【解決手段】本発明の一実施形態によると、金属粉末及びガラス(glass)を含み、上記ガラスは、ケイ素(Si)及びホウ素(B)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物、リチウム(Li)、カリウム(K)及びバリウム(Ba)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物、バナジウム(V)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物、及び亜鉛(Zn)酸化物を含有し、上記ガラスの全体組成を基準として、上記亜鉛酸化物を19〜31mol%含有する、外部電極用ペーストが提供される。
前記ガラスの全体組成を基準として、前記ケイ素(Si)及びホウ素(B)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比をa、前記リチウム(Li)、カリウム(K)及びバリウム(Ba)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比をb、前記バナジウム(V)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比をc、前記亜鉛(Zn)酸化物のモル比をdとしたときに、前記a、b、c及びdは、25(mol%)≦a≦60(mol%)、5(mol%)≦b≦30(mol%)、2(mol%)≦c≦15(mol%)、及び19(mol%)≦d≦31(mol%)を満たす、請求項1に記載の外部電極用ペースト。
前記ガラス組成物の全体組成を基準として、前記ケイ素(Si)及びホウ素(B)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比をa、前記リチウム(Li)、カリウム(K)及びバリウム(Ba)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比をb、前記バナジウム(V)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比をc、前記亜鉛(Zn)酸化物のモル比をdとしたときに、前記a、b、c及びdは、25(mol%)≦a≦60(mol%)、5(mol%)≦b≦30(mol%)、2(mol%)≦c≦15(mol%)、及び19(mol%)≦d≦31(mol%)を満たす、請求項7に記載のガラス組成物。
前記ガラスの全体組成を基準として、含有された前記ケイ素(Si)及びホウ素(B)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比をa、前記リチウム(Li)、カリウム(K)及びバリウム(Ba)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比をb、前記バナジウム(V)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比をc、前記亜鉛(Zn)酸化物のモル比をdとしたときに、前記a、b、c及びdは、25(mol%)≦a≦60(mol%)、5(mol%)≦b≦30(mol%)、2(mol%)≦c≦15(mol%)、及び19(mol%)≦d≦31(mol%)を満たす、請求項9に記載の積層セラミック電子部品。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0022】
本発明の一実施形態によると、金属粉末及びガラス(glass)を含み、上記ガラスは、ケイ素(Si)及びホウ素(B)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物、リチウム(Li)、カリウム(K)及びバリウム(Ba)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物、バナジウム(V)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物、及び亜鉛(Zn)酸化物を含有し、上記ガラスの全体組成を基準として、上記亜鉛酸化物を19〜31mol%含有する外部電極用ペーストを提供することができる。
【0023】
上記金属粉末は、外部電極の製造に使用できるものであれば特に制限されず、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)の一つ以上を含有することができる。
【0024】
上記外部電極用ペーストを製造するための金属粉末の含量は、本発明の実施のために多様に決められることができ、特に制限されない。
【0025】
本実施形態による外部電極用ペーストは、積層セラミック電子部品の外部電極の形成に用いられ、特に、外部電極用ペーストを塗布した後、ペーストを焼成して外部電極を形成する、焼成方式の外部電極の形成に用いられることができる。
【0026】
通常、積層セラミックキャパシター、インダクター、圧電体、バリスター及びサーミスターなどの電子部品は、セラミック材料からなる本体と、本体の内部に形成された金属からなる内部電極と、上記内部電極と接触されるようにセラミック本体の表面に形成された外部電極と、で構成されることができる。
【0027】
積層セラミック電子部品の小型化及び大容量化のために外部電極の厚さが薄くなっているが、薄い外部電極で正常の容量を実現するためには、内部電極と外部電極との間の電気的連結性が十分に確保されなければならず、セラミック本体と外部電極とが十分な物理的強度で接合されなければならない。
【0028】
電子部品の外部電極は、金属粉末及びガラスを含有するペーストを用いて形成されることができる。上記ガラスは、ペーストを塗布した後、焼成する過程で軟化されて、外部電極をセラミック素体に強固に接合させるとともに、内部電極が露出された本体の端部をシールする役割をすることができる。しかし、ガラスの種類や添加量によってその性能が異なり、外部電極用ペーストに含有されたガラスの物性が低下する場合、次の問題が発生し得る。
【0029】
(1)外部電極用ペーストを塗布した後、焼成する過程中に、外部電極とセラミック本体との間にガラスが存在しない領域が生じて、所定水準以上の接合強度が実現されない。
【0030】
(2)外部電極用ペーストを塗布した後、焼成する過程で焼成された金属粉末の間に生じた空き空間にガラスが充填されない場合、めっき工程中に上記空間を介してめっき液が浸透して、信頼性が低下する恐れがある。
【0031】
(3)外部電極用ペーストを塗布した後、焼成する過程でガラスに気泡または気孔が形成される場合、所定水準以上の緻密度が実現されないため、等価直列抵抗(ESR)が上昇する恐れがある。
【0032】
本発明の一実施形態によると、上述の問題点を改善したガラス組成物及び上記ガラス組成のガラスを含有する外部電極用ペーストを提供することができる。
【0033】
外部電極に適用されるガラスは、多様な酸化物が混合された組成であるが、本発明の一実施形態によると、上述の問題点を解決するために、ガラスに含有される上記酸化物の種類や組成比を調節する。
【0034】
本発明の一実施形態による外部電極用ペーストに含有されたガラスは、本発明の他の一実施形態によるガラス組成物と同一の組成からなることができる。
【0035】
本発明の一実施形態によると、外部電極用ペーストに含有されたガラスは、ケイ素(Si)及びホウ素(B)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物、リチウム(Li)、カリウム(K)及びバリウム(Ba)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物、バナジウム(V)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物、及び亜鉛(Zn)酸化物を含有することができる。
【0036】
上記ガラスは、a(Si、B)-b(Li、K、Ba)-c(V、Mn)-d(Zn)を含有することができる。上記(Si、B)はケイ素(Si)及びホウ素(B)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物を意味し、上記(Li、K、Ba)はリチウム(Li)、カリウム(K)及びバリウム(Ba)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物を意味し、上記(V、Mn)はバナジウム(V)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物を意味し、上記(Zn)は亜鉛(Zn)酸化物を意味することができる。
【0037】
上記ガラス組成物の全体組成を基準として、上記aは上記ケイ素(Si)及びホウ素(B)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比を意味し、上記bは上記リチウム(Li)、カリウム(K)及びバリウム(Ba)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比を意味し、上記cは上記バナジウム(V)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比を意味し、上記dは上記亜鉛(Zn)酸化物のモル比を意味することができる。
【0038】
上記ガラス組成物の全体組成を基準として、上記亜鉛(Zn)酸化物のモル比は19mol%〜31mol%であることができる。すなわち、19(mol%)≦d≦31(mol%)を満たすことができる。上記亜鉛(Zn)酸化物が19mol%〜31mol%含有される場合、緻密度が改善されて信頼性及び等価直列抵抗(ESR)特性が改善され、均一なガラス組成を有するガラス組成物が得られる。
【0039】
上記亜鉛酸化物はZnOを含むことができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、上記ガラスは、19〜31mol%の亜鉛酸化物を含有することで、外部電極の緻密度、耐食性、気密性、及び接着力を向上させることができる。上記ガラスが19〜31mol%の亜鉛酸化物を含有することで、金属母材に対するガラスの濡れ性(wettability)を増加させて、外部電極ペースト中に存在する気孔(pore)を外部電極用ペーストの外側に押し出すことで、緻密度の実現に有利な効果を奏することができる。
【0041】
亜鉛酸化物が19mol%未満含有される場合、亜鉛酸化物の含量が足りないため所定水準以上の緻密度が実現されず、これにより、信頼性及び等価直列抵抗(ESR)の改善効果が大きくない。また、亜鉛酸化物が31mol%を超過して含有される場合、過量の亜鉛酸化物により相分離現象が発生してガラス組成の局所的なばらつきが生じるため、所定水準以上の接合強度が実現されない。
【0042】
本発明の一実施形態によると、上記a、b、c及びdは、25(mol%)≦a≦60(mol%)、5(mol%)≦b≦30(mol%)、2(mol%)≦c≦15(mol%)、及び19(mol%)≦d≦31(mol%)を満たすことができる。
【0043】
すなわち、上記ガラス組成物の全体組成を基準として、上記ケイ素(Si)及びホウ素(B)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比は25mol%〜60mol%であり、上記リチウム(Li)、カリウム(K)及びバリウム(Ba)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比は5mol%〜30mol%であり、上記バナジウム(V)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物のモル比は2mol%〜15mol%であり、上記亜鉛(Zn)酸化物のモル比は19mol%〜31mol%であることができる。
【0044】
本発明の一実施形態によって、上記a、b、c及びdが25(mol%)≦a≦60(mol%)、5(mol%)≦b≦30(mol%)、2(mol%)≦c≦15(mol%)、及び19(mol%)≦d≦31(mol%)を満たす場合、金属粒子に対する濡れ性が高くて緻密度の実現に有利であり、焼成過程で均一に融着されて外部電極をセラミック素体に強固に接合させるだけでなく、外部電極が形成されたセラミック本体の端面を気密封止(hermetic sealing)することができるガラス組成物及び上記組成のガラスを含有する外部電極用ペーストを提供することができる。
【0045】
本発明の一実施形態によると、上記a、b、c及びdの和がa+b+c+d=100(mol%)を満たすことができる。
【0046】
本発明の一実施形態によると、外部電極用ペーストに含有されたガラスの性能を強化することで、外部電極の形成時に高い緻密度を実現して、めっき液に対する耐食性が高く、セラミック本体の端面を気密封止することができるとともに、接着力が向上されて等価直列抵抗(ESR)特性に優れた外部電極用ペーストを提供することができる。
【0047】
本発明の一実施形態によると、ガラス内で網目形成物(network former)として機能する上記ケイ素(Si)及びホウ素(B)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物は、全体ガラス組成を基準として25〜60mol%含有されることが好ましい。
【0048】
上記ケイ素(Si)及びホウ素(B)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物が25mol%未満含有される場合、ガラス相の安定性が低下して失透現象が発生し得る。また、60mol%を超過して含有される場合、ガラスが液相を形成する温度が高くなって、電極の焼成温度で適切な液相を形成することができないという問題が発生し得る。
【0049】
上記ケイ素(Si)及びホウ素(B)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物は、SiO
2及びB
2O
3の一つ以上を含むことができる。
【0050】
上記リチウム(Li)、カリウム(K)及びバリウム(Ba)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物は、全体ガラス組成を基準として5〜30mol%含有されることが好ましい。上記リチウム(Li)、カリウム(K)及びバリウム(Ba)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物が5mol%未満含有される場合、ガラス構成成分中にモディファイアー(modifier)が足りなくて、ガラスの濡れ温度(Twet)に対する軟化温度(Ts)の比であるTs/Twetが上昇する恐れがあり、30mol%を超過して含有される場合、ガラスの耐酸性が低下して、めっき液に侵食されやすいという問題が発生し得る。
【0051】
上記濡れ温度(Twet)とは、基板上にガラス粉末で製作したペレット(Pellet)を昇温して軟化させた後、基板となす角(angle)が90゜となる温度を意味する。
【0052】
上記リチウム(Li)、カリウム(K)及びバリウム(Ba)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物は、Li
2O、K
2O及びBaOの一つ以上を含むことができる。
【0053】
上記バナジウム(V)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物は、全体ガラス組成を基準として2〜15mol%含有されることが好ましい。上記バナジウム(V)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物が2mol%未満含有される場合、ガラスの高温流動性を向上させる効果が得られにくく、15mol%を超過して含有される場合、ガラス相の安定性が低下して失透現象が発生し得る。
【0054】
上記バナジウム(V)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される何れか一つ以上の酸化物は、V
2O
5、MnO
2の一つ以上を含むことができる。
【0055】
上記のように、本発明の一実施形態による外部電極用ペーストは、上述の組成のガラスを含有することで、焼成過程中にセラミック本体と外部電極との界面で均一に融着されて、外部電極をセラミック本体に強固に接合させることができるとともに、内部電極が露出されたセラミック本体の端面の気密封止(Hermetic sealing)にも効果的であるという特性を有することができる。また、本発明の一実施形態によるガラスは、上記ガラスを含有する外部電極用ペーストの焼成過程で、金属粉末で形成された金属母材とガラスとの濡れ性(wettability)を増加させて、残存する気泡または気孔を外部電極用ペーストの界面の外側に効率的に押し出すことで、緻密度の実現に有利であるという効果を有することができる。これにより、外部電極上にめっき層を形成する際に発生し得るめっき液の浸透による信頼性の低下を防止することができる。
【0056】
また、本発明の一実施形態によるガラスを適用すると、外部電極の緻密度が向上して電流(電子)が移動する経路の面積が増加して、等価直列抵抗(ESR)が低減される効果がある。
【0057】
本発明の一実施形態による外部電極用ペーストに含有されたガラスは、ガラスフリットの形態で含有されることができ、金属粉末、特に、銅(Cu)との濡れ性に優れ、且つめっき液に対する耐食性を強化させる効果を得るために、適切なサイズに調節されることができる。
【0058】
例えば、上記ガラスフリットの平均粒子サイズは0.5μm〜5μmであることができる。
【0059】
また、本発明の一実施形態による外部電極用ペーストに含有された上記ガラスの含量は、本発明の目的に応じて多様に適用されることができ、例えば、上記金属粉末の体積を100としたときに、5〜20の体積比で含有されることができる。すなわち、金属粉末と上記ガラスの体積比は100:5〜100:20であることができる。
【0060】
上記ガラスの含量が100:5未満である場合には、めっき液の浸透を防いでチップの信頼性を向上させる効果が微小であり、100:20を超過する場合には、ガラスの溶融時に相分離が発生し得るため問題となる。
【0061】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を示した斜視図であり、
図2は
図1のA-A’に沿って切断した断面図である。
【0062】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、セラミック本体110と、上記セラミック本体110の内部に形成された内部電極121、122と、上記内部電極と電気的に連結された外部電極130と、を含む。
【0063】
上記セラミック本体110は、複数の誘電体層111を積層した後、焼結させたものであって、隣接する誘電体層同士は境界が確認できない程度に一体化されている。
【0064】
上記誘電体層111は、高い誘電率を有するセラミック材料からなることができ、これに制限されるものではないが、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)系材料などを用いることができる。
【0065】
上記内部電極121、122は、第1内部電極121と、第2内部電極122と、を含むことができる。上記第1及び第2内部電極は、互いに異なる極性を有する一対の電極であって、導電性金属を含有する導電性ペーストを誘電体層111上に所定の厚さに印刷して形成し、焼結により上記セラミック本体の内部に一誘電体層を挟んで形成されることができる。
【0066】
上記第1及び第2内部電極121、122は、誘電体層を挟んで互いに対向して配置され、誘電体層により互いに電気的に絶縁されることができる。
【0067】
上記内部電極121、122の一端は、交互に上記セラミック本体の両端面に露出されることができる。上記セラミック本体の端面に露出された内部電極121、122の一端は、外部電極130とそれぞれ電気的に連結されることができる。
【0068】
上記外部電極は、上記第1内部電極と電気的に連結される第1外部電極131と、上記第2内部電極と電気的に連結される第2外部電極132と、を含むことができる。
【0069】
上記外部電極131、132に所定の電圧を印加すると、互いに対向する内部電極121、122の間に電荷が蓄積される。積層セラミック電子部品の静電容量は、内部電極121、122の面積に比例する。
【0070】
上記内部電極121、122は導電性金属で形成される。上記導電性金属としては、特に制限されないが、例えば、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、または銅(Cu)などが挙げられ、これらを単独または2種以上混合して用いることができる。
【0071】
上記第1及び第2外部電極131、132は、上述の本発明の一実施形態による外部電極用ペーストを焼成して形成されるものであって、上記ペーストの組成及び含量は上述のとおりである。すなわち、上記第1及び第2外部電極131、132は、内部電極が露出されたセラミック本体の外部面に上述の一実施形態による外部電極用ペーストを塗布した後、上記ペーストを焼成することで形成することができ、金属粉末の焼成により形成された金属母材及び上述の組成のガラスを含有することができる。
【0072】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、上記のように、耐食性及び濡れ性に優れたガラス組成物を含有する外部電極用ペーストで形成された外部電極を含むため、めっき液に対する耐食性が高く、セラミック本体の端面の気密封止が可能であるため、信頼性に優れるだけでなく、接着力が高くて等価直列抵抗(ESR)特性が改善されることができる。
【0073】
実験例
本実験例では、下記表1に示したように各成分を該当組成比となるように秤量し、電気炉(electric furnace)を用いて溶融した後、ガラスを0.5μm〜5μmのサイズのガラスフリットに加工した。上記のように製造した各ガラスフリットと銅(Cu)粉末とを混合して外部電極用ペーストを製造した。上記外部電極用ペーストは、銅粉末100体積部に対して、約10体積部のガラスフリットを含有し、上記銅粉末の平均粒径は約0.5μmであった。
【0074】
次に、上記外部電極用ペーストを、積層セラミック電子部品を形成するためのセラミック本体に塗布した後、焼成して、積層セラミック電子部品の外部電極を形成した。
【0075】
上記セラミック本体は下記のように製作された。
【0076】
チタン酸バリウム(BaTiO
3)などの粉末を含有して形成されたスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥することで、約1μmの厚さを有する複数個のセラミックグリーンシートを製造した。
【0077】
次に、上記セラミックグリーンシート上に、ニッケルを含有する内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷法で塗布して、内部電極パターンを形成した。
【0078】
内部電極パターンが形成された上記セラミックグリーンシートを積層してなる積層体を等方加圧(isostatic pressing)成形した。圧着が完了したセラミック積層体を、内部電極パターンの一端が切断面を介して交互に露出されるように個別チップの形態に切断し、切断したチップを脱バインダー処理した。
【0079】
その後、内部電極が酸化されないように、Ni/NiO平衡酸素分圧より低い酸素分圧下の還元雰囲気で焼成してセラミック本体を形成した。焼成後のセラミック本体のサイズは長さ×幅×厚さ(L×W×T)が約0.6mm×0.3mm×0.3mm(L×W、0603サイズ)であった。
【0080】
次に、上述のように製造された上記外部電極用ペーストを上記セラミック本体に塗布した後、約770℃で約70分間焼成して外部電極を形成し、表1の組成からなるガラスを含有する外部電極の特性及び積層セラミックキャパシターの特性を評価した。また、めっき液の浸透による信頼性の低下及び等価直列抵抗を評価するために、上記外部電極上にニッケル(Ni)めっき層を形成した後、スズ(Sn)めっき層を形成した。
【0081】
接合強度は、テープテスト法で評価した。具体的に、テープを付着してから取り外す作業を10回繰り返した後、電極の形状が完全でない場合を、目標値に達していないと判定した。
【0082】
また、信頼性は、温度約85℃、相対湿度約85%の条件で、積層セラミック電子部品に定格電圧の約1.5倍の電圧を印加して6時間程度維持した際に、絶縁抵抗が急激に減少して初期絶縁抵抗値の1/10以下になる場合を、目標値に達していないと判定した。
【0083】
等価直列抵抗(ESR)は、ESR測定機を用いて評価し、等価直列抵抗が70mΩ以上である場合を、目標値に達していないと判定した。
【0084】
【表1】
*:比較例
各組成の単位:mol%
【0085】
接合強度の評価基準
○:優れる(200個の試料のうち、外部電極焼成後の接着強度が目標値に達していない試料が0個である場合)
△:普通(200個の試料のうち、外部電極焼成後の接着強度が目標値に達していない試料が1〜5個である場合)
×:不良(200個の試料のうち、外部電極焼成後の接着強度が目標値に達していない試料が5個以上である場合)
【0086】
信頼性の評価基準
○:優れる(200個の試料のうち、めっき層形成後の信頼性が目標値に達していない試料が0個である場合)
△:普通(200個の試料のうち、めっき層形成後の信頼性が目標値に達していない試料が1〜5個である場合)
×:不良(200個の試料のうち、めっき層形成後の信頼性が目標値に達していない試料が5個以上である場合)
【0087】
ESR特性の評価基準
○:優れる(200個の試料のうち、めっき層形成後の等価直列抵抗(ESR)が目標値に達していない試料が0個である場合)
△:普通(200個の試料のうち、めっき層形成後の等価直列抵抗(ESR)が目標値に達していない試料が1〜5個である場合)
×:不良(200個の試料のうち、めっき層形成後の等価直列抵抗(ESR)が目標値に達していない試料が5個以上である場合)
【0088】
以下では、表1のガラスの組成をa(Si、B)-b(Li、K、Ba)-c(V、Mn)-d(Zn)と表示して説明する。
【0089】
上述したように、(Si、B)はケイ素及びバリウム酸化物の一つ以上を意味し、(Li、K、Ba)はリチウム、カリウム及びバリウム酸化物の一つ以上を意味し、(V、Mn)はバナジウム及びマンガン酸化物の一つ以上を意味し、(Zn)は亜鉛酸化物の一つ以上を意味し、a、b、c、dはこれらのそれぞれのモル比(mol%)を意味する。
【0090】
表1のサンプル1は、比較例の酸化物系ガラスの組成を示すものであって、サンプル1の組成のガラスを含有する通常の外部電極用ペーストを適用した例である。サンプル1のガラスを適用した場合、接合強度、信頼性、ESRが全て普通の水準であり、特に、信頼性においてspet-outとなる場合が発生することがあって、外部電極ペースト用として用いるには不安定な点がある。
【0091】
サンプル2は、(Li、K、Ba)及び(Zn)の含量、すなわち、b及びdが本発明の一実施形態による範囲から外れた場合であり、サンプル3は、(V、Mn)及び(Zn)の含量、すなわち、c及びdが本発明の一実施形態による範囲から外れた場合である。サンプル2及び3の場合、接合強度は実現されたが、緻密度が実現されず、信頼性の低下及びESR増加の問題が発生した。
【0092】
サンプル4は、(Si、B)及び(Zn)の含量、すなわち、a及びdが本発明の一実施形態による範囲から外れた場合であって、サンプル1と類似の水準の緻密度を示したが、ESRが高いため外部電極用ペーストに用いるには適さないと判定された。
【0093】
サンプル5〜8は、(Zn)の含量、すなわち、dが本発明の一実施形態による範囲から外れた場合であって、亜鉛酸化物の含量が少なくて目標の緻密度が実現されなかったため、信頼性及びESR特性が低下した。
【0094】
また、サンプル9〜17は、本発明の実施例に該当するものであり、25(mol%)≦a≦60(mol%)、5(mol%)≦b≦30(mol%)、2(mol%)≦c≦15(mol%)、及び19(mol%)≦d≦31(mol%)を満たす場合である。サンプル9〜17の場合、微細構造の分析結果、非常に高い水準の緻密度を示し、これにより、接着強度、信頼性、及びESR特性に優れるため、外部電極ペーストとして用いる際に積層セラミック電子部品の性能を改善することができると確認された。
【0095】
サンプル18及び19は、(Zn)の含量、すなわち、dが本発明の一実施形態による範囲から外れた場合であって、過量の亜鉛酸化物により相分離現象が発生してガラス組成の局所的なばらつきが生じて、接着強度が実現されない問題が発生した。
【0096】
サンプル20は、(Zn)の含量、すなわち、dが本発明の一実施形態による範囲から外れた場合であって、サンプル1と類似の水準の接着強度、信頼性、及びESR特性を示し、外部電極用ペーストとして用いる際に積層セラミック電子部品の性能を改善しにくいことが確認された。
【0097】
サンプル21は、(Li、K、Ba)の含量、すなわち、bが本発明の一実施形態による範囲から外れた場合であって、軟化温度(Ts)及び濡れ温度(Twet)が低くて、外部電極の形成過程で金属粉末の液相焼結を補助する役割ができず、過量の液相ガラスが生成されて、物質の移動経路を増加させる副効果を示した。これにより、接着強度及び信頼性が低下する問題を伴うことが確認された。
【0098】
サンプル22は、(V、Mn)の含量、すなわち、cが本発明の一実施形態による範囲から外れた場合であって、ガラスが過量の反応層を形成して、セラミック本体の強度が弱くなり、接着強度及び信頼性に悪い影響を与えることが確認された。
【0099】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。