(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-215099(P2015-215099A)
(43)【公開日】2015年12月3日
(54)【発明の名称】流体加熱装置
(51)【国際特許分類】
F24H 1/00 20060101AFI20151106BHJP
F24H 1/20 20060101ALI20151106BHJP
F24H 1/18 20060101ALI20151106BHJP
【FI】
F24H1/00 C
F24H1/20 F
F24H1/18 302P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-96560(P2014-96560)
(22)【出願日】2014年5月8日
(71)【出願人】
【識別番号】592068635
【氏名又は名称】アクトファイブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 郁男
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA33
3L122AB30
3L122AB45
3L122BB02
3L122BB06
3L122BB25
3L122CA01
3L122DA01
3L122DA35
3L122EA02
3L122FA25
3L122GA08
(57)【要約】
【課題】熱交換の効率が高く、且つ、容易に温度制御を行うことができる流体加熱装置を提供する。
【解決手段】流体加熱装置10は、液体又は気体である被加熱物を加熱する装置であって、液体の水である熱媒体と、上部に空間を残して前記熱媒体が貯留された状態で密閉されたタンクであって、該熱媒体の導入口112と、該熱媒体の液面よりも下側に設けられた該熱媒体の送出口111を有するタンク11と、タンク11内の熱媒体を加熱する加熱装置(電気ヒータ14)と、タンク11の外部に設けられた、送出口111と導入口112を接続する循環経路13と、循環経路13中に設けられた、熱媒体の熱により被加熱物を加熱する熱交換器12と、循環経路13中に設けられた、熱媒体を送出口111から導入口112に送液する送液ポンプ15とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又は気体である被加熱物を加熱する装置であって、
a) 液体の水である熱媒体と、
b) 上部に空間を残して前記熱媒体が貯留された状態で密閉されたタンクであって、該熱媒体の導入口と、該熱媒体の液面よりも下側に設けられた該熱媒体の送出口を有するタンクと、
c) 前記タンク内の前記熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置と、
d) 前記タンクの外部に設けられた、前記送出口と前記導入口を接続する循環経路と、
e) 前記循環経路中に設けられた、前記熱媒体の熱により前記被加熱物を加熱する熱交換器と、
f) 前記循環経路中に設けられた、前記熱媒体を前記送出口から前記導入口に送液する送液ポンプと
を備えることを特徴とする流体加熱装置。
【請求項2】
前記熱媒体加熱装置が前記熱媒体を100℃よりも高い温度に加熱するものであることを特徴とする請求項1に記載の流体加熱装置。
【請求項3】
前記液面が前記送出口よりも上側にあることを検知する液面計を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体加熱装置。
【請求項4】
前記送出口を前記タンクの底部に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流体加熱装置。
【請求項5】
前記タンク、前記熱媒体加熱装置、前記循環経路、前記熱交換器及び前記送液ポンプを備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の流体加熱装置に用いるための流体加熱装置用設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体又は気体(流体)を加熱する装置に関する。本発明に係る流体加熱装置は、可燃性流体を発火させることなく安全に加熱するために好適に用いることができるものである。
【背景技術】
【0002】
金属を切削加工することによりワークを作製する際、切削加工直後のワークの表面には、切削加工時の摩擦の低減及び冷却のために用いられた切削液や削りかすが付着している。これら切削液や削りかすをワークの表面から除去するために、切削加工後にワークの洗浄が行われる。この洗浄の際には、洗浄後にワークを速く乾燥させることができるという理由で、炭化水素溶剤が洗浄液として広く用いられている。
【0003】
炭化水素溶剤の洗浄液は一般に廃棄に関する規制が厳しい。そのため、できるだけ廃棄する量を少なくするよう、炭化水素溶剤の洗浄液は繰り返し使用される。しかし、そのまま繰り返し使用していると、洗浄液中の切削液や削りかすの濃度が増加して洗浄の能力が低下する。そのため、使用された洗浄液を加熱して炭化水素溶剤を蒸留することによって洗浄液を再生する処理が行われている。
【0004】
洗浄液は、電気ヒータやガスバーナ等を用いて急激に加熱すると、発火するおそれがある。そのため、発火の危険性が低い液体又は気体の熱媒体を電気ヒータやガスバーナ等を用いて加熱したうえで、その熱媒体を用いて洗浄液を加熱するという、間接加熱が行われている。熱媒体にはシリコーンオイル等の熱媒体油が使用されることが多い(例えば特許文献1)。しかし、熱媒体油は長時間使用すると劣化するため、定期的に交換する必要があり、コストが上昇するばかりでなく、メンテナンスの手間も要する。
【0005】
特許文献2には、熱媒体として水蒸気を使用する間接加熱装置の例が2つ記載されている。第1の例の間接加熱装置は、液体の水を貯留するタンク内にヒータが設けられた水蒸気発生源と、タンクの上側に設けられた、被処理液(使用済洗浄液)を貯留する蒸留釜を有する。この装置では、タンク内の水をヒータで加熱することにより水蒸気が発生し、その水蒸気で蒸留釜を加熱することにより、蒸留釜内の被処理液が間接的に加熱される。この装置は、熱媒体として水蒸気を用いることにより、安全であって、且つ繰り返し使用しても熱媒体が劣化しない、という特長を有する。しかし、第1の例の間接加熱装置では、蒸留釜を水蒸気発生源の上側にしか配置することができず、装置の全高が高くなるため、設置箇所が制約される。
【0006】
第2の例の間接加熱装置は、水蒸気発生源から発生する水蒸気を熱交換器に送給したうえでタンクに戻す循環経路の配管を有する。この装置では、水蒸気発生源と熱交換器を独立に配置することができるため、第1の例よりも設置箇所の自由度は高い。しかし、熱交換器内やそれ以外の配管内において水蒸気の一部が冷却されて液化し、液化した水が配管の内壁に付着する。このような水は配管内を通過する水蒸気の抵抗となるため、熱交換の効率が低下する原因となる。
【0007】
特許文献3には、熱媒体として液体の水を使用する間接加熱装置が記載されている。この間接加熱装置では、吸熱用熱交換器及び放熱用熱交換器を含む配管内に水が充填されており、配管中の水を吸熱用熱交換器において加熱することにより、液体の状態のままで100℃以上に水を加熱する。水は液体の状態のまま配管内を循環するため、水の循環が妨げられることがない。そのため、この間接加熱装置は、特許文献2における第2の例の間接加熱装置とは異なり、熱交換の効率が低下することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-222251号公報
【特許文献2】特開2008-006368号公報
【特許文献3】特開平08-313053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
炭化水素溶剤の洗浄液を再生する際、その温度は発火等を防止するために所定の上限温度以下に維持する必要がある一方、切削液等を蒸発させず洗浄液のみを蒸発させるために所定の温度範囲内に維持するように制御する必要がある。そのため、間接加熱装置では放熱用熱交換器において熱媒体の温度が所定の温度範囲内になるように制御しなければならない。しかし、特許文献3には熱媒体の温度制御について明確な記載がない。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、熱交換の効率が高く、且つ、容易に温度制御を行うことができる流体加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係る流体加熱装置は、液体又は気体である被加熱物を加熱する装置であって、
a) 液体の水である熱媒体と、
b) 上部に空間を残して前記熱媒体が貯留された状態で密閉されたタンクであって、該熱媒体の導入口と、該熱媒体の液面よりも下側に設けられた該熱媒体の送出口を有するタンクと、
c) 前記タンク内の前記熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置と、
d) 前記タンクの外部に設けられた、前記送出口と前記導入口を接続する循環経路と、
e) 前記循環経路中に設けられた、前記熱媒体の熱により前記被加熱物を加熱する熱交換器と、
f) 前記循環経路中に設けられた、前記熱媒体を前記送出口から前記導入口に送液する送液ポンプと
を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る流体加熱装置では、タンク内に貯留された液体の水である熱媒体を熱媒体加熱装置で加熱することにより、熱媒体の温度が上昇すると共に、密閉されたタンク内の上部の空間に熱媒体の一部が蒸発し、タンク内の圧力が上昇する。そのため、熱媒体を100℃よりも高い温度に加熱することができる。このように貯留された熱媒体に対して温度制御を行うため、熱媒体の温度が安定し、容易に温度制御をすることができる。
【0013】
加熱された熱媒体は、熱媒体の液面よりも下側に設けられた送出口から液体の状態で熱交換器に送給され、熱交換器において被処理液が加熱される。熱交換器を通過した熱媒体は導入口を通ってタンクに戻る。導入口の位置は熱媒体の液面よりも上であってもよいし、下であってもよい。このように、本発明に係る流体加熱装置では、循環経路内が液体の熱媒体で満たされているため、送液ポンプを用いた送液の際に熱媒体の循環が妨げられることがなく、熱交換の効率が低下しない。
【0014】
本発明に係る流体加熱装置の熱交換器において加熱する被加熱物は、液体、気体のいずれであってもよい。
【0015】
本発明に係る流体加熱装置において、熱媒体を送出口よりも上側まで確実に貯留するために、タンク内の液面が前記送出口よりも上側にあることを検知する液面計を備えることが望ましい。
【0016】
あるいは、本発明に係る流体加熱装置において、熱媒体を送出口よりも上側まで確実に貯留するために、送出口をタンクの底部に設けてもよい。
【0017】
なお、熱媒体は、タンク内に貯留した状態で出荷してもよいし、出荷後の設置時や使用開始時等にタンク内に注入してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る流体加熱装置によれば、熱交換の効率が高く、且つ、容易に温度制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る流体加熱装置の一実施例を示す概略構成図。
【
図2】本発明に係る流体加熱装置の変形例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る流体加熱装置の実施例を、
図1及び
図2を用いて説明する。
【実施例】
【0021】
図1は、本実施例の流体加熱装置10を示す概略構成図である。この流体加熱装置10は、液体である被加熱物を加熱するためのものである。流体加熱装置10は、水である熱媒体を貯留するタンク11と、熱媒体と被加熱物の間で熱交換を行う熱交換器12を有している。タンク11と熱交換器12の間は、後述のように熱媒体送出管131及び熱媒体返送管132で接続されており、これら熱媒体送出管131及び熱媒体返送管132により、熱媒体の循環経路13が形成されている。
【0022】
タンク11の底には送出口111が、天井には導入口112が、それぞれ設けられている。送出口111には熱媒体送出管131の一端が接続されており、導入口112には熱媒体返送管132の一端が接続されている。熱媒体送出管131の送出口111付近には開閉弁1111が設けられている。タンク11内には、熱媒体加熱装置である電気ヒータ14が収容されており、電気ヒータ14には電源141が接続されている。電源141には、その出力を制御する温度調節器142が接続されている。この温度調節器142には、タンク11内の熱媒体の温度を測定する第1水温計1431及び第2水温計1432が接続されている。第1水温計1431は電気ヒータ14の近傍に、第2水温計1432は送出口111の近傍に、それぞれ設けられている。タンク11内には液面センサ(液面スイッチ)113が設けられており、タンク11内にある熱媒体の液面の高さが所定の範囲外にあるときには電気ヒータ14に電流が流れないように設定されている。その他、タンク11には、安全弁114及び圧力計115、並びに熱媒体を補充するための給水管116が設けられている。
【0023】
熱交換器12は、被処理液が貯留される被処理液貯留槽121と、被処理液貯留槽121内に設けられた熱媒体通過管122を有する。熱媒体通過管122はコイル状の管であって、一端が熱媒体送出管131に、他端が熱媒体返送管132に接続されている。なお、「熱媒体送出管」及び「熱媒体返送管」との名はタンク11を基準に付したものであり、熱交換器12においては、熱媒体は熱媒体送出管131から熱媒体通過管122に導入され、熱媒体返送管132に送出される。被処理液蒸気排出口123は被処理液貯留槽121内で蒸発した被処理液の蒸気を排出するものであり、被処理液貯留槽121の天井に設けられた被処理液蒸気排出口123を経て凝縮器(図示せず)に接続されている。また、被処理液貯留槽121は被処理液蒸気排出口123より減圧されている。
【0024】
熱媒体送出管131中には送液ポンプ15が設けられている。本実施例では、送液ポンプ15には、タンク11側に設けられた第1送液ポンプ(ブースターポンプ)151と、熱交換器12側に設けられた第2送液ポンプ152の2つのポンプを直列に接続したものを用いる。
【0025】
本実施例の流体加熱装置10の動作を説明する。初期状態では、タンク11には所定の範囲内の高さまで熱媒体である水が貯留されており、開閉弁1111は閉鎖されている。操作者は熱交換器12の被処理液貯留槽121に被処理液を貯留すると共に、温度調節器142で熱媒体の目標温度を設定する。ここで示す例では、上述の減圧下における被処理液の沸点である約100℃よりも高い130℃とする。
【0026】
温度調節器142は、液面センサ113により検出される熱媒体の液面の高さが所定の範囲外にある場合には警報を発し、該高さが所定の範囲にある場合には電源141に出力を指示する信号を送信する。電源141はその信号に対応した電流を電気ヒータ14に供給する。これにより、熱媒体が昇温してゆき、タンク11内で熱媒体が蒸発することによってタンク11内の圧力も上昇してゆく。このように圧力が上昇することにより、熱媒体である水は100℃を越えて加熱される。温度調節器142は、第1水温計1431及び第2水温計1432で測定される熱媒体の温度が130℃に近づくと、該温度が130℃で安定するように電源141の出力を制御する。熱媒体の温度が130℃で安定すると、圧力計115で測定されるタンク11内の圧力は約0.27MPa(圧力計115に表示される値は、実際の圧力から大気圧を差し引いた約0.17MPa)となる。
【0027】
熱媒体の温度が安定した段階で、開閉弁1111を開放すると共に、第1送液ポンプ151及び第2送液ポンプ152を作動させる。なお、この操作は、温度調節器142と連動した制御装置(図示せず)によって自動的に行うようにしてもよいし、第1水温計1431及び第2水温計1432で測定される熱媒体の温度を表示したうえで操作者が行うようにしてもよい。この操作により、温度が130℃である熱媒体が液体の状態のままで熱交換器12に供給される。熱交換器12では、熱媒体が熱媒体通過管122を通過する間に、被処理液貯留槽121内の被処理液と熱交換を行うことにより、被処理液を加熱する。加熱された被処理液は蒸発してゆく。生成された被処理液の蒸気は被処理液蒸気排出口123を経て凝縮器に送られ、液化されることにより、不純物が除去された被処理液(炭化水素溶剤)が得られる。
【0028】
熱媒体通過管122を通過した熱媒体は温度が130℃よりも低下した状態で、熱媒体返送管132を通ってタンク11に返送され、タンク11内において加熱される。こうして、熱媒体は循環使用される。
【0029】
なお、本発明では送液ポンプは1つのみ用いてもよいが、上記のように2つの送液ポンプを直列に接続して用いる方が望ましい。送液ポンプを1つのみ用いた場合には、ポンプの吸引側(タンク11側)において熱媒体の圧力が大幅に低下し、熱媒体内に溶解した気体成分が気泡となるキャビテーションが生じるおそれがある。それに対して2つの送液ポンプを直列に接続することにより、各ポンプの吸引側における圧力の低下を小さくすることができるため、キャビテーションの発生を抑えることができる。
【0030】
本発明は上記実施例には限定されない。
例えば、上記実施例では電気ヒータ14をタンク11内に設けたが、
図2に示す流体加熱装置10Aのように、電気ヒータ14Aをタンク11の外側に設けてもよい。あるいは、熱媒体加熱装置として電気ヒータの代わりにガスバーナを用いてもよいが、電気ヒータの方がより正確に出力を調整することができるため望ましい。
【0031】
上記実施例では送出口111をタンク11の底に設けたが、
図2に示すように、液面センサ113で設定されている使用時における熱媒体の液面の範囲よりも下側であれば、送出口111Aはタンク11の底以外の壁に設けてもよい。
【0032】
上記実施例では熱交換器12には被処理液貯留槽121と熱媒体通過管122を有するものを用いたが、被処理液貯留槽121の代わりに、
図2に示すように被処理流体通過管121Aを用いてもよい。被処理流体通過管121A内には熱媒体通過管122が配置されている。被処理流体は、被処理流体通過管121A内を通過する間に、熱媒体通過管122内の熱媒体から熱を受けて加熱される。
【0033】
被処理流体は、液体だけではなく気体であってもよい。例えば、本実施例の流体加熱装置を用いて、炭化水素系洗浄液の発火温度よりも低い温度に空気を加熱することにより、被処理物に付着した炭化水素系洗浄液を安全に乾燥させるために使用する温風を生成することができる。
【符号の説明】
【0034】
10、10A…流体加熱装置
11…タンク
111、111A…送出口
1111…開閉弁
112…導入口
113…液面センサ
114…安全弁
115…圧力計
116…給水管
12…熱交換器
121…被処理液貯留槽
121A…被処理流体通過管
122…熱媒体通過管
123…被処理液蒸気排出口
13…循環経路
131…熱媒体送出管
132…熱媒体返送管
14、14A…電気ヒータ
141…電源
142…温度調節器
1431…第1水温計
1432…第2水温計
15…送液ポンプ
151…第1送液ポンプ
152…第2送液ポンプ