【解決手段】燃料電池システム1は、燃料電池11と、改質器12と、燃焼器13と、化学蓄熱器14と、水供給部22、23、32と、排気部24と、燃料供給部21、31と、制御部51と、を備える。化学蓄熱器14は、改質器12及び燃焼器13との間で熱伝導可能に配置され、吸熱により脱水反応し、水和反応により発熱する化学蓄熱剤を収容する蓄熱剤収容空間を有する。水供給源32からの化学蓄熱器14への水W1の供給を遮断するように、水供給側切換え部23が切換えられ、且つ、化学蓄熱器14からの水蒸気W2の排気が停止されるように、排気側切換え部24が切換えられることにより、蓄熱剤収容空間、排気ラインL8、及び水和水供給ラインL22の内部の空間は、密閉空間を構成する。
吸熱により脱水反応する化学蓄熱剤は、水酸化カルシウムであり、水和反応により発熱する化学蓄熱剤は、酸化カルシウムである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の燃料電池システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システム1について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による燃料電池システム1を示す概略図である。
【0015】
図1に示すように、燃料電池システム1は、燃料電池11と、改質器12と、燃焼器13と、化学蓄熱器14と、混合器15と、排気側切換え部としての流量調整部24と、燃料供給部としての流量調整部21及び燃料ガス供給部31と、水供給部としての流量調整部22、23、及び水貯留部32と、温度センサ41と、圧力センサ42と、制御装置50とを備える。
【0016】
また、燃料電池システム1は、燃料ガス供給ラインL1と、水供給ラインL2と、改質ガス供給ラインL3と、空気供給ラインL4と、アノードオフガスラインL5と、カソードオフガスラインL6と、オフガス排気ラインL7と、排気ラインとしての蒸気排気ラインL8と、を備える。なお、「ライン」とは、流路、経路、管路等の総称である。
【0017】
[ラインの説明]
燃料ガス供給ラインL1においては、燃料ガス供給ラインL1の一端部は、都市ガス等の燃料ガス(燃料)G1を供給可能な燃料ガス供給部31に接続され、燃料ガス供給ラインL1の他端部は改質器12に接続されている。燃料ガス供給ラインL1の途中には、燃料ガス供給ラインL1の一端部側から他端部側に向かって、流量調整部21と混合器15とがこの順で接続されている。燃料ガス供給ラインL1には、改質器12に向けて燃料ガスG1が流通する。
【0018】
水供給ラインL2の一端部は、ポンプ(図示せず)を有する水供給源としての水貯留部32に接続されている。水供給ラインL2は、その途中から改質器側水供給ラインL21と、水和水供給ラインL22とに分岐している。改質器側水供給ラインL21は混合器15に接続され、水和水供給ラインL22は、化学蓄熱器14に接続されている。改質器側水供給ラインL21、水和水供給ラインL22の途中には、ぞれぞれ、流量調整部22、23が接続されている。水供給ラインL2及び改質器側水供給ラインL21には、改質器12に向けて水貯留部32からの水W1が流通する。また、水供給ラインL2及び水和水供給ラインL22には、化学蓄熱器14に向けて水貯留部32からの水W1が流通する。
【0019】
改質ガス供給ラインL3においては、改質ガス供給ラインL3の一端部は改質器12に接続され、改質ガス供給ラインL3の他端部は燃料電池11のアノード(燃料極)に接続されている。改質器12において生成される水素を含む改質ガスG2は、改質ガス供給ラインL3を流通して、燃料電池11に供給され、発電に用いられる。
【0020】
空気供給ラインL4においては、空気供給ラインL4の一端部は、酸素を含む空気A1を燃料電池11に供給するためのブロワ(図示せず)及びフィルタ(図示せず)を有する空気供給部33に接続されている。空気供給ラインL4の他端部は燃料電池11のカソード(空気極)に接続されている。空気A1は、ブロワ(図示せず)からフィルタ(図示せず)を通過し、空気供給ラインL4を流通して、燃料電池11に供給される。
【0021】
アノードオフガスラインL5においては、アノードオフガスラインL5の一端部は、燃料電池11のアノード(燃料極)に接続され、アノードオフガスラインL5の他端部は、燃焼器13に接続されている。アノードオフガスG3は、アノードオフガスラインL5を流通して、燃焼器13に供給される。カソードオフガスラインL6においては、カソードオフガスラインL6の一端部は、燃料電池11のカソード(空気極)に接続され、カソードオフガスラインL6の他端部は、燃焼器13に接続されている。カソードオフガスG4は、カソードオフガスラインL6を流通して、燃焼器13に供給される。
【0022】
オフガス排気ラインL7においては、オフガス排気ラインL7の一端部は、燃焼器13に接続され、オフガス排気ラインL7の他端部は、屋外に開放している。燃焼器13によって燃焼された燃焼排ガスG5は、オフガス排気ラインL7を流通して屋外に排出される。
【0023】
蒸気排気ラインL8においては、蒸気排気ラインL8の一端部は、化学蓄熱器14に接続され、蒸気排気ラインL8の他端部は、屋外に開放している。蒸気排気ラインL8の途中には、蒸気排気ラインL8の一端部側から他端部側に向かって、温度センサ41と、圧力センサ42と、流量調整部24とがこの順で接続されている。蒸気排気ラインL8には、化学蓄熱器14からの水蒸気W2が流通する。蒸気排気ラインL8及び流量調整部24は、化学蓄熱器14から水蒸気W2を排気可能な排気部を構成する。
【0024】
[各装置の説明]
燃料電池11としては、固体酸化物形燃料電池(SOFC)が用いられる。燃料電池11は、燃料電池スタック(図示せず)を有している。燃料電池スタックにおいては、複数の発電セル(図示せず)とセパレータ(図示せず)とが交互に積層されている。
【0025】
発電セル(図示せず)は、アノード(燃料極)と、カソード(空気極)と、アノードとカソードとの間に設けられた電解質層と、を有する。アノードは、ニッケル等から形成され、還元性ガスにより還元雰囲気に保たれている。燃料電池11は、改質器12から改質ガス供給ラインL3を介してアノードに供給される改質ガスG2と、空気供給ラインL4からカソードに供給される空気A1中の酸素とを反応させることにより、発電を行なうことができる。燃料電池11による発電時の温度である運転温度は、500℃〜1000℃程度の高温である。燃料電池11によって発電された電気は、パワーコンディショナ(図示せず)に送られ、AC電圧に変換される。燃料電池11は、アノードからのオフガスであるアノードオフガスG3と、カソードからのオフガスであるカソードオフガスG4とを排気する。燃料電池11は、図示せぬ断熱材により形成された図示せぬ断熱空間内に配置されている。
【0026】
改質器12は、燃料ガス供給ラインL1から供給された燃料ガスG1及び水供給ラインL2(改質器側水供給ラインL21)から供給された水(改質水)W1に基づいて、ニッケル系の触媒上で、水素を含む改質ガスG2を生成する。この際、触媒は、500℃〜800℃程度にまで加熱されることにより、水素を含む改質ガスG2を生成する。改質器12によって生成された改質ガスG2は、改質ガス供給ラインL3を介して燃料電池11へ供給される。改質器12は、図示せぬ断熱材により形成された図示せぬ断熱空間内に配置されている。
【0027】
燃焼器13は、燃料電池11から排気されるアノードオフガスG3及びカソードオフガスG4を、白金(Pt)等の触媒上で燃焼処理する。この際、触媒は、500℃〜800℃程度にまで加熱されることにより、アノードガスとしての水素を含むアノードオフガスG3及び酸素を含むカソードオフガスG4を燃焼する。燃焼器13により燃焼されたアノードオフガスG3及びカソードオフガスG4は、燃焼器13の下流側に接続されたオフガス排気ラインL7を通じて、燃焼排ガスG5として排出される。燃焼器13は、図示せぬ断熱材により形成された図示せぬ断熱空間内に配置されている。
【0028】
化学蓄熱器14は、収容容器(図示せず)と化学蓄熱剤(図示せず)とを有している。化学蓄熱剤は、吸熱により脱水反応するか又は水和反応により発熱する性質を有する化学物質である。化学蓄熱剤は、燃焼器13からの熱供給により吸熱をして脱水反応を生じる。また、化学蓄熱剤は、水貯留部32から水和水供給ラインL22を介して供給された水W1により水和反応を生じる。化学蓄熱器14は、図示せぬ断熱材により形成された図示せぬ断熱空間内に配置されている。
【0029】
化学蓄熱剤の例としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウム等を挙げることができる。これらの化学蓄熱剤は、2種以上のものを適宜に併用することもできる。化学蓄熱剤として、例えば、本実施形態では、水酸化カルシウムが用いられる。水酸化カルシウムは、燃焼器13からの熱供給による脱水反応により脱水され、酸化カルシウムを生成する。その酸化カルシウムは、水貯留部32から水和水供給ラインL22を介して供給された水W1により水和反応を生じて、水酸化カルシウムを生成する。
【0030】
収容容器(図示せず)は、化学蓄熱剤を収容する金属性の容器であり、内部に蓄熱剤収容空間(図示せず)を有している。収容容器は、改質器12及び燃焼器13に隣接して配置されている。従って、化学蓄熱器14の収容容器(図示せず)は、改質器12及び燃焼器13との間で熱伝導可能に配置されている。
【0031】
混合器15は、改質器側水供給ラインL21を流通した水(改質水)W1を気化させて水蒸気とし、当該水蒸気を、燃料ガス供給ラインL1に流通する燃料と混合する。混合器15は、図示せぬ断熱材により形成された図示せぬ断熱空間内に配置されている。
【0032】
流量調整部21は、電磁弁により構成された二方弁により構成されている。流量調整部21は、制御装置50に電気的に接続されている。制御装置50による流量調整部21に対する制御により、流量調整部21の弁の開度を調整可能であり、これにより、燃料ガス供給ラインL1に流通する燃料ガスG1の量が調整される。また、流量調整部21により、燃料ガス供給部31からの燃料ガスG1の、改質器12への流通/遮断を切換え可能である。流量調整部21及び燃料ガス供給部31は、改質器12へ燃料を供給可能な燃料供給部を構成する。流量調整部21は、図示せぬ断熱材により形成された図示せぬ断熱空間外に配置されている。
【0033】
流量調整部22は、電磁弁により構成された二方弁により構成されている。流量調整部22は、制御装置50に電気的に接続されている。制御装置50による流量調整部22に対する制御により、流量調整部22の弁の開度を調整可能であり、これにより、改質器側水供給ラインL21に流通する水W1の量が調整される。また、流量調整部22により、水貯留部32からの水W1の、改質器12への流通/遮断を切換え可能である。流量調整部22及び水貯留部32は、改質器12へ水W1を供給可能な水供給部を構成する。流量調整部22は、図示せぬ断熱材により形成された図示せぬ断熱空間外に配置されている。
【0034】
流量調整部23は、電磁弁により構成された二方弁により構成されている。流量調整部23は、制御装置50に電気的に接続されている。制御装置50による流量調整部23に対する制御により、流量調整部23の弁の開度を調整可能であり、これにより、水和水供給ラインL22に流通する水W1の量が調整される。また、流量調整部23により、水貯留部32からの水W1の、化学蓄熱器14への流通/遮断を切換え可能である。流量調整部23及び水貯留部32は、化学蓄熱器14へ水W1を供給可能な水供給部を構成し、流量調整部23は、水供給側切換え部を構成する。流量調整部23は、図示せぬ断熱材により形成された図示せぬ断熱空間外に配置されている。
【0035】
流量調整部24は、電磁弁により構成された二方弁により構成されている。流量調整部24は、制御装置50に電気的に接続されている。制御装置50による流量調整部24に対する制御により、流量調整部24の弁の開度を調整可能であり、これにより、蒸気排気ラインL8に流通する水蒸気W2の量が調整される。また、流量調整部24により、化学蓄熱器14からの水蒸気W2の排気/排気停止を切換え可能である。流量調整部24は、排気側切換え部を構成する。流量調整部24は、図示せぬ断熱材により形成された図示せぬ断熱空間外に配置されている。
【0036】
水供給源としての水貯留部32からの化学蓄熱器14への水W1の供給を遮断するように、水供給側切換え部としての流量調整部23の弁が閉じるように弁が切換えられ、且つ、化学蓄熱器14からの水蒸気W2の排気が停止されるように、排気側切換え部としての流量調整部24の弁が閉じるように弁が切換えられることにより、蓄熱剤収容空間(図示せず)、水和水供給ラインL22、及び、蒸気排気ラインL8の内部の空間は、密閉空間を構成する。
【0037】
温度検出部としての温度センサ41は、蒸気排気ラインL8内の温度を計測可能に、蒸気排気ラインL8内に設置されている。温度センサ41は、例えば、0℃から1000℃までの温度を計測可能である。温度センサ41は、制御装置50に電気的に接続されている。温度センサ41は、図示せぬ断熱材により形成された図示せぬ断熱空間内に配置されている。
【0038】
圧力検出部としての圧力センサ42は、蒸気排気ラインL8の内部の圧力を検出可能に、蒸気排気ラインL8内に設置されている。圧力センサ42は、制御装置50に電気的に接続されている。圧力センサ42は、図示せぬ断熱材により形成された図示せぬ断熱空間外に配置されている。
【0039】
制御装置50は、水供給部による水W1の供給の制御を水供給部に対して行い、排気部による水蒸気W2の排気の制御を排気部に対して行い、燃料供給部による燃料ガスG1の供給の制御を燃料供給部に対して行う。即ち、制御装置50は、流量調整部21,22、23、24を制御することを目的としたものであり、各種演算処理を行う制御部51や各種情報を記憶する記憶部に加え、キーボードやタッチパネル等により実現される入力部及びディスプレイによる表示部を備えた汎用パーソナルコンピュータやシーケンサーである。
【0040】
制御装置50は、
図1に示すように、流量調整部21,22、23、24、温度センサ41、及び、圧力センサ42と有線乃至無線で接続されており、各種信号を入出力することができるように構成されている。
具体的には、制御装置50は、温度センサ41、圧力センサ42から温度情報、圧力情報をそれぞれ入力する。制御装置50の制御部51は、入力した温度情報に基づいて、即ち、温度検出部としての温度センサ41によって検出された温度に基づいて、また、入力した圧力情報に基づいて、即ち、圧力検出部としての圧力センサ42によって検出された圧力に基づいて、流量調整部21,22、23、24に対して命令信号を出力して、温度検出制御等の各種の制御を行う。
【0041】
制御装置50は、タイマー52として用いられるクロックを有しており、所定の時間を計測可能である。具体的には、水供給源としての水貯留部32から水W1を化学蓄熱器14へ供給するように、水供給側切換え部としての流量調整部23に対して制御を行った後に所定時間経過したことを検出可能なタイマー52を有している。所定時間とは、例えば、後述のように、流量調整部23に対して制御を行った後に、改質器12及び燃焼器13の温度が300℃以上になるまでに要する時間である。
【0042】
以下、燃料電池システム1の起動時における制御部51による制御について、
図2〜
図6に基づき説明する。
図2は、本発明の第1実施形態による燃料電池システム1において、水供給制御が行われている様子を示す概略図である。
図3は、本発明の第1実施形態による燃料電池システム1において、水和反応制御が行われている様子を示す概略図である。
図4は、本発明の第1実施形態による燃料電池システム1において、水燃料供給制御が行われている様子を示す概略図である。
図5は、本発明の第1実施形態による燃料電池システム1において、化学蓄熱剤の脱水反応が行われている状態を示す概略図である。
図6は、本発明の第1実施形態による燃料電池システム1の制御部51による制御を示すフローチャートである。
【0043】
[水供給制御処理]
燃料電池システム1の起動時(スタートアップ時)には、先ず制御部51は、水供給制御を行う。水供給制御は、燃料電池11の起動時において改質器12へ燃料ガスG1を供給するように燃料供給部としての流量調整部21に対して制御する前に行われる。水供給制御では、制御部51は、水和水供給ラインL22を通して、水供給源としての水貯留部32からの水W1を化学蓄熱器14に向けて流通させるように、水供給側切換え部としての流量調整部23に対して制御を行うと共に、化学蓄熱器14からの水蒸気W2を排気可能な状態とするように、排気側切換え部としての流量調整部24に対して制御を行う。
【0044】
具体的には、
図2に示すように、制御部51は、流量調整部21及び流量調整部22に対して、これらの弁を閉じるように、制御を行う。また、制御部51は、流量調整部23及び流量調整部24に対して、これらの弁を開くように、制御を行う(
図6のステップS11)。これにより、水貯留部32から水和水供給ラインL22を介して水W1が化学蓄熱器14の化学蓄熱剤へ供給される。
【0045】
次に制御部51による処理は、ステップS12(
図6参照)へと進み、制御部51は、所定量の水W1が化学蓄熱器14へ供給されたか否かの判断を行う。より具体的には、制御部51におけるクロックによるタイマー52により、流量調整部23の弁が開かれてから、所定の時間が経過したか否かの判断が行われる。所定量の水W1が化学蓄熱器14へ供給されていれば(YES)、制御部51による処理は、ステップS13(
図6参照)へと進む。所定量の水W1が化学蓄熱器14へ供給されていなければ(NO)、制御部51による処理は、ステップS11(
図6参照)へ戻る。
【0046】
[水和反応制御処理]
次に、制御部51は、水和反応制御を行う。水和反応制御では、制御部51は、水和水供給ラインL22を通して水供給源としての水貯留部32からの水W1が化学蓄熱器14に向けて流通せず遮断されるように、水供給側切換え部としての流量調整部23に対して制御を行う。これと共に、制御部51は、化学蓄熱器14からの水蒸気W2が排気停止される状態となるようにして、密閉空間を形成するように、排気側切換え部としての流量調整部24に対して制御を行う。
【0047】
具体的には、
図3に示すように、制御部51は、流量調整部21及び流量調整部22に対して、これらの弁を閉じた状態が維持されるように、制御を行う。また、制御部51は、流量調整部23及び流量調整部24に対して、これらの弁を閉じるように、制御を行う(
図6のステップS13)。これにより、蓄熱剤収容空間(図示せず)、水和水供給ラインL22、及び、蒸気排気ラインL8の内部の空間により、密閉空間が形成される。密閉空間内においては、水貯留部32から化学蓄熱剤に供給された水W1により、化学蓄熱剤としての酸化カルシウムは、水和反応を生じて水酸化カルシウムを生成する。この水和反応により、熱が発生し、密閉空間を構成する蒸気排気ラインL8の内部の温度及び圧力は上昇する。これに伴い、化学蓄熱器14からの熱伝導により、改質器12及び燃焼器13の温度も上昇する。酸化カルシウムは、水和反応を生じて水酸化カルシウムを生成するが、密閉空間内において水和反応が生じているため、炭酸カルシウムの生成に至るまでには、反応は進まずに、反応が抑えられている。そして、制御部51の処理は、ステップS14へと進む。
【0048】
[温度検出制御]
次に、制御部51は、温度検出制御を行う。温度検出制御では、制御部51は、改質器12の触媒において燃料ガスG1と水W1とが反応可能な温度になったことを検出し、且つ、燃焼器13の触媒においてアノードオフガスG3及びカソードオフガスG4が触媒上で燃焼可能な温度になったことを検出する。
【0049】
具体的には、制御部51は、改質器12及び燃焼器13の温度が300℃以上になっていることを、温度センサ41により検出される温度と、圧力センサ42により検出される圧力と、制御部51のクロックによるタイマー52とにより、間接的に検出する。より具体的には、例えば、制御部51は、温度センサ41により蒸気排気ラインL8内の温度が所定の温度である100℃以上であれば、改質器12及び燃焼器13の温度が300℃以上になっていることを検出可能である。また、制御部51は、圧力センサ42により蒸気排気ラインL8内の圧力が所定の圧力である0.1MPa以上であれば、改質器12及び燃焼器13の温度が300℃以上になっていることを検出可能である。また、制御部51は、制御部51のクロックによるタイマー52によって検出された時間が20分を超えていれば、改質器12及び燃焼器13の温度が300℃以上になっていることを検出可能である。
【0050】
温度センサ41により検出される温度が所定の温度であり、圧力センサ42により検出される圧力が所定の圧力であり、タイマー52により検出された時間が所定の時間であり、
図6のステップS14において、これにより改質器12及び燃焼器13の温度が300℃以上になっていることを、制御部51が検出できた場合には(YES)、制御部51の処理は、ステップS15へと進む。改質器12及び燃焼器13の温度が300℃以上になっていることを、制御部51が検出できない場合には(NO)、制御部51の処理は、ステップS13へと戻る。
【0051】
[水燃料供給制御処理]
次に、制御部51は、水燃料供給制御を行う。水燃料供給制御は、温度検出制御による温度の検出が行われた後に行われる。水燃料供給制御では、制御部51は、水供給源としての水貯留部32からの化学蓄熱器14への水W1の供給を遮断するように、水供給側切換え部としての流量調整部23に対して制御を行うと共に、改質器12へ水W1を供給するように、水供給部としての流量調整部22に対して制御を行い、改質器12へ燃料ガスG1を供給するように、燃料供給部としての流量調整部21に対して制御を行う。
【0052】
具体的には、
図4に示すように、制御部51は、流量調整部21及び流量調整部22に対して、これらの弁が開くように、制御を行う。また、制御部51は、流量調整部23及び流量調整部24に対して、これらの弁が閉じた状態が維持されるように、制御を行う(
図6のステップS15)。これにより、混合器15により水蒸気とされた水W1と、燃料ガスG1とが混合され、改質器12に供給される。そして、混合された水W1及び燃料ガスG1は、改質器12により改質ガスG2に改質され、改質ガス供給ラインL3を通して燃料電池11のアノードへ供給される。また、空気供給部33からの空気A1が、空気供給ラインL4を通して燃料電池11のカソードへ供給される。
【0053】
これにより、燃料電池11において発電が行われる。そして、燃料電池11からのアノードオフガスG3はアノードオフガスラインL5を介して燃焼器13へ供給される。また、燃料電池11からのカソードオフガスG4はカソードオフガスラインL6を介して燃焼器13へ供給される。燃焼器13では、アノードオフガスG3及びカソードオフガスG4が、触媒上で燃焼される。これにより、燃焼器13において熱が発生する。
【0054】
燃焼器13における熱の発生により、化学蓄熱器14の化学蓄熱剤としての水酸化カルシウムは、燃焼器13からの熱供給による脱水反応により脱水され、酸化カルシウムを生成する。脱水された水は、高温のために水蒸気W2となり、蓄熱剤収容空間(図示せず)及び蒸気排気ラインL8の内部の空間により形成されている密閉空間内に充満する。そして、制御部51の処理は、ステップS16へ進む。
【0055】
[排気制御処理]
次に、制御部51は、排気制御を行う。排気制御は、水燃料供給制御の後に、水供給源としての水貯留部32からの化学蓄熱器14への水W1の供給を遮断するように、水供給側切換え部としての流量調整部23に対して制御を行うと共に、化学蓄熱器14から水蒸気W2を排気させるように、排気側切換え部としての流量調整部24に対して制御を行う。
【0056】
具体的には、
図5に示すように、制御部51は、流量調整部21及び流量調整部22に対して、これらの弁が開いた状態が維持されるように、制御を行う。また、制御部51は、流量調整部23に対して、弁が閉じた状態が維持されるように制御を行う。また、制御部51は、流量調整部24に対して、弁が開くように制御を行う(
図6のステップS16)。これにより、脱水反応により発生し密閉空間内に充満している水蒸気W2は、屋外へ排気される。以上の制御部51による処理の後に、燃料電池11において、安定して発電が行われる。
【0057】
本実施形態の燃料電池システム1によれば、例えば、以下の効果が奏される。
本実施形態の燃料電池システム1は、燃料電池11と、触媒上で燃料ガスG1と水W1とを反応させて、燃料電池11に供給される改質ガスG2を生成する改質器12と、燃料電池11からのオフガスG3、G4を触媒上で燃焼する燃焼器13と、改質器12及び燃焼器13との間で熱伝導可能に配置される化学蓄熱器14であって、吸熱により脱水反応し、水和反応により発熱する化学蓄熱剤を収容する蓄熱剤収容空間を有する化学蓄熱器14と、化学蓄熱器14及び改質器12へ水W1を供給可能な水供給部22、23、32と、化学蓄熱器14から水蒸気W2を排気可能な排気部24と、改質器12へ燃料ガスG1を供給可能な燃料供給部21、31と、水供給部による水W1の供給の制御を水供給部に対して行い、排気部による水蒸気W2の排気の制御を排気部24に対して行い、燃料供給部21、31による燃料ガスG1の供給の制御を燃料供給部に対して行う制御部51と、を備える。
【0058】
水供給部は、水供給源としての水貯留部32と、水貯留部32からの水W1を化学蓄熱器14に向けて流通する水和水供給ラインL22と、水貯留部32からの水W1の化学蓄熱器14への流通/遮断を切換え可能な水供給側切換え部としての流量調整部23とを有する。排気部は、化学蓄熱器14からの水蒸気W2を排気する蒸気排気ラインL8と、化学蓄熱器14からの水蒸気W2の排気/排気停止を切換え可能な排気側切換え部としての流量調整部24とを有する。水貯留部32からの化学蓄熱器14への水W1の供給を遮断するように、流量調整部23が切換えられ、且つ、化学蓄熱器14からの水蒸気W2の排気が停止されるように、流量調整部24が切換えられることにより、蓄熱剤収容空間、蒸気排気ラインL8及び水和水供給ラインL22の内部の空間は、密閉空間を構成する。
【0059】
制御部51は、水供給制御と、水和反応制御と、温度検出制御と、水燃料供給制御と、排気制御と、を行う。水供給制御においては、燃料電池11の起動時において改質器12へ燃料を供給するように燃料供給部としての流量調整部21に対して制御する前に、水和水供給ラインL22を通して水供給源32からの水W1を化学蓄熱器14に向けて流通させるように、水供給側切換え部としての流量調整部23に対して制御を行うと共に、化学蓄熱器14からの水蒸気W2を排気可能な状態とするように、排気側切換え部としての流量調整部24に対して制御を行う。水和反応制御においては、水和水供給ラインL22を通して水供給源32からの水W1が化学蓄熱器14に向けて流通せず遮断されるように、水供給側切換え部としての流量調整部23に対して制御を行うと共に、化学蓄熱器14からの水蒸気W2が排気停止される状態となるようにして、密閉空間を形成するように、排気側切換え部としての流量調整部24に対して制御を行う。
【0060】
温度検出制御においては、改質器12の触媒において燃料ガスG1と水W1とが反応可能な温度になったことを検出し、且つ、燃焼器13の触媒においてオフガスを触媒上で燃焼可能な温度になったことを検出する。水燃料供給制御においては、温度検出制御による温度の検出が行われた後に、水供給源としての水供給源32からの化学蓄熱器14への水W1の供給を遮断するように、水供給側切換え部としての流量調整部23に対して制御を行うと共に、改質器12へ水W1を供給するように、水供給部としての流量調整部22に対して制御を行い、改質器12へ燃料を供給するように、燃料供給部としての流量調整部21に対して制御を行う。排気制御においては、水燃料供給制御の後に、水供給源32からの化学蓄熱器14への水W1の供給を遮断するように、水供給側切換え部としての流量調整部23に対して制御を行うと共に、化学蓄熱器14から水蒸気W2を排気させるように、排気側切換え部としての流量調整部24に対して制御を行う。
【0061】
この構成により、燃料電池システム1の起動時に、化学蓄熱剤の水和反応による発熱により、改質器12において燃料ガスG1を改質ガスG2へ改質可能な程度に、改質器12を加熱することができ、且つ、燃焼器13においてアノードオフガスG3及びカソードオフガスG4を燃焼可能な程度に、燃焼器13を加熱することができる。従って、燃料電池システム1を、改質器12及び燃焼器13を加熱するためのバーナを有していない構成として、燃料電池システム1の起動時(スタートアップ時)に、改質器12及び燃焼器13を加熱することができる。この結果、燃料電池システム1を、より低コストで構成することができる。
【0062】
また、蓄熱剤収容空間、蒸気排気ラインL8及び水和水供給ラインL22の内部の空間は、密閉空間を構成するため、化学蓄熱剤が水和反応したときに、反応が進みすぎることを抑えることができる。従って、水和反応の後の脱水反応により、再び、水和反応可能な状態に再生できる程度に、水和反応を抑えることができる。
【0063】
また、燃料電池システム1は、
排気ラインとしての蒸気排気ラインL8の内部の温度を検出可能な温度検出部41を有する。この構成により、制御部51は、温度検出部41によって検出された温度に基づいて温度検出制御を行うことができる。
【0064】
また、燃料電池システム1は、蒸気排気ラインL8の内部の圧力を検出可能な圧力検出部42を有する。この構成により、制御部51は、圧力検出部42によって検出された圧力に基づいて温度検出制御を行うことができる。
【0065】
また、燃料電池システム1は、水供給源32から水W1を化学蓄熱器14へ供給するように、水供給側切換え部としての流量調整部23に対して制御を行った後に所定時間経過したことを検出可能なタイマー52を有する。この構成により、制御部51は、タイマー52によって検出された時間に基づいて温度検出制御を行うことができる。
【0066】
また、吸熱により脱水反応する化学蓄熱剤は、水酸化カルシウムであり、水和反応により発熱する化学蓄熱剤は、酸化カルシウムである。この構成により、容易に水和反応及び脱水反応を行うことができる。
【0067】
次に、本発明の第2実施形態に係る燃料電池システム1Aについて図面を参照しながら説明する。
図7は、本発明の第2実施形態による燃料電池システム1Aを示す概略図である。
第2実施形態に係る燃料電池システム1Aは、流量調整部24に代えて、逆止弁24Aを有している点において、第1実施形態とは異なる。これ以外の構成については、第1実施形態の構成と同様であるため、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0068】
逆止弁24Aでは、蒸気排気ラインL8において化学蓄熱器14寄りの側から屋外へ向かう方向には、水蒸気W2が流通可能であるが、その逆方向には気体は流通不能である。また、逆止弁24Aには、制御部51は、電気的に接続されていない。この構成により、制御部51による流量調整部24(
図1等)に対する制御を省くことができ、燃料電池システム1Aの構成を簡単にすることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、請求の範囲から逸脱しない範囲内で、種々の変形が可能である。
【0070】
例えば、上述の実施形態においては、化学蓄熱器14の化学蓄熱剤に供給される水W1の量は、タイマー52により検出されたが、タイマー52に限定されない。例えば、水和水供給ラインL22に流通する水W1の流量を測定する流量計により検出されてもよい。
【0071】
また、燃料電池システムの各部の構成は、本実施形態の構成に限定されない。例えば、本実施形態では、改質器12及び燃焼器13の温度が300℃以上になったことの検出を、温度センサ41、圧力センサ42、及び、タイマー52により行ったが、これに限定されない。例えば、温度センサ41、圧力センサ42、及び、タイマー52のうちの少なくとも1つにより検出を行ってもよく、これらとは別の手段により検出を行ってもよい。
【0072】
温度検出部としての温度センサ41は、蒸気排気ラインL8内の温度を計測可能に、蒸気排気ラインL8内に設置されたが、この構成に限定されない。同様に、圧力検出部としての圧力センサ42は、蒸気排気ラインL8の内部の圧力を検出可能に、蒸気排気ラインL8内に設置されたが、この構成に限定されない。例えば、温度検出部としての温度センサ41が蒸気排気ラインL8内に設置される代わりに、改質ガス供給ラインL3内、オフガス排気ラインL7内、水和水供給ラインL22内の部分であって流量調整部23よりも下流側の部分、燃料ガス供給ラインL1内の部分であって混合器15よりも下流側の部分、のうちの少なくとも一つにおいてライン内の温度を計測可能な温度センサが、設置されていてもよい。
【0073】
また、例えば、温度検出部としての温度センサ41が蒸気排気ラインL8内に設置される代わりに、改質器12内、燃焼器13内、化学蓄熱器14内、混合器15内のうちの少なくとも一つにおいて温度を計測可能な温度センサが、設置されていてもよい。同様に、圧力検出部としての圧力センサ42が蒸気排気ラインL8内に設置される代わりに、改質器12内、燃焼器13内、化学蓄熱器14内、混合器15内のうちの少なくとも一つにおいて圧力を計測可能な圧力センサが、設置されていてもよい。
【0074】
燃焼器13は、燃料電池11から排気されるアノードオフガスG3及びカソードオフガスG4を燃焼処理したが、これに限定されない。例えば、燃焼器13においては、アノードオフガスG3のみを燃焼処理してもよい。この場合には、カソードオフガスG4は、燃焼されずにそのまま屋外に排出されてもよい。このように、カソードオフガスG4が燃焼されない場合には、例えば、空気供給ラインL4から分岐された燃焼器13へのラインにより空気を燃焼器13へ供給したり、大気から燃焼器13へ空気を供給したりすればよい。