【解決手段】 加圧入力を電圧に変換する圧電フィルム;並びに前記電圧を取り出すための電極が複数配設されている第1及び第2の電極付き基板を備え、前記第1及び第2の電極付き基板で、前記圧電フィルムを挟持することにより、前記第1の電極付き基板が受けた力により発生した電圧を検出し、前記第1の電極付き基板上に配設された電極間に、隣接する電極が受けた加圧入力に伴って発生する振動を吸収する振動吸収体が配設されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、今回、開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
本発明の一態様に係る感圧センサは、加圧入力を電圧に変換する圧電フィルム;並びに
前記電圧を取り出すための電極が複数配設されている第1及び第2の電極付き基板を備え、
前記第1及び第2の電極付き基板で、前記圧電フィルムを挟持することにより、前記第1の電極付き基板が受けた力により発生した電圧を検出する感圧センサであって、
前記第1の電極付き基板上に配設された電極間に、隣接する電極が受けた加圧入力に伴って発生する振動を吸収する振動吸収体が配設されている。
電極間に配設された振動吸収体が、加圧入力により発生する振動が周囲に伝播することを抑制し、入力位置に対応する電極以外の位置で発生する電圧を低減することができる。
【0019】
前記振動吸収体により、前記第1の電極付き基板と前記圧電フィルムとが固着されていることが好ましい。
前記第1の電極付き基板と圧電フィルムとが振動吸収体により固着されることで、第1の電極付き基板と圧電フィルムとの間隔や接触状態のバラツキを小さくできるとともに、加圧入力により発生する第1の電極付き基板の振動に起因して電極-圧電フィルム間距離が変化することによるバラツキを抑制できる。特に、この効果は、加圧入力時の圧電フィルムの歪みが大きく、電極-圧電フィルム間距離が変化しやすい多孔型圧電フィルムで有効である。電極と圧電フィルムとの距離の変化によっても電圧が発生するため、電極付き基板と圧電フィルムとを固着することで、電極-圧電フィルム間距離の変化に基づく発生電圧のバラツキを抑制できる。さらに、電極付き基板と圧電フィルムとを固着し、両者が離間することを抑制することで、固着しない場合に比べて基板やフィルム面内の振動の伝播を抑制できるというメリットもある。
【0020】
前記振動吸収体とこの振動吸収体に隣接する電極との間に、空隙が設けられていることが好ましい。
振動吸収体と電極との間に空隙(空気層)を設けることで、振動吸収体と空気層との境界部で弾性波が絶縁されることから、加圧入力により発生する振動が周囲の電極に伝播することを抑制できる。また前記空隙は、振動吸収体の設置位置のクリアランスとしての役割を有するので、振動吸収体の設置がずれた場合でも電極を覆うような不良品の発生を防止でき、歩留りが向上する。
【0021】
前記振動吸収体は、台座とこの台座上に設けられた振動吸収本体とから構成されていることが好ましい。
台座を設けることで、電極と電極の間の狭い凹部に振動吸収体を設置することを回避できるため、形成方法の幅が広がる。また、振動吸収本体の厚みを薄くすることで、印刷等による形成を可能にする。すなわち、使用できる振動吸収体の種類、振動吸収体の形成方法の汎用性が広がる。
【0022】
前記台座は、前記電極を構成する導電性材料と同じ導電性材料で構成されていることが好ましい。
電極と台座を同じ導電性材料で構成することにより、電極形成時に台座も形成することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0023】
前記振動吸収本体は、スクリーン印刷により形成されたものであることが好ましい。
スクリーン印刷により、電極間間隙という微細な部分に、高精度で振動吸収体を配置することが可能となる。スクリーン印刷は原理的に凹部への印刷は不得手であるが、台座を設けることにより容易に高精度な印刷が可能となる。振動吸収本体は、電極付き基板と圧電フィルムとを固着する接着剤としての役割を果たすことが望ましく、スクリーン印刷は他の汎用印刷法に比べて厚膜の印刷が可能であることから、印刷であっても、所定の厚みを有する振動吸収本体を形成することができるので、信頼性の高い接着が可能となる。
【0024】
前記第1及び第2の電極付き基板を構成する各基板は、プラスチックフィルムであることが好ましい。
基板がプラスチックフィルムであることにより、可撓性を有する感圧センサを得ることができる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る感圧センサの製造方法は、複数の電極が配列された電極付き基板で圧電フィルムが挟持されていて、前記電極間間隙に、台座と振動吸収本体との組み合わせである振動吸収体が配設されている感圧センサに好適な製造方法であって、基板上に積層された導電性材料の一部を除去することにより、電極及び台座を形成する工程;振動吸収本体を前記台座上に印刷して振動吸収体を形成する工程;並びに前記振動吸収体及び前記電極が形成された基板を、圧電フィルムに当接する工程を含む。
電極と台座を1つの工程で作製することができるので、製造の簡便化が図られるとともに、振動吸収本体の厚みを薄くできるので、印刷により振動吸収本体を形成することができる。
【0026】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る感圧センサ10について、
図3に基づいて説明する。
図3Aは、感圧センサ10の厚み方向断面図であり、
図3Bは、
図3Aの感圧センサ10のP−P’で切断した断面を電極が配設している方向からみた図である。
【0027】
感圧センサ10は、電極12,12・・・が基板13上にマトリックス状に配設されている第1の電極付き基板14、及び電極12’,12’・・・が基板13’上にマトリックス状に配設されている第2の電極付き基板14’で、圧電フィルム11を挟持した積層構造を有している。圧電フィルム11をはさんで対向している電極対12,12’により、圧電フィルムに生じる電位差が検出される。
【0028】
電極付き基板14,14’は、各基板上の電極12、12’が電極対を形成するように、圧電フィルム11を挟持するとともに、各基板13、13’の周縁部を貼着することにより、電極付き基板14,14’と圧電フィルム11とが積層固定されている。また、電極12,12間、電極12’,12’間には、空隙16を有するように振動吸収体15が設けられている。
【0029】
圧電フィルム11は、加圧入力を受けた際、その振動が圧電フィルム11に伝わることで歪を生じるもので、圧電フィルム11に生じた歪により、圧電フィルム11を挟んで相対する電極対12,12’間に圧電フィルム11が受けた歪の大きさに応じた電圧が発生する。
【0030】
圧電フィルム11としては、特に限定せず、圧電フィルムとして従来より公知の、分子構造に起因して圧電性を発現するポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムやポリ乳酸フィルム、静電荷の保持と変形容易性に起因して圧電性を発現する延伸多孔質ポリプロピレンフィルム等の多孔質ポリオレフィンフィルム、多孔質フッ素樹脂フィルムなどの多孔型圧電フィルムを用いることができる。これらのうち、厚み方向の圧電性に優れることから多孔型圧電フィルムが好ましく用いられる。多孔型圧電フィルムは小さな力でも容易に変形、大きな歪みを生じるため高感度なセンサを形成できる。多孔型圧電フィルムは、加圧入力時の圧電フィルムの歪みが大きいため電極-圧電フィルム間距離が変化しやすいが、この電極と圧電フィルム間の距離の変化によって電圧が発生し、加圧入力に対する発生電圧に影響する。この点、電極付き基板と圧電フィルムとが固着されている本実施形態では、電極-圧電フィルム距離の変化のバラツキが抑制され、その結果、電極-圧電フィルム間距離の変化に基づく発生電圧のバラツキを抑制できる。
【0031】
多孔型圧電フィルムとしては、多孔質フッ素樹脂系フィルムが耐熱性、耐薬品性等の点から好ましく用いられ、特に多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムが好ましく用いられる。
【0032】
基板13,13’としては、電極を安定的に設けることができる絶縁基板、プラスチックフィルムなどを用いることができる。好ましくは、加圧入力に応じて入力点で撓みやすい可撓性あるプラスチックフィルムである。例えばポリステル、ポリエチレン、ポリイミドなどのプラスチックフィルムを好ましく用いることができる。耐熱性、絶縁性の観点で特に好ましくはポリイミドフィルムである。
【0033】
電極12、12’は、導電性を有する物質、例えば、アルミニウムや銅などの金属、ITOなどの透明な導電性金属酸化物で構成される。基板13、13’上に形成される電極パターンは、基板の一面に、銅箔又はアルミニウム箔等の金属箔を貼着し、エッチングにより形成してもよいし、特許文献2で提案されているように、打ち抜きにより形成してもよい。
【0034】
振動吸収体15は、同一基板上に形成されている電極間(電極12、12間又は電極12’、12’間)に、隙間16をあけて設けられる。
図3Bの態様では、各電極12間に設けられる振動吸収体15は連続していて、基板13表面に井桁状に設けられている。振動吸収体15は、基板が受けた加圧入力により生じる基板の振動を吸収し減衰することができる。
【0035】
電極の厚みをtとして、振動吸収体15の厚みは(t−3)μm以上であることが好ましく、より好ましくは電極の厚みt以上である。感圧センサ10の組み立て時に、基板13と圧電フィルム11とを押圧により積層する際、振動吸収体を圧電フィルムが強く押し付けられるため圧電フィルムに固着しやすいためである。
また、振動吸収体15の厚みは(t+40)μm以下であることが好ましい。振動吸収体15が分厚くなりすぎると、振動吸収体15に基づき、電極-圧電フィルム間距離のバラツキが大きくなる原因となるためである。
【0036】
振動吸収体15としては、振動を吸収できるものであればよく、例えば、ゴム、ゲル等の振動吸収物質、粘着剤、接着剤等の接着性物質などを用いることができる。これらのうち、接着フィルムや液状接着剤等の接着性物質が好ましく用いられる。電極付き基板と圧電フィルムとの固定状態を安定化できるという利点を有するためである。接着フィルムは、プレスやエッチング等で電極部分をくりぬいた接着フィルムを電極付き基板14、14’に積層することで振動吸収体を低コストで高い位置精度、厚み精度で形成できるため好ましい。液状接着剤は、所望部位に塗布、印刷することができるため好ましい。
【0037】
振動吸収体15として用いる接着剤、接着フィルムは、良好な接着性、柔軟性を与える熱可塑性樹脂と耐熱性を付与する熱硬化樹脂を含むものが望ましい。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアセタール樹脂、ケトン樹脂等が挙げられるが、柔軟性や基材との密着性、耐熱性の観点でアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。熱硬化成分としては特にエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、架橋型シリコーン等が好ましく、その中でも耐熱性と接着性の観点でエポキシ樹脂が好ましい。
【0038】
尚、第1電極付基板14と第2電極付き基板14’の構成は等しく、振動吸収体15の配設も等しいことから、感圧センサ10のQ−Q’で切断した場合の断面図及び説明は省略する。
【0039】
電極付き基板と圧電フィルムとを振動吸収体で固定できる構成は、周縁部だけ固定した感圧センサと比べて、加圧入力に伴って生じ得る、
図2Bに示すような基板の変形を抑えることができる。すなわち、加圧入力に応じて基板フィルムが振動する場合であっても、振幅の増大を防止し、電極と圧電フィルム間の相対位置の変化のバラツキを抑制できる。
【0040】
振動吸収体15を基板13,13’に配設する方法は、振動吸収体15の種類、振動吸収体15の形態、電極間距離に応じて、適宜選択できる。例えば、振動吸収体を液状接着剤で構成する場合、塗布、印刷、エッチングなどにより基板13,13’上に配設することができる。
同一の基板に配設される電極間の距離が2mm以下の場合、印刷により振動吸収体を形成することが好ましい。フィルム幅2mm以下の接着フィルムでは剛性が不足して変形しやすくなるため、位置精度よく積層することが困難となるためである。
同一基板に配設される電極間距離が0.2mm以下の場合、接着フィルムを全面に積層、もしくは液状接着性物質を全面に塗工、乾燥した後に、感光材料の積層と露光現像により必要部分を残す方法により振動吸収体を形成することが好ましい。当該方法であれば、高精度に配設位置を調節することができる。
【0041】
また、振動吸収体15として接着剤、接着フィルムを用いる場合、半硬化状態で圧電フィルムと積層し、積層後に硬化することが望ましい。半硬化状態では高い柔軟性、変形性を有するので圧電フィルムや基板の表面凹凸を埋める様に濡れ広がることができ、完全硬化後は、耐熱性等の信頼性が高い、接着力の強い接着を実現できるからである。
【0042】
以上のような構成を有する第1の実施形態の感圧センサ10では、
図3Aに示す白抜き矢印方向の加圧入力により、圧電フィルム11が変形し、これに伴って、入力位置に最近接の電極対12,12’間に最も大きな電圧が生じる。かかる電圧を検出することで、加圧入力の大きさ、入力位置を検出できる。一方、加圧入力位置周辺においても、加圧入力に伴う振動が伝播する。しかしながら、本実施形態の感圧センサ10では、振動吸収体15が、発生する振動の減衰作用を有し、また、振動吸収体と電極の間に空隙16を設けることにより、空気層と電極12との境界部分及び空気層と振動吸収体15との境界部分でも振動を減衰させるため、入力位置より離れた位置での圧電フィルム11の変形を防止できる。さらに、振動吸収体15を構成する接着剤で圧電フィルム11と電極付き基板14とが固定されている場合、加圧入力により発生する電極付き基板14自体の振動を防止することができる。このことは、入力位置では圧電フィルム11の圧電定数に基づく発生電圧が得られ、周辺の電極対で発生する電圧を抑制することができる。したがって、上記構成を有する感圧センサ10において、加圧入力位置、大きさに対して検出される電圧信号は、狭い範囲に限定されるので、解像度が向上する。
【0043】
また、本実施形態の感圧センサ10では、電極12と圧電フィルム11とは、接着剤などで接合されていないので、接着剤による加圧エネルギーの吸収ロスが無い点で有利である。さらに、加圧入力、すなわち加圧の負荷時から解除時にわたって電極12と圧電フィルム11との相対位置、接触状態が変化するため、加圧入力位置で瞬間的なパルス電圧が発生するとともに、負荷される加圧入力位置を鋭敏に検出することができるというメリットがある。特に、振動吸収体15を構成する接着剤で圧電フィルム11と電極付き基板14とを固定している場合、定常波の発生を抑制することにより、加圧入力及び解除時に生じる振動を早期に減衰できるので、加圧入力により生じる電圧は、鋭敏なパルス波として得ることができる。
【0044】
なお、
図3に示す形態の感圧センサ10では、振動吸収体15は、電極間に連続的に設けられていたが、本願発明の感圧センサはこれに限定されない。例えば、
図4に示す感圧センサ10’のように、電極12,12間又は12’,12’間に個別の振動吸収体15’を独立的に点在させてもよい。
【0045】
また、感圧センサ10では各電極12の形状は正方形であるが、これに限定せず、円形、多角形など適宜選択できる。また、電極12はマトリクス状に設けられているが、電極パターンは、任意に設計することができる。検知しようとする電圧が効率よく取り出せるように電極対が形成されていればよく、例えば、基板に、帯状の電極を所定間隔をあけてストライプ状に配設してもよい。この場合、圧電フィルムを挟んで帯状電極が交差するように組み合わせることで、各交差位置が一対の電極対を形成することになる。
【0046】
接合部19は電極付き基板14,14’の接合部分であり、通常、基板13,13’の周縁に沿って設けられる。接合方法は特に限定せず、ビス留め、接着剤による接着、加熱や加圧による接合などを用いることが出来る。
尚、振動吸収体を接着剤で構成する場合、振動吸収体により基板と圧電フィルムが固定されるので、周縁部における圧電フィルムと電極付き基材フィルムとの接合は、必須ではない。
【0047】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る感圧センサについて、
図5及び
図6に基づいて説明する。第2実施形態の感圧センサ20では、振動吸収体として、台座と振動吸収本体との組み合わせを用いており、さらに電極の一部が台座を兼ねている。
【0048】
図5は感圧センサ20を厚み方向に切断した断面図である。
図6Aは、感圧センサ20で用いられている第1の電極付き基板24の平面図、
図6Bは、感圧センサ20で用いられている第2の電極付き基板24’の平面図である。感圧センサ20は、
図6Aに示す第1の電極付き基板24と、同様の構成を有する
図6Bに示す第2の電極付き基板24’とで、圧電フィルム21を挟持したものであり、
図5の断面図において各電極付き基板24,24’は、
図6AのX−X’切断面、
図6BのY−Y’切断面が表されている。
【0049】
第1(又は第2)の電極付き基板24(又は24’)は、基板23上に、帯状の電極22(22’)が所定間隔をあけて並行に配設されたものであり、帯状の電極22,22間(22’,22’間)に、台座27(27’)と該台座27(27’)上に設けられた振動吸収本体28a(28a’)の組み合わせからなる振動吸収体25,25・・・(25’,25’・・・)が、所定間隔をおいて、帯状電極22(22’)とほぼ平行に並設されている。また、帯状の電極22(22’)上には、振動吸収体25(25’)の1つ置きに対応する位置に、振動吸収本体28b(28b’)が、電極22間(22’間)に配設された振動吸収体25(25’)の列とほぼ並行になるように設けられている。
【0050】
第1の電極付き基板24と第2の電極付き基板24’とは、それぞれの帯状の電極22,22’が直交するように対向させて圧電フィルム21を挟持している。帯状電極22と帯状電極22’とが、圧電フィルム21をはさんで交差している部分が、検知される電圧を取り出すための一対の電極対を形成している。つまり、帯状電極22(22’)において、振動吸収本体28bが設けられていない部分22a(22a’)が検知される電圧を取り出すための電極として作用する。一方、帯状電極22(22’)において、振動吸収本体28bが設けられている部分では、台座として作用している。
【0051】
台座27,27‘の構成材料は特に限定しないが、電極22,22’と同一材料で構成することが好ましい。台座を電極と同じ導電性材料で構成することにより、台座と電極とを同一工程で形成することができる。例えば、基板に積層した金属箔から、台座及び電極パターンをエッチング又は打ち抜くことにより、同時に形成することができるので、感圧センサの製造工程において、台座の形成のための追加工程は不要となる。
【0052】
振動吸収本体28a,28b,28a’,28b’は、いずれも第1実施形態で振動吸収体として例示したような材料で構成することができる。すなわち、振動吸収物質や接着性物質などを用いることができ、これらのうち、特に接着剤や接着フィルムが好ましく用いられる。
振動吸収本体を接着剤で構成する場合、台座上に、接着剤を塗布又は印刷することにより振動吸収本体を配設することができる。この場合、接着剤の厚みは2μm以上100μm以下とすることが好ましく、より好ましくは5μm以上50μm以下、更に好ましくは7μm以上30μm以下である。厚みが薄すぎると、強い接着力が得られず、また繰り返しの応力、振動の負荷、ヒートサイクル等の環境負荷に対する接着信頼性が低下するためである。また厚過ぎると、厚みがばらついたり、滲みが発生し易くなり精度良い印刷が困難になるためである。
【0053】
印刷方法としては、2μm以上の厚膜印刷が可能な印刷方法を用いることができ、具体的にはスクリーン印刷、凹版印刷、インクジェット印刷を採用でき、その中でも印刷精度がよく、低コストで、5μm以上の厚膜印刷が可能なスクリーン印刷が好ましい。振動吸収本体28a,28a’はそれぞれ台座27,27’上に、振動吸収本体28b,28b’はそれぞれ帯状電極22,22’上に形成されることから、厚みを適度に薄くできる。従って、台座と振動吸収本体の組合せからなる振動吸収体を用いることにより、スクリーン印刷等の印刷での形成時に厚みのバラツキを小さくでき、ひいては圧電フィルムと電極との距離の均質性を向上できる。
【0054】
尚、台座27(27’)上に設けられる振動吸収本体28a(28a’)は、台座27(27’)の載置面からはみ出さないように、好ましくは載置面積よりも小さくなるように設けることが好ましい。
【0055】
感圧センサ20では、第1の電極付き基板24と第2の電極付き基板24’とが、基板23,23’の周縁に沿って設けられる接合部29により接合固定されている。接合部29における接合方法としては、ビス留め、接着剤による接着、加熱や加圧による接合などを採用できる。第1の電極付き基板24、圧電フィルム21、及び第2の電極付き基板24’の積層構造は、接着剤で構成される振動吸収本体28a,28b(28a’,28b’)により、圧電フィルム21と電極付き基板24,24’とが貼着固定されているので、接合部29による接合はなくてもよい。
【0056】
なお、感圧センサ20では、第1の電極付き基板24と第2の電極付き基板24’とが同様の構成を有する電極付き基板を用いたが、電極パターンや振動吸収体の構成が異なる電極付き基板を組み合わせて用いてもよい。例えば、一方の電極付き基板に形成される電極パターンはマトリックス状とし、他方の電極付き基板上に形成される電極パターンは帯状電極をストライプ状に配置したものとしてもよい。また例えば、一方の電極付き基板に形成される電極パターンはマトリックス状とし、他方の電極付き基板上に形成される電極パターンは1枚の大きい電極のみを配置したものでもよい。さらに、振動吸収体についても、一方の基板に設けられる振動吸収体を台座と振動吸収本体の組み合わせとし、他方の基板に設けられる振動吸収体を第1実施形態で例示した振動吸収体としてもよい。
【0057】
なお、感圧センサ20では台座27(27’)の形状は正方形であるが、これに限定せず、円形、多角形など適宜選択できる。
【0058】
また、帯状電極の一部を台座として兼用する態様において、感圧センサ20では帯状電極上に設けられる振動吸収本体28b(28b’)は帯状電極間に配設された振動吸収体25(25’)の1つ置きに対応する位置に設けられているが、圧電フィルムを挟持する2つの帯状電極の交差している部分(検知される電圧を取り出すための電極対を形成する部分)を除いた範囲に振動吸収本体が設けられていればよく、帯状電極間に配設された振動吸収体のサイズや配置に応じて、例えば2つ置きや3つ置きなど、適宜選択出来る。
【0059】
〔感圧センサの製造方法〕
振動吸収体として、台座及び振動吸収本体との組み合わせを使用し、さらに前記台座として、電極を構成する導電性材料と同じ導電性材料で構成される感圧センサは、以下の製造方法により好ましく製造することができる。
【0060】
すなわち、基板上に積層された導電性材料の一部を除去することにより、前記電極及び前記台座を形成する工程;
前記振動吸収本体を前記台座上に印刷して前記振動吸収体を形成する工程;及び
前記振動吸収体及び前記電極が形成された基板を、前記圧電フィルムに当接する工程
を含む。
【0061】
基板と導電性材料との積層方法は特に限定しないが、基板に導電性材料が蒸着されていてもよいし、銅箔、アルミニウム箔などが貼着されていてもよい。基板上に積層された導電性材料の一部を除去する方法は、特に限定しないが、エッチング、打ち抜きなどにより行うことができる。
形成される電極パタ―ン及び台座は、第1実施形態で示すようなマトリックス状の電極と電極間間隙に連続的に形成される台座であってもよいし、マトリックス状に配列された電極と電極間間隙に台座が点在するように形成してもよい。また、第2実施形態で示すように、帯状電極と、電極間間隙に台座が点在するように形成してもよい。また、第2実施形態のように電極の一部が台座を兼ねていてもよい。
【0062】
台座上に振動吸収本体を印刷する方法としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷が挙げられ、好ましくはスクリーン印刷である。印刷により振動吸収本体を形成する場合、振動吸収本体が点在する印刷パターンが好ましい。連続的な広範囲にわたる印刷パターンだと印刷端部と中央部で厚みの差が出やすいためである。
【0063】
以上のようにして振動吸収体が形成された電極付き基板で、圧電フィルムを挟持する。圧電フィルムは、接着剤で構成される振動吸収本体で貼着固定されるので、周縁部における圧電フィルムと電極付き基材フィルムとの接合工程は、必須ではない。
【実施例】
【0064】
本発明を実施するための最良の形態を実施例および比較例により説明する。実施例および比較例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
〔実施例〕
厚さ25μmのポリイミド樹脂に厚さ18μmの銅箔を積層したCCL(Copper Clad Laminate)の銅箔をエッチングして、
図7に示すように、一辺(L)3mmの正方形の電極32を間隔(d)2mmでマトリックス状に配置するとともに、一辺(l
a)1mmの正方形の台座37a及び一辺(l
b)1.5mmの正方形の台座37b、並びに図示しない細配線及び外部端子を形成した。このとき、電極32は、細配線により外部端子と電気的に接続されている。さらに、台座37a,37b上に、接着剤をスクリーン印刷により印刷して、厚み15μmの振動吸収本体38a(Φ
a=0.8mm),38b(Φ
b=1.2mm)を形成した。振動吸収体35aは台座37aと振動吸収本体38aとから、振動吸収本体35bは台座37bと振動吸収本体38bとから構成される。
【0066】
なお、振動吸収本体として用いた接着剤の組成は、以下のとおりである。
アクリル樹脂(新中村工業製「バナレジンGH−7190」): 100質量部,
エポキシ樹脂(DIC社「EPICLON−N740」): 34.0質量部,
シリカ微粉末(日本アエロジル社「AEROSILRX300」): 3.8質量部,
消泡剤(ビックケミージャパン社「BYK−54」): 2.0質量部,
酸無水物(日本理化社「リカシッドMH−700」): 30.1質量部,
イミダゾール(四国化成社「2E4MZ」): 3.8質量部,
ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート: 140質量部。
【0067】
このようにして作製した電極付き基板2枚で、多孔質ポリテトラフルオロエチレン製の圧電フィルム(厚み:24μm、圧電定数d
33:100pC/N)を、基板上の電極が互いに対向するように挟持し、かかる状態で熱プレス(1.4MPa、130℃で15分間)により積層して感圧センサを作製した。作製した感圧センサにおいて、電極が縦4個×横4個となる範囲を選び、その内の7個を
図8に示すように電極A〜Gと名付けた。
【0068】
〔比較例〕
振動吸収体を形成しなかった以外は実施例と同様にして感圧センサを作製した。
【0069】
〔電極位置と発生電圧との関係〕
上記で作製した実施例及び比較例の感圧センサを測定サンプルとして、圧電フィルムの両面に形成された電極対に配線された外部端子を電気的に接続し、
図9に示すように、重さ0.3gの鉄球を20cmの高さから電極Dの位置に向けて自由落下させた。落下により発生した電圧を、各電極位置A〜Gにて測定した。各測定サンプルにおける電極位置と発生電圧の関係を示すグラフを
図10に示す。なお鉄球落下により発生する電圧の「最大値-最小値」をその測定での測定値とし、鉄球落下による測定を5回行い、平均値を電極の発生電圧値とした。
図10中、実施例サンプルの結果は実線で示し、比較例サンプルの結果は破線で示す。
【0070】
図10より、鉄球の落下地点に該当する電極位置Dに発生した電圧は、実施例及び比較例で同程度であった。しかしながら、落下地点以外の電極位置A、B、C、E、Fの発生電圧は、いずれも実施例の方が低かった。特に、実施例では、隣接(C、E)と周辺位置(A、B、F、G)の発生電圧にはほとんど差がなく、落下地点において特異的に電圧が発生した。一方、比較例では、隣接(C、E)または周辺位置(B、F)においても、落下地点の1/2以上に相当する電圧が発生していた。これらの結果から、実施例では、振動吸収体が、落下地点で受ける加圧入力に伴う振動を吸収し、隣接及び周辺での圧電フィルムの歪を抑制できたと考えられる。
【0071】
〔電圧信号波形の測定〕
図9に示すように、実施例及び比較例の測定サンプルをセットし、電極位置A,D,Fそれぞれについて、鉄球を自由落下させたときの発生電圧の波形をオシロスコープにより測定した。結果を
図11に示す。
【0072】
図11から、実施例では、電極位置A,D,Fのいずれにおいても、落下時に瞬間的に電圧が発生していることを示す、パルス波形が得られた。一方、比較例では、いずれも落下時から電圧が発生する立ち上がり、逆電圧が発生するまでの立ち下がりの変化はゆるやかであり、発生電圧も電極位置により異なっていた。比較例では、圧電フィルムと基板とが、電極位置で固定されていないので、加圧入力を受けた位置の周辺を含む広範囲で変形し、基板が振動したため、立ち上がり時間、立ち下がり時間が長くなったと考えられる。また、発生電圧差のバラツキは、電極と圧電フィルムの実質的空間距離のバラツキによるのではないかと推測される。