【解決手段】巻回部を有するコイルと、前記巻回部の内部に配置される内側コア部および前記巻回部の外側に配置される外側コア部を有する磁性コアと、を備えるリアクトルであって、前記巻回部の外周面に嵌め込まれることで前記巻回部に固定される外側ボビンと、前記内側コア部に固定されることで前記内側コア部に対する位置が決められている付帯部材と、を備え、前記外側ボビンと前記付帯部材とが前記巻回部の外側で係合しているリアクトル。
【発明を実施するための形態】
【0011】
・本発明の実施形態の説明
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0012】
<1>実施形態のリアクトルは、巻回部を有するコイルと、前記巻回部の内部に配置される内側コア部および前記巻回部の外側に配置される外側コア部を有する磁性コアと、を備えるリアクトルであって、前記巻回部の外周面に嵌め込まれることで前記巻回部に固定される外側ボビンと、前記内側コア部に固定されることで前記内側コア部に対する位置が決められている付帯部材と、を備え、前記外側ボビンと前記付帯部材とが前記巻回部の外側で係合しているリアクトルである。
【0013】
本実施形態のリアクトルでは、内側コア部とコイルとを外側ボビンで一体化させた組物を形成することで、従来よりもリアクトルの生産性を向上させている。組物は、外側ボビンを巻回部に嵌め込むと共に、内側コア部に位置決めされた付帯部材と外側ボビンとを係合させるだけで容易に作製することができる。場合によっては、接着剤を用いることなく組物を作製することも可能である。なお、上記構成は接着剤の使用を否定するものではなく、組物の作製にあたり接着剤を補助的に利用しても構わない。
【0014】
また、上記構成によれば、コイルの巻回部の内部における内側コア部の位置決めを精度良く行うことができる。巻回部に外側ボビンを嵌め込むことで巻回部に対する外側ボビンの位置が決まり、外側ボビンと付帯部材とを係合させることで外側ボビンに対する付帯部材の位置が決まるからである。付帯部材は内側コア部の端部に位置決めされた状態で固定されているので、付帯部材と外側ボビンを介して巻回部に対する内側コア部の位置が決まる。
【0015】
<2>実施形態のリアクトルとして、上記付帯部材は、上記巻回部の端面と上記外側コア部との間に介在される端部ボビンである形態を挙げることができる。
【0016】
付帯部材として端部ボビンを利用することで、上記組物の組み立てと同時に端部ボビンの配置を行うことができる。また、付帯部材として端部ボビンを利用することで、リアクトルの部品点数の増加を抑制することができ、リアクトルの生産性を向上させることができる。
【0017】
<3>実施形態のリアクトルとして、上記外側ボビンと上記付帯部材のいずれか一方は係合突起を備え、他方は上記係合突起に対応する係合孔を備え、上記係合孔に上記係合突起が嵌め込まれることで、上記外側ボビンと上記付帯部材とが係合されている形態を挙げることができる。
【0018】
係合突起と係合孔とを用いた機械的な係合機構は、容易に形成することができ、しかも係合強度に優れる。係合突起と係合孔は、どちらを外側ボビンに設けても良いが、係合突起を外側ボビンに設け、係合孔を付帯部材に設けることが好ましい。
【0019】
<4>実施形態のリアクトルとして、上記外側ボビンは、上記巻回部の外方から外側ボビンを嵌め込むための嵌め込み用スリットを備える形態を挙げることができる。
【0020】
外側ボビンに嵌め込み用スリットを設けることで、嵌め込み用スリットを介して巻回部の外周面側から外側ボビンを嵌め込むことができるため、巻回部への外側ボビンの嵌め込みを容易にすることができる。
【0021】
<5>実施形態のリアクトルとして、上記巻回部は、角筒状に形成されており、上記外側ボビンは、上記角筒状の巻回部の周方向に並ぶ4つの角部のうち、少なくとも3つの角部を保持する保持部を備える形態を挙げることができる。
【0022】
角筒状の巻回部の少なくとも3つの角部を保持部で保持することで、巻回部に対する外側ボビンの固定状態をより強固にすることができる。
【0023】
<6>実施形態のリアクトルとして、上記外側ボビンの内周に、上記巻回部のターン間に介在される櫛歯を備える形態を挙げることができる。
【0024】
外側ボビンに櫛歯を形成することで、巻回部の外周面に外側ボビンを嵌め込んだときに、巻回部の各ターンを離隔させ、各ターン間の絶縁を確保することができる。また、櫛歯が各ターン間に介在されることで、巻回部に対する外側ボビンの固定状態をより強固にすることができる。巻回部に外側ボビンが強固に固定されていることで、リアクトルの動作時の振動を抑制することができる。
【0025】
<7>実施形態のリアクトルとして、上記外側コア部を上記付帯部材に一体化させる樹脂モールド部を備える形態を挙げることができる。
【0026】
樹脂モールド部で外側コア部を付帯部材に一体化させる構成であれば、外側コア部を付帯部材に強固に一体化させることができる。また、上記組物に外側コア部を一体化する際に接着剤を不要とすることができる。コイルと内側コア部と外側ボビンとの組物の作製にも接着剤を利用しない場合、リアクトルの全作製過程から接着剤の使用を排除することができる。その場合、接着剤の保管・管理が不要になる、接着剤を硬化させる工程が不要になる、といった効果を得ることができる。
【0027】
<8>実施形態のリアクトルとして、上記外側コア部と上記付帯部材とがスライド連結機構によって一体化されており、上記スライド連結機構は、スライドレールと、このスライドレールがスライド係合されるスライド溝と、を備える形態を挙げることができる。
【0028】
スライド連結機構であれば、コイルと内側コア部と外側ボビンとの組物に、外側コア部を容易に一体化させることができる。上記スライド連結機構のスライドレールとスライド溝は、どちらを付帯部材に設けても構わないが、スライドレールを付帯部材に設け、スライド溝を外側コア部に設けることが好ましい。スライド溝を形成するには部材にある程度の厚みが必要であるため、付帯部材に比べて外側コア部にスライド溝を設け易いからである。例えば、後述する実施形態2に示すように、外側コア部の外周を樹脂で被覆し、その樹脂の部分にスライド溝を設けるなどの対応を行うことができる。
【0029】
<9>上記スライド連結機構を備える実施形態のリアクトルとして、上記外側ボビンは、上記巻回部の軸方向に平行な方向に伸びる係合突起を備え、上記付帯部材は、上記係合突起が嵌め込まれる係合孔を備え、上記係合孔に嵌め込まれた上記係合突起が、上記スライドレールの一部を構成する形態を挙げることができる。
【0030】
係合突起をスライドレールの一部とすることで、付帯部材がスライド作業の邪魔となることを回避することができる。
【0031】
・本発明の実施形態の詳細
以下、本発明のリアクトルの実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0032】
<実施形態1>
≪全体構成≫
図1〜5を参照して、実施形態1のリアクトル1αを説明する。
図1はリアクトル1αの概略斜視図、
図2はリアクトル1αに備わる組物1と外側コア部32の概略斜視図、
図3は組物1の概略分解斜視図である。また、
図4は組物1の構成部材の一つであるコア部品3A,3Bの概略斜視図、
図5は組物1の構成部材の一つである外側ボビン4A,4Bの概略斜視図である。なお、
図1においては、リアクトル1αの構成部材の一つである樹脂モールド部6A,6Bをクロスハッチングで示している。
【0033】
図1の概略斜視図に示す本実施形態のリアクトル1αは、従来のリアクトルと同様にコイル2と、環状の閉磁路を形成する磁性コア(
図1では見えない位置にある)とを備え、その紙面下側の面を冷却ベースなどの設置対象に接触させた状態で使用される。コイル2は、巻線を巻回してなる巻回部2A,2Bを有する部材である。磁性コア3は、巻回部2A,2Bの内部に配置される内側コア部31(
図3を参照し後ほど説明する)と、巻回部2A,2Bに覆われずに巻回部2A,2Bから突出する外側コア部32(
図2を参照し後ほど説明する)と、を備え、環状の閉磁路を形成する。この本実施形態のリアクトル1αは、コイル2と内側コア部31と外側ボビン4A,4Bの組物1を備える(特に、
図3を参照)。この組物1の構成(特に、外側ボビン4A,4Bの存在)が、従来のリアクトルとの主な相違点である。以下、リアクトル1αに備わる各構成を詳細に説明する。
【0034】
≪組物≫
組物1の説明では主として
図2,3を参照し、必要に応じて
図4,5を参照する。組物1は、コイル2と、コイル2に備わる各巻回部2A,2Bの外周面に嵌め込まれる外側ボビン4A,4Bと、各巻回部2A,2Bの内部に挿入される一対の内側コア部31,31(
図3を参照)と、を機械的に組み合わせることで構成されている。各内側コア部31の軸方向端部には、外側ボビン4A,4Bと機械的に係合する付帯部材51が設けられており、コイル2と外側ボビン4A,4Bと内側コア部31とを組み合わせたときに、各部材の相対的な位置が決まるように構成されている。なお、本実施形態では、付帯部材51として、巻回部2A,2Bの端面と外側コア部32との間に介在される端部ボビンを利用している(
図1を合わせて参照)。以下、組物1の各構成を詳細に説明する。
【0035】
[コイル]
本実施形態におけるコイル2は、
図3に示すように、一対の巻回部2A,2Bと、両巻回部2A,2Bを連結する連結部2Rと、を備える。各巻回部2A,2Bは、互いに同一の巻数、同一の巻回方向で中空筒状に形成され、各軸方向が平行になるように並列されている。また、連結部2Rは、両巻回部2A,2Bを繋ぐU字状に屈曲された部分である。このコイル2は、接合部の無い一本の巻線を螺旋状に巻回して形成しても良いし、各巻回部2A,2Bを別々の巻線により作製し、各巻回部2A,2Bの巻線の端部同士を溶接や圧着などにより接合することで形成しても良い。
【0036】
本実施形態の各巻回部2A,2Bは角筒状に形成されている。角筒状の巻回部2A,2Bとは、その端面形状が四角形状(正方形状を含む)の角を丸めた形状の巻回部のことである。もちろん、巻回部2A,2Bは円筒状に形成しても構わない。円筒状の巻回部とは、その端面形状が閉曲面形状(楕円形状や真円形状、レーストラック形状など)の巻回部のことである。
【0037】
巻回部2A,2Bを含むコイル2は、銅やアルミニウム、マグネシウム、あるいはその合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線によって構成することができる。本実施形態では、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線をエッジワイズ巻きにすることで、各巻回部2A,2Bを形成している。
【0038】
コイル2の両端部2a,2bは、巻回部2A,2Bから引き延ばされて、端子部材8a,8b(
図2参照)に接続される。この端子部材8a,8bを介して、コイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置(図示せず)が接続される。端部2a,2bの引き出し方向は特に限定されないが、本実施形態では、巻回部2A,2Bの軸方向としている。
【0039】
[外側ボビン]
外側ボビン4A,4Bは、巻回部2A,2Bの外周に嵌め込まれることで巻回部2A,2Bに固定される部材である。外側ボビン4A,4Bの主たる役割は、後述する付帯部材(端部ボビン51)に機械的に係合し、巻回部2A,2Bの内部における内側コア部31の位置を決めることである。
【0040】
外側ボビン4A,4Bは、
図5に示すように、2つの貫通孔を有する板材を、両貫通孔の間の位置でL字に折り曲げたような形状、言い換えれば2つの額縁状の部材をL字状に繋ぎ合わせたような形状の部材である。L字の開放部分は、外側ボビン4A,4Bを巻回部2A,2B(
図2,3を参照)に嵌め込む際に用いられる嵌め込み用スリットとして機能する。外側ボビン4A,4Bに嵌め込み用スリットを設けることで、巻回部2A,2Bの外周側から外側ボビン4A,4Bを嵌め込むことができるので、巻回部2A,2Bへの外側ボビン4A,4Bの取付けが容易である。
【0041】
外側ボビン4A,4BにおけるL字の屈曲部分(符号40を参照)の内周面は、角筒状の巻回部2A,2B(
図3を参照)の角部に対応する形状となっている。また、概略L字型の外側ボビン4A,4Bのうち、L字の端部に相当する部分(符号41,42を参照)は、角筒状の巻回部2A,2Bの角部に対応する形状に湾曲している。L字の屈曲する位置にある屈曲部(保持部)40、およびL字の端部に位置する湾曲部(保持部)41,42はそれぞれ、巻回部2A,2Bの周方向に並ぶ4つの角部のうち、巻回部2A,2Bの下面と外側面とを繋ぐ角部、下面と内側面とを繋ぐ角部、および外側面と上面とを繋ぐ角部を保持する(
図3を合わせて参照)。この保持部40,41,42によって、巻回部2A,2Bに対する外側ボビン4A,4Bの固定状態が安定し、巻回部2A,2Bから外側ボビン4A,4Bが外れ難くなる。なお、巻回部2A,2Bが円筒状である場合、外側ボビン4A,4Bは、その端面形状が巻回部2A,2Bの周長の半分超、3/4以下の長さを有する円弧形状とすると、巻回部2A,2Bの外周から嵌め込み可能で、かつ巻回部2A,2Bに確りと固定される外側ボビン4A,4Bとすることができる。
【0042】
湾曲部40,41,42の内周面には、複数の櫛歯4cが形成されている。隣接する櫛歯4cの間隔は、巻回部2A,2Bの各ターンの厚みにほぼ等しくなっている。そのため、外側ボビン4A,4Bを巻回部2A,2Bの外周に嵌め込んで各櫛歯4cが巻回部2A,2Bのターン間に挿入されたときに、隣接する櫛歯4cの間に各ターンが嵌まり込む。この櫛歯4cによって、各ターン間を離隔させ、ターン間の絶縁を確保すると共に、ターン同士が擦れ合って導線表面のエナメル被覆が損傷することを抑制することができる。また、外側ボビン4A,4Bの櫛歯4cが巻回部2A,2Bの各ターン間に嵌まり込むことで、巻回部2A,2Bに外側ボビン4A,4Bが強固に固定されるため、車両から伝わる振動による外側ボビン4A,4Bの脱落も抑制できる。
【0043】
外側ボビン4A,4Bの保持部42における外側ボビン4A,4Bの軸方向の一端側と他端側にはそれぞれ、巻回部2A,2Bの第一ターンと最終ターンとが嵌め込まれるターン収納部421,422が形成されている。両ターン収納部421,422の間の長さL
1は、両収納部421,422の間に配置されるターンの合計厚さと、外側ボビン4A,4Bの複数の櫛歯の合計厚さと、を足した長さL
2にほぼ等しくなっている(L
1=L
2±1mm以下)。このようなサイズに外側ボビン4A,4Bを形成することで、巻回部2A,2Bから外側ボビン4A,4Bを外れ難くすることができる。
【0044】
上記構成を備える外側ボビン4A,4Bはさらに、外側ボビン4A,4B自身と後述する付帯部材51(
図3を参照)とを機械的に係合させるための係合突起4pを備える。本実施形態における係合突起4pは、外側ボビン4A,4Bの軸方向(巻回部2A,2Bの軸方向に同じ)に突出する突起であって、外側ボビン4A,4Bの軸方向の一端側と他端側にそれぞれ一つずつ設けられている。その係合突起4pは、略四角柱状の突起であって、その先端部が斜めに切り欠かれた先細りの形状となっている。係合突起4pを先細りの形状とすることで、後述する係合孔5hに係合突起4pを嵌め込み易くすることができる。
【0045】
外側ボビン4A,4Bは、非導電性の材質で構成されることが好ましい。そうすることで、リアクトル1αを設置対象に接触させたときに、設置対象とコイルとの間の絶縁を確保し易い。非導電性の材質としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6、ナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂を利用することができる。その他、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂を利用することも可能である。樹脂は可撓性に優れるため、巻回部2A,2Bに外側ボビン4A,4Bを嵌め込み易くできるため、好ましい。上記樹脂にセラミックスフィラーを含有させて、外側ボビン4A,4Bの放熱性を向上させても良い。セラミックスフィラーとしては、例えば、アルミナやシリカなどの非磁性粉末を利用することができる。
【0046】
[内側コア部および付帯部材]
本実施形態においては、内側コア部31と付帯部材(端部ボビン)51とは、両者が一体になった概略L字型のコア部品3A,3Bの形態で用いられる。より具体的には、内側コア部31の外周を樹脂被覆でモールドし、その樹脂被覆の一部でもって端部ボビン51を形成している。両コア部品3A,3Bは、
図4に示すように同一形状の部材であり、コア部品3Aを水平方向に180°回転させれば、コア部品3Bになる。従って、コア部品3Bの各部には、コア部品3Aと同一の符号を付している。なお、両コア部品3A,3Bは、必ずしも同一形状でなければならないわけではない。
【0047】
コア部品3A,3Bに含まれる内側コア部31は、磁性材料を含む略直方体状のコア片31mと、コア片31mよりも低透磁率のギャップ材31gとが交互に連結された積層柱状体である。その他、内側コア部31は、一本の柱状のコア片で構成されていても構わない。内側コア部31は、全体が巻回部2A,2Bの内部に収納されていても良いし、その軸方向の一端側および他端側の少なくとも一部が巻回部2A,2Bから突出していても良い。このような内側コア部31を構成するコア片31mには、鉄などの鉄属金属やその合金などに代表される軟磁性粉末を用いた圧粉成形体や、軟磁性粉末を含む樹脂からなる成形硬化体、絶縁被膜を有する磁性薄板(例えば、電磁鋼板)を複数積層した積層体などが利用できる。また、ギャップ材31gには、アルミナなどの非磁性材を利用することができる。その他、ギャップ材31gは、後述するコア被覆部52を形成する樹脂によって形成することも可能である。
【0048】
上記内側コア部31にモールドされる被覆樹脂によって、内側コア部31の端面に固定される端部ボビン51と、内側コア部31の外周面を覆うコア被覆部52と、が形成される。もちろん、別々に用意した端部ボビン51と、コア被覆部52で覆った内側コア部31と、を接続することでコア部品3A,3Bを形成することもできる。
【0049】
端部ボビン51は、
図2に示すように、巻回部2A,2Bの端面と外側コア部32との間に介在され、内側コア部31と外側コア部32とを位置決めすると共に、コイル2と外側コア部32との間の絶縁を確保する部材である。また、端部ボビン51は、本実施形態においては、前述の外側ボビン4A,4Bと機械的に係合される付帯部材でもある。そのため、端部ボビン51には、外側ボビン4A,4Bの係合突起4pを嵌め込むための係合孔5hが形成されている(
図3,4を参照)。
【0050】
本実施形態における係合孔5hの内形・内寸は、外側ボビン4A,4Bの係合突起4pを圧入することができる内形・内寸である。具体的には、係合突起4pの根元部分の外形に相似し、当該外形よりも若干小さな内形・内寸の係合孔5hとする。
【0051】
端部ボビン(付帯部材)51における外側コア部32が配置される面(コア部品3A参照)である外側面には、端部ボビン51における外側コア部32の取付位置を規定する位置決め部511,512が形成されている(
図2を合わせて参照)。位置決め部511,512は端部ボビン51の外側面から突出する突起であって、その全体形状がカギ括弧状に形成されている。これらカギ括弧状の位置決め部511,512で囲まれる部分は他の部分よりも若干凹んでおり、その凹んだ部分(収納空間51s)に、外側コア部32の端部の一部を収納させることで、端部ボビン51における外側コア部32の位置が決まるようになっている。
【0052】
位置決め部511,512のうち、リアクトル1αの下方側にある位置決め部512は、後述する樹脂モールド部6A,6B(
図1を参照)の脱落を抑制する脱落抑制部としての機能も備える。具体的には、
図4の点線丸囲みに示すように、位置決め部512の断面が概略L字型に形成されている、即ち位置決め部512の突出方向端部が外方側(収納空間51sとは逆側)に屈曲している。
【0053】
収納空間51sの底面には、底面から突出する複数の突出部51pが形成されている。これらの突出部51pは、収納空間51sに嵌め込まれた外側コア部32を収納空間51sの底面から間隔をあけて支持するためのものである(
図2を合わせて参照)。外側コア部32を収納空間51sの底面から間隔をあけて支持することで、後述する樹脂モールド部6A,6Bで外側コア部32を端部ボビン51に一体化する際、外側コア部32の端面と収納空間51sの底面との間に樹脂を行き渡らせることができる。そのため、内側コア部31と外側コア部32との間に形成される隙間を樹脂で埋めることができる。このように、内側コア部31と外側コア部32とのギャップに樹脂が入り込んで、空隙が殆ど形成されないことで、空隙に起因する磁気特性(インダクタンスなど)のばらつきを少なくでき、安定した磁気特性が得られる。また、端部ボビン51と外側コア部32との間に形成される隙間に樹脂が充填されることによって、空隙が殆ど形成されないため、端部ボビン51と外側コア部32との接合強度を向上できる。外側コア部32と端部ボビン51とが後述する樹脂モールド部6A,6Bで強固に一体化されることで、車両から伝わる振動による外側コア部32と端部ボビン51とのがたつきや空隙に伴う振動を抑制する効果が期待できる。
【0054】
また、本実施形態では、突出部51pが複数箇所に分散して配置されていることで、各突出部51p間に樹脂の流路が形成されており、外側コア部32の端面と収納空間51sの底面との間に樹脂を行き渡らせ易くなっている。突出部51pの配置によって樹脂の流れを調整することができ、ムラのない樹脂の充填を実現することができる。このような突出部51pの底面からの突出高さは、内側コア部31と外側コア部32と間に所定長のギャップが形成されるように適宜選択できる。また、突出部51pの配置箇所は、内側コア部31(端部ボビン51)と外側コア部32との隙間に樹脂がスムースに流れるように、樹脂の粘度などに応じて適宜選択できる。この例のように、収納空間51sに突出部51pを分散配置して樹脂の流路を形成し、突出部51pの数や配置を調整することによって流路の形成状態を変化させることで、スムースな樹脂の流れを作り出すことができる。
【0055】
収納空間51sの底面のうち、内側コア部31の端面に対応する部分には窓51wが形成されており、この窓51wから内側コア部31の端面が露出している。そのため、樹脂モールド部6A,6Bで外側コア部32を端部ボビン51に一体化させたときに、窓51wに樹脂が流れ込んで、内側コア部31と外側コア部32との間に樹脂ギャップが形成される。
【0056】
また、一方のコア部品3A(3B)の収納空間51sの底面のうち、他方のコア部品3B(3A)の内側コア部31に対応する部分には、挿入孔51hが形成されている。コア部品3A(3B)の挿入孔51hは、コア部品3B(3A)の細径部522を挿入するための孔である。
【0057】
端部ボビン51における収納空間51sとは反対側の面である内側面(内側コア部31が固定される側の面)には、筒部51cと仕切り部51dが形成されている。筒部51cは、内側面から突出し、前述の挿入孔51hを形成している。
【0058】
仕切り部51dは、上記筒部51cとコア被覆部52で覆われる内側コア部31との間の位置で、端部ボビン51の内側面から突出するように設けられている。この仕切り部51dは、コア部品3A,3Bをコイル2に組み付けたときに、巻回部2A,2Bの間に介在され、両巻回部2A,2Bの離隔状態を保持する(
図3を合わせて参照)。この離隔によって、両巻回部2A,2B間の絶縁を確実に確保することができる。
【0059】
一方、端部ボビン51と同様に被覆樹脂で形成されるコア被覆部52は、内側コア部31の周面を、その長手方向の全長に亘って覆っている。つまり、コア被覆部52は、従来構成における内側ボビンの役割を担っている。このコア被覆部52は、端部ボビン51から所定の長さに亘る太径部521と、その太径部521に連続する細径部522とからなる。細径部522の外径は太径部521の外径よりも小さく、細径部522の内径は太径部521の内径と等しい。つまり、細径部522は、太径部521よりも薄肉に形成されている。細径部522の外形形状は、上述した筒部51cの内形形状にほぼ一致しており、細径部522を他方のコア部品の筒部51cに挿入できるようになっている。そのため、コア部品3Aとコア部品3Bとを互いに近づけると、両コア部品3A,3Bの細径部522と筒部51cとが嵌め合わされ、両コア部品3A,3Bが環状に繋がった状態となる。このとき、太径部521と細径部522との間に形成される段差が筒部51cの端部に当て止めされるため、両コア部品3A,3Bの相対的な位置が所定位置に決まる。
【0060】
以上説明した端部ボビン51およびコア被覆部52の構成材料には、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCP、PA樹脂、PBT樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂を利用することができる。その他、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂を利用することも可能である。また、これらの樹脂にセラミックスフィラーを含有させて、部材51,52の放熱性を向上させても良い。セラミックスフィラーとしては、例えば、アルミナやシリカなどの非磁性粉末を利用することができる。
【0061】
この例では、樹脂モールドによって内側コア部31にコア被覆部52を形成すると共に、端部ボビン51を一体成形することで、内側コア部31の端部に端部ボビン51を固定している。もちろん、コア被覆部52を有する内側コア部31と端部ボビン51とを別々に用意し、内側コア部31の端部に端部ボビン51を接着や嵌合などによって固定して、コア部品3A,3Bを形成することも可能である。
【0062】
さらにこの例では、コア被覆部52を樹脂モールドして形成する際に、金型内にコア片31mを間隔をあけて配置しておき、コア片31m間の空隙に樹脂を充填することで、ギャップ材31gを形成している。これにより、複数のコア片31mが一体化されると共に、コア片31m間にコア被覆部52を形成する樹脂によって形成されたギャップ材31gが配置された内側コア部31が得られる。
【0063】
≪外側コア部≫
以上説明した組物1には、
図2に示すように、一対の外側コア部32,32が取り付けられる。外側コア部32は、上述したコア部品3A,3Bに備わる内側コア部31と共に環状の磁性コア3を形成する部材である。外側コア部32の形状は、巻回部2A,2Bの内部に配置される一対の内側コア部31,31の端面と繋ぐことができる形状であれば特に限定されない。例えば、図示するように、上面と下面とは略ドーム状の柱状体の外側コア部32を利用することができる。その他、略直方体状の外側コア部を利用することもできる。
【0064】
外側コア部32は、
図4に示す内側コア部31のコア片31mと同様に、電磁鋼板を積層した積層体で構成しても良いし、軟磁性粉末を加圧成形した圧粉成形体で構成しても良いし、樹脂中に軟磁性粉末を分散させた複合材料で構成しても良い。この外側コア部32と内側コア部31のコア片31mとは同じ構成としても良いし、異なる構成としても良い。後者の例として、例えば内側コア部31を圧粉成形体で構成し、外側コア部32を複合材料で構成することが挙げられる。
【0065】
≪樹脂モールド部≫
図2に示す組物1と外側コア部32とは、
図1に示すように樹脂モールド部6A,6Bによって一体化されている。本実施形態においてはさらに、端子部材8a,8bと金属製のカラー6hとが、樹脂モールド部6A,6Bによって組物1に一体化されている。端子部材8a,8bは、コイル2の端部2a,2bに接続される電力供給路である。また、カラー6hは、リアクトル1αを設置対象に固定するための取付孔を構成する。
【0066】
樹脂モールド部6A,6Bは、インサート成形によって形成することができる。例えば、金型の内部に組物1と外側コア部32とを配置した状態で金型内に樹脂モールド部6A,6Bの材料となる樹脂を充填すれば、組物1と外側コア部32とを一体化する樹脂モールド部6A,6Bを形成することができる。
【0067】
樹脂モールド部6A,6Bを構成する樹脂としては、例えば、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCP、PA樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、PBT樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂を利用することができる。その他、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂を利用することも可能である。不飽和ポリエステルは、割れ難く、安価であるなどの利点がある。また、これらの樹脂にアルミナやシリカなどのセラミックスフィラーを含有させて、樹脂モールド部6A,6Bの放熱性を向上させても良い。
【0068】
≪その他の構成≫
図1に示す巻回部2A,2Bの間に形成される隙間にセンサユニットを配置することが好ましい。センサユニットは、センサと、センサを保持するホルダと、センサの検知結果を伝送するケーブル部と、を備え、リアクトル1αの動作時の物理量を測定する部材である。センサは、例えばサーミスタといった感熱素子や、加速度センサなどである。また、ホルダは、センサを保持すると共に、巻回部2A,2Bの間の位置にセンサを固定するための部材である。巻回部2A,2Bのターン間に介在される櫛歯をホルダに設けると、ホルダのコイル2に対する固定状態を強固にすることができる。
【0069】
≪リアクトルの作製手順≫
以上説明した構成を備えるリアクトル1αの作製手順を
図1〜
図3に基づいて説明する。
【0070】
[組物の作製]
まず、
図2に示す組物1を作製する。そのためには、
図3に示すように、コイル2、外側ボビン4A,4B、およびコア部品3A,3Bを用意する。そして、コイル2の巻回部2A,2B外周面に外側ボビン4A,4Bを嵌め込む。その際、外側ボビン4A,4Bの櫛歯4cを巻回部2A,2Bのターン間に介在させる。このとき、巻回部2A,2Bの第一ターンと最終ターンはそれぞれ、外側ボビン4A,4Bのターン収納部421,422(
図5を参照)に嵌まり込み、巻回部2A,2Bの外周面に外側ボビン4A,4Bが確りと固定される。
【0071】
次いで、コア部品3A,3Bの内側コア部31,31を、巻回部2A,2Bの内部に挿入する。そして、外側ボビン4A,4Bの係合突起4pを、コア部品3A,3Bの端部ボビン51に設けられる係合孔5hに嵌め込んで、外側ボビン4A,4Bと端部ボビン51とを機械的に係合させる。このとき、コア部品3Aの細径部522は、コア部品3Bの挿入孔51hに挿入されると共に、コア部品5Bの細径部522は、コア部品3Aの挿入孔51hに挿入され、
図2に示すように両コア部品3A,3Bが環状に繋がる。挿入孔51hに挿入された細径部522は、収納空間51sの底面から突出する(
図2を参照)。細径部522の突出長さは、突出部51pの突出長さ以下である。
【0072】
上記組物1においては、巻回部2A,2Bに対する外側ボビン4A,4Bの位置が決まっており、外側ボビン4A,4Bに対する端部ボビン51の位置が決まっている。端部ボビン51は内側コア部31と一体化されているので、端部ボビン51と外側ボビン4A,4Bを介して巻回部2A,2Bに対する内側コア部31の位置が精度良く決まっている。
【0073】
[組物への外側コア部の一体化]
次いで、
図2に示すように、組物1における端部ボビン51の収納空間51sに外側コア部32を嵌め込み、さらにコイル2の端部2a,2bに半田などで端子部材8a,8bを接続する。外側コア部32の嵌め込みの際、外側コア部32の嵌め込み側の端面に接着剤を塗布しておいても良い。
【0074】
組物1と外側コア部32,32と端子部材8a,8bとの一体物を金型内に配置すると共に、取付孔を構成する金属製のカラー6h(
図1参照)を金型内に配置する。そして、金型内に樹脂を充填し、樹脂を硬化させることで、
図1のリアクトル1αを完成させることができる。金型内に充填された樹脂は、外側コア部32,32と端部ボビン51との隙間に行き渡る。端部ボビン51の収納空間51sの底面に突出部51pが形成されているため、当該底面から外側コア部32,32が離隔した状態になっているからである。
【0075】
ここで、
図4の点線丸囲みに示すように、端部ボビン51に設けられる位置決め部512は、L字型に形成されていることは既に述べた。このL字に屈曲された部分が、釣り針の返し(Barb)のような役割を果たし、端部ボビン51と樹脂モールド部6A,6Bとの結合強度を向上させる。
【0076】
≪効果≫
以上説明したように、本実施形態のリアクトル1αは、生産性に優れる。外側ボビン4A,4Bを巻回部2A,2Bに嵌め込むと共に、外側ボビン4A,4Bと端部ボビン(付帯部材)51とを機械的に係合させるだけで、コイル2と内側コア部31と外側ボビン4A,4Bとを一体化させた組物1を容易に作製することができるからである。場合によっては、接着剤を用いることなく組物1を作製することも可能である。
【0077】
また、本実施形態のリアクトル1αでは、外側ボビン4A,4Bによって巻回部2A,2Bに対する内側コア部31の位置が精度良くきまっており、しかも巻回部2A,2Bと内側コア部31との相対的な位置関係が外側ボビン4A,4Bによって維持されている。そのため、内側コア部31,31と巻回部2A,2Bとの絶縁を保った上で、適切な配置に位置決めする工程を、接着剤を必須とすることなく実現でき、組物1を容易に作製できる。また、車両から伝わる振動により内側コア部31が巻回部2A,2Bの内周面に擦れて、巻回部2A,2Bが損傷することを抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態のリアクトル1αは、ケースに収納してポッティング樹脂で埋設したり、全体を樹脂でモールドしたりすることなく、
図1に示す組立状態のままで設置対象に設置し、使用することができる。リアクトル1αを構成する各部材が確りと組み合わされて分解しないようになっているからである。このリアクトル1αではコイル2などがむき出しの状態となっているため、例えば液体冷媒などにリアクトル1αを浸漬した状態で使用したときに、リアクトル1αを効率的に冷却することができる。その結果、熱によってリアクトル1αの動作が不安定になることを抑制することができる。なお、リアクトル1αの設置の向きは特に限定されず、リアクトル1αの下面(紙面下側の面)を設置対象に設置しても良いし、それ以外の面を設置対象に設置しても良い。
【0079】
<変形実施形態1−1>
実施形態1では、
図3に示すように、外側ボビン4A,4Bに係合突起4pを形成し、付帯部材51に係合孔5hを形成している。これに対して、外側ボビン4A,4Bに係合孔を形成し、付帯部材51に係合突起を形成しても構わない。
【0080】
<変形実施形態1−2>
実施形態1では、係合方向(係合孔5hに係合突起4pを挿入する方向)が、巻回部2A,2Bの軸方向と同一の方向であったが、係合方向はこの方向に限定されるわけではない。例えば、巻回部2A,2Bの並列方向に係合方向を設定しても構わない。
図3を用いて具体例を説明すれば、コア被覆部52(内側ボビンに相当)の外側面のうちの端部ボビン51に近接する位置に係合孔を形成し、外側ボビン4A,4BのL字のフレーム部分の位置に、内方側に突出する係合突起を形成することが挙げられる。この形態は、コア被覆部52を付帯部材として利用する形態である。この形態の場合、コイル2にコア部品3A,3Bを組み付けた後、外側ボビン4A,4Bを巻回部2A,2Bに取り付けると良い。
【0081】
<変形実施形態1−3>
外側ボビン4A,4Bと付帯部材51との機械的な係合は、係合孔5hへの係合突起4pの圧入に限定されるわけではない。例えば、先端に返し(Barb)を持った係合突起と、返しが引っ掛かる係合孔と、で構成されるスナップフィット構造などを利用することができる。
【0082】
<変形実施形態1−4>
実施形態1では、外側ボビン4A,4Bの内周面に予め櫛歯4cを形成した例を説明した。これに対して、櫛歯を有さない外側ボビン4A,4Bを巻回部2A,2Bの外周に嵌め込んでも構わない。さらに、外側ボビン4A,4Bを加熱することで外側ボビン4A,4Bの一部を溶融させ、その溶融物が巻回部2A,2Bのターン間に入り込むようにしても良い。その場合、外側ボビン4A,4Bのうちの少なくとも巻回部2A,2Bに対向する箇所を熱可塑性樹脂で構成する。この構成はつまり、巻回部2A,2Bに外側ボビン4A,4Bを嵌め込んだ後に、櫛歯4cを形成する構成である。
【0083】
<実施形態2>
実施形態2では、
図6に示す分解斜視図に基づいて、外側コア部32をスライド連結機構9によって組物1’に一体化したリアクトル1βを説明する。なお、
図6のリアクトル1βにおける実施形態1のリアクトル1αと同一の構成については、リアクトル1αの符号と同一の符号を付している。
【0084】
スライド連結機構9は、組物1’の端部ボビン(付帯部材)51に形成されるスライドレール9rと、外側コア部32に形成されるスライド溝9gと、で構成される。スライド溝9gにスライドレール9rをスライド嵌合させることで、組物1’に外側コア部32を機械的に係合させることができる。以下、組物1’と外側コア部32の構成を主として説明を行う。
【0085】
≪組物≫
組物1’は、実施形態1と同様に、コイル2と外側ボビン4A,4Bと、コア部品3C,3Dと、を機械的に組み合わせることで構成される。コイル2は、その端部2a,2bがスライド嵌合の邪魔とならないように上方側に引き出されている以外は、実施形態1と同様の構成を備える。外側コア部4A,4Bは、実施形態1と同様の構成であり、コア部品3C,3Dと機械的に係合される係合突起4pを備える。一方、コア部品3C,3Dは、実施形態1のコア部品3A,3Bと同様、内側コア部31を樹脂被覆した概略L字型の部材であるが、端部ボビン(付帯部材)51’の構成が実施形態1のコア部品3A,3Bと異なる。
図6では見えない位置にあるが、両コア部品3C,3Dの内側コア部は樹脂被覆され、コア部品3C(3D)の内側コア部は、他のコア部品3D(3C)に嵌合されている。
【0086】
コア部品3C,3Dの端部ボビン51’は、四つのL字型突起51rと、外側ボビン4A,4Bの係合突起4pを圧入する係合孔5hと、当て止め部51eと、を備える。
【0087】
L字型突起51rは、端部ボビン51’の幅方向両端部に2つずつ配置され、各端部における2つのL字型突起51rはリアクトル1βの高さ方向に並んでいる。L字型突起51rは、その先端部がリアクトル1βの幅方向の外側に屈曲している(当該先端部は上記幅方向の内側に屈曲していても良い)。高さ方向に並ぶ2つのL字型突起51rの間には係合孔5h(丸で囲った拡大図参照)が形成されており、その係合孔5hから外側ボビン4A,4Bの係合突起4pが突出している。係合孔5hから突出する係合突起4pの幅はL字型突起51rの軸部の幅にほぼ等しく、係合突起4pの高さはL字型突起51rの高さにほぼ等しくなっている。これらL字型突起51rと係合突起4pとで、スライドレール9rが形成されている。
【0088】
当て止め部51eは、端部ボビン51’の下端側に設けられる突起である。当て止め部51eは、組物1’に外側コア部32をスライド嵌合させたときに、外側コア部32に当接し、組物1’に対する外側コア部32の位置を決めるためのものである。
【0089】
≪外側コア部≫
本実施形態の外側コア部32は、その外周を樹脂で被覆したコア部品6Cの形態で利用されている。両コア部品6C,6Cは同一物であり、外側コア部32とカラー6hとを樹脂で一体化させた部材である。このコア部品6Cの幅方向の両端部にはそれぞれ、リアクトル1βの高さ方向に伸びるスライド溝9gが形成されている。スライド溝9gの下端側は、コア部品6Cの下面に開口し、スライド溝9gの上端側は、コア部品6Cの上面に達することなく封止されている。このスライド溝9gの内部形状は、上述したスライドレール9rのL字型突起51rに対応する形状となっている。スライド溝9gは例えば切削などによって形成することができる。
【0090】
なお、カラー6hを除くコア部品6C全体を複合材料で構成しても構わない。この場合、コア部品6C全体が外側コア部32として機能する。
【0091】
≪リアクトルの作製手順≫
リアクトル1βを作製するにはまず、組物1’を組み立てる。具体的にはコイル2の巻回部2A,2Bの外周に外側ボビン4A,4Bを嵌め込み、次いで巻回部2A,2Bの内部にコア部品3C,3Dの内側コア部を挿入すると共に、外側ボビン4A,4Bの係合突起4pとコア部品3C,3Dの係合孔5hとを係合させる。
【0092】
次いで、組物1’の上方側から組物1’にコア部品6C,6Cをスライド嵌合させる。具体的には、コア部品6Cのスライド溝9gの下端側開口部に、組物1’のスライドレール9rの上端部嵌め込み、コア部品6Cを下方側にスライドさせる。下方にスライドしたコア部品6Cは、端部ボビン51’の当て止め部51eに当て止めされ、組物1’に対するコア部品6Cの位置、つまり外側コア部32の位置が決まる。なお、組物1’とコア部品6Cとの連結に補助的に接着剤を用いても構わない。
【0093】
≪効果≫
以上説明した実施形態2のリアクトル1βは、簡単な組み立て作業で作製することができるため、生産性に優れる。
【0094】
<実施形態3>
実施形態に係るリアクトルは、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。この用途では、直流通電が0Aのときのインダクタンスが、10μH以上2mH以下、最大電流通電時のインダクタンスが、0Aのときのインダクタンスの10%以上を満たすものが好適に利用できると期待される。以下、実施形態のリアクトル1を車載用電力変換装置に適用した例を
図7,8に基づいて簡単に説明する。
【0095】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両1200は、
図7に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジンを備える。なお、
図7では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態としても良い。
【0096】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。また、コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0097】
コンバータ1110は、
図8に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトルLとを備え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ(FET),絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上記実施形態に係るリアクトルを用いる。
【0098】
ここで、上記車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC−DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC−DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC−DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、上記実施形態のリアクトルなどと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用することができる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上記実施形態のリアクトルなどを利用することもできる。
【0099】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、巻回部を一つしか持たないリアクトルにも、本発明の構成を適用することができる。