【解決手段】耕作面積DB12は、対象地域における耕作面積の履歴を記憶する。送水量履歴DB13は、対象地域に対する用水の送水量の履歴を記憶する。演算処理部11は、対象地域に対して、指定された予測期間に送水する用水の送水量を予測する。この演算処理部11は、予測期間に対応する実績期間を決定し、実績期間、および予測期間における対象地域の耕作面積を耕作面積DB12から読み出すとともに、実績期間に対象地域に送水した用水の送水量を送水量履歴DB13から読み出し、これらを用いて、対象地域に対して予測期間に送水する用水の送水量を予測する。
前記区分期間別送水量記憶部は、前記区分期間毎に、その区分期間に前記対象地域内で用水を使用する地域の面積を用いて定めた割当率を記憶する、請求項2に記載の送水量予測装置。
前記予測部は、前記実績期間における、前記対象地域の単位耕作面積当たりの用水の送水量と、前記予測期間における前記対象地域の耕作面積と、に基づいて、前記対象地域に対して前記予測期間に送水する用水の送水量を予測する、請求項1〜4のいずれかに記載の送水量予測装置。
前記予測部は、前記対象地域に対して前記予測期間に送水する用水の送水量を予測する際に、現在の時点を基準にして補正期間を決定し、前記補正期間に対する用水の予測送水量と、前記補正期間における実際の用水の送水量と、を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の送水量予測装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、この例にかかる送水量予測管理システムの構成を示す概略図である。この送水量予測管理システムは、送水量予測装置1と、ポンプ制御装置2と、ポンプ3(3a、3b、3c)と、流量計4(4a、4b、4c、4d)と、を備えている。この例にかかる送水量予測管理システムは、
図1に示す3つの耕作地域A、B、Cに対する用水の送水量を個別に予測する。また、この予測に基づき、3つの耕作地域A、B、Cに対する用水の送水や、送水状況の監視等を行う。耕作地域A、B、Cが、この発明で言う対象地域に相当する。
【0022】
送水量予測装置1は、3つの耕作地域A、B、Cに対する用水の送水量を個別に予測する。ポンプ制御装置2は、3つの耕作地域A、B、Cのそれぞれに対して用水を送水するポンプ3(3a、3b、3c)の駆動を制御する。ポンプ3は、河川等の水源から用水を用水路に汲み上げる。この用水路は、
図1に示すように、各耕作地域A、B、Cにつながっている。ポンプ制御装置2は、送水量予測装置1が予測した用水の送水量に応じて、駆動するポンプ3の台数や、ポンプ3の回転数を制御する。ポンプの回転数制御は、例えばインバータ制御で行う。
【0023】
なお、
図1では、ポンプ制御装置2が制御するポンプ(3a、3b、3c)を3つ例示したが、このポンプ3の台数は、3つの耕作地域A、B、Cに対して送水する量の用水を水源から用水路に汲み上げることができれば、何台であってもよい。
【0024】
流量計4aは、耕作地域Aに送水されている用水の流量[m
3/s]を検出し、流量計4bは、耕作地域Bに送水されている用水の流量[m
3/s]を検出し、流量計4cは、耕作地域Dに送水されている用水の流量[m
3/s]を検出する。また、流量計4dは、ポンプ3(3a、3b、3c)が水源から用水路に汲み上げている用水の流量[m
3/s]を検出する。各流量計4(4a、4b、4c、4d)は、ポンプ制御装置2に接続されており、用水の流量の検出値をポンプ制御装置2に入力する。
【0025】
また、送水量予測装置1と、ポンプ制御装置2とは、データ通信可能に接続されている。この例では、送水量予測装置1は、インターネット上のクラウドサーバであるとして説明する。送水量予測装置1とポンプ制御装置2とは、インターネット等のネットワークを介してデータ通信可能に接続される。
【0026】
なお、送水量予測装置1は、LAN等でポンプ制御装置2とデータ通信可能に接続した構成であってもよい。また、送水量予測装置1、およびポンプ制御装置2を1つの筐体に収納し、この筐体内部でデータ通信可能に接続した構成であってもよい。
【0027】
図2は、この例にかかる送水量予測装置の主要部の構成を示すブロック図である。送水量予測装置1は、演算処理部11と、耕作面積データベース12(以下、耕作面積DB12と言う。)と、送水量履歴データベース13(以下、送水量履歴DB13と言う。)、タイムスケジュール記憶部14と、時間帯別送水量記憶部15と、通信部16と、を備えている。
【0028】
演算処理部11は、耕作地域A、B、Cに対する用水の送水量を個別に予測する予測処理を行う。また、演算処理部11は、耕作地域A、B、Cのそれぞれに対する用水の送水状況の監視処理を行う。演算処理部11が、この発明で言う予測部に相当する。
【0029】
この例では、演算処理部11は、1日単位で、耕作地域A、B、Cに対する用水の送水量を予測する予測処理を行う。具体的には、演算処理部11は、年月日が指定された日を予測日とし、この予測日における用水の送水量を耕作地域A、B、Cのそれぞれについて個別に予測する。この指定された年月日が、この発明で言う予測期間に相当する。
【0030】
予測処理、および監視処理の詳細については後述する。演算処理部11が、この発明にかかる送水量予測方法を実行する。また、演算処理部11は、コンピュータを有し、インストールされた、この発明にかかる送水量予測プログラムを実行する。
【0031】
図3は、耕作面積DBの構成を示す図である。耕作面積DB12は、各耕作地域A、B、Cにおける耕作面積の履歴を記憶する。具体的には、耕作面積DB12は、年毎に、各耕作地域A、B、Cの耕作面積を対応付けて記憶する。
図3に示す例では、2010年は、耕作地域Aの耕作面積がA1[ha]であり、耕作地域Bの耕作面積がB1[ha]であり、耕作地域Cの耕作面積がC1[ha]である。また、2011年は、耕作地域Aの耕作面積がA2[ha]であり、耕作地域Bの耕作面積がB2[ha]であり、耕作地域Cの耕作面積がC2[ha]である。耕作面積DB12が、この発明で言う耕作面積記憶部に相当する。
【0032】
なお、この例では、耕作面積DB12が各耕作地域A、B、Cの耕作面積を対応付けて記憶する期間を1年にしているが、この期間については、3ヶ月や6ヶ月等の期間にしてもよい。
【0033】
図4は、送水量履歴DBの構成を示す図である。送水量履歴DB13は、各耕作地域A、B、Cに対する用水の送水量(実績値)、および予測総送水量の履歴を記憶する。具体的には、送水量履歴DB13は、日毎に、各耕作地域A、B、Cに対して実際に送水した用水の送水量[m
3](実績値)、および後述する予測処理で予測した予測総送水量[m
3]を対応付けて記憶する。
図4に示す例では、2011年3月15日は、耕作地域Aに対する用水の送水量の実績値がAV1[m
3]であり、耕作地域Bに対する用水の送水量の実績値がBV1[m
3]であり、耕作地域Cに対する用水の送水量の実績値がCV1[m
3]である。また、2011年3月15日は、耕作地域Aに対する用水の予測総送水量がA’V1[m
3]であり、耕作地域Bに対する用水の予測総送水量がB’V1[m
3]であり、耕作地域Cに対する用水の予測総送水量の実績値がC’V1[m
3]である。
【0034】
また、2011年10月21日は、耕作地域Aに対する用水の送水量の実績値がAV2[m
3]であり、耕作地域Bに対する用水の送水量の実績値がBV2[m
3]であり、耕作地域Cに対する用水の送水量の実績値がCV2[m
3]である。また、2011年10月21日は、耕作地域Aに対する用水の予測総送水量がA’V2[m
3]であり、耕作地域Bに対する用水の予測総送水量がB’V2[m
3]であり、耕作地域Cに対する用水の予測総送水量の実績値がC’V2[m
3]である。
【0035】
なお、
図4において、2014年5月20日は、予測総送水量が予想されているが、現時点が2014年5月21日以降でないため、各耕作地域A、B、Cに対する用水の送水量(実績値)が計測されておらず、各耕作地域A、B、Cに対する用水の送水量(実績値)が登録されていない状態を示している。送水量履歴DB13が、この発明で言う送水量履歴記憶部に相当する。
【0036】
タイムスケジュール記憶部14は、予測日における、時間帯毎の用水の送水量の割当率を記憶する。ここで言う時間帯は、この例では1時間であり、その開始が正時である。すなわち、1日を24の時間帯に分割している。この分割した時間帯が、この発明で言う区分期間に相当する。
【0037】
図5は、タイムスケジュール記憶部に記憶されている、時間帯毎の用水の送水量の割当率を示す時間帯別送水量の割当率データである。
図5は、2014年5月20日(予測日)の時間帯毎の用水の送水量の割当率である。各耕作地域A、B、Cは、各時間帯の割当率の総和が100%になる。タイムスケジュール記憶部14は、少なくとも、演算処理部11が後述する予測処理で用水の送水量を予測する予測日における時間帯別送水量の割当率データを記憶する。
【0038】
任意の日における時間帯毎の用水の送水量の割当率は、その日の各時間帯で用水を使用する田畑の面積を用いて算出される。各時間帯で用水を使用する田畑の面積は、耕作地域A、B、Cに田畑を所有する農家の作業予定から得られる。言い換えれば、耕作地域A、B、Cに田畑を所有する農家に作業予定を確認することで、各時間帯で用水を使用する田畑の面積が得られる。時間帯毎の用水の送水量の割当率は、その時間帯に用水を使用する田畑の面積を、その日の各時間帯で用水を使用する田畑の面積の総和である累積面積で除した100分率の値である。例えば、時間帯毎の用水の送水量の割当率は、以下のようにして算出する。
【0039】
耕作地域Aを例にして具体的に説明すると、耕作地域Aの任意の日における、各時間帯の用水を使用する田畑の面積がAx0(0時台)、Ax1(1時台)、Ax2(2時台)、Ax3(3時台)、Ax4(4時台)、Ax5(5時台)、Ax6(6時台)、Ax7(7時台)、Ax8(8時台)、Ax9(9時台)、Ax10(10時台)、Ax11(11時台)、Ax12(12時台)、Ax13(13時台)、Ax14(14時台)、Ax15(15時台)、Ax16(16時台)、Ax17(17時台)、Ax18(18時台)、Ax19(19時台)、Ax20(20時台)、Ax21(21時台)、Ax22(22時台)、およびAx23(23時台)であるとする。この場合、この任意の日における累積面積SAxは、
SAx=Ax0+Ax1+Ax2+Ax3+Ax4+Ax5+Ax6+Ax7+Ax8
+Ax9+Ax10+Ax11+Ax12+Ax13+Ax14+Ax15+Ax16
+Ax17+Ax18+Ax19+Ax20+Ax21+Ax22+Ax23
になる。
【0040】
各間帯の用水の送水量の割当率anは、
an=Axn/SAx×Aαn×100
になる。但し、Aαnは、後述する時間帯別送水量パターン学習機能部58において検出された時間帯別の補正係数である。また、nは時間帯を示し、0〜23である。このタイムスケジュール記憶部14が、この発明で言う区分期間別送水量記憶部に相当する。
【0041】
図6は、時間帯別送水量記憶部に記憶される、時間帯毎の用水の送水量を示す時間帯別送水量のデータである。
図6は、2014年5月20日の時間帯毎の用水の送水量であり、後述する予測処理による予測結果である。ここでは、送水量として単位時間[sec]当たりの用水の流量を記憶している。
図6において、avnは、時間帯毎に、耕作地域Aに送水する用水の流量を示す。bvnは、時間帯毎に、耕作地域Bに送水する用水の流量を示す。cvnは、時間帯毎に、耕作地域Cに送水する用水の流量を示す。但し、nは時間帯を示し、0〜23である。また、送水量として記憶する流量の単位時間は、上述の[sec]に限らず、[min]や[hour]等としてもよい。
【0042】
通信部16は、送水量を予測した予測日毎に、その予測結果をポンプ制御装置2に送信する。また、通信部16は、ポンプ制御装置2から送信されてきたデータを受信する。ポンプ制御装置2から送信されてくるデータは、例えば各流量計4(4a、4b、4c、4d)で検出された用水の流量である。この通信部16が、この発明で言う出力部に相当する。
【0043】
図7は、演算処理部の機能構成を示す機能ブロック図である。演算処理部11は、実績期間決定機能部51と、実績期間データ読出機能部52と、予測総送水量算出機能部53と、補正期間データ読出機能部54と、予測総送水量補正機能部55と、時間帯別送水量算出機能部56と、時間帯別ポンプ操作量算出機能部57と、時間帯別送水量パターン学習機能部58と、比較機能部59と、を有している。
【0044】
実績期間決定機能部51は、指定された予測日に対応する実績期間を決定する。この例では、1月1日から12月31日までの1年を53週で管理し、指定された予測日と同じ週で、且つ同じ曜日を実績期間に決定する。例えば、予測日が、2014年5月20日(21週目の火曜日)であれば、最近数年(3〜5年)における、21週目の火曜日を実績期間に決定する。すなわち、2013年5月21日(21週目の火曜日)、2012年5月22日(21週目の火曜日)、2011年5月23(21週目の火曜日)日等が実績期間に決定される。実績期間は、1日であってもよいが、複数日であるほうが好ましい。
【0045】
なお、実績期間は、各年の同じ月日にしてもよいし、各年において同じ月日を基準にした前後数日の期間にしてもよい。
【0046】
実績期間データ読出機能部52は、各耕作地域A、B、Cについて、耕作面積DB12から決定した実績期間が属する年の耕作面積を読み出すとともに、予測日が属する年の耕作面積を読み出す。また、実績期間データ読出機能部52は、各耕作地域A、B、Cについて、送水量履歴DB13から決定した実績期間の送水量を読み出す。
【0047】
予測総送水量算出機能部53は、決定した実績期間毎に、単位面積当たりの用水の送水量を算出し、これらの平均に予測日が属する年の耕作面積を乗じた値を予測総送水量として算出する。予測総送水量算出機能部53は、耕作地域A、B、C毎に、予測総送水量を算出する。
【0048】
補正期間データ読出機能部54は、予測日に対して決定される補正期間に属する日毎に、用水の総送水量の実績値と、予測値と、を読み出す。補正期間は、現在の時点を基準にして定めればよい。この例では、予測日の直近の過去1週間を補正期間に決定する。
図4に示したように、送水量履歴DB13が、用水の総送水量の実績値と、予測値とを耕作地域A、B、C毎に記憶している。
図8は、耕作地域Aにおける、用水の総送水量の実績値と、予測値とを示す図である。
【0049】
予測総送水量補正機能部55は、予測総送水量算出機能部53が算出した予測総送水量を、補正期間に属する各日の用水の総送水量の実績値と予測値とを用いて補正する。具体的には、予測総送水量補正機能部55は、補正期間に属する日毎に、(実績値/予測値)を日単位補正係数として算出し、これらの日単位補正係数の平均を補正係数とする。そして、予測総送水量補正機能部55は、予測総送水量算出機能部53が算出した予測総送水量と、補正係数とを乗じた値を、補正した予測総送水量として算出する。予測総送水量補正機能部55は、耕作地域A、B、C毎に、補正した予測総送水量を算出する。
【0050】
時間帯別送水量算出機能部56は、
図5に示した予測日における各時間帯の送水量の割当率を用い、各時間帯の用水の流量を算出し、
図6に示した予測日の時間帯別送水量データを作成する。各時間帯の用水の流量avn、bvn、cvnは、
(予測総送水量補正機能部55が補正した予測総送水量)×(対応する時間帯の送水量の割当率)/3600
により算出される。時間帯別送水量記憶部15は、この時間帯別送水量算出機能部56が作成した、予測日の時間帯別送水量データを記憶する。
【0051】
時間帯別ポンプ操作量算出機能部57は、耕作地域A、B、Cに対する用水の送水量に応じて、駆動するポンプ3の台数や、各ポンプ3の駆動パラメータを算出する。駆動パラメータは、例えばポンプの回転数を制御する駆動周波数である。
【0052】
また、時間帯別送水量パターン学習機能部58は、
図5に示した時間帯別送水量の割当率データの算出において用いる時間帯別の補正係数を算出する。この補正係数の算出については後述する。
【0053】
比較機能部59は、流量計4で計測されている用水の流量と、予測した用水の流量と、を比較し、用水の送水が適正に行えているかどうかを監視するとともに、用水の送水が不適正である耕作地域A、B、Cがあれば、その旨を示すメッセージや、警告画像にかかるデータを出力する。この比較機能部59が、この発明で言う比較部に相当する。
【0054】
図9は、ポンプ制御装置の構成を示す図である。ポンプ制御装置2は、制御部21と、ポンプ駆動部22と、流量計測部23と、表示・操作部24と、通信部25とを備えている。
【0055】
制御部21は、ポンプ制御装置2本体各部の動作を制御する。
【0056】
ポンプ駆動部22は、接続されているポンプ3(3a、3b、3c)の駆動制御を行う。
【0057】
流量計測部23は、接続されている流量計4(4a、4b、4c、4d)で計測されている用水の流量の入力を受け付ける。
【0058】
表示・操作部24は、マウスやキーボード等の入力デバイスを有し、ポンプ制御装置2本体に対するオペレータの入力操作を受け付ける。また、表示・操作部24は、表示器を有し、この表示器における画面表示を制御する。
【0059】
通信部25は、送水量を予測した予測日毎に、その予測結果をポンプ制御装置2に送信する。また、通信部25は、送水量予測装置1から送信されてきたデータを受信する。送水量予測装置1から送信されてくるデータは、例えば時間帯別のポンプ操作量にかかるデータである。
【0060】
以下、この例にかかる送水量予測管理システムの動作について説明する。
【0061】
まず、耕作地域A、B、Cに対する用水の送水量を予測する予測処理について説明する。
図10は、予測処理を示すフローチャートである。この例にかかる送水量予測装置1は、毎日午前0時になると(日付が変わると)、この予測処理を自動実行する。予測日は、当日である。また、この時点までに、予測日における時間帯別の送水量の割当率がタイムスケジュール記憶部14に記憶されている。
【0062】
送水量予測装置1は、耕作地域A、B、Cに対して送水する用水の送水量を予測する予測日を当日に決定する(s1)。
【0063】
なお、オペレータが、予測処理の実行にかかる入力操作を行う構成としてもよい。この場合、オペレータが、送水量予測装置1に設けた操作部(不図示)において予測日の指定にかかる入力操作を行う構成であってもよいし、ポンプ制御装置2に設けた表示・操作部24において予測日の指定にかかる入力操作を行い、通信部25を利用して入力した予測日等を送水量予測装置1に送信する構成であってもよい。また、予測日を、オペレータが任意に指定できる構成としてもよい。
【0064】
演算処理部11は、指定された予測日に対応する実績期間を決定する(s2)。実績期間決定機能部51が、s2にかかる処理を行う。実績期間は、最近数年(3〜5年程度)における、予測日と同じ週で、且つ同じ曜日を実績期間に決定する。この例では、兼業農家が増加していることから、実績期間を曜日で合わせるようにしている。実績期間は、1日であってもよいが、複数日であるほうが好ましい。
【0065】
演算処理部11は、耕作地域A、B、Cのそれぞれについて、送水量履歴DB13から、s2で決定した実績期間毎に、用水の送水量(実績値)を読み出す(s3)。また、演算処理部11は、耕作地域A、B、Cのそれぞれについて、耕作面積DB12から、s2で決定した実績期間毎に、その実績期間が属する年の耕作面積を読み出す(s4)。s4では、耕作面積DB12から、耕作地域A、B、Cのそれぞれについて、予測日が属する年の耕作面積も読み出す。実績期間データ読出機能部52が、s3、およびs4にかかる処理を行う。
【0066】
演算処理部11は、耕作地域A、B、Cのそれぞれについて、予測日に送水する用水の予測総送水量を個別に算出する(s5)。具体的には、演算処理部11は、耕作地域Aについてs2で決定した実績期間毎に、単位耕作面積[1ha]当たりの用水の送水量を算出する。単位耕作面積[1ha]当たりの用水の送水量は、s3で読み出した用水の送水量(実績値)を、s4で読み出した耕作面積で除することにより算出できる。
【0067】
演算処理部11は、耕作地域Aについて、実績期間毎に算出した、単位耕作面積[1ha]当たりの用水の送水量の平均を、実績期間における単位耕作面積[1ha]当たりの用水の送水量として算出する。さらに、演算処理部11は、耕作地域Aについて、実績期間における単位耕作面積[1ha]当たりの用水の送水量(実績期間毎に算出した、単位耕作面積[1ha]当たりの用水の送水量の平均)と、s4で読み出した予測日が属する耕作地域Aの耕作面積と、を乗じた値を、予測日に送水する用水の予測総送水量として算出する。
【0068】
また、演算処理部11は、耕作地域B、Cについても同様の演算を行い、予測日に送水する用水の予測総送水量を算出する。予測総送水量算出機能部53が、s5にかかる処理を行う。
【0069】
なお、演算処理部11は、s2で決定した実績期間における用水の送水量(実績値)の総和を、s2で決定した実績期間における耕作面積の総和で除した値を、実績期間における単位耕作面積[1ha]当たりの用水の送水量として算出する構成としてもよい。
【0070】
演算処理部11は、予測日に対応する補正期間が属する日毎に、耕作地域A、B、Cのそれぞれについて、予測した用水の総送水量と、実際に送水した用水の総送水量と、を補正期間データとして読み出す(s6)。この例では、補正期間は、現時点を基準にした直近の7日間(1週間)である。耕作地域A、B、Cのそれぞれの補正期間に対して予測した用水の総送水量(予測総送水量)は、送水量履歴DB13に記憶されている。また、耕作地域A、B、Cのそれぞれの補正期間に実際に送水した用水の送水量(実績値)も、送水量履歴DB13に記憶されている。補正期間データ読出機能部54が、s6にかかる処理を行う。
【0071】
演算処理部11は、予測日に対する補正係数を算出する(s7)。s7では、補正期間に属する各日について、日単位補正係数を算出する。日単位補正係数は、
日単位補正係数=(実際に送水した用水の総送水量)/(予測した用水の総送水量)
により算出する(
図8参照)。そして、補正期間の各日について算出した日単位補正係数の平均を補正係数として算出する。
【0072】
演算処理部11は、s7で算出した補正係数を用いて、s5で算出した予測総送水量を補正する(s8)。s8では、s5で算出した予測総送水量と、s7で算出した補正係数とを乗じた値を、補正した予測総送水量として算出する。予測総送水量補正機能部55が、s7、およびs8にかかる処理を行う。また、演算処理部11は、s8で補正した予測総送水量を送水量履歴DB13に登録する。
【0073】
演算処理部11は、予測日の時間帯別の用水の送水量を算出する(s9)。具体的には、s8において補正した予測総送水量と、タイムスケジュール記憶部14に記憶している時間帯毎の送水量の割当率とを乗じた値を、その時間帯における送水量として算出する。そして、各時間帯について算出した用水の送水量を単位時間[sec]当たりの送水量(すなわち流量)に換算し、これをタイムスケジュール記憶部14に記憶する(s10)。s9にかかる処理は、時間帯別送水量算出機能部56が行う。
【0074】
上述したように、予測日に耕作地域A、B、Cに送水する用水の送水量を、過去数年における同時期の単位面積当たりの用水の送水量を用いて予測する。したがって、耕作面積の変化や、対象地域で栽培されている農産物の成育状況に応じて、送水する用水の送水量を精度よく予測することができる。
【0075】
次に、用水の送水量の監視処理について説明する。送水量予測装置1は、当日の時間帯別のポンプ3(3a、3b、3c)の操作量を算出し、これをポンプ制御装置2に送信する。ポンプ制御装置2は、ポンプ駆動部22において、ポンプ3(3a、3b、3c)を駆動する。
【0076】
各流量計4(4a、4b、4c、4d)で計測された用水の流量は、ポンプ制御装置2の流量計測部23に入力される。ポンプ制御装置2は、流量計測部23に入力された各流量計4(4a、4b、4c、4d)で計測された用水の流量を、通信部25において送水量予測装置1に送信する。
【0077】
図11は、監視処理を示すフローチャートである。送水量予測装置1は、演算処理部11において、各耕作地域A、B、Cに対する用水の送水状況を判定する(s21)。具体的には、ポンプ制御装置2から送信されてきた各流量計4(4a、4b、4c)で計測された用水の流量と、時間帯別送水量記憶部15に記憶している流量と、を対比し、耕作地域A、B、Cに対する用水の送水が適正であるかどうかを判定する。比較機能部59が、このs21にかかる処理を行う。
【0078】
s21では、耕作地域Aについては、流量計4aが計測している用水の流量と、時間帯別送水量記憶部15に記憶している耕作地域Aに対する流量と、を比較する。また、耕作地域Bについては、流量計4bが計測している用水の流量と、時間帯別送水量記憶部15に記憶している耕作地域Bに対する流量と、を比較する。さらに、耕作地域Cについては、流量計4cが計測している用水の流量と、時間帯別送水量記憶部15に記憶している耕作地域Cに対する流量と、を比較する。
【0079】
上記比較において、流量計4で計測された用水の流量が、時間帯別送水量記憶部15に記憶している流量よりも所定量(例えば、10%)以上多ければ、その対象地域に対する用水の送水量が適正でないと判定する。
【0080】
送水量予測装置1は、s21における判定結果をポンプ制御装置2に送信する(s22)。送水量予測装置1は、s21、s22にかかる処理を繰り返す。
【0081】
また、ポンプ制御装置2は、耕作地域A、B、C毎に、予測した用水の流量と、流量計4で計測された実際の用水の流量と、を対比して表示・操作部24に設けた表示器に表示してもよい。例えば、
図12に示すように、予測した用水の流量と、流量計4で計測された実際の用水の流量と、を横軸が時間軸で、縦軸が用水の送水量であるグラフで表示する。これにより、予測した用水の送水量(流量)と、流量計4で計測されている実際の用水の送水量(流量)と、の差をオペレータに視覚的に確認させることができる。
【0082】
また、ポンプ制御装置2は、ポンプ3の操作量のフィードバック制御を行ってもよい。例えば、ポンプ制御装置2は、ある耕作地域に対する用水の送水量が増加し、他の耕作地域に対して用水を十分に送水できなくなる場合等に、ポンプ3の操作量を制御し、他の耕作地域に対して用水を十分に送水できるように制御してもよい。
【0083】
また、送水量予測装置1は、流量計4aで計測された用水の流量を、時間積分することにより、耕作地域Aに対して送水した用水の送水量を得る。同様に、耕作地域Bに対して送水した用水の送水量は、流量計4bで計測された用水の流量を時間積分することにより算出でき、耕作地域Cに対して送水した用水の送水量は、流量計4cで計測された用水の流量を時間積分することにより算出できる。送水量予測装置1は、各耕作地域A、B、Cに送水した用水の送水量を送水量履歴DB13に記憶する。
【0084】
このように、送水量予測装置1が、耕作面積の変化や、対象地域で栽培されている農産物の成育状況に応じて、送水する用水の送水量を予測することができる。すなわち、各耕作地域A、B、Cに送水する用水の送水量を適切に制御することができる。
【0085】
また、この予測結果に基づいてポンプ3(3a、3b、3c)を制御するので、ポンプ3(3a、3b、3c)を効率的に運転することができる。したがって、ランニングコストの増加を抑え、且つ水源から用水を無駄に汲み上げることにより生じる自然破壊を抑制することができる。
【0086】
また、演算処理部11は、上述の例における、補正期間データ読出機能部54、および予測総送水量補正機能部55を備えていない構成としてもよい。この場合、時間帯別送水量算出機能部56は、予測総送水量算出機能部53が算出した予測総送水量を用いて、時間帯別送水量を算出する構成にすればよい。
【0087】
また、上述の例における、時間帯別ポンプ操作量算出機能部57、および比較機能部59は、ポンプ制御装置2側に設けてもよい。このようにすれば、上述の監視処理おいて、送水量予測装置1と、ポンプ制御装置2との間で通信されるデータ量(流量計4による用水の流量の計測値にかかるデータ)を抑えることができる。
【0088】
ここで、時間帯別送水量パターン学習機能部58が、時間帯別の補正係数を学習する処理について説明する。上述したように、早朝や、夕方における用水の使用量に比べて、日中における用水の使用量が多くなる傾向がある。
【0089】
時間帯別送水量パターン学習機能部58は、時間帯毎に、その時間帯の用水の実際の送水量を、その時間帯の割当率で除した値を算出する。ここで算出される値は、単位割当率当たりの実際の送水量である。
図13は、時間帯別の単位割当率当たりの実際の送水量の変化を示す図である。時間帯別送水量パターン学習機能部58は、例えば、予測日の直近1週間のデータを用いて、時間帯毎に変動計数を算出する。この変動計数は、時間帯毎に、(その時間帯における単位割当率当たりの実際の送水量)を(単位割当率当たりの実際の送水量の平均)で除することにより算出する。この変動計数が、上述した、時間帯別の補正係数である。これにより、タイムスケジュール記憶部14が記憶する送水量の割当率は、時間帯による用水の使用量の変動の影響が抑えられる。