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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-217709(P2015-217709A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】車両用ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/00 20060101AFI20151110BHJP
   B60T 13/14 20060101ALI20151110BHJP
【FI】
   B60T8/00 Z
   B60T13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-100645(P2014-100645)
(22)【出願日】2014年5月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 隆
(72)【発明者】
【氏名】石村 淳次
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB57
3D048CC08
3D048HH15
3D048HH16
3D048HH26
3D048HH31
3D048HH66
3D048HH68
3D048RR06
3D048RR17
3D048RR25
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA20
3D246GC14
3D246HA03A
3D246HA04A
3D246HA43A
3D246HA46A
3D246JA12
3D246JB03
3D246JB05
3D246JB32
3D246LA09Z
3D246LA36Z
3D246LA52Z
3D246LA56Z
(57)【要約】
【課題】アキュムレータの蓄圧に要するエネルギーロスを低減する。
【解決手段】アキュムレータ102に蓄圧するアキュムレータ圧を通常使用するW/C圧以上のM/C圧が発生させられるようにしつつ、W/C圧として要求される最大圧よりも小さなM/C圧が発生させられる程度にする。そして、アキュムレータ圧の加圧助勢によって発生させられるM/C圧では要求されるW/C圧を発生させられないときに、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50によってW/C圧を増加させる。これにより、アキュムレータ102の蓄圧に要するエネルギーロスを低減することが可能となり、省エネルギー効果を向上させられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバによって操作されるブレーキ操作部材(11)と、
ブレーキ操作部材の操作力を加圧補助するハイドロブースタ(12)と 、
前記ハイドロブースタによる加圧補助に基づいて、前記ブレーキ操作部材の操作力に応じたマスタシリンダ圧を発生させるマスタシリンダ(13)と、
前記マスタシリンダ圧に基づいて制動力を発生させるホイールシリンダ(14、15、34、35)と、
前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとを接続する主管路(A、E)と、前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダの間の差圧を制御する差圧制御弁(16、36)と、前記マスタシリンダよりブレーキ液を吸入して前記主管路における前記差圧制御弁よりも前記ホイールシリンダ側に吐出するポンプ(19、39)と、前記ポンプを駆動するモータ(60)と、を有し、前記ホイールシリンダに加えられるホイールシリンダ圧を制御するブレーキ液圧制御用アクチュエータ(50)と、
液圧ポンプ(101)を駆動することによってアキュムレータ(102)にアキュムレータ圧を蓄積し、前記ハイドロブースタによる加圧補助を行うために、前記ハイドロブースタに対して前記アキュムレータ圧を伝える補助加圧源(100)と、を備えたブレーキ装置であって、
前記アキュムレータ圧を検出する第1圧力検出手段(S100)と、
前記第1圧力検出手段で検出された前記アキュムレータ圧に基づいて、前記マスタシリンダ圧として発生させられる最大値となる最大マスタシリンダ圧を推定する圧力推定手段(S105)と、
前記マスタシリンダ圧を検出する第2圧力検出手段(S110)と、
前記第2圧力検出手段で検出された前記マスタシリンダ圧が前記圧力推定手段で推定された前記最大マスタシリンダ圧よりも小さな設定値になると、前記モータを回転開始させる第1モータ駆動手段(S125)と、
前記第2圧力検出手段で検出された前記マスタシリンダ圧が前記圧力推定手段で推定された前記最大マスタシリンダ圧に達すると、前記ブレーキ液圧制御用アクチュエータによって前記ホイールシリンダを加圧する加圧制御手段(S140)と、を備えていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記加圧制御手段は、前記第2圧力検出手段で検出された前記マスタシリンダ圧が前記圧力推定手段で推定された前記最大マスタシリンダ圧に達すると、前記差圧制御弁を差圧状態にすることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記ブレーキ操作部材の操作量に基づいて、前記加圧制御手段によって前記ホイールシリンダに発生させるホイールシリンダ圧の目標圧を設定する目標圧設定手段(S130)を有し、
前記加圧制御手段では、前記差圧制御弁で発生させる差圧を前記目標圧設定手段で設定された前記目標圧に基づいて設定することを特徴とする請求項2に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記目標圧設定手段は、前記ブレーキ操作部材の操作量として、該ブレーキ操作部材のストローク量、荷重もしくは前記マスタシリンダ圧のいずれか1つに基づいて前記目標圧を設定することを特徴とする請求項3に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項5】
前記第1圧力検出手段で検出された前記アキュムレータ圧が予め定められた設定範囲以内であるか否かを判定する判定手段(S145)と、
前記判定手段にて、前記アキュムレータ圧が前記設定範囲以内でなければ、前記モータを回転開始させる第2モータ駆動手段(S150)と、を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロブースタを有する車両用ブレーキ装置(以下、単にブレーキ装置という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に示されるように、ブレーキペダルの操作力の加圧補助を行うハイドロブースタを有するブレーキ装置がある。この種のブレーキ装置では、アキュムレータ(ACC)に所定圧力範囲のブレーキ液圧を蓄圧することで、ハイドロブースタに加えるブレーキ液圧を発生させる補助加圧源が備えられている。具体的には、ハイドロブースタを有するブレーキ装置には、補助加圧源として、アキュムレータに加えて圧力センサやモータおよびポンプが備えられる。そして、アキュムレータに蓄えられたブレーキ液圧(以下、アキュムレータ圧という)が所定圧力範囲となるように圧力センサにて圧力検出を行い、アキュムレータ圧が低いと、モータを駆動することでポンプによるブレーキ液の吸入吐出動作を行わせるようにしている。
【0003】
このようなハイドロブースタを有するブレーキ装置では、アキュムレータ圧を基に、マスタシリンダ(以下、M/Cという)に内蔵されたマスタピストンを押し込むことでマスタ圧を発生させている。そして、M/C圧をホイールシリンダ(以下、W/Cという)にW/C圧として伝えることで制動力を発生させている。このとき、アキュムレータ圧の蓄圧目標圧は、W/C圧として要求される最大圧を供給可能な値に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−023553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常時のW/C圧はW/C圧として要求される最大圧よりも低いため、アキュムレータに蓄圧されている目標値に対して通常時のW/C圧との差が大きく、アキュムレータの蓄圧に要するエネルギーロスが生じていた。
【0006】
すなわち、従来は、タイヤと路面との摩擦係数により発生するブレーキ力よりも大きな制動力を発生させることが可能なアキュムレータ圧を保証していた。具体的には、摩擦材とブレーキロータとの間の摩擦係数が低下したときにも、所望の制動力が発生させられるように、高いアキュムレータ圧を保証していた。摩擦材とブレーキロータとの間の摩擦係数が低下するのは、ハイドロプレーニング時や熱フェード時のような限られた条件である。上記のようなアキュムレータ圧の設定は、このような限られた条件下でのブレーキ保証のためであり、通常時の摩擦係数の際にそのアキュムレータ圧を用いて加圧助勢を行うことはない。このため、通常時にも常に高圧なアキュムレータ圧を蓄えておくことはエネルギーロスとなる。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、アキュムレータの蓄圧に要するエネルギーロスを低減することができるハイドロブースタを有するブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、アキュムレータ圧を検出する第1圧力検出手段(S100)と、第1圧力検出手段で検出されたアキュムレータ圧に基づいて、マスタシリンダ圧として発生させられる最大値となる最大マスタシリンダ圧を推定する圧力推定手段(S105)と、マスタシリンダ圧を検出する第2圧力検出手段(S110)と、第2圧力検出手段で検出されたマスタシリンダ圧が圧力推定手段で推定された最大マスタシリンダ圧よりも小さな設定値になると、モータを回転開始させる第1モータ駆動手段(S125)と、第2圧力検出手段で検出されたマスタシリンダ圧が圧力推定手段で推定された最大マスタシリンダ圧に達すると、ブレーキ液圧制御用アクチュエータによってホイールシリンダを加圧する加圧制御手段(S140)と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
このように、アキュムレータ圧の加圧助勢によって発生させられるM/C圧では要求されるW/C圧を発生させられないときに、ブレーキ液圧制御用アクチュエータによってW/C圧を増加させるようにしている。したがって、アキュムレータに蓄圧するアキュムレータ圧を通常使用するW/C圧以上のM/C圧が発生させられるようにしたとしても、W/C圧として要求される最大圧よりも小さなM/C圧が発生させられる程度にできる。これにより、アキュムレータの蓄圧に要するエネルギーロスを低減することが可能となり、省エネルギー効果を向上させられる。
【0010】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態にかかる車両用ブレーキ装置1の概略構成を示した図である。
図2】ブレーキECU70が実行するブレーキ制御のフローチャートである。
図3】本発明の第2実施形態で説明するブレーキECU70が実行するブレーキ制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。本発明の一実施形態にかかるブレーキ装置について説明する。まず、図1を参照して、本実施形態にかかるブレーキ装置の液圧回路の基本構成について説明する。ここでは前後配管の液圧回路を構成する車両に本発明にかかるブレーキ装置を適用した例について説明するが、X配管などの車両についても適用可能である。
【0014】
図1に示すように、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル11に対して後述する補助加圧源100からのブレーキ液圧が伝えられるハイドロブースタ12が接続されており、これらがブレーキ液圧の発生源となるM/C13に接続されている。こらの構成により、ブレーキペダル11が操作されると、ハイドロブースタ12にてブレーキペダル11の操作力が加圧補助され、ブレーキペダル11の操作力を超える大きなM/C圧が発生させられる。
【0015】
具体的には、ブレーキペダル11が踏み込まれると、ハイドロブースタ12による加圧補助が加わって、M/C13に配設された図示しないマスタピストンが押圧される。これにより、マスタピストンによって区画されるプライマリ室とセカンダリ室とに同圧のM/C圧が発生する。このM/C圧は、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50を通じて各W/C14、15、34、35に伝えられる。
【0016】
M/C13には、プライマリ室およびセカンダリ室それぞれと連通する通路を有するマスタリザーバ13aが備えられており、このマスタリザーバ13aから補助加圧源100へのブレーキ液供給が行われる。また、ハイドロブースタ12からは、余剰なブレーキ液がマスタリザーバ13aに返流されるようになっている。なお、ブレーキペダル11には、ストロークセンサ11aが備えられており、このストロークセンサ11aによってブレーキペダル11の操作量が検出できるようになっている。
【0017】
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50は、第1配管系統50aと第2配管系統50bとを有しており、図示しないアルミ製などのブロックに各種部品が組み付けられることで一体化された構成とされている。第1配管系統50aは、左後輪RLと右後輪RRに加えられるブレーキ液圧を制御するリア系統、第2配管系統50bは、左前輪FLと右前輪FRに加えられるブレーキ液圧を制御するフロント系統とされる。
【0018】
なお、各系統50a、50bの基本構成は同様であるため、以下では第1配管系統50aについて説明し、第2配管系統50bについては説明を省略する。
【0019】
第1配管系統50aは、上述したM/C圧を左後輪RLに備えられたW/C14および右後輪RRに備えられたW/C15に伝達し、W/C圧を発生させる主管路となる管路Aを備える。
【0020】
また、管路Aには、管路Aを連通状態と差圧状態に制御することで、上流側となるM/C13側の第1管路と下流側となるW/C14、15側の第2管路との間の差圧を制御する第1差圧制御弁16が備えられている。この第1差圧制御弁16は、ドライバがブレーキペダル11の操作を行う通常ブレーキ時(衝突回避制御や横滑り防止制御などの車両運動制御が実行されていない時)には連通状態となるように弁位置が調整されている。そして、第1差圧制御弁16に備えられるソレノイドコイルに電流が流されると、この電流値が大きいほど大きな差圧状態となるように弁位置が調整される。
【0021】
この第1差圧制御弁16が差圧状態のときには、W/C14、15側のブレーキ液圧がM/C圧よりも所定以上高くなった際にのみ、W/C14、15側からM/C13側へのブレーキ液の流動が許容される。このため、常時W/C14、15側がM/C13側よりも所定圧力以上高くならないように維持される。また、第1差圧制御弁16に対して並列に逆止弁16aが備えられている。
【0022】
管路Aは、この第1差圧制御弁16よりも下流になるW/C14、15側において、2つの管路A1、A2に分岐する。管路A1にはW/C14へのブレーキ液圧の増圧を制御する第1増圧制御弁17が備えられ、管路A2にはW/C15へのブレーキ液圧の増圧を制御する第2増圧制御弁18が備えられている。
【0023】
第1、第2増圧制御弁17、18は、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成されている。具体的には、第1、第2増圧制御弁17、18は、内蔵されたソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には連通状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に遮断状態に制御されるノーマルオープン型となっている。
【0024】
管路Aにおける第1、第2増圧制御弁17、18および各W/C14、15の間と調圧リザーバ20とを結ぶ減圧管路となる管路Bには、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成される第1減圧制御弁21と第2減圧制御弁22とがそれぞれ配設されている。これら第1、第2減圧制御弁21、22は、内蔵されたソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には遮断状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に連通状態に制御されるノーマルクローズ型となっている。
【0025】
調圧リザーバ20と主管路である管路Aとの間には還流管路となる管路Cが配設されている。この管路Cには調圧リザーバ20からM/C13側あるいはW/C14、15側に向けてブレーキ液を吸入吐出するモータ60によって駆動される自吸式のポンプ19が設けられている。ポンプ19は、例えばピストンポンプと比較して静寂性に優れたトロコイドポンプなどのギヤポンプによって構成されている。モータ60は図示しないモータリレーに対する通電が制御されることで駆動される。
【0026】
調圧リザーバ20とM/C13の間には補助管路となる管路Dが設けられている。この管路Dを通じ、ポンプ19にてM/C13からブレーキ液を吸入し、管路Cを経由して、管路Aに吐出することで、車両運動制御時において、W/C14、15側にブレーキ液を供給し、対象となる車輪のW/C圧を加圧する。
【0027】
さらに、管路Eには圧力センサ61が備えられており、M/C圧を検出できるようになっている。
【0028】
なお、ここでは第1配管系統50aについて説明したが、第2配管系統50bも同様の構成であり、第1配管系統50aに備えられた各構成と同様の構成を第2配管系統50bも備えている。具体的には、第1差圧制御弁16および逆止弁16aと対応する第2差圧制御弁36および逆止弁36a、第1、第2増圧制御弁17、18と対応する第3、第4増圧制御弁37、38、第1、第2減圧制御弁21、22と対応する第3、第4減圧制御弁41、42、ポンプ19と対応するポンプ39、リザーバ20と対応するリザーバ40、管路A〜Dと対応する管路E〜Hがある。ただし、各系統50a、50bがブレーキ液を供給するW/C14、15、34、35については、リア系統となる第1配管系統50aよりもフロント系統となる第2配管系統50bの方の容量に差があっても良い。このような構成とされる場合、フロント側においてより大きな制動力を発生させることができる。
【0029】
さらに、図1に示すように、本実施形態にかかるブレーキ装置の液圧回路には、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50に加えて補助加圧源100が備えられている。補助加圧源100には、液圧ポンプ101、アキュムレータ102、電動モータ103、圧力センサ104およびリリーフ弁105などが備えられている。
【0030】
液圧ポンプ101は、マスタリザーバ13aとハイドロブースタ12とを接続する管路Iに備えられ、電動モータ103によって駆動されるもので、マスタリザーバ13aのブレーキ液を吸入吐出する。この液圧ポンプ101が吐出したブレーキ液がアキュムレータ102に供給される。液圧ポンプ101は、例えば、トロコイドポンプなどのギヤポンプによって構成されている。
【0031】
アキュムレータ102も管路Iに備えられ、管路Iのうち液圧ポンプ101の吐出側に配設され、液圧ポンプ101によるブレーキ液の吐出に基づいてブレーキ液圧を蓄える。このアキュムレータ102で蓄圧されたブレーキ液圧がアキュムレータ圧に相当し、ブレーキペダル11の操作力を加圧補助するためのブレーキ液圧としてハイドロブースタ12に伝えられる。
【0032】
電動モータ103は、アキュムレータ圧が所定の下限値を下回ることに応答して駆動されることでアキュムレータ圧を上昇させ、アキュムレータ圧が所定の上限値を上回ることに応答して停止させられる。これにより、アキュムレータ圧を所定圧力範囲に維持している。
【0033】
圧力センサ104は、アキュムレータ圧を監視するためものであり、管路Iのうち液圧ポンプ101の吐出側に備えられる。この圧力センサ104で検出されたアキュムレータ圧が常に所定範囲内に保たれるように、圧力センサ104の検出信号に基づいて電動モータ103の駆動が行われている。
【0034】
リリーフ弁105は、管路Iのうち液圧ポンプ101の吸入側と吐出側との間を結ぶ管路Jに備えられている。このリリーフ弁105は、液圧ポンプ101の吐出側のブレーキ液圧と吸入側のブレーキ液圧の差圧が所定値となるまでは遮断状態を保持し、その所定値に達するとリリーフされることで、差圧が所定値を超えないようにする。これにより、アキュムレータ圧が高くなり過ぎないようにできる。
【0035】
以上のような構造によって、本実施形態にかかるブレーキ装置の液圧回路が構成されている。さらに、本実施形態にかかるブレーキ装置には、上記のように構成された液圧回路を制御するためのブレーキ制御用の電子制御装置(以下、ブレーキECUという)70が備えられている。ブレーキECU70は、圧力センサ61、104や図示しない車輪速度センサの検出信号などを入力し、これらに基づいて各種演算を行うと共に各種制御弁16〜18、21、22、36〜38、41、42の制御やモータ60の制御を行っている。これにより、M/C圧の加圧助勢を行ったり、各車輪FL〜RRのW/C14、15、34、35に発生させられるW/C圧の調整を行っている。
【0036】
以下、ブレーキECU70で実行される制御の詳細について説明する。なお、ブレーキECU70では、車輪速度センサの検出信号から得られる車輪速度やその車輪速度から得られる推定車体速度に基づいて、車両安定化のための各種車両運動制御(アンチロックブレーキ制御や横滑り防止制御など)を行っている。しかしながら、これらの制御については従来と同様であるため、ここでは本願の特徴となる制御についてのみ説明する。
【0037】
本実施形態にかかるブレーキ装置では、アキュムレータ102の蓄圧に要するエネルギーロスを低減するための制御を行っている。すなわち、アキュムレータ102に蓄圧させるアキュムレータ圧をW/C圧として必要とされる最大圧よりも低い値としておく。そして、そのアキュムレータ圧の加圧補助によって発生させられたM/C圧以上のW/C圧が必要となったときに、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50を作動させることでW/C14、15、34、35の加圧を行えるようにする。
【0038】
例えば、アキュムレータ102に蓄圧されているアキュムレータ圧を圧力センサ104で検出することでハイドロブースタ12による加圧補助力が最大となる値が判る。このため、その値から発生可能な最大M/C圧を算出し、圧力センサ61によるM/C圧の測定値、つまりそのときのW/C圧が最大M/C圧に近づいたとき、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50を制御してW/C14、15、34、35を加圧する。具体的には、第1、第2差圧制御弁16、36への差圧指示、つまり発生させる差圧に応じた大きさの電流を供給すると共に、モータ60を駆動してポンプ19、39を作動させ、ポンプ加圧によってW/C圧を増加させる。このようにすれば、W/C圧として最大M/C圧以上の液圧が必要になった場合でも、最大M/C圧以上の領域についてはポンプ加圧によってW/C圧を増加させられるようにできる。
【0039】
このときのモータ60の回転指示については、例えば通常使用するW/C圧(例えば0.3G)よりもM/C圧が高くなれば回転を開始させるようにしており、M/C圧が最大M/C圧に至る前にモータ60が回転させられている状況としている。このように、第1、第2差圧制御弁16、36への差圧指示前にモータ60への回転指示を行うようにしており、加圧の応答遅れを抑制できるようにしている。
【0040】
具体的には、ブレーキECU70は、図2に示すブレーキ制御時のフローチャートに基づく作動を行うことで、上記のような制御を行っている。なお、図2のフローチャートに示す各種処理は、ブレーキ操作時に所定の制御周期毎に実行される。
【0041】
まず、ステップ100では、アキュムレータ圧を測定する。すなわち、圧力センサ104の検出信号を入力し、この検出信号からアキュムレータ圧を測定する。続いて、ステップ105に進み、最大M/C圧を推定する。最大M/C圧は、そのときに発生させられているアキュムレータ圧を加圧補助として用いた場合に得られるM/C圧の最大圧であり、ハイドロブースタ12の仕様などによって決まる値であることから、ステップ100で測定したアキュムレータ圧から推定可能である。
【0042】
次に、ステップ110に進み、実際に発生しているM/C圧を測定する。すなわち、圧力センサ61の検出信号を入力し、この検出信号からM/C圧を測定する。また、ステップ115に進み、ブレーキ操作量を測定する。具体的には、ストロークセンサ11aの検出信号を入力し、ブレーキ操作量としてペダルストロークを測定する。
【0043】
そして、ステップ120に進んでM/C圧は予め定めておいた設定圧よりも高くなっているか否かを判定する。ここでいう設定圧は、モータ60の回転指示を行うM/C圧の閾値となる液圧であり、加圧の応答遅れを抑制できるように、最大M/C圧よりも小さな値に設定されている。ここで肯定判定された場合にはステップ125に進み、否定判定された場合にはブレーキ液圧制御用アクチュエータ50を用いたW/C14、15、34、35の加圧を行う必要がないことからステップ100に戻る。
【0044】
ステップ125では、モータ回転開始を指示する。すなわち、モータ60への通電を制御するモータリレーへの通電をオンさせ、モータ60への通電を行うことでモータ60を駆動する。
【0045】
その後、ステップ130に進み、ステップ115で測定したブレーキ操作量となるペダルストロークより、W/C圧の目標圧(以下、W/C目標圧という)を設定する。ペダルストロークに対するW/C目標圧の関係は、所望のブレーキ特性として予め定められているものであり、マップもしくは演算式として記憶してある。このため、ペダルストロークに対応するW/C目標圧をマップもしくは演算式より導出している。
【0046】
そして、ステップ135に進み、ステップ110で測定したM/C圧が最大M/C圧以上になったか否かを判定し、肯定判定されればステップ140に進んで第1、第2差圧制御弁16、36の差圧指示を出し、第1、第2差圧制御弁16、36によって差圧を発生させる。このとき、W/C目標圧からM/C圧(=最大M/C圧)を差し引いた分の差圧を発生させられるように、第1、第2差圧制御弁16、36への供給電流を制御している。これにより、モータ60の駆動に基づいてポンプ19、39から吐出させられたブレーキ液によってW/C圧がM/C圧よりも高められ、M/C圧が最大M/C圧に達していた場合でも、それ以上にW/C圧を発生させることが可能となる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、アキュムレータ102に蓄圧するアキュムレータ圧を通常使用するW/C圧以上のM/C圧が発生させられるようにしているものの、W/C圧として要求される最大圧よりも小さなM/C圧が発生させられる程度にしている。そして、アキュムレータ圧の加圧助勢によって発生させられるM/C圧では要求されるW/C圧を発生させられないときに、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50によってW/C圧を増加させるようにしている。したがって、アキュムレータ102の蓄圧に要するエネルギーロスを低減することが可能となり、省エネルギー効果を向上させられる。
【0048】
また、通常使用するW/C圧よりもM/C圧が高くなればモータ60の回転を開始させるようにしており、M/C圧が最大M/C圧に至る前にモータ60が回転させられている状況としている。これにより、第1、第2差圧制御弁16、36への差圧指示前にモータ60への回転指示を行うようことが可能となり、加圧の応答遅れを抑制できる。
【0049】
また、W/C圧を増加させる際に、通常使用するW/C圧よりも高い圧力程度でポンプ19、39を駆動することになり、使用頻度が高くなる。このため、本実施形態のように、ポンプ19、39を静寂性に優れたギヤポンプによって構成すると好ましい。
【0050】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してアキュムレータ102の蓄圧が不十分である場合に対応できるようにしたものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
上記したように、ブレーキ装置では、常にアキュムレータ圧を検出していることから、アキュムレータ102の蓄圧が不十分であることを検出することが可能となる。このため、アキュムレータ102の蓄圧が不十分である場合にも、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50側で加圧することで所望のW/C圧が発生させられるようにする。
【0052】
具体的には、ブレーキECU70は、図3に示すブレーキ制御時のフローチャートに基づく作動を行うことで、第1実施形態で説明した制御に加えて、アキュムレータ102の蓄圧が不十分である場合の制御も行っている。
【0053】
まず、ステップ100では、図2のステップ100と同様、アキュムレータ圧の測定を行う。そして、ステップ145に進み、ステップ100で測定したアキュムレータ圧が設定範囲以内であるか否かを判定する。ここでいう設定範囲とは、アキュムレータ圧として十分な圧力、すなわち通常使用されるW/C圧を発生させるために必要なM/C圧を発生させられる圧力以上であることを示している。アキュムレータ圧が設定範囲内であれば、通常使用されるW/C圧を発生可能であることから、ステップ105〜140において、第1実施形態と同様の制御を行う。そして、ステップ145で否定判定された場合、ステップ150以降の処理を行う。
【0054】
基本的には、ステップ150でモータ回転開始を指示し、ステップ155でM/C圧を測定し、ステップ160でブレーキ操作量を測定し、ステップ165でW/C目標圧を設定する。これら各処理については、上記したステップ125、115、130と同様に行っている。そして、ステップ170に進み、ステップ155で測定したM/C圧を基準とした差圧として第1、第2差圧制御弁16、36の差圧指示を出し、第1、第2差圧制御弁16、36によって差圧を発生させる。これにより、モータ60の駆動に基づいてポンプ19、39から吐出させられたブレーキ液によってW/C圧がM/C圧よりも高められる。したがって、アキュムレータ圧が不十分なため、不十分なM/C圧しか発生させられていない場合にも、それ以上にW/C圧を発生させることが可能となる。
【0055】
以上説明したように、アキュムレータ圧が不十分な場合には、M/C圧が設定圧よりも高いか否かにかかわらずモータ回転指示を出し、さらにM/C圧が最大M/C圧に達していなくても第1、第2差圧制御弁16、36によって差圧を発生させるようにしている。これにより、アキュムレータ102のフェイル時のように、アキュムレータ圧が不十分な状態であっても、所望のW/C圧を発生させることが可能となる。
【0056】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、ブレーキ操作量を表すものとしてペダルストロークを用いたが、ブレーキペダル11にかかる踏力やM/C圧を用いることもできる。また、上記実施形態では、液圧ポンプ19、39としてギヤポンプを例に挙げて説明したが、静寂性を考慮しなければ他のポンプ、例えばピストンポンプを用いても良い。
【0058】
なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。すなわち、ステップ100の処理を実行する部分が第1圧力検出手段、ステップ105の処理を実行する部分が圧力推定手段、ステップ110の処理を実行する部分が第2圧力検出手段、ステップ125の処理を実行する部分が第1モータ駆動手段に相当する。また、ステップ130の処理を実行する部分が目標圧設定手段、ステップ140の処理を実行する部分が加圧制御手段、ステップ150の処理を実行する部分が第2モータ駆動手段に相当する。
【符号の説明】
【0059】
1…車両用ブレーキ装置、11…ブレーキペダル、11a…ストロークセンサ、12…ハイドロブースタ、13…M/C、14、15、34、35…W/C、16、36…第1、第2差圧制御弁、19、39…ポンプ、50…ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、60…モータ、70…ブレーキECU、80…M/C圧センサ、100…補助加圧源
図1
図2
図3