【解決手段】第一の蓄電池1と、第二の蓄電池4と、第一の蓄電池及び第二の蓄電池の少なくともいずれかから負荷群24,25に電力を供給する電源冗長装置26とを備えた自動車用電源装置において、第一の蓄電池と第二の蓄電池のいずれか一方の蓄電池の短絡時に、該一方の蓄電池を他方の蓄電池との間に配設した接点8,11を開放する切り離し装置21,22を、電源冗長装置26と第一の蓄電池1及び第二の蓄電池4との間にそれぞれ介在させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された車両用電源装置では、キャパシタ自体が短絡状態となると、鉛蓄電池もキャパシタを介して地絡状態となるため、キャパシタ及び鉛蓄電池がともに失陥する可能性がある。
【0007】
キャパシタの短絡時に、鉛蓄電池からキャパシタに流れ込む電流を遮断するようにダイオードを接続すると、短絡状態となったキャパシタを鉛蓄電池から切り離すことができる。しかし、通常動作時にはキャパシタと負荷との間に介在されるダイオードの順方向電圧降下による電圧損失が発生するという問題点がある。
【0008】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は短絡状態となった蓄電池を他の蓄電池と切り離し、且つ通常動作時の電圧損失の発生を防止し得る自動車用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する自動車用電源装置は、第一の蓄電池と、第二の蓄電池と、前記第一の蓄電池及び第二の蓄電池の少なくともいずれかから負荷群に電力を供給する電源冗長装置とを備えた自動車用電源装置において、前記第一の蓄電池と第二の蓄電池のいずれか一方の蓄電池の短絡時に、該一方の蓄電池を他方の蓄電池との間に配設した接点を開放する切り離し装置を、前記電源冗長装置と前記第一の蓄電池及び第二の蓄電池との間にそれぞれ介在させたことを特徴とする。
【0010】
この構成により、一方の蓄電池が短絡状態となると、切り離し装置により接点が開放されて、一方の蓄電池と他方の蓄電池が電気的に切り離される。
また、上記自動車用電源装置では、前記切り離し装置は、前記一方の蓄電池の短絡時に、前記他方の蓄電池から一方の蓄電池に向かって流れる電流が励磁電流として流れるコイルと、前記励磁電流に基づいて開放されて、前記一方の蓄電池を他方の蓄電池から電気的に切り離す接点とを備えたリレーであることが好ましい。
【0011】
この構成により、一方の蓄電池の短絡時に、他方の蓄電池から一方の蓄電池に向かって流れる電流がコイルに励磁電流として流れ、その励磁電流に基づいて接点が開放されて、第一の蓄電池と第二の蓄電池が電気的に切り離される。
【0012】
また、上記自動車用電源装置では、前記リレーには、切り離し信号の入力に基づいて、前記コイルに励磁電流を流す強制切り離し装置を備えることが好ましい。
この構成により、強制切り離し装置からコイルに励磁電流が供給されると、第一の蓄電池と第二の蓄電池が電気的に切り離される。
【0013】
また、上記自動車用電源装置では、前記切り離し装置は、一方の蓄電池の短絡時に、該一方の蓄電池から供給される励磁電流が遮断されるコイルと、前記励磁電流の遮断に基づいて開放されて、前記一方の蓄電池を他方の蓄電池から電気的に切り離す接点とを備えたリレーであることが好ましい。
【0014】
この構成により、一方の蓄電池が短絡状態となると、該一方の蓄電池から供給される励磁電流が遮断されて接点が開放され、一方の蓄電池が他方の蓄電池から電気的に切り離される。
【0015】
また、上記自動車用電源装置では、前記切り離し装置を、前記第一及び第二の蓄電池と前記電源冗長装置との間に配設される接続箱に収容することが好ましい。
この構成により、接続箱内で接点が開放されると、一方の蓄電池と他方の蓄電池が電気的に切り離される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自動車用電源装置によれば、短絡状態となった蓄電池を他の蓄電池と切り離し、且つ通常動作時の電圧損失の発生を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施形態)
以下、自動車用電源装置の第一の実施形態を
図1に従って説明する。例えば鉛蓄電池で構成される第一の蓄電池1はヒューズ2を介して接続箱3に接続され、例えばキャパシタで構成される第二の蓄電池4はヒューズ5を介して接続箱6に接続されている。
【0019】
前記接続箱3内には、リレー7と多数のヒューズ15a〜15cが設けられ、リレー7の接点8が前記ヒューズ2とヒューズ15a〜15の一方の端子との間に介在されている。接点8とヒューズ15a〜15cはバスバーで接続されている。また、リレー7の接点8を電磁的に駆動するコイル9の一端は抵抗10を介して前記ヒューズ2に接続されている。
【0020】
前記接続箱6内には、リレー11と複数のヒューズ16a,16bが設けられ、リレー11の接点12が前記ヒューズ5とヒューズ16a,16bの一方の端子との間に介在されている。接点12とヒューズ16a,16bはバスバーで接続されている。また、リレー11の接点12を電磁的に駆動するコイル13の一端は抵抗14を介して前記ヒューズ5に接続されている。
【0021】
前記接続箱3内の接点8の前記ヒューズ15a〜15c側の端子は、ヒューズ17及びダイオード18を介して前記コイル13の他方の端子に接続されている。ダイオード18はコイル13側をカソードとして接続されている。
【0022】
同様に、前記接続箱6内の接点12の前記ヒューズ16a,16b側の端子は、ヒューズ19及びダイオード20を介して前記コイル9の他方の端子に接続されている。ダイオード20はコイル9側をカソードとして接続されている。
【0023】
前記リレー7,11は、コイル9,13に励磁電流が流れたとき接点8,12が開いて不導通状態となる常閉接点を備えている。そして、第一の蓄電池1が短絡状態となると、第二の蓄電池4からヒューズ5、接点12、ヒューズ19及びダイオード20を介してコイル9に励磁電流が流れて、接点8が開放されるようになっている。
【0024】
また、第二の蓄電池4が短絡状態となると、第一の蓄電池1からヒューズ2、接点8、ヒューズ17及びダイオード18を介してコイル13に励磁電流が流れて、接点12が開放されるようになっている。
【0025】
このような構成により、リレー7、抵抗10、ヒューズ19及びダイオード20は、第一の蓄電池1が短絡状態となったとき、第一の蓄電池1とヒューズ15a〜15cとの接続を遮断する切り離し装置21を構成している。
【0026】
同様に、前記接続箱6内のリレー11、抵抗14、ヒューズ17及びダイオード18は、第二の蓄電池4が短絡状態となったとき、第二の蓄電池4とヒューズ16a,16bとの接続を遮断する切り離し装置22を構成している。
【0027】
前記ヒューズ15aの他端にはオルタネータ23が接続されている。そして、第一の蓄電池1が正常に動作している状態で、オルタネータ23が作動すると、オルタネータ23の発電電力がヒューズ15a、接点8及びヒューズ2を介して第一の蓄電池1に供給され、第一の蓄電池1が充電される。
【0028】
同様に、第二の蓄電池4が正常に動作している状態で、オルタネータ23が作動すると、オルタネータ23の発電電力がヒューズ15a、ヒューズ15b、リレー26、ヒューズ16a、接点12及びヒューズ5を介して第二の蓄電池4に供給されて、第二の蓄電池4が充電される。
【0029】
前記接続箱3のヒューズ15bと、前記接続箱6のヒューズ16aとの間には、リレー26の接点が介在されている。リレー26は、第一の蓄電池1と第二の蓄電池4のいずれかが失陥したとき、あるいは第一の蓄電池1及び第二の蓄電池4の充電状態に応じて電源制御ECUにより接点が導通状態となるように制御される。
【0030】
前記接続箱3のヒューズ15cの他端には第一の負荷群24が接続され、前記接続箱6のヒューズ16bの他端には第二の負荷群25が接続されている。そして、第一の蓄電池1及び第二の蓄電池4がともに正常に動作していて、リレー26の接点が不導通状態であれば、第一の負荷群24には第一の蓄電池1から電力が供給され、第二の負荷群25には第二の蓄電池4から電力が供給される。
【0031】
一方、第一の蓄電池1が失陥して、リレー26の接点が導通状態となると、第一の負荷群24には第二の蓄電池4からヒューズ16a、リレー26の接点、ヒューズ15b,15cを介して電力が供給される。
【0032】
同様に、第二の蓄電池4が失陥して、リレー26の接点が導通状態となると、第二の負荷群25には第一の蓄電池1からヒューズ15b、リレー26の接点、ヒューズ16a,16bを介して電力が供給される。このような動作により、リレー26が電源冗長装置として動作する。
【0033】
次に、上記のように構成された電源装置の作用を説明する。
第一及び第二の蓄電池1,4が正常に動作していると、第一及び第二の蓄電池1,4の出力電圧はほぼ同電圧であるので、リレー7,11のコイル9,13には励磁電流は流れない。
【0034】
すると、リレー7,11の接点8,12は導通状態に維持され、第一の蓄電池1から第一の負荷群24に電力が供給され、第二の蓄電池4から第二の負荷群25に電力が供給される。
【0035】
このとき、リレー26の接点が導通状態であれば、第一の蓄電池1から第二の負荷群25にも電力が供給され、第二の蓄電池4から第一の負荷群24にも電力が供給される。
なお、第一の蓄電池1と第二の蓄電池4の出力電圧に僅かな電圧が生じていても、抵抗10,14によりコイル9,13に流れる電流が抑制されるため、接点8,12は導通状態に維持される。
【0036】
第一の蓄電池1が短絡状態となって失陥すると、電源制御ECUによりリレー26の接点は導通状態に維持されるとともに、第二の蓄電池4から接点12、ダイオード20を経てコイル9に励磁電流が流れ、接点8が不導通状態となる。
【0037】
すると、第二の蓄電池4からヒューズ16a、リレー26の接点、ヒューズ15b、接点8を介して第一の蓄電池1に流れる電流は遮断され、第一の蓄電池1が第二の蓄電池4から電気的に切り離される。
【0038】
この結果、第二の蓄電池4から第一の蓄電池1に流れる短絡電流は遮断され、第二の蓄電池4が保護される。また、第一の負荷群24及び第二の負荷群25には第二の蓄電池4から電力が供給される。
【0039】
一方、第二の蓄電池4が短絡状態となって失陥すると、電源制御ECUによりリレー26の接点は導通状態に維持されるとともに、第一の蓄電池1から接点8、ダイオード18を経てコイル13に励磁電流が流れ、接点12が不導通状態となる。
【0040】
すると、第一の蓄電池1からヒューズ15b、リレー26の接点、ヒューズ16a、接点12を介して第二の蓄電池4に流れる電流は遮断され、第二の蓄電池4が第一の蓄電池1から電気的に切り離される。
【0041】
この結果、第一の蓄電池1から第二の蓄電池4に流れる短絡電流は遮断され、第一の蓄電池1が保護される。また、第一の負荷群24及び第二の負荷群25には第一の蓄電池1から電力が供給される。
【0042】
上記のような電源装置では、次に示す効果を得ることができる。
(1)第一の蓄電池1と第二の蓄電池4のいずれかが短絡状態となって失陥したとき、失陥した蓄電池を正常に動作している蓄電池から電気的に切り離して、正常に動作している蓄電池から失陥した蓄電池に流れる短絡電流を遮断することができる。従って、正常に動作している蓄電池を保護することができる。
(2)第一の蓄電池1と第二の蓄電池4のいずれかが短絡状態となって失陥したとき、正常に動作している蓄電池から第一の負荷群24及び第二の負荷群25に電力を供給することができる。
(3)第一の蓄電池1及び第二の蓄電池4から第一の負荷群24及び第二の負荷群25へ電力を供給する経路上にダイオードが介在されない。従って、ダイオードによる損失の発生を防止することができる。
(4)常閉接点を備えたリレー7,11を使用して、第一の蓄電池1若しくは第二の蓄電池4が失陥した場合に限り、リレー7,11のコイル9,13に励磁電流を流すようにすることができる。従って、第一及び第二の蓄電池1,4が正常に動作しているときには、リレー7,11で電力を消費しないようにすることができる。
(第二の実施形態)
図2は、第二の実施形態を示す。この実施形態は、前記第一の実施形態の接続箱3,6内にそれぞれトランジスタ31,32と抵抗33,34を追加した構成である。その他の構成は第一の実施形態と同様であり、第一の実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0043】
トランジスタ31,32はNPNトランジスタで構成され、トランジスタ31のコレクタは前記コイル9とダイオード20との間に接続され、トランジスタ32のコレクタは前記コイル13とダイオード18との間に接続されている。
【0044】
トランジスタ31,32のベースは電源制御ECU35に接続され、エミッタはグランドGNDに接続されている。
このように構成された電源装置では、第一の蓄電池1と第二の蓄電池4が正常に動作している状態で、電源制御ECU35から出力される切り離し信号によりトランジスタ31,32のいずれか一方をオン動作させると、コイル9若しくはコイル13に励磁電流が流れて、接点8若しくは接点12が不導通状態となる。
【0045】
この結果、第一の蓄電池1及び第二の蓄電池4を強制的に切り離し、且つ一方の蓄電池から第一の負荷群24及び第二の負荷群25に電力を供給することが可能となる。
従って、この実施形態では、第一の実施形態で得られた効果に加えて、電源制御ECU35により、第一の蓄電池1及び第二の蓄電池4の失陥の有無に関わらず、リレー7,11を開閉制御することができる。
【0046】
このような構成により、リレー7,11を開閉制御することにより、第一の蓄電池1及び第二の蓄電池4の充電制御を行うことができる。
(第三の実施形態)
図3及び
図4は、第三の実施形態を示す。上記第一及び第二の実施形態では、第一の蓄電池1を第二の蓄電池4から切り離すリレー7のコイル9には、第二の蓄電池4から励磁電流を供給し、第二の蓄電池4を第一の蓄電池1から切り離すリレー11のコイル13には、第一の蓄電池1から励磁電流を供給する構成とした。
【0047】
この実施形態では、第一の蓄電池1を第二の蓄電池4から切り離す切り離し装置45を構成するリレー41のコイル42には、第一の蓄電池1から励磁電流を供給し、第二の蓄電池4を第一の蓄電池1から切り離すリレーのコイルには、第二の蓄電池4から励磁電流を供給する構成としたものである。
【0048】
図3及び
図4は、第一の蓄電池1に接続される接続箱3についてのみ示し、第一の実施形態と同一構成部分は同一符号を付して説明する。第二の蓄電池4に接続される接続箱6も同様な構成である。
【0049】
図3に示すように、接続箱3内のリレー41のコイル42は、その一端が抵抗10、ヒューズ43及びヒューズ2を介して第一の蓄電池1に接続され、コイル42の他端はグランドGNDに接続されている。その他の構成は、第一の実施形態と同様である。リレー41は、コイル42に励磁電流が流れたとき、接点44が導通状態となる常開接点構造である。
【0050】
このように構成された電源装置では、
図3に示すように、通常状態では第一の蓄電池1からリレー41のコイル42に励磁電流が供給され、接点44が導通状態に維持される。
また、第一の蓄電池1が短絡状態となって失陥すると、コイル42への励磁電流の供給が遮断される。すると、
図4に示すように、接点44が開放されて第一の蓄電池1が第二の蓄電池4から電気的に切り離される。
【0051】
従って、第二の蓄電池4から第一の蓄電池1への短絡電流の流入が阻止されるので、第二の蓄電池4を保護することができる。
第二の蓄電池4が短絡状態となった場合にも、同様な動作により第一の蓄電池1を保護することができる。
(第四の実施形態)
図5は、第四の実施形態を示す。この実施形態は、前記第三の実施形態と同様な構成の切り離し装置45とヒューズ15a〜15cを収容したヒュージブルリンク52とをワイヤーハーネス53で接続したものである。その他の構成は、第三の実施形態と同様である。
【0052】
このような構成により、第一の蓄電池1が短絡状態となったときには、第三の実施形態と同様に動作する。
また、ワイヤーハーネス53に地絡Sが発生したとき、ヒューズ2及びヒューズ15bが切断されるので、第一の蓄電池及び第二の蓄電池4を保護可能である。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・第一及び第二の実施形態で、接続箱3,6は共通の接続箱としてもよい。また、リレー26を接続箱内に収容してもよい。
・短絡状態となる蓄電池の出力電圧を検出して、該蓄電池を他の蓄電池から切り離すように動作する半導体接点を切り離し装置として使用してもよい。