【解決手段】 表皮付き樹脂成形品10は、予め形成された樹脂製断熱材12と、成形時に樹脂製断熱材12と接着される表皮シート11からなり、樹脂製断熱材12は発泡構造体及び繊維構造体のうち少なくとも1つの材料からなり、表皮シート11が、その外周部の少なくとも一部に樹脂製断熱材12の外周部12bに沿って折れ曲がる立壁13を有し、樹脂製断熱材12の外周部12bと立壁13の間には、隙間部15が形成される。
前記配置工程において、押出装置から押し出された溶融状態の前記樹脂シートの一面側に、前記樹脂シートに溶着可能な材料で形成された前記樹脂製断熱材を配置することを特徴とする請求項4に記載の表皮付き樹脂成形品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0015】
(表皮付き樹脂成形品10の構成)
まず、実施形態に係る表皮付き樹脂成形品10(以下、単に「樹脂成形品10」という)の全体構成を
図1に基づいて説明する。
【0016】
図1(a)及び(b)に示すように、樹脂成形品10は、予め形成された樹脂製断熱材12と、成形時に樹脂製断熱材12と接着される表皮シート11からなる。樹脂成形品10の平面形状は、各種の形状から選択可能であるが、この例では、略四角形状(例えば、略長方形状や略正方形状など)で形成される。樹脂成形品10は、例えば、ユニットバスなどの浴室の天井壁や浴槽を構成する断熱パネル、あるいは、防音性が求められる空間の壁を構成する吸音パネルなどとして用いることができる。
【0017】
図2に示すように、表皮シート11は、樹脂成形品10の意匠面を形成する部分であり、樹脂製のシートで構成される。表皮シート11は、その外周部の少なくとも一部に立壁13を有する。この例では、表皮シート11が箱状に形成されるように、略四角形状の表皮シート11の4つの辺部のそれぞれに立壁13を形成し、これら4つの立壁13によって周壁を形成する。
【0018】
樹脂製断熱材12は、断熱性や吸音性を備える部材であって表皮シート11の裏面11cに溶着される。なお、樹脂製断熱材12を表皮シート11に接着する手段は、溶着の他、樹脂成形品10の製造方法に応じて各種の手段から選択可能である。例えば、接着剤を用いて樹脂製断熱材12を表皮シート11に接着してもよい。
【0019】
樹脂製断熱材12は、発泡構造体及び繊維構造体のうち少なくとも1つの材料で構成される。発泡構造体には、スチレン系樹脂発泡体(例えば、発泡ポリスチレン)や、ポリオレフィン系樹脂発泡体(例えば、発泡ポリプロピレン)などの発泡成形体を用いることができる。また、繊維構造体には、例えば、不織布を用いることができ、不織布としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン又はこれらを混合したものが挙げられる。また、複数枚の不織布で樹脂製断熱材12を構成することも可能である。
【0020】
立壁13は、樹脂製断熱材12の表面12a側から樹脂製断熱材12の外周部12bに沿って略直角に折れ曲がるように形成される。立壁13は、樹脂製断熱材12の外周部12bを覆い、樹脂成形品10の外観を高める作用をなす。
【0021】
そして、この立壁13と、樹脂製断熱材12の外周部12bとの間には、隙間部15が形成される。隙間部15の大きさは、樹脂製断熱材12及び表皮シート11それぞれの寸法誤差を考慮して設定することが好適である。具体的には、製造上の寸法誤差により、樹脂製断熱材12の外寸L1が最も大きく形成され、かつ、立壁13の内寸L2が最も小さく形成された場合であっても、立壁13と樹脂製断熱材12とを少なくとも離間させる大きさに隙間部15の寸法を設定する。
【0022】
なお、この例では、略平坦に形成した樹脂成形品10を例示したが、樹脂成形品10の形状は、用途に応じて任意に変更可能であり、例えば、中央部から立壁13に向かって部分的又は全体的に湾曲したものでもよい。また、
図1及び
図2では、1枚の樹脂製断熱材12を表皮シート11の裏面11cに接着した構成を例示したが、この他、分割された複数の樹脂製断熱材を表皮シート11の裏面11cに接着してもよい。
【0023】
(樹脂成形品10の連結構造)
次に、樹脂成形品10の連結構造の一例を
図3に基づいて説明する。
樹脂成形品10は、単独で使用される他、隣接する他の樹脂成形品10と連結して使用することも可能である。例えば、ドーム状など各種の形状の天井壁(例えば、浴室の天井壁)を複数の分割体で構成する場合、このような複数の分割体として複数の樹脂成形品10を使用することが可能である。この場合、複数の樹脂成形品10のうち隣接する2つの樹脂成形品10の立壁13同士を締結することで、複数の樹脂成形品10を連結することができる。
【0024】
(連結構造の例)
図3(a)に示すように、この連結構造20では、樹脂成形品10の立壁13に樹脂製断熱材12の裏面12cよりも高く形成した延出部21を設け、このような延出部21にねじ挿通穴22を形成する。ねじ挿通穴22には、締結用の雄ねじ部材(例えば、六角ボルト)23が挿入可能である。
【0025】
この連結構造20においては、隣接する2つの樹脂成形品10の立壁13同士を、シール部材(例えば、シート状のパッキン)25を介して重ね、互いのねじ挿通穴22を合わせる。そして、合わせた2つのねじ挿通穴22に雄ねじ部材23を通し、雌ねじ部材(例えば、六角ナット)26で締め込む。これにより、雄ねじ部材23及び雌ねじ部材26の締結力で2つの立壁13が締結され、隣接する2つの樹脂成形品10が連結される。
【0026】
(連結構造の他の例)
図3(b)に示すように、この連結構造30では、シール部材(例えば、シート状のパッキン)31を介して隣接する2つの樹脂成形品10のうち、一方の樹脂成形品10の立壁13に樹脂製断熱材12の裏面12cよりも高く形成した延出部21を設ける。さらに、この延出部21の先端部に、外側に向けて突出するフランジ部32を形成する。フランジ部32には、ねじ挿通穴33が形成されており、このねじ挿通穴33には、締結用の雄ねじ部材(例えば、六角ボルト)35が挿入可能である。
【0027】
そして、他方の樹脂成形品10の隙間部15には、フランジ部32に対向する雌ねじ部材(例えば、略円柱状のナット)36を設ける。この雌ねじ部材36は、表皮シート11の裏面11cに一端側(この例では、下端側)が固定され、その雌ねじ穴36aの他端側(この例では、上端側)の開口が樹脂製断熱材12の裏面12cよりも高い位置にて、ねじ挿通穴33に対向する。
【0028】
この連結構造30においては、一方の樹脂成形品10のフランジ部32が他方の樹脂成形品10の隙間部15及び雌ねじ部材36を覆うように、2つの立壁13同士を重ねる。そして、ねじ挿通穴33と雌ねじ部材36を合わせ、雄ねじ部材35をねじ挿通穴33に通して雌ねじ穴36aにねじ込む。これにより、雄ねじ部材35及び雌ねじ部材36の締結力で、表皮シート11の裏面11cとフランジ部32が締結され、隣接する2つの樹脂成形品10が連結される。
【0029】
(樹脂成形品の製造方法)
続いて、樹脂成形品の製造方法を
図4〜
図9に基づいて説明する。
樹脂成形品の製造方法は、工程(1)〜工程(7)を備える。
各工程(1)〜(7)の説明に先立ち、工程(1)〜(7)で使用する成形材料及び装置について説明する。
【0030】
(成形材料)
図4に示すように、この製造方法では、表皮シート11(
図2参照)の成形材料である樹脂シート41を用いる。
【0031】
樹脂シート41は、ポリプロピレン、エンジニアリングプラスチックス、オレフィン系樹脂などから形成されたシートからなる。より詳細には、樹脂シート41は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0032】
具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分以下、さらに好ましくは0.3〜1.5g/10分のもの、又は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等の非晶性樹脂であって、200℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度200℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0〜60g/10分、さらに好ましくは30〜50g/10分でかつ、230℃におけるメルトテンション(株式会社東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラーに巻取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す)が50mN以上、好ましくは120mN以上のものを用いて、樹脂シート41を形成する。
【0033】
また、樹脂シート41には、衝撃により割れが生じることを防止するため、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加されていることが好ましい。具体的には水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレンーエチレン・ブチレンースチレンブロック共重合体、スチレンーエチレン・プロピレンースチレンブロック共重合体、水添スチレンーブタジエンゴム及びその混合物が好適であり、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は1.0〜10g/10分、好ましくは5.0g/10分以下でかつ1.0g/10分以上あるものがよい。
【0034】
さらに、樹脂シート41には、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。具体的にはシリカ、マイカ、ガラス繊維等を成形樹脂に対して50wt%以下、好ましくは30〜40wt%添加する。
【0035】
(成形装置40の構成)
次に、工程(1)〜(7)で用いる成形装置40の構成を説明する。
図4に示すように、成形装置40は、押出装置42と、この押出装置42の下方に配置された型締装置43と、を備える。成形装置40では、押出装置42から押し出された熱可塑性樹脂からなる溶融状態の樹脂シート41を型締装置43に送り、この型締装置43によって溶融状態の樹脂シート41を所望の形状に形成する。
【0036】
押出装置42は、周知の押出装置であり、その詳しい説明は省略するが、ホッパー45が付設されたシリンダー46と、シリンダー46内に設けられたスクリュー(図示省略)と、このスクリューに連結された油圧モーター47と、シリンダー46と内部が連通したアキュムレーター48と、アキュムレーター48内に設けられたプランジャー51とを有する。押出装置42では、ホッパー45から投入した樹脂ペレットをシリンダー46内で油圧モーター47によるスクリューの回転により溶融、混練し、溶融状態の樹脂をアキュムレーター48に移送して一定量貯留する。そして、アキュムレーター48内の溶融状態の樹脂をプランジャー51の駆動により、Tダイ52に送り、押出スリット53を通じて所定の長さの連続的な樹脂シート41として押し出す。押し出した樹脂シート41を、間隔を隔てて配置された一対のローラー55によって挟圧しながら下方に送り出して第1・第2分割型57A,57B(後述)の間に垂下させる。これにより、樹脂シート41は、上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、第1・第2分割型57A,57Bの間に配置される。
【0037】
押出装置42の押出の能力は、樹脂シート41の大きさや、樹脂シート41のドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜定める。より具体的には、実用的な観点から、間欠押出における1ショットの押出量は好ましくは1〜10kgであり、押出スリット53からの樹脂の押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは700kg/時以上である。また、樹脂シート41のドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、樹脂シート41の押出工程は、なるべく短いことが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、一般的に、押出工程は40秒以内、より好ましくは10〜20秒以内に完了するのがよい。このため、熱可塑性樹脂の押出スリット53からの単位面積、単位時間当たりの押出量は、50kg/時/cm
2以上、より好ましくは150kg/時/cm
2以上である。
【0038】
一対のローラー55の間に挟み込まれた樹脂シート41を下方に送り出すことで、樹脂シート41を延伸薄肉化することが可能である。押し出される樹脂シート41の押出速度と、一対のローラー55による樹脂シート41の送り出し速度との関係を調整することにより、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することが可能であるため、樹脂の種類、特にMFR値及びメルトテンション値、あるいは単位時間当たりの押出量に対する制約を小さくすることができる。
【0039】
Tダイ52に設けられる押出スリット53は、鉛直下向きに配置され、この押出スリット53から押し出された樹脂シート41は、そのまま押出スリット53から垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリット53は、その間隔を可変とすることにより、樹脂シート41の厚みを変更することが可能である。
【0040】
一対のローラー55は、押出スリット53の下方において、各々の回転軸を略水平に向け、かつ、互いに平行に並んだ状態で配置される。一対のローラー55は、一方が回転駆動ローラーであり、他方が被回転駆動ローラーである。より詳細には、一対のローラー55は、押出スリット53から下方に垂下する形態で押し出される樹脂シート41に対して、線対称になるように配置される。
【0041】
ローラー55の直径及びローラー55の軸方向長さは、形成すべき樹脂シート41の押出速度、樹脂シート41の押出方向長さ、樹脂シート41の幅、樹脂の種類等に応じて適宜設定される。ただし、一対のローラー55の間に樹脂シート41を挟み込んだ状態で、ローラー55の回転により樹脂シート41を円滑に下方に送り出す観点から、回転駆動ローラーの直径を被回転駆動ローラーの直径よりも若干大きく設定することが好ましい。また、ローラー55の曲率が大きすぎる、あるいは、小さすぎると、樹脂シート41がローラー55に巻き付く不具合が生じるため、ローラー55の直径は、50〜300mmの範囲であることが好ましい。
【0042】
一方、型締装置43は、周知の型締装置であり、その詳しい説明は省略するが、金型駆動装置(図示省略)及び成形金型56を有する。成形金型56は、分割形式であり、第1分割型57Aと、この第1分割型57Aに合わさる第2分割型57Bとを備える。これら第1・第2分割型57A,57B(本発明にいう「一対の分割型」に相当)は、それぞれの成形面58A,58Bを対向させた状態で配置され、成形面58A,58Bが略鉛直方向に沿うように配置される。
【0043】
金型駆動装置は、溶融状態の樹脂シート41の供給方向に対して略直交する方向に第1・第2分割型57A,57Bを移動させる装置であり、第1・第2分割型57A,57Bを開位置と閉位置との間で移動させる。
【0044】
第1・第2分割型57A,57Bのそれぞれの成形面58A,58Bの周りには、第1環状ピンチオフ部61A,第2環状ピンチオフ部61Bが形成される。これら第1・第2環状ピンチオフ部61A,61Bは、成形面58A,58Bを囲うように環状に形成され、対向する第1・第2分割型57A,57Bに向けて突出する。これにより、第1・第2分割型57A,57Bを型締めする際、それぞれの第1・第2環状ピンチオフ部61A,61Bの先端部が当接し、樹脂シート41の周縁が薄肉状に潰される。
【0045】
第1分割型57Aの外周部には、型枠62が密接状態で摺動可能に嵌合される。型枠62は、型枠移動装置(図示省略)により、第1分割型57Aに対して相対的に移動可能である。より詳細には、型枠62は、第1分割型57Aから内向きに突出することにより、第1・第2分割型57A,57Bの間に配置された樹脂シート41の外表面63に当接可能である。
【0046】
第1・第2分割型57A,57Bは、それぞれ金型駆動装置により駆動され、開位置において、第1・第2分割型57A,57Bの間に樹脂シート41を配置させる一方、閉位置において、第1・第2分割型57A,57Bの第1・第2環状ピンチオフ部61A,61Bが互いに当接することにより、第1・第2分割型57A,57B内に密閉空間を形成する。
【0047】
また、第1分割型57Aには、真空吸引室65が設けられる。真空吸引室65は、吸引穴66を介して成形面58Aに連通しており、真空吸引室65から吸引穴66を介して吸引することにより、樹脂シート41を成形面58Aに吸着する。これにより、樹脂シート41を成形面58Aの表面に沿った形状に賦形する。
【0048】
(工程(1))
図4に示すように、工程(1)では、第1・第2分割型57A,57Bを含む成形装置40を準備する。この工程(1)は、本発明にいう「型準備工程」に相当する。
【0049】
(工程(2))
工程(2)では、溶融混練した熱可塑性樹脂をアキュムレーター48内に所定量貯留し、Tダイ52に設けられた所定間隔の押出スリット53から、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出す。これにより、熱可塑性樹脂は、スウェルして溶融状態のシート状に下方に垂下し、所定の厚みにて所定押出速度で押し出される。次いで、一対のローラー55を開位置に移動し、一対のローラー55の間隔を樹脂シート41の厚みより広げることにより、下方に押し出された溶融状態の樹脂シート41の最下部を一対のローラー55の間に、円滑に供給させる。なお、一対のローラー55の間隔を樹脂シート41の厚みより広げるタイミングは、押し出し開始後でなく、ワンショット毎に二次成形が終了した時点で行ってもよい。次いで、一対のローラー55同士を互いに近接させて閉位置に移動し、樹脂シート41を挟み込み、ローラー55の回転により樹脂シート41を下方に送り出す。
【0050】
さらに、押出方向に一様な厚みに形成された樹脂シート41を第1・第2分割型57A,57Bの間に配置する。このとき、第1環状ピンチオフ部61Aの周りからはみ出す形態で、樹脂シート41を位置決めする。なお、押出スリット53の間隔、あるいはローラー55の回転速度を調整することにより、樹脂シート41の厚みを調整することができる。
【0051】
(工程(3))
図5に示すように、工程(3)では、樹脂シート41の外表面63に当たるまで第1分割型57Aから型枠62を移動させる。すると、成形面58A、型枠62の内周面及び樹脂シート41の外表面63により囲われた密閉空間67が形成される。
【0052】
(工程(4))
図6に示すように、工程(4)では、真空吸引室65に通じる吸引穴66を介して、密閉空間67(
図5参照)を吸引する。すなわち、第1分割型57Aの型内より減圧することにより、樹脂シート41を成形面58Aに対して押し付けて、成形面58Aの表面に沿って樹脂シート41を所望の形状に形成する。これにより、表皮シート11が形成される。この際、凹状の成形面58Aの周面58A1によって、立壁13が形成される。
【0053】
(工程(5))
図7に示すように、工程(5)では、所定の材料で予め形成された樹脂製断熱材(この例では、樹脂シート41に溶着可能な発泡成形体)12を樹脂シート41の一面側に配置して押し付ける。この際、立壁13との間に隙間72を有するように樹脂製断熱材12を配置する。この隙間72は、隙間部15(
図2参照)に対応するものであり、工程(5)では、このような隙間72が得られる外寸L1(
図2参照)の樹脂製断熱材12を用いる。なお、この工程(5)及び前述した工程(4)は、本発明にいう「配置工程」に含まれる。
【0054】
樹脂製断熱材12を樹脂シート41の一面側に配置するための手段68には、例えば、周知の吸着式マニュピレータを用いることができる。すなわち、吸着式マニュピレータで樹脂製断熱材12を吸着保持しながら樹脂シート41の一面側に押し付けた後、吸着式マニュピレータを樹脂製断熱材12から取り外して第1・第2分割型57A,57Bの間から抜くようにする。
【0055】
(工程(6))
図8に示すように、工程(6)では、樹脂シート41に当接する型枠62をそのままの位置に保持した状態で樹脂シート41を吸引保持しつつ、それぞれの第1・第2環状ピンチオフ部61A,61B同士が当接するまで第1・第2分割型57A,57Bを互いに近づく向きに移動させ、第1・第2分割型57A,57Bを閉じる。すなわち、樹脂シート41の外側に配置される第1分割型57A及び樹脂製断熱材12の外側に配置される第2分割型57Bによって、樹脂シート41及び樹脂製断熱材12を挟み、樹脂シート41に対して樹脂製断熱材12を押圧させる。これにより、樹脂製断熱材12が樹脂シート41に溶着により完全に接合される。また、立壁13と樹脂製断熱材12の外周部12bとの間に隙間部15が形成された成形体71が得られる。
【0056】
なお、この場合、必ずしも上述した方法によって樹脂シート41と樹脂製断熱材12との接合を行わなくてもよい。たとえば、一方の分割型の成形面に樹脂シート41が押し付けられた状態で他方の分割型を宛がい、該他方の分割型に形成された樹脂抽出孔を通して前記成形面にたとえば発泡材を含む樹脂材を充填(配置)し、樹脂シート41に対して押圧させるようにしてもよい。充填される樹脂材は樹脂製断熱材12として形成されるようになる。この場合、樹脂シート41と樹脂製断熱材12はいわゆるアンカー効果による接着により完全に接合されるようになる。
【0057】
同時に、樹脂シート41の周縁(立壁13の先端)が第1・第2環状ピンチオフ部61A,61Bによって薄肉状に潰され、これにより、所望の外形形状の表皮シート11が形成される。なお、この工程(6)は本発明にいう「成形工程」に相当する。
【0058】
(工程(7))
図9に示すように、工程(7)では、第1・第2分割型57A,57Bを型開きして、成形体71を取り出し、第1・第2環状ピンチオフ部61A,61Bの外側のバリ部分73を切断する。これにより、樹脂製断熱材12の外周部12bと立壁13の間に隙間部15が形成された樹脂成形品10(
図2参照)が得られる。
【0059】
以上のように、溶融樹脂を間欠的に押し出すたびに、工程(1)〜工程(7)を繰り返すことにより、樹脂成形品10を次々に製造することが可能である。
【0060】
(樹脂成形品の製造方法の他の例)
前述した製造方法では、押し出された溶融状態の樹脂シート41の一面側に樹脂製断熱材12を配置し、樹脂シート41及び樹脂製断熱材12を第1・第2分割型57A,57Bで挟むようにして成形体71を得る例を示した。しかし、本発明の表皮付き樹脂成形品の製造方法は、押出成形や真空成形によるものに格別に限定されるものではない。例えば、所望の形状に予め形成された樹脂シートの一面側に樹脂製断熱材を配置し、これら樹脂シート及び樹脂製断熱材を加熱手段で加熱し、上下に分割可能な第1・第2分割型で挟むことにより、成形体を形成してもよい。
【0061】
(実施形態の効果)
以上、説明した実施形態の効果について述べる。
本実施形態では、樹脂製断熱材12の外周部12bと立壁13の間に隙間部15を形成したので、樹脂成形品10の製造時に表皮シート11が冷却されて収縮しても、無理な力が樹脂製断熱材12から表皮シート11に加わる心配がない。また、締結部である立壁13に隙間部15が隣接することで、雄ねじ部材23(
図3(a)参照)を回す工具のスペースが確保し易くなる。また、雌ねじ部材36(
図3(b)参照)などの各種の締結用部品を隙間部15に設けることもできる。したがって、樹脂成形品10の連結作業が行い易くなり、しかも、連結構造のコンパクト化を図ることもできる。
【0062】
以上、実施形態及び変形例を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またそのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。