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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-217502(P2015-217502A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/22 20060101AFI20151110BHJP
【FI】
   B23B27/22
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-104969(P2014-104969)
(22)【出願日】2014年5月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】紺野 孝行
(72)【発明者】
【氏名】箱崎 正浩
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 裕
(72)【発明者】
【氏名】黒田 友也
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046JJ16
(57)【要約】
【課題】すくい面にブレーカ板を容易且つ高精度に設けることができ、且つすくい面の粗面化を抑制しつつブレーカ板を研磨して、再研磨後も、ブレーカ板の形状や、刃具の切刃に対するブレーカ板の配置が適切な範囲となるように容易に調整することができる切削工具を提供する。
【解決手段】切削工具10では、ブレーカ板18の先端側面28が、刃先角αの分割線a−a’方向に沿ってコーナ26の先端から所定間隔L1で離間するように配置される。刃具14のすくい面16に臨むブレーカ板18の接触主面30には、先端側面28に略平行に延在する溝32が形成されている。接触主面30の溝32cよりも先端側は、すくい面16に脱離可能に接触している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
すくい面と逃げ面との交差稜線部に第1切刃と第2切刃が設けられ、前記第1切刃と前記第2切刃とが先端側で連続してコーナを形成し、且つ前記すくい面上にブレーカ板が配設された刃具を有する切削工具であって、
前記ブレーカ板の側面のうち、先端側の先端側面は、前記第1切刃と前記第2切刃とがなす刃先角を分割する分割線の延在方向に沿って前記コーナの先端から所定間隔で離間するように配置され、
前記ブレーカ板の主面のうち、前記すくい面に臨む接触主面には、前記先端側面に略平行に延在する溝が形成され、
前記接触主面の前記溝よりも先端側は、前記すくい面に脱離可能に接触していることを特徴とする切削工具。
【請求項2】
請求項1記載の切削工具において、
前記溝は、前記分割線の延在方向に沿って間隔をおいて複数個形成されていることを特徴とする切削工具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の切削工具において、
前記ブレーカ板の前記先端側面に連接する側面のうち、前記第1切刃側に臨む第1側面と、前記第2切刃側に臨む第2側面との少なくとも一方は、面方向が前記分割線の延在方向に略平行な平行側面であり、
前記平行側面に近接する前記第1切刃又は前記第2切刃と、該平行側面との間に間隔が形成されることにより、切り屑を通過させることが可能な逃げ部が形成されていることを特徴とする切削工具。
【請求項4】
請求項3記載の切削工具において、
前記第1側面が前記平行側面であり、
前記第2側面は、前記第2切刃側の前記刃具の側面に沿うことを特徴とする切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すくい面上にブレーカ板が配設された刃具を有する切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
切削工具の刃具のすくい面上に溝や障壁からなるブレーカを設けることで、ワークの切削に伴って流出する切り屑の長さや流出方向を調整すること、さらには、切削抵抗の低減や工具寿命の向上を図ることが知られている。ブレーカを備える切削工具では、ワークの切削時に、ブレーカと切り屑とが接触することで、該切り屑を所望の長さに切断したり、その流出方向を調整したりすることが可能になっている。従って、切り屑の切断長さや流出方向等を適切な範囲に調整するためには、刃具の切刃とブレーカとの位置関係やブレーカの形状等を、ワークの材質や切削条件等に応じて種々に設定する必要がある。
【0003】
この切削工具では、刃具の材料として、比較的硬度の高いダイヤモンドやダイヤモンド焼結体等を採用することで、該切削工具の長寿命化や切削製品の高品質化等が図られている。このような材料を有効に活用するためには、ワークを切削した刃具が摩耗して切れ味が低下したときには、該刃具を再研磨して、切れ味を再び良好な状態に回復させることが好ましい。しかしながら、上記の通りブレーカが設けられた刃具の再研磨を行うと、予め設定されたブレーカの配置や形状を維持することが困難になる。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、すくい面にブレーカを設けても再研磨して用いることが可能な切削工具が提案されている。この切削工具では、ダイヤモンド焼結体からなる刃具のすくい面に対して直接加工を施して、互いに平行に延在する障壁を一定の間隔及び一定の高低差で階段状に複数形成している。これらの障壁のうち、刃具の最先端側に位置する障壁をブレーカとする。そして、上記の障壁同士の間隔に応じて刃具を再研磨することで、刃具のブレーカを構成していた障壁よりも先端側を除去し、該ブレーカを構成していた障壁と、これに隣接する障壁との間のすくい面に新たに切刃を形成する。これによって、再研磨前にブレーカを構成していた障壁に隣接していた障壁が、再研磨後に新たなブレーカとなる。このため、再研磨の後も、予め設定されたブレーカの配置や形状が維持されるとのことである。
【0005】
しかしながら、上記の通り、ダイヤモンド焼結体等の材料は比較的硬度が高いため、直接加工を施し難く、すくい面に所望の形状のブレーカを精度よく設けることは困難である。また、例えば、ワークがアルミニウム合金等の溶着を生じ易い材料から構成される場合、刃具のすくい面等に対して、ラッピング処理等によって鏡面加工を施すことが好ましい。鏡面加工が施されたすくい面では、切り屑が擦過する際の摩擦抵抗を低減できること等から、切り屑の溶着やチッピングを抑制できる。また、切り屑の排出性を向上させることや、切削製品の加工面粗度の安定化を図ること等が可能になる。ところが、上記のようにすくい面にブレーカとして複数の障壁を形成すると、鏡面加工を施す工程が複雑になってしまう。
【0006】
そこで、刃具のすくい面に対して、直接加工を施すことに代えて、該刃具とは別個の部材からなるブレーカ板を配設することが考えられる。この際、すくい面とブレーカ板とを接触させて、互いの間に隙間が生じないようにすることで、切り屑の進入を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−101305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、すくい面にブレーカ板を配設した切削工具では、刃具を再研磨することに伴って、ブレーカ板も研磨し、再研磨後の切刃とブレーカ板も適切な位置関係を維持できるように調整する必要がある。しかしながら、ブレーカ板の研磨を行う場合、例えば、砥石等を用いるため、ブレーカ板が接触して配設される刃具のすくい面にも砥石が接触し易くなる。従って、すくい面に鏡面加工を施した場合であっても、結局、ブレーカ板の研磨時に砥石が接触してしまうことで、すくい面が粗面化する懸念がある。その結果、この切削工具では、再研磨を行うと、切り屑の排出性や、切削効率、切削製品の品質等が低下してしまう懸念がある。
【0009】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、すくい面にブレーカ板を容易且つ高精度に設けることができ、すくい面の粗面化を抑制しつつブレーカ板を研磨することができ、刃具の再研磨後も、ブレーカ板の配置や形状が適切な範囲となるように容易に調整することができる切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、すくい面と逃げ面との交差稜線部に第1切刃と第2切刃が設けられ、前記第1切刃と前記第2切刃とが先端側で連接してコーナを形成し、且つ前記すくい面上にブレーカ板が配設された刃具を有する切削工具であって、前記ブレーカ板の側面のうち、先端側の先端側面は、前記第1切刃と前記第2切刃とがなす刃先角を分割する分割線の延在方向に沿って前記コーナの先端から所定間隔で離間するように配置され、前記ブレーカ板の主面のうち、前記すくい面に臨む接触主面には、前記先端側面に略平行に延在する溝が形成され、前記接触主面の前記溝よりも先端側は前記すくい面に脱離可能に接触していることを特徴とする。
【0011】
刃具の再研磨は、摩耗前の刃具の刃先角の大きさが維持されるように、第1切刃側及び第2切刃側の各々を研磨する。このため、刃具を再研磨すると、コーナの先端が、見掛け上、刃具の後端側へ変位することになる。この際、コーナの先端は、例えば、刃具を備えるシャンク等の工具軸と一致し、且つ刃先角を分割する分割線(以下、単に分割線ともいう)に沿って変位する。
【0012】
本発明に係る切削工具では、切り屑の長さ及び流出方向を適切な範囲に調整できるように、ブレーカ板の先端側面が、コーナの先端から分割線の延在方向に沿って所定の間隔で離間している。そして、ブレーカ板の接触主面には、先端側面に略平行に延在する溝が形成されている。なお、以下では、接触主面の裏面であるブレーカ板の主面を非接触主面ともいう。
【0013】
この切削工具の再研磨では、例えば、分割線の延在方向における、ブレーカ板の先端側面から溝までの距離と同じ大きさだけ、刃具のコーナの先端を初期位置から変位させる。なお、ここでの初期位置は、ワークを切削する前、つまり、刃具が摩耗する前のコーナの先端の分割線の延在方向に対する位置である。また、ブレーカ板についても、先端側面から溝に達するまで研磨して、該ブレーカ板の溝よりも先端側を除去する。
【0014】
この際、ブレーカ板を研磨する砥石を、空間である溝の深さ分、刃具のすくい面(接触主面)から離間させた状態で研磨を行うことができる。すなわち、ブレーカ板の厚さ方向のうち、非接触主面から溝に達するまでの間に砥石を接触させ、この状態で、ブレーカ板の面内方向に砥石を移動させる。これによって、先端側面から溝に達するまで研磨を行うと、ブレーカ板では、溝よりも先端側と後端側とが分離されることになる。
【0015】
ブレーカ板と刃具は、該ブレーカ板の溝よりも後端側で互いに固定されており、接触主面の溝よりも先端側はすくい面に脱離可能に接触している。このため、上記のように、砥石をすくい面から離間させた状態で、ブレーカ板の溝よりも先端側を後端側から分離するように研磨を行うことで、該先端側をすくい面上から容易に除去することができる。なお、ブレーカ板の先端側面に対する砥石の接触位置や、研磨時の砥石の移動量は、研磨機に砥石の送り出し量等を設定することによって調整できる。
【0016】
そして、このようにしてブレーカ板の研磨を行うと、溝の後端側の内壁面が新たな先端側面として露出する。この溝は、研磨前のブレーカ板の先端側面と略平行に形成されている。従って、刃具の再研磨によって変位したコーナと、新たに形成されるブレーカ板の先端側面との位置関係や、該先端側面の形状を、研磨前と略同様に維持することができる。
【0017】
以上から、この切削工具では、刃具のすくい面に、刃具とは別個の部材からなるブレーカ板を配設しているため、該すくい面に直接加工を施して、ブレーカとなる障壁や溝等を形成する必要がない。従って、例えば、ダイヤモンドやダイヤモンド焼結体等の、比較的硬度が高い材料からなる刃具であっても、すくい面に所望の形状のブレーカ板を容易且つ高精度に設けることができる。また、鏡面加工を施した後のすくい面に対してブレーカ板を設けることができるため、例えば、ブレーカとして複数の障壁が直接加工されたすくい面にラッピング処理等を行う場合に比して、容易に鏡面加工を施すことができる。
【0018】
さらに、この切削工具では、ブレーカ板の接触主面に、先端側面に略平行な溝が形成されている。これによって、刃具の再研磨を行うことに伴って、ブレーカ板を研磨しても、砥石がすくい面に接触することを回避できる。すなわち、すくい面に鏡面加工を施した場合であっても、該すくい面が粗面化することを効果的に抑制できる。また、再研磨の後も、予め設定された、ブレーカ板の配置及び形状を容易に維持することができる。
【0019】
その結果、再研磨の後も、切り屑の切断長さや流出方向を適切に調整すること、切り屑の溶着やチッピングを効果的に抑制すること、切り屑の排出性を向上させることができる。ひいては、加工面粗度が安定化した高品質の切削製品を得ることが可能になる。
【0020】
上記の切削工具において、前記溝は、前記分割線の延在方向に沿って間隔をおいて複数個形成されていることが好ましい。溝の個数を増大させることで、再研磨することが可能な回数を増大させることができる。つまり、必要な再研磨の回数に応じて、複数個の溝を形成し、該溝同士の間隔に応じた大きさだけ、刃具のコーナを変位させるように再研磨を行う。これによって、上記と同様の作用効果が得られるとともに、刃具の材料を一層有効に活用して、ワークの切削に要するコストを効果的に削減することが可能になる。
【0021】
上記の切削工具において、前記ブレーカ板の前記先端側面に連接する側面のうち、前記第1切刃側に臨む第1側面と、前記第2切刃側に臨む第2側面との少なくとも一方は、面方向が前記分割線の延在方向に略平行な平行側面であり、前記平行側面に近接する前記第1切刃又は前記第2切刃と、該平行側面との間に間隔が形成されることにより、切り屑を通過させることが可能な逃げ部が形成されていることが好ましい。
【0022】
刃具の再研磨を行うことで、第1切刃及び第2切刃が、分割線の延在方向の後端側に向かって変位しても、該分割線の延在方向に対する第1切刃及び第2切刃の各々の傾きは変化しない。従って、分割線の延在方向に略平行な平行側面に対しても、第1切刃及び第2切刃の各々の傾きを略一定に維持しつつ再研磨を行うことができる。つまり、平行側面と、該平行側面に近接する第1切刃又は第2切刃との間に、先端側面との接触によって切断された切り屑を通過させて排出することが可能な間隔を逃げ部として予め形成することで、該逃げ部を再研磨後も容易に維持できる。
【0023】
従って、この切削工具では、例えば、ワークに対して内径加工を行うような場合であっても、ワークとブレーカ板との間に切り屑が留まることを効果的に抑制して、切り屑の排出効率を向上させることができる。また、この切り屑の排出効率を再研磨の後も良好に維持することができる。
【0024】
上記の切削工具において、前記第1側面が前記平行側面であり、前記第2側面は、前記第2切刃側の前記刃具の側面に沿うことが好ましい。この場合、再研磨を行っても、ブレーカ板の第1側面側に、逃げ部を容易に維持することができる。また、ブレーカ板の第2側面側を刃具の第2切刃側の側面に達するまで延在させる分、先端側面の面積を増大させることができるため、ブレーカ板の強度や耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、刃具のすくい面に、刃具とは別個の部材からなるブレーカ板を配設するため、すくい面に直接加工を施す必要がなく、所望の形状のブレーカ板を容易且つ高精度に設けることが可能になる。また、刃具の再研磨を行うことに伴って、ブレーカ板を研磨しても、砥石がすくい面に接触することを回避できるため、該すくい面が粗面化することを抑制できる。さらに、再研磨の後も、予め設定された、ブレーカ板の配置及び形状を容易に維持することができる。
【0026】
その結果、再研磨の後も、切り屑の切断長さや流出方向を適切に調整すること、切り屑の溶着やチッピングを効果的に抑制すること、切り屑の排出性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係る切削工具の要部概略平面図である。
図2図1の切削工具の要部概略側面図ある。
図3図3Aは、図1の切削工具を再研磨して、刃具のコーナを変位させた状態を示す概略説明図であり、図3Bは、図3Aの刃具上のブレーカ板の先端側面に砥石を接触させた状態を示す概略説明図であり、図3Cは、図3Bのブレーカ板の溝よりも先端側と後端側とを分離した状態を示す概略説明図であり、図3Dは、図3Cのブレーカ板の溝よりも先端側をすくい面上から除去した状態を示す概略説明図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る切削工具の要部概略平面図である。
図5図4の切削工具の要部概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る切削工具につき好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
<<第1実施形態>>
図1及び図2を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る切削工具10の構成について説明する。図1は切削工具10の要部概略平面図であり、図2は切削工具10の要部概略側面図である。切削工具10は、例えば、アルミニウム合金等からなる不図示のワークに切削加工を行うものであり、シャンク12の先端部に設けられる刃具14と、該刃具14のすくい面16上に配設されるブレーカ板18とを含んで構成される。なお、切削工具10のワークに接触して加工を行う側を先端側とし、不図示の工作機械のホルダ等に固定される側を後端側とする。
【0030】
刃具14は、例えば、ダイヤモンドやダイヤモンド焼結体等の材料から形成され、先端側がR状の略三角形の斜剣バイトであり、すくい面16及び逃げ面20(図2参照)がラッピング処理等によって鏡面加工されている。本実施形態では、刃具14が斜剣バイトである場合を例示して説明するが、特にこれに限定されるものではない。刃具14は、ワークの材質や切削加工する目的に応じて任意に選択することができ、例えば、直剣バイト、チップ、リーマ、ドリル等の種々の構成を適用することができる。また、刃具14は、ダイヤモンドやダイヤモンド焼結体等以外の材料から形成されてもよく、すくい面16及び逃げ面20に鏡面加工が施されていなくてもよい。
【0031】
この刃具14は、すくい面16と逃げ面20との交差稜線部に第1切刃22(図1参照)と第2切刃24が設けられ、第1切刃22と第2切刃24とが先端側で連接してコーナ26を形成している。すなわち、第1切刃22と第2切刃24とがなす角が刃具14の刃先角α(図1参照)となる。
【0032】
この刃先角αの大きさは、後述するように刃具14を再研磨した後も一定に維持される。すなわち、刃先角αを分割する分割線a−a’(図1参照)に対する第1切刃22及び第2切刃24の各々の傾きが維持されるように再研磨を行う。このため、刃具14を再研磨すると、コーナ26の先端が、分割線a−a’に沿って、刃具14の後端側へ変位することになる。
【0033】
なお、本実施形態では、シャンク12の軸方向と分割線a−a’方向とが一致する場合について説明するが、特にこれに限定されるものではない。例えば、いわゆる曲がりバイト等、コーナ26の先端がシャンク12の軸方向上に配置されていない刃具14では、再研磨によってコーナ26の先端を変位させる方向と分割線a−a’方向とが一致していればよい。
【0034】
また、刃具14は、すくい面16の裏面がシャンク12の先端に対して、ろう付け等によって固定されている。
【0035】
ブレーカ板18は、切削加工に伴ってワークから分離された切り屑と接触して、該切り屑を所望の長さに切断したり、該切り屑の流出方向を所望の方向に調整したりする。このブレーカ板18は、例えば、超硬合金等、切り屑が衝突しても摩耗や損傷が生じ難い高硬度の材料から形成されることが好ましい。
【0036】
ブレーカ板18の先端側の側面である先端側面28は、分割線a−a’に対して角度β(図1参照)傾斜し、且つコーナ26の先端から該分割線a−a’方向に沿って所定間隔L1で離間している。これらの角度β及び間隔L1の各々は、上記の通り、先端側面28に接触した切り屑が、所望の切断長さや流出方向となるように適切な大きさに設定されている。
【0037】
ブレーカ板18の先端側面28に連接する2個の側面のうち、第1切刃22側に臨む第1側面29a(図1参照)は、該第1切刃22の傾きと略平行に延在している。また、第2切刃24側に臨む第2側面29bは、該第2切刃24の傾きと略平行に延在している。
【0038】
また、ブレーカ板18の主面のうち、すくい面16に臨む接触主面30(図2参照)には、先端側面28に略平行に延在する溝32が、分割線a−a’方向に沿って間隔L2をおいて複数個形成されている。すなわち、複数の溝32のそれぞれは、分割線a−a’に対して角度β傾斜している。なお、接触主面30に形成された溝32のうち、最先端側に配置された溝32aと先端側面28との間の分割線a−a’方向に沿う間隔もL2に設定されている。詳細には、溝32aの内壁のうち、分割線a−a’方向の後端側の内壁32bと、先端側面28との間の間隔がL2に設定されている。
【0039】
また、複数の溝32は、それぞれの深さが後述するd(図2参照)に設定されている。なお、接触主面30に形成された溝32のうち、再後端側に配置された一つを溝32cともいう。
【0040】
接触主面30のうち、上記の溝32cよりも先端側と、すくい面16とは互いに脱離可能に接触している。すなわち、刃具14とブレーカ板18とは、接触主面30の溝32cよりも後端側で互いの位置が固定されている。図1及び図2の例示では、シャンク12に固定された刃具14の後端側において、該シャンク12にブレーカ板18の接着面33(図2参照)が、例えば、ろう付け等によって固定されている。これによって、刃具14のすくい面16上に、接触主面30が脱離可能に接触するようにブレーカ板18が配設される。このように、すくい面16と接触主面30とを接触させることで、互いの間に切り屑が進入することを抑制できる。
【0041】
なお、図1及び図2中の参照符号34は、非接触主面を示す。この非接触主面34は、接触主面30の裏面である。
【0042】
基本的には以上のように構成される切削工具10は、アルミニウム合金等からなる所定のワークに対して切削加工を施すときに用いられる。切削加工は、主に、第1切刃22及び第2切刃24によって営まれる。このため、切削加工の繰り返しに伴って第1切刃22及び第2切刃24が摩耗する。そこで、再研磨を行って第1切刃22及び第2切刃24を再生する。
【0043】
図3A図3Dを参照しつつ、刃具14を再研磨する工程と、該工程に伴ってブレーカ板18を研磨する工程を説明する。なお図3A図3Dでは、シャンク12の図示を省略して示している。
【0044】
先ず、図3Aに示すように、刃具14を研磨して、その先端側を除去する。具体的には、刃具14の刃先角αの大きさが維持されるように、第1切刃22側及び第2切刃24側の各々を研磨する。これによって、分割線a−a’方向における、ブレーカ板18の先端側面28から溝32aまでの間隔L2と同じ大きさだけ、刃具14のコーナ26の先端を初期位置から変位させる。なお、初期位置とは、ワークを切削する前、つまり、刃具14が摩耗する前のコーナ26の先端の分割線a−a’方向に対する位置である。
【0045】
次に、図3Bに示すように、ブレーカ板18を研磨する砥石36を、刃具14のすくい面16(接触主面30)から間隔L3で離間させた状態で、ブレーカ板18の先端側面28に接触させる。すなわち、ブレーカ板18の厚さ方向のうち、接触主面30の裏面である非接触主面34から溝32に達するまでの間に砥石36を接触させ、この状態で、ブレーカ板18の面内方向に砥石36を移動させる。
【0046】
これによって、図3Cに示すように、先端側面28から溝32aに達するまで、詳細には、溝32aの内壁32bから非接触主面34に至るまでが平坦となるまで研磨を行う。その結果、ブレーカ板18では、溝32aの内壁32bよりも先端側と後端側とが分離されることになり、該先端側が分離片38となる。
【0047】
上記の通り、ブレーカ板18は、溝32aよりも後端側の接着面33を介して、シャンク12(図1及び図2参照)に固定され、これによって、接触主面30がすくい面16に臨むように配設されている。すなわち、ブレーカ板18の溝32cよりも先端側の接触主面30とすくい面16とは脱離可能に接触しているのみである。このため、分離片38は、すくい面16上から容易に除去することが可能である。つまり、上記の通り、砥石36をすくい面16から間隔L3で離間させて、分離片38が形成されるように研磨を行うことで、ブレーカ板18の溝32aよりも先端側を容易に除去することができる。
【0048】
ここで、溝32の深さdは、上記のようにして分離片38を形成する際、砥石36とすくい面16との間に、互いの接触を十分に回避できる間隔L3が確保できる大きさに設定されている。従って、砥石36を用いて、ブレーカ板18を研磨しても、砥石36が刃具14のすくい面16に接触することを回避できるため、該すくい面16が粗面化することを効果的に抑制できる。
【0049】
上記の工程を行うことで、図3Dに示すように、除去される前のブレーカ板18の先端側面28と略平行に形成された溝32aの内壁32bが、新たな先端側面28として露出する。このため、刃具14の再研磨によって変位したコーナ26と、ブレーカ板18の新たな先端側面28との分割線a−a’方向に沿う間隔はL1となる。また、新たな先端側面28の分割線a−a’に対する傾斜角度はβとなる。つまり、研磨後の先端側面28とコーナ26の位置関係や、該先端側面28の形状が、研磨前と略同様になるように容易に維持することができる。
【0050】
上記の通り、角度β及び間隔L1の各々は、先端側面28に接触した切り屑が適切な切断長さや流出方向となるよう設定されている。このため、切削工具10は、再研磨後であっても、切り屑を適切に処理することが可能である。
【0051】
また、切削工具10では、刃具14のすくい面16に、刃具14とは別個の部材からなるブレーカ板18を配設しているため、該すくい面16に直接加工を施して、ブレーカとなる障壁や溝等を形成する必要がない。これによって、例えば、ダイヤモンドやダイヤモンド焼結体等の、比較的硬度が高い材料からなる刃具14であっても、すくい面16に所望の形状のブレーカ板18を容易且つ高精度に設けることができる。
【0052】
さらに、刃具14にラッピング処理等を施して鏡面加工を行った後に、すくい面16にブレーカ板18を設けることができる。このため、この切削工具10では、例えば、すくい面16にブレーカとして複数の障壁等を直接加工した後にラッピング処理等を行う場合に比して、容易に鏡面加工を施すことができる。
【0053】
また、刃具14の再研磨を行うことに伴って、ブレーカ板18を研磨しても、上記の通り、砥石36がすくい面16に接触することを回避できる。従って、すくい面16に鏡面加工を施した場合であっても、該すくい面16が粗面化することを効果的に抑制できる。
【0054】
以上から、切削工具10では、刃具14の再研磨を行った後も、切り屑の切断長さや流出方向を適切に調整すること、切り屑の溶着やチッピングを効果的に抑制すること、切り屑の排出性を向上させることができる。ひいては、加工面粗度が安定化した高品質の切削製品を得ることが可能になる。
【0055】
また、切削工具10では、溝32が、分割線a−a’方向に沿って間隔L2をおいて複数個形成されている。このため、再研磨後の刃具14の第1切刃22及び第2切刃24が再び摩耗した場合は、上記と同様にして、刃具14を再研磨する工程と、ブレーカ板18を研磨する工程とを行うことができる。
【0056】
つまり、再研磨の度に、間隔L2ずつ刃具14のコーナ26を変位させ、且つ最先端側に配置された溝32よりも、先端側のブレーカ板18をすくい面16上から除去する。これによって、先端側面28とコーナ26の位置関係や、該先端側面28の形状を維持しつつ再研磨を行うことができる。
【0057】
従って、溝32の個数は、刃具14に対して再研磨を行うことが想定される回数に応じて定められればよい。その結果、切削工具10を効果的に再研磨して使用することができるため、例えば、ダイヤモンド焼結体等の刃具14の材料を有効に活用することができ、ワークの切削に要するコストを削減できる。なお、ブレーカ板18の複数個の溝32同士の間の壁は、ワークの切削加工時に、切り屑が衝突しても、十分な耐久性を示す程度の厚さに設定されている。
【0058】
<<第2実施形態>>
次に、図4及び図5を参照しつつ本発明の第2実施形態に係る切削工具40について説明する。図4は、切削工具40の要部概略平面図であり、図5は切削工具40の要部概略側面図である。なお、図4及び図5に示す構成要素のうち、図1図3Dに示す構成要素と同一又は同様の機能及び効果を奏するものに対しては同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0059】
切削工具40は、上記の切削工具10の構成要素のうち、刃具14及びブレーカ板18の各々に代えて、刃具42、ブレーカ板44を備えている。先ず、ブレーカ板44について説明する。ブレーカ板44とブレーカ板18との主な相違点は、第1側面45aが、分割線a−a’方向に略平行な面方向の平行側面からなる点と、第2側面45bが、刃具42の第2切刃24側の側面に沿うように配置されている点である。
【0060】
第1側面45aの先端側と、第1切刃22との間には、分割線a−a’方向と直交する方向に沿って、間隔L4が逃げ部として形成されている。すなわち、ワークの切削時に、先端側面28との接触によって切断された切り屑を、この間隔L4から通過させて排出することができる。これによって、ワークとブレーカ板44との間に切り屑が留まることを効果的に抑制できるため、切り屑の排出効率を向上させることができる。
【0061】
また、上記のように、刃具42の第2切刃24側の側面に達するまで第2側面45bを延在させる分、ブレーカ板44の先端側面28の面積を増大させることができるため、該ブレーカ板44の強度や耐久性を向上させることができる。
【0062】
刃具42は、すくい面16上にブレーカ板44が配置される部位の後端側に切欠46が設けられている。この切欠46を介して、ブレーカ板44の後端側の接着面48(図5参照)がシャンク12に対して固定されている。また、切欠46内にブレーカ板44が配置された際、該ブレーカ板44の後端側と、刃具42の後端側とは互いに面一となるように構成されている。
【0063】
この切削工具40は、上記の切削工具10と同様にして再研磨を行うことができる。上記のようにして、再研磨を行って、第1切刃22及び第2切刃24を、分割線a−a’方向の後端側に向かって変位させても、該分割線a−a’方向に対する第1切刃22及び第2切刃24の各々の傾きは変化しない。従って、分割線a−a’方向に略平行な平行側面である第1側面45aに対しても、第1切刃22及び第2切刃24の各々の傾きを略一定に維持しつつ再研磨を行うことができる。
【0064】
従って、再研磨後においても、第1側面45aと第1切刃22との間に間隔L4を維持することができるため、ワークとブレーカ板44との間に切り屑が留まることを効果的に抑制して、切り屑の排出効率を維持することができる。このため、例えば、切削工具40によって、ワークの内径加工を行うような場合であっても、切断された切り屑を効率的に排出することができ、且つ切り屑の排出効率を、再研磨の後も良好に維持することができる。
【0065】
本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、上記の切削工具10、40では、接触主面30に複数の溝32が設けられていることとしたが、特にこれに限定されるものではなく、溝32は、少なくとも一つ設けられていればよい。
【0067】
また、上記の切削工具40では、第1側面45a及び第2側面45bのうち、第1側面45aが平行側面であることとしたが、特にこれに限定されるものではなく、少なくとも何れか一方が平行側面であればよい。すなわち、第2側面45bが平行側面であってもよい。
【0068】
また、第1側面45a及び第2側面45bの両方が平行側面であってもよい。この場合、第1切刃22と第1側面45aとの間、及び第2切刃24と第2側面45bとの間の両方から、切断された切り屑を通過させて排出することができる。従って、切り屑の排出効率を一層効果的に向上させることが可能になる。
【符号の説明】
【0069】
10、40…切削工具 12…シャンク
14、42…刃具 16…すくい面
18、44…ブレーカ板 20…逃げ面
22…第1切刃 24…第2切刃
26…コーナ 28…先端側面
29a、45a…第1側面 29b、45b…第2側面
30…接触主面 32、32a、32c…溝
32b…内壁 33、48…接着面
34…非接触主面 36…砥石
38…分離片 46…切欠
図1
図2
図3
図4
図5