(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-215032(P2015-215032A)
(43)【公開日】2015年12月3日
(54)【発明の名称】スラスト滑り軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 17/10 20060101AFI20151106BHJP
F16C 33/10 20060101ALI20151106BHJP
F16C 33/74 20060101ALI20151106BHJP
【FI】
F16C17/10 Z
F16C33/10 Z
F16C33/74 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-97845(P2014-97845)
(22)【出願日】2014年5月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】森重 晃一
(72)【発明者】
【氏名】西岡 渉
(72)【発明者】
【氏名】永島 剛
【テーマコード(参考)】
3J011
3J016
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011BA08
3J011KA03
3J011PA02
3J011RA02
3J016AA03
3J016BB03
(57)【要約】
【課題】長期に亘り、軸部材の円滑な回動を許容しつつ、軸部材に加わるスラスト方向の荷重を支持することができるスラスト滑り軸受を提供する。
【解決手段】ストラット型サスペンションのストラットアッセンブリを車体へ取り付けるためのアッパーサポートに取り付けられるアッパーケース2と、ストラット型サスペンションのコイルスプリング上端を支持するアッパースプリングシートに取り付けられ、アッパーケース2と組み合わされて環状空間5を形成するロワーケース3と、環状空間5に配置され、アッパーケース2及びロワーケース3間の回動を実現する環状のセンタープレート4とを備える。環状空間5には潤滑グリースが充填される。センタープレート4は、アッパーケース2の支持対象面27と摺動可能に接触する軸受面42と、軸受面42の内周縁部および外周縁部のそれぞれにセンタープレート4の周方向に沿って設けられた環状の凸部47、48とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材の回動を許容しつつ、当該軸部材に加わるスラスト方向の荷重を支持するスラスト滑り軸受であって、
前記軸部材が挿入された状態で当該軸部材の支持対象への取付機構に取り付けられるアッパーケースと、
前記軸部材が挿入された状態で前記軸部材に組み合わせられたコイルばねの上端部のばね座に取り付けられ、前記アッパーケースに回動自在に組み合わされて、当該アッパーケースとの間に環状空間を形成するロワーケースと、
前記軸部材が挿入された状態で前記環状空間に配置され、前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間の回動を実現する軸受体として機能する環状のセンタープレートと、を備え、
前記環状空間には、潤滑グリースが充填され、
前記センタープレートは、
前記アッパーケースの支持対象面と摺動可能に接触する軸受面と、
前記軸受面の内周縁部および外周縁部のそれぞれに、前記センタープレートの周方向に沿って設けられた環状の一対の凸部と、を有する
ことを特徴とするスラスト滑り軸受。
【請求項2】
請求項1に記載のスラスト滑り軸受であって、
前記センタープレートは、前記軸受面に形成された凹部をさらに有する
ことを特徴とするスラスト滑り軸受。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスラスト滑り軸受であって、
前記アッパーケースは、
前記環状空間に配置された前記センタープレートの外周を囲む環状の凸部を有する
ことを特徴とするスラスト滑り軸受。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載のスラスト滑り軸受であって、
前記ロワーケースは、
樹脂成形体に補強材であるスチールプレートが埋め込まれたインサート成形品である
ことを特徴とするスラスト滑り軸受。
【請求項5】
請求項1ないし4に記載のスラスト滑り軸受であって
前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間に配置され、前記環状空間を外部から遮断するシール材をさらに備える
ことを特徴とするスラスト滑り軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部材の回動を許容しつつ、軸部材に加わるスラスト方向の荷重を支持するスラスト滑り軸受に関し、特に、ストラット型サスペンション(マクファーソンストラット)のストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ストラット型サスペンションに加わるスラスト方向の荷重を支持するスラスト滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前輪に用いられるストラット型サスペンションは、ピストンロッドと一体となった外筒に油圧式ショックアブソーバを内蔵したストラットアッセンブリに、コイルスプリングを組み合わせた構造を有しており、ステアリング操作によってストラットアッセンブリがコイルスプリングと共に回動する。このため、ストラットアッセンブリの円滑な回動を許容するべく、通常、車体へのストラットアッセンブリの取付機構であるアッパーサポートとコイルスプリング上端部のばね座であるアッパースプリングシートとの間には、転がり軸受あるいは滑り軸受がスラスト軸受として配置されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ストラット型サスペンション用のスラスト軸受として、合成樹脂性の滑り軸受が開示されている。この滑り軸受は、アッパーサポート側に取り付けられるアッパーケースと、アッパースプリングシート側に取り付けられ、アッパーケースに回動自在に組み合わされるロワーケースと、アッパーケースおよびロワーケースを組み合わせることにより形成される環状空間に配置され、アッパーケースおよびロワーケース間の円滑な回動を実現する軸受体として機能するセンタープレートと、を備えている。ここで、アッパーケースおよびロワーケースを組み合わせることにより形成される環状空間には、潤滑用のグリースが充填されている。また、センタープレートの軸受面には、潤滑グリース溜めとして、センタープレートの軸受面の径方向内側に形成された環状溝と、この環状溝から径方向外側に延びて側面に繋がる複数の溝と、が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−013768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ストラット型サスペンション用のスラスト軸受として、特許文献1に記載の滑り軸受を用いた場合、つぎのような問題が発生する。すなわち、ストラット型サスペンションのスラスト方向に荷重が加わると、センタープレートの軸受面およびアッパーケースあるいはロワーケースに設けられた支持対象面が互いに圧接し、軸受面上の潤滑グリースが潤滑グリース溜めの溝を介してセンタープレートの側面から押し出されてしまい、その結果、軸受面上に潤滑グリース膜が形成されない部分が生ずることがある。このような状態でセンタープレートの軸受面およびアッパーケースあるいはロワーケースに設けられた支持対象面間で摺動が繰り返されると、摩擦熱によりセンタープレートの軸受面が変形して、所望の性能を発揮できなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、長期に亘り、軸部材の円滑な回動を許容しつつ、軸部材に加わるスラスト方向の荷重を支持することができるスラスト滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のスラスト滑り軸受は、センタープレートの軸受面の内周縁部および外周縁部のそれぞれに、センタープレートの周方向に沿って環状の凸部を設け、軸受面上のこれら環状の凸部に囲まれた領域に潤滑グリースを保持させた。ここで、軸受面に潤滑グリース溜めとして機能する凹部を設けてもよい。
【0008】
例えば、本発明は、軸部材の回動を許容しつつ、当該軸部材に加わるスラスト方向の荷重を支持するスラスト滑り軸受であって、
前記軸部材が挿入された状態で当該軸部材の支持対象への取付機構に取り付けられるアッパーケースと、
前記軸部材が挿入された状態で前記軸部材に組み合わせられたコイルばねの上端部のばね座に取り付けられ、前記アッパーケースに回動自在に組み合わされて、当該アッパーケースとの間に環状空間を形成するロワーケースと、
前記軸部材が挿入された状態で前記環状空間に配置され、前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間の回動を実現する軸受体として機能する環状のセンタープレートと、を備え、
前記環状空間には、潤滑グリースが充填され、
前記センタープレートは、
前記アッパーケースの支持対象面と摺動可能に接触する軸受面と、
前記軸受面の内周縁部および外周縁部のそれぞれに、前記センタープレートの周方向に沿って設けられた環状の一対の凸部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軸部材のスラスト方向に荷重が加わって、センタープレートの軸受面およびアッパーケースの支持対象面が互いに圧接する場合でも、一対の凸部に囲まれた軸受面上の領域に潤滑グリースを保持して、軸受面の全面を潤滑グリース膜で覆うことができる。このため、長期に亘り、軸部材の円滑な回動を許容しつつ、軸部材に加わるスラスト方向の荷重を支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(A)、
図1(B)および
図1(C)は、本発明の一実施の形態に係るスラスト滑り軸受1の平面図、底面図および正面図であり、
図1(D)は、
図1(A)に示すスラスト滑り軸受1のA−A断面図である。
【
図2】
図2(A)は、
図1(D)に示すスラスト滑り軸受1のB部拡大図であり、
図2(B)は、
図1(D)に示すスラスト滑り軸受1のC部拡大図である。
【
図3】
図3(A)、
図3(B)および
図3(C)は、アッパーケース2の平面図、底面図および正面図であり、
図3(D)は、
図3(A)に示すアッパーケース2のD−D断面図である。
【
図4】
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)は、ロワーケース3の平面図、底面図および正面図であり、
図4(D)は、
図4(A)に示すロワーケース3のE−E断面図である。
【
図5】
図5(A)、
図5(B)および
図5(C)は、センタープレート4の平面図、底面図および正面図であり、
図5(D)は、
図5(A)に示すセンタープレート4のF−F断面図であり、
図5(E)は、
図5(A)に示すセンタープレート4のG部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0012】
図1(A)、
図1(B)および
図1(C)は、本実施の形態に係るスラスト滑り軸受1の平面図、底面図および正面図であり、
図1(D)は、
図1(A)に示すスラスト滑り軸受1のA−A矢視断面図である。また、
図2(A)は、
図1(D)に示すスラスト滑り軸受1のB部拡大図であり、
図2(B)は、
図1(D)に示すスラスト滑り軸受1のC部拡大図である。
【0013】
本実施の形態に係るスラスト滑り軸受1は、ストラット型サスペンションのストラットアッセンブリ(不図示)を収容するための収容孔10を備え、この収容孔10に収容されたストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ストラット型サスペンションのスラスト方向に加わる荷重を支持する。図示するように、スラスト滑り軸受1は、アッパーケース2と、アッパーケース2と回動自在に組み合わされて、アッパーケース2との間に環状空間5を形成するロワーケース3と、この環状空間5に配置された環状のセンタープレート4と、図示していないが、環状空間5に充填された潤滑グリースと、を備えている。
【0014】
アッパーケース2は、必要に応じて潤滑油が含浸されたポリアセタール樹脂等の滑り特性に優れた熱可塑性樹脂で形成され、ストラット型サスペンションのストラットアッセンブリが挿入された状態でこのストラットアッセンブリの車体への取付機構であるアッパーサポート(不図示)に取り付けられる。
【0015】
図3(A)、
図3(B)および
図3(C)は、アッパーケース2の平面図、底面図および正面図であり、
図3(D)は、
図3(A)に示すアッパーケース2のD−D断面図である。
【0016】
図示するように、アッパーケース2は、ストラットアッセンブリを挿入するための挿入孔20を備えた環状のアッパーケース本体21と、アッパーケース本体21の上面22に形成され、アッパーサポートに取り付けるための取付面23と、アッパーケース本体21の下面24に形成され、ロワーケース3と回動自在に組み合わされることにより環状空間5を形成するための、下面24側が開口し、上面22側が閉塞した環状溝25と、環状溝25の溝底26に形成され、センタープレート4の後述の軸受面42と摺動可能に接触する環状の支持対象面27と、を備える。
【0017】
環状溝25の溝底26において、支持対象面27の外周縁側には、溝底26から下面24の方向に突き出した環状の凸部28が形成されている。この凸部28は、環状溝25に配置されたセンタープレート4の外周側の側面49を囲んでおり、ストラット型サスペンションのスラスト方向に荷重が加わった場合に、環状空間5に充填された潤滑グリースがセンタープレート4の軸受面41上から径方向外側へ押し出されるのを防止する役割を果たす。
【0018】
ロワーケース3は、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を用いた樹脂成形体に、補強材であるスチールプレート6が埋め込まれたインサート成形品であり、ストラット型サスペンションのストラットアッセンブリが挿入された状態でストラット型サスペンションのコイルスプリング(不図示)上端部のばね座であるアッパースプリングシート(不図示)に取り付けられる。
【0019】
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)は、ロワーケース3の平面図、底面図および正面図であり、
図4(D)は、
図4(A)に示すロワーケース3のE−E断面図である。
【0020】
図示するように、ロワーケース3は、ストラットアッセンブリを挿入するための挿入孔30を備えた筒状のロワーケース本体31と、ロワーケース本体31の上面32に形成され、ロワーケース3がアッパーケース2と回動自在に組み合わされた場合に、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状溝25に挿入されて環状空間5を形成する、アッパーケース2側に突出し、ロワーケース3の内周面に沿って形成された環状の凸部33と、凸部33に取り付けられ、ウレタン樹脂等の弾性体からなる環状のダストシール34と、ロワーケース本体31の側面35に設けられ、外方側に張り出したフランジ36と、を備える。
【0021】
凸部33の上面330には、センタープレート4を載置するための載置面331が形成されている。さらに、この載置面331上の外周側には、載置面331に載置されたセンタープレート4の回転を防止するための回止め332が形成されている。この回止め332は、凸部33の外周面に沿った円形状であり、載置面331からアッパーケース2側に突出した凸部3320と、突出していない平坦部3321と、を交互に有している。
【0022】
ダストシール34は、塵埃等の異物が環状空間5に侵入するのを防止するためのものであり、
図2(A)および
図2(B)に示すように、ロワーケース3の凸部33がアッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状溝25に挿入された場合に、凸部33の外周面333と環状溝25の外周側内壁250との隙間を塞ぐリップ340、および凸部33の内周面334と環状溝25の内周側内壁251との隙間を塞ぐリップ341を備えている。
【0023】
フランジ36は、ロワーケース本体31の上面32側において、ロワーケース本体31の外周側の側面35から径方向外側に張り出しており、フランジ36の下面360がアッパースプリングシートに取り付けられる。
【0024】
センタープレート4は、必要に応じて潤滑油が含浸されたポリオレフィン樹脂等の摺動特性に優れた熱可塑性樹脂で形成され、ロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に形成された凸部33の載置面331に固定され、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状溝25の支持対象面27と摺接する。このことにより、アッパーケース2およびロワーケース3間の自在な回動を実現する軸受体として機能する。
【0025】
図5(A)、
図5(B)および
図5(C)は、センタープレート4の平面図、底面図および正面図であり、
図5(D)は、
図5(A)に示すセンタープレート4のF−F断面図であり、
図5(E)は、
図5(A)に示すセンタープレート4のG部拡大図である。
【0026】
図示するように、センタープレート4は、環状のセンタープレート本体40と、センタープレート本体40の上面41に形成された軸受面42と、センタープレート本体40の下面43の内周側から軸心O方向に沿って下方向に張り出して形成された環状リブ44と、センタープレート本体40の下面43から下面43の周方向に沿って径方向外側に突出して形成された複数の凸状の回止め45と、を備える。
【0027】
環状リブ44は、センタープレート本体40の下面43とロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に形成された環状の凸部33の載置面331とが接触するようにして、センタープレート4がロワーケース3上に載置された場合に、この環状の凸部33の内側に挿入される。
【0028】
回止め45は、センタープレート本体40の下面43とロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に形成された環状の凸部33の載置面331とが接触するようにして、センタープレート4がロワーケース3上に載置された場合に、この環状の凸部33に設けられた回止め332の平坦部3321上に配置されて、この平坦部3321の両側に位置する凸部3320と係合することにより、センタープレート4がロワーケース3に対して相対的に回転するのを防止する。
【0029】
軸受面42には、内周縁部および外周縁部のそれぞれに、一対の環状の凸部47、48がセンタープレート4の周方向に沿って軸受面42からアッパーケース2側に突出して形成されている。この一対の環状の凸部47、48それぞれの上面470、480が、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状溝25の支持対象面27と摺動可能に接触する。これにより、センタープレート4は、アッパーケース2およびロワーケース3間の自在な回動を実現する軸受体として機能する。また、軸受面42の一対の環状の凸部47、48の間に位置する中央環状面420には、潤滑グリース溜めとして機能する多数の凹部46が形成されている。中央環状面420は、その内周縁部および外周縁部が一対の環状の凸部47、48によって囲まれているため、より多くの潤滑グリースを保持させることが可能となる。
【0030】
上記構成を有する本実施の形態に係るスラスト滑り軸受1において、センタープレート4は、ロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に形成された凸部33の載置面331に載置され、センタープレート4の軸受面42に形成された凸部47、48がアッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状溝25の支持対象面27と摺動可能に接触する。このため、ロワーケース3は、センタープレート4を介して、アッパーケース4と回動自在に組み合わされる。これにより、スラスト滑り軸受1は、収容孔10に挿入されたストラット型サスペンションのストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ロワーケース3のフランジ36の裏面360に取り付けられたアッパースプリングシートおよびストラット式サスペンションのコイルスプリングを介して加わるストラット型サスペンションのスラスト方向の荷重を支持する。
【0031】
また、本実施の形態に係るスラスト滑り軸受1は、センタープレート4の軸受面42の内周縁部および外周縁部のそれぞれに、センタープレート4の周方向に沿って環状の凸部47、48を設けている。このため、アッパーケース2およびロワーケース3を組み合わせることにより形成される環状空間5に充填された潤滑グリースの一部が、軸受面42上のこれら環状の凸部47、48で囲まれた領域に保持される。そして、ストラット型サスペンションのスラスト方向に荷重が加わって、センタープレート4の軸受面42に形成された凸部47、48とアッパーケース2の支持対象面7とが互いに圧接する場合でも、この領域に潤滑グリースを保持して、軸受面42の全面を潤滑グリース膜で覆うことができる。このため、長期に亘り、ストラット型サスペンションのストラットアッセンブリの円滑な回動を許容しつつ、ストラット型サスペンションのスラスト方向に加わる荷重を支持することが可能となる。
【0032】
また、本実施の形態に係るスラスト滑り軸受1は、センタープレート4の軸受面42に潤滑グリース溜めとして機能する凹部46を複数設けているので、軸受面42上の環状の凸部47、48で囲まれた領域により多くの潤滑グリースを保持することができる。このため、軸受面42の凸部47、48の上面470、480をより確実に潤滑グリース膜で覆うことができ、より長期に亘り、ストラット型サスペンションのストラットアッセンブリの円滑な回動を許容しつつ、ストラット型サスペンションのスラスト方向に加わる荷重を支持することが可能となる。
【0033】
また、本実施の形態に係るスラスト滑り軸受1は、アッパーケース2の下面24に形成された環状溝25の溝底26に、アッパーケース2およびロワーケース3を組み合わせることにより形成される環状空間5に配置されたセンタープレート4の外周側の側面49を囲むように溝底26からロワーケース3側に突出した環状の凸部28を設けている。この凸部28により、ストラット型サスペンションのスラスト方向に荷重が加わった場合に、環状空間5に充填された潤滑グリースがセンタープレート4の軸受面41上から径方向外側に押し出されるのを防止することができ、したがって、軸受面42のの凸部47、48の上面470、480をより確実に潤滑グリース膜で覆うことができ、より長期に亘り、ストラット型サスペンションのストラットアッセンブリの円滑な回動を許容しつつ、ストラット型サスペンションのスラスト方向にかかる荷重を支持することが可能となる。
【0034】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形は可能である。
【0035】
例えば、上記の実施の形態では、センタープレート4をロワーケース3に載置し固定しているが、センタープレート4をロワーケース3に対して回動自在に載置してもよい。すなわち、センタープレート4の上面41と同様に、センタープレート4の下面43にも軸受面を形成し、この軸受面を、ロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に形成された凸部33の載置面331と摺動可能に接触させてもよい。この場合、センタープレート4の上面41と同様、センタープレート4の下面43に形成された軸受面の全面を潤滑グリースで覆うことができるように、この軸受面の内周縁部および外周縁部のそれぞれに、センタープレート4の周方向に沿って環状の凸部を設け、軸受面、載置面331およびこれらの凸部で囲まれた領域に潤滑グリースを保持させてもよい。また、この領域により多くの潤滑グリースを保持させるため、軸受面に潤滑グリース溜めとして機能する凹部を複数形成してもよい。
【0036】
また、上記の実施の形態では、アッパーケース2のアッパーケース本体21の上面22に形成された取付面23を、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面22に形成された環状溝25の支持対象面2に対して平行にしている(
図3(D)のP1、P2参照)。これにより、スラスト滑り軸受1の回転軸とストラット式サスペンションのストラット軸とを一致させ、キングピン軸まわりに発生するステアモーメントを大きくして、操舵フィーリングを向上させている。しかし、本発明はこれに限定されない。アッパーケース2の取付面23と支持対象面27との角度は、車両に要求される性能に応じて適宜決めればよく、例えばアッパーケース2の取付面23を支持対象面27に対して傾斜させ、スラスト滑り軸受1の回転軸を、ストラット式サスペンションのストラット軸に対して適切な角度に傾けてキングピン軸に近づけることにより、キングピン軸まわりに発生するステアモーメントが小さくなり、ストラット式サスペンションのコイルスプリングの製造ばらつきに対するロバスト性を向上させることができる。
【0037】
また、本発明のスラスト滑り軸受は、ストラット型サスペンションを含む様々な機構において、軸部材の回動を許容しつつ、この軸部材に加わるスラスト方向の荷重を支持する滑り軸受に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1:スラスト滑り軸受、 2:アッパーケース、 3:ロワーケース、 4:センタープレート、 5:環状空間、 6:スチールプレート、 10:スラスト滑り軸受の収容孔、 20:アッパーケースの挿入孔、 21:アッパーケース本体、 22:アッパーケース本体の上面、 23:アッパーケース本体の取付面、 24:アッパーケース本体の下面、 25:アッパーケース本体の環状溝、 26:環状溝の溝底、 27:アッパーケース本体の支持対象面、 28:支持対象面の環状の凸部、 30:ロワーケースの挿入孔、 31:ロワーケース本体、 32:ロワーケース本体の上面、 33:ロワーケース本体の環状の凸部、 34:ダストシール、 35:ロワーケース本体の側面、 36:ロワーケース本体のフランジ、 37:ロワーケース本体の下面、 40:センタープレート本体、 41:センタープレート本体の上面、 42:センタープレート本体の軸受面、 43:センタープレート本体の下面、 44:センタープレート本体の環状リブ、 45:センタープレート本体の回止め、 46:軸受面の凹部、47、48:軸受面の環状の凸部、 49:センタープレートの外周側の側面、 330:ロワーケース本体の環状の凸部の上面、 331:ロワーケース本体の載置面、 332:ロワーケース本体の回止め、 333:ロワーケース本体の環状の凸部の外周面、 334:ロワーケース本体の環状の凸部の内周面、 340、341:ダストシールのリップ、 360:フランジの裏面、 420:軸受面の中央環状面、 470、480:軸受面の環状の凸部の上面、 3320:回止めの凸部、 3321:回止めの平坦部