【実施例】
【0018】
図1に示したザンメル印刷機は、ザンメル印刷部と両面オフセット印刷部とを組み合わせた印刷機となっている。
【0019】
即ち、
図1に示すように、ザンメル印刷機には、紙搬送方向上流側から下流側に向けて、供給部10、ザンメル印刷部11、両面オフセット印刷部12、及び、排出部(図示省略)が、順に配置されている。これにより、供給部10から供給された紙は、一枚ずつ、スイング13及び4本の渡胴14,15,16,17を介して、ザンメル印刷部11の圧胴18に受け渡された後、当該圧胴18とゴム胴19との間に供給されるようになっている。
【0020】
ザンメル印刷部11は、3本の部分版胴20、集合ゴム胴21、集合版胴22、ゴム胴19、及び、圧胴18が、下方から上方に向けて順に配置されている。このとき、ザンメル印刷部11における胴配列としては、圧胴18の回転中心とゴム胴19の回転中心(後述するR1)とを結ぶ直線と、ゴム胴19の回転中心と集合版胴22の回転中心(後述するR2)とを結ぶ直線(後述するL1)とがなす角度は、略90°となっており、ゴム胴19の回転中心と集合版胴22の回転中心とを結ぶ直線と、集合ゴム胴21の回転中心と集合版胴22の回転中心とを結ぶ直線とがなす角度は、略90°となっている。
【0021】
そして、各部分版胴20上の画線は、集合ゴム胴21を介して、集合版胴22に一体化して転写された後、更に、ゴム胴19を介して、当該ゴム胴19と圧胴18との間に供給された紙に印刷されるようになっている。なお、
図1中に示した符号23は、3本の部分版胴20に対して、それぞれ異なった色のインキを供給するインキ供給装置となっている。
【0022】
ここで、ザンメル印刷が施された紙は、圧胴18から、両面オフセット印刷部12における1色目(1段目)の表面オフセット印刷ユニット12aの圧胴24に受け渡されることにより、表面にオフセット印刷が施されるようになっている。更に、表面にオフセット印刷が施された紙は、圧胴24から、1色目(1段目)の裏面オフセット印刷ユニット12bの圧胴29に受け渡されることにより、裏面にオフセット印刷が施されるようになっている。
【0023】
表面オフセット印刷ユニット12aは、2つのインキツボ25a,25bを備えたダブルダクト式インキ供給装置26、版胴27、ゴム胴28、及び、圧胴24から構成されている。そして、ザンメル印刷機には、表面オフセット印刷ユニット12aが複数段設けられており、各表面オフセット印刷ユニット12aにおいては、圧胴24とゴム胴28との間に供給された紙の表面に、版胴27から転写された所定の色の画線が、印刷されるようになっている。
【0024】
一方、裏面オフセット印刷ユニット12bは、2つのインキツボ30a,30bを備えたダブルダクト式インキ供給装置31、版胴32、ゴム胴33、及び、圧胴29から構成されている。そして、ザンメル印刷機には、裏面オフセット印刷ユニット12bが複数段設けられており、各裏面オフセット印刷ユニット12bにおいては、圧胴29とゴム胴33との間に供給された紙の裏面に、版胴32から転写された所定の色の画線が、印刷されるようになっている。
【0025】
以上より、ザンメル印刷機においては、隣接するオフセット印刷ユニット12a,12b,…の圧胴24,29を、渡胴を介在させることなく接触させることによって、表面印刷と裏面印刷とを交互に行うように構成されている。なお、最終のオフセット印刷が施された紙は、最終色目の裏面オフセット印刷ユニット12bの圧胴29から排出された後、排出部のパイル上に積載されることになる。
【0026】
また、
図2に示すように、ゴム胴(第3の胴)19は、左右両側の端軸19aが、偏心メタル(第4の偏心軸受)40を介して、左右一対の本機フレーム(支持部材)44に回転可能に支持されている。そして、ゴム胴19は、偏心メタル40が、駆動装置(第4の駆動手段)41の駆動によって、
図2中において時計回りまたは反時計回りに回動することにより、集合版胴(第2の胴)22に対する着脱と、圧胴(第4の胴)18に対する着脱とに加えて、圧胴18との間の印圧を調整可能としている。
【0027】
即ち、偏心メタル40の回転中心F1は、ゴム胴19の回転中心R1に対して、当該ゴム胴19と集合版胴22との対接点の反対側に配置されている。これにより、ゴム胴19の回転中心R1は、偏心メタル40の回転中心F1を中心とした直交座標系の第1及び第4象限側(言い換えれば、ゴム胴19が圧胴18及び集合版胴22の両方に対して接近離反する側)を偏心回転することになる。
【0028】
駆動装置41は、ゴム胴19の下方に配置されており、本機フレーム44にブラケット(図示省略)を介して支持されるサーボモータ41d、そのサーボモータ41dの回転力が伝達される伝達軸41a、その伝達軸41aと一体に形成されるレバー41b、及び、そのレバー41bの先端と偏心メタル40のフランジ部40aとの間に介在され、それらに回転可能に支持されるロッド41cから構成されている。
【0029】
更に、
図2及び
図3に示すように、集合版胴22は、左右両側の端軸22aが、偏心内メタル(第1の偏心軸受)42と偏心外メタル(第2の偏心軸受)43とからなる左右一対の二重偏心メタルを介して、左右一対の本機フレーム44に回転可能に支持されている。
【0030】
そして、集合版胴22は、偏心内メタル42が、油圧シリンダ(第1の駆動手段)45の駆動によって、
図2中において時計回りまたは反時計回りに回動することにより、集合ゴム胴(第1の胴)21に対する着脱を可能とすると共に、偏心外メタル43が、駆動装置(第2の駆動手段)46の駆動によって、
図2中において時計回りまたは反時計回り回動することにより、ゴム胴19との間の印圧を調整可能としている。
【0031】
即ち、偏心内メタル42の回転中心M及び偏心外メタル43の回転中心F2は、集合版胴22の回転中心R2に対して、当該集合版胴22とゴム胴19との対接点の反対側に配置されている。更に、偏心外メタル43の回転中心F2は、偏心内メタル42の回転中心Mに対して、集合版胴22と集合ゴム胴21との対接点の反対側に配置されている。これにより、集合版胴22の回転中心R2は、偏心内メタル42の回転中心Mまたは偏心外メタル43の回転中心F2を中心とした直交座標系の第2及び第3象限側(言い換えれば、集合版胴22がゴム胴19及び集合ゴム胴21の両方に対して接近離反する側)を偏心回転することになる。
【0032】
そして、油圧シリンダ45のヘッド部は、本機フレーム44の内面において、集合版胴22の上方に位置して支持されている。また、偏心内メタル42のフレーム外周部には、フランジ部42aが、ゴム胴19と集合版胴22との対接点に向けて膨出するように形成されており、油圧シリンダ45のピストンロッド先端は、そのフランジ部42aに支持されている。
【0033】
一方、駆動装置46は、集合版胴22の下方に配置されており、本機フレーム44にブラケット(図示省略)を介して支持されるサーボモータ46d、そのサーボモータ46dの回転力が伝達される伝達軸46a、その伝達軸46aと一体に形成されるレバー46b、及び、そのレバー46bの先端と偏心外メタル43のフランジ部43aとの間に介在され、それらに回転可能に支持されるロッド46cから構成されている。
【0034】
なお、駆動装置46においては、左右一対の偏心外メタル43が、左右一対の本機フレーム44間に回動可能に横架される伝達軸46aを介して、1つのサーボモータ46dによって駆動されるようになっている。
【0035】
また、偏心内メタル42のフレーム外周部には、フランジ部42bが形成されており、このフランジ部42bは、フランジ部42aから集合版胴22の上方側に向けて、位相が約90°ずれた位置に配置されている。そして、フランジ部42bには、調整ボルト(当接部)47が組み付けられており、この調整ボルト47は、合版胴22がゴム胴19に対して接近離反する方向において、進退可能に螺合されている。
【0036】
一方、本機フレーム44の外側には、ストッパ(当接部材)49が、集合版胴22の上方に配置されている。ストッパ49は、偏心メタル(第3の偏心軸受)48を介して、本機フレーム44に回転可能に支持されており、調整ボルト47は、偏心内メタル42が反時計回りに回動したときに、そのストッパ49に当接するようになっている。従って、調整ボルト47と偏心メタル48とが当接したときに、偏心メタル48を回動させるか、または、調整ボルト47を進退させるか、或いは、それら両方を行うことにより、集合ゴム胴21と集合版胴22との間の印圧を、微細に調整可能となっている。
【0037】
なお、左右一対の偏心メタル48は、左右一対の本機フレーム44間に回動可能に横架される伝達軸50及びギヤを介して、1つのサーボモータ(第3の駆動手段)51によって駆動されるようになっている。
【0038】
従って、ザンメル印刷部11における胴装置の動作としては、先ず、油圧シリンダ45を伸長させることにより、偏心内メタル42を
図2中反時計回りに回動させる。これにより、偏心内メタル42は、調整ボルト47がストッパ49に当接するまで大きく回動し(
図2中の右方大矢印参照)、集合版胴22が集合ゴム胴21に対接する。
【0039】
次に、駆動装置41を駆動させることにより、偏心メタル40を
図2中反時計回りに大きく回動させる(
図2中の左方大矢印参照)。これにより、ゴム胴19が圧胴18及び集合版胴22に対接する。
【0040】
更に、駆動装置41を駆動させることにより、偏心メタル40を
図2中時計回りまたは反時計回りに小さく回動させる(
図2中の左方小矢印参照)。これにより、ゴム胴19と圧胴18との間の印圧が、ゴム胴19と集合版胴22との着状態を維持しながら、紙厚に応じて調整される。
【0041】
そして、サーボモータ51を駆動させることにより、偏心メタル48を
図2中時計回りまたは反時計回りに回動させる。これにより、偏心内メタル42は、
図2中時計回りまたは反時計回りに小さく回動することになり(
図2中の右方小矢印参照)、集合版胴22と集合ゴム胴21との間の印圧が調整される。なお、この際、偏心内メタル42における調整ボルト47を進退させることにより、集合版胴22と集合ゴム胴21との間の印圧を調整しても構わない。
【0042】
最後に、駆動装置46を駆動させることにより、偏心外メタル43を
図2中時計回りまたは反時計回りに小さく回動させる(
図2中の下方小矢印参照)。これにより、
図4(a),(b)に示すように、集合版胴22の短軸22aは、実線の位置から破線の位置に水平移動することになり、集合版胴22とゴム胴19との間の印圧が調整される。
【0043】
このとき、
図4(c)に示すように、ストッパ49と偏心内メタル42のフランジ部42b(調整ボルト47)との当接状態は、保持されているため、既に設定された、集合版胴22と集合ゴム胴21との間の印圧は、変化しない。即ち、
図4(d)に示すように、偏心外メタル43が回転中心F2を回転中心として回転するときには、水平線と、集合版胴22の回転中心R2と偏心内メタル42の回転中心Mとを結ぶ線分とがなす角度は、ほぼ変わらない。
【0044】
また、調整ボルト47とストッパ49とが当接している状態においては、偏心内メタル42には、油圧シリンダ45の押圧力によって、ストッパ49を回転中心とした反時計回りの回動力が、常時付与されることになる。
【0045】
これにより、
図2に示したP1の位置において、偏心内メタル42が偏心外メタル43を押圧する押圧部が、形成されると共に、
図2に示したP2の位置において、偏心外メタル43が本機フレーム44を押圧する押圧部が形成される。このとき、押圧部P1,P2は、ゴム胴19の回転中心R1と集合版胴22の回転中心R2とを結ぶ直線L1の略延長線上に位置する。
【0046】
上述したように、偏心内メタル42が偏心外メタル43を押し付ける方向と、偏心外メタル43が本機フレーム44を押し付ける方向とが、同一の方向(集合版胴22がゴム胴19に対して離反する方向)となるため、本機フレーム44と偏心外メタル43と偏心内メタル42との間で生じるガタ(隙間)を、無くすことができる。これにより、集合版胴22の移動を規制することができるので、高い印刷精度を得ることができる。
【0047】
従って、本発明に係る胴装置によれば、集合版胴22を、偏心内メタル42と偏心外メタル43とからなる二重偏心メタルによって支持すると共に、偏心内メタル42に付設した調整ボルト47を、本機フレーム44に設けたストッパ49に当接させて、集合版胴22におけるゴム胴19に着させる方向の回動を、規制することにより、集合版胴22と集合ゴム胴21との間の印圧を維持しながら、集合版胴22とゴム胴19との間の印圧を調整することができる。これにより、印圧調整機構を簡素な構成とすることができる。
【0048】
また、偏心内メタル42に付設した調整ボルト47と、本機フレーム44に設けたストッパ49とを当接させることにより、本機フレーム44と偏心外メタル43と偏心内メタル42との間で生じるガタを取ることができるので、高い印刷精度を得ることができる。
【0049】
なお、本発明に係る胴装置においては、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、渡胴や部分版胴の胴数変更、胴配列の変更、偏心メタルの駆動手段の変更等、各種変更が可能であることは言うまでもない。また、本発明に係る胴装置は、ザンメル印刷機に限らず、他の印刷機においても適用することができる。