(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-215020(P2015-215020A)
(43)【公開日】2015年12月3日
(54)【発明の名称】複合断熱材及び複合断熱材の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/06 20060101AFI20151106BHJP
F25D 23/06 20060101ALI20151106BHJP
【FI】
F16L59/06
F25D23/06 V
F25D23/06 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-97543(P2014-97543)
(22)【出願日】2014年5月9日
(71)【出願人】
【識別番号】314004819
【氏名又は名称】宇和断熱工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】大崎 富男
(72)【発明者】
【氏名】富田 真作
(72)【発明者】
【氏名】坂田 知昭
(72)【発明者】
【氏名】大畠 公夫
【テーマコード(参考)】
3H036
3L102
【Fターム(参考)】
3H036AA08
3H036AB13
3H036AB18
3H036AB24
3H036AB25
3H036AB33
3H036AC03
3H036AE13
3L102JA01
3L102JA03
3L102JA04
3L102JA05
3L102MA01
3L102MA03
3L102MB17
3L102MB23
3L102MB30
(57)【要約】
【課題】貫通孔を有し、断熱性能の高い複合断熱材及び複合断熱材の製造方法を提供する。
【解決手段】複合断熱材22は、貫通孔36を有する芯材32と、前記芯材32を真空包装する包装材34と、前記芯材32が真空包装された状態で形成される孔39と、からなる真空断熱材26と、前記真空断熱材26の少なくとも1面と前記孔39の周囲を覆う発泡系断熱材30と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する芯材と、前記芯材を真空包装する包装材と、前記芯材が真空包装された状態で形成される孔と、からなる真空断熱材と、
前記真空断熱材の少なくとも1面と前記孔の周囲を覆う発泡系断熱材と、を有する
複合断熱材。
【請求項2】
前記孔は、円形状、円弧状、U字状又は切欠きである請求項1記載の複合断熱材。
【請求項3】
前記真空断熱材の他の面は、保護部材で覆われる請求項1又は2記載の複合断熱材。
【請求項4】
芯材に貫通孔を形成する工程と、
前記芯材を包装材で包み込み真空包装する工程と、
真空包装された前記包装材の前記貫通孔部分以外の開口部を含む前記包装材の周囲を熱溶着する工程と、
前記貫通孔部分を熱溶着する工程と、
熱溶着された前記貫通孔部分に第1の孔を形成する工程と、
前記包装材の少なくとも1面と前記第1の孔の周囲を発泡系断熱材で覆う工程と、
前記発泡断熱材で覆われた前記第1の孔部分を切断して第2の孔を形成する工程と、
を有する複合断熱材の製造方法。
【請求項5】
前記第2の孔は、前記第1の孔より孔径が小さく、前記第1の孔は、前記貫通孔よりも孔径が小さい請求項4記載の複合断熱材の製造方法。
【請求項6】
前記第1の孔の孔ピッチは、前記貫通孔の孔ピッチよりも小さい請求項4又は5に記載の複合断熱材の製造方法。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記芯材を包装材で真空包装する工程における孔ピッチ及び孔径の収縮を見込んで形成される請求項4乃至6いずれかに記載の複合断熱材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合断熱材及び複合断熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷蔵庫や自動販売機等の側壁を囲う断熱箱体の断熱材として真空断熱材(VIP:Vacuum Insulation Panel)が用いられ、断熱性能の向上を図っている。真空断熱材は、ウレタンの10分の1程の厚さで同一の断熱性能を有するものである。
【0003】
特許文献1は、包装材6で形成された袋体の内部に芯材7が真空封入された真空断熱材であって、この真空断熱材20に貫通穴21が形成され、貫通穴21と芯材7との間に芯材カバー8を備えた構成を開示する。
また、特許文献2は、貫通孔を有する真空断熱材において、芯材2の貫通孔の縁と外被材3の穴との間の外被材3同士が熱溶着された熱溶着部7に、ガスバリア層に挟まれた熱溶着層の厚みが部分的に薄くなった薄肉部8を、穴の周方向に連続して設けることで、熱溶着部からのガス浸入量を抑制する構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−200014号公報
【特許文献2】特開2011−208762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷蔵庫や自動販売機等の内部には、配管や、配線等が混在しており、冷蔵庫や自動販売機等の機材収納部と製品収納部の断熱に真空断熱材を使用するには、配管や配線等を通すために、穴径及び穴ピッチを精度良く開ける必要がある。
【0006】
しかしながら、真空断熱材の製造工程において、真空包装時の収縮による影響により、穴径や穴ピッチを精度よく開けることが困難であった。また、穴の周囲の断熱性にも課題があり、さらに、長期にわたって冷蔵庫や自動販売機等を稼働させることによって、穴の周囲の溶着部からガスが浸入し、断熱性能が低下するといった問題もある。
【0007】
これらの断熱性能の低下は、自動販売機等の内部を一定の温度に保持するためのエネルギー消費を大きくする。また、自動販売機等の更なる省エネルギー及び小型化を図るためには、薄くて断熱性能の高い真空断熱材の使用部位を増やすのが効果的である。
【0008】
本発明は、貫通孔を有し、断熱性能の高い複合断熱材及び複合断熱材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの態様は複合断熱材にあり、この複合断熱材は、貫通孔を有する芯材と、前記芯材を真空包装する包装材と、前記芯材が真空包装された状態で形成される孔と、からなる真空断熱材と、前記真空断熱材の少なくとも1面と前記孔の周囲を覆う発泡系断熱材と、を有する。
【0010】
好適には、前記孔は、円形状、円弧状、U字状又は切欠きである。
【0011】
好適には、前記真空断熱材の他の面は、保護部材で覆われる。
【0012】
本発明の他の態様は複合断熱材の製造方法にあり、この複合断熱材の製造方法は、芯材に貫通孔を形成する工程と、前記芯材を包装材で包み込み真空包装する工程と、真空包装された前記包装材の前記貫通孔部分以外の開口部を含む前記包装材の周囲を熱溶着する工程と、前記貫通孔部分を熱溶着する工程と、熱溶着された前記貫通孔部分に第1の孔を形成する工程と、前記包装材の少なくとも1面と前記第1の孔の周囲を発泡系断熱材で覆う工程と、前記発泡断熱材で覆われた前記第1の孔部分を切断して第2の孔を形成する工程と、を有する。
【0013】
好適には、前記第2の孔は、前記第1の孔より孔径が小さく、前記第1の孔は、前記貫通孔よりも孔径が小さい。
【0014】
好適には、前記第1の孔の孔ピッチは、前記貫通孔の孔ピッチよりも小さい。
【0015】
好適には、前記貫通孔は、前記芯材を包装材で真空包装する工程における孔ピッチ及び孔径の収縮を見込んで形成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、貫通孔を有し、断熱性能の高い複合断熱材及び複合断熱材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複合断熱材が用いられる自動販売機を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る複合断熱材を示す上面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る複合断熱材の孔周辺を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る複合断熱材の製造方法を示す図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る複合断熱材を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る複合断熱材を備えた自動販売機10を示す斜視図である。
【0019】
自動販売機10は、筺体12と、筺体12の前面を開閉する前扉14と、前扉14の内側に設けられた中扉16と、を有する。
筺体12内は、製品を収納する製品収納部18と、コンプレッサ等の機材を収納する機材収納部20に分けられる。
製品収納部18は上面及び側面を不図示の真空断熱材等の断熱パネルで覆われている。
また、製品収納部18と機材収納部20は、複合断熱材としての複合断熱パネル22で仕切られている。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係る複合断熱パネル22を示す上面図であり、
図3は、
図2の複合断熱パネル22の孔24周辺を示す断面図である。
【0021】
複合断熱パネル22には、複数の孔24が形成され、この孔24内を貫通して、筺体12内で製品収納部18から機材収納部20へ電気配線、冷媒ガス配管等が設けられる。
【0022】
複合断熱パネル22は、真空断熱材26と、この真空断熱材26の一面に接着して設けられた保護部材としての保護シート28と、真空断熱材26の他の面と後述する孔39の周囲を覆う発泡系断熱材30と、を有する。
【0023】
真空断熱材26は、芯材32と、芯材32を内包するガスバリア製の包装材34と、を有する。真空断熱材26には、孔39が形成されている。
【0024】
芯材32は、繊維材料であって、例えばグラスウールやグラスペーパーやグラスティッシュ等をシート状に成型したものが用いられる。芯材32には、貫通孔36が形成されている。
【0025】
包装材34は、袋状の例えばガスバリア製のラミネートフィルムが用いられる。
【0026】
保護シート28は、真空断熱材26を保護するために用いられ、耐侯性、帯電防止性が良好な例えばPP(ポリプロピレン)シートが用いられる。
【0027】
発泡系断熱材30として、例えば発泡ウレタンが用いられる。
【0028】
複合断熱パネル22の孔24の孔径L
1は、真空断熱材26の孔39の孔径L
2よりも小さく、孔39の孔径L
2は、芯材32の貫通孔36の孔径L
3よりも小さく、孔24と孔39と貫通孔36は、略同心円状に形成されている。
【0029】
次に、本発明の一実施形態に係る複合断熱パネル22の製造方法について
図4を参照して説明する。
【0030】
まず、よく乾燥させた芯材32に貫通孔36を開ける(
図4(a)参照)。貫通孔36の孔径L
3は、例えば105mmである。貫通孔36の孔ピッチP
3-1は、例えば158mmであって、孔ピッチP
3-2は、例えば597mmである。
【0031】
次に、この芯材32を包装材34内に収納し、この袋の開口部より包装材34内を真空排気して、包装材34同士を熱溶着させ、周囲シール部38Aを形成する(
図4(b)参照)。
【0032】
次に、包装材34の周囲シール部38Aを折り込み、貫通孔36内の貫通孔シール部38Bを熱溶着する。熱溶着した貫通孔36の内周側の貫通孔シール部38Bを切断し、孔39を形成し、孔39を有する真空断熱材26が形成される(
図4(c)参照)。孔39の孔径L
2は、例えば75mmである。孔39の孔ピッチP
2-1は、例えば155mmであって、孔ピッチP
2-2は、例えば590.5mmである。
【0033】
ここで、
図4(b)における真空排気により、貫通孔36の孔ピッチP
3及び孔径L
3は1〜2%程度収縮する。
すなわち、真空排気による収縮を見込んで、貫通孔36の孔ピッチP
3及び孔径L
3を形成する。
【0034】
枠体40の中に、保護シート28を装着し、さらに保護シート28の上面に真空断熱材26を装着する。このとき、保護シート28と真空断熱材26は不図示の接着テープにより接着されている。枠体40の側面には、発泡系断熱材30を注入する注入口42が設けられている(
図4(d)参照)。
【0035】
真空断熱材26を枠体40に装着したら、枠体40の上面に蓋44を装着し、注入口42から発泡系断熱材30を注入する。
これにより、発泡系断熱材30は、真空断熱材26と保護シート28間、真空断熱材26と蓋44間、孔39内の枠体40内の隙間に流れ込み、真空断熱材26の一面及び孔39内が発泡系断熱材30で充填され、複合断熱パネル22が形成される。ここで、発泡系断熱材30を用いることにより、真空断熱材26との間に外気が入ることが抑制される(
図4(e)(
図4(d)のA−A線断面図)参照)。
【0036】
所定の時間経過後(例えば15分後)、発泡系断熱材30が凝固し、冷却したら、蓋44を取り外し、枠体40から複合断熱パネル22を取り出す。そして、孔39の内周側を切断し、複合断熱パネル22に孔24を形成する(
図4(f)参照)。孔24の孔径L
1は、例えば48mmである。孔24の孔ピッチP
1-1は、例えば155mmであって、孔ピッチP
1-2は、例えば590.5mmである。
【0037】
ここで、真空排気による収縮を見込んで、貫通孔36の孔径及び孔ピッチを形成しているので、孔24は、複合断熱パネル22に貫通して設けられた配管や配線を通すのに適した孔径を有する。また、孔24の孔ピッチは、複合断熱パネル22に貫通して設けられた配管や配線を通すのに適した位置に配置される。すなわち、寸法精度の良い孔が形成される。また、真空断熱材26の一面及び孔39の周囲が発泡系断熱材30で覆われているため、周囲シール部38A及び貫通孔シール部38Bが保護され、周囲シール部38A及び貫通孔シール部38Bから真空断熱材26内へガスが侵入することが抑制され、断熱性能が保たれる。また、肉薄の貫通孔シール部38Bも発泡系断熱材30で覆われるので、断熱性能が保たれる。また、真空断熱材26の一面が保護シート28で覆われ、他の面が発泡系断熱材30で覆われているため、包装材の表面を傷つける恐れがない。
【0038】
なお、本実施形態においては、真空断熱材26の一面を発泡系断熱材30で覆う構成について説明したが、これに限らず、真空断熱材26の全面を発泡系断熱材30で覆うようにしてもよい。
【0039】
図5は、他の実施形態に係る複合断熱パネル50を示す上面図である。
図5に示す複合断熱パネル50は、円形状の孔24の他、円弧状の孔52とU字状の孔54と切欠き56とを有する。
円形状の孔24に限らず、円弧状の孔52、U字状の孔54、切欠き56等の形状であっても、円弧状の孔、U字状の孔、切欠きを有する芯材を用いることにより、上述した実施形態に係る複合断熱パネル22と同様の方法により、円弧状の孔、U字状の孔、切欠き等の形状の孔を有する真空断熱材を形成することができ、真空断熱材の一面及び円弧状の孔、U字状の孔、切欠き等の周囲が発泡系断熱材30で覆われた複合断熱材を形成することができる。
【0040】
すなわち、自動販売機等の内部の製品収納部と機材収納部を仕切る排熱の影響が大きい部分に、真空断熱材を用いた複合断熱パネルを用いることにより、省エネルギー及び装置の小型化を図ることができる。
【0041】
また、真空断熱材の少なくとも一面及び孔の周囲を発泡系断熱材で覆うように形成することにより、配管や、配線等が混在した部分においても、孔の周囲からのガスの浸入を抑制しつつ、断熱性能を向上させることができる。また、孔の周囲の肉薄部の断熱性能を保持することができる。また、孔に配管や配線を通す際に、包装材表面を傷つける恐れがなく、真空状態を保持して断熱性能を保持することができる。
【0042】
本発明は、冷蔵庫や自動販売機の他、ショーケース冷凍庫、建材外壁、エコキュート(登録商標)等の高い断熱性を必要とされる断熱箱体に用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
10 自動販売機
18 製品収納部
20 機材収納部
22 複合断熱パネル
24 孔(第2の孔)
26 真空断熱材
28 保護シート
30 発泡系断熱材
32 芯材
34 包装材
36 貫通孔
38A 周囲シール部
38B 貫通孔シール部
39 孔(第1の孔)