【解決手段】第2軸受41と、第2軸受41の外周面に密着する周壁部132と、周壁部132から径方向に延び第2軸受41の後側に配置される底壁部133とを備え、前側から圧入された第2軸受41を保持する軸受保持部131と、第2軸受41と底壁部133との間に設けられ、第2軸受41と底壁部133とで挟持される被挟持部材50と、を備え、被挟持部材50には、軸方向に延びる雌ねじ孔53が形成されており、雌ねじ孔の後側の延長線上には、雌ねじ孔53に螺合するボルト401の先端402が突き当たる小円筒部63が配置されていることを特徴とする軸受構造体である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ケースから前記軸受を取り外す必要がある場合、前記軸受は内輪を備えないので、抜き取り用治具を内輪に引っ掛けて軸受を取り外すことができない。また、軸受の外周面に形成された溝とケースの内周面に形成された溝とを跨ぐように、スナップリング(サークリップ、止め具)が設けられ、軸受の軸方向移動を規制した構成である場合、さらに軸受を取り外し難くなる。
【0007】
そこで、本発明は、軸受を容易に取り外し可能な軸受構造体及び軸受取り外し方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、軸受と、前記軸受の外周面に密着する周壁部と、前記周壁部から径方向に延び前記軸受の一端面側に配置される一端側壁部とを備え、他端側から圧入された前記軸受を保持する軸受保持部と、前記軸受と前記一端側壁部との間に設けられ、前記軸受と前記一端側壁部とで挟持される被挟持部材と、を備え、前記被挟持部材には、軸方向に延びる雌ねじ孔が形成されており、前記雌ねじ孔の一端側の延長線上には、前記雌ねじ孔に螺合する雄ねじの先端が突き当たる突き当て部が配置されていることを特徴とする軸受構造体である。
【0009】
このような構成によれば、雌ねじ孔に雄ねじを螺合させ、雄ねじの先端を突き当て部に突き当てた状態で、雄ねじを回転させる。そうすると、雄ねじが突き当てた状態のまま現位置で回転し、雄ねじに螺合する被挟持部材が一端側壁部から遠ざかる他端側(後記する実施形態では前側)に移動する。そして、このように移動する被挟持部材が軸受を他端側に押し、軸受を軸受保持部から容易に取り外すことができる。
【0010】
軸受構造体において、前記一端側壁部には、軸方向に延びる差込孔が形成され、前記被挟持部材は、前記軸受と前記一端側壁部とで挟持される板状の被挟持プレート部と、前記被挟持プレート部から軸方向に延びて前記差込孔に差し込まれると共に前記雌ねじ孔が形成された筒状の被差し込み部と、を備えることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、一端側壁部の差込孔に差し込まれる被差し込み部に雌ねじ孔が形成されているので、被差し込み部を差込孔に差し込んだ状態における一端側壁部及び被挟持部材の軸方向長さが短くなり、小型化される。すなわち、被挟持プレート部のみに雌ねじ孔が形成された構成である場合、被挟持プレート部が厚くなってしまう。
【0012】
軸受構造体において、前記雌ねじ孔は、前記被挟持部材の中心軸線からずれていることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、雌ねじ孔が被挟持部材の中心軸線からずれているので、被挟持部材が軸受保持部の内周面に当接し、雄ねじと共回りし難くなる。
【0014】
軸受構造体において、前記軸受は、終減速装置を構成するドライブピニオンシャフトを支持していることが好ましい。
【0015】
軸受構造体において、車両に搭載され、前記軸受は、副変速装置を構成し推進軸に動力を出力する出力軸を支持していることが好ましい。
【0016】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、軸受構造体における前記軸受保持部から軸受を取り外す軸受取り外し方法であって、前記雌ねじ孔に雄ねじを螺合すると共に当該雄ねじの先端を前記突き当て部に突き当てた状態で、前記雄ねじを回転させることで前記被挟持部材を他端側に移動させることを特徴とする軸受取り外し方法である。
【0017】
このような構成によれば、雌ねじ孔に雄ねじを螺合させ、雄ねじの先端を突き当て部に突き当てた状態で、雄ねじを回転させる。そうすると、雄ねじが突き当てた状態のまま現位置で回転し、雄ねじに螺合する被挟持部材が一端側壁部から遠ざかる他端側(後記する実施形態では前側)に移動する。そして、このように移動する被挟持部材が軸受を他端側に押し、軸受を軸受保持部から容易に取り外すことができる。
【0018】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、軸受と、前記軸受の外周面に密着する周壁部と、前記周壁部から径方向に延び前記軸受の一端面側に配置される一端側壁部とを備え、他端側から圧入された前記軸受を保持する軸受保持部と、前記軸受と前記一端側壁部との間に設けられ、前記軸受と前記一端側壁部と挟持される被挟持部材と、を備え、前記被挟持部材には、軸方向に延びる雌ねじ孔が形成されている軸受構造体における前記軸受保持部から軸受を取り外す軸受取り外し方法であって、基端側に径方向に突出する突出部を有する雄ねじを前記雌ねじ孔に螺合すると共に前記突出部及び前記軸受保持部の間につっかえ部材を介在させた状態で、前記雄ねじを回転させることで前記被挟持部材を他端側に移動させることを特徴とする軸受取り外し方法である。
【0019】
このような構成によれば、突出部及び軸受保持部の間につっかえ部材を介在させた状態で、雄ねじを回転させる。そうすると、雄ねじがつっかえ部材を介してつっかえた状態のまま現位置で回転し、雄ねじに螺合する被挟持部材が一端側壁部から遠ざかる他端側(後記する実施形態では前側)に移動する。そして、このように移動する被挟持部材が軸受を他端側に押し、軸受を軸受保持部から容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、軸受を容易に取り外し可能な軸受構造体及び軸受取り外し方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について
図1〜
図7を参照して説明する。
【0023】
本実施形態に係る動力伝達装置1は、シャフトドライブ型の自動二輪車(鞍乗型車両)に搭載されている。ただし、鞍乗型車両は、自動三輪車でもよい。
【0024】
自動二輪車は、車体300の中央に搭載された原動機及び変速機(図示しない)と、前後方向に延びるプロペラシャフト210と、プロペラシャフト210からの動力を略90°偏向させて後輪250に伝達する動力伝達装置1と、を備えている。変速機は、原動機の発生した動力を変速するものである。
【0025】
プロペラシャフト210は、筒状のスイングアーム230内に回転自在に設けられている。プロペラシャフト210の前端は変速機(図示しない)の出力軸に連結されており、後端は後記するジョイント220を介してドライブピニオンシャフト10に連結されている(
図2参照)。スイングアーム230は、左右方向に延びるピボット軸231回りに揺動自在に取り付けられている。
【0026】
<ジョイント>
ジョイント220は、
図2に示すように、プロペラシャフト210と後記するドライブピニオンシャフト10とを連結する円筒状の部材である。ジョイント220は、前側から後側に向かって、大円筒部221と、大円筒部221よりも小径である小円筒部222と、を備えている。
【0027】
大円筒部221は、その内部にプロペラシャフト210の後端部が差し込まれ、後端部とスプライン結合する部分である。大円筒部221の内周面にはスプライン孔221aが形成されている。
【0028】
小円筒部222は、その内部に後記するドライブピニオンシャフト10のスプライン軸部12が差し込まれ、スプライン軸部12とスプライン結合する部分である。小円筒部222の内周面にはスプライン孔222aが形成されている。
また、小円筒部222の前端面にはナット19が当接しており、小円筒部222の後端面は第1軸受21の内輪22に当接している。
【0029】
≪動力伝達装置の構成≫
動力伝達装置1について
図2〜
図4を参照して説明する。
動力伝達装置1は、後記する第2軸受41を保持する軸受構造体が組み込まれた装置であって、軸線O1回りに回転するドライブピニオンシャフト10と、第1軸受21及び第2軸受41と、被挟持部材50と、軸線O2回りに回転するリングギヤシャフト及びリングギヤ81と、これらを収容するケース100と、を備えている。ケース100内には、第1軸受21等を潤滑する潤滑油が封入されている。
【0030】
<ドライブピニオンシャフト>
ドライブピニオンシャフト10は、前後方向に延びる棒状の部材である。ドライブピニオンシャフト10は、前側から後側に向かって、雄ねじ部11と、スプライン軸部12と、第1軸部13と、ピニオンギヤ部14(ドライブピニオンギヤ)と、第2軸部15と、を備えている。
【0031】
雄ねじ部11は、ナット19が螺合する部分であり、その外周面には雄ねじが形成されている。ナット19は、ジョイント220を構成する小円筒部222の前端面に係止している。これにより、ジョイント220はドライブピニオンシャフト10から抜けないようになっている。
【0032】
スプライン軸部12は、前記した小円筒部222とスプライン結合する部分である。スプライン軸部12の外周面にはスプライン軸12aが形成されている。
【0033】
第1軸部13は、第1軸受21に圧入され第1軸受21に回転自在に支持される円柱状部分である。
【0034】
ピニオンギヤ部14は、リングギヤ81と噛合する部分であって円錐台状を呈する傘歯車である。そして、ピニオンギヤ部14は、リングギヤ81とで終減速装置を構成している。すなわち、プロペラシャフト210からの動力は、ピニオンギヤ部14及びリングギヤ81で構成される終減速装置において、減速しつつ略90°で偏向するようなっている。
【0035】
第2軸部15は、第2軸受41に圧入され第2軸受41に回転自在に支持される円柱状部分である。
【0036】
<第1軸受等>
第1軸受21は、第1軸部13と第1ケース110との間に設けられ、第1ケース110に対して第1軸部13を回転自在で支持するものである。第1軸受21は、本実施形態においてラジアルボールベアリングで構成され、内輪22と、外輪23と、内輪22及び外輪23の間を転動する複数のボール24と、を備えている。ただし、第1軸受21は、ラジアルボールベアリングに限定されず、その他の種類でもよい。
【0037】
内輪22は、第1軸部13に外嵌している。言い換えると、第1軸部13は、内輪22内に圧入されている。内輪22の前端面は小円筒部222に当接している。内輪22の後端面は、ピニオンギヤ部14との間に設けられたシム31に当接している。すなわち、内輪22は、軸方向において小円筒部222とピニオンギヤ部14とで挟まれており、軸方向における相対位置が固定されている。なお、シム31の厚さ変更することで、ピニオンギヤ部14の軸方向位置が調整され、ピニオンギヤ部14とリングギヤ81との噛合状態が調整される。
【0038】
外輪23は、後記する溝121に内嵌しており、外輪23の後端面は後記する厚肉部122に当接している。外輪23の前端面は、カラー32の後端面に当接している。カラー32は、第1ケース110にスプライン結合しており、その前端面に抜け止め防止用の止め具33が当接している。止め具33は、ボルト34によって第1ケース110に固定されている。カラー32と第1ケース110との間にはOリング35が設けられている。カラー32と小円筒部222との間にはオイルシール36が設けられている。
【0039】
<第2軸受>
第2軸受41は、第2軸部15と第1ケース110との間に設けられ、第1ケース110に対して第2軸部15を回転自在で支持するものである。すなわち、第2軸受41は、終減速装置を構成するドライブピニオンシャフト10の第2軸部15を回転自在に支持している。
【0040】
第2軸受41は、本実施形態では、内輪を備えないニードルローラベアリングで構成され、外輪42と、外輪42及び第2軸部15の間を転動する複数のローラ43と、ローラ43を回転自在で保持する保持器44と、を備えている。ただし、第2軸受41は、ニードルローラベアリングに限定されず、その他の種類でもよい。
【0041】
外輪42は、円筒状を呈する部材であり、第1ケース110の軸受保持部131に収容されている。
【0042】
外輪42の外周面には周方向に延びる溝45が形成されている(
図3参照)。そして、溝45及び第1ケース110の溝134に跨るようにC字形のスナップリング46が差し込まれている。このように、スナップリング46が溝45及び溝134に差し込まれているので、第2軸受41が第1ケース110に対して軸方向において位置決め(ロック)されている。
【0043】
したがって、第2軸受41を軸受保持部131から取り外す場合、スナップリング46によるロックが解除する程度の荷重を第2軸受41に付加する必要がある。
なお、第2軸受41を軸受保持部131に取り付ける場合、スナップリング46を溝45内で縮径させながら第2軸受41を軸受保持部131に圧入し、溝45及び溝134が重なる所定位置まで圧入されると、スナップリング46が開いて拡径し溝45及び溝134に跨るように差し込まれる。
【0044】
<被挟持部材>
被挟持部材50は、後記する軸受保持部131に収容された金属製の部材である。被挟持部材50は、
図3に示すように、被挟持プレート部51(円板部)と、被挟持プレート部51から後方に延びる被差し込み部52(ボス部)と、を備えている。
【0045】
被挟持プレート部51及び被差し込み部52は、例えば、プレス加工、冷間鍛造によって一体で形成されている。また、被挟持プレート部51及び被差し込み部52は、金属粉を焼結すると合金を形成する焼結合金(金属)によって一体で形成された構成でもよい。その他、別々に形成した被挟持プレート部51及び被差し込み部52が、溶接等で接合された構成でもよい。
【0046】
<被挟持部材−被挟持プレート部>
被挟持プレート部51は、前後方向において、第2軸受41の外輪42と後記する底壁部133との間に設けられ、第2軸受41と底壁部133とで挟まれ、軸線O1を中心とする円板状部である。詳細には、被挟持プレート部51の外周縁部が、外輪42と底壁部133とで挟まれている。被挟持プレート部51の外径は、外輪42の外径と略同一または若干小さく形成されている。なお、外輪42の後端面に円周状のリブを形成し、このリブ内に被挟持プレート部51が圧入され、外輪42(第2軸受41)と被挟持プレート部51とが一体化した構成でもよい。
【0047】
<被挟持部材−被差し込み部>
被差し込み部52は、前後方向に延びる円筒体であって、差込孔135に差し込まれる部分である。すなわち、被差し込み部52は、第2軸受41の回転中心である軸線O1と平行な方向に延びている。
【0048】
被差し込み部52の内周面には前後方向(軸方向)に延びる雌ねじ孔53が形成されている。雌ねじ孔53は、第2軸受41を軸受保持部131から取り外す場合、ボルト401が螺合する孔である(
図6、
図7参照)。なお、ボルト401が雌ねじ孔53に螺合可能であるように、前後方向視(軸方向視)において、雌ねじ孔53(被差し込み部52)は、第2軸受41の中空部、つまり、ローラ43よりも径方向内側に配置されている。また、差込孔135は元来潤滑油の通流を目的にしたものであるが、被挟持部材50には雌ねじ孔53が設けられているため、潤滑油が、雌ねじ孔53を通流し、第2軸受41を潤滑することが可能である。
【0049】
このように、差込孔135に差し込まれる被差し込み部52の内周面に雌ねじ孔53が形成される構成であるので、被差し込み部52を備えず被挟持プレート部51のみに雌ねじ孔53が形成される構成に対して、被挟持プレート部51を薄くできる。これにより、軸受保持部131に対する第2軸受41の保持位置が前方に大きく移動せず、動力伝達装置1が前後方向(軸方向)において長くなることはない。
これに対して、被挟持プレート部51のみに雌ねじ孔53が形成される構成である場合、雌ねじ孔53の軸長を確保するため被挟持プレート部51がある程度厚くなる。
【0050】
<リングギヤシャフト等>
リングギヤシャフト60は、車幅方向に延びる軸線O2を中心に回転し、左側が閉じた有底円筒状の部材である。リングギヤシャフト60は、左側が小径である3段の段違いの円筒体であり、右側から左側に向かって、大円筒部61と、大円筒部61よりも外径の小さい中円筒部62と、中円筒部62よりも外径の小さい小円筒部63と、を備えている。
【0051】
大円筒部61は、第A軸受71及び第B軸受72を介して、第2ケース140に回転自在に支持されている。第A軸受71、第B軸受72は、本実施形態において、ラジアルボールベアリングで構成されているが、これに限定されることはない。大円筒部61はスタッドボルト64を介して後輪250のホイール251と締結されるようになっている。
【0052】
中円筒部62は、リングギヤ81内に挿入され、リングギヤ81とセレーション結合している。これにより、中円筒部62(リングギヤシャフト60)とリングギヤ81とは一体で回転するようになっている。
【0053】
小円筒部63は、第C軸受73を介して、第1ケース110の半殻状部130に回転自在に支持されている。第C軸受73は、第2軸受41と同様に、内輪を備えないニードルローラベアリングで構成されている。
【0054】
小円筒部63は、差込孔135の後側(一端側)の延長線上に配置されており、雌ねじ孔53に螺合するボルト401の先端402(後端)が突き当たる突き当て部を構成している(
図6、
図7参照)。これにより、ボルト401が小円筒部63に突き当たった状態で後方に進む向きで回転しても、ボルト401は後方に移動せず、被挟持部材50が前方に移動するようになっている。
【0055】
<リングギヤ>
リングギヤ81は、ピニオンギヤ部14に噛合するリング状の傘歯車である。リングギヤ81は、中円筒部62にセレーション結合しており、中円筒部62と一体で回転するようになっている。
【0056】
<ケース>
ケース100は、ドライブピニオンシャフト10等を収容するケースであり、第1ケース110と、第2ケース140とを備え、これらが組み合わさることで構成されている。第1ケース110と第2ケース140とは、ボルト191で相互に締結されている。
【0057】
<第1ケース>
第1ケース110は、主にドライブピニオンシャフト10を収容するケースであり、前後方向に延びる円筒部120と、円筒部120の後側に形成された半殻状の半殻状部130と、を備えている。
【0058】
円筒部120の内周面には、径方向外向きに段違いで凹み外輪23の内嵌する溝121が形成されている。溝121の後側には厚肉であり外輪23の後端面に当接する厚肉部122が形成されている。
【0059】
<軸受保持部>
半殻状部130の内側には、第2軸受41を保持し後側が閉じた有底円筒状の軸受保持部131が形成されている。軸受保持部131は、前側(他端側)から内部に圧入された第2軸受41を保持する部分である。すなわち、第2軸受41はその前側が解放された状態で軸受保持部131に保持される。軸受保持部131は、
図3に示すように、その軸線が前後方向に延びる円筒状の周壁部132と、周壁部132の後側に形成された底壁部133(一端側壁部)と、を備えている。
【0060】
周壁部132は、第2軸受41を構成する外輪42の外周面に密着している。周壁部132の内周面には、周方向に延びると共にスナップリング46が嵌合する溝134が形成されている。
【0061】
底壁部133は、周壁部132の後端側から径方向内側に延び第2軸受41の後端面側(一端面側)に配置される部分である。底壁部133において、軸線O1から右方にずれた位置で前後方向に延びる差込孔135が形成されている。差込孔135は、第2軸受41に向かう潤滑油の流路であると共に、被差し込み部52が差し込まれる貫通孔である。
【0062】
差込孔135の内径は被差し込み部52の外径よりも大きく、差込孔135の内周面と被差し込み部52との間に隙間が形成されている。そして、潤滑油が前記隙間を通流するようになっており、例えば、隙間は潤滑油の排出用として利用される。
【0063】
差込孔135(被差し込み部52)は、軸線O1からずれて配置されている。すなわち、差込孔135は、被挟持プレート部51の中心である軸線O1から偏心している。そして、被差し込み部52が差込孔135に差し込まれているので、被挟持部材50は軸線O1を中心として回転せず、被挟持部材50は後記するボルト401と共回りしないようになっている。
【0064】
後側が閉塞した有底円筒状の軸受保持部131の後方には、第C軸受73が内嵌している。したがって、第C軸受73等が障害物となり、軸受保持部131の後方から押し出し棒等を挿入し、第2軸受41を前方に押し出すことはできない。
【0065】
半殻状部130の後側には内外を連通する給油孔138が形成されている。給油孔138にはキャップ139が着脱可能に取り付けられている。
【0066】
<第2ケース>
第2ケース140は、主にリングギヤシャフト60を収容するケースであり、左右方向に延びる短円筒体を呈している。
【0067】
≪動力伝達装置の作用効果、軸受取り外し方法≫
動力伝達装置1の作用効果と、第2軸受41を取り外す軸受取り外し方法とを説明する。
【0068】
図5に示すように、ナット19を緩め、ジョイント220及びドライブピニオンシャフト10を第1ケース110から取り外す。なお、リングギヤシャフト60は、ケース100に取り付けられたままである。
【0069】
次いで、円筒部120内にボルト401を挿入し、ボルト401を雌ねじ孔53に螺合させ、ボルト401の先端402を小円筒部63の外周面に突き当てる(
図6参照)。なお、雌ねじ孔53(被差し込み部52)は軸線O1からずれており、被挟持プレート部51の外周縁が周壁部132の内周面に当接するので、被差し込み部52がボルト401と共回りすることはない。
【0070】
次いで、ボルト401の先端402を小円筒部63に突き当たった状態で、ボルト401を正方向で回転させる(
図7、矢印A1参照)。正方向とは、ボルト401が後側に進もうとする方向である。
【0071】
そうすると、先端402が小円筒部63に当接しているので、ボルト401は現位置で回転することになる。これに並行して、ボルト401の螺合する被差し込み部52は、ボルト401の正方向での回転により、前側(底壁部133から遠ざかる他端側)に移動しようとする。これにより、被挟持部材50が前側に移動しようとする。したがって、被挟持部材50の一部である被挟持プレート部51も前側に移動しようとする(
図7、矢印A2参照)。
【0072】
そして、被挟持プレート部51が前方に移動すると、被挟持プレート部51が底壁部133から浮き上がり、被挟持プレート部51と底壁部133との間に隙間が形成されると共に、第2軸受41が前側に移動し軸受保持部131から取り外される。なお、第2軸受41が前側に移動すると、スナップリング46は縮径し溝45に収容され、スナップリング46による第2軸受41及び軸受保持部131の軸方向(前後方向)におけるロックが解除される。
【0073】
このようにして、被挟持部材50を追加するという簡易な構成において、小円筒部63に突き当たるボルト401の先端402を支点として、被挟持プレート部51を前方に移動させることにより、第2軸受41を軸受保持部131から容易に取り外すことができる。そして、軸受保持部131の内面が損傷等することもない。
【0074】
これに対して、第2軸受41が内輪を備える軸受に変更し、この内輪が第2軸部15に外嵌する構成とした場合、内輪を第2軸部15に位置決めする止め輪が必要となり、第2軸受41は径方向に大型化し、第2軸部15は軸方向に大型化してしまう。そうすると、第2軸受41をリングギヤシャフト60との間に配置し難くなる。
【0075】
また、動力伝達装置1の生産工程において第2軸受41の交換が必要となった場合、動力伝達装置1の使用中において第2軸受41の交換が必要となった場合、特殊な専用工具を使用せずに、一般的なボルト401を使用することで第2軸受41を取り外すことができる。
【0076】
≪変形例≫
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、次のように変更してもよい。
【0077】
例えば、動力伝達装置1がFFベースの四輪駆動車またはFR車に搭載された終減速装置である構成でもよい。この場合、終減速装置は、プロペラシャフトからの動力を減速しつつデフ装置に伝達し、ドライブピニオンシャフトとデフケースに固定されたリングギヤとを備えて構成される。そして、第2軸受41が前記ドライブピニオンシャフトを回転自在に支持する構成となる。
【0078】
その他に例えば、動力伝達装置1がFFベースの四輪駆動車に搭載された副変速装置(トランスファ装置)である構成でもよい。この場合、副変速装置は、例えば特許第5193390号公報に記載されるように、車幅方向に延びると共に原動機からの動力で回転するリングギヤシャフトと、リングギヤシャフトに固定されたリングギヤと、リングギヤと平面視90°で噛合するピニオンギヤ部を前端に有し前後方向に延びる出力軸と、を備えて構成される。出力軸の後端は、十字軸ジョイント等を介してプロペラシャフトの前端に連結されている。そして、第2軸受41は前記出力軸においてピニオンギヤ部の前側に形成された第2軸部15を回転自在に支持する構成となる。
【0079】
前記した実施形態では、ボルト401の先端402がリングギヤシャフト60の小円筒部63に突き当たる構成を例示したが、ボルト401の先端402がその他の被突き当て部材に突き当たる構成でもよい。具体的に例えば、リングギヤシャフト60に代えて適当な治具を挿入し、この治具にボルト401の先端402が突き当たる構成でもよい。その他、ボルト401の先端402は、雌ねじ孔53の延長線上の第1ケース110の後部136(突き当て部)に突き当たる構成でもよい。
【0080】
前記した実施形態では、被挟持部材50が被挟持プレート部51と被差し込み部52とを備える構成を例示したが、その他に例えば、被差し込み部52とを備えない構成でもよい。この構成の場合、被挟持プレート部51を肉厚で形成すると共に被挟持プレート部51自体に雌ねじ孔53を形成する。そして、この場合、底壁部133に差込孔135が形成されず、ボルト401の先端402が底壁部133に突き当たる構成でもよい。
【0081】
前記した実施形態では、雌ねじ孔53が被挟持プレート部51の中心軸線である軸線O1からずれている構成を例示したが、その他に例えば、雌ねじ孔53が軸線O1上である構成でもよい。
【0082】
前記した実施形態では、被挟持部材50の被差し込み部52が後方に突出し第2軸部15から離間するように指向しているが、その他に例えば、被差し込み部52が前方に突出し第2軸に指向する構成としてもよい。この構成の場合、第2軸部15に被差し込み部52よりも内径の大きい孔を穿設し、この孔に被差し込み部52が潜り込むよう配置させる。
【0083】
その他、
図8に示すように第2軸受41を取り外してもよい。具体的には、ボルト401を雌ねじ孔53に螺合すると共にボルト401の前側(基端側)の頭部403と軸受保持部131との間にカップ状のつっかえ部材410を介在させた状態で、ボルト401を正方向で回転させる(
図8、矢印A3参照)。なお、つっかえ部材410にはボルト401が貫通すると共に頭部403よりも小さい貫通孔411が形成されている。
【0084】
そうすると、頭部403がつっかえ部材410につっかえているので、ボルト401は現位置で回転することになる。これに並行して、ボルト401の螺合する被差し込み部52は、ボルト401の正方向での回転により、前側(他端側)に移動しようとする。これにより、被挟持部材50及び被挟持プレート部51も前側に移動しようとする(
図8、矢印A4参照)。したがって、第2軸受41を軸受保持部131から容易に取り外すことができる。