一般家庭やレストランなどで使用される誘導加熱調理器や金属溶解、シームレス溶接などに使用される誘導加熱装置に関し、詳しくは、インバータにより加熱コイルに高周波交流電流を流して被加熱物を加熱する誘導加熱装置に関するものである。
発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋
前述した先願発明では、位相シフト制御時の位相シフト重なり角を所定値に設定すると共に周波数制御を行うことで、全てのスイッチング素子をターンオフ動作のみとし、ターンオン損失を発生させないようにしている。
しかしながら、この方法では特に位相シフトアーム(スイッチング素子S
1 ,S
2 )が零電流付近でターンオフするため、スナバコンデンサの充放電期間がデッドタイムより長くなる。このため、スナバコンデンサの充放電が完了する前にスイッチング素子がオンする場合があり、スナバコンデンサ短絡によりスイッチング素子の導通抵抗に起因した大きな損失が発生する。
図22は問題点を説明するための電圧、電流の波形図であり、図23は、図22におけるスイッチング素子S
2 のターンオン付近を拡大した波形図である。以下、これらの図面を参照しつつ先願発明の問題点を説明する。
なお、図22,図23のシミュレーション条件は、位相シフトアーム及び主アームのデッドタイムt
D :0.5[μs]、スイッチング周波数:20[kHz]、スナバコンデンサ容量C:0.04[μF]、位相シフト重なり角:130°である。
始めに、図20の位相シフトアーム(スイッチング素子S
1 ,S
2 )がスイッチングするときの動作を説明する。なお、以下の期間Ia,IIa,IIIa,IVaは、図23における各期間に対応している。
(1)期間Ia(S
1 ,S
3 :オン)
インバータ1Eの出力電流i
Lo は、加熱コイル11→還流ダイオードD
3 →スイッチング素子S
1 →共振コンデンサC
r の順に流れ、インバータ1Eの出力電圧v
out は0[V]となる。
(2)期間IIa(S
3 :オン)
スイッチング素子S
1 がターンオフし、スイッチング素子S
3 のみがオンしているとき、インバータ1Eの出力電流i
Lo は、加熱コイル11→還流ダイオードD
3 →コンデンサC
1 →共振コンデンサC
r の経路と、加熱コイル11→還流ダイオードD
3 →直流中間コンデンサ4→コンデンサC
2 →共振コンデンサC
r の経路とに転流するので、コンデンサC
1 が充電されてコンデンサC
2 が放電する。
(3)期間IIIa(S
2 ,S
3 :オン)
期間IIaにおける遮断電流が小さいので、コンデンサC
1 ,C
2 の充放電期間はデッドタイムt
D より長くなる。このため、充放電が完了する前にスイッチング素子S
2 がオンすることにより、コンデンサC
2 が短絡され(スナバコンデンサ短絡)、スイッチング素子S
2 に大きな放電電流i
S2 が流れる。この電流i
S2 は、図23に破線の楕円で示すようにスパイク状であり、スイッチング素子S
2 の導通抵抗により損失が発生する。
(4)期間IVa(S
2 ,S
3 :オン)
期間IIIaの放電電流i
S2 が流れ終わると、インバータ1Eの出力電流i
Lo は、加熱コイル11→還流ダイオードD
3 →直流中間コンデンサ4→還流ダイオードD
2 →共振コンデンサC
r の順で流れるので、インバータ1Eの出力電圧v
out は、波高値が直流中間コンデンサ4の電圧V
dc に等しい負電圧となる。
なお、スイッチング素子S
1 がオンするときも、同様の動作となる。
次に、図20の主アーム(スイッチング素子S
3 ,S
4 )がスイッチングするときの動作を説明する。
(1)期間ia(S
1 ,S
4 :オン)
インバータ1Eの出力電流i
Lo は、加熱コイル11→スイッチング素子S
4 →直流中間コンデンサ4→スイッチング素子S
1 →共振コンデンサC
r の順で流れ、インバータ1Eの出力電圧v
out は、波高値が直流中間コンデンサ4の電圧V
dc に等しい正電圧となる。
(2)期間iia(S
1 :オン)
スイッチング素子S
4 がターンオフし、スイッチング素子S
1 のみがオンしているとき、インバータ1Eの出力電流i
Lo は、加熱コイル11→コンデンサC
4 →直流中間コンデンサ4→スイッチング素子S
1 →共振コンデンサC
r の経路と、加熱コイル11→コンデンサC
3 →スイッチング素子S
1 →共振コンデンサC
r の経路とに転流し、コンデンサC
3 が放電してコンデンサC
4 が充電される。コンデンサC
3 ,C
4 の充放電が完了すると、インバータ1Eの出力電流i
Lo は、加熱コイル→還流ダイオードD
3 →スイッチング素子S
1 →共振コンデンサC
r の順で流れ、インバータ1Eの出力電圧v
out は0[V]となる。
(3)期間iiia(S
1 ,S
3 :オン)
この期間では、スイッチング素子S
3 がオンするが、インバータ1Eの出力電流i
Lo は還流ダイオードD
3 を流れているため、ターンオン損失は発生しない。
なお、スイッチング素子S
4 がオンする場合も、同様の動作となる。
また、インバータ1Eのスイッチング周波数が高くなると、出力電流i
Lo が小さくなって遮断電流が小さくなるため、スナバコンデンサの充放電期間が長くなる。これによってスナバコンデンサの充放電期間がデッドタイムより長くなり、スナバコンデンサの充放電が完了する前にスイッチング素子がオンする。このため、スナバコンデンサ短絡により、大きな損失が発生する。
図24は、図22よりもスイッチング周波数が高い時の電圧、電流の波形図であり、図25は、図24におけるスイッチング素子S
2 のターンオン付近を拡大した波形図である。この場合のミュレーション条件は、位相シフトアーム及び主アームのデッドタイムt
D :0.5[μs]、スイッチング周波数:30[kHz]、スナバコンデンサ容量C:0.04[μF]、位相シフト重なり角:110°である。
位相シフトアーム(スイッチング素子S
1 ,S
2 )がスイッチングする場合、図25における期間Ib(S
1 ,S
3 :オン),IIb(S
3 :オン),IIIb(S
2 ,S
3 :オン),IVb(S
2 ,S
3 :オン)の動作は、図23における期間Ia,IIa,IIIa,IVaの動作と同様である。この場合、図25の期間IIIbにおいてコンデンサC
1 ,C
2 の充放電期間がデッドタイムt
D より長くなるため、充放電完了前にスイッチング素子S
2 がオンすることになり、コンデンサC
2 が短絡されてスパイク状の放電電流i
S2 が流れる。この電流i
S2 によるスイッチング素子S
2 の導通抵抗により、損失が発生する。
主アーム(スイッチング素子S
3 ,S
4 )がスイッチングするときの動作は、次の通りである。
(1)期間ib(S
1 ,S
4 :オン)
インバータ1Eの出力電流i
Lo は、加熱コイル11→スイッチング素子S
4 →直流中間コンデンサ4→スイッチング素子S
1 →共振コンデンサC
r の順で流れ、インバータ1Eの出力電圧v
out は、波高値が直流中間コンデンサ4の電圧V
dc に等しい正電圧となる。
(2)期間iib(S
1 :オン)
スイッチング素子S
4 がターンオフし、スイッチング素子S
1 のみがオンしているとき、インバータ1Eの出力電流i
Lo は、加熱コイル11→コンデンサC
4 →直流中間コンデンサ4→スイッチング素子S
1 →共振コンデンサC
r の経路と、加熱コイル11→コンデンサC
3 →スイッチング素子S
1 →共振コンデンサC
r の経路とに転流し、コンデンサC
3 が放電してコンデンサC
4 が充電される。
(3)期間iiib(S
1 ,S
3 :オン)
期間iibにおける遮断電流が小さいため、コンデンサC
3 ,C
4 の充放電期間がデッドタイムt
D より長くなる。このため、充放電完了前にスイッチング素子S
3 がオンすることになり、コンデンサC
3 が短絡されてスパイク状の放電電流i
S3 が流れる。この電流i
S3 によるスイッチング素子S
3 の導通抵抗により、損失が発生する。
(4)期間ivb(S
1 ,S
3 :オン)
期間iiibにおける放電電流i
S3 が流れ終わると、インバータ1Eの出力電流i
Lo は、加熱コイル11→還流ダイオードD
3 →スイッチング素子S
1 →共振コンデンサC
r の順に流れ、インバータ1Eの出力電圧v
out は0[V]となる。
なお、スイッチング素子S
4 がオンする場合も、同様の動作となる。
図23,図25の何れの場合でも、インバータ1E内のスナバコンデンサの短絡によりスイッチング素子に電流が流れるため、導通損失が発生する。
従って、スナバコンデンサを除去すれば、ターンオンしたアームは還流ダイオードが導通することになり、ターンオン損失は発生しなくなる。また、スナバコンデンサを除去しなくてもその容量を小さくすれば充放電期間が短くなるので、充放電が終了してからスイッチング素子をターンオンさせることが可能である。
しかしながら、スナバコンデンサを除去するか、またはその容量を小さくする場合には、インバータ1Eの出力電流を大きくして加熱コイル11に大電力を供給する際に、スナバコンデンサ本来のターンオフ損失低減効果が得られなくなり、スイッチング損失が大きくなってしまう。従って、スイッチング損失を抑えながら低抵抗負荷への電力供給を可能にするためには、ターンオフ損失が小さく、しかもスナバコンデンサ短絡によるターンオン損失も小さいことが望ましい。
そこで、本発明の解決課題は、ターンオフ損失、ターンオン損失及びノイズを低減し、スイッチング素子や装置を破損させることなく低抵抗負荷への電力供給や小電力運転を可能とした誘導加熱装置を提供することにある。
課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋
課題を解決するため、請求項1に係る発明は、整流回路から直流中間コンデンサを介して入力された直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、前記インバータの交流出力端子間に共振コンデンサを介して接続される加熱コイルと、前記インバータを制御する制御回路と、を備えた誘導加熱装置であって、
前記インバータは、還流ダイオードが逆並列接続された半導体スイッチング素子からなるスイッチングアームを2個直列・・・ 続きを
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【発明の効果】
本発明によれば、ターンオフ損失だけでなく、スナバ短絡によるターンオン損失を低減すると共にノイズを低減し、スイッチング素子や装置を破損させずにアルミ、銅、非磁性ステンレス等の低抵抗負荷への電力供給や小電力運転を可能にした誘導加熱装置を提供することができる。
この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋
【図1】 本発明の第1実施形態の動作を示す電圧、電流の波形図である。
【図2】 図1において、スイッチング素子S2 のターンオン付近を拡大して示した波形図である。
【図3】 本発明の第2実施形態の動作を示す電圧、電流の波形図である。
【図4】 図3において、スイッチング素子S2 のターンオン付近を拡大して示した波形図である。
【図5】 本発明の第3実施形態の動作を示す電圧、電流の波形図である。
【図6】 図5において、スイッチング素子S2 のターンオン付近を拡大して示した波形図である。
【図7】 本発明の第3実施形態の動作を示す電圧、電流の波形図である。
【図8】 図7において、スイッチング素子S2 のターンオン付近を拡大して示した波形図である。
【図9】 本発明の第4実施形態における誘導加熱装置の構成図である。
【図10】 本発明の第4実施形態の動作を示す電圧、電流の波形図である。
【図11】 図10において、スイッチング素子S2 のターンオン付近を拡大して示した波形図である。
【図12】 誘導加熱装置の主回路部の構成図である。
【図13】 図12(a)における各部の動作波形図である。
【図14】 図13の一部を拡大した動作波形図である。
【図15】 誘導加熱装置のブロック図である。
【図16】 周波数制御時の動作波形図である。
【図17】 デューティ制御時の動作波形図である。
【図18】 位相シフト制御時の動作波形図である。
【図19】 誘導加熱装置の構成図及び制御スイッチングパターンの説明図である。
【図20】 先願発明を示す回路構成図である。
【図21】 先願発明によるインバータの出力電圧の波形図である。
【図22】 先願発明の問題点を説明するための電圧、電流の波形図である。
【図23】 図22においてスイッチング素子S2 のターンオン付近を拡大して示した波形図である。
【図24】 先願発明の問題点を説明するための電圧、電流の波形図である。
【図25】 図24においてスイッチング素子S2 のターンオン付近を拡大して示した波形図である。
1E,1F:インバータ
2A:三相交流電源
3A:整流回路
4:直流中間コンデンサ
11:加熱コイル
100:制御回路
101:周波数制御部
102:位相シフト制御部
103:負荷モード切替部
104:制御条件設定部
105:駆動回路部
S1〜S4:半導体スイッチング素子
D1〜D4:還流ダイオード
C1〜C4:スナバコンデンサ
Cr:共振コンデンサ
Lo:インダクタンス成分
Ro:抵抗成分
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