特開2015-217491(P2015-217491A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-217491(P2015-217491A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】締付具
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20151110BHJP
   F16B 41/00 20060101ALI20151110BHJP
   B25B 23/12 20060101ALI20151110BHJP
【FI】
   B25B21/00 H
   F16B41/00 A
   B25B23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-104051(P2014-104051)
(22)【出願日】2014年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晶洋
(72)【発明者】
【氏名】石川 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】難波 伸広
(72)【発明者】
【氏名】八田 禎之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 俊之
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA04
3C038AA07
3C038BB02
(57)【要約】
【課題】ナットをボルトに螺合する際、締付具の保持ツールに前記ナットとともに保持されるワッシャと、前記ボルトとの位相合わせを行うことを容易にする。
【解決手段】保持ツール30は、ポケット38が形成されたソケット32に複数個のワッシャ保持爪34が揺動可能に保持されることで構成される。六角袋ナット16は、ソケット32に形成されたポケット38に収容されることでソケット32に保持される。一方、ワッシャ24は、その側周壁が、各ワッシャ保持爪34に形成された環状段部58に進入することでワッシャ保持爪34に保持される。この時点では、ワッシャ24と、六角袋ナット16のフランジ部28との間に、ワッシャ保持爪34の鍔部54が介在する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトのネジ部に螺合されるナットと、前記ボルトに通されて前記ナットから押圧されるワッシャとを保持する保持ツールを備える締付具であって、
前記ナットを収容するポケットが形成されたソケットと、
前記ソケットに保持され、前記ポケットの開口に対して接近又は離間する方向に揺動する複数個のワッシャ保持部材と、
前記ワッシャ保持部材を前記ソケット側に指向して弾発付勢する弾発部材と、
を具備し、
前記ワッシャ保持部材に、前記ワッシャの側周壁の一部が進入する段部が陥没形成され、
且つ前記ワッシャ保持部材は、前記ポケット内に収容された前記ナットと、側周壁の一部が前記段部に進入した前記ワッシャとの間に進入し、前記ナットと前記ワッシャを離間させる鍔部を有し、
前記ワッシャ保持部材は、前記ナットを前記ネジ部に螺合する際、前記ポケットの開口から離間する方向に揺動して前記鍔部が前記ナットと前記ワッシャの間から離脱することを特徴とする締付具。
【請求項2】
請求項1記載の締付具において、前記鍔部は、前記ナット及び前記ワッシャに接近するにつれてテーパー状に薄肉化されていることを特徴とする締付具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の締付具において、前記ワッシャ保持部材の、前記段部が陥没形成された部位が中空であることを特徴とする締付具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の締付具において、前記ポケット内に、前記ナットを吸着保持する磁石が配設されていることを特徴とする締付具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の締付具において、前記ソケットを取り付ける回転軸と、前記回転軸を回転させる回転付勢手段とを有することを特徴とする締付具。
【請求項6】
請求項5記載の締付具において、前記ソケットを前記回転軸から離間する方向に弾発付勢する弾発手段をさらに有することを特徴とする締付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締付具に関し、一層詳細には、ナットとワッシャを保持ツールにて保持する締付具に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の取付部材に対し、ボルト・ナットを介して相手材を取り付けることが広汎に行われている。すなわち、例えば、取付部材のボルト孔と相手材のボルト孔を重ね合わせて連通させ、さらに、これらボルト孔に1本のボルトを通した後、ボルト孔から突出したボルトのネジ部にナットを螺合する。ナットと、相手材ないし取付部材との間には、ワッシャが介装されることもある。
【0003】
ナットとボルトの間に十二分な締付トルクを得るときには、ナットランナ等の締付具が用いられる。すなわち、ナットはソケット内に収容され、ソケットごと螺回される。なお、ワッシャを用いる場合には、特許文献1、2に記載されるように、ナットとワッシャをソケットで同時に保持する。
【0004】
この場合、ソケットは、インナソケットとアウタソケットのいわゆる二重筒構造とされる。特許文献1には、ナットとワッシャに位相ズレが生じていた場合であっても、インナソケットでナットを保持するとともにアウタソケットでワッシャを保持することが容易となる構成が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、ボルトのネジ部にナットを螺合する際、螺回するナットの回転力によってボルトが回転することを防止するべく、回転工具の反力をワッシャで受けるようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−125874号公報
【特許文献2】特開2012−125910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ワッシャを用いる場合には、ナットの螺合に先んじてワッシャとボルトの位相合わせを行うことが必要なこともある。特許文献1、2には、この位相合わせに関する記載はなく、結局、特許文献1、2記載の技術では、当該位相合わせに対応することは困難である。
【0008】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、ナットとともに保持されたワッシャの位相と、前記ナットを螺合するボルトの位相とを合致させることが容易な締付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、ボルトのネジ部に螺合されるナットと、前記ボルトに通されて前記ナットから押圧されるワッシャとを保持する保持ツールを備える締付具であって、
前記ナットを収容するポケットが形成されたソケットと、
前記ソケットに保持され、前記ポケットの開口に対して接近又は離間する方向に揺動する複数個のワッシャ保持部材と、
前記ワッシャ保持部材を前記ソケット側に指向して弾発付勢する弾発部材と、
を具備し、
前記ワッシャ保持部材に、前記ワッシャの側周壁の一部が進入する段部が陥没形成され、
且つ前記ワッシャ保持部材は、前記ポケット内に収容された前記ナットと、側周壁の一部が前記段部に進入した前記ワッシャとの間に進入し、前記ナットと前記ワッシャを離間させる鍔部を有し、
前記ワッシャ保持部材は、前記ナットを前記ネジ部に螺合する際、前記ポケットの開口から離間する方向に揺動して前記鍔部が前記ナットと前記ワッシャの間から離脱することを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明においては、ワッシャ保持部材に保持されたワッシャと、ソケットに保持されたナットとが、ワッシャ保持部材の鍔部によって離間する。このため、ワッシャとボルトの位相合わせを行う作業と、ナットをボルトに螺合する作業とを個別に行うことができる。すなわち、ワッシャの位相と、前記ナットを螺合するボルトの位相とを合致させることが容易となる。
【0011】
なお、ワッシャ保持部材は、ワッシャとボルトの位相合わせが終了した後に揺動する。すなわち、ナットとワッシャの間から鍔部が離脱する。このため、ナットをボルトに螺合することや、ナットの端面をワッシャに押接させることも容易である。結局、ナットとボルトの間に所定の締付トルクが得られるとともに、部材間に十二分な連結強度をもたらすことができる。
【0012】
ワッシャ保持部材の鍔部は、ナット及びワッシャに接近するにつれてテーパー状に薄肉化されていることが好ましい。この場合、該鍔部がナット及びワッシャの間から離間することが容易となる。従って、ワッシャ保持部材が容易に揺動するようになるからである。
【0013】
また、ワッシャ保持部材の、段部が陥没形成された部位は、中空であることが好ましい。この場合、当該部位が軽量であるので、揺動することに対する抗力が小さくなる。このため、該ワッシャ保持部材の鍔部がワッシャの側周壁から離間すること、すなわち、ワッシャ保持部材が揺動することが一層容易となる。
【0014】
なお、ポケット内には、前記ナットを吸着保持する磁石を配設するようにしてもよい。これによりナットがポケットから脱落することが防止されるので、ナットを螺合する作業が容易となる。
【0015】
以上の他、さらに、前記ソケットを取り付ける回転軸と、前記回転軸を回転させる回転付勢手段とを設けて締付具を構成することが好ましい。この場合、ワッシャとボルトの位相合わせや、ボルトに対するナットの螺合を自動的に進行させることができる。
【0016】
この場合、ソケットを回転軸から離間する方向に弾発付勢する弾発手段を設けることが好ましい。これにより、ワッシャが位置決め固定された後にソケットを前進させること、ひいてはナットを螺回しながら前進させることが容易となるからである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ワッシャ保持部材にワッシャを保持し且つソケットにナットを保持するとともに、ワッシャとナットとの間に、ワッシャ保持部材の鍔部を介在させるようにしている。この介在によりワッシャとナットが離間するので、ワッシャとボルトの位相合わせを行う作業と、ナットをボルトに螺合する作業とを個別に行うことができる。すなわち、ワッシャの位相と、前記ナットを螺合するボルトの位相とを合致させることが容易となる。
【0018】
ワッシャ保持部材が揺動可能であるので、ワッシャとボルトの位相合わせが終了した後にワッシャ保持部材を揺動させてナットとワッシャの間から鍔部を離脱させれば、ナットをさらに螺回させることができる。このため、ナットのボルトへの螺合や、ナットの端面をワッシャに押接させることが容易である。従って、ナットとボルトの間に所定の締付トルクが得られ、その結果、部材間に十二分な連結強度をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1部材と第2部材をスタッドボルト(ボルト)と六角袋ナット(ナット)にて連結するときの概略斜視図である。
図2図2Aは、前記スタッドボルトの六角フランジ部の頂点と、ワッシャの六角挿通孔の頂点との位相が合致した状態を示す要部正面図であり、図2Bは、前記スタッドボルトの六角フランジ部の頂点と、ワッシャの六角挿通孔の頂点との間に位相ズレが生じた状態を示す要部正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る締付具を構成する保持ツールの正面図である。
図4図3中のIV−IV線矢視断面図である。
図5】前記スタッドボルトの第2ネジ部を、ワッシャ保持爪(ワッシャ保持部材)に保持されたワッシャの六角挿通孔に通した状態を示す要部側面断面図である。
図6図5から前記ワッシャを前進させた際に、前記スタッドボルトの六角フランジ部にワッシャの六角挿通孔の内壁が当接した状態を示す要部側面断面図である。
図7】前記六角フランジ部と前記ワッシャとの位相合わせが終了し、前記六角挿通孔に前記六角フランジ部が挿入された状態を示す要部側面断面図である。
図8図7からナットを前進させた際に、前記ワッシャ保持爪が揺動を開始した状態を示す要部側面断面図である。
図9図8からナットがさらに前進し、そのフランジ部がワッシャの端面に当接した状態を示す要部側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る締付具につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
はじめに、ワッシャとボルトの位相合わせにつき説明する。図1は、第1部材10と第2部材12をスタッドボルト14(ボルト)と六角袋ナット16(ナット)にて連結するときの概略斜視図である。この場合、スタッドボルト14の第1ネジ部17は第1部材10に予め螺合されており、一方、第2ネジ部18は、第2部材12に貫通形成されたボルト孔20に通される。六角袋ナット16は、ボルト孔20から突出した第2ネジ部18に螺合される。
【0022】
この場合、スタッドボルト14には、第2ネジ部18の起端部側に六角フランジ部22が設けられる。この六角フランジ部22も、第2部材12のボルト孔20から露呈する。この露呈した六角フランジ部22が、ワッシャ24に貫通形成された六角挿通孔26に挿入される。なお、六角挿通孔26及び六角フランジ部22はいずれも正六角形であり、六角挿通孔26の開口面積は、六角フランジ部22の外寸に比して若干大きく設定されている。
【0023】
第2ネジ部18と六角袋ナット16の間に十二分な締付トルクを得るときには、ナットランナ等のソケットで六角袋ナット16及びワッシャ24の双方を保持する。この際、ソケットのポケット内に、六角袋ナット16を奥側、ワッシャ24を手前側として配置することは勿論である。
【0024】
そして、ナットランナの回転軸を回転させながらソケットを第2ネジ部18に接近させ、ワッシャ24の六角挿通孔26に第2ネジ部18を通すとともに、六角袋ナット16のネジ部を第2ネジ部18に螺合する。六角袋ナット16のフランジ部28の端面は、最終的にワッシャ24の端面に着座する。
【0025】
ここで、六角挿通孔26に第2ネジ部18を通す際、図2Aに示すように、六角挿通孔26と六角フランジ部22の頂点同士の位置が合致しているときには、六角フランジ部22が六角挿通孔26に容易に挿入される。これに対し、図2Bに示すように、六角挿通孔26と六角フランジ部22の頂点同士の位置が合致していないときには、ワッシャ24の端面が六角フランジ部22の端面に当接するので、ワッシャ24が堰止される。この状態で六角袋ナット16を螺回すると、六角フランジ部22と六角袋ナット16との間にワッシャ24が挟まれた状態となる。
【0026】
この場合、六角袋ナット16をそれ以上螺回させることができなくなる。すなわち、六角袋ナット16が螺合途中で停止してしまう。このため、締付トルクを得ることが困難となる。
【0027】
本実施の形態に係る締付具は、六角挿通孔26と六角フランジ部22の頂点同士に図2Bに示す位置ズレ(位相ズレ)が生じているときに、ワッシャ24を回転させて図2Aに示す状態、すなわち、位相合わせを行うことが可能である。以下、この点につき詳述する。
【0028】
図3は、本実施の形態に係る締付具を構成する保持ツール30の正面図であり、図4は、図3中のIV−IV線矢視断面図である。この保持ツール30は、六角袋ナット16を保持するソケット32と、該ソケット32の外周壁に保持された複数個のワッシャ保持爪34(ワッシャ保持部材)とを有する。なお、本実施の形態において、ワッシャ保持爪34は6個設けられている。また、図3においては、後述する収容溝36の位置を明確にするべく、ワッシャ保持爪34中の1個を仮想線にて示している。
【0029】
ソケット32は、ポケット38が形成されたカップ部40と、該カップ部40の閉塞端部から突出した小径の筒状軸部42(図4参照)とを有する。六角袋ナット16は、カップ部40のポケット38に収容されることでソケット32に保持される。
【0030】
ポケット38の底壁には、互いに略等間隔で離間するようにして6個の磁石44が埋設されている。これらの磁石44は、六角袋ナット16のドーム状端面に磁着する。換言すれば、六角袋ナット16は磁石44によって吸着保持されており、このため、ポケット38から脱落することが困難である。
【0031】
カップ部40の外壁には、該カップ部40の軸線方向に沿って延在するとともに、該カップ部40の外壁から内壁側に向かって陥没する6本の収容溝36が形成されている(図3参照)。ワッシャ保持爪34の大部分は、収容溝36に挿入されている。
【0032】
カップ部40において、筒状軸部42に近接する端部には、収容溝36の軸線方向の略半分を覆うリング状ブラケット46が外嵌される。リング状ブラケット46は、図示しないボルトでカップ部40に連結されており、これにより、リング状ブラケット46がカップ部40から脱落することが阻止されている。
【0033】
カップ部40の先端には、収容溝36に比して幅広の切欠48(図4参照)が形成されている。ワッシャ保持爪34の先端は、切欠48に進入している。
【0034】
ワッシャ保持爪34は、長尺な胴部50を有する。該胴部50の端部には、胴部50の直径方向外方に向かって湾曲しながら膨出し、円弧面を有する円弧状膨出部52が胴部50と一体的に設けられる。円弧状膨出部52の最も大径な部位の側壁は、収容溝36の底壁と、リング状ブラケット46の内壁に点接触している。
【0035】
ワッシャ保持爪34は、この点接触以外、ソケット32又はリング状ブラケット46に当接していない(拘束を受けていない)。このため、ワッシャ保持爪34は、収容溝36の底壁と、リング状ブラケット46の内壁とに点接触した部位を支点として、図4中に矢印で示す方向に揺動することが可能である。
【0036】
ワッシャ保持爪34は、さらに、胴部50に連なる鍔部54と、該鍔部54に連なり軽量化のために中空に形成された筒状部56とを一体的に有する。これら鍔部54及び筒状部56が、上記したようにカップ部40の前記切欠48に進入する。
【0037】
鍔部54の外周壁近傍は、テーパー状に面取りされている。このため、鍔部54の肉厚は、六角袋ナット16及びワッシャ24に接近するにつれて小さくなる。換言すれば、鍔部54は、六角袋ナット16及びワッシャ24に接近するにつれてテーパー状に薄肉化されている。
【0038】
筒状部56は、その側周壁が切り欠かれた形状をなし、このため、直径方向内方に向かって陥没した環状段部58(段部)が形成されている。ワッシャ24の側周壁は、各ワッシャ保持爪34の環状段部58に進入する。
【0039】
リング状ブラケット46には、直径方向外方に向かって突出するように6個のスプリング保持部60が設けられる。各スプリング保持部60には、カップ部40の直径方向に沿って保持孔62が貫通形成されており、この保持孔62内に、弾発部材としての第1コイルスプリング64が収容されている。
【0040】
保持孔62にはボルト止孔66が連なっている。このボルト止孔66が抜止ボルト68で閉塞されることにより、保持孔62からの第1コイルスプリング64の抜け止めがなされるとともに、該第1コイルスプリング64が収縮される。収縮した第1コイルスプリング64は、ワッシャ保持爪34の胴部50を、収容溝36の底壁側(ポケット38側)に指向して常時弾発付勢している。この弾発付勢により、ワッシャ保持爪34に外力が作用していないときに該ワッシャ保持爪34が揺動することが防止される。
【0041】
以上のように構成される保持ツール30は、例えば、ナットランナの回転軸(いずれも図示せず)に取り付けられて用いられる。すなわち、ソケット32の筒状軸部42には、断面略正方形形状で且つ有底の摺動孔70が形成されるとともに、該摺動孔70の内壁に歯部72が形成される。この歯部72に対し、前記回転軸の先端である四角柱状部の外壁に形成された歯部が噛合する。また、筒状軸部42及び前記四角柱状部は、回転軸に保持された第2コイルスプリング74(弾発手段)に囲繞されている。すなわち、保持ツール30は、前記の噛合と、第2コイルスプリング74の筒状軸部42への係合とによって回転軸に保持されている。この保持により、保持ツール30が前記回転軸に取り付けられて締付具としてのナットランナを構成する。
【0042】
なお、ソケット32と回転軸は、相対的な摺動を起こすことが可能である。また、第2コイルスプリング74は、保持ツール30を回転軸から離間する方向に弾発付勢している。
【0043】
ナットランナは、回転付勢手段としての図示しない回転用モータを具備する。前記回転軸は、この回転用モータの作用下に回転する。勿論、回転軸が回転することに追従し、該回転軸の先端に取り付けられた保持ツール30も回転する。
【0044】
本実施の形態に係る締付具は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
【0045】
保持ツール30が前記回転軸に取り付けられることにより、締付具としてのナットランナが構成される。このナットランナを用い、図1に示すスタッドボルト14の第2ネジ部18にワッシャ24を通すとともに六角袋ナット16を螺合する。勿論、スタッドボルト14の第2ネジ部18は、第2部材12のボルト孔20に予め通されている。
【0046】
そして、保持ツール30のポケット38に六角袋ナット16を挿入する。六角袋ナット16のドーム状端面は、ポケット38の底壁に設けられた磁石44によって吸着保持される。このため、六角袋ナット16がポケット38から離脱する懸念がない。
【0047】
次に、ワッシャ保持爪34の環状段部58にワッシャ24の側周壁の一部を進入させる。このために、作業者は、少なくとも1本のワッシャ保持爪34を、スプリングコイルの弾発付勢力に抗して指等で押し上げ、残余のワッシャ保持爪34の環状段部58にワッシャ24の側周壁を挿入する。その後、押し上げたワッシャ保持爪34から指等を離せば、ワッシャ保持爪34が第1コイルスプリング64から弾発付勢される。その結果、筒状部56及び鍔部54がポケット38の開口側に向かって揺動する。
【0048】
筒状部56及び鍔部54は、ソケット32の先端の切欠48に進入する。この際、ワッシャ24の側周壁の一部が環状段部58に挿入されて図3及び図4に示す状態となる。結局、ワッシャ24は、その側周壁が6本のワッシャ保持爪34の環状段部58に挿入されることによってワッシャ保持爪34に保持されている。
【0049】
ポケット38に収容された六角袋ナット16と、ワッシャ保持爪34に保持されたワッシャ24との間には、ワッシャ保持爪34の鍔部54が介在する。このため、六角袋ナット16とワッシャ24とは、鍔部54の厚みに相当する距離で離間している。
【0050】
このようにして保持ツール30が六角袋ナット16及びワッシャ24を保持した後、前記回転用モータが付勢される。これに伴って回転軸及び保持ツール30が回転を開始する。さらに、回転軸及び保持ツール30が、スタッドボルト14(図4参照)に向かって前進する。
【0051】
保持ツール30が前進動作することにより、先ず、図5に示すように、スタッドボルト14の第2ネジ部18がワッシャ24の六角挿通孔26を通る。この際に、ワッシャ24の六角挿通孔26の内壁が第2ネジ部18の側周壁に当接しても、ワッシャ保持爪34の鍔部54によってワッシャ24が堰止される。従って、ワッシャ24が六角袋ナット16側に後退することが回避される。
【0052】
保持ツール30が一層前進すると、図6に示すように、スタッドボルト14の第2ネジ部18が六角袋ナット16の内部のネジ部に螺合され始める。その一方で、ワッシャ24がスタッドボルト14の六角フランジ部22に到達する。ここで、ワッシャ24の六角挿通孔26の頂点の位置と、六角フランジ部22の頂点の位置とが合致していないとき、すなわち、図2Bに示す位相ズレ状態であるときには、六角挿通孔26の内壁が六角フランジ部22に当接する。このため、ワッシャ24の前進及び回転が一旦停止する。
【0053】
六角挿通孔26の内壁が六角フランジ部22に当接することに伴い、ワッシャ24がスタッドボルト14から反力を受ける。この反力により、ワッシャ24が鍔部54に押接するようになる。この押接を受けた鍔部54と、ワッシャ24との間に摩擦力が発生する。このため、回転軸及び保持ツール30に作用している回転付勢力が、ワッシャ保持爪34を介して回転トルクとしてワッシャ24に伝達される。
【0054】
回転トルクを受けたワッシャ24は、六角挿通孔26の内壁が六角フランジ部22に当接した状態で回転する。この回転の最中に、六角挿通孔26の頂点の位置と、六角フランジ部22の頂点の位置とが合致する。すなわち、図2Aに示す位相合わせがなされる。その結果、ワッシャ24が前進し、六角挿通孔26に六角フランジ部22が進入して図7に示す状態となる。
【0055】
六角挿通孔26に六角フランジ部22が進入したため、ワッシャ24は、前進も回転もできなくなる。すなわち、ワッシャ24は、位置決め固定されるとともに位相決めされる。また、ワッシャ保持爪34の鍔部54がワッシャ24と六角袋ナット16の間に介在しているので、保持ツール30も前進することができなくなる。
【0056】
その一方で、保持ツール30には、前記回転用モータの回転付勢力が作用している。このため、保持ツール30の回転が維持される。この際、ソケット32のポケット38内に収容された六角袋ナット16も回転するので、スタッドボルト14の第2ネジ部18に対する六角袋ナット16の螺合が継続する。従って、六角袋ナット16のみが前進する。回転軸の四角柱状部の先端面は、この時点で、摺動孔70の底壁に当接する。
【0057】
六角袋ナット16が前進することに伴い、該六角袋ナット16のフランジ部28が、位置決め固定されたワッシャ24に対して接近する。すなわち、両者の距離が小さくなる。このため、ワッシャ保持爪34の鍔部54に対し、六角袋ナット16からワッシャ24に向かう方向の力と、ワッシャ24から六角袋ナット16に向かう方向の力とが作用する。
【0058】
これらの力を鍔部54に受けたワッシャ保持爪34は、収容溝36の底壁と、リング状ブラケット46の内壁とに点接触した円弧状膨出部52の最も大径な部位を支点として、図8に示すように、ポケット38の開口から離間する方向に揺動し始める。すなわち、鍔部54が、六角袋ナット16とワッシャ24の間からの離脱を開始する。鍔部54が、直径方向外方に向かうに従ってテーパー状に薄肉化されているので、この離脱、換言すれば、ワッシャ保持爪34の揺動が容易に進行する。
【0059】
また、筒状部56は中空であり、このために軽量である。従って、ワッシャ保持爪34の重心が筒状部56から離間した位置となるので、筒状部56は容易に揺動することができる。
【0060】
ワッシャ保持爪34が揺動することに伴い、第1コイルスプリング64がワッシャ保持爪34の胴部50によって圧縮される。また、保持ツール30は、第2コイルスプリング74の弾発付勢によって前進する。このときには、摺動孔70内の歯部72が回転軸の四角柱状部の歯部に沿って摺動する。その結果、該四角柱状部の先端面が摺動孔70の底壁から離間する。
【0061】
六角袋ナット16が一層前進することに伴い、図9に示すように、ワッシャ保持爪34が一層揺動して鍔部54が六角袋ナット16とワッシャ24の間から離脱し、ワッシャ24ないし六角袋ナット16のフランジ部28の側周壁に乗り上がる。従って、六角袋ナット16がワッシャ保持爪34の鍔部54から堰止されることがなくなる。このため、保持ツール30が第2コイルスプリング74の弾発付勢を受け、回転しながらさらに前進する。これにより六角袋ナット16のドーム状端部が磁石44に再吸着され、その結果、六角袋ナット16に伝達される回転トルクが増加する。
【0062】
以上のような理由から、第2ネジ部18に対する六角袋ナット16の螺合が一層進行する。六角袋ナット16の螺合が終了すると、該六角袋ナット16のフランジ部28がワッシャ24に押接する。換言すれば、ワッシャ24が六角袋ナット16から押圧されるようになり、スタッドボルト14の第2ネジ部18と六角袋ナット16との間に十二分な締付トルクが得られる。
【0063】
このように、ソケット32にワッシャ保持爪34を設けて保持ツール30を構成したことにより、ワッシャ24とスタッドボルト14の位相合わせを行うことが容易となる。このため、スタッドボルト14の第2ネジ部18に対し、ワッシャ24を介装した状態で六角袋ナット16を容易に螺合することができる。以上により、第1部材10と第2部材12がスタッドボルト14と六角袋ナット16によって連結されるに至る。
【0064】
第2ネジ部18に対する六角袋ナット16の螺合が終了すると、前記回転軸及び前記保持ツール30が後退する。この際、六角袋ナット16がポケット38内から露呈してソケット32から離脱する。そして、ワッシャ保持爪34の胴部50が第2コイルスプリング74からの弾発付勢を受け、これにより、鍔部54及び筒状部56がポケット38の開口側に向かうように揺動する。勿論、この場合の支点も、上記の点接触箇所である。鍔部54及び筒状部56は、図4に示すように、カップ部40の切欠48に進入する。
【0065】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、ワッシャ24の挿通孔は円孔であってもよいし、六角袋ナット16に代替して六角ナット等を螺合するようにしてもよい。
【0067】
また、保持ツール30をトルクレンチ等に取り付けて締付具を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…第1部材 12…第2部材
14…スタッドボルト 16…六角袋ナット
17、18…ネジ部 20…ボルト孔
22…六角フランジ部 24…ワッシャ
26…六角挿通孔 30…保持ツール
32…ソケット 34…ワッシャ保持爪
36…収容溝 38…ポケット
44…磁石 50…胴部
52…円弧状膨出部 54…鍔部
56…筒状部 58…環状段部
64…第1コイルスプリング 74…第2コイルスプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9