【解決手段】動力装置10は、エンジン11の動力を発電機12と潤滑油ポンプ16とに分配するトランスファ13を備える。トランスファ13は、入力軸20と、カップリング40を覆い放熱用の放熱穴61aを有するケース60と、ベアリングBr1を介して入力軸20を回転可能に支持する入力軸カバー50と、入力軸カバー50と入力軸20との間に組付けられて潤滑油の漏れを防止するオイルシール53とを有する。オイルシール53は、シングルリップ型のシール部材であり、オイルシール53より大気側で入力軸カバー50と入力軸20との間にラビリンスシール58が設けられ、オイルシール53とベアリングBr1の間に潤滑油ポンプ16から潤滑油を送り込む潤滑用配管h6が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したトランスファ113を詳細に説明すると、
図15に示すように、入力軸120とエンジン111(
図14参照)とが、円筒ハブ130とカップリング140を介して連結していて、入力軸カバー150が入力軸120を覆い、ケース160がカップリング140を覆っている。そして、このケース160には、エンジン111からの熱を放出してケース160内の雰囲気温度を下げるために、放熱穴(図示省略)が形成されるようになっている。
【0007】
このトランスファ113において、電動キャリヤが用いられる製鉄所や造船所等では、ダスト(鉄粉、砂埃、ゴムの摩耗片等の粉塵)が多く発生するため、放熱穴からケース160の内側にダストが多く侵入することになる。そこで、従来では、入力軸カバー150と入力軸120(厳密にはブッシュ156)との間にダストリップ型のシール部材(ダストリップ付オイルシール)153を組付けて、シールリップ部153aで潤滑油の漏れを防止すると共に、ダストリップ部153bでダストの侵入を防止するようになっていた。
【0008】
しかしながら、このトランスファ113を備えた電動キャリヤ用動力装置において、以下の問題点があった。即ち、入力軸120は高温度の状況で高速回転するため、入力軸120を締付けているシール部材153のシールリップ部153aには、ブリスタ(ゴム表面のふくれ)が生じることがあった。このブリスタの発生要因は以下のとおりである。先ず、
図16(A)に示すように、シールリップ部153aが高速回転する入力軸120と摺動することで発熱し、シールリップ部153aの近傍で封止されている潤滑油の温度を上昇させる。これにより、その潤滑油が高温になって蒸発し、油側からシールリップ部153aに侵入拡散する。このとき、シールリップ部153aの大気側の表面153cの透過性は低いため、
図16(B)に示すように、侵入した油がこの表面153cの近傍で凝集する。こうして、表面153cがふくれて、ブリスタBRが生じることになる。
【0009】
このブリスタBRが発生すると、シールリップ部153aが入力軸120を締付ける緊迫力が安定しなくなり、封止されている潤滑油がシールリップ部153aからにじみ出るように漏れ出てくる。この結果、シール部材153を早期に交換しなければならず、トランスファ113の整備周期が短くなるという問題点があった。この問題点に対して、ダブルリップ型のシール部材153は、入力軸120を締付ける緊迫力が比較的大きくて、シールリップ部153aの摺動による発熱が大きいことによってブリスタBRが発生し易くなっていると考えると、ダブルリップ型のシール部材153に替えて、緊迫力が比較的小さいシングルリップ型のシール部材(ダストリップ無しオイルシール)を用いることが考えられる。しかし、この場合には、上述したようにダストリップ部153bでダストの侵入を防止することができなくなる。以上のことから、トランスファ113の内部でダストの侵入を防止できて、且つブリスタBRの発生を抑制して油漏れを防止できることが求められていた。
【0010】
そこで、本発明は上記した課題を解決すべく、トランスファの内部でダストの侵入を防止できて、且つシール部材でブリスタの発生を抑制して油漏れを防止できる電動キャリヤ用動力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電動キャリヤ用動力装置は、車輪を回転駆動するための電力を発生する発電機と、前記発電機を駆動するための動力を発生するエンジンと、前記発電機と前記エンジンとの間に配置されて前記エンジンの動力を前記発電機と潤滑油を送り込むための潤滑油ポンプとに分配するトランスファとを備え、前記トランスファは、前記エンジンから連結部材を介して動力が入力される入力軸と、前記連結部材を覆い放熱用の放熱穴を有するケースと、前記入力軸を覆いベアリングを介して前記入力軸を回転可能に支持するカバー部材と、前記カバー部材と前記入力軸との間に組付けられて潤滑油の漏れを防止する第1シール部材とを有するものであって、前記第1シール部材は、シングルリップ型のシール部材であり、前記第1シール部材より大気側で前記カバー部材と前記入力軸との間に組付けられてラビリンス溝によってダストの侵入を防止する第2シール部材が設けられ、前記第1シール部材と前記ベアリングの間に前記潤滑油ポンプからの潤滑油を送り込む潤滑用配管が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る電動キャリヤ用動力装置によれば、カバー部材と入力軸との間に組付けられる第1シール部材が、シングルリップ型のシール部材であるため、ダブルリップ型のシール部材に比べて入力軸を締付ける緊迫力が小さく、第1シール部材の摺動による発熱を抑えることができる。更に、潤滑用配管が、潤滑油ポンプからの潤滑油を第1シール部材とベアリングの間に送り込むため、第1シール部材では、送り込まれる潤滑油によって潤滑性能が改善されて、摺動面が発熱し難くなる。これにより、封止された潤滑油が高温になり難くて第1シール部材に侵入拡散することが抑えられ、ブリスタの発生を抑制することができる。一方、ダスト対策においては、第1シール部材より大気側に組付けられた第2シール部材が、ラビリンス溝によってダストの侵入を防止できる。そして、第2シール部材は、ラビリンス溝によって非接触でダストの侵入を防止するため、摺動による発熱が生じない。このため、第2シール部材に接触する入力軸の温度上昇が抑制されて、入力軸を締付ける第1シール部材の温度上昇も抑制されることになる。この結果、第2シール部材を用いることでもブリスタの発生を抑制することになり、第1シール部材で油漏れを防止することができる。
【0013】
また、本発明に係る電動キャリヤ用動力装置において、前記ケースの放熱穴に向かって延びているノズルと、外気を吸引して前記ノズルに外気を送り込む送風機が設けられ、前記送風機は、吸引した外気を前記ノズルから前記ケースの放熱穴の内部へ送り込むことが好ましい。
この場合には、ケース内に外気が強制的に送り込まれるため、ケース内の雰囲気温度を下げることができる。これにより、入力軸の温度上昇及び第1シール部材の温度上昇を抑制することができ、ブリスタの発生を効果的に抑制できる。
【0014】
更に、本発明に係る電動キャリヤ用動力装置において、前記エンジンに対して前記送風機より遠く離れた位置にダクトの吸引口が設けられ、前記送風機は、前記ダクトの吸引口から外気を吸引して前記ノズルに送り込むと良い。
この場合には、ダクトの吸引口がエンジンから遠く離れた位置になるため、ダクトの吸引口周りの外気はエンジンの熱によってほとんど温められていない。従って、送風機がダクトから外気を吸引することで、比較的温度が低い外気をケース内に送り込むことができ、ケース内の雰囲気温度をより効果的に下げることができる。
【0015】
また、本発明に係る電動キャリヤ用動力装置において、前記エンジンを流れる冷却水を冷却するラジエータの近傍にオイルクーラが配置され、前記潤滑用配管から送り込んだ潤滑油は油溜りに送り込まれ、前記油溜りの潤滑油が前記潤滑油ポンプを通って前記オイルクーラに送り込まれて冷却され、前記冷却された潤滑油が前記潤滑用配管へ送り込まれる循環経路が形成されていることが好ましい。
この場合には、潤滑油は、油溜りと潤滑油ポンプとオイルクーラと潤滑用配管を通って、第1シール部材とベアリングの間に送り込まれた後、再び油溜りに送り込まれて循環することになる。このとき、オイルクーラが、循環経路で循環する潤滑油を常に冷却する。これにより、第1シール部材とベアリングの間では、常に冷却された潤滑油が送り込まれる。従って、第1シール部材の温度上昇を抑制でき、ブリスタの発生を効果的に抑制できる。
【0016】
また、本発明に係る電動キャリヤ用動力装置において、前記エンジンに対して前記発電機と反対側に、前記エンジンの動力で駆動する送風ファンが配置され、前記ラジエータ及び前記オイルクーラは、前記送風ファンから吸引される外気に触れる位置に配置されていると良い。
この場合には、ラジエータが送風ファンから吸引される外気を利用して冷却水を冷却すると共に、オイルクーラが送風ファンから吸引される外気を利用して潤滑油を冷却する。従って、オイルクーラに対して専用のファンを設ける必要がなくて、一つの送風ファンを利用することで構造の簡素化を図ることができる。
【0017】
また、本発明に係る電動キャリヤ用動力装置において、前記第2シール部材より大気側で前記カバー部材と前記連結部材との間には、前記入力軸の周方向に凹凸状に嵌合するラビリンス嵌合部が設けられていても良い。
この場合には、ダストがケースの放熱穴から侵入して、カバー部材と連結部材との間に設けられたラビリンス嵌合部に入り込もうとしても、連結部材の回転によって吹き飛ばされる。この結果、ダストが第2シール部材に到達する前段階で、ダストの侵入を防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電動キャリヤ用動力装置によれば、トランスファの内部でダストの侵入を防止できて、且つ第1シール部材でブリスタの発生を抑制して油漏れを防止できる。この結果、第1シール部材の寿命を延ばすことができ、トランスファの整備周期を長くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
本発明に係る電動キャリヤ用動力装置について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1(A)は、本実施形態の電動キャリヤ用動力装置10を搭載した電動キャリヤ1の側面図であり、
図1(B)は、電動キャリヤ1の平面図である。なお、
図1(B)では、荷台2の一部が透視して示されている。
【0021】
電動キャリヤ1は、主に製鉄所や造船所等で重量物を搬送するための搬送車両である。電動キャリヤ1は、
図1(A)(B)に示すように、搬送物を積載する荷台2と、この荷台2を支持する複数の車輪3と、これら複数の車輪3の一部を電力により回転駆動する走行用モータ4と、複数の車輪3の全てを油圧により操舵駆動する操舵用シリンダ5とを備えている。こうして、電動キャリヤ1は、各操舵用シリンダ5が複数の車輪3を独立して操舵駆動することで、斜行や横行等の走行ができるようになっている。
【0022】
また、電動キャリヤ1は、
図1(A)に示すように、荷台2及び車輪3を連結する伸縮可能なアーム6と、このアーム6を油圧により伸縮駆動する昇降用シリンダ7とを備えている。こうして、電動キャリヤ1は、昇降用シリンダ7がアーム6を伸縮駆動することで荷台2の昇降ができるようになっている。ここで、この電動キャリヤ1には、
図1(B)に示すように、電動キャリヤ用動力装置10(以下、単に「動力装置10」と呼ぶ)が搭載されている。
図2は、
図1に示した動力装置10を詳細に示した平面図である。
【0023】
動力装置10は、
図2に示すように、動力を発生するエンジン11と、エンジン11の動力により発電する発電機12と、エンジン11と発電機12との間に配置されてエンジン11の動力を分配するトランスファ13とを備えている。そして、トランスファ13の一端側(
図2の下端側)には、発電機12側に油圧ポンプ14が接続され、エンジン11側に冷却液ポンプ15が接続されている。一方、トランスファ13の他端側(
図2の上端側)には、エンジン11側に潤滑油ポンプ16が接続されている。
【0024】
エンジン11は、発電機12や油圧ポンプ14等を駆動するための動力を発生するものである。発電機12は、車輪3を回転駆動するための電力を発生し、発生した電力を走行用モータ4に供給するものである。この発電機12は、トランスファ13を介して伝達されるエンジン11の動力によって、駆動するようになっている。トランスファ13は、エンジン11の動力を、発電機12と油圧ポンプ14と冷却液ポンプ15と潤滑油ポンプ16とに分配するものである。トランスファ13の構成については、後に詳しく説明する。
【0025】
油圧ポンプ14は、エンジン11の動力によって、車輪3を操舵駆動するための油圧及びアーム6を伸縮駆動するための油圧を発生するものである。発生した油圧は、図示しない配管を介して、操舵用シリンダ5及び昇降用シリンダ7に供給されるようになっている。冷却液ポンプ15は、エンジン11の動力によって、走行用モータ4を冷却するための冷却液を圧送するものである。潤滑油ポンプ16は、エンジン11の動力によって、トランスファ13を潤滑するための潤滑油を圧送するものである。こうして、この動力装置10では、油圧ポンプ14、冷却液ポンプ15、潤滑油ポンプ16を駆動するための専用の駆動源が無くて、駆動源としてエンジン11を利用することで構造の簡素化が図られている。
【0026】
ここで、
図3は、
図2に示したトランスファ13の平面図である。また、
図4は、
図3に示したトランスファ13を右側から見たときの側面図である。また、
図5は、
図4に示したトランスファ13を上側から見たときの正面図である。
図6は、
図4に示したA−B−C−D−E線に沿った断面図である。
【0027】
トランスファ13は、
図3〜
図6に示すように、エンジン11からの動力が伝達される入力軸20と、エンジン11と入力軸20とを連結する円筒ハブ30及びカップリング40と、入力軸20を覆う入力軸カバー50と、円筒ハブ30及びカップリング40を覆うケース60と、入力軸20からエンジン11の動力を伝達するための歯車機構70と、この歯車機構70をケース60と共に挟むように組付ける第2ケース80とを備えている。
【0028】
入力軸20は、エンジン11のフライホイール(図示省略)から円筒ハブ30及びカップリング40を介して動力が伝達されて、回転する軸である。円筒ハブ30は、入力軸20と同軸的に配置されていて、ナット31及びカラー32を介して入力軸20に一体回転可能に組付けられている。カップリング40は、エンジン11のフライホイールと円筒ハブ30とを連結する円筒部材であり、径方向に延びるボルト41を介して円筒ハブ30に一体回転可能に組付けられている。これら円筒ハブ30とカップリング40とが、本発明の「連結部材」に相当する。ここで、
図7は、
図6に示した入力軸20の近傍を拡大した図である。
【0029】
入力軸カバー50は、
図7に示すように、ベアリングBr1を保持している第1カバー51と、オイルシール53を組付けている第2カバー52とで構成されている。この入力軸カバー50が、本発明の「カバー部材」に相当する。第1カバー51は、ベアリングBr1を介して入力軸20を回転可能に支持している。第1カバー51及び第2カバー52は、円環状に形成されていて、軸方向に延びるボルト54を介してケース60に連結されている。
【0030】
オイルシール53は、大気側(
図7の右側)に潤滑油が漏れることを防止するものであり、ダストリップ部を有していないシングルリップ型のシール部材である。即ち、オイルシール53より油側(
図7の左側)には、ベアリングBr1等の潤滑を良くするための潤滑油が封止されていて、オイルシール53のシールリップ部53aがこの潤滑油の漏れを防止している。詳細には、オイルシール53は、第2カバー52と入力軸20の周りに組付けられたブッシュ56との間に組付けられていて、シールリップ部53aが回転するブッシュ56(入力軸20)に摺動しながら潤滑油の漏れを防止している。このオイルシール53が、本発明の「第1シール部材」に相当する。
【0031】
ケース60は、
図6に示すように、入力軸20のうちエンジン11側(
図6の右側)を覆っている。このケース60は、カップリング40を囲む円筒状の円環部61と、円環部61の底部分(
図6の左端部分)から平面状に広がる平面部62とを有している。円環部61には、
図4に示すように、エンジン11からの熱を放熱してケース60内の雰囲気温度を下げるために、3個の放熱穴61aが形成されている。平面部62には、後述する歯車機構70の第1出力軸71、第2出力軸72、入力ギヤ73、各アイドルギヤ74,75,76,77を回転可能に支持するベアリングBr2が組付けられている。
【0032】
歯車機構70は、エンジン11から入力軸20に伝達された動力を、油圧ポンプ14と冷却液ポンプ15と潤滑油ポンプ16とに伝達するものである。この歯車機構70は、
図6に示すように、径方向の一方側(
図6の下側)に第1出力軸71を有し、径外方向の他方側(
図6の上側)に第2出力軸72を有し、入力軸20の周りに一体回転可能に組付けられた入力ギヤ73とを有している。
【0033】
第1出力軸71は、発電機12側(
図6の左側)で油圧ポンプ14の入力軸(図示省略)と連結すると共に、エンジン11側(
図6の右側)で冷却液ポンプ15の入力軸(図示省略)と連結している。そして、第1出力軸71は第1アイドルギヤ74と噛合し、第1アイドルギヤ74は第2アイドルギヤ75と噛合し、第2アイドルギヤ75は入力ギヤ73と噛合している。こうして、エンジン11から入力軸20に伝達された動力が、入力ギヤ73、第2アイドルギヤ75、第1アイドルギヤ74、第1出力軸71を介して、油圧ポンプ14と冷却液ポンプ15とに伝達されるようになっている。
【0034】
第2出力軸72は、エンジン11側(
図6の右側)で潤滑油ポンプ16の入力軸16aと連結している。そして、第2出力軸72は第3アイドルギヤ76と噛合し、第3アイドルギヤ76は第4アイドルギヤ77と噛合し、第4アイドルギヤ77は入力ギヤ73と噛合している。こうして、エンジン11から入力軸20に伝達された動力が、入力ギヤ73、第4アイドルギヤ77、第3アイドルギヤ76、第2出力軸72を介して、潤滑油ポンプ16に伝達されるようになっている。
【0035】
第2ケース80は、
図6に示すように、入力軸20のうち発電機12側(
図6の左側)を覆っている。第2ケース80は、出力フランジ90を囲む円筒状の円環部81と、円環部81の底部分(
図6の右端部分)から平面状に広がる平面部82とを有している。平面部82には、歯車機構70の第1出力軸71、第2出力軸72、入力ギヤ73、各アイドルギヤ74,75,76,77を回転可能に支持するベアリングBr2が組付けられている。出力フランジ90は、発電機12の回転軸12aを組付けていて、ボルト91を介して入力軸20に一体回転可能に連結されている。こうして、入力軸20と発電機12とが連結していて、エンジン11の動力が入力軸20を介して発電機12へ伝達される。
【0036】
また、第2ケース80は、
図7に示すように、平面部82の径内方端でベアリングBr3を保持していて、ベアリングBr3を介して入力軸20を回転可能に支持している。そして、ベアリングBr3より大気側(
図7の左側)で、第2ケース80の平面部82と入力軸20との間に、オイルシール57が組付けられている。オイルシール57は、大気側(
図7の左側)に潤滑油が漏れることを防止するものであり、ダストリップ部を有していないシングルリップ型のシール部材である。即ち、オイルシール57より油側(
図7の右側)には、ベアリングBr3等の潤滑を良くするための潤滑油が封止されていて、オイルシール57のシールリップ部57aがこの潤滑油の漏れを防止している。このオイルシール57が本発明の「第1シール部材」に相当し、第2ケース80が本発明の「カバー部材」に相当する。
【0037】
ここで、トランスファ13に接続されている潤滑油ポンプ16の機能について説明する。潤滑油ポンプ16は、エンジン11の動力によって駆動して、
図4に示すように、各ポートに潤滑油を吐出するようになっている。第1ポートP1は、潤滑油ポンプ16近傍の歯車機構70の各歯面及びベアリングBr2に潤滑油を送り込むためのポートであり、潤滑油が潤滑油ポンプ16から配管h1と分岐管b1と配管h2を通って第1ポートP1に送り込まれる。第2ポートP2は、油圧ポンプ14近傍の歯車機構70の各歯面及びベアリングBr2に潤滑油を送り込むためのポートであり、潤滑油が潤滑油ポンプ16から配管h1と分岐管b1と配管h3と分岐管b2を通って第2ポートP2に送り込まれる。第3ポートP3は、冷却液ポンプ15のスプライン嵌合部に潤滑油を送り込むためのポートであり、潤滑油が潤滑油ポンプ16から配管h1と分岐管b1と配管h3と分岐管b2と配管h4を通って第3ポートP3に送り込まれる。
【0038】
図8は、
図4のD−F線に沿った断面図である。
図8に示すように、ケース60の平面部62と第2ケース80の平面部82との間に、油溜り63が形成されている。この油溜り63は、各ポートに送り込まれた潤滑油が対象となる部分を潤滑した後に、重力によって落ちてきて溜まったものである。なお、
図8の右側が鉛直方向下側である。こうして、
図4に示すように、潤滑油ポンプ16は、油溜り63で溜まっている潤滑油を、サクションポートP6からストレーナ64及び配管h5を通して吸い込み、上述した各配管h1〜h4等へ吐出するようになっている。なお、ストレーナ64は、潤滑油に含まれる不純物を濾しとって取り除くものである。
【0039】
ところで、本実施形態では、エンジン11のトルクの変動を抑えるために、カップリング40がゴム製で構成されている。しかし、使用しているゴム製のカップリング40は耐熱性が比較的低いものであり、エンジン11からの熱がケース60内にこもると、カップリング40が損傷するおそれがある。そこで、上述したように、ケース60の円環部61に、エンジン11からの熱を放熱する放熱穴61a(
図4参照)を形成しているが、この場合に以下の問題点がある。
【0040】
電動キャリヤ1(動力装置10)が用いられる製鉄所や造船所等では、ダスト(鉄粉、砂埃、ゴムの摩耗片等の粉塵)が多く発生するため、放熱穴61aからケース60の内側にダストが多く侵入することになる。これに対して、従来では、入力軸カバー50とブッシュ56(入力軸20)との間に、ダブルリップ型のシール部材(ダストリップ付オイルシール)を組付け、第2ケース80の平面部82の径内方端と入力軸20との間に、ダブルリップ型のシール部材を組付けていた。これにより、シールリップ部で潤滑油の漏れを防止すると共に、ダストリップ部でダストの侵入を防止するようになっていた(
図15参照)。
【0041】
しかしながら、入力軸20は高温度の状況で高速回転するため、入力軸20を締付けるシールリップ部には、ブリスタBR(
図16(B)参照)が生じることがあった。このブリスタBRは、入力軸20の温度上昇及びシールリップ部の摺動面の温度上昇が原因で発生するものである。即ち、シールリップ部の近傍で封止されている潤滑油が高温になって蒸発し、シールリップ部の大気側の表面に侵入拡散する。その結果、大気側の表面がふくれて、ブリスタBRになる。こうして、ブリスタBRが発生すると、シールリップ部が入力軸20を締付ける緊迫力が安定しなくなり、封止されている潤滑油がシールリップ部からにじみ出るように漏れ出てくるという問題点があった。
【0042】
ここで、ダブルリップ型のシール部材は、入力軸20を締付ける緊迫力が比較的大きくて、シールリップ部の摺動による発熱が大きいことによってブリスタBRが発生し易くなっていると考えられる。また、シールリップ部とダストリップ部の間で熱が逃げ難くて、シールリップ部の温度が上昇して、ブリスタBRが発生し易くなっていると考えられる。よって、本実施形態では、上述したように、ダブルリップ型のシール部材に替えて、緊迫力が比較的小さいシングルリップ型のシール部材であるオイルシール53,57を用いている。しかし、オイルシール53,57では、ダストリップ部が無いためダストの侵入を防止することができない。そこで、本実施形態では、以下に示すように、シングルリップ型のオイルシール53,57を用いつつ、ダストの侵入を防止し、且つブリスタBRの発生を抑制するように構成されている。
【0043】
本実施形態では、トランスファ13に、上述した第1ポートP1、第2ポートP2、第3ポートP3の他に、第4ポートP4及び第5ポートP5が新たに設けられている。第4ポートP4は、オイルシール53とベアリングBr1の間に潤滑油を送り込むためのポートであり、
図4に示すように、配管h2から分岐して第4ポートP4へ延びる潤滑用配管h6が新たに設けられている。この潤滑用配管h6は、
図6に示すように、ケース60の円環部61を貫通するようにキャップ部材65を用いて円環部61に取付けられていて、
図7に示すように、その先端がオイルシール53とベアリングBr1の間にまで延びている。これにより、潤滑油ポンプ16から吐出される潤滑油は、配管h1と分岐管b1と配管h2と潤滑用配管h6を通ってオイルシール53とベアリングBr1の間に送り込まれ、オイルシール53及びベアリングBr1は潤滑油で直接潤滑されることになる。
【0044】
また、第5ポートP5は、オイルシール57とベアリングBr3の間に潤滑油を送り込むためのポートであり、
図5に示すように、分岐管b1から分岐して第5ポートP5へ延びる潤滑用配管h7が新たに設けられている。この潤滑用配管h7は、
図6に示すように、第2ケース80の円環部81を貫通するようにキャップ部材66を用いて円環部81に取付けられていて、
図7に示すように、その先端がオイルシール57とベアリングBr3の間にまで延びている。これにより、潤滑油ポンプ16から吐出される潤滑油は、配管h1と分岐管b1と潤滑用配管h7を通ってオイルシール57とベアリングBr3の間に送り込まれ、オイルシール57及びベアリングBr3は潤滑油で直接潤滑されることになる。
【0045】
こうして、オイルシール53,57では、潤滑用配管h6,h7から送り込まれる潤滑油によって、潤滑性能が改善される。更に、ダブルリップ型のシール部材に比べて入力軸20を締付ける緊迫力が小さくなると共に、ダブルリップ型のシール部材のようにシールリップ部とダブルリップ部の間で熱が逃げ難くなることがない。これにより、シールリップ部53a,57aの摺動面が高速回転する入力軸20に対して発熱し難くなる。このため、シールリップ部53a,57aの近傍で封止されている潤滑油の温度の上昇が抑えられ、その潤滑油の蒸発が抑えられる。この結果、潤滑油のシールリップ部53a,57aへの侵入拡散が抑えられ、シールリップ部53a,57aでブリスタBRの発生を抑制することができる。
【0046】
一方、本実施形態では、放熱穴61aから侵入するダストに対しては、以下のように対処している。
図7に示すように、オイルシール53より大気側(
図7の右側)で、入力軸カバー50の第2カバー52とブッシュ56(入力軸20)との間にラビリンスシール58が組付けられている。このラビリンスシール58では、外輪が第2カバー52に組付けられ、内輪がブッシュ56に組付けられていて、これら外輪と内輪の間でラビリンス溝が形成されている。これにより、放熱穴61aから侵入したダストがラビリンスシール58より内側(
図7の左側)に侵入しようとしても、ラビリンス溝によって阻まれて、高速回転する内輪によって吹き飛ばされる。こうして、オイルシール53より大気側でダストの侵入を防止できるようになっている。このラビリンスシール58が、本発明の「第2シール部材」に相当する。
【0047】
また、オイルシール57より大気側(
図7の左側)で、第2ケース80の平面部82の径内方端と入力軸20との間にラビリンスリング59が組付けられている。このラビリンスリング59では、軸方向(
図7の左右方向)に近接した複数のリングが入力軸20に組付けられていて、これらリングと平面部82の径内方端の間でラビリンス溝が形成されている。これにより、ダストがラビリンスリング59より内側(
図7の右側)に侵入しようとしても、ラビリンス溝によって阻まれて、高速回転するリングによって吹き飛ばされる。こうして、オイルシール57より大気側でダストの侵入を防止できるようになっている。このラビリンスリング59が、本発明の「第2シール部材」に相当する。
【0048】
そして、本実施形態では、ラビリンスシール58、ラビリンスリング59が、ラビリンス溝によって非接触でダストの侵入を防止する点に特徴がある。即ち、仮に接触式のダストシールでダストの侵入を防止しようとすると、入力軸20の高速回転に伴い、ダストシールの摺動摩擦によってブッシュ56及び入力軸20の温度が上昇する。これにより、ブッシュ56及び入力軸20を締付けるオイルシール53,57のシールリップ部53a,57aの温度が上昇してしまい、ブリスタBRが発生し易い状況になる。これに対して、本実施形態では、ラビリンスシール58、ラビリンスリング59が、非接触でダストの侵入を防止することで、ブッシュ56及び入力軸20の温度上昇を抑制できる。これにより、シールリップ部53a,57aの温度上昇も抑制でき、結果として、ブリスタBRの発生を抑制できるようになっている。
【0049】
また、本実施形態では、ラビリンスシール58より大気側で、入力軸カバー50の第2カバー52と円筒ハブ30の間に、入力軸20の周方向に凹凸状に嵌合するラビリンス嵌合部100が設けられている。具体的に、このラビリンス嵌合部100は、第2カバー52のうち軸方向の大気側(
図7右側)へ円環状に突出する凸部52aと、円筒ハブ30のうち軸方向の大気側へ円環状に窪んでいる凹部30aとによって形成されている。これにより、ダストが放熱穴61aから侵入して、ラビリンス嵌合部100に入り込もうとしても、円筒ハブ30の回転によって吹き飛ばされる。この結果、ダストがラビリンスシール58に到達する前段階で、ダストの侵入を防止できる。つまり、ラビリンス嵌合部100と、ラビリンスシール58とによって、二重でダストの侵入を防止できるようになっている。
【0050】
第1実施形態の作用効果について説明する。
第1実施形態の動力装置10によれば、オイルシール53,57がシングルリップ型のシール部材であるため、ダブルリップ型のシール部材に比べて入力軸20を締付ける緊迫力が小さく、シールリップ部53a,57aの摺動による発熱を抑えることができる。更に、潤滑用配管h6,h7が、潤滑油ポンプ16から潤滑油をオイルシール53,57とベアリングBr1,Br3の間に送り込むため、オイルシール53,57では、送り込まれる潤滑油によって潤滑性能が改善されて、シールリップ部53a,57aの摺動面が発熱し難くなる。これにより、封止された潤滑油が高温になり難くて、シールリップ部53a,57aに侵入拡散することが抑えられ、ブリスタBRの発生を抑制できる。
【0051】
一方、ダスト対策においては、オイルシール53,57より大気側に組付けられたラビリンスシール58,ラビリンスリング59が、ラビリンス溝によってダストの侵入を防止できる。そして、ラビリンスシール58,ラビリンスリング59は、ラビリンス溝によって非接触でダストの侵入を防止するため、摺動による発熱が生じない。このため、ラビリンスシール58,ラビリンスリング59に接触するブッシュ56,入力軸20の温度上昇が抑制され、入力軸20を締付けるシールリップ部53a,57aの温度上昇も抑制されることになる。従って、接触式のオイルシールを用いずに、非接触式のラビリンスシール58,ラビリンスリング59を用いることでも、ブリスタBRの発生を抑制することになり、オイルシール53,57で油漏れを防止することができる。この結果、オイルシール53,57の寿命を延ばすことができ、トランスファ13の整備周期を長くすることができる。
【0052】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の動力装置10Aについて、
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は、動力装置10Aの平面図であり、
図10は、
図9に示した送風機17とトランスファ13の関係を説明するための図である。なお、
図10は、
図9に示した動力装置10AをG−G線から見た図である。
図9及び
図10に示すように、動力装置10Aには、送風機17と、この送風機17に接続されるノズル18とダクト19とが設けられている。
【0053】
送風機17は、吸引した外気をノズル18からトランスファ13のケース60の放熱穴61aに送り込むものである。このため、ノズル18は、ケース60の放熱穴61aに向かって延びていて、基端18aが送風機17に接続されていて、先端18bがケース60の下側の放熱穴61a(
図8参照)近傍に配置されている。ダクト19は、できるだけエンジン11の熱で温められていない外気を吸引するものである。言い換えると、送風機17の近傍の外気は、エンジン11の熱で温められている。このため、ダクト19の吸引口19aは、エンジン11に対して送風機17より遠く離れた位置に設けられていて、ダクト19の接続口19bが送風機17に取付けられている。そして、ダクト19の吸引口19aには、エアクリーナECが取付けられている。
【0054】
エアクリーナECは、ダクト19が吸引する外気からダスト(鉄粉、砂埃、ゴムの摩耗片等の粉塵)を取り除くものである。これにより、できるだけ綺麗な外気が放熱穴61aからケース60の内部に送り込まれ、ダストがラビリンスシール58の方へ侵入することを防止している。第2実施形態の動力装置10Aのその他の構成は、上記した第1実施形態の動力装置10の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0055】
第2実施形態の作用効果について説明する。
第2実施形態の動力装置10Aによれば、送風機17がダクト19の吸引口19aから外気を吸引し、吸引した外気をノズル18の先端18bからケース60の放熱穴61aへ送り込む。これにより、ケース60内に外気が強制的に送り込まれるため、ケース60内の雰囲気温度を下げることができる。特に、ダクト19の吸引口19aは、エンジン11から遠く離れた位置にある。このため、送風機17の周辺の外気に比べて、ダクト19の吸引口19aの周りの外気はエンジン11の熱によってほとんど温められていない。従って、比較的温度が低い外気をケース60内に送り込むことができ、ケース60の雰囲気温度をより効果的に下げることができる。従って、入力軸20の温度上昇、及びオイルシール53,57のシールリップ部53a,57aの温度上昇を抑制することができ、シールリップ部53a,57aのブリスタBRの発生を効果的に抑制できる。第2実施形態のその他の作用効果は、上記した第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0056】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態の動力装置10Bについて、
図11乃至
図13を参照して説明する。
図11は、動力装置10Bの平面図であり、
図12は、
図11に示した動力装置10Bを下側から見た側面図であり、
図13は、
図12のH−H線から見た図である。
図11及び
図12に示すように、エンジン11に対して発電機12と反対側(
図11及び
図12の左側)に送風ファン21が配置され、この送風ファン21の正面側(
図11及び
図12の左側)にラジエータ22が配置されている。送風ファン21は、エンジン11の出力軸11aに連結されていて、エンジン11の動力によって回転駆動するようになっている。ラジエータ22は、エンジン11を流れる冷却水を冷却するものであり、送風ファン21から吸引される外気を利用して冷却水を冷却している。
【0057】
そして、この動力装置10Bには、オイルクーラ23が新たに設けられている。このオイルクーラ23は、潤滑油ポンプ16から送り込まれる潤滑油を冷却するものである。そして、オイルクーラ23は、ラジエータ22の近傍であって、ラジエータ22の正面側(
図11及び
図12の左側)に配置されている。こうして、オイルクーラ23及びラジエータ22は、共に送風ファン21から吸引される外気に触れる位置に配置されている。
【0058】
また、この動力装置10Bでは、潤滑油を冷却するオイルクーラ23を新たに設けたため、潤滑油ポンプ16から潤滑油が流れるルートが、第1実施形態の動力装置10と異なっている。即ち、
図13に示すように、潤滑油ポンプ16が吐出した潤滑油は、バイパス管h8を通ってバイパスバルブBVへ流れ込むようになっている。そして、
図11及び
図12に示すように、バイパスバルブBVから送り配管h9がオイルクーラ23に向かって延びていて、送り配管h9の先端がオイルクーラ23の流入ポートP7に接続されている。そして、オイルクーラ23の流出ポートP8から戻り配管h10がバイパスバルブBVに向かって延びていて、バイパスバルブBVへ戻ってきた潤滑油がバイパス管h11を通って分岐管b1へ流れ込むようになっている。
【0059】
こうして、この動力装置10Bでは、油溜り63で溜まっている潤滑油が、サクションポートP6、ストレーナ64、配管h5、潤滑油ポンプ16、バイパス管h8、バイパスバルブBV、送り配管h9、オイルクーラ23、戻り配管h10、バイパスバルブBV、バイパス管h11、分岐管b1、潤滑用配管h6,h7を通って、再び油溜り63へ流れ込む。つまり、循環経路ZKが形成されていて、潤滑用配管h6,h7から送り込んだ潤滑油は油溜り63に送り込まれ、油溜り63の潤滑油が潤滑油ポンプ16を通ってオイルクーラ23に送り込まれて冷却され、冷却された潤滑油が潤滑用配管h6,h7に再び送り込まれる。第3実施形態の動力装置10Bのその他の構成は、上記した第1実施形態の動力装置10の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0060】
第3実施形態の作用効果について説明する。
第3実施形態の動力装置10Bによれば、オイルクーラ23が、循環経路ZKで流れる潤滑油を常に冷却する。これにより、オイルシール53,57とベアリングBr1,Br3の間では、常に冷却された潤滑油が送り込まれる。この結果、オイルシール53,57のシールリップ部53a,57aの温度上昇を抑制でき、ブリスタBRの発生を効果的に抑制できる。
【0061】
また、ラジエータ22及びオイルクーラ23は、送風ファン21から吸気される外気に触れる位置に配置されている。このため、ラジエータ22が送風ファン21から吸気される外気を利用して冷却水を冷却すると共に、オイルクーラ23が送風ファン21から吸気される外気を利用して潤滑油を冷却する。従って、オイルクーラ23に対して専用のファンを設ける必要がなくて、一つの送風ファン21を利用することで構造の簡素化を図ることができる。第3実施形態のその他の作用効果は、上記した第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0062】
以上、本発明に係る電動キャリヤ用動力装置の各実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
各実施形態では、トランスファ13の歯車機構70よりエンジン11側に、オイルシール53とラビリンスシール58を設け、トランスファ13の歯車機構70より発電機側12側に、オイルシール57とラビリンスリング59を設けた。即ち、エンジン11側及び発電機側12の両方に、本発明の「第1シール部材」及び「第2シール部材」を設けた。しかしながら、エンジン11側及び発電機側12の何れか一方側に、本発明の「第1シール部材」及び「第2シール部材」を設け、他方側には別のシール部材を設けても良い。
【0063】
また、各実施形態において、入力軸カバー50の第2カバー52と円筒ハブ30の間にラビリンス嵌合部100を設けたが、このラビリンス嵌合部100を設けなくても良い。
また、各実施形態において、カップリング40がゴム製であるが、カップリング40の材質はゴムに限定されるものではなく、適宜変更可能であり、例えば樹脂であっても良い。
また、各実施形態では、エンジン11と入力軸20を連結する連結部材が、円筒ハブ30とカップリング40の二部材で構成されているが、連結部材が一部材又は三部材以上で構成されていても良い。
また、各実施形態では、入力軸カバー50は第1カバー51と第2カバー52の二部材で構成されているが、入力軸カバー50は一部材又は三部材以上で構成されていても良い。
【0064】
また、各実施形態では、油圧ポンプ14と冷却液ポンプ15と潤滑油ポンプ16とをトランスファ13に接続して、それら油圧ポンプ14と冷却液ポンプ15と潤滑油ポンプ16とがエンジン11の動力により駆動する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、油圧ポンプ14、冷却液ポンプ15に換えて他の装置をトランスファ13に接続しても良く、油圧ポンプ14、冷却液ポンプ15がなくても良い。
また、第2実施形態では、送風機17とエアクリーナECを
図9に示す位置に配置したが、
図9に示す位置に限られるものではなく、適宜変更可能である。例えば、送風機17を発電機12の上部に配置し、エアクリーナECを発電機12の後部(
図9の左側)に配置しても良い。
また、第3実施形態では、送風ファン21が吸込型のファンであるが、吐出型のファンであっても良い。また、ラジエータ22とオイルクーラ23を
図12に示す位置に配置したが、
図12に示す位置に限られるものではなく、適宜変更可能である。例えば、ラジエータ22とオイルクーラ23を
図12に示す配列から入れ替えても良い。