【解決手段】PmosトランジスタPTrおよびNmosトランジスタNTrを含むCMOS回路を有する動作回路部21と、CMOSインバータを含むリングオシレータ22と、Pmosトランジスタのバックバイアス値およびNmosトランジスタのバックバイアス値を記憶する不揮発性メモリ23と、不揮発性メモリに記憶されたPmosトランジスタのバックバイアス値に応じたPmosバックバイアス、およびNmosトランジスタのバックバイアス値に応じたNmosバックバイアスを生成する電圧発生回路24と、を有する半導体装置。
前記試験装置は、前記PmosバックバイアスをPmos所定値に固定した上で、前記リングオシレータが発振する限界まで前記Nmosバックバイアスを低下させて前記第2限界値を求め、前記NmosバックバイアスをNmos所定値に固定した上で、前記リングオシレータが発振する限界まで前記Pmosバックバイアスを低下させて前記第1限界値を求めることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記試験装置は、前記Pmosバックバイアスおよび前記Nmosバックバイアスを2軸とする直行座標で、前記第2限界値と前記Pmos所定値からなる第1座標点と、前記第1限界値と前記Nmos所定値からなる第2座標点とを結ぶ線の垂直二等分線を求め、前記垂直二等分線の高速側に沿った前記Pmosバックバイアスおよび前記Nmosバックバイアスの値の組として前記対称条件を求めることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
前記試験装置は、前記第1の値および前記第2の値を、前記垂直二等分線の高速側に沿った前記Pmosバックバイアスおよび前記Nmosバックバイアスの値の複数の組から、動作周波数に応じて選択することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
第1Pmosトランジスタおよび第1Nmosトランジスタを含むCMOS回路を有する動作回路部と、第2Pmosトランジスタおよび第2Nmosトランジスタを有するCMOSインバータを含むリングオシレータと、不揮発性メモリと、電圧発生回路と、を有する半導体装置において、
前記リングオシレータが発振する前記第2PmosトランジスタのPmosバックバイアスの限界値および前記第2NmosトランジスタのNmosバックバイアスの限界値を検出し、
前記Pmosバックバイアスの前記限界値および前記Nmosバックバイアスの前記限界値から、前記CMOSインバータの出力が対称に変化する前記Pmosバックバイアスおよび前記Nmosバックバイアスの対称条件を算出し、
前記不揮発性メモリに、前記対称条件から求めた前記Pmosバックバイアスの第1の値および前記Nmosバックバイアスの第2の値を記憶し、
前記第1の値を有する第1バックバイアスおよび前記第2の値を有する第2バックバイアスを前記電圧発生回路で生成し、
前記第1バックバイアスを前記動作回路部の前記第1Pmosトランジスタへ入力し、前記第2バックバイアスを前記動作回路部の前記第1Nmosトランジスタへ入力する、ことを特徴とする方法。
前記Nmosバックバイアスの前記限界値は、前記PmosバックバイアスをPmos所定値に固定した上で、前記リングオシレータが発振する限界まで前記Nmosバックバイアスを低下させて求め、
前記Pmosバックバイアスの前記限界値は、前記NmosバックバイアスをNmos所定値に固定した上で、前記リングオシレータが発振する限界まで前記Pmosバックバイアスを低下させて求める請求項5に記載の方法。
前記対称条件は、前記Pmosバックバイアスおよび前記Nmosバックバイアスを2軸とする直行座標で、前記Nmosバックバイアスの前記限界値と前記Pmos所定値からなる第1座標点と前記Pmosバックバイアスの前記限界値と前記Nmos所定値からなる第2座標点を結ぶ線の垂直二等分線を求め、前記垂直二等分線の高速側に沿った前記Pmosバックバイアスおよび前記Nmosバックバイアスの値の組として求める請求項6に記載の方法。
前記第1の値および前記第2の値は、前記垂直二等分線の高速側に沿った前記Pmosバックバイアスおよび前記Nmosバックバイアスの値の複数の組から、動作周波数に応じて選択する請求項7に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置は、高性能化および高機能化に加えて、省電力化が求められている。特に、モバイル機器に搭載するSoC(System-on-Chip)は、省電力化が強く求められている。ここでは、モバイル機器に搭載するSoCを例として説明を行うが、説明する実施形態はこれに限定されるものではない。
【0003】
SoCの省電力化のために、電源電圧の低電圧化、製造プロセスの改良等の各種の改善策が行われる。一方、SoCは、仕様を満たす性能を実現することが求められる。SoCの性能は、製造プロセスの影響を受け、同じ回路構成であっても、ロットごとに性能が変化し、さらに近年の先端プロセスでは、1枚のウェーハ内のチップでも性能が異なるという現象が発生している。低性能のSoCが仕様を満たす電源電圧(内部電圧)を、他の比較的高性能のSoCに適用すると、比較的高性能のSoCは、無駄に消費電力が増加するという問題を生じる。そこで、各SoCにリングオシレータを搭載し、リングオシレータの発振状態を測定することにより、実際に製造されたSoCの動作速度を測定し、仕様を満たす範囲で内部電源電圧をできる限り低く設定することにより、省電力化を図ることが行われている。具体的には、内部電源電圧が低下するとそれに応じてトランジスタの動作速度が低下し、発振周波数や発振するか否かなどのリングオシレータの発振状態も変化するので、所定の発振状態が得られる限界まで内部電源電圧を低下させる。
【0004】
リングオシレータの発振状態の測定は、量産試験時にSoCの外部の測定器を使用して行い、測定した発振状態に応じて内部電源電圧を規定する不揮発性メモリの値を設定する。内部電源電圧は、例えば、チャージポンプ等の内部電圧発生回路により生成され、内部電圧発生回路は、不揮発性メモリから出力されるレベルに応じた内部電源電圧を出力する。
【0005】
近年、バックバイアスを変化させると動作周波数が大きく変化する製造プロセスが提案されている。この製造プロセスで製造されたSoCは、内部電源電圧を調整する代わりに、バックバイアスを変化させることで、仕様を満たした上で省電力化を図ることが可能である。以下、このような製造プロセスで製造される半導体装置を例として説明を行う。
【0006】
SoCの回路は、省電力化のために、Pmosトランジスタ(以下、Pmosと略す)とNmosトランジスタ(以下、Nmosと略す)を含むCMOS回路で実現されるのが一般的である。例えば、インバータはPmosとNmosを電源端子間に直列に接続することにより実現する。これまで、CMOS回路のバックバイアスを変化させる場合、電圧生成回路によりPmosバックバイアスとNmosバックバイアスをそれぞれ発生するが、電圧生成回路のコントロール(制御)端子は共通であった。そのため、PmosバックバイアスとNmosバックバイアスは、共通の制御信号にしたがって変化していた。例えば、共通の制御信号が増加するとPmosバックバイアスとNmosバックバイアスの差が増加し、共通の制御信号が減少するとバックバイアスの差が減少する。
【0007】
Pmosが非導通状態から導通状態に変化する時の速度が速い場合にはインバータの出力が低レベルから高レベルに変化する時の変化が速く、逆の場合にはインバータの出力が低レベルから高レベルに変化する時の変化が遅い。同様に、Nmosが非導通状態から導通状態に変化する時の速度が速い場合にはインバータの出力が高レベルから低レベルに変化する時の変化が速く、逆の場合にはインバータの出力が高レベルから低レベルに変化する時の変化が遅い。
【0008】
PmosとNmosの動作速度は、半導体装置の製造プロセスに応じて異なり、両方が速い場合(fast)、両方が遅い場合(slow)、Pmosが速く且つNmosが遅い場合、Pmosが遅く且つNmosが速い場合、および中間の場合などがある。例えば、Pmosが速く且つNmosが遅い場合には、インバータの出力は、立ち上りが速く、立下りが遅くなる。
【0009】
1段のバッファは、インバータを2段直列に接続することにより実現される。上記のように、1つの制御信号でPmosとNmosのバックバイアスを変化させる場合、バッファ1段あたりの遅延のばらつきを抑えることができるが、立ち上りと立下りの変化速度の差を調整することはできない。これは、バッファを2個のインバータを直列に接続することにより形成しているため、ばらつきを抑えることができるのは、立ち上がりと立下りの遅延の合計値のみで、それぞれのばらつきは抑えることはできないためである。
【0010】
CMOS回路の動作は、立ち上がりと立下りで規定されるが、上記のように、一方は高速であるが、他方は低速である場合、リングオシレータの発振動作を含むCMOS回路の動作速度は、主として低速側の速度で規定されることになる。このため、動作速度を維持しながら省電力化を図るためには、立ち上がりと立下りの速度が近似していることが望ましい。
【0011】
さらに、立ち上がりと立下りの一方のみを最適化する場合、分周回路を使用して周波数を低下させることにより、チップ外部での立ち上がりエッジの遅延を測定し最適化することが容易に行える。しかし、リングオシレータの発振のようなパルス幅が関係する場合には、周波数を低下させると情報が消えてしまうため簡易に測定することが困難である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態を説明する前に、リングオシレータを搭載し、リングオシレータの発振状態を測定することにより、実際に製造された回路の性能を測定し、仕様を満たす範囲で省電力化を図ったSoCについて説明する。
【0019】
図1は、リングオシレータを搭載して回路の性能を測定し、仕様を満たす範囲で省電力化を図ったSoCを試験する構成およびリングオシレータを示す図であり、(A)がSocを試験する構成を、(B)がリングオシレータを示す。
【0020】
図1の(A)に示すように、SoC10は、論理回路11と、リングオシレータ12と、不揮発性メモリ13と、電圧生成回路14と、を有する。SoC10の各部は、CMOS回路で実現される。
【0021】
論理回路11は、SoC10の機能を実現する動作を行う動作回路である。電圧生成回路14は、チャージポンプ等で実現される。電圧生成回路14は、外部電源から、不揮発性メモリ13に記憶されたコントロールデータに応じたPmosバックバイアスおよびNmosバックバイアスを生成し、論理回路11およびリングオシレータ12等のSoC10の各部に供給する。なお、電圧生成回路14は、PmosバックバイアスおよびNmosバックバイアスに加えて、内部電源電圧等を生成する場合もある。不揮発性メモリ13は、電気的に書き換え可能なフラッシュメモリで実現される。
【0022】
電圧生成回路14は、PmosバックバイアスとNmosバックバイアスをそれぞれ発生するが、電圧生成回路のコントロール(制御)端子は共通である。そのため、PmosバックバイアスとNmosバックバイアスは、共通の制御信号にしたがって変化する。例えば、共通の制御信号が増加するとPmosバックバイアスとNmosバックバイアスの差が増加し、共通の制御信号が減少するとバックバイアスの差が減少する。電圧生成回路14が生成するPmosバックバイアスとNmosバックバイアスが変化すれば、SoC10の消費電力および動作可能な限界周波数が変化する。
【0023】
リングオシレータ12は、
図1の(B)に示すように、奇数個のインバータ16を直列に接続し、最終段のインバータの出力を初段のインバータに入力するように接続したインバータ列を有し、自己発振する回路である。リングオシレータ12の発振周期は、各段のインバータの遅延量を合計した時間であり、インバータの遅延量は、インバータを形成するPmosとNmosの動作速度により決定され、製造プロセスにより変化する。そのため、リングオシレータ12の発振周期、すなわち発振周波数を測定することにより、PmosとNmosの動作速度を推定することができる。また、PmosとNmosの動作速度が低下すると、リングオシレータ12は発振しなくなる。
【0024】
製造工程の試験時には、SoC10に検査装置5を接続し、リングオシレータ12の発振状態(発振周波数または発振するか否か)を測定できる状態にする。そして、不揮発性メモリ13のデータを順次変化させることにより、PmosバックバイアスとNmosバックバイアスを変化させ、リングオシレータ12の発振状態(発振周波数または発振するか否か)を測定して、仕様を満たし且つ消費電力を低くした状態に設定する。
【0025】
図2は、論理回路等で広く使用されるバッファの構成を示す図であり、(A)がバッファの表示を、(B)がバッファの構成を示す。
【0026】
図2の(A)に示すバッファ17は、2個のインバータ18および19と直列に接続することにより実現される。したがって、
図1の(B)のリングオシレータ12は、所定数のバッファを直列に接続し、さらにインバータを直列に接続した回路である。
【0027】
PmosバックバイアスとNmosバックバイアスを変化させることにより、バッファの遅延量が変化するので、バッファ1段あたりの遅延のばらつきを抑えることができる。しかし、
図2の(B)に示すように、バッファはインバータを2段(または偶数段)接続することにより形成されるため、ばらつきを抑えることができるのは、立ち上がりと立下りの遅延量の合計値のみで、それぞれのばらつきは抑えることはできない。
【0028】
図3は、バッファの立ち上がりと立下りの遅延量が異なる、すなわち非対称(アンバランス)な場合の
図2の(B)の各ノードにおける信号変化を示したタイムチャートである。1段目のインバータ18の入力ノードをXで、1段目のインバータ18の出力ノード(2段目のインバータ19の入力ノード)をYで、2段目のインバータ19の出力ノードをZで、それぞれ表す。
【0029】
図3の例では、立ち上りが高速で、立下りが低速であり、Xノードの立ち上りに対してYノードが立ち下る時の遅延量Bは、Yノードの立下りに対してZノードが立ち上がる時の遅延量Cより大きい。Xノードの立ち上りに対してZノードが立ち上がるまでのバッファ1段の遅延量Aは、遅延量Bと遅延量Cの和、すなわち、A=B+Cである。
図3の例では、BとCの差は比較的小さいが、変化速度が遅くなる方向にPmosバックバイアスとNmosバックバイアスを変化させると、遅延量Bの増加率は遅延量Cの増加量より益々大きくなる。
【0030】
そのため、立ち上がりと立下りの一方は高速であるが、他方は低速である場合、バッファの遅延量は、主として低速側の速度で規定されることになる。これは、リングオシレータの発振動作を含むCMOS回路の動作速度についても同様である。このため、動作速度を維持しながら省電力化を図るためには、立ち上がりと立下りの速度が近似していることが望ましい。
【0031】
図4は、
図3のタイムチャートにおいて、バッファの立ち上がりと立下りの遅延量が同じ場合を示す図である。
図4に示すように、バッファの立ち上がりと立下りの遅延量が同じ場合であれば、動作速度を維持しながらより一層省電力化できる。
【0032】
バッファ、すなわちCMOSインバータの立ち上がりと立下りの変化速度(立ち上がりと立下りの遅延量)は、PmosトランジスタとNmosトランジスタの動速度で決定される。そのため、バッファ(インバータ)の立ち上がりと立下りの遅延量が同じになるように調整するには、PmosとNmosの動速度をそれぞれ調整できることが求められる。
【0033】
以下に説明する実施形態の半導体装置(SoC)では、PmosとNmosの動速度をそれぞれ調整できるようにすることで、バッファ(インバータ)の立ち上がりと立下りの遅延量が同じになるように調整できるようにする。さらに、このような半導体装置であれば、製造工程の試験時に、リングオシレータを利用して、信号の立ち上りと立下りをバランスさせて動作速度を調整可能になるので、仕様を満たす範囲で一層の省電力化を図れる。
【0034】
図5は、実施形態の半導体装置(SoC)の性能を測定し、仕様を満たす範囲で省電力化を図ったSoCを試験する構成およびリングオシレータを示す図であり、(A)がSocを試験する構成を、(B)がリングオシレータを示す。
【0035】
図5の(A)に示すように、実施形態の半導体装置SoC20は、論理回路21と、リングオシレータ22と、不揮発性メモリ23と、電圧生成回路24と、を有する。
論理回路21は、SoC20の機能を実現する動作を行う動作回路である。電圧生成回路24は、チャージポンプ等で実現され、外部電源から、不揮発性メモリ23に記憶されたデータに応じたPmosバックバイアスおよびNmosバックバイアスを生成し、論理回路21およびリングオシレータ22等のSoC10の各部に供給する。なお、電圧生成回路24が、外部電源から、内部電圧等を発生するようにしてもよい。不揮発性メモリ23は、電気的に書き換え可能なフラッシュメモリで実現され、生成するPmosバックバイアスを指示するデータと、生成するNmosバックバイアスを指示するデータと、を記憶しており、2つのデータを電圧生成回路24に出力する。したがって、電圧生成回路24が生成するPmosバックバイアスおよびNmosバックバイアスは、独立して変化させることができる。電圧生成回路24が生成するPmosバックバイアスおよびNmosバックバイアスが変化すれば、SoC20の消費電力および動作可能な限界周波数が変化する。
【0036】
SoC20の各部は、CMOS回路で実現される。CMOSインバータは、電源VDDとGND間に直列に接続したPmosトランジスタPTrとNmosトランジスタNTrと、を有する。Pmosバックバイアスは、PmosトランジスタPTrのチャネルに供給され、Nmosバックバイアスは、NmosトランジスタNTrのチャネルに供給される。なお、CMOSインバータを例として示したが、論理回路21を形成する回路素子もPmosトランジスタとNmosトランジスタからなるCMOS回路で実現され、それらのチャネルには、PmosバックバイアスおよびNmosバックバイアスが供給される。
【0037】
図6は、リングオシレータ22の回路構成を示す図である。
リングオシレータ22は、
図6に示すように、奇数個のインバータ26を直列に接続し、最終段のインバータの出力を初段のインバータに入力するように接続したインバータ列を有し、自己発振する回路である。リングオシレータ22の発振状態(発振周波数、発振するか否か)を測定することにより、リングオシレータ22のインバータを形成するPmosとNmosの動作速度を推定することができる。
図6に示すように、リングオシレータ22のインバータ26を形成するPmosとNmosのチャネルに、PmosバックバイアスとNmosバックバイアスが供給される。PmosバックバイアスとNmosバックバイアスを独立に変化させることにより、PmosとNmosの変化速度、すなわち、インバータ26の立ち上りと立下り速度を独立して変化させることができる。
【0038】
図7は、リングオシレータ22の設計手法を説明する図である。
前述のように、SoC20のPmosおよびNmosの動作特性は、製造プロセスでの出来具合に応じて異なる。
図7は、横軸にPmosバックバイアスの電圧値を、縦軸にNmosバックバイアスの電圧値をとり、リングオシレータ22が発振するか否かの状態を示している。
【0039】
図7において、参照符号DおよびEで示す細長い領域は、少なくともこの領域の条件では、リングオシレータ22が所望の周波数(例えば100MHz)よりも速い周波数で発振することが求められる。参照符号Fで示すポイント(点)は、少なくともこのポイントでは、全プロセス条件で、リングオシレータ22が発振するように、リングの段数と配線が調整される。参照符号GおよびHで示すポイントは、少なくともこのポイントでは、全プロセス条件で、リングオシレータ22が発振を停止するように、リングの段数と配線が調整される。
【0040】
リングオシレータ22は、
図7で説明した条件を満たすように設計される。
製造工程においは、
図5の(A)に示すように、製造したSoC20に検査装置6を接続し、リングオシレータ22の発振状態(発振周波数または発振するか否か)を測定できる状態にする。そして、不揮発性メモリ23のデータを順次変化させることにより、PmosバックバイアスとNmosバックバイアスをそれぞれ独立に変化させ、リングオシレータ12の発振状態(発振周波数または発振するか否か)を測定する。その測定結果に基づいて、不揮発性メモリ23のPmosバックバイアスとNmosバックバイアスのデータを設定し、仕様を満たし且つ消費電力を低くした状態に設定する。
【0041】
図8は、上記の試験工程における処理を示すフローチャートである。
図8のフローチャートにおけるステップS11からS14は、Nmosバックバイアスの限界値を決定する処理であり、ステップS15からS18は、Pmosバックバイアスの限界値を決定する処理である。また、ステップS19からS22は、Nmosバックバイアスの限界値およびPmosバックバイアスの限界値から、所望の仕様を実現するPmosバックバイアスおよびNmosバックバイアスを決定する処理である。
【0042】
図9は、Nmosバックバイアスの限界値を決定する処理を、
図7の座標において説明する図である。
【0043】
図10は、Nmosバックバイアスの限界値を決定する処理を行う場合のリングオシレータ22の発振信号の変化例を示す図である。
【0044】
図9および
図10を参照して、ステップS11からS14のNmosバックバイアスの限界値を決定する処理を説明する。
【0045】
ステップS11では、Pmosバックバイアスを代表値(Typ値)に、NmosバックバイアスをFast値に設定する。ここでは、PmosバックバイアスのTyp値は、Fast値とSlow値の中間値であり、ステップS11での設定ポイントは、
図9の参照符号Iで示すポイントである。
図7で説明したように、このポイントIは領域D内であり、リングオシレータ22が所望の周波数以上で発振する。
【0046】
ステップS12では、Nmosバックバイアスを1段階低下させる。Nmosバックバイアスを変化させる段数および1段当たりの変化電圧量は、不揮発性メモリ23に記憶するデータのビット数と電圧生成回路24の回路構成により適宜設定され、1段階低下させることにより、発振周波数が低下するように決められる。Nmosバックバイアスを1段階低下させることにより、リングオシレータ22の発振信号は、
図10のように、立下りがより遅くなり、発振周波数が1段階低下する。
【0047】
ステップS13では、リングオシレータ22が発振を停止したかを判定し、停止していなければステップS12に戻り、停止すればステップS14に進む。これにより、リングオシレータ22の発振信号は、
図10のように、段階的に遅れが増加し、やがて発振しなくなる。この変化は、
図9のポイントIからJに至る変化に対応し、ポイントJより1段階下で発振が停止する。
【0048】
ステップS14では、発振が停止した段階から1段階戻したNmosバックバイアスを限界Nmosバックバイアスとして決定する。限界Nmosバックバイアスは、
図9のポイントJのNmosバックバイアス電圧に対応する。このようにして、限界Nmosバックバイアスが決定される。
【0049】
図11は、Pmosバックバイアスの限界値を決定する処理を、
図7の座標において説明する図である。
図12は、Pmosバックバイアスの限界値を決定する処理を行う場合のリングオシレータ22の発振信号の変化例を示す図である。
【0050】
図11および
図12を参照して、ステップS15からS18のPmosバックバイアスの限界値を決定する処理を説明する。
ステップS15では、Nmosバックバイアスを代表値(Typ値)に、PmosバックバイアスをFast値に設定する。ここでは、NmosバックバイアスのTyp値は、Fast値とSlow値の中間値であり、ステップS15での設定ポイントは、
図11の参照符号Kで示すポイントである。
図7で説明したように、このポイントKは領域E内であり、リングオシレータ22が所望の周波数以上で発振する。
【0051】
ステップS16では、Pmosバックバイアスを1段階低下させる。Pmosバックバイアスを変化させる段数および1段当たりの変化電圧量は、不揮発性メモリ23に記憶するデータのビット数と電圧生成回路24の回路構成により適宜設定され、1段階低下させることにより、発振周波数が低下するように決められる。Pmosバックバイアスを1段階低下させることにより、リングオシレータ22の発振信号は、
図12のように、立ち上りが遅くなり、発振周波数が1段階低下する。
【0052】
ステップS17では、リングオシレータ22が発振を停止したかを判定し、停止していなければステップS16に戻り、停止すればステップS18に進む。これにより、リングオシレータ22の発振信号は、
図12のように、段階的に遅れが増加し、やがて発振しなくなる。この変化は、
図11のポイントKからLに至る変化に対応し、ポイントLより1段階下で発振が停止する。
【0053】
ステップS18では、発振が停止した段階から1段階戻したPmosバックバイアスを限界Pmosバックバイアスとして決定する。限界Pmosバックバイアスは、
図11のポイントLのNmosバックバイアス電圧に対応する。このようにして、限界Pmosバックバイアスが決定される。
【0054】
図13は、Nmosバックバイアスの限界値およびPmosバックバイアスの限界値から、所望の仕様を実現するPmosバックバイアスおよびNmosバックバイアスの候補を決定する処理を、
図7の座標において説明する図である。
図14は、決定した候補から、所望の仕様を実現するPmosバックバイアスおよびNmosバックバイアスを決定する処理を説明する図である。
【0055】
図13および
図14を参照して、ステップS19からS22の所望の仕様を実現するPmosバックバイアスおよびNmosバックバイアスを決定する処理を説明する。
ステップS19では、
図13の座標において、Nmosバックバイアスの限界値に対応するポイントJとPmosバックバイアスの限界値に対応するポイントLを結ぶ直線Mの垂直二等分線Nを求める。
【0056】
ステップS20では、垂直二等分線NのFast側に近い領域O内のステップ値のポイントQをリストアップする。領域Oは、CMOS回路における信号の立ち上りと立下りが対称となる(バランスした)とみなせる、NmosバックバイアスおよびPmosバックバイアスの範囲を示す。前述のように、NmosバックバイアスおよびPmosバックバイアスは、ステップで段階的に変化するため、NmosバックバイアスおよびPmosバックバイアスの組が、領域O内でとり得るポイントが存在する。ステップ20では、このようなポイントQをリストアップする。参照番号Sは、直線Mにもっとも近い領域O内のポイントを示す。
【0057】
なお、垂直二等分線NのSlow側に近い領域P内のステップ値のポイントRは、直線MよりSlow側であるため、リングオシレータ22は発振せず、SoC20が正常に動作しないポイントである。
【0058】
ステップS21では、ステップS20でリストアップしたポイントについて、リングオシレータ22の発振周波数を測定し、仕様に対応する発振周波数を得られるもっともSlow側のポイントを選択する。
【0059】
図14に示すように、リストアンプしたポイントにおける発振周波数は、Slow側から順に、51MHz、72MHz、105MHz、135MHz、172MHzおよび210MHzである。リングオシレータ22が100MHzの動作周波数で動作するのに対応する動作速度であることが求められる使用の場合には、発振周波数が100MHzのポイントを選択する。
【0060】
ステップS22では、選択したポイントのNmosバックバイアスおよびPmosバックバイアスに対応するデータを不揮発性メモリ23に設定する。
以上のようにして、制御したSoCを、所望の仕様を満たし且つ消費電力の小さい状態で使用状態になるSoCとして出荷することが可能になる。
【0061】
従来の一般的なCMOSプロセスでは、バックバイアスをコントロールしても発振停止に至るような劇的な変化は観測できず、バックバイアスをコントロールして動作周波数を調整することは行われていなかった。近年、バックバイアスを変化させることにより動作周波数を変化させる制御方法が提案されている。しかし、バックバイアスのコントロールは、1つの制御信号で行われ、NmosバックバイアスおよびPmosバックバイアスを独立してコントロールすることは行われておらず、前述の課題があった。
【0062】
これに対して、実施形態の半導体装置およびその制御方法では、NmosバックバイアスおよびPmosバックバイアスを独立してコントロールするため、信号の立ち上りと立下りがバランスするように調整可能である。これにより、仕様を満たす範囲で一層の省電力化を図った半導体装置を制御できる。
【0063】
前述のように、これまでもPmosバックバイアスとNmosバックバイアスは、電圧生成回路で別々に生成されていたが、電圧生成回路のコントロール端子は共通であった。したがって、実施形態の半導体装置を実現するために追加する回路は、電圧生成回路のコントロール端子がPmos用とNmos用の2倍になることと、不揮発性メモリの容量が2倍になることである。これらの領域は小さいチップであっても数%程度であるため、回路増加は数%程度に抑えられる。
【0064】
実施形態の半導体装置は、55nmプロセスの概算で,同一周波数であればクロック伝送距離で2倍、同一伝送距離であれば1.5倍程度周波数を増加させたクロックを伝送することができる。また、副次的な効果としてPmosおよびNmosのバランス改善により、FFなども数%程度動作周波数が向上する。
【0065】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものである。特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。