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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-217084(P2015-217084A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】映像処理装置および内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20151110BHJP
   A61B 1/04 20060101ALI20151110BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20151110BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20151110BHJP
【FI】
   A61B1/00 300D
   A61B1/04 370
   G02B23/24 B
   A61B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-102274(P2014-102274)
(22)【出願日】2014年5月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【弁理士】
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(74)【代理人】
【識別番号】100183760
【弁理士】
【氏名又は名称】山鹿 宗貴
(72)【発明者】
【氏名】池田 友輝
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040BA09
2H040CA07
4C161CC06
4C161LL02
4C161MM02
4C161NN01
4C161NN05
4C161SS21
4C161TT03
(57)【要約】
【課題】色変換処理に用いるマトリクス係数を切り替え可能であって、マトリクス演算を切り替える場合に良好な観察映像が得られる映像処理装置および内視鏡システムを提供する。
【解決手段】映像処理装置を、所定の撮像装置より順次入力される映像信号に対して所定のマトリクス係数に基づく色変換処理を順次施す色変換手段と、ユーザからの指示入力を受け付ける入力受付手段と、映像信号の周期に同期したタイミングで、色変換手段にて用いられるマトリクス係数を指示入力に応じたマトリクス係数に切り替えるマトリクス係数切替手段と、から構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮像装置より所定の周期で順次入力される映像信号に対してマトリクス係数に基づく色変換処理を順次施す色変換手段と、
ユーザからの指示入力を受け付ける入力受付手段と、
前記映像信号の周期に同期したタイミングで、前記色変換手段にて用いられるマトリクス係数を前記指示入力に応じたマトリクス係数に切り替えるマトリクス係数切替手段と、を備える、
映像処理装置。
【請求項2】
前記マトリクス係数切替手段は、
前記撮像装置から前記映像信号の周期に同期した同期信号を受信し、
前記入力受付手段が前記指示入力を受け付けた後、前記同期信号を受信したタイミングで前記マトリクス係数を切り替える、
請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項3】
前記同期信号は、前記映像信号の垂直同期信号であり、
前記マトリクス係数切替手段は、
前記入力受付手段が前記指示入力を受け付けた後、前記垂直同期信号の立下りを検出した時、前記色変換手段にて用いられるマトリクス係数を前記指示入力に応じたマトリクス係数に切り替える、
請求項2に記載の映像処理装置。
【請求項4】
複数種類のマトリクス係数を記憶するマトリクス係数記憶手段を更に備え、
前記マトリクス係数切替手段は、
前記入力受付手段が前記指示入力を受け付けると、該指示入力に応じたマトリクス係数を前記マトリクス係数記憶手段から読み出し、
前記映像信号の周期に同期したタイミングで、前記色変換手段にて用いられるマトリクス係数を前記マトリクス係数記憶手段から読み出されたマトリクス係数に切り換える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の映像処理装置。
【請求項5】
被写体を照明する照明光を放射する光源と、
前記照明光の波長特性をそれぞれ異なる波長特性に変化させる複数種類のフィルタと、
前記指示入力に基づいて前記複数種類のフィルタのいずれか一つを選択するフィルタ選択手段と、
前記選択されたフィルタを前記照明光の光路に配置するフィルタ配置手段と、を更に備え、
前記マトリクス係数切替手段は、
前記映像信号の周期に同期したタイミングで、前記色変換手段にて用いられるマトリクス係数を前記フィルタ選択手段にて選択されたフィルタに応じたマトリクス係数に切り換える、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の映像処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の映像処理装置と、
映像信号を所定の周期で生成して順次出力する撮像装置を有する電子スコープと、を備える、
内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換処理に適用されるマトリクス係数を切り替え可能な映像処理装置および内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の食道や腸などの管腔内を観察するための内視鏡システムが知られている。この種の内視鏡システムは、電子スコープにより撮像された被写体の各画素の画素信号を処理して映像信号を生成する内視鏡プロセッサを備えている。また、術者にとって管腔内の特定の生体組織の観察映像が見易くなるように、被写体を照明する照明光の波長特性を切り替え可能な内視鏡システムが知られている。
【0003】
例えば特許文献1に照明光の波長特性を切り替え可能な内視鏡システムが記載されている。特許文献1に記載の内視鏡システムは、広い波長帯域の照明光を放射する光源と、照明光の波長帯域を制限する複数の光学フィルタとを備えている。術者が内視鏡システムに対してフィルタ切替操作を行うと、適用される光学フィルタが切り替えられる。また、光学フィルタが切り替えられると、映像信号の色変換処理に適用されるマトリクス係数も切り替えられる。このような内視鏡システムを用いることにより、色変換処理に光学フィルタに適したマトリクス係数が使用され、術者にとって見易い観察映像が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−13589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の内視鏡システムでは、術者によってフィルタ切替操作が行われると、マトリクス係数も切替操作に従い即時に切り替えられる。そのため、例えば、内視鏡プロセッサが一枚の画像に対して色変換処理を行っている途中にマトリクス係数が切り替わることがある。この場合、異なるマトリクス係数が適用されることによって画像内で色味の異なる領域が混在し観察映像が一時的に乱れるという不具合が指摘される。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ユーザによる指示入力のタイミングに拘わらず、マトリクス係数の切り替わりに起因する観察映像の乱れが発生しない映像処理装置および内視鏡システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の実施形態の映像処理装置は、所定の撮像装置より所定の周期で順次入力される映像信号に対してマトリクス係数に基づく色変換処理を順次施す色変換手段と、ユーザからの指示入力を受け付ける入力受付手段と、映像信号の周期に同期したタイミングで、色変換手段にて用いられるマトリクス係数を指示入力に応じたマトリクス係数に切り替えるマトリクス係数切替手段とを備える。
【0008】
このような構成によれば、マトリクス係数は、一枚の画像に対して色変換処理を行っている途中では切り替わらず、映像信号の周期に同期したタイミングで切り替わる。そのため、異なるマトリクス係数が適用されることによって画像内で色味の異なる領域が混在し観察映像が一時的に乱れるという不具合が発生しない。
【0009】
また、マトリクス係数切替手段は、撮像装置から映像信号の周期に同期した同期信号を受信し、入力受付手段が指示入力を受け付けた後、同期信号を受信したタイミングでマトリクス係数を切り替えてもよい。
【0010】
また、同期信号は、映像信号の垂直同期信号であってもよい。この場合、マトリクス係数切替手段は、入力受付手段が指示入力を受け付けた後、垂直同期信号の立下りを検出した時、色変換手段にて用いられるマトリクス係数を指示入力に応じたマトリクス係数に切り替える。
【0011】
また、映像処理装置は、複数種類のマトリクス係数を記憶するマトリクス係数記憶手段を更に備えてもよい。この場合、マトリクス係数切替手段は、入力受付手段が指示入力を受け付けると、指示入力に応じたマトリクス係数をマトリクス係数記憶手段から読み出し、映像信号の周期に同期したタイミングで、色変換手段にて用いられるマトリクス係数をマトリクス係数記憶手段から読み出されたマトリクス係数に切り換える。
【0012】
また、映像処理装置は、被写体を照明する照明光を放射する光源と、照明光の波長特性をそれぞれ異なる波長特性に変化させる複数種類のフィルタと、指示入力に基づいて複数種類のフィルタのいずれか一つを選択するフィルタ選択手段と、選択されたフィルタを照明光の光路に配置するフィルタ配置手段と、を更に備えてもよい。この場合、マトリクス係数切替手段は、映像信号の周期に同期したタイミングで、色変換手段にて用いられるマトリクス係数をフィルタ選択手段にて選択されたフィルタに応じたマトリクス係数に切り換える。
【0013】
本発明の実施形態の内視鏡システムは、上記の映像処理装置と、映像信号を所定の周期で生成して順次出力する撮像装置を有する電子スコープとを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、ユーザによる指示入力のタイミングに拘わらず、マトリクス係数の切り替わりに起因する観察映像の乱れが発生しない映像処理装置および内視鏡システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態にかかる内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態にかかるフィルタターレットの正面図である。
図3】本発明の実施形態にかかる光学フィルタの分光特性を示す図である。
図4】本発明の実施形態にかかる撮像素子の受光面の一部を模式的に表した図である。
図5】本発明の実施形態にかかる色変換回路の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施形態にかかる色変換回路の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態にかかる内視鏡システムについて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、内視鏡システム1は、医療用の撮像システムであり、電子スコープ100、プロセッサ200およびモニタ300を有している。
【0018】
電子スコープ100は、照明光学系101、対物光学系102、撮像素子103、AFE(Analog Front End)104、ライトガイド105、電気コネクタ106および電気コネクタ107を備えている。
【0019】
プロセッサ200は、システムコントローラ201、タイミングコントローラ202、光源ドライバ203、光源204、集光レンズ205、フィルタターレット206、モータドライバ207、モータ208、フォトインタラプタ209、信号処理回路210、映像信号生成回路211およびフロントパネル212を備えている。信号処理回路210は、デモザイク処理回路210A、色変換回路210B、色補正回路210Cおよびノイズ除去回路210Dを含んでいる。
【0020】
システムコントローラ201は、内視鏡システム1を構成する各要素を制御する。タイミングコントローラ202は、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを内視鏡システム1内の各回路に送信する。また、システムコントローラ201はフロントパネル212に接続されている。フロントパネル212は、術者が内視鏡システム1の各種設定や各種パラメータを変更するためのユーザインターフェースである。システムコントローラ201は、術者によるフロントパネル212への入力操作に基づいて各要素を制御する。
【0021】
光源204は、光源ドライバ203によって駆動制御され、白色光を放射する。光源204には、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプが用いられる。光源204から放射された照明光は、集光レンズ205およびフィルタターレット206を介してライトガイド105に入射される。
【0022】
図2に、フィルタターレット206を光源204側から見た正面図を示す。フィルタターレット206は円盤形状を有している。図2に示されるように、フィルタターレット206には、分光特性の異なる第1光学フィルタ206aと第2光学フィルタ206bとが円周方向に並べて配置されている。フィルタターレット206は、モータ208によって回転動作することにより、第1光学フィルタ206aと第2光学フィルタ206bのいずれか一方を照明光の光路中(図2中、点線にて示される領域L参照)に配置し、波長特性の異なる2種類の照明光の一方を取り出す。
【0023】
図3に、第1光学フィルタ206aおよび第2光学フィルタ206bの分光特性を示す。図3の横軸は波長(単位:nm)を示し、縦軸は透過率(単位:%)を示す。図3に示されるように、第1光学フィルタ206aの透過率Taは、波長が約400nmから約700nmまでの可視光帯域の光に対してほぼ100%である。そのため、第1光学フィルタ206aを透過した照明光は白色光となる。一方、第2光学フィルタ206bは、波長が450nm近傍の光(青色光)および550nm近傍の光(緑色光)の光に対する透過率Tbが高く、それ以外の波長の光に対する透過率Tbが低い。そのため、第2光学フィルタ206bを透過した光は、青色光と緑色光とが混ざったシアン色となる。以下、説明の便宜上、第1光学フィルタ206aを透過した照明光を「通常光」と記し、第2光学フィルタ206bを透過した照明光を「狭帯域光」と記す。
【0024】
術者によりフロントパネル212に対してフィルタ切替操作が行われると、フィルタターレット206が回転し、フィルタ切替操作に応じた光学フィルタが照明光の光路中に配置される。これにより、フィルタターレット206にて取り出される照明光(通常光または狭帯域光)が切り替わる。フィルタターレット206の回転位置や回転の位相は、フィルタターレット206の外周付近に形成された開口(不図示)をフォトインタラプタ209によって検出することにより制御される。
【0025】
フィルタターレット206を通過した照明光(通常光または狭帯域光)は、ライトガイド105内に入射され、電子スコープ100の先端部に向けてライトガイド105内を導波される。ライトガイド105内を導波された照明光は、電子スコープ100の先端部内に配置されたライトガイド105の端面より射出される。ライトガイド105の端面より射出された照明光は、照明光学系101を介して電子スコープ100から射出され、被写体を照明する。被写体で反射された照明光(反射光)は、対物光学系102を介して撮像素子103に入射され、撮像素子103が備える各画素の受光面上で被写体像を結ぶ。
【0026】
図4は、撮像素子103の受光面の一部を模式的に表したものである。撮像素子103は、補色市松型画素配置を有するインターレース方式の単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。図4中、「Ye」、「Cy」、「Mg」、「G」はそれぞれ、イエロー(Ye)、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)、グリーン(G)のカラーフィルタを有する画素を示している。各画素は、結像された被写体像を光量に応じた電荷として蓄積する。蓄積された電荷は、周知の色差線順次のインターレース方式に基づいて読み出される。具体的には、垂直方向において隣接する2つの画素の画素信号が加算された混合信号が順次読み出される。例えば、図4に示される例では、撮像素子103の画素の内、n水平走査ラインのYe画素の画素信号およびYe画素に隣接するMg画素の画素信号の混合信号(Wrin)と、Cy画素の画素信号およびCy画素に隣接するG画素の画素信号の混合信号(Gbin)とが交互に読み出される。次に、(n+1)水平走査ラインのYe画素の画素信号およびYe画素に隣接するG画素の画素信号の混合信号(Grin)と、Cy画素の画素信号およびCy画素に隣接するMg画素の画素信号の混合信号(Wbin)とが交互に読み出される。このように、水平走査ラインの混合信号の読み出しが順次行われることにより、一フィールド分の画素信号が読み出される。
【0027】
AFE104は、撮像素子103から読み出される各混合信号(Wrin、Gbin、Grin、Wbin)に対して信号増幅処理やA/D変換処理を施し、これにより得られたデジタルRAWデータを出力する。AFE104より出力されるデジタルRAWデータは、電気コネクタ107を介して信号処理回路210に送信される。デモザイク処理回路210Aは、AFE104から受信したデジタルRAWデータに対して周知のデモザイク処理を施して映像データを生成する。生成された映像データは、色変換回路210Bに送信される。
【0028】
色変換回路210Bは、デモザイク処理回路210Aから受信した映像データに対して色変換処理を施す。色変換処理では、映像データに含まれる各混合信号(Wrin、Gbin、Grin、Wbin)に対して次式に示されるマトリクス演算処理が施され、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応した画像信号(Rout、Gout、Bout)が生成される。
【0029】
上記式において、Mはマトリクス係数を示す。色変換回路210Bは、各照明光に対応するマトリクス係数Mを保持している。術者によるフロントパネル212に対するフィルタ切替操作に従って被写体を照明する照明光が切り替わると、被写体像の色味やコントラストなどが変化する。そのため、色変換回路210Bは、マトリクス演算処理に適用するマトリクス係数Mを、切替後の照明光に対応するマトリクス係数Mに切り替える。
【0030】
色補正回路210Cは、マトリクス演算処理が施された映像データに対してホワイトバランス調整処理やガンマ補正処理などの色補正処理を施してノイズ除去回路210Dに送信する。ノイズ除去回路210Dは、色補正回路210Cから受信した映像データに対して周知の空間フィルタ処理などによるノイズ除去処理を施し、映像信号生成回路211に送信する。
【0031】
映像信号生成回路211は、信号処理回路210(ノイズ除去回路210D)から受信した映像データを、所定の形式(例えば、NTSC形式)の映像信号に変換してモニタ300に送信する。モニタ300は、映像信号生成回路211から受信した映像信号に基づいて被写体の観察映像を表示する。
【0032】
次に、映像データに適用されるマトリクス係数の切り替えについて詳細に説明する。図5は、色変換回路210Bの構成を示すブロック図である。色変換回路210Bは、演算部210B1および係数切替部210B2を備えている。演算部210Bは、映像データにマトリクス係数を適用して色変換処理を施す。係数切替部210B2は、演算部210B1によって映像データに適用されるマトリクス係数を切り替える。
【0033】
係数切替部210B2の所定の記憶領域には、照明光が通常光である場合に適用されるマトリクス係数M1および照明光が狭帯域光である場合に適用されるマトリクス係数M2が予め記憶されている。術者によりフロントパネル212に対してフィルタ切替操作が行われると、使用される光学フィルタを示すフィルタ切替信号が選択部SELに送信される。選択部SELは、フィルタ切替信号に応じてマトリクス係数(M1またはM2)を読み出し、出力コントローラCTRLに送信する。出力コントローラCTRLは、選択部SELから受信したマトリクス係数を所定のタイミングで演算部210B1に送信する。演算部210B1は、選択部SELからマトリクス係数を受信すると、受信したマトリクス係数を適用したマトリクス演算処理を行う。
【0034】
出力コントローラCTRLがマトリクス係数を送信するタイミングは、映像データに含まれる垂直同期信号に同期している。具体的には、垂直同期信号は、撮像素子103から一フィールド分の混合信号が読み出される毎に送信される。撮像素子103より送信される垂直同期信号は、一フィールド周期で出力コントローラCTRLにて受信される。出力コントローラCTRLは、選択部SELによって読み出されるマトリクス係数を、垂直同期信号を受信したタイミングで演算部210B1に送信する。
【0035】
図6は、色変換回路210Bの動作タイミングを示すタイミングチャートである。図6中、左側から右側に向かって時間が経過している。初期状態または術者によって第1光学フィルタ206aが選択されている場合を考える。この場合、第1光学フィルタ206aが照明光の光路上に配置されている。そのため、選択部SELによって通常光に対応したマトリクス係数M1が読み出され、演算部210B1に送信される。演算部210B1は、マトリクス係数M1を適用したマトリクス演算処理を実行する。術者によりフロントパネル212に対して第1光学フィルタ206aを第2光学フィルタ206bに切り替える切替操作が行われると(時刻t1)、選択部SELはマトリクス係数M2を読み出し、出力コントローラCTRLに送信する。出力コントローラCTRLは、選択部SELから受信したマトリクス係数M2を保持する。出力コントローラCTRLは、マトリクス係数M2を保持している間に垂直同期信号を受信すると(時刻t2)、保持しているマトリクス係数M2を演算部210B1に送信する。演算部210B1は、出力コントローラCTRLからマトリクス係数M2を受信すると、マトリクス演算処理に適用するマトリクス係数をマトリクス係数M2に切り替える。
【0036】
このように、本実施形態では、術者によりフィルタの切替操作が行われると、その操作タイミングに拘わらず、常に、マトリクス演算処理に適用されるマトリクス係数が垂直同期信号と同期したタイミング(フィールドが切り替わるタイミング)で切り替わる。そのため、一フィールド内で異なるマトリクス係数が適用されて画像内で色味の異なる領域が混在することにより観察映像が一時的に乱れるという不具合が発生しない。
【0037】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0038】
本実施形態では、マトリクス係数は一フィールド分のマトリクス演算処理が終了するタイミングで切り替わるが、本発明はこれに限定されない。マトリクス係数は、例えば一フレーム分のマトリクス演算処理が終了するタイミングで切り替わってもよい。具体的には、垂直同期信号に代えて、フィールド識別信号が用いられる。フィールド識別信号は、撮像素子103より送信されるRAWデータがODDとEVENのどちらのフィールドのRAWデータであるかを示す信号である。出力コントローラCTRLは、フィールド識別信号に基づいて演算部210B1が一フレーム分のマトリクス演算処理を終了したかどうかを判定する。出力コントローラCTRLは、演算部210B1の一フレーム分のマトリクス演算処理を終了するタイミングで、マトリクス係数を演算部210B1に送信する。
【0039】
また、本実施形態では、撮像素子103は、補色市松型画素配置を有するCCDイメージセンサであるが、本発明はこれに限定されない。撮像素子103は、例えば周知のベイヤ方式のCCDイメージセンサであってもよい。また、撮像素子103は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであってもよい。
【0040】
また、本実施形態では、画素信号は撮像素子103からインターレース方式に基づいて読み出されるが、本発明はこれに限定されない。画素信号はプログレッシブ方式に基づいて読み出されてもよい。この場合、演算部210B1で適用使用されるマトリクス係数は、一フレーム分のマトリクス演算処理が終了するタイミングで切り替わる。
【0041】
また、フィルタターレット206は、2つの光学フィルタ206a、206bを有しているが、本発明はこれに限定されない。フィルタターレット206は、3つ以上の光学フィルタを有してもよい。また、図3に示される第1光学フィルタ206aおよび第2光学フィルタ206bの分光特性は、本実施形態の一例であって、本発明はこれに限定されない。
【0042】
また、本実施形態では、一つの光学フィルタに対して、一つのマトリクス係数が係数切替部210B2に記憶されているが、本発明はこれに限定されない。マトリクス係数は、一つの光学フィルタに対して複数種類が係数切替部210B2に記憶されていてもよい。この場合、術者によりフロントパネル212に対してマトリクス係数を切り替える操作が行われると、照明光の光路に配置される光学フィルタは切り替わらずに、演算部210B1で適用されるマトリクス係数のみが垂直同期信号等の同期したタイミングで切り替わる。
【符号の説明】
【0043】
1 内視鏡システム
100 電子スコープ
101 対物光学系
102 照明光学系
103 撮像素子
104 AFE(Analog Front End)
105 ライトガイド
106 電気コネクタ
107 電気コネクタ
200 プロセッサ
201 システムコントローラ
202 タイミングコントローラ
203 光源ドライバ
204 光源
205 集光レンズ
206 フィルタターレット
206a 第1光学フィルタ
206b 第2光学フィルタ
207 モータドライバ
208 モータ
209 フォトインタラプタ
210 信号処理回路
210A デモザイク処理回路
210B 色変換回路
210B1 演算部
210B2 係数切替部
210C 色補正回路
210D ノイズ除去回路
211 映像信号生成回路
212 フロントパネル
300 モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6