引戸出入口から固着具を介して固定するための戸袋用施工部材が対象である。
【0011】
この戸袋用施工部材は、方立に取付固定される方立固定部と、この方立固定部に接続され、上記固着具を引戸出入口よりも戸先側から該引戸出入口を経由して挿通させて壁材の戸先側端部において戸袋内に位置する内面に固着させることで、該壁材に取付固定される壁材固定部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
この第1の発明では、戸袋用施工部材を方立固定部で方立に固定し、その方立に固定された戸袋用施工部材の壁材固定部を壁材の戸先側端部に固着具により固定する。この壁材固定部を壁材の戸先側端部に固定する際、固着具を引戸出入口よりも戸先側から引戸出入口を経由して壁材固定部に挿通させ、その壁材固定部に挿通された固着具を壁材の戸先側端部において戸袋内に位置する内面に固着させる。このように方立に固定された戸袋用施工部材の壁材固定部を壁材の戸先側端部の内面に固定することで、壁材が戸袋用施工部材を介して方立に安定して強固に固定される。
【0013】
また、戸袋用施工部材の壁材固定部に挿通された固着具が壁材の内面に固着されることにより、壁材を内側から方立に固定できるので、その壁材の外面に固着具を固着する場合のように、固着された固着具が壁材の外面に現れることはなく、外観上の見映えの良い施工を行うことができる。
【0014】
しかも、壁材を戸袋用施工部材を介して方立に固定するので、方立はL型のような特別な断面形状のものが不要で、既存の四角柱の方立を用いることができ、施工が容易にできる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、方立固定部が方立に取付固定された状態にあるときに、壁材固定部は戸尻側に向かって戸袋の幅方向中央側に向かうように傾斜しており、戸袋用施工部材に、基端が上記壁材固定部に接続され、固着具による壁材固定部と壁材との固着時に先端で壁材内面に当接して該壁材固定部が変形するのを阻止する支持部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この第2の発明では、壁材固定部に固着具を挿通させて壁材の内面に固着するとき、その壁材固定部は戸尻側に向かって戸袋の幅方向中央側に向かうように傾斜しているので、例えば壁材固定部(戸袋用施工部材)の肉厚が薄い場合等に、固着具の固着動作により応力が加わって壁材固定部が方立固定部側の接続部分の回りに変形しようとする。しかし、その壁材固定部に基端が連続している支持部が先端で壁材内面に当接するので、壁材固定部が変形するのは阻止される。このことで壁材固定部及び方立を安定して壁材に固定することができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記方立固定部と壁材固定部とは、壁材の内面に当接して該壁材を位置決め支持する壁材位置決め部によって接続されていることを特徴とする。
【0018】
この第3の発明では、戸袋用施工部材を方立の所定位置に固定しておけば、その後に壁材の戸先側端部を方立に位置決めするときに、壁材の内面を戸袋用施工部材の壁材位置決め部の外面側に当接させることにより、その壁材が方立に位置決めされる。その位置決め状態で固着具を壁材固定部に挿通させて壁材内面に固着すればよく、よって壁材の位置決め固定が容易になる。
【0019】
第4の発明は、第3の発明において、上記方立固定部は、方立の戸尻側側面に取り付けられるように壁材位置決め部から戸袋の外側に向かう方向に延びており、方立固定部、壁材位置決め部、壁材固定部及び支持部がW字形状に折れ曲がっていることを特徴とする。
【0020】
この第4の発明では、方立固定部が壁材位置決め部から戸袋の外側に向かう方向に延び、戸袋用施工部材がW字形状に折れ曲がっているので、方立固定部を方立の戸尻側側面にビス等の固着具で取り付ける際に壁材固定部ないし支持部が干渉することはなく、その取付固定が容易になる。
【0021】
第5の発明は、第1〜第4の発明において、戸袋用施工部材は、折り曲げ加工又は押出成形により形成されていることを特徴とする。
【0022】
この第5の発明では、戸袋用施工部材を折り曲げ加工又は押出成形により容易に形成することができる。
【0023】
第6の発明は、引戸構造に係るものであり、第1〜第5の発明のいずれか1つの戸袋用施工部材の方立固定部が方立に取付固定され、壁材固定部が壁材に、引戸出入口よりも戸先側から該引戸出入口を経由して壁材固定部に挿通された固着具を壁材の戸先側端部において戸袋内に位置する内面に固着することで取付固定されていることを特徴とする。
【0024】
この第6の発明では、方立に戸袋用施工部材の方立固定部が取付固定され、この戸袋用施工部材の壁材固定部は、引戸出入口よりも戸先側から該引戸出入口を経由して挿通された固着具が壁材の戸先側端部において戸袋内に位置する内面に固着されることで、壁材に取付固定されているので、第1の発明と同様に、壁材が戸袋用施工部材を介して方立に安定して強固に固定されるとともに、内側から壁材が方立に固定されることで、外観上の見映えの良い施工を行うことができ、さらには、既存の四角柱の方立の使用により施工が容易にできる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明のように、第1及び第6の発明によると、引戸を収納する戸袋の引戸出入口を形成する方立に戸袋の側壁となる壁材の戸先側端部を固定するために、方立固定部と壁材固定部とを接続した戸袋用施工部材を設け、その壁材固定部は、固着具を引戸出入口よりも戸先側から引戸出入口を経由して挿通させて壁材の戸先側端部において戸袋内に位置する内面に固着させることで該壁材に取付固定されるものとしたことにより、壁材を内側から方立に固定して、外観上の見映えの良い施工を行うことができるとともに、既存の四角柱の方立を用いて施工が容易にできる。
【0026】
第2の発明によると、戸尻側に向かって戸袋の幅方向中央側に向かうように傾斜した壁材固定部に、固着具による壁材固定部と壁材との固着時に先端で壁材内面に当接して壁材固定部が変形するのを阻止する支持部を設けたことにより、固着具の固着動作により応力が加わって壁材固定部が変形するのを阻止し、壁材固定部ないし方立を安定して壁材に固定することができる。
【0027】
第3の発明によると、方立固定部と壁材固定部とを壁材位置決め部によって接続したことにより、戸袋用施工部材を方立の所定位置に固定した後に、壁材の内面を戸袋用施工部材の壁材位置決め部の外面側に当接させて、その壁材壁材の位置決め固定を容易に行うことができる。
【0028】
第4の発明によると、方立固定部は、壁材位置決め部から戸袋の外側に向かう方向に延びたものとし、方立固定部、壁材位置決め部、壁材固定部及び支持部がW字形状に折れ曲がっていることにより、方立固定部を方立の戸尻側側面にビス等の固着具で取り付ける際に壁材固定部ないし支持部が干渉することはなく、その取付固定が容易になる。
【0029】
第5の発明によると、戸袋用施工部材を折り曲げ加工又は押出成形により形成したことにより、戸袋用施工部材を容易に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0032】
図3、
図4、
図7及び
図9において、1は建物の開口部周囲の左側部分を形成する左柱、2は同右側部分を形成する右柱、3は同上側部分を形成するまぐさであり、上記建物の開口部に例えば左開きの引戸16を有する引戸装置5が設置され、この引戸装置5は、本発明の実施形態に係る引戸枠6を備えている。
【0033】
上記引戸枠6は、左右方向に互いに間隔を空けて立設される戸先側縦枠7及び戸尻側縦枠8と、これら縦枠7,8の上端部間に架け渡されて連結固定された左右水平方向に延びる横枠9(鴨居)と、戸先側及び戸尻側縦枠7,8間の中央位置に立設され、上端部が横枠9に連結固定された前後1対の方立10,10とを備えている。戸先側縦枠7は上記左柱1の右側面に、また戸尻側縦枠8は右柱2の左側面に、さらに横枠9はまぐさ3の下面にそれぞれ固定される。
【0034】
上記戸先側縦枠7は戸尻側縦枠8よりも幅の広い厚肉の板材からなっている。横枠9は戸先側(左側)半部の幅が戸尻側(右側)半部よりも広い厚肉の板材からなり、それら両半部は段差状に接続され、その接続部の幅方向(前後方向)両側には嵌合凹部9a,9aが形成されており、この嵌合凹部9a,9aにそれぞれ上記方立10,10の上端部が嵌合されて固定されている。両方立10,10の下端部は床4上にビス止めされており、このことで、両方立10,10は互いに平行に起立していて、両方立10,10間に引戸16を収納する戸袋Sの引戸出入口S1が形成されるようになっている。
【0035】
図示しないが、横枠9の下面には、その略全長に亘って上吊りレールが固定され、この上吊りレールには例えば左右2つの吊り車がスライド移動可能に係合支持され、両吊り車はそれぞれ引戸16の上端部の左右両端に取付固定されており、このことで引戸16は、横枠9に上吊りレール及び吊り車を介して左右方向にスライド移動するように吊り下げ支持された上吊り式とされ、引戸16が右側に移動したときには開き状態に、また左側に移動いたときには閉じ状態にそれぞれなるようになっている。
【0036】
尚、引戸16の戸先側端部(左端部)における前後面の上下中間部には引手17,17(図では前側のみを示す)が取り付けられている。また、
図6及び
図8に示すように、前後の方立10,10の対向面には、引戸16との間の隙間をシールして埃や騒音等を遮断するためのモヘアシール18,18が取り付けられている。また、図示しないが、方立10,10間の床4上面には床付けガイドピンが取り付けられており、このガイドピンを引戸16の下面に長さ方向(左右方向)に形成したガイド溝に係合させることで、引戸16の下端部を左右方向(開閉方向)に案内するようにしている。
【0037】
上記戸尻側縦枠8と方立10,10との間には側壁12が施工されている。
図8に示すように、この側壁12は前後に間隔をあけて対向配置された壁部からなり、各壁部は合板等からなる例えば厚さ12mmの壁材13と、その外面に重ねられて施工された例えば厚さ12〜20mmの石膏ボード14とを備えている。
図4に示すように、壁材13は、戸尻側端部が戸尻側縦枠8の外面に、また上端部が横枠9の外面に、さらに下端部が床4にそれぞれ複数のビスV,V,…により所定ピッチをあけた位置で固定されている。一方、
図7に示すように、石膏ボード14は上記壁材13の外面に複数のビスV,V,…により所定ピッチをあけた位置で固定されている。このような構造により、側壁12の内部に、その前後の壁部(壁材13及び石膏ボード14)、戸尻側縦枠8、横枠9、床4及び方立10,10で囲まれる空間により、引戸16を開き位置で収納する戸袋Sが形成され、前後の方立10,10間は該戸袋Sの引戸出入口S1となっている。
【0038】
本発明の特徴は、上記各方立10に戸袋Sの側壁12となる各壁材13の戸先側端部13aを固定する構造にある。この壁材13の戸先側端部13aは、戸尻側端部や上端部等の他の端部が外面(戸袋S外の面)からビスV,V,…により戸尻側縦枠8や横枠9等に固定されるのと異なり、その内面(戸袋S内の面)で方立10,10間の引戸出入口S1からビスV,V,…(固着具)を介して方立10,10に固定され、その固定のための部材が用いられている。
【0039】
すなわち、
図1及び
図2は、上記各壁材13の戸先側端部13aを戸袋Sの引戸出入口S1からビスV,V,…を介して固定するための戸袋用施工部材20を示している。この戸袋用施工部材20は、前側の壁材13を前側の方立10に固定するためのものと、後側の壁材13を後側の方立10に固定するためのものとに分けられるが、両者は互いに同じものであり、上下を逆にして使用される。
【0040】
戸袋用施工部材20は、方立10の高さと略同じ長さを有する長尺の金属製等の板材からなるもので、折り曲げ加工又は押出成形により形成されている。戸袋用施工部材20は、いずれも細長い平板帯状の方立固定部21、壁材位置決め部22、壁材固定部23及び支持部24が順に接続されて一体化されており、これらが全体としてW字形状つまり断面略W字状に折れ曲がっている。
【0041】
具体的には、方立固定部21及び支持部24は互いに略同じ幅を有し、壁材位置決め部22及び壁材固定部23も互いに略同じ幅を有する。方立固定部21は壁材位置決め部22の一端から例えば90°の角度で折れ曲がるように延び、支持部24も壁材固定部23の一端から例えば90°の角度で折れ曲がるように延びている。そして、壁材位置決め部22及び壁材固定部23の他端同士は、方立固定部21と支持部24とをそれぞれ通る平面が例えば45°で交差しかつ方立固定部21、壁材位置決め部22、壁材固定部23及び支持部24の全体で断面略W字形状をなすように例えば135°の角度で一体に接続されている。この戸袋用施工部材20は、後述するビス挿通孔21a,23aの形成位置が異なるだけで、形状だけ見ると、壁材位置決め部22及び壁材固定部23間の接続位置を通る面に対し面対称となっている。
【0042】
図5及び
図6に示すように、上記方立固定部21は方立10に取付固定される部分で、壁材位置決め部22からそれに対し例えば90°の角度で戸袋Sの外側(対向する方立10から離れる側)に向かう方向に延びており、その幅方向の中央には複数のビス挿通孔21a,21a,…が長さ方向に所定ピッチ(例えば300mm)で並んで貫通形成されている。そして、方立10の戸尻側側面10a(右側面)には内側寄り位置に、方立固定部21の幅よりも若干広い幅を有しかつ方立固定部21の厚さよりも若干深い浅溝からなる取付部11が凹陥形成されており、この取付部11に方立固定部21を嵌装した状態で方立固定部21のビス挿通孔21a,21a,…にビスV,V,…を挿通して方立10の戸尻側側面10aに螺合締結することで、方立固定部21が方立10の戸尻側側面10aに取り付けられるようになっている。尚、方立10の取付部11は必須ではなく、方立固定部21を直接に方立10の戸尻側側面10aに取り付けるようにしてもよい。
【0043】
上記壁材位置決め部22は、一端が上記方立固定部21の内端に上述の如く例えば90°の角度をあけて一体に接続され、壁材位置決め部22の他端は壁材固定部23に一体に接続されており、方立固定部21と壁材固定部23とは壁材位置決め部22によって接続されている。壁材位置決め部22は引戸16と平行に左右方向に延びており、その外面(W字形状では内面)に壁材13の戸先側端部13aの内面を当接させることにより、その壁材13の戸先側端部13aを適切な施工位置(取付位置)に位置決め支持するようにしている。
【0044】
上記壁材固定部23は、壁材13の内面に固定される部分であり、上述のように方立固定部21に壁材位置決め部22を介して接続されている。この壁材固定部23は、方立固定部21が方立10の戸尻側側面10aに取付固定された状態にあるときに、戸尻側に向かって戸袋Sの幅方向中央側に向かうように引戸16と平行な鉛直面に対して所定の傾斜角度θ(例えば45°)で傾斜している。壁材固定部23の幅方向の中央にも上記方立固定部21のビス挿通孔21a,21a,…に対応した位置に複数のビス挿通孔23a,23a,…が長さ方向に所定ピッチ(例えば300mm)で並んで貫通形成されており、
図5及び
図6に示すように、戸袋用施工部材20の方立固定部21が方立10の戸尻側側面10aに取付固定された状態で、ビスV,V,…を方立10,10間の引戸出入口S1よりも戸先側から該引戸出入口S1を経由して壁材固定部23のビス挿通孔23a,23a,…に挿通させ、そのビスV,V,…を壁材13の戸先側端部13aにおいて戸袋S内に位置する内面に螺合により固着させることで、壁材13に壁材固定部23が取付固定されるようにしている。
図5のSDはビスV,V,…を回し操作するための手動又は電動のドライバー(ねじ回し)である。
【0045】
上記支持部24は、その基端が上記壁材固定部23に例えば90°の角度で接続されており、ビスV,V,…によって壁材固定部23と壁材13とを固着するときに、支持部24の先端24aを壁材13内面に当接させて該壁材固定部23が変形するのを阻止するようにしている。
【0046】
すなわち、以上により、戸袋用施工部材20の方立固定部21が方立10に取付固定され、壁材固定部23が壁材13に、引戸出入口S1よりも戸先側から該引戸出入口S1を経由して壁材固定部23に挿通されたビスV,V,…を壁材13の戸先側端部13aにおいて戸袋S内に位置する内面に固着することで取付固定されている引戸構造が構成されている。
【0047】
次に、上記戸袋用施工部材20を用いて引戸装置5を施工する手順について説明する。
図3に示すように、戸先側及び戸尻側縦枠7,8の上端部間に横枠9(鴨居)を架け渡して固定し、建物の開口部の周囲部分を形成する左右の柱1,2に戸先側及び戸尻側縦枠7,8を、またまぐさ3の下面に横枠9をそれぞれ固定する。次いで、横枠9の下面に上吊りレールを固定した後、方立10,10を起立状態にして上端部を横枠9の嵌合凹部9a,9aに嵌合して固定し、方立10,10の下端は床4にビス止めする。戸尻側縦枠8の戸先側側面に、全開位置の引戸16に当たる戸当たりゴム(図示せず)を、また方立10,10間の床4にガイドピンをそれぞれ取り付けた後、引戸16を方立10,10間に差し込んで、その上端部を上吊りレールの吊り車に取付固定し、その引戸16を左右方向にスライド移動可能となるように位置調整する。
【0048】
しかる後に側壁12を施工する。この側壁12の施工時には、まず、上記戸袋用施工部材20を用い、その方立固定部21が壁材位置決め部22に対し戸袋Sの外側を向くように配置して、方立固定部21を各方立10の戸尻側側面10aの取付部11に嵌装し、その状態でビスV,V,…を方立固定部21のビス挿通孔21a,21a,…を挿通させて方立10に螺合締結することで、方立固定部21を各方立10にビスV,V,…により固定する。
【0049】
そのとき、上記方立固定部21は、壁材位置決め部22から戸袋Sの外側に向かう方向に延びており、方立固定部21、壁材位置決め部22、壁材固定部23及び支持部24がW字形状に折れ曲がっていることから、方立固定部21を方立10の戸尻側側面10aにビスV,V,…で取り付ける際に壁材固定部23ないし支持部24が邪魔になることはなく、その取付固定が容易になる。
【0050】
次に、
図4に示すように、前後の各壁材13を方立10、戸尻側縦枠8、横枠9及び床4にビスV,V,…により固定する。
【0051】
そのとき、最初に、壁材13の戸先側端部13aを方立10に取り付け、その後に、壁材13において戸先側端部13aを除いた3つの端部、すなわち戸尻側端部は戸尻側縦枠8に、また上端部は横枠9に、さらに下端部は床4にそれぞれ壁材13外面からビスV,V,…で固定する。
【0052】
上記壁材13の戸先側端部13aを方立10に戸袋用施工部材20を用いて取り付る際には次のように行う。すなわち、
図5及び
図6に示すように、先に方立10の戸尻側側面10aに方立固定部21にて固定されている戸袋用施工部材20に対し、その壁材位置決め部22の外面(W字形状では内面)に壁材13の戸先側端部13aの内面を当接させる。このことにより、その壁材13の戸先側端部13aが適切な施工位置(取付位置)に位置決め支持される。また、この位置決め状態では、支持部24の先端24aも壁材13の内面に当接している。
【0053】
そのとき、戸袋用施工部材20を方立10の所定位置に固定しておけば、その後に壁材13の戸先側端部13aの内面を戸袋用施工部材20の壁材位置決め部22の外面側に当接させるだけで、その壁材13が方立10に対して位置決めされるので、その壁材13の位置決め固定が容易になる。
【0054】
このような戸袋用施工部材20の壁材位置決め部22による位置決め状態で、その傾斜している壁材固定部23のビス挿通孔23a,23a,…にビスV,V,…を方立10,10間の引戸出入口S1よりも戸先側から引戸出入口S1を経由して挿通させ、ドライバーSDによりそのビスV,V,…を、壁材13の戸先側端部13a内面において支持部24の先端24aの当接位置よりも戸先側に螺合させて締結する。このことにより戸袋用施工部材20を壁材固定部23でビスV,V,…により壁材13に固着し、この戸袋用施工部材20を介して壁材13の戸先側端部13aを方立10に取付固定する。
【0055】
そのとき、上記壁材固定部23は引戸16と平行な鉛直面に対して傾斜しているので、方立10,10間の引戸出入口S1よりも戸先側から引戸出入口S1を経由してビスV,V,…をドライバーSDで回し操作して螺合締結する作業を容易に行うことができる。
【0056】
また、このように壁材固定部23が傾斜していると、ビスV,V,…の固着動作により応力が加わって壁材固定部23が方立固定部21側の接続部分回りに変形して傾倒しようとするが、その壁材固定部23に連続している支持部24が先端24aで壁材13内面に当接しているので、この支持部24が突っ張るように支えとなり、壁材固定部23が変形するのは阻止される。このことで壁材固定部23ないし方立10を安定して壁材13に固定することができる。
【0057】
このようにして壁材13の戸先側端部13aを方立10に取り付け、次いで、戸先側端部13aを除いた3つの端部を固定し、壁材13を四周端部で固定する。
【0058】
しかる後、
図7に示すように、その各壁材13の外面に石膏ボード14をビスV,V,…により固定する(尚、
図7では前側の石膏ボード14のみを示している)。以上により、
図8に示すような戸袋Sが形成され、
図9に示すように引戸装置5の施工が完了する。
【0059】
したがって、この実施形態においては、各方立10に固定された戸袋用施工部材20の壁材固定部23を壁材13の戸先側端部13aの内面に固定することで、壁材13を戸袋用施工部材20を介して方立10に安定して強固に固定することができる。
【0060】
また、戸袋用施工部材20の壁材固定部23に挿通されたビスV,V,…は壁材13の戸先側端部13aの内面に固着されて、その壁材13の戸先側端部13aを内側から方立10に固定できるので、その壁材13の戸先側端部13a外面にビスV,V,…を固着した場合のように、ビスV,V,…が壁材13の外面に現れることはない。そのため、外観上の見映えの良い施工を行うことができる。
【0061】
しかも、壁材13を戸袋用施工部材20を介して方立10に固定するので、方立10としては、特別な加工を要するL型のような断面形状のものが不要で、既存の四角柱のものをそのまま用いることができ、施工が容易にできる。
【0062】
さらに、上記戸袋用施工部材20は、折り曲げ加工又は押出成形により形成されているので、戸袋用施工部材20を容易に形成することができる。
【0063】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、戸袋用施工部材20は、壁材位置決め部22及び支持部24を備えているものとしているが、この壁材位置決め部22及び支持部24を必ず設ける必要はなく、省略することもできる。例えば戸袋用施工部材20の板厚を厚くする等して壁材固定部23の強度ないし剛性を高くし、ビスV,V,…の固着動作により応力が加わっても壁材固定部23が方立固定部21側の接続部分回りに変形しないようにしておけば、その壁材固定部23の倒れを阻止するための支持部24は不要である。また、壁材13の位置決めを別の手段で行うことができるのであれば、壁材位置決め部22を設けずとも済み、方立固定部21に直接に壁材固定部23を接続することができる。しかし、これら壁材位置決め部22及び支持部24によって上記の作用効果が得られる点では、壁材位置決め部22及び支持部24を設ける方が好ましい。
【0064】
また、上記実施形態では、戸袋用施工部材20は、方立10,10の高さと略同じ長さを有する長尺のものとしているが、これに代えて、例えば100〜200mmの長さの短いものとし、その短い複数の戸袋用施工部材20,20,…を方立10において少なくとも上下部に互いに離して配置し、それら戸袋用施工部材20,20,…によって壁材13を方立10に固定するようにしてもよい。その場合も上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。