特開2015-218034(P2015-218034A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デュプロの特許一覧

<>
  • 特開2015218034-給紙装置 図000003
  • 特開2015218034-給紙装置 図000004
  • 特開2015218034-給紙装置 図000005
  • 特開2015218034-給紙装置 図000006
  • 特開2015218034-給紙装置 図000007
  • 特開2015218034-給紙装置 図000008
  • 特開2015218034-給紙装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-218034(P2015-218034A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】給紙装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20151110BHJP
   B65H 3/52 20060101ALI20151110BHJP
【FI】
   B65H3/06 330Z
   B65H3/52 310F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-103178(P2014-103178)
(22)【出願日】2014年5月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000109727
【氏名又は名称】株式会社デュプロ
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】吉成 大
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA01
3F343FA14
3F343FB00
3F343FC01
3F343FC03
3F343FC30
3F343GA02
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JA19
3F343JA20
3F343JD04
3F343JD08
3F343JD33
3F343JD39
3F343KB04
3F343KB17
3F343LC05
3F343LC20
(57)【要約】
【課題】給送ローラの位置を調整するための面倒な操作をすることなく、1枚の用紙でも複数枚から成る用紙束でも良好に給送することができるようにする。
【解決手段】捌き部材3Aの幅方向の両側で、搬送される用紙束の下方にのみ給送ローラ9を配置し、かつ、給送ローラ9をその外周面の最上位が給紙ローラ5の外周面の最下位よりも低くなるように配置する。これにより、捌き部材3Aを給紙ローラ5に圧接する位置に調整することにより、用紙が給紙ローラ5と給送ローラ9とに挟まれることなく、捌き部材3Aと給紙ローラ5とにより用紙を1枚ずつ分離給送できるようにする一方で、捌き部材3Aを給紙ローラ5から離間した位置に調整することにより、捌き部材3Aと給紙ローラ5とにより分離給送された用紙束を給紙ローラ5と給送ローラ9とにより挟んで1部ずつスムーズに下流側へと搬送できるようにする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙または用紙束から成る被給送物を給送する方向に回転し、その外周面にて上記被給送物を給送する給紙ローラと、
上記給紙ローラの外周面に対向して配置され、上記給紙ローラの外周面との間で上記被給送物を捌く捌き部材と、
上記捌き部材の幅方向の両側かつ搬送される上記用紙束の下方に配置され、上記用紙束を給送する方向に回転し、上記用紙束の上方に配置された上記給紙ローラと共に上記用紙束を挟みつつ給送する給送ローラと、
上記給紙ローラの外周面に対して圧接する位置と離間する位置との間で上記捌き部材の位置を調整する捌き調整機構とを備え、
上記給送ローラは、その外周面の最上位が、上記給紙ローラの外周面の最下位よりも低くなるように設けられていることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
上記給送ローラは、上記捌き部材の幅方向の両側かつ搬送される上記用紙束の下方に配置された下送りローラのみから成ることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
上記給送ローラは、上記捌き部材の幅方向の両側かつ搬送される上記用紙束の下方に配置された下送りローラおよび上記用紙束の上方に配置された上送りローラから成り、
搬送される上記用紙束が捌かれる際に上記捌き部材から受ける摩擦力に比べて、上記用紙束が上記下送りローラおよび上記上送りローラに挟まれて搬送される際に受ける搬送力が小さくなるように、上記上送りローラが構成されていることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項4】
上記捌き調整機構は、上記給紙ローラの外周面に対して圧接する位置から、上記下送りローラの外周面の最上位よりも低い位置までの範囲で、上記捌き部材の位置を調整可能であることを特徴とする請求項2または3に記載の給紙装置。
【請求項5】
上記下送りローラを上方に向かって付勢する付勢手段と、
上記付勢手段により付勢された上記下送りローラを、その外周面の最上位が上記給紙ローラの外周面の最下位よりも低くなる上限位置で係止させる係止部材とを更に備えたことを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の給紙装置。
【請求項6】
上記下送りローラは、その外周面の最上位部の給送方向の位置が、上記給紙ローラの外周面の最下位部の給送方向の位置に対し、同一位置または下流側直近の位置となるように配置されていることを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載の給紙装置。
【請求項7】
上記給紙ローラと上記下送りローラは、共に同期しながら間欠的に駆動するように回転駆動力が付与されていることを特徴とする請求項2〜6の何れか1項に記載の給紙装置。
【請求項8】
上記下送りローラは、その外周面の最上位部の給送方向の位置が、上記給紙ローラの外周面の最下位部の給送方向の位置に対し、下流側直近の位置となるように配置されており、
上記給紙ローラと上記下送りローラは、共に同期しながら間欠的に駆動するように回転駆動力が付与されていることを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載の給紙装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給紙装置に関し、特に、給紙トレイ上に積載された用紙を1枚ずつ分離して給送したり、給紙トレイ上に積載された用紙束を1部ずつ分離して給送したりする機能を備えた給紙装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、新聞広告を配達単位の束にまとめるために、新聞広告丁合装置が利用されている。一般に、新聞広告丁合装置は、給紙トレイ上に積載された広告を1枚ずつ分離して給送する給紙装置を、用紙束搬送路に沿って縦方向に並べた状態で複数備えている。そして、各々の給紙装置から1枚ずつ給送された広告を搬送しながら重ね合わせることにより、広告束を形成する。さらに、用紙束搬送路の最下部に配置された2つ折り用給紙装置から給送された広告を2つ折りにして、その内側に上記広告束を挿入することにより、配達単位の広告束を形成する。
【0003】
新聞販売店に納品されてくる広告は、同じ種類ごとに束を形成している。そこで、種類の異なる各々の束をそれぞれの給紙装置に積載し、新聞広告丁合装置を上述のように動作させることによって配達単位の広告束を形成するという丁合作業が必要になる。ところで、新聞販売店に納品されてきた広告の種類の数が、新聞広告丁合装置が備える給紙装置の数を上回ることがある。その場合は、丁合作業を2回に分けて行う。
【0004】
1回目は、全種類のうち一部の種類の広告を、2つ折り用給紙装置を含む各給紙装置に積載して丁合を行い、広告束を形成する。2回目は、2つ折り用給紙装置を含む各給紙装置に残りの広告を積載するとともに、1回目で形成した広告束も給紙装置に積載する。その状態で2回目の丁合を行う。この場合、1回目で形成された広告束が1つの給紙装置から1部ずつ分離して給送され、その他の給紙装置から1枚ずつ給送されてきた広告と重ね合わされて、新たな2つ折り広告の内側に挿入される。これにより、配達単位の広告束が形成される。
【0005】
このように丁合作業を2回に分けて行えるようにするためには、新聞広告丁合装置が備える複数の給紙装置のうち、少なくとも一部の給紙装置については、1枚ものの広告の分離給送と、1回目の丁合で形成した広告束の分離給送との両方を行うことが可能に構成されていなければならない。従来、給紙トレイ上に積載された用紙を1枚ずつ分離して給送したり、給紙トレイ上に積載された用紙束を1部ずつ分離して給送したりする機能を備えた給紙装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0006】
特許文献1に記載の給紙装置は、給紙ローラと、この給紙ローラの外周面に下方から圧接する捌き板と、捌き板の両側に配置された給送ローラ対(上部送りローラおよび下部送りローラ)とを備えている。1回目の丁合で広告を1枚ずつ分離給送する場合は、捌き板を給紙ローラの周面に圧接させる。互いに圧接した状態となっている捌き板の面と給紙ローラの周面との間に2枚以上の広告が進入したときに、上から2枚目以下の広告と捌き板との摩擦力によって2枚目以下の給送が阻止され、最上位の1枚の広告だけが給送される。広告と捌き板との摩擦力が、広告どうしの摩擦力を上回るためである。
【0007】
広告を1枚ずつ分離給送するとき、上下の給送ローラ対は、互いに間隔を開いておく。給送ローラ対が互いに接触していると、捌き板と給紙ローラとの間に2枚以上の広告が進入したときに、それら2枚以上の広告が上下の給送ローラ対に挟まれて前進力が付与され、重送が発生してしまうからである。
【0008】
一方、2回目の丁合で広告束を1部ずつ分離給送する場合は、捌き板を給紙ローラの周面から離間させておく。離間させてできる隙間は、広告1束の厚さよりも若干狭い程度にする。これにより、捌き板により2束目以降の広告束の前進が阻止されて、1部の広告束のみが送り出される。
【0009】
また、広告束を1部ずつ分離給送するときは、上下の給送ローラ対を互いに接触させておく。これにより、捌き板と給紙ローラとにより分離された広告束は、上下の給送ローラ対に挟まれて、広告束の表面と裏面とに各々上下の給送ローラから前進力を付与されるので、2つ折りの広告に束が挿入された状態を保ったまま給送される。
【0010】
特許文献2に記載の給紙装置は、給紙ローラと、この給紙ローラの外周面に下方から圧接する捌き部材と、捌き部材の下流側に配置された給送ローラとを備えている。1回目の丁合で広告を1枚ずつ分離給送する場合、捌き部材は、給紙ローラの周面に対して圧接した状態とする。また、給送ローラは、給紙ローラの周面に対して圧接した状態とする。これにより、捌き部材によって上から2枚目以下の給送が阻止されて、最上位の1枚の広告だけが送り出される。そして、送り出された広告が給紙ローラと給送ローラとの間に挟まれてさらに給送される。
【0011】
一方、広告束を1部ずつ分離して給送する場合、捌き部材は、給紙ローラの周面から離間した状態とする。また、給送ローラは、給紙ローラの周面から離間した状態とする。これにより、給紙ローラと給送ローラとの間の離間した空間に広告束が送り込まれたとき、捌き部材により2束目以降の広告束の前進が阻止されて、1部の広告束のみが送り出される。そして、給紙ローラと給送ローラとが広告束を給送する方向に回転することにより、広告束が給紙ローラと給送ローラとの間に挟まれてさらに給送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−289535号公報
【特許文献2】特開2014−19501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1に記載の給紙装置と、上記特許文献2に記載の給紙装置との大きな違いの1つは、特許文献1の給紙装置では、捌き板の両側に給送ローラ対が配置されているのに対し、特許文献2の給紙装置では、捌き部材の下流側に給送ローラが配置されている点である。特許文献1では、給送ローラ対が捌き板の両側に配置されているため、捌き板により2束目以降の広告束の前進が阻止された後、送り出された1部の広告束が直ちに給送ローラ対に上下から挟まれて給送される。したがって、分離後の最上位の1束がなおも捌き板に引っかかることにより、折り用紙の先端に折ずれが発生してしまうことを防ぐことができるというメリットを有する。
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の給紙装置では、捌き板の位置を調整するための操作(1枚ものを分離給送する場合は、捌き板を給紙ローラに圧接させる一方、束ものを分離給送する場合は、束の厚さに応じた隙間が空くように捌き板を給紙ローラから離間させる操作)に加えて、給送ローラ対の間隔を調整するための操作(1枚ものを分離給紙する場合は給送ローラ対を離間させる一方、束ものを分離給送する場合は給送ローラ対を接触させるという切り替え操作)を行う必要がある。そのため、使い方に応じて給送ローラ対の面倒な切り替え作業が生じるという問題があった。
【0015】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、捌き板の位置を調整するための操作とは別に給送ローラ対の間隔を調整するための面倒な切り替え操作をすることなく、1枚の用紙でも複数枚から成る用紙束でも、折りずれがない状態で良好に給送することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した課題を解決するために、本発明では、搬送される用紙束の上方に配置された給紙ローラと共に用紙束を挟みつつ給送する給送ローラを、用紙を捌く捌き部材の幅方向の両側、かつ、搬送される用紙束の下方に配置する。ここで、給送ローラは、その外周面の最上位が、給紙ローラの外周面の最下位よりも低くなるように配置する。また、給紙ローラの外周面に対して圧接する位置と離間する位置との間で捌き部材の位置を調整する捌き調整機構を設けている。
【発明の効果】
【0017】
上記のように構成した本発明によれば、捌き部材を給紙ローラの外周面に対して圧接する位置に調整することにより、給紙ローラと捌き部材とにより用紙を1枚ずつ分離給送することができる。このとき、給送ローラの外周面の最上位は、給紙ローラの外周面の最下位(捌き部材が圧接する位置)よりも低くなるため、捌き部材で捌かれている1枚の用紙は、給送ローラの上から離間しているか、あるいは軽く載置されている程度となるので、給送ローラの影響をほとんど受けることがない。つまり、用紙がその上方にある給紙ローラと下方にある給送ローラとに挟まれた状態で前進搬送力を受けることがない。これにより、給紙ローラと捌き部材とにより用紙をスムーズに1枚ずつ分離給送することができる。
【0018】
一方、捌き部材を給紙ローラの外周面から離間した位置(例えば、用紙束の厚さよりも若干狭いくらい離間した位置)に調整することにより、給紙ローラと捌き部材とにより用紙束を1部ずつ分離給送することができる。このとき、分離給送された用紙束は、その上側の面が給紙ローラに、下側の面が給送ローラに接触する。これにより、用紙束は、自身の厚みと腰によって、給紙ローラおよび給送ローラの双方から搬送作用を受ける。このため、先端の折ずれを起こすことなく、用紙束を1部ずつスムーズに下流側へと搬送することができる。
【0019】
以上のように、本発明によれば、捌き部材の位置を調整するための操作とは別に給送ローラの位置を調整するための面倒な切り替え操作をすることなく、1枚の用紙でも複数枚から成る用紙束でも、折りずれがない状態で良好に分離給送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態による給紙装置の要部構成例を示す上面図である。
図2】本実施形態による給紙装置の要部構成例を示す側面図である。
図3】本実施形態による捌き部材と給紙ローラと給送ローラとの位置関係を示す模式図である。
図4】本実施形態による捌き調整機構の構成例を示す図である。
図5】本実施形態による給紙装置の変形例を示す図である。
図6】本実施形態による給紙装置の変形例を示す図である。
図7】本実施形態による給紙装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の給紙装置は、用紙の一例として広告を1枚ずつ分離給送したり、用紙束の一例として広告束を1部ずつ分離給送したりすることが可能になされたものである。また、本実施形態の給紙装置は、広告を1枚ずつ分離給送する際に使用する捌き部材として材質の異なるものを複数備え、何れかの捌き部材を選択的に使用することができるようになされている。
【0022】
図1は、本実施形態による給紙装置の要部構成例を示す上面図である。また、図2は、本実施形態による給紙装置の要部構成例を示す側面図である。図2(a)は広告を1枚ずつ分離給送する第1の状態を示し、図2(b)は広告束を1部ずつ分離給送する第2の状態を示している。なお、図1および図2の何れにおいても、本実施形態において主要な構成を分かりやすく示すために、本実施形態の説明に不要な構成については図示を省略している。
【0023】
図1および図2に示すように、給紙トレイ1は、その先端部が下方に位置するように傾斜して配置され、この上に用紙または用紙束(本実施形態では、広告または広告束)が載置されるようになっている。1回目の丁合の際には、複数枚の広告が重ねられた状態で給紙トレイ1に載置される。2回目の丁合の際には、複数部の広告束が重ねられた状態で給紙トレイ1に載置される。
【0024】
この給紙トレイ1の用紙搬送方向下流側には、搬送板2が給紙トレイ1の延長上に位置するように配設されている。また、搬送板2の下流側には、捌き部材3Aが給紙ローラ5の周面に対向して配置されている。給紙ローラ5は、広告または広告束(以下、これらをまとめて被給送物という)を給送する方向に回転し、その外周面にて被給送物を給送する。
【0025】
捌き部材3Aは、広告を1枚ずつ分離して給送する第1の状態(図2(a)の状態)において、給紙ローラ5の外周面と圧接して広告を1枚ずつ捌く。また、捌き部材3Aは、広告束を1部ずつ分離して給送する第2の状態(図2(b)の状態)において、給紙ローラ5の外周面と離間する位置にあって広告束を1部ずつ捌く。
【0026】
本実施形態では、2つの捌き部材3A,3Bを備えており、何れかを選択的に給紙ローラ5に対向させて被給送物の分離給送に使用することができるように構成している。すなわち、2つの捌き部材3A,3Bは、用紙搬送面と略直交する回転軸を中心に回転可能とされた支持台(図示せず)上に、当該回転軸の周りに環状に配置されている。そして、図1に示す操作レバー31の操作を通じて支持台を回転させることによって、給紙ローラ5の周面に対向させて配置する捌き部材3A,3Bを切り替えることができるようにしている。なお、図1および図2は、捌き部材3Aが選択された状態を示している。
【0027】
図2に示すように、捌き部材3A,3Bの上には、金属製のガイド板10が被せられており(図1では図示省略)、このガイド板10の上を被給送物が搬送される。このガイド板10は、磨耗した捌き部材3A,3Bの交換等のために、図示しないガイド軸を中心として回動可能に構成されている。被給送物を給送するときは、捌き部材3A,3Bの上にガイド板10が被せられる。このとき、選択された捌き部材3Aは、用紙搬送方向下流側半分を除く一部分がガイド板10によって覆われ、用紙搬送方向下流側半分はガイド板10から露出している。被給送物は、搬送板2とガイド板10に案内されて、選択された捌き部材3Aと給紙ローラ5との間に進入する。捌き部材3Aは、その露出部分によって被給送物を捌くように作用する。
【0028】
捌き部材3Aの上方には、給紙ローラ5が配置されている。また、給紙ローラ5の用紙搬送方向上流側には、補助給紙ローラ6が配置されている。給紙ローラ5と補助給紙ローラ6との間には歯付ベルト7が架けられており、モータ(図示せず)によって駆動される給紙ローラ5の駆動力が補助給紙ローラ6に伝えられるようになっている。補助給紙ローラ6は、給紙ローラ5と共に回転し、給紙トレイ1に載置された最上位の被給送物を給紙ローラ5と捌き部材3Aとの間に送り込む。
【0029】
本実施形態では、給紙ローラ5は、図2(a)に示す第1の状態において、捌き部材3Aと共に広告を1枚ずつ分離して給送する際に使用するローラとして機能する。また、給紙ローラ5は、図2(b)に示す第2の状態において、捌き部材3Aと共に広告束を1部ずつ分離するとともに、分離された広告束を給送ローラ9と共に挟んで下流側へと搬送する上側ローラとして機能する。
【0030】
給送ローラ9は、選択された捌き部材3Aの幅方向の両側かつ搬送される被給送物の下方に配置されている。本実施形態では、給送ローラ9は、搬送される被給送物の下方に配置された下送りローラのみから成り、搬送される被給送物の上方に、下送りローラと対を成す上送りローラは設けていない。この給送ローラ9は、広告束を1部ずつ分離して給送する第2の状態(図2(b)の状態)において、広告束を給送する方向に回転し、搬送される広告束の上方に配置された給紙ローラ5と共に広告束を挟みつつ給送する。
【0031】
本実施形態では、第2の状態において、搬送される広告束の上側から真ん中の給紙ローラ5が、下側から両側の給送ローラ9が用紙束を挟んで給送する。すなわち、幅方向の同じ位置に上下一対に設けられたローラ対によって広告束を挟む構成にはなっていない。そこで、給紙ローラ5の両側にある給送ローラ9は、給紙ローラ5からあまり遠く離れた位置に配置するのではなく、比較的近い位置に配置するのが好ましい(例えば、給紙ローラ5の両端面から、給送ローラ9の給紙ローラ5側の面までの距離が、10〜50mm程度)。このようにすれば、給紙ローラ5と給送ローラ9とによる広告束の挟持力が大きくなり、より確実な前進搬送力を得ることができる。
【0032】
また、両側の給送ローラ9は、真ん中の給紙ローラ5から互いに等距離だけ離して配置するのが好ましい。このようにすれば、左右両側において等しい前進搬送力を得ることができるので、広告束をまっすぐに搬送することができる。
【0033】
図2(b)に示す第2の状態において、給紙ローラ5と給送ローラ9とによって広告束を挟んで下流側へと搬送するため、給紙ローラ5と給送ローラ9は、共に同期しながら間欠的に駆動し、周速度が同一となるように回転駆動力が付与されている。間欠的に駆動するのは、一定の時間間隔を開けて被給送物を順次送り出すためである。本実施形態では、給紙ローラ5と給送ローラ9とを同期して駆動するために、1つのモータ(図示せず)から共通に動力源を得るようにしている。
【0034】
すなわち、図1に示すように、図示しないモータに接続されたシャフト15を通じて給紙ローラ5に回転駆動力を付与するとともに、数個のシャフト16a,16b,16c、歯付プーリ17a,17c、ギヤ17bおよび歯付きベルト18a,18bを通じて給送ローラ9にも同じモータから回転駆動力を付与するようにしている。ここで、歯付プーリ17a,17c、ギヤ17bの歯数比を適切に調整することにより、径の異なる給紙ローラ5と給送ローラ9との周速度が同じとなるようにすることが可能である。
【0035】
図3は、捌き部材3Aと給紙ローラ5と給送ローラ9との位置関係を示す模式図である。図3(a)は広告を1枚ずつ分離給送する第1の状態を示し、図3(b)は広告束を1部ずつ分離給送する第2の状態を示している。図3に示すように、給送ローラ9は、その外周面の最上位が、給紙ローラ5の外周面の最下位よりも所定のギャップ幅G1(例えば、0.2mm〜1mm程度)だけ低くなるように設けられている。
【0036】
具体的には、図2に示すように、給送ローラ9は、付勢手段の一例であるバネ11によって上方(給紙ローラ5の方向)に向かって付勢されており、当該バネ11により付勢された給送ローラ9が係止部材12によって係止されるようになっている。係止部材12は、給送ローラ9の外周面の最上位が給紙ローラ5の外周面の最下位よりも低くなる上限位置に設けられている。つまり、図3に示す給送ローラ9の位置は、給送ローラ9の外周面の最上位が給紙ローラ5の外周面の最下位よりも低くなる上限位置で係止部材12により係止された状態の位置に相当する。
【0037】
本実施形態では、捌き部材3Aの位置(高さ)を調整する捌き調整機構を備えている。この捌き調整機構によって、図2(a)および図3(a)に示すように捌き部材3Aが給紙ローラ5の外周面に対して圧接する位置と、図2(b)および図3(b)に示すように捌き部材3Aが給紙ローラ5から離間する位置との間で捌き部材3Aの位置を調整することが可能となっている。具体的には、捌き調整機構は、図3(a)のように捌き部材3Aが給紙ローラ5の外周面に対して圧接する位置から、図3(b)のように給送ローラ9の外周面の最上位(係止部材12により係止されているときにおける給送ローラ9の最上位位置)よりも低い位置までの範囲で、捌き部材3Aの位置を調整することが可能である。
【0038】
図3(a)のように、捌き部材3Aを給紙ローラ5の外周面に対して圧接する位置に調整することにより、捌き部材3Aと給紙ローラ5とにより広告を1枚ずつ分離給送することができる。このとき、給送ローラ9の外周面の最上位は、給紙ローラ5の外周面の最下位(捌き部材3Aが圧接する位置)よりも低くなるため、捌き部材3Aで捌かれている1枚の広告は、給送ローラ9の上から離間しているか、あるいは軽く載置されている程度となるので、給送ローラ9の影響をほとんど受けることがない。つまり、1枚の広告がその上方にある給紙ローラ5と下方にある給送ローラ9とに挟まれた状態で前進搬送力を受けることがない。これにより、捌き部材3Aと給紙ローラ5とにより広告をスムーズに1枚ずつ分離給送することができる。
【0039】
一方、図3(b)に示すように、捌き部材3Aを給送ローラ9の外周面の最上位よりも低い位置(例えば、給紙ローラ5の外周面に対して広告束の厚さよりも若干狭いくらい離間した位置)に調整することにより、捌き部材3Aと給紙ローラ5とにより広告束を1部ずつ分離給送することができる。このとき、分離給送された広告束は、その上側の面が給紙ローラ5に、下側の面が給送ローラ9に接触する。これにより、広告束は、自身の厚みと腰によって、給紙ローラ5および給送ローラ9の双方から搬送作用を受けるため、先端の折ずれを起こすことなく1部ずつスムーズに下流側へと搬送することができる。
【0040】
このように、広告束の分離給送をスムーズに行わせるために、給紙ローラ5の外周面の最下位と給送ローラ9の外周面の最上位とのギャップ幅G1は、広告束1つの厚みよりも薄くなるように設定するのが好ましい。このようにすれば、図3(b)の位置に捌き部材3Aを調整したときに、捌き部材3Aよりも給送ローラ9の最上位の方が位置が高くなり、捌き部材3Aによる分離給送後に広告束を給紙ローラ5と給送ローラ9とで挟み搬送することができる。厚めの広告束を分離給送する場合であっても、バネ11が縮んで給送ローラ9が下側へ押し下げられるので、広告束をスムーズに通すことができる。
【0041】
また、本実施形態では、図3に示すように、給送ローラ9は、その外周面の最上位部の給送方向の位置が、給紙ローラ5の外周面の最下位部(捌き部材3Aとの接触点)の給送方向の位置に対し、同一位置または下流側直近の位置となるように配置されている。図3の例では、給送ローラ9の最上位部の位置が給紙ローラ5の最下位部の位置よりわずかなギャップG2だけ下流側となるようにしている。このようにすれば、捌き部材3Aによる広告束の分離直後に給紙ローラ5と給送ローラ9とにより広告束を確実に挟んで前進させることができるので、より確実な前進搬送力を得ることができ、かつ、広告束の先端に折ずれが生じることを防ぐこともできる。
【0042】
特に、下流側直近の位置に給送ローラ9を設けた場合には、捌き部材3Aによって分離されていない2束目以下の広告束を前進させてしまうという不具合を、より確実に防ぐことができる。もし、2束目以下の広告束が給紙ローラ5と捌き部材3Aとの間に比較的深く送り込まれた位置で停止したとしても、それより下流側にある給送ローラ9の手前で2束目以下の広告束の先端が止まるため、給送ローラ9によってその広告束が送り出されることがないからである。この場合、給送ローラ9については必ずしも間欠的に駆動する必要はなく、連続的に駆動することも可能である。ただし、分離されていない2束目以下の広告束の前進をより確実に防ぐために、給送ローラ9も給紙ローラ5とともに間欠的に駆動するのが好ましい。
【0043】
図4は、捌き調整機構の構成例を示す図である。なお、図4(a)は広告を1枚ずつ分離給送する第1の状態を示し、図4(b)は広告束を1部ずつ分離給送する第2の状態を示している。本実施形態の捌き調整機構は、図1に示した調節つまみ21、リングギヤ22およびリンク機構23と、図4に示した傾斜板24および球25とを備えて構成されている。
【0044】
図1に示すように、リンク機構23の図示右側端部にはラックが形成されていて、このラックにリングギヤ22が噛み合っている。ユーザが調節つまみ21を回すとリングギヤ22が回転し、リンク機構23が左右に動くことになる。リンク機構23の先には、図4に示す傾斜板24が接続されており、傾斜板24はリンク機構23と共に左右に動くようになっている。
【0045】
図4に示すように、傾斜板24の上方には球25が配置されており、当該球25は支持台4に固定されている。そのため、傾斜板24が左右に動くと、傾斜板24の傾斜に合わせて球25が上下に動き、それによって支持台4およびその上に配置されている捌き部材3A,3Bが上下に移動する。
【0046】
これにより、図4(a)のように傾斜板24が右方向に動くと、捌き部材3Aが上方向に移動し、給紙ローラ5の周面に対して圧接する(図2(a)および図3(a)に示す第1の状態)。一方、図4(b)に示すように傾斜板24が左方向に動くと、捌き部材3Aが下方向に移動し、給紙ローラ5の周面から離間する(図2(b)および図3(b)に示す第2の状態)。
【0047】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、搬送される用紙束の上方に配置された給紙ローラ5と共に用紙束を挟みつつ給送する給送ローラ9を、捌き部材3Aの幅方向の両側、かつ、搬送される用紙束の下方に配置している。ここで、給送ローラ9は、その外周面の最上位が、給紙ローラ5の外周面の最下位よりも低くなるように配置する。また、給紙ローラ5の外周面に対して圧接する位置と離間する位置との間で捌き部材3Aの位置を調整できるようにしている。
【0048】
このように構成した本実施形態によれば、捌き部材3Aを給紙ローラ5の外周面に対して圧接する位置に調整することにより、捌き部材3Aと給紙ローラ5とにより用紙を1枚ずつ分離給送することができる。このとき、給送ローラ9の外周面の最上位は、給紙ローラ5の外周面の最下位よりも低くなるため、用紙が給紙ローラ5と給送ローラ9とに挟まれた状態で前進搬送力を受けることがない。これにより、捌き部材3Aと給紙ローラ5とにより用紙をスムーズに1枚ずつ分離給送することができる。
【0049】
一方、捌き部材3Aを給紙ローラ5の外周面に対して離間した位置に調整することにより、捌き部材3Aと給紙ローラ5とにより用紙束を1部ずつ分離給送することができる。このとき、分離給送された用紙束は、自身の厚みと腰によって、給紙ローラ5および給送ローラ9の双方から搬送作用を受ける。このため、先端の折ずれを起こすことなく、広告束を1部ずつスムーズに下流側へと搬送することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、捌き部材3Aの位置を調整するための操作とは別に給送ローラ9の位置を調整するための面倒な切り替え操作をすることなく、1枚の広告でも複数枚から成る広告束でも、折りずれがない状態で良好に分離給送することができる。
【0051】
なお、上記実施形態において、給送ローラ9の更に両外側に、給紙ローラ5と同軸に支持された給紙ローラを設けるようにしてもよい。図5は、その場合の構成例を示す図である。なお、図5では、搬送される被給送物の下側に配置される構成については図示を省略し、被給送物の上側に配置される構成のみを簡略的に示している。
【0052】
図5に示す例では、給送ローラ9の更に両外側に、給紙ローラ5と同じシャフト15に支持された2つの給紙ローラ51を設けている。また、これら2つの給紙ローラ51の用紙搬送方向上流側には、当該給紙ローラ51との間に歯付ベルト71が架けられた2つの補助給紙ローラ61が配置されている。このように構成することにより、広告束を分離給送する第2の状態において、搬送される広告束の上側から真ん中の給紙ローラ5と両端と給紙ローラ51が、下側から2つの給送ローラ9が広告束を挟んで給送することになる。これにより、広告束の幅方向の広い範囲で大きな挟持力を得ることができ、広告束をより安定した状態で確実に搬送することができる。
【0053】
また、図6に示すように、選択された捌き部材3Aの下流側で、給紙ローラ5(図6では不図示)と幅方向の同一位置に、給紙ローラ5との間で被給送物を挟んで送り出す第2の給送ローラ91(下送りローラ)を更に設けてもよい。図6の例では、シャフト16aから駆動力を分岐させるために歯付プーリ17d、歯付きベルト18c、ギヤ17eおよびシャフト16d,16eを設け、給送ローラ9を支持するシャフト16cよりも下流側に配置したシャフト16eによって給送ローラ91を支持している。このようにすれば、捌き部材3Aで分離された被給送物の下流側における搬送力を向上させることができる。
【0054】
また、上記実施形態では、給送ローラ9が、搬送される被給送物の下方に配置された下送りローラのみから成る構成例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、捌き部材3Aの幅方向の両側かつ搬送される広告束の下方に配置された下送りローラ9と、当該下送りローラ9と幅方向の同一位置で、搬送される広告束の上方に配置された上送りローラ92とにより給送ローラを構成するようにしてもよい。
【0055】
ただし、この場合、搬送される広告束が捌かれる際に捌き部材3Aから受ける摩擦力に比べて、広告束が下送りローラ9および上送りローラ92に挟まれて搬送される際に受ける搬送力が小さくなるように、上送りローラ92を構成する。例えば、下送りローラ9よりも軟質な材料(スポンジなど)により上送りローラ92を構成する。または、下送りローラ9に比べて摩擦係数が低く滑りやすい材料により上送りローラ92を構成したり、当該材料により上送りローラ92の表面をコーティングしたりしてもよい。例えば、テフロン(登録商標)またはフッ素樹脂によるコーティングなどを行うことが可能である。
【0056】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 給紙トレイ
2 搬送板
3A,3B 捌き部材
4 支持台
5,51 給紙ローラ
9,91 給送ローラ(下送りローラ)
92 給送ローラ(上送りローラ)
11 バネ(付勢手段)
12 係止部材
21 調整つまみ
22 リングギヤ
23 リンク機構
24 傾斜板
25 球
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7