(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-218162(P2015-218162A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】抗菌・防腐剤および外用組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 65/06 20090101AFI20151110BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20151110BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20151110BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20151110BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20151110BHJP
A01N 55/02 20060101ALI20151110BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20151110BHJP
A01N 59/20 20060101ALI20151110BHJP
A01N 35/06 20060101ALI20151110BHJP
【FI】
A01N65/06
A61K8/92
A61K8/19
A61Q19/00
A61Q5/00
A01N55/02 A
A01P3/00
A01N59/20 Z
A01N35/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-114379(P2014-114379)
(22)【出願日】2014年5月14日
(71)【出願人】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 悦子
(72)【発明者】
【氏名】中橋 浩
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 弘之
【テーマコード(参考)】
4C083
4H011
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AC301
4C083AC471
4C083BB48
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC31
4H011AA02
4H011BA01
4H011BA06
4H011BB05
4H011BB16
4H011BB18
4H011BB22
4H011BC06
4H011DA12
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】 低濃度で且つ即効性に優れ、特に水系での有用である、抗菌・防腐剤および、それを用いた外用組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の抗菌・防腐剤は、ヒバ油と銅化合物との混合物を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒバ油と銅化合物との混合物を含有することを特徴とする防腐剤。
【請求項2】
前記銅化合物は、孔雀石抽出物またはグルコン酸銅であることを特徴とする請求項1に記載の防腐剤。
【請求項3】
ヒバ油に含まれているヒノキチオールと、銅化合物における銅とのモル比が、1:0.8〜1:1.2であることを特徴とする請求項1または2に記載の防腐剤。
【請求項4】
界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防腐剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の防腐剤を含むことを特徴とする外用組成物。
【請求項6】
前記ヒバ油に含まれているヒノキチオールは、外用組成物において0.005重量%未満であることを特徴とする請求項5に記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒバ油と銅化合物との混合物を含有する抗菌・防腐剤および外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒノキチオールは医薬や化粧品の防腐剤として用いられている。また、ヒノキチオールと銅化合物との混合物、反応物についても同様に防腐剤として用いられることが知られている。たとえば、特許文献1、2には、銅化合物とヒノキチオールとを含有する組成物の抗微生物効果、殺菌効果が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−138155号公報
【特許文献2】特開2002−47123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載のヒノキチオール/銅化合物では、抗菌・防腐力が十分でなく、より少量で即効性を有する抗菌・防腐剤が望まれている。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、ヒバ油と銅化合物とを含有する抗菌・防腐剤およびそれを用いた外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ヒバ油と、銅化合物との混合させることにより、抗菌・防腐性が向上し、低濃度で効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の抗菌・防腐剤は、ヒバ油および銅化合物を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の抗菌・防腐剤は、低濃度で且つ即効性に優れるため、この抗菌・防腐剤を含有する組成物において優れた抗菌・防腐効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
本発明の抗菌・防腐剤は、ヒバ油と銅化合物との混合物を含有することを特徴としている。
上記ヒバ油と銅化合物との混合物は、驚くべきことに、低濃度においても良好な抗菌・防腐性を有し、特にカンジダ アルビカンスに対して低濃度においても特異的に抗菌・防腐性を有する。
【0010】
本発明で用いられるヒバ油は、タイワンヒノキや青森ヒバから抽出された精油であり、ヒノキチオールと、それ以外の天然成分を含む混合物である。
【0011】
上記銅化合物としては、特に限定がなく従来公知のものを広く使用できるが、例えば塩化銅(I)、酢酸銅(II)、塩化アンモニウム銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、臭化銅(I)−硫化ジメチル錯体、炭酸銅(II)、クエン酸銅(II)、シアン化銅(I)、4−シクロヘキシル酪酸銅、塩化二アンモニウム銅(II)、二燐酸銅(II)、弗化銅(II)、蟻酸銅(II)、グルコン酸銅(II)、水酸化銅(II)、沃化銅(I)、ナフテン酸銅、硝酸銅(II)、オレイン酸銅(II)、蓚酸銅(II)、酸化銅(II)、燐酸銅(II)、フタル酸銅(II)、塩化カリウム銅(II)、ロダン化銅(I)、硫酸銅(II)、硫化銅(II)、チオシアン酸銅(I)、ウスニン酸銅(II)、アデノシン三リン酸銅、アセチルメチオニン銅、アスパラギン酸銅、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、ピロリドンカルボン酸銅、ヒノキチオール銅、ニコチン酸銅化合物、ニコチン酸アミド銅化合物、ピコリン酸銅化合物、ピコリン酸アミド銅化合物、青銅、孔雀石、孔雀石抽出物、ならびにアミノ酸、ペプチドから選ばれる化合物の銅塩、銅錯体および銅複合体等を挙げることができる。アミノ酸、ペプチドから選ばれる化合物の銅塩、銅錯体及び銅複合体としては、たとえば、アスパラギン酸、アセチルメチオニン銅、トリペプチド−1銅、酢酸ビス(トリペプチド−1)銅、塩基性炭酸銅、(銀/銅)ゼオライト、(銅クロロフィリンNa/亜硫酸水素Na)複合物、PCA銅メチルシラノール、アセチルチロシネートメチルシラノール銅、サッカロミセス/銅培養物、EDTA−2Na/銅等が挙げられる。本発明では、これら銅化合物を1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。上記銅化合物の中でも、孔雀石抽出物、グルコン酸銅が好ましいものとして挙げられる。
【0012】
上記ヒバ油と銅化合物との混合物においては、ヒバ油に含まれるヒノキチオールと銅とのモル比が1:0.8〜1:1.2であることが好ましい。この範囲では、ヒバ油に含まれるヒノキチオールと銅とが塩や錯体を形成しやすくなる。
外用組成物に上記ヒバ油と銅化合物との混合物を添加する場合には、防腐力を十分発揮させるために、ヒノキチオールの割合が、0.00001〜0.01重量%であることが好ましく、0.0001〜0.005重量%であることがより好ましい。
【0013】
上記ヒバ油と銅化合物との混合物を、水性組成物に配合する際には、界面活性剤で可溶化させて使用することが好ましい。上記界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤又は陽イオン界面活性剤を挙げることできる。中でも、非イオン界面活性剤が好ましく、可溶化の観点から特にショ糖脂肪酸エステルが好ましい。
上記ショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、炭素数8〜22の飽和、不飽和のいずれの脂肪酸でも良く、直鎖状、分岐状のいずれでも良く、また、これらの混合物でも良い。これらの脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などが挙げられる。
上記界面活性剤のHLBは、可溶化の観点から16以上であることが好ましい。また、エステル化度は特に限定されず、数種類のエステル化度の混合物でも良い。
本発明で使用される界面活性剤中でも特に好ましいものとしては、ショ糖ラウリン酸エステルが挙げられる。
【0014】
本発明の防腐剤および外用組成物に使用される溶剤としては、水、エタノール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン、カルビトール、ヘキシレングリコール、PEG、イソプロパノール等が挙げられる。
また、本発明の外用組成物におけるpHは、3〜9が好ましい。このpHの調整は、従来公知の方法にて、塩酸、クエン酸等の酸や、水酸化ナトリウム、アルギニン等の塩基により調整すればよい。さらに、安定性の観点から、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液等の緩衝液にてpHを一定に保つことが好ましい。
【0015】
本発明の防腐剤は、通常外用剤や化粧料に用いられる原料、例えば香料、色素、界面活性剤、油分、保湿剤、アルコール類、増粘剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、着色防止剤、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、栄養剤、抗炎症剤、血管拡張剤、ホルモン剤、収斂剤、抗ヒスタミン剤、皮脂抑制剤、角質剥離・溶解剤、抗脂漏剤、鎮痒剤などの薬剤を配合してもよい。これにより、化粧料や外用医薬として好適に使用できる。つまり、本発明の防腐剤は、他の化粧品や原料等に添加して使用される。
本発明の外用組成物は、そのままで、化粧料や外用医薬として使用できる。また、化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、ヘアトニック等に適用される。
【実施例】
【0017】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0018】
<抗菌・防腐剤の調製>
下記表1の組成に基づき、抗菌・防腐剤A〜Fを調製した。
【表1】
【0019】
<実施例、比較例>
上記抗菌・防腐剤A〜Fを用い、下記表2の組成に基づき、実施例および比較例に係る組成物を得た。これらの実施例、比較例の組成物を検体として、ハロー試験を実施した。ハロー試験は、50μLの検体を浸み込ませて室温で乾燥させた8mmの円形のろ紙を、菌濃度を10
6個/mL〜10
7個/mLに調製した試験菌液と十分混釈し凝固させた寒天培地上に置き、35℃〜37℃で36時間培養後に、ハローを測定した。菌としては、黄色ブドウ球菌(SCD寒天培地)、カンジダ アルビカンス(GP寒天培地)のそれぞれで行った。
その結果を測定方法は表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
驚くべきことに、ヒバ油と銅化合物との混合系においてのみ、上記低濃度にて、カンジダ アルビカンスに対してもハローが観察された。つまり、このヒバ油と銅化合物との混合系では、低濃度で抗菌・防腐力が高いことが明らかとなった。
【0022】
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の抗菌・防腐剤および外用組成物は、ヒバ油と銅化合物との混合物を含んでおり、少量にて抗菌・防腐効果を有するため、汎用性に富む。したがって、化粧品、医薬品等の種々の製品に適用することができる。