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特開2015-215934符号化装置、復号化装置、光情報記録再生装置、符号化方法、復号化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-215934(P2015-215934A)
(43)【公開日】2015年12月3日
(54)【発明の名称】符号化装置、復号化装置、光情報記録再生装置、符号化方法、復号化方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 20/18 20060101AFI20151106BHJP
   H03M 13/29 20060101ALI20151106BHJP
【FI】
   G11B20/18 570E
   G11B20/18 536C
   H03M13/29
   G11B20/18 572C
   G11B20/18 572F
   G11B20/18 512C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-99520(P2014-99520)
(22)【出願日】2014年5月13日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLU―RAY DISC
(71)【出願人】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(71)【出願人】
【識別番号】509189444
【氏名又は名称】日立コンシューマエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】菊川 敦
【テーマコード(参考)】
5J065
【Fターム(参考)】
5J065AD11
5J065AH20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光情報記録再生における玉突きエラーに対するエラー訂正能力を向上させる符号化装置、復号化装置、光情報記録再生装置、符号化方法、復号化方法を提供する。
【解決手段】ユーザデータ行列111から生成した外符号行列112の各行を符号変調してチャネルビットワード行列113を生成し、チャネルビットワード行列113の各列についてのエラー訂正符号検査記号P(i,j)を用いて内符号行列114を生成する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザデータシンボル列をユーザデータ行列に整列するフレーム分析器、
前記ユーザデータ行列の各行について検査記号を求め、前記各行についての検査記号を前記各行に連結することにより前記ユーザデータ行列の外符号行列を得る第1符号化器、
前記外符号行列の各行について符号変調を実施してチャネルビットワード行列を得る変調器、
前記チャネルビットワード行列の各列について検査記号を求め、前記各列についての検査記号を前記各列に連結することにより前記チャネルビットワード行列の内符号行列を得る第2符号化器、
を備えることを特徴とする符号化装置。
【請求項2】
前記第2符号化器は、前記チャネルビットワード行列を列方向に等ビット幅で取り出したビット列毎に検査記号を求め、その検査記号を列方向に連結することにより、各列についてのエラー訂正符号を求める
ことを特徴とする請求項1記載の符号化装置。
【請求項3】
前記変調器は、前記チャネルビットワード行列の各列について求めた検査記号を前記チャネルビットワード行列と同じ最短ラン長に制限するように符号変調する
ことを特徴とする請求項1記載の符号化装置。
【請求項4】
前記第2符号化器は、前記各列についてのエラー訂正符号として2元BCH符号を用いる
ことを特徴とする請求項1記載の符号化装置。
【請求項5】
前記第1符号化器が前記各行について求める検査符号、または前記第2符号化器が前記各列について求めるエラー訂正符号のうち少なくともいずれかは、リードソロモン符号である
ことを特徴とする請求項1記載の符号化装置。
【請求項6】
前記変調器は、前記外符号行列の各行について符号変調を実施し、NRZ方式で出力する
ことを特徴とする請求項1記載の符号化装置。
【請求項7】
請求項1記載の符号化装置によって生成された前記内符号行列を復号化する復号化装置であって、
前記内符号行列から前記チャネルビットワード行列のみを取り出して符号復調を実施することにより前記外符号行列を得る第1復調器、
前記第1復調器が得た前記外符号行列の各行についての検査符号を復号化し、前記外符号行列の各行のエラーを訂正する第1復号器、
前記内符号行列の各列についてのエラー訂正符号を復号化し、前記内符号行列の各列のエラーを訂正する第2復号器、
前記第2復号器がエラー訂正を実施した後の前記チャネルビットワード行列に対して符号復調を実施することにより前記外符号行列を取得し、前記外符号行列から前記ユーザデータ行列を取り出す第2復調器、
を備えることを特徴とする復号化装置。
【請求項8】
前記第1復号器が前記外符号行列の各行のエラーを訂正する際にいずれかの行において復号エラーが発生した場合、前記第1復号器は前記復号エラーが発生していない行についての復号結果をメモリに格納するとともに前記復号エラーが発生した行の復号前の符号列を前記メモリに格納し、
前記第2復号器は、前記第1復号器による復号エラーが発生している行のうち前記変調器が符号変調を実施することにより生じているビットエッジ部分を特定し、そのビットエッジ部分の前後ビットを含む複数ビットに対して前記内符号行列の各列についてのエラー訂正符号を用いてエラー訂正を実施し、復号エラーが発生しなかった場合はそのエラー訂正結果を前記第1復号器によって復号エラーが発生した行に対して反映し、復号エラーが発生した場合はそのエラー訂正結果を反映せずスキップし、
前記第1復号器は、前記第2復号器がエラー訂正を実施した後の行について、前記外符号行列の各行についてのエラー訂正符号を用いて改めてエラー訂正を実施する
ことを特徴とする請求項7記載の復号化装置。
【請求項9】
前記第2復号器は、前記内符号行列の各列についてのエラー訂正符号を用いて消失訂正を実施する
ことを特徴とする請求項7記載の復号化装置。
【請求項10】
前記第1復号器が前記外符号行列の各行についてのエラー訂正符号を用いて改めてエラー訂正を実施してもなお復号エラーが発生した場合、前記第2復号器は、前記前後ビットを含む複数ビットに対して前記内符号行列の各列についてのエラー訂正符号を用いてエラー訂正を実施した結果復号エラーが発生した列についてのみ消失訂正を実施する
ことを特徴とする請求項9記載の復号化装置。
【請求項11】
請求項1記載の符号化装置、
請求項7記載の復号化装置、
を備えたことを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項12】
ユーザデータシンボル列をユーザデータ行列に整列するフレーム分析ステップ、
前記ユーザデータ行列の各行について検査記号を求め、前記各行についての検査記号を前記各行に連結することにより前記ユーザデータ行列の外符号行列を得る第1符号化ステップ、
前記外符号行列の各行について符号変調を実施してチャネルビットワード行列を得る変調ステップ、
前記チャネルビットワード行列の各列について検査記号を求め、前記各列についての検査記号を前記各列に連結することにより前記チャネルビットワード行列の内符号行列を得る第2符号化ステップ、
を有することを特徴とする符号化方法。
【請求項13】
請求項12記載の符号化方法によって生成された前記内符号行列を復号化する復号化方法であって、
前記内符号行列から前記チャネルビットワード行列のみを取り出して符号復調を実施することにより前記外符号行列を得る復調ステップ、
前記復調ステップにおいて得た前記外符号行列の各行についてのエラー訂正符号を復号化することにより、前記外符号行列の各行のエラーを訂正する復号ステップ、
を有することを特徴とする復号化方法。
【請求項14】
請求項12記載の符号化方法によって生成された前記内符号行列を復号化する復号化方法であって、
前記内符号行列の各列についてのエラー訂正符号を復号化することにより、前記内符号行列の各列のエラーを訂正する復号ステップ、
前記復号ステップにおいてエラー訂正を実施した後の前記チャネルビットワード行列に対して符号復調を実施することにより前記外符号行列を取得し、前記外符号行列から前記ユーザデータ行列を取り出す復調ステップ、
を有することを特徴とする復号化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて情報を記録する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下の説明における用語の一部は、Blu−ray Disc(BD)において使用される表現を用いている。これらは、BD以外のシステムにおいては別の呼称が用いられる場合があるが、当業者であれば容易に読み替えることができるため、以下ではBDシステムにおける用語を用いて説明する。
【0003】
光ディスクの記録容量の拡大は、光源の短波長化と対物レンズの開口数(NA)の増大に加えてディスク1枚当たりの記録層数を増やすことにより、主に実現されてきた。BDにおいては、青色半導体レーザと、NAが0.85の高NA対物レンズを用いて、2層で50GBの記録容量を実現している。しかし、記録再生光の短波化や対物レンズの高NA化は限界に近い状況にある。
【0004】
かかる状況下で、光ディスク記録容量の更なる大容量化を図る方法として、チャネルビット長を単純に縮小することにより線記録密度を向上させ、面記録容量を増やすことが考えられる。これと併せて記録層の数を3〜4に増やすことにより、100GB以上の記録容量を有するBDXLの実用化に至った。しかし、この方法では符号間干渉が強まり、短いマークまたはスペースの分解能が減少する。BDXLでは最短マークおよびスペースの分解能は0となっている。ここから更にチャネルビット長を短縮していくと、2番目に短いマークおよびスペースの分解能も0となり、PRML法による復号処理が破綻することは、当業者であれば容易に理解できる。すなわち、この方法による大幅な記録密度向上は限界がある。
【0005】
光ディスクの記録容量を増やすもう1つの方法として符号変調がある。その1種は、既にBDなどにおいて使用されている。符号変調は、いくつかの効果を発揮することを期待できる。その中でも線記録密度向上効果は最も期待されるものの1つである。この目的のために用いられるものとして、ラン長制限符号が知られている。
【0006】
光ディスクにおいては、記録媒体の物理的な分解能よりも再生に用いる光スポット直径の方が遥かに大きい。そのため、記録するバイナリデータ(本明細書中ではユーザデータと呼ぶ)をそのまま記録マークの有無に対応させて記録した場合、記録するビット間隔が光スポットの直径よりも小さくなる可能性がある。このとき、隣接ビットとの間の符号間干渉により急激に符号判別が困難になる。その結果、記録媒体の分解能を有効に利用できない。
【0007】
これに対しラン長制限符号においては、ユーザデータを一旦マークおよびスペースの長さで表現される符号列に変換してから記録する。マークおよびスペースの長さ単位(チャネルビット長)を光スポット系よりも小さくとったとしても、再生時に時間軸上でマークおよびスペースの長さを判別することができる。ただし、最短マークおよびスペースは、十分な分解能で再生できるように2チャネルビット以上の長さを持つものとする。この様にすることにより、同じ空間分解能を有する光学系を用いてもより高い線記録密度を実現することができる。
【0008】
ラン長制限符号を用いて情報を記録する場合、記録マークおよびスペースの両方の長さについて論じるのが本来正しい。しかし以下においては、記録マークとスペースを同列に扱う場合には、表現の簡単化のため混乱を生じない範囲でマークに関してのみ説明することにする。例えば、「最短マークの分解能」という表現は、「最短マークおよびスペースの分解能」を意味する。
【0009】
ラン長制限符号には、主に2つの系統のものが知られている。1つは列挙法に基づく固定長符号であり、もう1つは可変長符号である。今日、代表的な光ディスクであるBDにおいて使用されているラン長制限符号は、最短ラン長が1の可変長符号であり、符号変調無しの場合と比べて4/3倍の線記録密度を実現している。
【0010】
最短ラン長制限を満たしつつ、ユーザビットワードに対応する固定長チャネルビットワードを発生させるためのアルゴリズムとして、下記非特許文献1に記載のものがある。当業者であれば、このアルゴリズムは容易に理解できるので、ここでは詳述しない。このアルゴリズムによれば、与えられた固定長ユーザビットワードから算術的に固定長チャネルビットワードを求めることができる(チャネルビットワード発生)。同様に、簡単な算術によりチャネルビットワードからそれに対応するユーザデータワードを求めることができる(チャネルビットワード復調)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】IEEE TRANSACTIONS ON INFORMATION THEORY, VOL. 43, NO. 5, 1389, SEPTEMBER 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記非特許文献1記載のような固定長変調においては、チャネルビットワードの長さが一定なので、チャネルビットワード境界付近で生じたエラーは伝搬しにくい点において有利である。しかし、線記録密度を高めるために最短ラン長を長くすると、エラーが隣接ビットへ伝搬する玉突き状のエラーが生じる可能性が高まる。
【0013】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、光情報記録再生における玉突きエラーに対するエラー訂正能力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る符号化装置は、ユーザデータ行列から生成した外符号行列の各行を符号変調してチャネルビットワード行列を生成し、前記チャネルビットワード行列の各列についてのエラー訂正符号検査記号を用いて内符号行列を生成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る符号化装置によれば、ユーザデータ行列から生成した外符号行列およびチャネルビットワード行列から生成した内符号行列により、エラー訂正能力を向上させることができる。また、外符号行列をいったん変調してチャネルビットワード行列を生成することにより、チャネルビットデータのエッジ部分が明確になるので、内符号を用いたエラー訂正を実施する箇所を限定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】d=1,2,3,4それぞれの場合における最大のEを示すグラフである。
図2】再生シミュレーションによって観測された玉突きエラーの例を示す。
図3図2に示す(4,21)PPを用いたシミュレーションによって観測された玉突きエラー内に含まれるエッジ数の出現頻度をグラフにしたものである。
図4】データの記録再生過程を図示したものである。
図5】符号変調および復調の過程を図示する。
図6】Bliss法を用いてエラー伝搬の影響を低減する記録生成過程を示す図である。
図7】実施形態1に係る符号化方式を示す図である。
図8】内符号検査記号P(i,j)を求める過程を説明する図である。
図9】内符号の一部のみを用いてエラー訂正を実施する処理の概略を説明する図である。
図10】外符号行列112のいずれか1以上の行において復号エラーが発生している状態におけるエラー訂正処理を説明する図である。
図11図10のフローチャートにおいて用いる復帰用メモリの領域割り当てを説明する図である。
図12】実施形態1で説明した符号化装置および復号化装置の具体的な構成例を示すブロック図である。
図13】本発明に係る光ディスク装置1000の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<エラー伝搬について>
以下では本発明の理解を促進するため、まずエラー伝搬について説明し、その後に本発明の実施形態について説明する。
【0018】
符号変調は、線記録密度を向上させる効果のほか、0または1が過度に連続するのを防ぐ効果など、幾つかの機能を実現することができる。光ディスクにおいては、符号変調処理過程においてラン長制限を課すことにより、スポット径を縮小せずとも符号変換により線記録密度を向上することに最も重きを置いている。BDにおいて使用されている、最短ラン長が1である1−7PP符号は、符号変調なしの場合と比べて4/3倍の線密度を実現している。
【0019】
ラン長制限符号による線記録密度向上率Eは、下記式1によって表される。dとCは、それぞれ最短ラン長と容量(capacity)である。
E=(d+1)C ・・・(式1)
Cは下記式2によって表される。
C=logλ ・・・(式2)
λは、下記式3で表される特性方程式の最大の実根である。kは最大ラン長である。
k+2−zk+1−zk−d+1+1=0 ・・・(式3)
【0020】
図1は、上記各式に基づき、d=1,2,3,4それぞれの場合における最大のEを示すグラフである。BDの場合、E=4/3であるから、例えば400 GB/discを実現するためには、線記録密度をBDと比較して3/2倍にする必要がある。すなわち、E≧2を実現できる(d,k)の組み合せを用いる必要がある。図1に示すグラフによれば、d=4とする必要があることが分かる。上記各式によって求められるEは理論値であり、現実に定義可能な符号変調においては通常これを下回る。
【0021】
符号変調は、符号列集合Aからmiビットの符号を別の符号列集合B内のniビットの符号に1対1に対応させる写像(変換)である(m,n,iは自然数)。実用的な符号変調方式として、可変長符号と列挙法による固定長符号が知られている。
【0022】
固定長符号変調は、非特許文献1に記載されているように、ユーザデータに応じて選択されたラン長制限を満たす固定長のチャネルビットワード同士を、短い接続ワードを介して連結するものである。その際、接続ワード内の各ビットの値は、接続する前後のチャネルビットワードを含めてラン長制限を満たすように選択される。すなわち、接続ビット列はユーザビット列の内容とは無関係に決定されるので、情報の保持には寄与しない。よって、固定長変調符号において符号の効率を上げるには、接続ビット列の占める割合を小さくするためにチャネルビットワードの長さを長くする必要がある。
【0023】
ここで、接続ワードの長さをaとすると、固定長符号変調の実効的な線記録密度向上率Eは、下記式4で与えられる。
={(d+1)m}/{n+a} ・・・(式4)
【0024】
パーシャルレスポンス系においては、振幅の小さいパターンほどエラーを生じ易い。そのため、これまでに開発された変調符号を用いる場合、最短マークの連続出現回数を一定数以下に抑えるような配慮がされることが多い。また、パーシャルレスポンス系においては、ユークリッド距離差が小さいパターン同士ほど誤判別し易い傾向にある。しかしBDXLのように分解能が0となる2Tマークが出現する系においては、ユークリッド距離差が大きくとも、2Tマークを含むことにより誤判別が無視できなくなるパターンが複数存在する。同様の現象は、最短ラン長dを大きくし、かつ最短マーク長をBDXLの最短マーク長相当まで短縮した場合にも起こる。さらに、最短ラン長dが大きい場合には、最短マークに次いで短いマーク長との間の分解能の差が小さい。このため、最短マークに次いで短いマークを含んだパターンなど、より複雑で長い玉突き状(pileup)のエラーが問題となる。
【0025】
図2は、再生シミュレーションによって観測された玉突きエラーの例を示す。再生信号は、光学シミュレーションによって求めた光学応答を元にチャネルビットパターンとの畳み込みにより求めた。チャネルビットパターンは、ランダムなユーザビットワード列に対して「特開2003−273743号公報」に記載されている(4,21)PP符号変調を施したものである。光学応答の計算条件は、スポット光波長=405nm、対物レンズNA=0.85である。チャネルビット長は22.3nmとした。上記条件により、最短マーク長はBDXLの最短マーク長と等しくなる。再生チャネルは、PR(1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1)MLを用いた。
【0026】
図3は、図2に示す(4,21)PPを用いたシミュレーションによって観測された玉突きエラー内に含まれるエッジ数の出現頻度をグラフにしたものである。グラフの横軸は、玉突きエラー内に含まれるエッジ数であり、バーストの長さを表す。単独のエッジシフトであれば1、最短マークの移動は2、となる。図3から明らかなように、(4,21)PPにおいては単独のエッジシフトエラーの比率は小さく、玉突きエラーが大半を占める。中でも連続エラー数が2の場合が最も多く観測される。このように、線記録密度を高めるために最短ラン長の長い変調符号を用いると、発生するエラーの大半が玉突きエラーとなる。
【0027】
図4は、データの記録再生過程を図示したものである。ただし、説明に必要な部分のみを抽出して簡略化してある。符号化器3は、指定された方式でユーザデータから検査記号を算出する。一般には組織化符号(情報部分と検査部分を明確に分離できる符号)が用いられるので、符号化器3の出力はユーザデータに検査記号が付加されたものとみなすことができる。変調器4は、所定の符号変調方式を用いて符号化器3の出力を符号変調する。変調器4の出力は、NRZ(Non Return to Zero)形式のビット列データである。NRZ形式のビット列データは、マークの境界に対応するビットが”1”、それ以外は”0”で表記される。NRZI変換器5は、”1”と”0”がそれぞれマークとスペースに対応するNRZI(Non Return to Zero Inverted)形式に変換する。光ピックアップ2はその信号を光ディスク1に記録する。
【0028】
データを再生するとき、光ピックアップ2は光ディスク1に記録されている信号を光学的に再生し、電気信号に変換する。光スポットの大きさは有限であるから、符号間干渉を生じる。PRML復号器6は、この符号間干渉を解消しながら再生信号からチャネルビット列(NRZI形式)を復号する。NRZ変換器7は、復号して得られたチャネルビット列をNRZI形式からNRZ形式に変換する。復調器8は、NRZ変換器7の出力をバイナリデータに復調する。ここまでの過程において、エラーや時刻ずれを生じていなければ、復調器8の出力は検査記号を付加したユーザデータと一致する。PRML復号過程においてエラー(チャネルビットエラー)を生じた場合、復調器8の出力にも当然エラーが含まれる。復号器9は、このエラーを検出および訂正する。
【0029】
図5は、符号変調および復調の過程を図示する。変調時には、ユーザビット列集合20内の要素であるユーザビット列24は、変換表にしたがってチャネルビット列集合22内の対応するチャネルビット列25へ変換される。ユーザビット列集合20とチャネルビット列集合22は、1対1の写像で結ばれている。すなわち、復調は変調の逆写像である。
【0030】
図5において、ユーザビット列集合20内のある要素24に対応するチャネルビット列集合22内の要素25でチャネルビットエラーを生じた結果、チャネルビット列集合22内の他の要素と同じビット列25’に変化しているものとする。そして、これを復調すると元のユーザビット列とは異なるビット列24’が得られたものとする。この2つのユーザビット列集合の要素同士の符号距離が1以上となる場合が圧倒的に多いことは当業者であれば容易に理解できることである。これが、1つのチャネルビットエラーが複数のユーザビットエラーをもたらすエラー伝搬と呼ばれる現象である。
【0031】
前述のように、固定長変調においては符号効率を上げるためにチャネルワードの長さをなるべく長くしている。それにともない、一度に処理するユーザビット列も長くなっている。よって、エラー伝搬により影響を受ける可能性のあるユーザビットの数が可変長変調よりも多くなる傾向にある。
【0032】
図6は、Bliss法を用いてエラー伝搬の影響を低減する記録生成過程を示す図である。Bliss法は非特許文献1で紹介されている。Bliss法においては、図4に示す過程とは異なり、ユーザデータをまず変調器4を用いて符号変調する。符号化器3は、指定された方式に基づき変調器4の出力の検査記号を算出する。この検査記号は、ラン長制限が課せられていないのでこのままでは記録できない。そこで副変調器10は、符号変調を実施する。ここで適用される最短ラン長制限は、変調器4が課すラン長制限と同じである。連結器11は、ユーザデータおよび検査記号それぞれの変調結果をシリアルに連結する。その後、PRML復号までの過程は図4と同じである。NRZ変換器7はPRML復号器6による復号結果をNRZ形式に変換する。復号器9は、NRZ変換器7の出力を用いてエラー訂正符号を復号し、その結果を復調器8へ送る。復調器8は、ユーザデータに適用した変調符号に即して復調を実施し、ユーザデータを得る。
【0033】
Bliss法はチャネルビットエラーを訂正した後に復調を実施するので、エラー伝搬の発生を大幅に抑圧することができる。しかし、チャネルビット列は冗長度が高いのでエラー訂正符号の効率が実効的に低下するという課題がある。
【0034】
非特許文献1は、検査記号を算出する前に一旦チャネルビット列を符号圧縮しエラー訂正符号の効率を稼ぐ方法についても記載がある。しかしこの手法を用いた場合、検査記号部が情報記号部よりも相対的に情報密度が高くなっているので、検査記号部において生じるエラーの方が情報記号部において生じるエラーよりも影響が大きい。特に光ディスクにおいては、上述の玉突きエラーが検査記号部で発生する可能性があり、その場合、情報密度が高い部分で多くのエラーが発生することになるので、結局エラー訂正符号の効率を十分に上げることは困難となる。
【0035】
<実施の形態1>
図7は、本発明の実施形態1に係る符号化方式を示す図である。本発明は、先に述べた課題を解決するため、玉突きエラーの発生を前提としてこれに対処可能な構造を有するエラー訂正符号を提供する。以下図7を参照して、本発明に係る符号化装置が符号化を実施する過程を説明する。
【0036】
ユーザデータシンボルu(i,j)(i,j:自然数)は、長さsビットのユーザデータビット列から構成される。ユーザデータの処理単位はkKシンボルであるとし、便宜上図7に示すようにk行K列に整列させて取り扱うこととする。k行K列のユーザデータ行列111は、あらかじめ必要に応じてインターリーブなどの処理を施す場合があることは当業者であれば容易に想像できることなので、それらについてはここでは述べない。
【0037】
初めに、ユーザデータ行列111の各行について検査記号v(i,j)を求め、これをユーザデータ行列111の各行に連結して外符号行列112を得る。ここでは検査記号v(i,j)として組織符号のリードソロモン符号を用い、検査記号の長さはN−Kシンボルであるものとする。
【0038】
次に、外符号行列112の各行について符号変調を実施し、チャネルビットワード行列113を得る。符号変調においては固定長符号を用いるものとし、各行はL個のチャネルビットワードC(i,j)に変換される。接続ビット列を除いた変調符号の符号化率をrであるとすると、下記式5の関係が得られる。符号変調を実施する段階で接続ビット列を付加してもよいが、図7の例では接続ビット列は全て長さdの”0”を用いることにしているので、説明の簡易のため図7においては接続ビット列は記載していない。
L=rN ・・・(式5)
【0039】
次に、チャネルビットワード行列113の各列について、内符号検査記号P(i,j)を求め、これをチャネルビットワード行列113の各列に連結することにより、内符号行列114を得る。内符号検査記号P(i,j)の求め方については後述する。以上の過程により、連接符号とみなすことができる内符号行列114を得た。ただし、外符号の符号化と内符号の符号化との間に符号変調を実施する点が、従来の連接符号と異なっている。符号変調を実施する理由については後述する。
【0040】
内符号検査記号P(i,j)はラン長制限を満たしておらず、このままではこれを記録することはできない。そこで、内符号検査記号P(i,j)の各行に対して符号変調を実施し、その結果であるP’(i)をチャネルビットワード行列113に連結し、記録データ行列115を得る。チャネルビットワード行列113を求める際に用いたのと同じ変調符号を用いてもよいし、最短ラン長がチャネルビットワード行列113と同じになれば異なる変調符号を用いてもよい。
【0041】
内符号として例えば2元(n,k)BCH符号を用いることができる。この場合、内符号行列114の内符号検査記号P(i,j)は、実際には外符号行列112の各要素をビット単位に分割してから求めることになる。
【0042】
図8は、内符号検査記号P(i,j)を求める過程を説明する図である。ここでは内符号行列114のj列に着目して図示している。c(l,j,i)とp(l’,j,i)は、それぞれチャネルビットワードC(l,j)と内符号検査記号P(l’,j)の第iビットを表す。つまり、c(l,j,i) とp(l’,j,i)(1≦l≦k,k+1≦l’≦n)をそれぞれ情報記号と検査記号とした2元(n,k)BCHを構成している。この2元BCH符号を構成する内符号行列114の列中からさらに1ビット幅で列方向に取り出したものを内符号ビット列120と呼ぶ。内符号検査記号P(i,j)を求める際に、外符号との間でシンボルを共用したリードソロモン符号を用いることもできる。この場合、外符号と内符号は積符号の一種となる。
【0043】
記録データ行列115は、そのままでは必ずしも整形ではないので、必要に応じて並べ替え、またはダミー要素を付加して整形し、さらに接続ビット列を付加し、フレームを構成する。フレームの構成法については当業者であれば容易に想起できる事項であるから説明を省く。記録する際には、フレームから要素を水平方向に取り出し、NRZI形式に変換し、記録回路系へ送る。以後の処理は、従来の光ディスクドライブと同様である。
【0044】
<実施の形態1:復号処理>
次に、本発明に係る復号化装置がユーザデータを再生する手順を説明する。光ピックアップは、光ディスクから光学的に再生した信号を電気信号に変換する。PRML復号器は、その電気信号をNRZI形式のチャネルビットデータ列に復号する。NRZ変換器は、チャネルビットデータ列をNRZ形式に変換する。さらに以下の手順によりユーザデータ行列111を復号することができる。
【0045】
図7に示した構造の連接符号を復号するには、必ずしも内外両方の符号を復号する必要はなく、エラーの発生数と分布によってはどちらか一方のみでも十分なことが多い。そこで初めに、外符号のみを用いて復号する場合について説明する。
【0046】
外符号のみを用いる場合、内符号検査記号P(i,j)を復調する必要がないので、処理工程を短縮できる。まず記録データ行列115からチャネルビットワード行列113のみを取り出して復調することにより、外符号行列112を得る。次に外符号行列112の行毎に検査記号v(i,j)を復号する。外符号行列112の全ての行において、行内で発生するシンボルエラー数がfloor((N−K)/2)よりも小さければ、行内の全てのエラーを検査記号v(i,j)によって訂正することができる。floor(x)(x>0)は、小数点以下を切り捨てる関数である。したがって、全ての行の復号が終了した時点でユーザデータ行列111を復元できたことになる。エラー訂正範囲を超える数のシンボルエラーが発生した行が存在した場合の処理については後述する。
【0047】
内符号のみを用いる場合、復元された記録データ行列115から内符号検査記号P(i,j)に相当する部分を取り出し復調する。復調された内符号検査記号P(i,j)を記録データ行列115の情報記号部と連結して内符号行列114を復元し、内符号を復号する。図8の例によれば内符号は2元(n,k)BCH符号であるので、内符号行列114の各列中の内符号ビット列120毎に復号する。この際、全ての内符号ビット列120について、それぞれに含まれるビットエラーの数が2元(n,k)BCH符号のエラー訂正能力範囲内であった場合、全ての行の復号が終了した時点でユーザデータ行列111を復元できたことになる。よって、外符号行列112の検査記号v(i,j)に相当する部分については復号する必要がない。
【0048】
<実施の形態1:復号エラー復帰処理>
図7に示した構造の符号は、連接符号の一種であるので、例えばレディ・ロビンソン法を用いることにより、floor((n−k)(N−K)/2)個のエラーを訂正することができるという高いエラー訂正能力を発揮することができる。しかしレディ・ロビンソン法は、計算量が膨大になる課題がある。
【0049】
光ディスクにおいて上記のような高いエラー訂正能力を付与しようとしている理由は、上述したように特に高次変調符号を用いた光ディスク特有の課題である玉突きエラーが短い区間内で複数発生するような場合にも対処できるようにするためである。そこで本発明は、光ディスク固有の問題である玉突きエラーの特性に着目して比較的小さな計算量によって高い訂正能力を発揮させる復号法を提供する。本復号法は、先に説明した復号法においてエラー訂正能力を越えたエラーが発生した場合に適用することが好適であり、エラー数が小さい場合には必ずしも適用する必要はない。
【0050】
先に説明したように、玉突きエラーは複数のエッジが一定方向に移動する現象であるから、時間軸方向に沿って発生する。即ち、図7に示した構造の符号においては、行方向にシンボルエラーが連続する一種の玉突きエラーとなる。よって、比較的短い区間で複数の玉突きエラーが発生すると、外符号行列112のある列に多数のシンボルエラーが集中し、外符号のエラー訂正能力を超えることが比較的起こり易い。とはいえ、このような事態に備えて外符号の訂正能力を強化すると、符号全体としての効率低下を招く。一方、内符号は変調後の冗長度の高いデータに対して構成されているので、これを全て復号する工程を踏むのは効率が悪い。そこで本発明は、玉突きエラーの特性に着目することにより少ない計算量で高い訂正能力を発揮させることを図る。
【0051】
複数の玉突きエラーの発生により、外符号行列112のある行においてエラー訂正能力を超えるシンボルエラーが発生しているものとする。以後、簡単のためにエラー訂正能力を超えるエラーが発生している状態のことを復号エラーと呼ぶ。チャネルビットデータはNRZ表現においては疎である。すなわち、エッジを表す”1”の数は”0”よりも圧倒的に少ない。玉突きエラーの多くは隣接する複数のエッジが同一方向に1時刻分移動していることに着目すると、以下に説明するように内符号の一部のみを復号することにより、当該行のエラーを大幅に減らすことができる。
【0052】
図9は、内符号の一部のみを用いてエラー訂正を実施する処理の概略を説明する図である。図9(a)は、チャネルビットワード行列113の一部をチャネルビット単位で表示した行列である。表示を簡素化するためビット値”1”のみを表示し、ビット値”0”は空白で表示している。図9(a)において、l行目が復号エラーを起こしているものとする。図9(a)においては最短ラン長が4であると仮定しているので、行方向のビット値”1”間には少なくとも”0”が4つ以上ある。したがってチャネルビットワード行列113は非常に疎な行列である。復調エラーを起こしているl行目においては、記録マークのエッジに対応する”1”が出現するのは18チャネルビット中2ヵ所のみである。
【0053】
復号エラーを起こしている状態では、どのエッジ部分がエラーであるかを完全には特定できない。しかし先に述べた様に、エラーは多くの場合、エッジが左右どちらかに1時刻移動している状態に対応しているので、復号エラー行のエッジおよびその前後1時刻を含む内符号を復号することにより、エラーエッジの多くを訂正できることは容易に理解できる。復号エラー行のエッジおよびその前後1時刻を含むチャネルビットワード行列113の部分行列を、ROI(Region Of Interest)121と呼ぶことにする。図9(b)は、ROIと内符号ビット列120との関係を示す。
【0054】
チャネルビットワード行列113は疎であるから、内符号のなかからROIを含むもののみを復号する場合と内符号を全て復号する場合とを比較すると、大幅に計算量を削減できることが明らかである。
【0055】
図10は、外符号行列112のいずれか1以上の行において復号エラーが発生している状態におけるエラー訂正処理を説明する図である。以下図10の各ステップについて説明する。
【0056】
図10:ステップS1000)
復号化装置は、先に説明した手順にしたがって記録データ行列115から内符号行列114を取得し、外符号行列112の外符号を復号する。このとき外符号行列112の1以上の行において復号エラーが発生したものと仮定する。
【0057】
図10:ステップS1001)
復号化装置は、外符号行列112の復号エラーが発生している以外の行について、外符号を復号した結果を符号変調して得た行列Cを復帰用メモリの所定箇所にロードする。行列Cは、チャネルビットワード行列113のうち外符号復号エラーが発生していない行のみを取り出したものに相当する。
【0058】
図10:ステップS1002)
復号化装置は、外符号行列112の復号エラーが発生している行については、外符号を復号する前の行データを復帰用メモリの所定箇所にロードする。
【0059】
図10:ステップS1003)
復号化装置は、PRML復号によって得られた内符号の検査記号相当部P’を復調することにより、内符号検査記号Pを取得する。復号化装置は、検査記号Pを復帰用メモリの所定箇所にロードする。
【0060】
図10:ステップS1004)
復号化装置は、外符号行列112の復号エラーが発生している行のエッジ位置を探し、ROIを決定する。復号化装置は、決定したROIにしたがって、復号する内符号の数Mと位置を決定する。例えば図9で説明したように、エッジビット”1”の前後2ビットを含む3ビット幅にわたって内符号を復号することとしてもよいし、その他適当な固定ビット幅にわたって内符号を復号してもよい。
【0061】
図10:ステップS1005〜S1006)
復号化装置は、ROI内の内符号を1つずつ順次復号する。ROI内の全ての内符号を復号し終えた場合はステップS1009へスキップし(S1005)、それ以外であれば復号を繰り返す(S1006)。
【0062】
図10:ステップS1004〜S1006:補足)
記録データ行列115を生成する過程において、外符号行列112をいったん変調してチャネルビットワード行列113を得るのは、図9で説明したように、本ステップの時点においてチャネルビットワード行列113が疎なビット列となっていることを利用して内符号を復号する処理負荷を抑制するためである。
【0063】
図10:ステップS1007)
復号化装置は、ステップS1006において内符号を復号する際に復号エラーが発生したか否かを判定する。ここでいう復号エラーとは、先に述べたように内符号の訂正能力を超えたエラーが発生していることである。復号エラーが発生していない場合はステップS1008に進む。復号エラーが発生している場合は、そのビットについては内符号の復号結果を用いないこととし、次の内符号に進む。
【0064】
図10:ステップS1008)
復号化装置は、ステップS1006〜S1007において復号エラーが発生しなかった内符号について、その復号結果を反映する。すなわち、外符号が復号エラーを起こしている行に対して内符号の復号結果を上書きする。
【0065】
図10:ステップS1009)
復号化装置は、外符号行列112の復号エラーが発生している行について、改めて外符号を復号することにより、エラー訂正を実施する。本フローチャートを開始する時点においては復号エラーが発生していた行であっても、ステップS1004〜S1008において内符号によりエラーの少なくとも一部が訂正されている場合は、これにより当該行のエラーが外符号のエラー訂正能力範囲内に収まる可能性がある。そこで本ステップにおいて改めて外符号を復号することにより、エラー訂正を再試行することとした。
【0066】
図10:ステップS1000〜S1009:補足その1)
本フローチャートは、外符号を復号した結果、復号エラーが発生した行が複数存在する場合であっても適用することができる。すなわち、そのエラー数が内符号のエラー訂正能力範囲内であればよい。ただし、各ステップの処理は全てのエラー行に対して実施する必要がある。例えばステップS1004においては、各エラー行についてROIを決定する必要がある。
【0067】
図10:ステップS1000〜S1009:補足その2)
外符号を復号した際に復号エラーが発生した行数が内符号のエラー訂正能力よりも多い場合であっても、本フローチャートを用いることができる。外符号のエラー行数が内符号のエラー訂正能力を超えている場合、例えばステップS1008において誤った復号結果が外符号復号結果に対して上書きされる可能性がある。しかしその場合であっても、内符号によってエラーの一部だけでも訂正することができれば、ステップS1009において改めて外符号を復号することによりエラー訂正できる可能性が十分にある。したがって、外符号復号エラーが内符号のエラー訂正能力を超えている場合でも、本フローチャートを用いることを排除するものではない。
【0068】
図10:ステップS1000〜S1009:補足その3)
内符号による復号エラーがあまりに多数発生した場合、内符号の復号により訂正されるエラーが少ないため、ステップS1007において内符号の復号結果を反映せずに次の内符号へ進むことが多くなる。そうすると、ステップS1004〜S1008において内符号により訂正されるビットが少なくなり、本フローチャートの利点があまり得られないので、ステップS1009において改めて外符号を復号しても依然復号エラーが発生する可能性がある。これに対処するためには、内符号のエラー訂正能力よりも多くの外符号エラー行を検出した場合、内符号を復号するとき消失訂正を用いるとよい。具体的には、ステップS1007において内符号の復号エラーが存在する場合、ステップS1005に戻る前に各内符号においてエラー行の全ビットを消失したものとみなして復号する。これにより、本フローチャートを開始する前と比べると内符号によって少なくとも一部のエラーが訂正されることになるので、S1007において何もせずステップS1005へ戻るよりもエラー訂正効果を高めることができる。
【0069】
図10:ステップS1000〜S1009:補足その4)
上記消失訂正を実施する動作例において、復号対象となる全ての内符号に対して消失訂正を実施すると、計算量は比較的多くなる。そこで、いったん消失訂正をすることなく図10記載の通り各ステップを実施し、それでもなおステップS1009において外符号の復号エラーが発生する場合に限り、消失訂正を実施するようにしてもよい。このとき、ステップS1007において復号エラーを生じていた内符号のみを再度復号する。これにより、消失訂正を実行する内符号の数を削減できる。
【0070】
図11は、図10のフローチャートにおいて用いる復帰用メモリの領域割り当てを説明する図である。復帰用メモリは、内符号行列114と同じ大きさを占める。内符号情報記号領域130は、エラー行を除いた外符号の復号結果を符号変調して得た行列Cを格納する。内符号検査記号領域131は、PRML復号によって得られた内符号の検査記号相当部P’を復調して得た内符号検査記号Pを格納する。復号エラーを起こした外符号の行はエラー行領域132として設定され、外符号を復号する前の当該行の内容を格納する。
【0071】
<実施の形態1:まとめ>
以上のように、本実施形態1に係る符号化装置は、ユーザデータ行列111から外符号行列112を生成し、外符号行列112を変調してチャネルビットワード行列113を得る。さらにチャネルビットワード行列113から内符号行列114を生成する。この符号化過程により、連接符号を用いてエラー訂正能力を高めることができる。さらに、外符号行列112から内符号行列114を生成する前にいったん変調を実施しているので、図9で説明したように疎なビット列を得ることができる。これにより内符号を復号する箇所を限定することができるので、内符号を復号する計算量を削減することができる。
【0072】
本実施形態1に係る復号化装置は、外符号のみまたは内符号のみを用いてユーザデータ行列111を復号化することもできる。これにより、特にエラー数が少ない場合における復号化処理の計算量を抑制することができる。
【0073】
また本実施形態1に係る復号化装置は、外符号の復号エラーが発生した場合、エラー行のROIに対して内符号を用いてエラー訂正を実施した後、改めて外符号を用いてエラー訂正を実施する。これにより、内符号を用いた復号処理の計算量を抑制しつつ、外符号のエラー訂正能力を高めることができる。
【0074】
また本実施形態1に係る復号化装置は、外符号エラー行のROIにおいて内符号の復号エラーが発生した場合、消失訂正を実施することもできる。これにより、内符号のエラー訂正能力を超える外符号復号エラーが発生した場合であっても、エラー訂正できる可能性を高めることができる。
【0075】
<実施の形態2>
図12は、実施形態1で説明した符号化装置および復号化装置の具体的な構成例を示すブロック図である。ここでは符号化装置と復号化装置を一体的に構成した構成例を示したが、これらを分離して構成することもできる。
【0076】
図12において、バス141を介して、フレーム分析器140、汎用メモリ142、変調器10、復調器8、リードソロモン符号復号器143、BCH符号復号器144などの各種専用処理回路が接続されている。バス141にはさらに、バス制御装置145を介してプロセッサ146も接続されている。バス制御装置145は、バス141を通してプロセッサ146と各種専用処理回路との間のデータ転送を制御し、これらからの通知信号を監視し、これらに対する指令を送付する。メモリ142は、符号化処理と復号化処理を実装したマイクロプログラムを格納している。
【0077】
フレーム分析器140は、PRML復号器6の出力を受信してビット列パターンを分析し、フレーム先頭を発見すると、フレーム構造を解析して所定のメモリ領域に格納する。フレームの終端を発見し、データを格納し終わるとフレーム終端をプロセッサ146に通知する。フレーム分析器140はその他、ユーザデータシンボルuをユーザデータ行列111に整列する機能も有する。
【0078】
変調器10と復調器8は、それぞれ図7で説明した変調処理と復調処理を実施する。リードソロモン符号復号器143は、外符号を符号化および復号化する。BCH符号復号器144は、内符号を符号化および復号化する。
【0079】
CPU146は、マイクロプログラムの実装にしたがって符号化過程および復号化過程を制御する。例えば、復調器8に対して復調開始を指示するとともに、復調対象とするデータが格納されているメモリアドレスを通知する。復調が終了したらリードソロモン符号復号器143に対して外符号を復号するよう指示する。
【0080】
図12に示す構成によれば、マイクロプログラムの能力を強化することにより、メモリ142や専用処理回路などのリソースが許す範囲で、複数のフレームを同時処理することができる。また、リードソロモン符号の復号などのように、処理に時間が掛かりかつ同様の処理を多数繰り返す必要があるものに関しては、同じ機能を有する専用処理回路を複数設けることにより、処理速度を向上することが容易である。あるいは異なる処理過程における同一の処理を単一の回路が受け持つこともできる。例えば外符号のみを用いて復号する場合と内符号のみを用いて復号する場合において、同一の復号器が復号処理を受け持つこともできる。復号処理や符号化処理のアルゴリズムを変更する場合、装置全体の設計を変更することなくマイクロプログラムの変更だけで対応することもできる。
【0081】
<実施の形態3>
図13は、本発明に係る光ディスク装置1000の構成図である。光ディスク1は、スピンドルモータ152によって回転される。光ピックアップ151は、記録再生に用いる光源、対物レンズをはじめとする光学系などで構成されている。光ピックアップ151は、スライダ153によりシークを実施する。メイン回路154は、シーク、スピンドルモータの回転、などを指示する。メイン回路154は、実施形態1〜3で説明した符号変調および復調を実施する各回路、復号信号処理回路、フォーカシングおよびトラッキング用フィードバック調節計などの処理系、マイクロプロセッサ、メモリなどを搭載している。光ディスク装置100全体の動作を制御するのはファームウェア155である。ファームウェア155は、メイン回路154内のメモリに格納されており、マイクロプロセッサがこれを実行する。
【0082】
本発明は上記した実施形態の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることもできる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することもできる。
【0083】
上記各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部や全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0084】
上記実施形態の変形例として以下のようなものも考えられる。例えば簡易的なエラー訂正手法として、内符号が2元BCH符号でエラー行が1行のみである場合は、内符号を復号する代わりにそれぞれのシンドロームを計算して結果が0でなければエラー行の位置のビットを反転させることもできる。これによりエラー訂正の計算量を削減できる。
【符号の説明】
【0085】
1:光ディスク、2:光ピックアップ、3:符号化器、4:変調器、5:NRZI変換器、6:PRML復号器、7:NRZ変換器、8:復調器、9:復号器、10:副変調器、11:連結器、111:ユーザデータ行列、112:外符号行列、113:チャネルビットワード行列、114:内符号行列、115:記録データ行列、120:内符号ビット列、121:ROI、130:内符号情報記号領域、131:内符号検査記号領域、132:エラー行領域、140:フレーム分析器、141:バス、142:メモリ、143:リードソロモン符号復号器、144:BCH符号復号器、145:バス制御装置、146:プロセッサ、151:光ピックアップ、152:スピンドルモータ、153:スライダ、154:メイン回路、155:ファームウェア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13