特開2015-216420(P2015-216420A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

特開2015-216420スイッチ装置、降圧装置及び昇圧装置
<>
  • 特開2015216420-スイッチ装置、降圧装置及び昇圧装置 図000003
  • 特開2015216420-スイッチ装置、降圧装置及び昇圧装置 図000004
  • 特開2015216420-スイッチ装置、降圧装置及び昇圧装置 図000005
  • 特開2015216420-スイッチ装置、降圧装置及び昇圧装置 図000006
  • 特開2015216420-スイッチ装置、降圧装置及び昇圧装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-216420(P2015-216420A)
(43)【公開日】2015年12月3日
(54)【発明の名称】スイッチ装置、降圧装置及び昇圧装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/687 20060101AFI20151106BHJP
   H03K 17/695 20060101ALI20151106BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20151106BHJP
【FI】
   H03K17/687 A
   H03K17/687 B
   H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-96207(P2014-96207)
(22)【出願日】2014年5月7日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】角野 裕
【テーマコード(参考)】
5H730
5J055
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS00
5H730BB13
5H730BB14
5H730DD04
5H730DD13
5H730DD17
5H730EE59
5H730FD01
5J055AX12
5J055BX16
5J055CX07
5J055CX19
5J055DX13
5J055EY05
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY21
5J055FX12
5J055GX01
5J055GX04
(57)【要約】
【課題】電力の損失が小さいスイッチ装置、並びに、該スイッチ装置を備える降圧装置及び昇圧装置を提供する。
【解決手段】スイッチ装置2は、並列に接続されている2つの半導体スイッチA1,A2を備える。切替え回路20は、2つの半導体スイッチA1,A2をオフからオンに切替える場合、オフからオンへの遷移期間が短い半導体スイッチA1をオンに切替えた後、オフからオンへの遷移期間が長い半導体スイッチA2をオンに切替える。切替え回路20は、2つの半導体スイッチA1,A2をオンからオフに切替える場合、オンからオフへの遷移期間が長い半導体スイッチA2をオフに切替えた後、オンからオフへの遷移期間が短い半導体スイッチA1をオフに切替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に接続されている複数の半導体スイッチを備えるスイッチ装置において、
該複数の半導体スイッチ夫々におけるオフからオンへの遷移期間は、他の半導体スイッチの遷移期間の少なくとも1つと異なっており、
前記複数の半導体スイッチをオフからオンに切替える場合に、該複数の半導体スイッチの中で、前記遷移期間が最も短い半導体スイッチの少なくとも1つをオンに切替えた後、他の半導体スイッチをオンに切替えるように構成してあること
を特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
並列に接続されている複数の半導体スイッチを備えるスイッチ装置において、
該複数の半導体スイッチ夫々におけるオンからオフへの遷移期間は、他の半導体スイッチの遷移期間の少なくとも1つと異なっており、
前記複数の半導体スイッチをオンからオフに切替える場合に、該複数の半導体スイッチの中で、前記遷移期間が最も短い半導体スイッチの少なくとも1つを除く他の半導体スイッチをオフに切替えた後、前記遷移期間が最も短い半導体スイッチをオフに切替えるように構成してあること
を特徴とするスイッチ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスイッチ装置と、
一端が前記複数の半導体スイッチ夫々の一端に接続されているコイルと
を備え、
前記複数の半導体スイッチにおけるオン/オフの切替えを繰り返すことによって、前記複数の半導体スイッチの他端に入力されている電圧を降圧し、降圧した電圧を前記コイルの他端から出力するように構成してあること
を特徴とする降圧装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のスイッチ装置と、
一端が前記複数の半導体スイッチ夫々の一端に接続されているコイルと
を備え、
前記複数の半導体スイッチにおけるオン/オフの切替えを繰り返すことによって、前記コイルの他端に入力されている電圧を昇圧し、昇圧した電圧を該コイルの一端から出力するように構成してあること
を特徴とする昇圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流経路の通電及び遮断を行うスイッチ装置、並びに、該スイッチ装置を備える降圧装置及び昇圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、バッテリの出力電圧を負荷に印加すべき電圧に変換するため、バッテリの出力電圧を降圧する降圧装置、又は、バッテリの出力電圧を昇圧する昇圧装置が搭載されている。車両に搭載される降圧装置又は昇圧装置として、コイルと、電流経路の通電/遮断を行うスイッチ装置とを備える降圧装置又は昇圧装置がある。
【0003】
例えば、スイッチ装置は1つの半導体スイッチを有し、コイルの一端は、半導体スイッチの一端とダイオードのアノードとに接続され、半導体スイッチの他端は接地されている。スイッチ装置は半導体スイッチのオン/オフを繰り返すことによって、接地電位を基準としてコイルの他端に印加された電圧を昇圧し、昇圧した電圧をコイルの一端からダイオードを介して出力する。
【0004】
現在、車両では、多数の電気機器(負荷)が降圧装置又は昇圧装置を介してバッテリから給電されている。このため、降圧装置又は昇圧装置が備えるスイッチ装置が電流経路に電流を流している場合、具体的には、半導体スイッチがオンである場合に、半導体スイッチに多量の電流が流れ、多量の電流が半導体スイッチに流れることによって生じる電力の損失は、無視することができない程大きい。
【0005】
特許文献1には2つの半導体スイッチが並列に接続されているスイッチ装置が開示されている。このスイッチ装置は、1つの半導体スイッチを有するスイッチ装置と同様に昇圧装置に搭載されている。特許文献1に記載のスイッチ装置では、2つの半導体スイッチは同時的にオン/オフされる。2つの半導体スイッチのオン/オフが繰り返されることによって昇圧が行われる。
【0006】
1つの半導体スイッチを有するスイッチ装置について、半導体スイッチがオンである場合に生じる電力の損失は、Is2 ×Rs×Tsで算出される。ここで、Isは半導体スイッチに流れる電流であり、Rsは半導体スイッチのオン抵抗であり、Tsは半導体スイッチがオンである期間である。
【0007】
特許文献1に記載のスイッチ装置では、2つの半導体スイッチ夫々のオン抵抗が共にRsである場合、オンである2つの半導体スイッチ夫々に流れる電流はIs/2となる。このとき、特許文献1に記載のスイッチ装置において、2つの半導体スイッチがオンである場合に生じる電力の損失は、(Is/2)2 ×Rs×Ts×2=Is2 ×Rs×Ts/2であり、小さい。
また、並列に接続する半導体スイッチの数が多い程、1つの半導体スイッチに流れる電流が小さくなるため、並列に接続された複数の半導体スイッチがオンである期間に生じる電力の損失は小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−13323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のスイッチ装置における電力の損失は、2つの半導体スイッチがオンである場合に生じる電力の損失だけではなく、2つの半導体スイッチがオンからオフへ又はオフからオンへ切替わる遷移期間に生じる電力の損失、所謂スイッチング損失も含まれる。
【0010】
1つの半導体スイッチにおけるスイッチング損失は、半導体スイッチの両端間の電圧と、半導体スイッチに流れる電流との積を、オン/オフが切替わる遷移期間に亘って積分することによって算出される。従って、オン/オフの遷移期間が短い半導体スイッチのスイッチング損失は小さい。
【0011】
ここで、一般に、オン抵抗が小さい半導体スイッチにおけるオン/オフの遷移期間は長く、オン抵抗が大きい半導体スイッチにおけるオン/オフの遷移期間は短い。
【0012】
従って、特許文献1に記載のスイッチ装置において、遷移期間が短い2つの半導体スイッチを用いた場合、2つの半導体スイッチで生じるスイッチング損失は小さいが2つの半導体スイッチがオンである期間に生じる電力の損失は大きい。
【0013】
一方で、オン抵抗が小さい2つの半導体スイッチを用いた場合、2つの半導体スイッチがオンである間に生じる電力の損失は小さいが、2つの半導体スイッチで生じるスイッチング損失は大きい。
このため、特許文献1に記載のスイッチ装置には電力の損失が大きいという問題がある。
【0014】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電力の損失が小さいスイッチ装置、並びに、該スイッチ装置を備える降圧装置及び昇圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るスイッチ装置は、並列に接続されている複数の半導体スイッチを備えるスイッチ装置において、該複数の半導体スイッチ夫々におけるオフからオンへの遷移期間は、他の半導体スイッチの遷移期間の少なくとも1つと異なっており、前記複数の半導体スイッチをオフからオンに切替える場合に、該複数の半導体スイッチの中で、前記遷移期間が最も短い半導体スイッチの少なくとも1つをオンに切替えた後、他の半導体スイッチをオンに切替えるように構成してあることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、並列に接続されている複数の半導体スイッチ夫々におけるオフからオンへの遷移期間は、他の半導体スイッチの遷移期間の少なくとも1つと異なっている。複数の半導体スイッチをオフからオンに切替える場合、複数の半導体スイッチの中で遷移期間が最も短い半導体スイッチの少なくとも1つをオンにする。その後、他の半導体スイッチをオンに切替える。このとき、少なくとも1つの半導体スイッチがオンであるため、複数の半導体スイッチの両端間の電圧は略ゼロボルトであり、他の半導体スイッチにおけるスイッチング損失は略ゼロである。従って、複数の半導体スイッチがオフからオンに切替えられる場合に生じるスイッチング損失は、遷移期間が最も短い半導体スイッチがオフからオンに切替わる場合に発生するので、小さい。
【0017】
更に、複数の半導体スイッチには、遷移期間が長い半導体スイッチ、言い換えると、オン抵抗が小さい半導体スイッチが含まれている。このため、複数の半導体スイッチがオンである場合に生じる電力の損失も小さい。
以上のことから、装置の電力の損失は小さい。
【0018】
本発明に係るスイッチ装置は、並列に接続されている複数の半導体スイッチを備えるスイッチ装置において、該複数の半導体スイッチ夫々におけるオンからオフへの遷移期間は、他の半導体スイッチの遷移期間の少なくとも1つと異なっており、前記複数の半導体スイッチをオンからオフに切替える場合に、該複数の半導体スイッチの中で、前記遷移期間が最も短い半導体スイッチの少なくとも1つを除く他の半導体スイッチをオフに切替えた後、前記遷移期間が最も短い半導体スイッチをオフに切替えるように構成してあることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、並列に接続されている複数の半導体スイッチ夫々におけるオンからオフへの遷移期間は、他の半導体スイッチの遷移期間の少なくとも1つと異なっている。複数の半導体スイッチをオンからオフに切替える場合、複数の半導体スイッチの中で、遷移期間が最も短い半導体スイッチの少なくとも1つを除く他の半導体スイッチをオフにする。このとき、少なくとも1つの半導体スイッチはオンであるため、複数の半導体スイッチの両端間の電圧は略ゼロボルトであり、他の半導体スイッチをオンからオフにする場合に生じるスイッチング損失は略ゼロである。その後、遷移期間が最も短い半導体スイッチをオフに切替える。従って、複数の半導体スイッチがオンからオフに切替えられる場合に生じるスイッチング損失は、遷移期間が最も短い半導体スイッチがオンからオフに切替わる場合に発生するので、小さい。
【0020】
更に、複数の半導体スイッチには、遷移期間が長い半導体スイッチ、言い換えると、オン抵抗が小さい半導体スイッチが含まれている。このため、複数の半導体スイッチがオンである場合に生じる電力の損失も小さい。
以上のことから、装置の電力の損失は小さい。
【0021】
本発明に係る降圧装置は、前述のスイッチ装置と、一端が前記複数の半導体スイッチ夫々の一端に接続されているコイルとを備え、前記複数の半導体スイッチにおけるオン/オフの切替えを繰り返すことによって、前記複数の半導体スイッチの他端に入力されている電圧を降圧し、降圧した電圧を前記コイルの他端から出力するように構成してあることを特徴とする。
【0022】
本発明にあっては、前述のスイッチ装置が有する複数の半導体スイッチの一端がコイルの一端に接続されている。例えば、複数の半導体スイッチの一端に更にダイオードのカソードが接続されている場合、複数の半導体スイッチにおけるオン/オフの切替えを繰り返すことによって、ダイオードのアノードの電位を基準として複数の半導体スイッチの他端に印加されている電圧が降圧される。降圧された電圧はコイルの他端から出力される。前述のスイッチ装置によって降圧が行われるため、電力の損失が小さい。
【0023】
本発明に係る昇圧装置は、前述のスイッチ装置と、一端が前記複数の半導体スイッチ夫々の一端に接続されているコイルとを備え、前記複数の半導体スイッチにおけるオン/オフの切替えを繰り返すことによって、前記コイルの他端に入力されている電圧を昇圧し、昇圧した電圧を該コイルの一端から出力するように構成してあることを特徴とする。
【0024】
本発明にあっては、前述のスイッチ装置が有する複数の半導体スイッチの一端がコイルの一端に接続されている。例えば、コイルの一端に更にダイオードのアノードが接続されている場合、複数の半導体スイッチにおけるオン/オフの切替えを繰り返すことによって、複数の半導体スイッチの他端における電位を基準としてコイルの他端に印加されている電圧が昇圧される。昇圧された電圧は、コイルの一端からダイオードを介して出力される。前述のスイッチ装置によって昇圧が行われるため、電力の損失が小さい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、電力の損失が小さいスイッチ装置、降圧装置及び昇圧装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施の形態1における電源システムの要部構成を示す回路図である。
図2】降圧装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図3】スイッチ装置の詳細な動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4】実施の形態2における電源システムの要部構成を示す回路図である。
図5】実施の形態3における電源システムの要部構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における電源システムの要部構成を示す回路図である。この電源システム1は、車両に好適に搭載されており、降圧装置10、バッテリ11及び負荷12を備える。降圧装置10はバッテリ11の正極と負荷12の一端とに接続されており、バッテリ11の負極と負荷12の他端とは接地されている。降圧装置10は、バッテリ11の出力電圧を目標電圧に降圧し、該目標電圧を負荷12に印加する。
負荷12は、ライト又はワイパー等の車載機器であり、降圧装置10によって目標電圧を印加され、目標電圧の印加によって給電される。
【0028】
降圧装置10は、スイッチ装置2、コンデンサC1、ダイオードD1及びコイルL1を有する。スイッチ装置2は第1端、第2端及び第3端を有し、第1端はバッテリ11の正極に接続され、第2端はダイオードD1のカソード及びコイルL1の一端に接続されている。コイルL1の他端は、負荷12及びコンデンサC1夫々の一端と、スイッチ装置2の第3端とに接続されている。ダイオードD1のアノードとコンデンサC1の他端とは接地されている。
【0029】
スイッチ装置2は、バッテリ11の正極からコイルL1への電流経路の通電/遮断を行う。スイッチ装置2は切替え回路20と、2つの半導体スイッチA1,A2とを有する。半導体スイッチA1,A2夫々はNチャネル型のFET(Field Effect Transistor)であり、半導体スイッチA1,A2夫々のドレインはバッテリ11の正極に接続され、半導体スイッチA1,A2夫々のソースはダイオードD1のカソードと、コイルL1の一端とに接続されている。このように、2つの半導体スイッチA1,A2は並列に接続されている。2つの半導体スイッチA1,A2夫々のゲートとコンデンサC1の一端とは切替え回路20に各別に接続されている。
【0030】
なお、並列に接続されるとは、半導体スイッチA1,A2夫々のドレインが互いに直接的又は間接的に接続されて半導体スイッチA1,A2夫々のソースが直接的又は間接的に接続されることを意味する。例えば、半導体スイッチA1のドレインが図示しない抵抗器を介して半導体スイッチA2のドレインに接続され、半導体スイッチA1,A2夫々のソースがダイオードD1のカソードと、コイルL1の一端とに接続された場合であっても、半導体スイッチA1,A2は並列に接続されている。
【0031】
半導体スイッチA1,A2夫々は、ゲートにハイレベルの電圧が印加された場合にオンとなり、半導体スイッチA1,A2夫々のドレイン及びソース間に電流が流れることが可能となる。また、半導体スイッチA1,A2夫々は、ゲートにローレベルの電圧が印加された場合にオフとなり、半導体スイッチA1,A2夫々のドレイン及びソース間に電流が流れることはない。
【0032】
切替え回路20は、半導体スイッチA1,A2夫々のゲートに、ハイレベル又はローベルの電圧を出力することによって、半導体スイッチA1,A2夫々をオン又はオフにする。切替え回路20は、半導体スイッチA1,A2夫々のゲートに出力している電圧をローレベルの電圧からハイレベルの電圧に変更することによって、半導体スイッチA1,A2夫々をオフからオンに切替える。また、切替え回路20は、半導体スイッチA1,A2夫々のゲートに出力している電圧をハイレベルの電圧からローレベルの電圧に変更することによって、半導体スイッチA1,A2夫々をオンからオフに切替える。
【0033】
図2は降圧装置10の動作を説明するためのタイミングチャートである。図2には、半導体スイッチA1,A2夫々におけるオン/オフの推移が示されている。
降圧装置10では、スイッチ装置2の切替え回路20が、図2に示すように、2つの半導体スイッチA1,A2におけるオン/オフの切替えを繰り返すことによって、2つの半導体スイッチA1,A2夫々のドレインに入力されているバッテリ11の出力電圧を降圧する。切替え回路20は、半導体スイッチA1,A2夫々のオン/オフを同時的に切替える。半導体スイッチA1,A2のオン/オフは一定の周期で繰り返される。
【0034】
切替え回路20が半導体スイッチA1,A2をオフからオンに切替えた場合、電流は、バッテリ11の正極からスイッチ装置2を介してコイルL1に流れる。コイルL1は自身に流れる電流を維持しようとするため、コイルL1に流れる電流は、一定の傾きで徐々に上昇する。このとき、コンデンサC1の両端間には、バッテリ11の出力電圧から、上昇している電流の傾きの大/小に応じて高/低に決まる電圧を減算した第1電圧が印加される。第1電圧はバッテリ11の出力電圧よりも低い。
【0035】
切替え回路20が半導体スイッチA1,A2をオンからオフに切替えた場合、バッテリ11からコイルL1への電流が途絶える。このため、コイルL1は、自身に流れる電流を維持すべく、放電する。このとき、電流は、ダイオードD1及びコイルL1の順に流れる。コイルL1に流れる電流は一定の傾きで低下する。コンデンサC1の両端間には、低下している電流の傾きの大/小応じて高/低に決まる第2電圧が印加される。第2電圧は第1電圧よりも低い。
【0036】
コンデンサC1は、コイルL1の他端から出力される電圧を平滑し、平滑した電圧を負荷12に印加する。負荷12に印加される電圧はバッテリ11の出力電圧未満である。
以上のように、降圧装置10は、バッテリ11の出力電圧を降圧し、降圧した電圧をコイルL1の他端から負荷12に出力する。
【0037】
コンデンサC1は、第1電圧が印加されている期間が長い程、即ち、デューティが大きい程、高い電圧を負荷12に印加する。デューティは、1周期に対する半導体スイッチA1,A2のオン期間の割合である。切替え回路20は、コンデンサC1の両端間の電圧が高い場合にはデューティを下げ、コンデンサC1の両端間の電圧が低い場合にはデューティを上げることによって、負荷12に印加される電圧を目標電圧に調整する。
【0038】
なお、図2からもわかるように、切替え回路20が半導体スイッチA1,A2夫々のオン/オフを切替えるタイミングは完全に一致していない。
【0039】
図3はスイッチ装置2の詳細な動作を説明するためのタイミングチャートである。図3には、半導体スイッチA1,A2夫々のゲートに印加されている電圧Vg1,Vg2の推移と、半導体スイッチA1,A2におけるドレイン及びソース間の電圧Vdsの推移と、半導体スイッチA1,A2夫々のドレイン及びソース間に流れる電流I1,I2の推移とが示されている。図3では、ハイレベルの電圧を「H」で示し、ローレベルの電圧を「L」で示している。
【0040】
半導体スイッチA1,A2夫々のゲート及びソース間には、浮遊容量が存在する。このため、半導体スイッチA1,A2夫々について、切替え回路20がゲートに出力している電圧をローレベルの電圧からハイレベルの電圧に変更してから、電圧Vg1,Vg2がハイレベルの電圧となるまでに遷移期間が生じる。同様に、半導体スイッチA1,A2夫々について、切替え回路20がゲートに出力している電圧をハイレベルの電圧からローレベルの電圧に変更してから、電圧Vg1,Vg2がローレベルの電圧となるまでに遷移期間が生じる。
【0041】
図3からもわかるように、電圧Vg1がローレベルの電圧からハイレベルの電圧に遷移する遷移期間は、電圧Vg2がローレベルの電圧からハイレベルの電圧に遷移する期間よりも短い。更に、電圧Vg1がハイレベルの電圧からローレベルの電圧に遷移する期間は、電圧Vg2がハイレベルの電圧からローレベルの電圧に遷移する期間よりも短い。言い換えると、半導体スイッチA1におけるオフからオンへの遷移期間は半導体スイッチA2におけるオフからオンへの遷移期間よりも短く、半導体スイッチA1におけるオンからオフへの遷移期間は、半導体スイッチA2におけるオンからオフへの遷移期間よりも短い。
【0042】
切替え回路20が半導体スイッチA1,A2夫々のゲートにローレベルの電圧を出力している場合、半導体スイッチA1,A2のドレインにはバッテリ11の出力電圧が印加されているため、電圧Vdsは一定電圧以上である。更に、半導体スイッチA1,A2夫々はオフであるため、電流I1,I2は共にゼロアンペアである。
【0043】
切替え回路20は、半導体スイッチA1,A2をオフからオンに切替える場合、まず、オフからオンへの遷移期間が短い半導体スイッチA1のゲートにハイレベルの電圧を出力し、電圧Vg1をローレベルの電圧からハイレベルの電圧に遷移させる。これにより、切替え回路20は半導体スイッチA1をオンに切替える。
【0044】
電圧Vg1の上昇に伴って、電圧Vdsが低下し、電流I1は上昇する。電圧Vg1がローレベルの電圧からハイレベルの電圧へ遷移している間、スイッチング損失が発生する。スイッチング損失は、電圧Vds及び電流I1の積を電圧Vg1の遷移期間に亘って積分することによって算出される。
【0045】
切替え回路20は、電圧Vg1がハイレベルの電圧に遷移して半導体スイッチA1をオンに切替えた後、半導体スイッチA2のゲートにハイレベルの電圧を出力し、電圧Vg2をローレベルの電圧からハイレベルの電圧に遷移させる。これにより、切替え回路20は半導体スイッチA2をオンに切替える。
【0046】
電圧Vg2の上昇に伴って、半導体スイッチA1に流れていた電流の一部が半導体スイッチA2に流れ始めるので、電流I1が低下し、電流I2は上昇する。電圧Vg2は、半導体スイッチA1がオンとなっている状態、即ち、電圧Vdsが略ゼロボルトである状態でローレベルの電圧からハイレベルの電圧に上昇する。このため、電圧Vg2が上昇している間に発生するスイッチング損失は略ゼロである。
【0047】
従って、2つの半導体スイッチA1,A2をオフからオンに切替える場合に生じるスイッチング損失は、オフからオンへの遷移期間が短い半導体スイッチA1がオフからオンに切替わる場合に発生するので、小さい。
このスイッチング損失は、半導体スイッチA2の代わりに半導体スイッチA1が用いられたスイッチ装置において、2つの半導体スイッチA1,A1を同時にオフからオンに切替える場合に生じるスイッチング損失と同じである。
【0048】
なお、切替え回路20は、例えば、半導体スイッチA1のゲートにハイレベルの電圧を出力してから所定時間が経過した後に半導体スイッチA2のゲートにハイレベルの電圧を出力する。これによって、半導体スイッチA1をオンにした後に半導体スイッチA2をオンにする構成を実現してもよい。更に、例えば、電圧Vg1がハイレベルの電圧になった場合に半導体スイッチA2のゲートにハイレベルの電圧を出力するように切替え回路20を構成してもよい。
【0049】
電圧Vg1,Vg2が共にハイレベルの電圧である場合、半導体スイッチA1,A2が共にオンとなり、半導体スイッチA1,A2夫々に電流が流れる。
【0050】
半導体スイッチA1,A2夫々のオン抵抗をR1,R2とし、半導体スイッチA1,A2夫々のオン期間をT1,T2とした場合、半導体スイッチA1がオンである間、半導体スイッチA1のオン抵抗で生じる電力の損失は、I12 ×R1×T1である。また、半導体スイッチA2がオンである間、半導体スイッチA2のオン抵抗で生じる電力の損失はI22 ×R2×T2である。
【0051】
ここで、オン/オフの遷移期間が短い半導体スイッチA1のオン抵抗R1は、オン/オフの遷移期間が長い半導体スイッチA2のオン抵抗R2よりも大きい。スイッチ装置2はオン抵抗が小さい半導体スイッチA2を有しているため、2つの半導体スイッチA1,A2がオンである場合に生じる電力の損失も小さい。
【0052】
これは以下のように説明することもできる。スイッチ装置2において、2つの半導体スイッチA1,A2が共にオンである場合におけるオン抵抗の合成抵抗は(R1×R2)/(R1+R2)である。半導体スイッチA2の代わりに半導体スイッチA1を用いたスイッチ装置において、2つの半導体スイッチA1,A1が共にオンである場合におけるオン抵抗の合成抵抗はR1/2である。オン抵抗R1はオン抵抗R2よりも大きいので、(R1×R2)/(R1+R2)はR1/2よりも小さい。従って、2つの半導体スイッチA1,A2が共にオンである場合に生じる電力の損失は、2つの半導体スイッチA1,A1が共にオンである場合に生じる電力の損失よりも小さい。
【0053】
切替え回路20は、半導体スイッチA1,A2をオンからオフに切り替える場合、まず、オンからオフへの遷移期間が長い半導体スイッチA2のゲートにローレベルの電圧を出力し、電圧Vg2をハイレベルの電圧からローレベルの電圧に遷移させる。これにより、切替え回路20は半導体スイッチA2をオフに切替える。
【0054】
電圧Vg2の低下に伴って、半導体スイッチA2に流れていた電流の一部が半導体スイッチA1に流れるため、電流I1は上昇し、電流I2は低下する。切替え回路20が半導体スイッチA2をオンからオフに切替えている間、半導体スイッチA1はオンを維持しているため、電圧Vdsは略ゼロボルトである。このため、切替え回路20が半導体スイッチA2をオンからオフに切替えている間に生じるスイッチング損失は略ゼロである。
【0055】
切替え回路20は、電圧Vg2がローレベルの電圧に遷移して半導体スイッチA2がオフに切替えた後、半導体スイッチA1のゲートにローレベルの電圧を出力し、電圧Vg1をハイレベルの電圧からローレベルの電圧に遷移させる。これにより、切替え回路20は半導体スイッチA1をオフに切替える。
【0056】
電圧Vg1の低下に伴って、電圧Vdsが上昇し、電流I1は低下する。電圧Vg1がハイレベルの電圧からローレベルの電圧へ遷移している間、スイッチング損失が発生する。スイッチング損失は、電圧Vds及び電流I1の積を電圧Vg1の遷移期間に亘って積分することによって算出される。
【0057】
従って、2つの半導体スイッチA1,A2をオンからオフに切替える場合に生じるスイッチング損失は、オンからオフへの遷移期間が短い半導体スイッチA1がオンからオフに切替わる場合に発生するので、小さい。
このスイッチング損失は、半導体スイッチA2の代わりに半導体スイッチA1が用いられたスイッチ装置において、2つの半導体スイッチA1,A1を同時にオンからオフに切替える場合に生じるスイッチング損失と同じである。
【0058】
以上のように、スイッチ装置2では、スイッチング損失と、2つの半導体スイッチA1,A2が共にオンである場合に生じる電力の損失とは小さいため、スイッチ装置2における電力の損失は小さい。
また、スイッチ装置2によって降圧が行われるため、降圧装置10の電力の損失も小さい。
【0059】
なお、降圧装置10は、ダイオードD1の代わりに、第1端がコイルL1の一端に接続されて第2端が接地されているスイッチ装置2を用いてもよい。この場合、ダイオードD1の代わりに用いられるスイッチ装置2の切替え回路20は、もう1つのスイッチ装置2の切替え回路20が半導体スイッチA1,A2をオン(又はオフ)に切替えたときに、自身に接続されている半導体スイッチA1,A2をオフ(又はオン)に切替える。これにより、バッテリ11の出力電圧は降圧される。
【0060】
(実施の形態2)
図4は実施の形態2における電源システムの要部構成を示す回路図である。この電源システム3においては、降圧装置10の代わりに降圧装置30を備える点が実施の形態1における電源システム1と異なっている。降圧装置30においては、スイッチ装置2の代わりにスイッチ装置4を備える点が実施の形態1における降圧装置10と異なっている。スイッチ装置4においては、m(m:3以上の整数)個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amを有している点が実施の形態1におけるスイッチ装置2と異なっている。
以下では、実施の形態2について、実施の形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態1と同様であるため、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
実施の形態2における電源システム3は車両に好適に搭載され、実施の形態1における電源システム1と同様にバッテリ11及び負荷12を備える。電源システム3は、前述したように、降圧装置30を更に備え、バッテリ11、負荷12及び降圧装置30は実施の形態1と同様に接続されている。ここで、実施の形態1における降圧装置10は降圧装置30に対応する。
降圧装置30はバッテリ11の出力電圧を目標電圧に降圧し、該目標電圧を負荷12に印加する。目標電圧の印加によって負荷12は給電される。
【0062】
実施の形態2における降圧装置30は、実施の形態1における降圧装置10と同様に、コンデンサC1、ダイオードD1及びコイルL1を有する。降圧装置30は、前述したように、スイッチ装置4を更に有する。スイッチ装置4は実施の形態1におけるスイッチ装置2と同様に第1端、第2端及び第3端を有し、スイッチ装置4、コンデンサC1、ダイオードD1及びコイルL1夫々は実施の形態1と同様に接続されている。ここで、実施の形態1におけるスイッチ装置2はスイッチ装置4に対応する。
【0063】
スイッチ装置4は、バッテリ11の正極からコイルL1への電流経路の通電/遮断を行う。スイッチ装置4は、切替え回路20と、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amとを有する。半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々はNチャネル型のFETである。半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々のドレインはバッテリ11の正極に接続され、半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々のソースはダイオードD1のカソードと、コイルL1の一端とに接続されている。このように、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amは並列に接続されている。m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々のゲートと、コンデンサC1の一端とは、実施の形態1と同様に切替え回路20に各別に接続されている。図4では、半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々におけるドレイン及びソース間に流れる電流をI1,I2,・・・,Imで示している。
【0064】
なお、実施の形態1と同様に、並列に接続されるとは、半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々のドレインが互いに直接的又は間接的に接続され、半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々のソースが直接的又は間接的に接続されることを意味する。
【0065】
半導体スイッチA3,A4,・・・,Am夫々は半導体スイッチA1又はA2と同様に構成されている。切替え回路20は、半導体スイッチA3,A4,・・・,Am夫々を、半導体スイッチA1,A2と同様にオン/オフする。
降圧装置30でも、実施の形態1における降圧装置10と同様に、切替え回路20がm個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amにおけるオン/オフの切替えを繰り返すことによって、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々のドレインに入力されているバッテリ11の出力電圧を降圧する。切替え回路20は、半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々のオン/オフを同時的に切替える。半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々のオン/オフは、図2に示されている半導体スイッチA1のオン/オフの推移のように、一定の周期で繰り返される。
【0066】
切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Amにおけるオン/オフの切替えを繰り返した場合、電流は実施の形態1と同様に流れてバッテリ11の出力電圧が降圧され、降圧された電圧はコイルL1の他端から負荷12に出力される。ここで、実施の形態1の説明において、スイッチ装置2はスイッチ装置4に対応し、半導体スイッチA1,A2は半導体スイッチA1,A2,・・・,Amに対応する。切替え回路20は、デューティを調整することによって、負荷12に印加される電圧を目標電圧に調整する。デューティは、1周期に対する半導体スイッチA1,A2,・・・,Amのオン期間の割合である。
【0067】
次に、切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Amをオフからオンに切替える構成と、切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Amをオンからオフに切替える構成とを説明する。
【0068】
m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々におけるオフからオンへの遷移期間は、他の(m−1)個の半導体スイッチにおけるオフからオンへの遷移期間の少なくとも1つと異なっている。即ち、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々におけるオフからオンへの遷移期間全てが一致することはない。半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々におけるオフからオンへの遷移期間は、H1,H2,・・・,Hk(k:2以上m以下の整数)のいずれか1つである。遷移期間H1,H2,・・・,Hkは互いに異なっている。オフからオンへの遷移期間については、H1が最も短く、H1,H2,・・・Hkの順に長い。
【0069】
m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々におけるオンからオフへの遷移期間も、他の(m−1)個の半導体スイッチにおけるオンからオフへの遷移期間の少なくとも1つと異なっている。即ち、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々におけるオンからオフへの遷移期間全てが一致することはない。半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々におけるオンからオフへの遷移期間は、L1,L2,・・・,Lk(k:2以上m以下の整数)のいずれか1つである。遷移期間L1,L2,・・・,Lkは互いに異なっている。オンからオフへの遷移期間については、L1が最も短く、L1,L2,・・・,Lkの順に長い。
【0070】
オフからオンへの遷移期間がH1,H2,・・・,Hkである半導体スイッチ夫々におけるオンからオフへの遷移期間はL1,L2,・・・,Lkである。即ち、オフからオンへの遷移期間が短い半導体スイッチにおいては、オンからオフへの遷移期間も短い。
【0071】
切替え回路20は、半導体スイッチA1,A2,・・・,Amをオフからオンに切替える場合、まず、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Am中で遷移期間がH1である半導体スイッチの少なくとも1つをオフからオンに切替える。例えば、オフからオンへの遷移期間がH1である半導体スイッチの数が2つである場合、オフからオンへの遷移期間がH1である2つの半導体スイッチを共にオフからオンに切替えてもよいし、オフからオンへの遷移期間がH1である2つの半導体スイッチ中の一方をオフからオンに切替えてもよい。
オフからオンへの遷移期間がH1である半導体スイッチ中の少なくとも1つを、切替え回路20がオフからオンに切替えた場合にスイッチング損失が発生する。
【0072】
切替え回路20は、オフからオンへの遷移期間がH1である半導体スイッチ中の少なくとも1つをオンに切替えた後、他の半導体スイッチをオフからオンに切替える。このため、オフからオンへの遷移期間がH2,H3,・・・,Hkのいずれか1つである半導体スイッチは、オフからオンへの遷移期間がH1である半導体スイッチの少なくとも1つがオフからオンに切替えられた後にオフからオンに切替えられる。
従って、切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々をオフからオンに切替えるタイミングは完全に一致していない。
【0073】
他の半導体スイッチをオフからオンに切替えている間、オフからオンへの遷移期間がH1である半導体スイッチの少なくとも1つがオンであるので、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amにおけるドレイン及びソース間の電圧Vdsは略ゼロボルトである。このため、他の半導体スイッチがオフからオンに切替わっている間に発生するスイッチング損失は略ゼロである。
【0074】
従って、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amをオフからオンに切替わる場合に生じるスイッチング損失は、オフからオンへの遷移期間がH1である一又は複数の半導体スイッチがオフからオンに切替わる場合に発生するため、小さい。
このスイッチング損失は、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amのオフからオンへの遷移期間が全てH1であって、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amを同時にオフからオンに切替える場合に生じるスイッチング損失と同じである。
【0075】
m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々のオン抵抗について、オフからオンへの遷移期間、又は、オンからオフへの遷移期間が短い半導体スイッチのオン抵抗は大きい。従って、スイッチ装置4は、オン抵抗が、オフからオンへの遷移期間がH1である半導体スイッチのオン抵抗よりも小さい半導体スイッチを有しているため、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amがオンである場合に生じる電力の損失は小さい。
【0076】
オフからオンへの遷移期間がH1である半導体スイッチのオン抵抗をRmaxとした場合において、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々のオン抵抗の合成抵抗は、オン抵抗がRmaxであるm個の半導体スイッチが並列に接続されたときの合成抵抗よりも小さい。
【0077】
切替え回路20は、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amをオンからオフに切替える場合、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amの中で、オンからオフへの遷移期間がL1である半導体スイッチの少なくとも1つを除く他の半導体スイッチをオンからオフに切替える。例えば、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amの中で、オンからオフへの遷移期間がL1である半導体スイッチの数が1つである場合、切替え回路20は、オンからオフへの遷移期間がL2,L3,・・・,Lkのいずれか1つである(m−1)個の半導体スイッチをオンからオフにする。
【0078】
切替え回路20が、オンからオフへの遷移期間がL1である半導体スイッチの少なくとも1つを除く他の半導体スイッチをオンからオフに切替えている間、オンからオフへの遷移期間がL1である半導体スイッチの少なくとも1つはオンを維持しているため、電圧Vdsは略ゼロボルトである。このため、切替え回路20が、オンからオフへの遷移期間がL1である半導体スイッチの少なくとも1つを除く他の半導体スイッチをオンからオフに切替えている間に生じるスイッチング損失は略ゼロである。
【0079】
切替え回路20は、オンからオフへの遷移期間がL1である半導体スイッチの少なくとも1つを除く他の半導体スイッチがオフになった後、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amの中でオンからオフへの遷移期間がL1である一又は複数の半導体スイッチをオフに切替える。
従って、切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Am夫々をオンからオフに切替えるタイミングは完全に一致していない。
【0080】
遷移期間がL1である一又は複数の半導体スイッチがオンからオフに遷移している間、スイッチング損失が発生する。前述したように、オンからオフへの遷移期間がL1である半導体スイッチの少なくとも1つを除く他の半導体スイッチを切替え回路20がオンからオフに切替えている間に発生するスイッチング損失は略ゼロである。従って、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amをオンからオフに切替える場合に生じるスイッチング損失は、オンからオフへの遷移時間がL1である一又は複数の半導体スイッチがオンからオフに切替わる場合に発生するので、小さい。
【0081】
このスイッチング損失は、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amのオンからオフへの遷移期間が全てL1であって、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amを同時にオンからオフに切替える場合に生じるスイッチング損失と同じである。
【0082】
以上のように、スイッチ装置4では、スイッチング損失と、m個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Amが共にオンである場合に生じる電力の損失とは小さいため、スイッチ装置4における電力の損失は小さい。
また、スイッチ装置4によって降圧が行われるため、降圧装置30の電力の損失も小さい。
【0083】
なお、実施の形態2において、降圧装置30は、ダイオードD1の代わりに、第1端がコイルL1の一端に接続されて第2端が接地されているスイッチ装置4を用いてもよい。この場合、ダイオードD1の代わりに用いられるスイッチ装置4の切替え回路20は、もう1つのスイッチ装置4の切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Amをオン(又はオフ)に切替えたとき、自身に接続されている半導体スイッチA1,A2,・・・,Amをオフ(又はオン)に切替える。これにより、バッテリ11の出力電圧は降圧される。
【0084】
(実施の形態3)
図5は実施の形態3における電源システムの要部構成を示す回路図である。この電源システム5においては、バッテリ11の出力電圧を降圧するのではなく、バッテリ11の出力電圧を昇圧する点が実施の形態1又は2と異なっている。
以下では、実施の形態3について、実施の形態1又は2と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態1又は2と同様であるため、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0085】
実施の形態3における電源システム5は車両に好適に搭載され、実施の形態1における電源システム1と同様に、バッテリ11及び負荷12を備える。電源システム5は昇圧装置50を更に備える。昇圧装置50は、バッテリ11の正極と負荷12の一端とに各別に接続されており、バッテリ11の負極と負荷12の他端とは接地されている。昇圧装置50はバッテリ11の出力電圧を目標電圧に昇圧し、該目標電圧を負荷12に印加する。目標電圧の印加によって負荷12は給電される。
【0086】
実施の形態3における昇圧装置50は、スイッチ装置6、コンデンサC2、ダイオードD2及びコイルL2を有する。スイッチ装置6は第1端、第2端及び第3端を有する。コイルL2の一端はバッテリ11の正極に接続され、コイルL2の他端はダイオードD2のアノードとスイッチ装置6の第1端に接続されている。スイッチ装置6の第2端は接地されている。ダイオードD2のカソードは、負荷12及びコンデンサC2夫々の一端と、スイッチ装置6の第3端とに接続されている。コンデンサC2の他端は接地されている。
【0087】
スイッチ装置6は、コイルL2の他端から接地電位、例えば車両のボディへの電流経路の通電/遮断を行う。スイッチ装置6は、切替え回路20と、n(n:2以上の整数)個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Anとを有する。半導体スイッチA1,A2,・・・,An夫々はNチャネル型のFETである。半導体スイッチA1,A2,・・・,An夫々のドレインは、コイルL2の他端とダイオードD2のアノードとに接続され、半導体スイッチA1,A2,・・・,An夫々のソースは接地されている。このように、n個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Anは並列に接続されている。n個の半導体スイッチA1,A2,・・・,An夫々のゲートと、コンデンサC2の一端とは切替え回路20に各別に接続されている。図5では、半導体スイッチA1,A2,・・・,An夫々におけるドレイン及びソース間に流れる電流をI1,I2,・・・,Inで示している。
【0088】
なお、実施の形態1及び2と同様に、並列に接続されるとは、半導体スイッチA1,A2,・・・,An夫々のドレインが互いに直接的又は間接的に接続され、半導体スイッチA1,A2,・・・,An夫々のソースが直接的又は間接的に接続されることを意味する。
【0089】
半導体スイッチA3,A4,・・・,An夫々は半導体スイッチA1又はA2と同様に構成されている。切替え回路20は、半導体スイッチA2,A3,・・・,An夫々を、半導体スイッチA1と同様にオン/オフする。
昇圧装置50では、実施の形態1と同様に、切替え回路20がn個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Anにおけるオン/オフの切替えを繰り返すことによって、コイルL2の一端に入力されているバッテリ11の出力電圧を昇圧する。切替え回路20は、半導体スイッチA1,A2,・・・,An夫々のオン/オフを同時的に切替える。半導体スイッチA1,A2,・・・,An夫々のオン/オフは、図2に示されている半導体スイッチA1のオン/オフの推移のように、一定の周期で繰り返される。
【0090】
切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Anをオフからオンに切替えた場合、電流は、バッテリ11の正極からコイルL2及びスイッチ装置6の順に流れる。コイルL2に多量の電流が流れる。このとき、ダイオードD2を介してコンデンサC2の両端に電圧が印加されることはない。
【0091】
切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Anをオンからオフに切替えた場合、電流は、バッテリ11の正極からコイルL2及びダイオードD2の順に流れる。このとき、コイルL2は自身に流れる電流を維持しようとするため、コイルL1に流れる電流は、一定の傾きで徐々に低下する。そして、コンデンサC2の両端には、バッテリ11の出力電圧に、低下している電流の傾きの大/小に応じて高/低に決まる電圧を加算した第3電圧が印加される。第3電圧はバッテリ11の出力電圧よりも高い。
【0092】
コンデンサC2は、ダイオードD2のカソードから出力される電圧を平滑し、平滑した電圧を負荷12に印加する。負荷12に印加される電圧はバッテリ11の出力電圧を超えている。
以上のように、昇圧装置50は、バッテリ11の出力電圧を昇圧し、昇圧した電圧をコイルL2の他端からダイオードDを介して負荷12に出力する。
【0093】
コンデンサC2は、切替え回路20がn個の半導体スイッチA1,A2,・・・,Anをオンにしている期間が長い程、即ち、デューティが大きい程、第3電圧が高くなるため、高い電圧を負荷12に印加する。デューティは、1周期に対する半導体スイッチA1,A2,・・・,Anのオン期間の割合である。切替え回路20は、コンデンサC2の両端間の電圧が高い場合にデューティを下げ、コンデンサC2の両端間の電圧が低い場合にデューティを上げることによって、負荷12に印加される電圧を目標電圧に調整する。
【0094】
実施の形態3における切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Anをオフからオンに切替える構成は、実施の形態2における切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Amをオフからオン切替える構成と同様である。また、実施の形態3における切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・Anをオンからオフに切替える構成は、実施の形態2における切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Anをオンからオフに切替える構成と同様である。
【0095】
実施の形態2における切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Amをオフからオンに切替える構成の説明において、m(m:3以上の整数)をn(n:2以上の整数)に置き換える。これにより、実施の形態3における切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Anをオフからオンに切替える構成を説明することができる。
【0096】
実施の形態2における切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Amをオンからオフに切替える構成の説明において、m(m:3以上の整数)をn(n:2以上の整数)に置き換える。これにより、実施の形態3における切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Anをオンからオフに切替える構成を説明することができる。
【0097】
従って、実施の形態3におけるスイッチ装置6は実施の形態2におけるスイッチ装置4と同様の効果を奏する。また、電力の損失が小さいスイッチ装置6によって昇圧が行われるため、昇圧装置50の電力損失も小さい。
【0098】
なお、実施の形態3において、昇圧装置50は、ダイオードD2の代わりに、第1端がコンデンサC2の一端に接続されて第2端がコイルL2の他端に接続されているスイッチ装置6を用いてもよい。この場合、ダイオードD2の代わりに用いられるスイッチ装置6の切替え回路20は、もう1つのスイッチ装置6の切替え回路20が半導体スイッチA1,A2,・・・,Anをオン(又はオフ)に切替えたとき、自身に接続されている半導体スイッチA1,A2,・・・,Anをオフ(又はオン)に切替える。これにより、バッテリ11の出力電圧は昇圧される。
【0099】
なお、実施の形態1〜3において、スイッチ装置2,4,6が備える複数の半導体スイッチをオンからオフに切替える構成は、オンからオフへの遷移期間が最も短い半導体スイッチの少なくとも1つを除く他の半導体スイッチをオフに切替えた後に遷移期間が最も短い一又は複数の半導体スイッチをオフに切替える構成でなくてもよい。この場合であっても、複数の半導体スイッチがオフからオンに切替えられるときに生じるスイッチング損失は小さく、更に、複数の半導体スイッチが共にオンである期間に生じる電力の損失も小さいので、スイッチ装置2,4,6における電力の損失は小さい。従って、スイッチ装置2を備える降圧装置10、スイッチ装置4を備える降圧装置30、及び、スイッチ装置6を備える昇圧装置50夫々における電力の損失も小さい。
【0100】
また、スイッチ装置2,4,6が備える複数の半導体スイッチをオフからオンに切替える構成は、オフからオンへの遷移期間が最も短い半導体スイッチの少なくとも1つをオンに切替えた後に、他の半導体スイッチをオンに切替える構成でなくてもよい。この場合であっても、複数の半導体スイッチがオンからオフに切替えられるときに生じるスイッチング損失は小さく、更に、複数の半導体スイッチが共にオンである期間に生じる電力の損失も小さいので、スイッチ2,4,6における電力の損失は小さい。従って、スイッチ装置2を備える降圧装置10、スイッチ装置4を備える降圧装置30、及び、スイッチ装置6を備える昇圧装置50夫々における電力の損失も小さい。
【0101】
更に、スイッチ装置2,4,6が備える複数の半導体スイッチ夫々は、Nチャネル型のFETに限定されず、Pチャネル型のFETであってもよく、更には、バイポーラトランジスタであってもよい。
また、スイッチ装置2,4,6が搭載される装置は降圧装置又は昇圧装置に限定されない。内部で電流、特に多量の電流が流れる電流経路の通電及び遮断を行う必要がある装置にスイッチ装置2,4,6を搭載してもよい。
【0102】
開示された実施の形態1〜3は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
2,4,6 スイッチ装置
10,30 降圧装置
20 切替え回路
50 昇圧装置
A1,A2,・・・,Am 半導体スイッチ
L1,L2 コイル
図1
図2
図3
図4
図5