【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果最適展開支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】 人体の可動部位を支持する支持手段と、支持手段を駆動して人体の動作をアシストするモータユニットを備えるロボティックウェアにおいて、モータユニット30aは、モータ36と、モータ36に連繋して用いる減速機と、減速機を収容するハウジングケース34とを備え、減速機は、サーキュラ・スプライン32aと、モータ36を収容可能な内径の内部空間を備えるフレクスプライン32bと、ウェーブ・ジェネレータ32dとを備え、モータ36の基部側が、フレクスプライン32bの内部空間に収容され、モータ36の出力軸とウェーブ・ジェネレータ32dとが連結されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したロボティックスーツ、ロボティックウェアに装着されるモータユニット(アクチュエータ)は、それ自体かなりの重量があり、外骨格型のロボティックスーツは骨格(リンク)により重量を支えることができるのに対し、非外骨格型のロボティックウェアは人体で重量を支えなければならない。また、歩行時にモータユニットの揺動による慣性力が人体に作用するという問題や、モータユニットが腰部分から外側に張り出して装着されているため、モータユニットが手に当たるという問題がある。
【0006】
本発明は、ロボティックスーツあるいはロボティックウェア等の人体に装着して用いるロボット装置に用いられるモータユニットの小型化、軽量化を図ることにより、装着性、使用性のよいロボティックウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るロボティックウェアは、人体の可動部位を支持する支持手段と、支持手段を駆動して人体の動作をアシストするモータユニットを備えるロボティックウェアにおいて、前記モータユニットは、モータと、モータに連繋して用いる減速機と、減速機を収容するハウジングケースとを備え、前記減速機は、サーキュラ・スプラインと、前記モータを収容可能な内径の内部空間を備えるフレクスプラインと、ウェーブ・ジェネレータとを備え、前記モータの基部側が、前記フレクスプラインの内部空間に収容され、モータの出力軸と前記ウェーブ・ジェネレータとが連結されていることを特徴とする。
前記ハウジングケースが樹脂からなることにより、効果的にモータユニットの軽量化を図ることができ、さらにロボティックウェアの装着性を向上させることができる。
【0008】
また、前記支持手段として、人体の可動部位を支持する支持ベルトと、該支持ベルトに連繋して前記可動部位の側方に配置された支持板とを備え、関節部に対応する位置に、前記支持板に連繋して前記モータユニットを配し、関節部を支点として前記モータユニットにより前記支持板を回動駆動する構成を備える非外骨格型のロボティックウェアに、とくに好適に適用することができる。
また、前記支持手段として、腰ベルトと、大腿部上部ベルトとを備え、前記支持板として、大腿部上部支持板と、大腿部下部支持板とを備え、前記モータユニットを、前記大腿部上部支持板に支持するとともに、前記大腿部下部支持板に連繋して設けたことを特徴とする。
また、前記支持手段として、大腿部下部ベルトと、下腿部上部ベルトとを備え、前記支持板として、下腿部上部支持板と、下腿部下部支持板とを備え、前記モータユニットを、前記下腿部上部支持板に支持するとともに、前記下腿部下部支持板に連繋して設けたことを特徴とする。
【0009】
また、前記支持手段として、人体の関節部間に対応するリンクを備え、関節部間に沿って前記リンクを配置するとともに、関節部に対応する位置に前記モータユニットを配し、関節部を支点として前記モータユニットにより前記リンクを回動駆動することを特徴とする、外骨格型のロボティックウェアにも好適に適用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るロボティックウェアによれば、ロボティックウェア装着時に、モータユニットが手に当たることを防止し、装着性のよいロボティックウェアとして提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ロボティックウェアの構成)
図1(a)、(b)は本発明に係るロボティックウエアの概略構成を示す。
図1(a)が人体にロボティックウェア10を装着した状態の正面図、
図1(b)が側面図である。このロボティックウェアは、左右の股関節用装着ユニット12、14と、左右の膝関節用装着ユニット16、18とから構成される。
【0013】
股関節用装着ユニット12は、腰ベルト121と、大腿部上部ベルト12aと、大腿部上部支持板12bと、大腿部下部支持板12cと、モータユニット20aとを備える。同様に、股関節用装着ユニット14は、腰ベルト121と、大腿部上部ベルト14aと、大腿部上部支持板14bと、大腿部下部支持板14cと、モータユニット20bとを備える。腰ベルト121は左右の股関節用装着ユニット12、14で共通の部材である。
モータユニット20a、20bは、大腿部上部支持板12b、14bと、大腿部下部支持板12c、14cとの間を連繋し、モータユニット20a、20bの取り付け位置を支点として、大腿部下部支持板12c、14cを揺動駆動する。
【0014】
膝関節用装着ユニット16は、大腿部下部ベルト16aと、下腿部上部ベルト16bと、下腿部下部ベルト16cと、下腿部上部支持版16dと、下腿部下部支持版16eと、モータユニット20cとを備える。膝関節用装着ユニット18は、大腿部下部ベルト18aと、下腿部上部ベルト18bと、下腿部下部ベルト18cと、下腿部上部支持版18dと、下腿部下部支持版18eと、モータユニット20dとを備える。
モータユニット20c、20dは、下腿部上部支持板16d、18dと、下腿部下部支持板16e、18eと連繋し、モータユニット20c、20dの取り付け位置を支点として、下腿部下部支持板16e、18eを揺動駆動する。
【0015】
モータユニット20a、20b、20c、20dは駆動用の電源に接続され、制御部により駆動制御される。モータユニット20a、20b、20c、20dの駆動を制御する方法は用途等によりさまざまであるが、本実施形態においては、モータユニット20a、20b、20c、20dに付設した減速機にトルクセンサを設け、ロボティックウェアを装着して歩行動作したときのロボティックウェアと人体との相互作用力をトルクとして検出し、検出したトルク値に基づいて、各々のモータユニット20a、20b、20c、20dの駆動を制御する。
制御部では、検出された相互作用トルクをもとに、各関節部分を回転させる目標角度を算出し、この目標角度と現在角度からフィードバック制御によりモータ(アクチュエータ)を駆動制御する。
【0016】
モータ(アクチュエータ)を駆動制御する方法はとくには限定されないが、例として、同調制御方法に基づく制御方法を用いることができる。同調制御方法とは、介護者が被介護者の動こうとするタイミングに合わせて力を加えるように補助するといったように、介護者が被介護者の動作に同調しながら運動を補助するという制御方法である。モータユニットに設けたトルクセンサにより、駆動部と使用者との間の相互作用力(トルク)を検知しながらモータの駆動を制御することにより、使用者の動きに同調しながら使用者の動作を補助するように駆動させることもできるし、リハビリ運動のように使用者に負荷をかけるように駆動させることもできる。
【0017】
図1は、人体の下肢にロボティックウェアを装着した例であるが、人体の上肢にロボティックウェアを装着する場合も、上記例と同様に上肢の肩部分と肘部分を関節部として揺動制御する構成とすればよい。下肢または上肢にロボティックウェアを装着する場合、リハビリ運動で使用する場合のように、片側の下肢あるいは上肢のみにロボティックウェアを装着するといった利用方法も可能である。
また、
図1は、剛体リンクを使用しない非外骨格型のロボティックウェアを構成した例であるが、本発明はリンクを使用する外骨格型の補助ロボット装置にもまったく同様に適用することが可能であり、補助ロボット装置の駆動源としてモータ(アクチュエータ)を用いるものについて同様に適用できる。
【0018】
(従来型モータユニット)
本発明に係るロボティックウェアにおいて特徴とする構成は、ロボティックウェアの駆動に用いるモータユニットの構成である。以下では、まず、従来のロボティックウェアに使用されているモータユニットについて説明し、次に本発明に関わるロボティックウェアに使用されるモータユニットの構造について説明する。
【0019】
図2は、従来のロボティックウェアに用いられているモータユニット30の構成を示す部分断面図である。
このモータユニット30は、減速機32を内蔵するハウジングケース34と、ハウジングケース34に固定したモータ36とを備える。減速機32は、ウェーブ・ジェネレータとフレクスプラインとサーキュラ・スプラインとを備えるハーモニックドライブ(登録商標)型の減速機である。
モータ36は、ハウジングケース34のケース上に固定して用いられ、モータ36の出力軸が減速機32のウェーブ・ジェネレータに連結され、モータ36と減速機32とが連繋される。モータユニット30は、外観的には、ハウジングケース34の上にモータ36が搭載された形態となる。
【0020】
減速機32のサーキュラ・スプライン32aは、ハウジングケース34の他方の開口部の内周側面にベアリングを介して回転自在に取り付けられる。サーキュラ・スプライン32aの面上には、ハウジングケース34の他方の開口面から外方に先端が突出する駆動ピン33が立設されている。
サーキュラ・スプライン32aの内側には、サーキュラ・スプライン32aの内周側面と外周側面とが歯合するフレクスプライン32bが配置され、フレクスプライン32bのフランジ部32cがハウジングケース34の内面に固定される。トルクセンサ40はフレクスプライン32bのフランジ部32cの近傍に取り付けられている。
【0021】
本実施形態においては、減速機32としてシルクハット型のハーモニックドライブ(登録商標)減速機SHG-17-50を使用し、モータ36としてブラシレスDCモータを使用した。
ハウジングケース34はアルミニウム製であり、ハウジングケース34の他方の開口部の周縁部上には、モータユニット30の周方向の取り付け位置を規定する位置決めピン38が設けられる。
【0022】
次に、このモータユニット30を
図1に示したロボティックウェアに装着する構成部分について説明する。ロボティックウェアのモータユニット20a、20b、20c、20dには上述したモータユニット30を共通に装着する。以下では、モータユニット20a、20b、20c、20dのかわりにモータユニット30とする。
大腿部下部支持板12c、14cと、下腿部下部支持板16e、18eの上部には、モータユニット30の駆動ピン33が係合する係合部が設けられている。この係合部は支持板と一体の円板状に設けられた部位であり、駆動ピン33が挿入される係合孔が、駆動ピン33の配置位置に合わせて、厚さ方向に貫通して設けられている。モータユニット30は係合孔に駆動ピン33を抜き差しするようにして、大腿部下部支持板12c、14cと、下腿部下部支持板16e、18eに脱着可能となる。
【0023】
大腿部上部支持板12b、14bと、下腿部上部支持板16d、18dの下部には、それぞれモータユニット30のハウジングケース34を支持するリング状に形成した支持部が設けられている。支持部にはモータユニット30の位置決めピン38が係合する位置決め孔が設けられ、位置決めピン38を位置決め孔に挿入することにより、支持板の係合孔とモータユニット30の駆動ピン33とが位置決めされ、係合孔と駆動ピン33とが係合する。
この状態でモータユニット30を駆動制御することにより、大腿部下部支持板12c、14cと、下腿部下部支持板16e、18eは、モータユニット30を装着した位置を支点として回動(揺動)駆動される。このように、
図1に示すロボティックウェアは、モータユニット30をロボット装置に簡単に脱着して使用することができる。
【0024】
(改良型モータユニット)
図3は、改良型のモータユニットの構成例を示す部分断面図である。本実施形態のモータユニット30aは、減速機構としてウェーブ・ジェネレータとフレクスプラインとサーキュラ・スプラインとを備える減速機を使用することは上記例と同様である。
本実施形態のモータユニット30aにおいて、
図2に示したモータユニット30と相違する点は、扁平型のウェーブ・ジェネレータと内部空間の大きなフレクスプラインを備える減速機を使用し、ハウジングケース34とモータ36とを合わせたモータユニット30aの全高を、従来のモータユニット30の全高よりも低くしたことにある。
【0025】
内部空間の大きなフレクスプラインを使用するとは、フレクスプラインとして、その内部空間にモータ36を収容できるサイズのものを使用するということである。内部空間にモータ36を収容することにより、モータユニット30aの全高を従来型のモータユニット30よりも低くすることができる。本実施形態では、フレクスプラインの内部空間にモータ36を収容するため、従来型のモータユニット30で使用している減速機よりも外径が大きなフレクスプラインを備える減速機を使用した。
なお、サーキュラ・スプライン32aに駆動ピン33を立設し、フレクスプライン32bのフランジ部32cにトルクセンサ40を装着した構成は
図2に示すモータユニット30と同様である。
【0026】
図3に示すように、本実施形態では、ハウジングケース34の一方(モータ取り付け側)の開口部径を、モータ36の外径よりも僅かに大径とし、モータ36の基部側(出力軸が延出する側)をハウジングケース34の開口部からフレクスプラインの内部空間に挿入してモータ36をセットする。モータ36は出力軸をウェーブ・ジェネレータ32dに連結し、減速機と連繋させる
モータ36の基部側をハウジングケース34内に収容したことにより、ハウジングケース34に収容したモータ36の高さ分が、従来のモータユニット30の全高よりも低くなる。
このようにモータユニット30aの構成を改良することにより、
図2の従来型のモータユニット30では、ハウジングケース34とモータ36とを合わせた高さ(駆動ピン33、位置決めピン38は高さ寸法から除く)が81mmであったのに対し、本実施形態のモータユニット30aでは、ハウジングケース34とモータ36とを合わせた全高が63mmとなり、従来型と比較して18mm、高さを低くすることができた。
【0027】
図3に示すモータユニット30aでは、ハウジングケース34の他方の開口部側は、駆動ピン33を除きサーキュラ・スプライン32aによって囲まれた平面領域をハウジングカバー42により被覆している。ハウジングカバー42の中央部は円柱状に突出する。この突出部位は、ハウジングケース34から外方に延出するウェーブ・ジェネレータ32dの軸部を収容する部位である。ハウジングカバー42にはPOM(polyoxymethylene)を使用した。
【0028】
モータユニット30aは前述したモータユニット30と同様に、
図1に示すロボティックウェアのモータユニット20a、20b、20c、20dとして利用することができる。モータユニット30aの作用は従来型のモータユニット30と同様である。
本実施形態のモータユニット30aをロボティックウェアに適用した場合は、モータユニット30aの全高が従来型よりも低くなり、モータユニット30aの突出高さが抑えられるから、ロボティックウェアを使用した際に、モータユニットが手に当たるといった頻度を抑えることができ、ロボティックウェアの使用性を改善することができる。
【0029】
(他の改良型モータユニット)
図4は、他の改良型のモータユニットの構成例を示す部分断面図である。
図3に示すモータユニット30aでは、モータ36を収容する内部空間を有するフレクスプライン32bを使用している。このため、実際には、従来型のモータユニット30よりも若干、大径のフレクスプライン32bを備える減速機を使用している。このため、従来型のモータユニット30のハウジングケース34は外径が80mmであるのに対して、
図3に示す改良型のモータユニット30aでは、ハウジングケース34の外径が90mmとなり、従来型のモータユニット30の全重量が655gであるのに対して、改良型のモータユニット30aは全重量が785gであり、重量が130g増加した。
【0030】
ロボティックウェア等の人体に装着して用いる補助ロボット装置は、装着性を考えるとできるだけ軽量であることが望ましい。
本実施形態の改良型のモータユニット30bは、アルミニウム製であったハウジングケース34を樹脂製のハウジングケース34aとしたことが特徴である。ハウジングケース34の形状、肉厚等は
図3に示すモータユニット30aと変わらない。また、モータユニット30bを構成する、サーキュラ・スプライン32a、フレクスプライン32b、ウェーブジェネレータ32d等の減速機の構成は同一であり、モータ36をフレクスプライン32bの内部空間に収容してハウジングケース34に装着する構成も同一である。
【0031】
本実施形態のモータユニット30bでは、ハウジングケース34を樹脂製としたことにより、モータユニット30bの全重量が585gとなり従来型のモータユニット30と比較して、70g軽量となった。軽量化率は10.7%である。
本実施形態のモータユニット30bも、上述したモータユニット30aと同様に、
図1に示すロボティックウェアのモータユニット20a、20b、20c、20dとして利用することができる。このロボティックウェアはモータユニットを4個使用するから、ハウジングケース34を樹脂製としたことにより、ロボティックウェア全体では280gの軽量化を図ることができた。樹脂製のハウジングケースは、アルミニウム製と比べて強度が劣るが、POMからなるハウジングケースを使用した例では、強度面で実用上はとくに問題はなかった。
【0032】
図1に示すロボティックウェアは、人体に装着する部材の重量を支えるリンク等の構造体を備えていないため、補助ロボット装置の重量がそのまま使用者に荷重として作用する。したがって、補助ロボット装置の重量を軽減することは、装着者の負担を軽減させる上できわめて重要である。モータユニットは補助装置の構成部材のうち、もっとも重量のある部材であるから、モータユニットを軽量化することにより、ロボティックウェアの装着性を効果的に向上させることができる。
実施形態のモータユニット30bは、使用時にモータユニット30bが手に当たることを防止するためモータユニット30bの全高を低くするため、従来型にくらべて若干大径となりモータユニットの重量が増加した問題を改善できるという利点もある。
【0033】
上記実施形態は非外骨格型の補助ロボット装置について説明したが、本発明に係るロボティックウェアは、非外骨格型の補助ロボット装置に適用する場合に限るものではなく、
図5に示すような、外骨格型の補助ロボット装置に適用することもできる。
図5に示す補助ロボット装置は、下肢の関節間に外骨格リンク22a、22b、23a、23bを配し、各々の関節位置にモータユニット20a、20b、20c、20dを装着したもので、外骨格リンクによりロボットの重量を支えるように構成したものである。このような外骨格型の補助ロボット装置においても、モータユニット20a、20b、20c、20dとして、上述した全高を低くし、軽量化を図ったモータユニットを利用することで、装着者への負担を軽減させることができ、使用性を向上させることができる。
上記例は、いずれも下肢の補助ロボットとして使用した例であるが、上肢の補助ロボットにも適用可能であり、片側の下肢あるいは上肢に使用する補助ロボット装置に適用することも可能である。