【解決手段】スパッタ遮蔽部540は、遮蔽板41の上面側に配設される整流部542と、その整流部542に連設される排出部545と、ノズル装置44とを備えている。よって、第1通過孔41a及び貫通孔542bを通過して整流部542の内部へ進入したスパッタを気体によって吹き飛ばすことができるので、スパッタが保護ガラス22に付着することを防止できると共に、整流部542を通過し終えて排出部545へ流入した気体を排出部545の他端側から上方へ向けて排出することができる。従って、スパッタの保護ガラス22への付着防止と気体へのシールドガスの巻き込み防止との両立を図ることができる。
レーザ光を発生させるレーザ発信器、そのレーザ発信器から発生した前記レーザ光を集光して母材の溶接位置へ照射する集光レンズ、及び、その集光レンズと前記溶接位置との間に位置する保護ガラスを有するレーザ照射部と、
そのレーザ照射部から前記レーザ光が照射される前記溶接位置において前記母材との間にアークを発生させるアーク発生手段、及び、そのアーク発生手段から発生するアークを大気から遮蔽するシールドガスを前記母材へ向けて噴射するシールドガス噴射手段を有するトーチ部と、を備えた複合溶接装置において、
前記レーザ照射部の保護ガラス及び前記溶接位置の間に配設されるスパッタ遮蔽部を備え、
前記スパッタ遮蔽部は、
前記レーザ光の照射方向と交わる方向に沿って配設され、前記レーザ光が通過可能な第1通過孔を有する板状の遮蔽板と、
その遮蔽板の上面側に配設され、前記第1通過孔の上方であって前記集光レンズから照射される前記レーザ光と交わる方向へ向けて気体を噴射するノズル装置と、
そのノズル装置から噴射される気体を案内すると共に前記第1通過孔の上方に配設され、前記レーザ光が通過可能に構成される整流部と、
その整流部よりも前記気体の噴射方向下流側に位置し一端側が前記整流部に連通されると共に他端側が上方へ向けて開口する筒状の排出部とを備えていることを特徴とする複合溶接装置。
前記排出部は、円筒状に形成されると共に、軸心に沿った長さ寸法が前記排出部の外形の5倍以下に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合溶接装置。
前記整流部は、前記ノズル装置から噴射される気体の噴射方向に沿って延設されると共に前記遮蔽板の上面側であって前記第1通過孔を挟んだ位置に立設される一対の整流板を備え、
前記一対の整流板は、前記ノズル装置による前記気体の噴射位置から少なくとも前記遮蔽板の第1通過孔を超える位置において、前記一対の整流板の対向間隔が均一に設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の複合溶接装置。
前記整流部は、前記レーザ光が通過可能な第2通過孔を有し、前記一対の整流板に架設されることで前記第2通過孔を前記第1通過孔と対応する位置に配置しつつ前記遮蔽板に対向して配設されると共に、前記ノズル装置による気体の噴射位置から少なくとも前記遮蔽板の第1通過孔よりも前記気体の噴射方向下流側まで延設される蓋板を備えていることを特徴とする請求項4記載の複合溶接装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、本発明の第1実施の形態における複合溶接装置100の概略構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施の形態における複合溶接装置100の要部を模式的に表した模式図である。
【0016】
図1に示すように、複合溶接装置100は、レーザ溶接とガスシールドアーク溶接とを組み合わせた、いわゆるレーザ・アークハイブリッド溶接装置であり、母材wが配設される溶接位置の上方に配設されるレーザ照射部20と、そのレーザ照射部20よりも下方であって溶接位置の上方に配設されるトーチ部30と、そのトーチ部30及び溶接位置よりも上方であってレーザ照射部20の下方に配設されるスパッタ遮蔽部40とを主に備えている。
【0017】
レーザ照射部20は、溶接位置に配設された母材wに対しレーザ溶接を行うものであり、レーザ光Lを発生させるレーザ発信器(図示せず)と、そのレーザ発信器から発生したレーザ光Lを集光して母材wに照射する集光レンズ21と、その集光レンズ21を保護する保護ガラス22とを備えている。
【0018】
保護ガラス22は、溶接位置に配設された母材wに対する溶接加工時に発生するスパッタが集光レンズ21に付着することを防止するための部材であり、集光レンズ21と溶接位置との間に配設されると共に集光レンズ21により集光されたレーザLが透過可能に構成されている。
【0019】
トーチ部30は、母材wに対しガスシールドアーク溶接を行うものであり、母材wとの間にアークを発生させるアーク発生手段(図示せず)と、そのアーク発生手段から発生するアークを大気から遮蔽するためのシールドガスを母材wへ向けて噴射するシールドガス噴射手段(図示せず)とを備えている。
【0020】
なお、本実施の形態における複合溶接装置100では、集光レンズ21に集光されたレーザ光Lが鉛直方向(
図1上下方向)に沿って照射され、そのレーザLが照射される方向に対して30度傾斜した方向からシールドガスが母材wへ向けて噴射されている。
【0021】
スパッタ遮蔽部40は、スパッタが保護ガラス22に付着することを防止するためのものである。
【0022】
次に、
図2及び
図3を参照して、スパッタ遮蔽部40の詳細構成について説明する。
図2は、スパッタ遮蔽部40の上面図である。
図3(a)は、
図2のIIIa−IIIa線におけるスパッタ遮蔽部40の断面図であり、
図3(b)は、
図2のIIIb−IIIb線におけるスパッタ遮蔽部40の断面図である。なお、
図2及び
図3(b)では、ノズル装置44から噴射された気体の流れを矢印で模式的に図示している。
【0023】
図2に示すように、スパッタ遮蔽部40は、板状の遮蔽板41と、その遮蔽板41の上面側(
図2紙面手前側)に立設される一対の整流板42と、それら一対の整流板42に架設される蓋板43と、それら遮蔽板41、一対の整流板42及び蓋板43により包囲された空間内へ向けて気体を噴射するノズル装置44とを主に備えている。
【0024】
遮蔽板41は、レーザ光Lの通過を許容しつつ保護ガラス22(
図1参照)へ向けて飛散するスパッタを遮蔽するための部位である。遮蔽板41は、レーザ光Lが通過可能に貫通形成される第1通過孔41aを備え、レーザ光Lが照射される位置と対応する位置に第1通過孔41aを配置した状態で、遮蔽板41がレーザ光Lの照射方向(
図2紙面垂直方向)に直交する方向に沿って配設されている。
【0025】
また、遮蔽板41のうち気体の噴射方向に直交する方向に位置する側端部分(
図2上下方向における端部)には、遮蔽板41の上面側(
図2紙面手前側)へ向けて上昇傾斜する傾斜側端部41bが形成されている。
【0026】
一対の整流板42は、ノズル装置44から噴射された気体を案内する部位であり、気体の噴射方向(
図2左右方向)に沿って延設されている。
【0027】
一対の整流板42は、その延設方向一側(気体の噴射方向上流側、
図2右側)に形成される一対の第1整流部42aと、その第1整流部42aの延設方向他側(気体の噴射方向下流側、
図2左側)の端部に延設方向一側の端部が連設される一対の第2整流部42bと、その第2整流部42bの延設方向他側の端部に延設方向一側の端部が連設される第3整流部42cとを備えている。
【0028】
第1整流部42aは、矩形板状に形成され、第1通過孔41aを挟んだ両側に一対の整流部42aが立設されている。一対の第1整流部42aは、その対向間隔が均一となるように気体の噴射方向に沿って延設されている。
【0029】
第1整流部42aは、その延設方向一側の端部が気体の噴射方向上流側における遮蔽板41の端部に位置し、第1整流部42aの延設方向他側の端部が第1通過孔41aよりも気体の噴射方向下流側に位置している。また、第1整流部42aは、その延設方向において遮蔽板41からの高さ寸法が一定となっている。
【0030】
第2整流部42bは、矩形板状に形成されている。一対の第2整流部42bは、それら一対の第2整流部42bの対向間隔が気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて徐々に幅広くなるように配設されている。また、第2整流部42bは、遮蔽板41からの高さ寸法が気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。
【0031】
第3整流部42cは、矩形板状に形成されている。一対の第3整流部42cは、その対向間隔が均一となるように気体の噴射方向に沿って延設され、各第3整流部42cの延設方向他側の端部が気体の噴射方向下流側における遮蔽板41の端部に位置している。また、第3整流部42cは、その延設方向において遮蔽板41からの高さ寸法が一定となっている。
【0032】
このように、一対の整流板42は、気体の噴射方向上流側における遮蔽板41の端部から第1通過孔41aを超える位置までは、対向間隔が均一となるように第1整流部42aが気体の噴射方向に沿って形成され、第1通過孔41aよりも気体の噴射方向下流側では、一対の第1整流部42aよりも対向間隔が幅広くなるように一対の第2整流部42b及び第3整流部42cが形成されている。
【0033】
また、一対の整流板42は、第1整流部42aが、延設方向において遮蔽板41からの高さ寸法が一定に設定されると共に、その第1整流部42aの遮蔽板41aからの高さ寸法よりも第2整流部42b及び第3整流部42cの遮蔽板41からの高さ寸法が大きくなるように設定されている。
【0034】
なお、遮蔽板41のうち第3整流部42cの間に位置する部分には、気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて水平面に対して上昇傾斜する傾斜底部45が形成されている。
【0035】
蓋板43は、レーザ光Lの通過を許容しつつノズル装置44から噴射された気体が上方へ拡散することを抑制する部位であり、遮蔽板41に対向して配設されている。また、蓋板43には、遮蔽板41の第1通過孔41aと対応する位置に、レーザ光Lが通過可能な第2通過孔43aが貫通形成されている。
【0036】
なお、レーザ光Lの照射方向(
図2紙面垂直方向)から視た第1通過孔41aの開口面積が第2通過孔43aの開口面積よりも小さく設定されている。遮蔽板41に形成される第1通過孔41aの開口面積を小さくすることで、第1通過孔41aを通過するスパッタを少なくすることができる。
【0037】
ここで、スパッタ遮蔽部40は、遮蔽板41の第1通過孔41aから気体の噴射方向下流側への延設長さ寸法が、蓋板43の第2通過孔43aから気体の噴射方向下流側への延設長さ寸法よりも大きく設定され、蓋板43が、一対の整流板42のうち第1整流部42aのみに対して架設されている。これにより、一対の整流板42の間に形成される空間のうち、一対の第1整流部42aの間に形成される空間は上方が蓋板43により閉塞されるのに対し、第2整流部42b及び第3整流部42cの間に形成される空間は上方が開放されている。
【0038】
また、蓋板43が一対の整流板42のうち第1整流部42aにのみ架設されることで、第2整流部42b及び第3整流部42cの遮蔽板41からの高さ寸法が、蓋板43と遮蔽板41との対向間隔よりも大きくなっている。
【0039】
図3(a)に示すように、ノズル装置44は、第1通過孔41aを通過したスパッタを吹き飛ばすための気体を噴射する装置である。ノズル装置44には、気体が噴射される噴出口44aが形成され、その噴出口44aから噴射される気体が第1通過孔41aと第2通過孔43aとの間を通過するようにノズル装置44が配置されている。
【0040】
なお、噴出口44aの幅寸法(
図3(a)左右寸法)は、第1通過孔41aの内径よりも大きく、かつ、第2通過孔43aの内径よりも小さい寸法に設定されている。これにより、第1通過孔41aを通過したスパッタに気体を確実に吹き付けることができると共に、噴出口44aの開口面積の大型化を抑制することで、気体を噴射するためのエネルギーを抑制しつつ気体を噴出口44aから勢いよく噴射することができる。
【0041】
図3(b)に示すように、溶接加工時において、保護ガラス22(
図1参照)へ向けて飛散するスパッタの大部分は、遮蔽板41に遮蔽される。しかしながら、遮蔽板41には、レーザ光Lを通過させるための第1通過孔41aが形成されているので、スパッタの一部は第1通過孔41aを通過する。
【0042】
これに対し、ノズル装置44から第1通過孔41aの上方へ向けて気体を噴射する。このノズル装置44から噴射する気体によって第1通過孔41aを通過したスパッタを吹き飛ばすことで、スパッタが保護ガラス22に付着することを回避できる。
【0043】
ここで、ノズル装置44から噴射される気体の勢いを強くすることで、スパッタを確実に吹き飛ばすことができる一方、勢いよく噴射された気体が拡散すると、遮蔽板41の下面側の大気が気体に巻き込まれ、母材w(
図1参照)へ向けて噴射されるシールドガスも気体に巻き込まれる。この場合、シールドガスによるアークと大気との遮断が不安定となり、却ってスパッタの飛散量を増加させる要因となる。
【0044】
一方、ノズル装置44から噴射される気体の勢いを弱めると、スパッタを十分に吹き飛ばすことができず、保護ガラス22へのスパッタの付着が多くなる。
【0045】
これに対し、スパッタ遮蔽部40は、遮蔽板41、一対の整流板42及び蓋板43により包囲された空間内に向けて気体を噴射する。
【0046】
一対の整流板42は、気体の噴射方向上流側における端部から第1通過孔41aを超える位置まで延設される第1整流部42aが、その対向間隔が均一となるように気体の噴射方向に沿って形成されているので、ノズル装置44から噴射された気体の流速が第1通過孔41aの上方を通過するまでの間に低下することを抑制できる。よって、第1通過孔41aを通過したスパッタに気体を勢いよく吹き付けることができるので、スパッタを吹き飛ばしやすくすることができる。さらに、ノズル装置44から噴射された気体が第1通過孔41aの上方を通過するまでの間に、気体が側方(
図3(b)紙面手前方向)へ拡散することを防止できる。
【0047】
また、一対の整流板42は、第1整流部42aに蓋板43が架設されることで遮蔽板41に対向して配設され、一対の第1整流部42aの間に形成される空間の上方が蓋板43により閉塞されているので、ノズル装置44から噴射された気体が第1通過孔41aの上方を通過するまでの間に、気体が上方(
図3(b)上方)へ拡散することを防止できる。
【0048】
このように、遮蔽板41、一対の整流板42及び蓋板43により包囲された空間内に向けて気体を噴射することで、ノズル装置44から噴射された気体が上方や側方へ拡散することを防止できる。これにより、ノズル装置44から噴射された気体の流速が第1通過孔41aの上方を通過するまでの間に低下することを抑制できるので、第1通過孔41aを通過したスパッタに対して気体を勢いよく吹き付けることができると共に、第1通過孔41aの上面側に気体を確実に通過させることで第1通過孔41aを通過したスパッタを確実に吹き飛ばすことができる。
【0049】
また、一対の整流板42は、第1通過孔41aよりも気体の噴射方向下流側に形成される一対の第2整流部42bの対向間隔が、気体の噴射方向上流側から下流側へ向かうにつれて幅広くなっている。これにより、第1通過孔41aの上方を通過して一対の第2整流部42bの間に進入する気体を側方へ拡散することができるので、気体の流速を低下させることができる。
【0050】
また、一対の第2整流部42bは、その対向間隔が気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて徐々に幅広くなっているので、一対の第2整流部42bが気体の噴射方向下流側における第1整流部42aの端部に垂直に連設され、互いに離間する方向へ向けて延設されている場合と比べて、気体を拡散しやすくすることができ、その結果、気体の流速を低下させやすくすることができる。
【0051】
さらに、スパッタ遮蔽部40は、一対の整流板42のうち、一対の第1整流部42aには蓋板43が架設され、一対の第1整流部42aの間に形成された空間の上方は蓋板43により閉塞されているのに対し、一対の第2整流部42b及び一対の第3整流部42cには蓋板43が架設されておらず、一対の第2整流部42b及び一対の第3整流部42cの間に形成された空間の上方は開放されている。よって、一対の第2整流部42b及び一対の第3整流部42cの間に進入した気体を上方へ拡散させやすくすることができる。
【0052】
これに加え、スパッタ遮蔽部40は、第2整流部42b及び第3整流部42cの遮蔽板41からの高さ寸法が、蓋板43と遮蔽板41との対向間隔よりも大きく設定され、第2整流部42b及び第3整流部42cの上端が蓋板43よりも上方(
図3(b)上側)へ突出している。
【0053】
これにより、第2整流部42b及び第3整流部42cに進入した気体を上方へ拡散させる際に、その気体が第2整流部42b及び第3整流部42cを越えて側方(
図3(b)紙面垂直方向)へ拡散することを抑制できる。
【0054】
さらに、遮蔽板41のうち第3整流部42cの間に位置する部分には、気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて水平面に対して上昇傾斜する傾斜底部45が形成されているので、第3整流部42cの間を通過した気体を傾斜底部45により上方へ案内できる。
【0055】
また、一対の第3整流部42cは、その対向間隔が均一に設定されているので、側方へ流れようとする気体を上方へ案内しやすくすることができる。
【0056】
さらに、遮蔽板41の側端部には、傾斜側端部41bが形成されているので、遮蔽板41の側方へ拡散した気体を上方へ案内できる。
【0057】
このように、第1通過孔41aの上方を通過し、一対の第2整流部42b及び一対の第3整流部42cの間に進入した気体を上方へ拡散させやすくすることで、ノズル装置44から気体を勢いよく噴射したとしても、遮蔽板41の下面側の大気が遮蔽板41の上面側を通過し終えた気体の流れに巻き込まれることを抑制できるので、気体の流れにシールドガスが巻き込まれることを低減できる。
【0058】
このように、ノズル装置44から気体を勢いよく噴射すると共に、第1通過孔41aの上方を通過するまでの間における気体の流速低下を抑制することで、スパッタに対して気体を勢いよく噴射して第1通過孔41aを通過するスパッタを吹き飛ばしやすくすることができる。さらに、第1通過孔41aを通過した後の気体の流速を低下させることで、遮蔽板41の上面側を通過し終えた気体の流れにシールドガスが巻き込まれることを低減できる。
【0059】
よって、第1通過孔41aを通過したスパッタに対して吹き付ける気体の流速を確保することによるスパッタの保護ガラス22(
図1参照)への付着防止と、一対の整流板42の間を通過し終えた気体の流速を低下させることによる気体へのシールドガス巻き込み低減との両立を図ることができる。
【0060】
次に、
図4を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態における複合溶接装置100では、集光レンズ21に集光されたレーザ光Lが鉛直方向に沿って照射される場合について説明したが、第2実施の形態における複合溶接装置200では、トーチ部30から噴射されるシールドガスを鉛直方向に沿って噴射している。
図4は、第2実施の形態における複合溶接装置200の要部を模式的に表した模式図である。なお、第1実施の形態と同一の部分は、同じ符号を付して以下の説明を省略する。
【0061】
図4に示すように、複合溶接装置200では、トーチ部30から噴射されるシールドガスを鉛直方向に沿って噴射し、集光レンズ21に集光されたレーザ光がシールドガスの噴射方向に対して30度傾斜した方向から照射されている。
【0062】
これにより、レーザ光Lを鉛直方向に沿って照射する場合と比べて、飛散して遮蔽板41の第1通過孔41aを通過するスパッタの量を少なくすることができるので、保護ガラス22へのスパッタの付着を防止しやすくすることができる。
【0063】
次に、
図5(a)を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、一対の第1整流部42aと一対の第2整流部42bと一対の第3整流部42cとを備える一対の整流板42のうち、一対の第2整流部42bのみが気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて対向間隔が幅広くなるように設定されていたが、第3実施の形態では、一対の整流板342が、延設方向全体に亘って噴射方向上流側から下流側へ向けて対向間隔が幅広くなるように設定されている。
図5(a)は、第3実施の形態におけるスパッタ遮蔽部340の上面図であり、ノズル装置44から噴射される気体の流れを矢印で模式的に図示している。なお、上記した各実施の形態と同一の部分は、同じ符号を付して以下の説明を省略する。
【0064】
図5(a)に示すように、スパッタ遮蔽部340は、第1通過孔41aを有する遮蔽板41と、その遮蔽板41の第1通過孔41aを挟んだ両側に立設される一対の整流板342と、それら一対の整流板342に架設される蓋板343と、ノズル装置44とを備えている。
【0065】
整流板342は、ノズル装置44から噴射される気体の噴射方向に沿って延設されると共に、一対の整流板342の対向間隔が気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて徐々に幅広くなっている。また、遮蔽板41のうち一対の整流板342の間であって第1通過孔41aよりも気体の噴射方向下流側に位置する部分には、気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて水平面に対して上昇傾斜する傾斜底部345が形成されている。
【0066】
これにより、ノズル装置44から気体を勢いよく噴射したとしても、遮蔽板41の下面側の大気が遮蔽板41の上面側を通過し終えた気体の流れに巻き込まれることを抑制できるので、気体の流れにシールドガスが巻き込まれることを低減できる。
【0067】
次に、
図5(b)を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態では、一対の第1整流部42aと一対の第2整流部42bと一対の第3整流部42cとを備える一対の整流板42のうち、一対の第2整流部42bのみが気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて対向間隔が幅広くなるように設定されていたが、第4実施の形態では、一対の整流板442のうち第3整流部442cのみが噴射方向上流側から下流側へ向けて対向間隔が幅広くなるように設定されている。
図5(b)は、第4実施の形態におけるスパッタ遮蔽部440の上面図であり、ノズル装置44から噴射される気体の流れを矢印で模式的に図示している。なお、上記した各実施の形態と同一の部分は、同じ符号を付して以下の説明を省略する。
【0068】
図5(b)に示すように、スパッタ遮蔽部440は、第1通過孔41aを有する遮蔽板41と、その遮蔽板41の第1通過孔41aを挟んだ両側に立設される一対の整流板442と、蓋板43と、ノズル装置44とを備えている。
【0069】
一対の整流板442は、一対の第1整流部42aと、その第1整流部42aの延設方向他側(気体の噴射方向下流側、
図5(b)左側)の端部に延設方向一側の端部が連設される一対の第2整流部442bと、その第2整流部442bの延設方向他側の端部に延設方向一側の端部が連設される第3整流部442cとを備えている。
【0070】
第2整流部442bは、矩形板状に形成され、一対の第2整流部442bの対向間隔が均一となるように気体の噴射方向に沿って設定されている。
【0071】
第3整流部442cは、湾曲した板状に形成されると共に、一対の第3整流部442cの対向間隔が気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて互いに離間するように配設されている。また、遮蔽板41のうち一対の第3整流部442cの間に位置する部分には、気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて水平面に対して上昇傾斜する傾斜底部445が形成されている。
【0072】
スパッタ遮蔽部440は、気体が一対の第1整流部42aの間および一対の第2整流部442bの間を通過するまでの間において、気体の流速が低下することを抑制できるので、第1通過孔41aを通過したスパッタに対して気体を勢いよく吹き付けることができる。一方、一対の第3整流部442cの間に進入した気体を上方または側方(
図5(b)紙面垂直方向または上下方向)へ拡散しやすくすることができるので、気体の流速を効率よく低下させることができる。
【0073】
このように、ノズル装置44から気体を勢いよく噴射すると共に、第1通過孔41aの上方を通過するまでの間における気体の流速低下を抑制することで、スパッタに対して気体を勢いよく噴射して第1通過孔41aを通過するスパッタを吹き飛ばしやすくすることができる。さらに、第1通過孔41aを通過した後の気体の流速を低下させることで、遮蔽板41の上面側を通過し終えた気体の流れにシールドガスが巻き込まれることを低減できる。
【0074】
次に、
図6及び
図7を参照して、第5実施の形態について説明する。第1実施の形態では、ノズル装置44から噴射された気体が一対の整流板42、蓋板43及び傾斜底部45に案内される場合について説明したが、第5実施の形態では、ノズル装置44から噴射された気体が整流部542及び排出部545に案内される。
図6は、第5実施の形態における複合溶接装置500の要部を模式的に表した模式図であり、排出部545から排出された気体の流れを矢印で模式的に図示している。
図7は、スパッタ遮蔽部540の上面図である。なお、上記した各実施の形態と同一の部分は、同じ符号を付して以下の説明を省略する。
【0075】
図6及び
図7に示すように、スパッタ遮蔽部540は、遮蔽板41と、その遮蔽板41の上面側に配設される整流部542と、その整流部542に連設される排出部545と、ノズル装置44とを主に備えて構成されている。
【0076】
整流部542は、ノズル装置44から噴射された気体を案内するための部位であり、円筒状に形成されている。整流部542は、第1通過孔41aの上方に配置され、遮蔽板41に立設された板状のリブ542aによって遮蔽板41に支持されている。また、整流部542には、第1通過孔41aと対応する位置にレーザ光Lが通過可能な2つの貫通孔542bが貫通形成されている。なお、貫通孔542bは、その開口面積が第1通過孔41aの開口面積よりも大きくなるように形成されている。
【0077】
整流部542は、その一端側(
図7右側)をノズル装置44の噴出口44a(
図3参照)に対向させた状態で配置されている。これにより、噴出口44aから噴射される気体が整流部542の内部に吹き付けられるので、第1通過孔41a及び貫通孔542bを通過して整流部542の内部へ進入したスパッタを気体によって吹き飛ばすことができ、その結果、スパッタが保護ガラス22に付着することを防止できる。
【0078】
排出部545は、蛇腹状に構成された蛇腹部545aを有する円筒状に形成されており、排出部545の一端側が整流部542の他端側(
図7右側)に連通されると共に、排出部545の他端側(
図7左側)が上方へ向けられた状態で開口している。よって、整流部542を通過し終えて排出部545へ流入した気体は、排出部545の他端側から上方へ向けて排出される。
【0079】
従って、複合溶接装置500は、整流部542に進入したスパッタをノズル装置44から勢いよく噴射した気体によって確実に吹き飛ばしつつ、整流部542を通過し終えた気体にシールドガスが巻き込まれることを防止でき、スパッタの保護ガラス22への付着防止と気体へのシールドガスの巻き込み防止との両立を図ることができる。
【0080】
また、排出部545には蛇腹部545aが形成されているので、排出部545を変形させて開口する排出部545の他端部の向きを変更することができる。これにより、複合溶接装置500を設置するために必要とされるスペースを小さくすることができる。
【0081】
ここで、排出部545の軸心に沿った寸法は、排出部545の外径の5倍以下の寸法に設定することが望ましい。即ち、排出部545の軸心に沿った寸法が排出部545の外径の5倍よりも大きい寸法である場合には、気体が排出部545の他端側まで到達せずに逆流し、その結果、貫通孔542bから排出部545の外部へ流出し、その流出した気体にシールドガスが巻き込まれる。
【0082】
これに対し、排出部545の軸心に沿った寸法を小さくすることで、気体を確実に上方へ向けて排出することができるので、シールドガスが気体に巻き込まれることを防止できる。
【0083】
次に、
図8を参照して、第6実施の形態について説明する。第1実施の形態では、ノズル装置44から噴射された気体が一対の整流板42、蓋板43及び傾斜底部45に案内される場合について説明したが、第6実施の形態では、ノズル装置44から噴射された気体が一対の整流板642及び排出部545に案内される。
図8は、第6実施の形態におけるスパッタ遮蔽部640の上面図である。なお、上記した各実施の形態と同一の部分は、同じ符号を付して以下の説明を省略する。
【0084】
図8に示すように、スパッタ遮蔽部640は、遮蔽板41と、その遮蔽板41の上面側(
図8紙面手前側)に立設される一対の整流板642と、それら一対の整流板642に架設される蓋板43と、それら一対の整流板642及び蓋板43に連結される排出部545と、ノズル装置44とを主に備えている。
【0085】
一対の整流板642は、矩形板状に形成され、第1通過孔41aを挟んだ両側に立設され、一対の第1整流板42aは、その対向間隔が均一となるように気体の噴射方向に沿って延設されているので、ノズル装置44から噴射された気体を第1通過孔41aの上方を通過するように案内しつつ、気体が第1通過孔41aの上方を通過するまでの間に、気体が側方(
図8上下方向)へ拡散することを防止できる。
【0086】
また、一対の整流板642の間に形成される空間の上方が蓋板43により閉塞されているので、ノズル装置44から噴射された気体が第1通過孔41aの上方を通過するまでの間に、気体が上方(
図8紙面手前方向)へ拡散することを防止できる。
【0087】
このように、遮蔽板41、一対の整流板642及び蓋板43により包囲された空間内に向けて気体を噴射することで、ノズル装置44から噴射された気体が上方や側方へ拡散することを防止できる。これにより、ノズル装置44から噴射された気体の流速が第1通過孔41aの上方を通過するまでの間に低下することを抑制できるので、第1通過孔41aを通過したスパッタに気体を勢いよく吹き付けることができると共に、第1通過孔41aの上面側に気体を確実に通過させることで第1通過孔41aを通過したスパッタを確実に吹き飛ばすことができる。
【0088】
なお、一対の整流板642及び蓋板43と排出部545とが筒状のジョイント部646に介して連結されている。ジョイント部646は、その一端側が遮蔽板41、一対の整流板642及び蓋部43により形成された開口部分に対して嵌合可能な断面略矩形状に形成されると共に、ジョイント部646の他端側が排出部545の一端側に嵌合可能な断面略円形状に形成されている。
【0089】
一対の整流板642及び蓋板43に排出部545が連結され、遮蔽板41、一対の整流板642及び蓋板43により包囲された内部空間と排出部545とが連通されているので、一対の整流板642の間を通過し終えた気体は、排出部545へ流入し、その流入した気体が排出部545の他端側から上方へ向けて排出される。
【0090】
これにより、ノズル装置44から勢いよく噴射した気体によって、第1通過孔41aを通過したスパッタを確実に吹き飛ばしつつ、一対の整流板642を通過し終えた気体にシールドガスが巻き込まれることを防止できるので、スパッタの保護ガラス22(
図6参照)への付着防止と気体へのシールドガスの巻き込み防止との両立を図ることができる。
【0091】
以上、各実施の形態に基づき、本発明を実施したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0092】
例えば、上記各実施の形態では、遮蔽板41がレーザLの照射方向に直交する方向へ沿って配設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、遮蔽板41が少なくともレーザLの照射方向に交わる方向に沿って配設されていればよい。
【0093】
上記各実施の形態では、遮蔽板41に形成される第1通過孔41aの開口面積が、蓋板43,343に形成される第2通過孔43a又は整流部542に形成される貫通孔542bの開口面積よりも小さく形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1通過孔41aの開口面積が第2通過孔43a又は貫通孔542bの開口面積以上であってもよい。これにより、第1通過孔41a及び第2通過孔43a又は貫通孔542bの寸法管理を簡素化してスパッタ遮蔽部40,340,440の製造コストを抑制できる。
【0094】
上記第1実施から第4実施の形態では、遮蔽板41が傾斜底部45,345,445を備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、傾斜底部45,345,445を省略してもよい。これにより、スパッタ遮蔽部40,340,440の形状を簡素化してスパッタ遮蔽部40,340,440の製造コストを抑制できる。
【0095】
また、上記第1実施から第4実施の形態では、傾斜底部45,345,445が、遮蔽板41のうち一対の整流板42,342,442の間(一対の第3整流板42c,442cの間)に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、遮蔽板41のうち第1通過孔41aよりも気体の噴射方向下流側に位置する部分全体(一対の整流板42,342,442の内側および外側)を、気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて水平面に対して上昇傾斜するように形成してもよい。
【0096】
上記第1実施および第4実施の形態では、蓋板43が、一対の整流板42,442のうち一対の第1整流板42aにのみ架設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、蓋板43が、一対の第1整流部42aに加えて一対の第2整流部42bの一部もしくは全体または一対の第3整流部42cの一部に架設されていてもよい。これにより、第1通過孔41aの上方を通過し終えた気体を、第1通過孔41aからより離間した位置において上方へ拡散することができるので、シールドガスが気体の流れに巻き込まれることを低減できる。
【0097】
上記第1実施から第4実施および第6実施の形態では、スパッタ遮蔽部40,340,440,640が蓋板43,343を備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、蓋板43,343を省略してもよい。これにより、スパッタ遮蔽部の部品コストを抑制できる。
【0098】
上記第1実施から第4実施および第6実施の形態では、一対の整流板42,342,442,642の延設方向一側における端部が、気体の噴射方向上流側における遮蔽板41の端部に位置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、一対の整流板42,342,442,642の延設方向一側における端部が、少なくとも気体の噴射方向におけるノズル装置44の噴出口44aと対応する位置よりも気体の噴射方向上流側に配置されていればよい。これにより、ノズル装置44から噴射された気体を一対の整流板42,342,442,642によって案内できるので、気体が側方へ拡散することを防止できる。
【0099】
なお、請求項4における「ノズル装置による気体の噴射位置」は、ノズル装置44の噴出口44aの位置に相当する。
【0100】
また、上記第1実施から第4実施の形態では、一対の整流板42,342,442の延設方向他側における端部が、気体の噴射方向下流側における遮蔽板41の端部に位置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、一対の整流板42,342,442の延設方向他側における端部が、少なくとも第1通過孔41aよりも気体の噴射方向下流側まで延設されていればよい。これにより、ノズル装置44から噴射された気体が第1通過孔41aの上方を通過するまでの間に、気体の流速が低下することを抑制できる。
【0101】
上記第1実施の形態では、一対の整流板42の第1整流部42aの遮蔽板41からの高さ寸法が第2整流部42b及び第3整流部42cの遮蔽板41からの高さ寸法よりも小さく設定されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1整流部42aの遮蔽板41からの高さ寸法が第2整流部42bまたは第3整流部42cの遮蔽板41からの高さ寸法と同等に設定されていてもよい。第1整流部42a、第2整流部42b及び第3整流部42cの遮蔽板41からの高さ寸法をすべて一定にした場合には、一対の整流板42の形状を簡素化できるので、部品コストを抑制することができる。
【0102】
上記第1実施の形態では、一対の整流板42の第1整流部42aの遮蔽板41からの高さ寸法が、第1整流部42aの延設方向において一定に設定されると共に、第3整流部42cの遮蔽板41からの高さ寸法が、第3整流部42cの延設方向において一定に設定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1整流部42aの遮蔽板41からの高さ寸法又は第3整流部42cの遮蔽板41からの高さ寸法を、気体の噴射方向上流側から下流側へ向かうにつれて徐々に大きくなるように設定してもよい。
【0103】
第1整流部42aの遮蔽板41からの高さ寸法を、気体の噴射方向上流側から下流側へ向かうにつれて徐々に大きくなるように設定した場合には、一対の第1整流部42aに架設される蓋板43が気体の噴射方向上流側から下流側へ向けて上昇傾斜するように配設される。これにより、ノズル装置44から気体を勢いよく噴射したとしても、遮蔽板41の下面側の大気が遮蔽板41の上面側を通過し終えた気体の流れに巻き込まれることを抑制できるので、気体の流れにシールドガスが巻き込まれることを低減できる。
【0104】
上記第5実施および第6実施の形態では、排出部545が蛇腹部545aを有する場合について説明したが、必ずこれに限られるものではなく、排出部が蛇腹部545aを省略した軸心方向に沿って湾曲または屈曲する筒状に形成されていてもよい。これにより、排出部545の構成を簡素化して排出部の製造コストを抑制できる。
【0105】
上記第5実施および第6実施の形態では、排出部545が円筒状に形成される場合について説明したが、必ずこれに限られるものではなく、排出部545が断面略多角形状に形成された筒状に形成されていてもよい。