【解決手段】電磁誘導式のデジタイザ・パネル13は、電子ペン17が放射する交番磁束を検出して座標を特定する。センサ・モジュール15は、温度や圧力などの物理量の大きさを検出してそれに応じた周波数の交番磁束を放射する。デジタイザ・パネルは交番磁束を検出したときに、電子ペンの信号とセンサ・モジュール15の信号を識別する。デジタイザ・パネルはセンサ・モジュールが放射した交番磁束の周波数に応じてシステム11に制御イベントを出力する。制御イベントは、たとえば、電子機器10の筐体表面の温度が上昇したことに応じて放熱ファンの放熱能力を上昇させる。
前記デジタイザ・パネルが、交番磁束を放射する送信モードと前記電子ペンまたは前記センサ・モジュールが放射した交番磁束を受信する受信モードで動作する請求項1に記載の伝送システム。
前記センサ・モジュールが、磁界を放射するコイルと、前記所定の物理量の大きさに応じて抵抗が変化する可変抵抗素子と該可変抵抗素子に直列に接続された所定の静電容量のコンデンサを含むL−C共振回路で構成されている請求項2に記載の伝送システム。
前記所定の物理量が温度で、前記センサ・モジュールが前記筐体の表面の温度を測定するために前記筐体の内側の表面に貼り付けられている請求項8に記載の制御システム。
前記所定の物理量が圧力または変位で、前記センサ・モジュールが前記放熱ファンと前記筐体の内面の間隔を検出する位置に配置されている請求項8に記載の制御システム。
前記物理量が前記筐体の内側表面の温度で、前記制御するステップが所定値を越える温度に対応する周波数を検出したときに前記放熱ファンの放熱能力を上昇させる請求項16に記載の方法。
前記物理量が前記放熱ファンと前記筐体の内面表面との間隔で、前記制御するステップが所定値未満の間隔に対応する周波数を検出したときに前記放熱ファンを停止させる請求項16に記載の方法。
前記物理量が前記筐体の変位により生じる圧力で、前記制御するステップが所定値以上の圧力に対応する周波数を検出したときに前記放熱ファンを停止させる請求項16に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[伝送システムの概要]
図1は、本実施の形態にかかる伝送システムの典型的な例を説明するための図である。本明細書の全体を通じて図面の同一の要素には同一の参照番号を付して説明する。
図1(A)は、電子機器10に搭載した伝送システム100の概要を説明するための図である。電子機器10は、センサ・モジュール15と特許文献3または非特許文献1に示すタイプの電磁誘導式のデジタイザ・パネル13とシステム11を含んでいる。
【0017】
伝送システム100は、センサ・モジュール15とデジタイザ・パネル13との間に構築される。デジタイザ・パネル13は送信モードと受信モードで動作する。バッテリィを搭載しないバッテリィ・レス・タイプの電子ペン17は、デジタイザ・パネル13が放射した交番磁束に鎖交したコイルの誘導起電力で流れる電流が共振するL−C共振回路を含んでいる。電子ペン17のL−C共振回路は、デジタイザ・パネル13から電磁エネルギーを受け取ってコイルから受動的に交番磁束を放射する。
【0018】
デジタイザ・パネル13は電子ペン17が放射する交番磁束の大きさや周波数を検出して座標、筆圧情報、イレーズ・イベントまたはマウスのクリック・イベントなどをシステム11に出力する。センサ・モジュール15は、電子機器10の動作に関連する筐体の温度、圧力、または変位といった所定の物理量を検出して、その大きさに相当する周波数の交番磁束を電子ペン17と同じ原理で放射する。センサ・モジュール15は、デジタイザ・パネル13との間で、交番磁束を相互に検出できる位置に配置する。デジタイザ・パネル13は検出した交番磁束の周波数に対応する物理量の大きさに応じた制御イベントをシステム11に送る。
【0019】
図1(B)は、電子機器10に搭載した伝送システム200の概要を説明するための図である。電子機器10は、センサ・モジュール55と電磁誘導式のデジタイザ・パネル53とシステム11を含んでいる。伝送システム200は、センサ・モジュール55とデジタイザ・パネル53との間に構築される。電子ペン57は内部にバッテリィを搭載するバッテリィ・タイプで所定の周波数の交番磁束を能動的に出力する。デジタイザ・パネル53は受信モードだけで動作して、電子ペン57が放射する交番磁束を検出して座標や筆圧情報などをシステム11に出力する。
【0020】
センサ・モジュール55は、温度や圧力といった物理量を検出して、その大きさに相当する周波数の交番磁束を電子ペン57と同じ原理で放射する。以上、本実施の形態にかかる伝送システム100、200の概要を説明したが、本発明には能動的に交番磁束を放射するセンサ・モジュール55と、送信モードと受信モードで動作するデジタイザ・パネル13により構築する伝送システムも含む。
【0021】
[センサ・モジュール]
図2は、伝送システム100を構成するセンサ・モジュール15の構成の一例を説明するための図である。
図2にはセンサ・モジュール15の典型的な例として
図2(A)にセンサ・モジュール15aを示し、
図2(B)にセンサ・モジュール15bを示し、
図2(C)にセンサ・モジュール15cを示している。センサ・モジュール15a、15b、15cは、それぞれデジタイザ・パネル15が放射する交番磁束の周波数に共振するL−C共振回路を備えている。
【0022】
伝送システム100は、センサ・モジュール15が放射する交番磁束の周波数と電子ペン17が放射する交番磁束の周波数の関係において、第1の伝送方式と第2の伝送方式のいずれかで動作する。第1の伝送方式ではセンサ・モジュール15a、15bが、電子ペン17が使用する周波数帯とオーバーラップする周波数の交番磁束を放射する。第2の伝送方式ではセンサ・モジュール15cが、電子ペン17が使用する周波数帯とはオーバーラップしない専用の周波数の交番磁束を放射する。
【0023】
図2(A)に示すセンサ・モジュール15aは、コイルLと、それぞれコイルLと並列に接続されたコンデンサC1、可変コンデンサC2でL−C共振回路を形成している。可変コンデンサC2は、所定の物理量の大きさに対応して静電容量が変化する。コイルLのインダクタンス、コンデンサC1および可変コンデンサC2の静電容量がL−C共振回路の共振周波数を決定する。デジタイザ・パネル13の各センサ・コイルが放射した交番磁束にコイルLが鎖交すると誘導起電力が発生する。誘導起電力によってL−C共振回路に共振周波数の電流が流れ、コイルLが共振周波数の交番磁束を放射する。
【0024】
L−C共振回路は、可変コンデンサC2の静電容量が基準的な物理量に対応する値のときに、デジタイザ・パネル13が放射する交番磁束の周波数f1に共振する。物理量が基準的な物理量から変化し、それに応じて可変コンデンサC2の静電容量が変化すると、L−C共振回路の共振周波数がf1からシフトする。共振周波数がf2までシフトしたときに、コイルLは周波数f2の交番磁束を放射する。
【0025】
デジタイザ・パネル13はセンサ・コイルから送信モードのときに放射した交番磁束の周波数f1と、受信モードのときにセンサ・コイルが検出した交番磁束の周波数f2との差を検出する。デジタイザ・パネル13はたとえば、周波数f1と周波数f2の差が所定値を越えたときに、可変コンデンサC2の静電容量を変化させた物理量の大きさに対応するアクションをとるための制御イベントをシステム11に出力する。可変コンデンサC2の静電容量を変化させる物理量は一例として可変コンデンサC2の電極間の距離または2つの電極が対向する面積を変化させる圧力または変位とすることができる。
【0026】
デジタイザ・パネル13は、可変コンデンサC2の静電容量の変化値を2点以上設定して、より大きな物理量の値に対して設定したf3、f4・・といった周波数に応じた制御イベントを出力することができる。L−C共振回路は可変コンデンサC2に代えて、インダクタンスが圧力や変位などの物理量に応じて変化する可変リアクトルを採用することもできる。
【0027】
図2(B)に示すセンサ・モジュール15bは、コイルLと、それぞれコイルLと並列に接続されたコンデンサC0、コンデンサC1と可変抵抗素子S1の直列回路、可変コンデンサC2と可変抵抗素子S2の直列回路がL−C共振回路を形成している。可変抵抗素子S1、S2は、温度、変位、または圧力などの物理量がそれぞれ所定値になったときに急激に抵抗が変化する素子である。急激な抵抗の変化には、スイッチ素子が回路を切断する状態も含む。可変抵抗素子S1、S2の抵抗を大きく変化させる物理量が温度の場合は、可変抵抗素子S1、S2に温度が所定値を越えると急激に抵抗が増大するSRF(Self-Recovering micro Fuse)または、PTC(Positive Temperature Coefficient)を採用することができる。
【0028】
また、キューリー温度を超えると強磁性体の性質を失う感温フェライトを利用したリードスイッチを採用することができる。また、可変抵抗素子S1、S2が抵抗を大きく変化させる物理量が変位や圧力の場合は、メンブレンスイッチまたはマイクロ・スイッチのような変位や圧力で動作する接触式のスイッチ、または磁気を検知して動作する非接触式のスイッチを採用することができる。
【0029】
たとえば可変抵抗素子S1、S2が検出する温度がT1未満のときに両者の抵抗が十分に低いとする。このときコイルLが、デジタイザ・パネル13が放射した交番磁束と鎖交すれば、L−C共振回路にコイルL、コンデンサC0、C1、C2が形成する共振周波数f1の電流が流れコイルLは周波数f1の交番磁束を放射する。つぎに、温度がT1以上になったときに可変抵抗素子S1の抵抗が急激に増加して、L−C共振回路にコイルLとコンデンサC0、C2が形成する共振周波数f2の電流が流れコイルLは周波数f2の交番磁束を放射する。
【0030】
さらに、温度がT2以上になったときに可変抵抗素子S2の抵抗が急激に増加して、L−C共振回路にコイルLとコンデンサC0が形成する共振周波数f3の電流が流れコイルLは周波数f3の交番磁束を放射する。デジタイザ・パネル13は、検出した交番磁束の周波数f1、f2、f3に対応した制御イベントを出力することができる。直列に接続した可変抵抗素子とコンデンサの組を3つ以上接続すれば、デジタイザ・パネル13は物理量の大きさに対応するさらに多くの制御イベントを出力することができる。
【0031】
第1の伝送方式では、デジタイザ・パネル13がセンサ・モジュール15a、15bの位置に対応する座標を検出したときに、
図6を参照して説明するように、電子ペン17の信号とセンサ・モジュール15a、15bの信号を区別するための処理が必要になる。ただし、第1の伝送方式では、デジタイザ・パネル13は、電子ペン17の信号を処理するハードウェア回路を使用することができるため、ファームウェアの変更だけでセンサ・モジュール15a、15bの信号が処理できる。
【0032】
図2(C)に示すセンサ・モジュール15cは、コイルLとコンデンサC1でデジタイザ・パネル13が放射する交番磁束の周波数f1に共振する第1のL−C共振回路を形成し、コイルL1と可変コンデンサC2が異なる周波数f2に共振する第2の共振回路を形成する。コイルLとコイルL1は電磁結合しており、第2の共振回路は第1の共振回路からエネルギーを受け取る。第2の共振回路は、可変コンデンサC2の静電容量が変化したときに共振周波数がf3に変化する。デジタイザ・パネル13は、周波数f2とf3の差により物理量の変化を検出することができる。第2の伝送方式では、デジタイザ・パネル13がセンサ・モジュール15a、15bの位置に対応する座標を検出したときに電子ペン17の信号とセンサ・モジュール15a、15bの信号を周波数で識別することができる。
【0033】
図3は、伝送システム200を構成するセンサ・モジュール55の構成の一例を説明するための図である。デジタイザ・パネル53は受信モードだけで動作して、バッテリィ・タイプの電子ペン57が放射する磁束を検出して座標を特定する。センサ・モジュール55は、温度、圧力、または変位などの物理量を電気信号に変換するセンサ55a、センサ55aが出力する電気信号に対応する高周波電流をコイルLに流す高周波回路55b、およびセンサ55aと高周波回路55bに電力を供給する電池55cを含んでいる。電池55cは1次電池でもよいし図示しない充電器で充電する2次電池でもよい。2次電池を採用する場合は電磁誘導を利用した非接触充電方式を採用することができる。
【0034】
センサ・モジュール55は、センサ・モジュール15a、15bとは異なって電池55cの電力を利用できるため、センサ55aには歪みゲージのような電力を必要とするタイプのセンサを採用することができる。歪みゲージを使用すれば、直接筐体の歪みを検出して放熱ファンを停止することができる。センサ・モジュール55がデジタイザ・パネル53との間で伝送システム200を形成するときは、高周波回路55bはセンサ55aが検出した物理量の大きさに対応する周波数の高周波電流を出力するとコイルLは同一の周波数の交番磁束を放射する。デジタイザ・パネル53は周波数から物理量の大きさを判断してシステム11に制御イベントを送る。センサ・モジュール55は、デジタイザ・パネル13に対して第1の伝送方式と第2の伝送方式のいずれにも適応する。
【0035】
[デジタイザ・パネル]
図4は伝送システム100を構成するデジタイザ・パネル13の構成の一例を説明するための機能ブロック図である。デジタイザ・パネル13は、コイル・アレイ101から交番磁束を放射する送信モードと、電子ペン17または、センサ・モジュール15、55のいずれかまたは複数が放射する交番磁束を検出する受信モードで動作する。デジタイザ・パネル13は、電子ペン17の信号の処理と、センサ・モジュール15、55の信号の処理を並行して一連のスキャン動作のなかで行って、システム11に出力する。
【0036】
コイル・アレイ101には、X軸方向に順番に重なるように均等のピッチでn個のセンサ・コイル(図示せず)が配列され、Y軸方向に順番に重なるように均等のピッチでm個のセンサ・コイル(図示せず)が配列される。選択回路103は、コントローラ111から受け取った選択信号に基づいて、センサ・コイルを1個ずつ順番に選択し、切換回路105を通じて送信回路107または受信回路109を経由するループ回路を形成する。
【0037】
切換回路105は、コントローラ111から受け取った切換信号により、選択信号が所定のセンサ・コイルを選択している間に、ループ回路を送信回路107と受信回路109に対して所定の時間間隔で交互に複数回切り換える。送信モードでは切換信号が送信回路107を選択し、受信モードでは受信回路109を選択する。送信モードで動作する時間を送信期間といい、受信モードで動作する時間を受信期間という。
【0038】
コントローラ111は、1つのセンサ・コイルを選択する間に、複数の送信期間と受信期間を形成するように切換信号を生成する。選択されたセンサ・コイルに対して送信回路107は送信期間の間に所定の周波数の高周波電流を供給する。高周波電流が流れたセンサ・コイルは所定の周波数の交番磁束を放射する。コイル・アレイ101の近辺に存在する電子ペン17のコイルには、交番磁束との鎖交により誘導起電力が発生し共振電流が流れる。共振電流は電子ペン17のコイルから交番磁束を放射する。
【0039】
電子ペン17のコイルが放射する交番磁束は、送信期間につづく受信期間の間に同一のセンサ・コイルが受信する。受信回路109は受信期間の間にセンサ・コイルに発生した誘起電圧をディジタル・データに変換してコントローラ111に送る。誘起電圧は、センサ・コイルと電子ペン17の距離が近いほど大きくなるため、コントローラ111は電子ペン17がある座標に位置付けられている間に順番に選択した各センサ・コイルの誘起電圧を検出することで、電子ペン17に対して最も近い位置に存在するセンサ・コイルを特定して座標情報を生成することができる。
【0040】
同様に、センサ・モジュール15は、送信期間の間にコイルLに発生した誘導起電力によりL−C共振回路に共振電流が流れコイルL、L1が共振周波数の交番磁束を放射する。デジタイザ・パネル13は、先に説明した第1の伝送方式において電子ペン17と同一の周波数帯の交番磁束を検出し、第2の伝送方式において電子ペン17とは異なる周波数帯の交番磁束を検出する。デジタイザ・パネル13はまた、第1の伝送方式または第2の伝送方式のいずれかでセンサ・モジュール55が放射した交番磁束を受信期間の間に検出する。
【0041】
[受信回路と放熱ファン]
図5は、デジタイザ・パネル13のコントローラ111の構成を説明するための図である。
図5(A)は第1の伝送方式に適合するコントローラ111aの構成を示し、
図5(B)は第2の伝送方式に適合するコントローラ111bの構成を示している。
図5(A)において、コントローラ111aは、座標検出部151、識別部153、座標出力部155、および制御イベント出力部157を含んでいる。
【0042】
コントローラ111a、111bは、高周波電流の大きさおよび周波数をディジタル値に変換する高周波回路、MPU、MPUが実行するファームウェアなどで構成されている。システム11は、遠心式の放熱ファン23と、伝送システム100を経由してセンサ・モジュール15、55の信号を受け取って放熱ファン23を制御するファン・コントローラ25を含んでいる。ファン・コントローラ23は、一例においてPWM方式で放熱ファン23の回転速度を制御する。
【0043】
座標検出部151は、電子ペン17、センサ・モジュール15、55が放射する交番磁束がサーチ・コイルに誘起する誘起電圧の大きさから、コイル・アレイ101の周辺領域では2点補完方式で座標計算し、それより内側の中央領域では3点補完方式で座標を計算してディジタル値を識別部153に送る。3点補完方式では最も信号強度の強いセンサ・コイルとその両側のセンサ・コイルの3個の信号強度と座標の組から、信号強度を重みとする3個の座標の重心を計算して電子ペンの座標を特定する。2点補完では、最も信号強度の強いセンサ・コイルに続く信号強度のセンサ・コイルが内側にしか存在しない場合に、2個の信号強度と座標の組から座標の重心を計算して電子ペンの座標を特定する。
【0044】
2点補完する領域では、電子ペン17が外側に移動するほど信号強度が弱くなり、S/N比が低下するために電子ペン17の座標と検出座標の差が増大する。デジタイザ・パネル13が検出する電子ペン17の位置をユーザはデジタイザ・パネルに表示されたカーソルで知ることができるため、意図する座標に入力することは可能であるが、指示誤差により支障をきたすグラフィック・デザインのような特殊な作業には一般的に周辺領域を使用しないようにしている。
【0045】
コイル・アレイ101には、センサ・モジュール15、55の位置に対応する複数の座標102a、102bを割り当てており識別部153はそれらを認識している。センサ・モジュール15、55の位置は、筐体の温度や圧力を測定する位置に応じて決定するため、座標102a、102bはそれに対応する位置になる。ここで、筐体の温度を測定するセンサ・モジュール15bを周辺領域の座標102aに対応する筐体の位置に貼り付けることができれば、第1の伝送方式を採用しても電子ペン17によるグラフィック・デザインのような作業に影響を与えないようにすることができる。
【0046】
座標検出部151は、検出した交番磁束の周波数をディジタル値に変換して識別部153に送る。識別部153は、座標検出部151が検出した座標が電子ペン17と、センサ・モジュール15、55のいずれの信号によるかを識別する。識別の手順は、
図6のフローチャートを参照して説明する。識別部153は、電子ペン17の信号と判断したときは座標と周波数を座標出力部155に送り、センサ・モジュール15、55の信号と判断したときは制御イベント出力部157に送る。
【0047】
座標出力部155は、送信モードで送信する交番磁束の周波数と受信モードのときに受信した交番磁束の周波数の偏差から電子ペン17に対する筆圧情報を計算することができる。座標出力部155は、周波数の大きさから電子ペン17のイレーズ・イベント、またはマウスのクリック・イベントを生成して、座標と共にシステム11に送る。座標出力部155が出力する座標や筆圧情報はシステム11のアプリケーションやディスプレイのデバイス・ドライバが受け取る。
【0048】
制御イベント出力部157は、識別部153から受け取った周波数の値からセンサ・モジュール15、55が検出した物理量に対応する制御イベントを出力する。一例として筐体の温度を検出するセンサ・モジュール15bの出力に対応する制御イベントは、センサ・モジュール15bが検出した温度がT1以上のときに放熱ファン23を動作または回転速度を上昇させる動作イベントとし、温度がT2(T2<T1)未満のときに動作イベントをキャンセルするリセット・イベントとすることができる。
【0049】
他の例としては、筐体の変位を検出するセンサ・モジュール15aの出力に対応する制御イベントは、センサ・モジュール15aが検出した変位がP1以上のときに放熱ファン23が停止する停止イベントとし、変位がP2(P2<P1)未満のときに停止イベントをキャンセルするリセット・イベントとすることができる。システム11は制御イベント出力部157から制御イベントを受け取って、ファン・コントローラ25を通じて放熱ファン23の動作を制御する。
【0050】
上記の例では、温度の動作イベントを受け取ったファン・コントローラ25は放熱ファン23を動作させたり回転速度を上昇させたりし、リセット・イベントを受け取ったファン・コントローラ25は動作イベントを受け取る前の状態に戻す。また変位の動作イベントを受け取ったファン・コントローラ25は放熱ファン23を停止させ、リセット・イベントを受け取ったファン・コントローラ25は動作イベントを受け取る前の状態に戻す。
【0051】
図5(B)において、第2の伝送方式に適用するコントローラ111bは、周波数弁別部161、座標出力部165、および制御イベント出力部167を含んでいる。コントローラ111bがコントローラ111aと異なる点は、周波数フィルタを備える周波数弁別回路161を設けて電子ペン17の信号とセンサ・モジュール15c、55の信号を識別することである。周波数弁別回路161は、受信した交番磁束の周波数が、電子ペン17が使用する周波数帯の場合は、高周波電流を座標出力部165に送り、センサ・モジュール15c、55の場合は、制御イベント出力部167に送る。座標出力部165は、高周波電流から座標およびその他の情報を抽出してシステム11に送る。制御イベント出力部167は、高周波電流から制御イベントを生成してシステム11に送る。
【0052】
[センサ・モジュールの識別方法]
第1の伝送方式では、電子ペン17の信号とセンサ・モジュール15a、15b、55の信号を周波数では区別できないため他の方法を採用する必要である。
図6は、第1の伝送方式のときにコントローラ111aが電子ペン17の信号とセンサ・モジュール15a、15b、55の信号を識別する手順を示すフローチャートである。ここでは、座標102aに対応する位置に筐体の温度を検出するセンサ・モジュール15bを配置し、座標102bに対応する位置に放熱ファン23に筐体が加える圧力または筐体の変位を検出するセンサ・モジュール15aを配置した場合を例にして説明する。
【0053】
ブロック201でデジタイザ・パネル13が動作を開始する。デジタイザ・パネル13を電子ペン17だけで利用する場合は、電子ペン17が電子機器10の本体から引き抜かれたことに連動してデジタイザ・パネル13を動作させることができるが、本実施形態では伝送システム100を利用して放熱ファン23の動作を制御するために、電子機器10の動作とともにデジタイザ・パネル13を動作させる。
【0054】
ブロック203で送信回路107に連動してコイル・アレイ101が放射した交番磁束を検出して、電子ペン17またはセンサ・モジュール15a、15bが受動的に交番磁束を放射する。センサ・モジュール55は、コイル・アレイ101が放射する交番磁束とは無関係に交番磁束を放射する。デジタイザ・パネル13は受信モードのときに交番磁束を検出する。ブロック205で座標検出部151は、3点補正または2点補正で座標を計算する。ブロック206で識別部153は、計算した座標がセンサ・モジュール15aに割り当てた座標102bに一致するか否かを判断する。一致する場合はブロック221に移行して、制御イベント出力部157が圧力に応じた処理をするが、この手順は、ブロック207〜217の手順とほぼ同じであるため説明を省略する。
【0055】
ブロック207で識別部153は、計算した座標がセンサ・モジュール15bに割り当てた座標102aに一致するか判断する。検出した座標が座標102aに一致しない場合は、識別部153は検出した座標を座標出力部155に渡してブロック217に移行する。ブロック217では座標出力部155から受け取った座標およびその他の情報をシステム11が電子ペン17の信号として処理する。
【0056】
検出した座標が座標102aに一致しても、この時点で識別部153は、検出した座標の信号が電子ペン17によるものか、センサ・モジュール15bによるものかを判断することはできない。しかし、座標102aを検出したときは、放熱ファン23の動作を優先させるために、ブロック209で識別部153は、検出した高周波電流の周波数を制御イベント出力部157に送って放熱ファン23の放熱能力の増加の必要性を判断させる。制御イベント出力部157は高周波電流の周波数に相当する温度がT1以上か否かを判断する。
【0057】
温度がT1未満の場合は、デジタイザ・パネル13はブロック203に戻って交番磁束の検出を続ける。温度がT1以上の場合は制御イベント出力部157がブロック211で放熱ファン23を動作または回転数の上昇をさせる動作イベントを出力する。しかし、電子ペン17が座標102aを指示していた場合は、デジタイザ・パネル15は座標102aを電子ペン17が指示した座標としてシステム11に送る必要がある。ここで、電子ペン17は通常の利用では短時間の間にコイル・アレイ101のさまざまな位置に移動する。他方、センサ・モジュール15bのコイル・アレイ101に対する位置は変化しない。この特質を利用して識別部153は、座標102aに対する入力が電子ペン17とセンサ・モジュール15bのいずれが行ったものであるかを識別する。
【0058】
ブロック213で識別部153は、検出した座標102aを示す信号が短時間のうちに消滅した場合は、ブロック205で計算した座標102aが電子ペン17の信号であると判断して、ブロック215で制御イベント出力部157にリセット・イベントを出力するように指示する。その結果、動作イベントはキャンセルされる。ブロック217で識別部153は、座標102aを座標出力部155に送ってブロック203に戻る。
【0059】
第1の伝送方式を採用しても上記の手順により、コントローラ111aは同一の周波数帯で動作する電子ペン17の信号とセンサ・モジュール15a、15b、55の信号を区別することができる。第2の伝送方式では、コントローラ111bに周波数弁別部161を設けて、電子ペン17の信号とセンサ・モジュール15bの信号を区別することができるため、座標102aを電子ペン17が指示しても電子ペン17の座標と制御イベントを同時に生成することができる。
【0060】
[電子機器]
図7は、本発明の適用が可能な電子機器10の一例を説明するための斜視図である。
図7(A)は、着脱型のデュアル・スクリーン式コンピュータ300を示している。デュアル・スクリーン式コンピュータ300は、タッチ・スクリーン337を搭載するタブレット端末335に、タッチ・スクリーン333を搭載するタブレット端末331を、着脱機構339を利用して結合している。着脱機構339は使用状態に応じて両者を容易に結合または分離することができる。
【0061】
タブレット端末331およびタブレット端末335は、結合時に有線または無線のインターフェースで相互に接続する。タブレット端末331およびタブレット端末335は、分離した状態ではそれぞれ単独のタブレット端末として機能し、結合した状態では協働して一体的なコンピュータ・システムを構成するように機能する。着脱機構339には、さまざまなメーカや型式のタブレット端末331を装着できる。また、結合状態では、保管や携帯に便利なように、タッチ・スクリーン333とタッチ・スクリーン337が向き合うように両者を閉じることができる。タッチ・スクリーン333、337はそれぞれデジタイザ・パネルを含んでおり、指や電子ペンで操作することができる。タブレット端末331およびタブレット端末335は、それぞれ内部に放熱ファン23(
図8)を搭載する。
【0062】
図7(B)は、着脱式のタブレット端末を備えるノートPC400を示している。ノートPC400は、表面にキーボード437とタッチパッド439などを搭載するベース側の筐体435に、タッチ・スクリーン433を搭載するタブレット端末431を着脱機構439で着脱可能なように結合している。タブレット端末431の構成は、
図8に示すタブレット端末331の構成とほぼ同様で、内部に放熱ファンを搭載する。
【0063】
図8は、デュアル・スクリーン式コンピュータ300の構成の一例を説明するための機能ブロック図である。タブレット端末335、331の構成は異なっていてもよいが、ここでは同様の構成として説明する。タブレット端末335、331は、SOC(System on a chip)タイプの組込システム(Embedded System)350a、350bに、システム・メモリ351a、351b、LCD353a、353b、タッチ・パネル355a、355b、WAPN(Wireless Personal Area Network)モジュール371a、371b、WWAN(Wireless Wide Area Network)モジュール373a、373b、WLAN(Wireless Local Area Network)モジュール375a、375b、およびSSD377a、377bが接続されている。
【0064】
タブレット端末335、331にはさらに、
図4、
図5(A)を参照して説明したデジタイザ・パネル13およびファン・コントローラ25が接続されている。ファン・コントローラ25には、それぞれ筐体の熱を外に放熱する放熱ファン23が接続されている。組込システム350a、350bはそれぞれ、CPUコア、GPU、メモリ・コントローラ、I/Oコントローラ、およびファームウェアROMなどで構成されている。組込システム350a、350bは結合時に一例としてWPANモジュール371a、371bで相互に接続されて一体的なコンピュータ・システムを構成する。
【0065】
[タッチ・スクリーンの構成とセンサ・モジュールの取り付け]
図9は、タブレット端末331に筐体305bの内側表面の温度を測定するセンサ・モジュール15bを貼り付けた様子を説明するための模式的な断面図である。タッチ・スクリーン333は、上からタッチ・パネル355b、LCD353b、デジタイザ・パネル13およびシールド・パネルが積層された構造で、指の接近を検出してタッチ・パネル355bが座標を生成し、電子ペン15の接近、押圧またはスイッチ操作を検出してデジタイザ・パネル13が座標や制御信号を生成する。
【0066】
タッチ・スクリーン333と筐体305bの底面303bの間には、
図8に示した多くのデバイスを実装したマザーボード301bが配置されている。筐体305bの底面303bには、表面温度を検出するセンサ・モジュール15b(
図2)が貼り付けられている。電池を搭載しないセンサ・モジュール15bは、印刷回路基板に素子を実装して薄型に形成することができるため、狭いスペースに取り付けることができる。また、センサ・モジュール15bとマザーボード301bは電線で接続されていないため、マザーボード301bを筐体305bから取り外しても電線が断線するようなことはなく、回路基板301bの取り外しや取り付けの障害にならない。
【0067】
可変抵抗素子S1、S2は、マザーボード301bに実装したデバイスが発熱して温度が上昇した底面303bの温度を直接検出して抵抗が変化する。従来のようにマザーボード301bの要所に温度センサを取り付けて間接的に表面温度を検出するよりも高い精度で筐体305bの温度を管理することができる。タッチ・スクリーン333の底部を構成するシールド・パネルは、必要に応じてセンサ・モジュール15bに対応する位置を部分的に切除して、デジタイザ・パネル13との間で磁束が通過する経路を確保することができる。
【0068】
図10は、遠心式の放熱ファン23の外形図である。
図10(A)は平面図、
図10(B)は底面図、
図10(C)は側面図である。ファン・チャンバ411は、上部プレート411a、下部プレート411b、および側壁411cで構成されている。側壁411cには開口が形成され、必要に応じてそこにヒート・シンク413が取り付けられる。放熱ファン23は、ヒート・シンク413がタブレット端末の筐体305bの側面に形成されたルーバに位置が整合するように取り付けられる。
【0069】
上部プレート411aには吸気口となる開口が形成されており、その開口からはモータに結合された回転軸401の頂部とその周囲に取り付けられた複数のブレード403の一部が露出している。また、下部プレート411bにも吸気口となる開口が形成され、モータを取り付けるベース405が形成されている。ベース405の周囲に形成された吸気口からはブレード403の一部が露出している。放熱ファン23は上下の吸気口から筐体305bの内部の高温の空気を吸気してヒート・シンク413を通じて筐体の外に排気する。
【0070】
図11は、タブレット端末331に、圧力または変位を測定するセンサ・モジュール15aを取り付けた様子を説明する模式的な断面図である。
図11(A)は、
図10に対して放熱ファン23を加え、タッチ・スクリーン333の底面304bには変位を検出するセンサ・モジュール15aを貼り付け、筐体305bの底面303bには圧力を検出するセンサ・モジュール15aを貼り付けた様子を示している。
図11(B)は、センサ・モジュール15aの取り付け部分を拡大した模式的な断面図である。
【0071】
タッチ・スクリーン333の底面304bに貼り付けたセンサ・モジュール15aは、上部プレート411aとの間に弾力性材料の誘電体505a、505bを挟んでおり、ファン・チャンバ411の上部プレート411aを一方の電極とする可変コンデンサC2を形成している。タブレット端末331が薄型化してくると、タッチ・スクリーン333を矢印Aの方向に押下したときにタッチ・スクリーン333が撓んで、底面304bと、回転軸401またはブレード403が接触する可能性が高まる。このときタッチ・スクリーン333が撓むと、センサ・モジュール15aと上部プレート411aの距離が縮まり、可変コンデンサC2の静電容量が増加するため、デジタイザ・パネル15は底面304bが接触する前に制御イベントを出力してブレード403の回転を停止させることができる。
【0072】
また、底面303bに貼り付けたセンサ・モジュール15aは筐体305bを矢印Bの方向に押下すると、底面303bがベース405または底部プレート411bに接触し、さらにそれらがブレード403に接触する可能性が高まる。このとき底面303bとベース405に挟まれたセンサ・モジュール15aに圧力が加えられると、電極間の距離が縮まって可変コンデンサC2の静電容量が増加するため、デジタイザ・パネル15は接触前に制御イベントを出力してブレード403の回転を停止させることができる。
【0073】
本発明の伝送方式は、放熱ファン23の制御以外にも、デジタイザ・パネル13を搭載する電子機器において他の目的に適用することができる。たとえば本発明の伝送方式は、筐体に設けたスイッチの信号の伝送に利用することができる。また本発明の伝送方式は、センサ・モジュールから信号を送るだけでなく、デジタイザ・パネルから信号を送って筐体に取り付けたインディケータの表示を制御するために利用することができる。タブレット端末331に伝送システム100を搭載する例を説明したが、デジタイザ・パネル13に代えてデジタイザ・パネル53を利用した伝送システム200を搭載することもできる。また、タブレット端末335、431(
図7)についても同様に伝送システム100または伝送システム200を搭載してデバイスの制御に利用することができる。
【0074】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。