【解決手段】D体含有量が2モル%以下のポリ乳酸樹脂(A)を主成分とし、下記(1)〜(3)の条件を同時に満たすことを特徴とする射出発泡用ポリ乳酸系樹脂組成物。(1)190℃で測定した溶融張力が20〜200mN。(2)190℃、21.6N条件下で測定される溶融粘度(MFR−1)が0.1〜20g/10分であり、190℃、132.25N条件下で測定される溶融粘度(MFR−2)との比(MFR−2/MFR−1)が15以上。(3)融点より10℃高い温度での伸長粘度測定で得られる時間−伸長粘度曲線において、屈曲点が現れるまでの伸長初期の線形領域の傾きa1と屈曲点以降の伸長後期の傾きa2との比(a2/a1、歪み硬化係数)が、1.2〜20。
D体含有量が2モル%以下のポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、結晶核剤(B)が、0.5〜50質量部含有されており、結晶核剤(B)がタルク、シリカ、層状ケイ酸塩、ガラス繊維、有機結晶核剤から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1または2に記載の射出発泡用ポリ乳酸系樹脂組成物。
請求項1〜3のいずれかに記載の射出発泡用ポリ乳酸系樹脂組成物100質量部に対して、発泡剤(C)を0.01〜2質量部含有させた後、射出成形を行うことを特徴とする射出発泡成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、ポリ乳酸樹脂(A)について説明する。ポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が2.0モル%以下であることが必要である。中でも、1.5モル%以下であることが好ましく、さらには、1.0モル%以下であることが好ましく、0.6モル%以下であることが最も好ましい。
【0011】
D体含有量がこの範囲内であることにより、結晶性に優れる。つまり、結晶化速度が速く成形性に優れるだけでなく、結晶化が十分に進行しやすいものであるため、耐熱性に優れた成形体を得ることが可能となるものである。
【0012】
D体含有量がこの範囲外であるポリ乳酸樹脂であると、後述するように、ポリ乳酸樹脂に架橋構造を導入したり、結晶核剤(B)を含有させても、結晶性、耐熱性ともに十分に向上させることが困難となる。
【0013】
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(モル%)である。したがって、例えば、D体含有量が1.0モル%のポリ乳酸樹脂(A)の場合、このポリ乳酸樹脂(A)は、D乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
【0014】
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量は、実施例にて後述するように、ポリ乳酸樹脂(A)を分解して得られるL乳酸とD乳酸を全てメチルエステル化し、L乳酸のメチルエステルとD乳酸のメチルエステルとをガスクロマトグラフィー分析機で分析する方法により算出するものである。
【0015】
本発明に用いるポリ乳酸樹脂(A)としては、市販の各種ポリ乳酸樹脂のうち、D体含有量が本発明で規定する範囲のポリ乳酸樹脂を用いることができる。また、乳酸の環状2量体であるラクチドのうち、D体含有量が十分に低いL-ラクチド、または、L体含有量が十分に低いD-ラクチドを原料に用い、公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造したものを用いることができる。
【0016】
本発明に用いるポリ乳酸樹脂(A)は、重量平均分子量が5万〜30万のものであることが好ましく、中でも7万〜20万のものであることが好ましく、さらには8万〜15万のものであることが好ましい。重量平均分子量が5万未満のポリ乳酸樹脂を用いた場合には、得られる成形体の機械的強度が不十分なものとなりやすい。一方、重量平均分子量が30万を超える場合、粘度が高すぎるため、射出発泡成形時の流動性が悪くなるなど加工性に劣る。また、所望の粘度特性を持つ樹脂組成物を作製することが困難となる場合がある。
【0017】
本発明においては、後述するように、ポリ乳酸樹脂(A)は発泡性能を向上させるために、架橋構造が導入されていることが好ましい。架橋構造を導入し、溶融粘度の調整を行いやすくするためには、ポリ乳酸樹脂(A)は、重量平均分子量が前記範囲内のものとすることが好ましく、中でも7万〜20万のものであることが好ましく、さらには8万〜15万のものであることが好ましい。
【0018】
ポリ乳酸樹脂(A)に架橋構造を導入する方法としては、架橋剤と架橋助剤として過酸化物を配合する手法を採用することが好ましい。中でも架橋剤として(メタ)アクリル酸エステル化合物を用いることが好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、ポリ乳酸樹脂との反応性が高く、モノマーが残りにくく、毒性が比較的少なく、樹脂の着色も少ないことから、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するか、又は1個以上の(メタ)アクリル基と1個以上のグリシジル基もしくはビニル基を有する化合物が好ましい。具体的な化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、またこれらのアルキレングリコール部が様々な長さのアルキレンの共重合体でもよく、さらにブタンジオールメタクリレート、ブタンジオールアクリレート等が挙げられる。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル化合物の配合量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して0.01〜20質量部であることが好ましく、中でも好ましくは0.05〜10質量部である。0.01質量部未満では目的とする溶融粘度改良効果を得ることが困難となり、一方、20質量部を超える場合には架橋の度合いが強くなりすぎて、操業性に支障が出るため好ましくない。
【0021】
架橋助剤としては、分散性が良好な有機過酸化物が好ましく、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ) シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ) バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ) ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ) ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ) ヘキシン、ブチルパーオキシクメン、トリエチル−トリメチル−トリパーオキソナン等が挙げられる。中でも、ジブチルパーオキサイドあるいはトリエチル−トリメチル−トリパーオキソナンから選ばれることが特に好ましい。架橋助剤の配合量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、目的とする溶融粘度改良効果を得ることが困難となり、一方、5質量部を超えると架橋の度合いが強すぎて、操業性に支障が出るために好ましくない。
【0022】
そして、本発明の射出発泡用ポリ乳酸系樹脂組成物(以下、単にポリ乳酸系樹脂組成物と略することがある)は、下記(1)〜(3)の条件を同時に満たすものである。これによって、発泡倍率が高く、かつ気泡径が均一な良好な発泡体を得ることが可能となるものである。
【0023】
まず、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、(1)の特性値として、190℃で測定した溶融張力の値が20〜200mNであり、中でも40〜170mNであることが好ましく、60〜150mNであることがさらに好ましい。溶融張力が20mN未満の場合、射出発泡成形した場合に樹脂が切れたり、破れたりするため、気泡径の大きい発泡成形体となる。
一方、溶融張力が200mNを超える場合、射出発泡成形した場合、樹脂が伸びないために気泡が成長せず、得られる成形体は発泡倍率が低いものとなる。また、成形流動性が著しく低下する場合がある。
【0024】
本発明における溶融張力は以下のようにして測定するものである。東洋精機製作所製のキャピログラフ1C(シリンダーの内径9.55mm、オリフィスの内径1.0mm、長さ10.0mm)を用いて測定する。まず、シリンダーおよびオリフィスの設定温度を190℃とし、該シリンダー中にポリ乳酸系樹脂組成物(測定試料)を充填し、5分間放置してから、ピストン速度を10mm/分として190℃の溶融樹脂をオリフィスからストランド状に押出する。このストランドを、下方の直径40mmの張力検出用プーリーの円形ガイドを通過させながら巻き取り、この円形ガイドにかかる荷重を張力計で検出する。巻き取り速度を徐々に増加させていき、ストランドが破断したときの張力(すなわち測定可能な最大の張力)を溶融張力とする。
【0025】
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、(2)の特性値を満足するものである。つまり、190℃、21.6N条件下で測定される溶融粘度(MFR−1)が0.1〜20g/10分であることが必要であり、中でも0.2〜18g/10分であることが好ましく、さらには、0.5〜15g/10分であることが好ましい。MFR−1が20g/10分を超えると、十分な粘性を有していないため、射出発泡成形時に破泡が生じやすく、独立気泡が十分に形成されず、得られる発泡成形体は、曲げ強度などの機械的強度に劣るものとなる。一方、MFR−1が0.1g/10分未満であると、粘性が高くなりすぎることから流動性が悪くなり、射出発泡成形時に金型への流れが悪く、効率よく射出発泡成形体を得ることができない。また、粘性が高いことから十分に発泡することができず、比重の小さい発泡成形体を得ることが困難となる。
【0026】
そして、190℃、132.25N条件下で測定される溶融粘度(MFR−2)と、MFR−1との比(MFR−2/MFR−1)が15以上であり、中でも17以上であることが好ましく、さらには20以上であることが好ましい。
なお、MFR−1、MFR−2ともに、JIS K−7210に従って測定するものである。
【0027】
MFR−2/MFR−1の値は、樹脂組成物の分子量分布、直鎖分岐の目安でもあり、MFR−2/MFR−1の値が高いほど、分子量分布が広く、また直鎖分岐が高くなり、良好でかつ安定に高発泡倍率の発泡体を得ることができる。MFR−2/MFR−1の値が15未満では、得られる発泡体の発泡倍率が低いものとなりやすい。MFR−2/MFR−1の値の上限は、破泡が生じることなく良好な発泡体とするためには、40程度とすることが好ましい。
【0028】
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、(3)の特性値を満足するものである。すなわち、樹脂組成物の融点より10℃高い温度での伸張粘度測定で得られる時間−伸張粘度の対数プロット(
図1参照)において、屈曲点があらわれるまでの伸張初期の線形領域の傾きa1と屈曲点以降の伸張後期の傾きa2との比(a2/a1)であらわされる歪み硬化係数が、1.2〜20であり、中でも1.3〜15であることが好ましく、1.5〜10であることがさらに好ましい。
【0029】
歪み硬化係数が1.2未満であると、射出発泡成形時に破泡を起こしやすくなるために、発泡倍率が制限されたり、破泡することで優れた物性の発現ができなくなる。一方、歪み硬化係数が20を超えると、成形時にゲルが発生しやすく、得られる成形体の外観が悪くなり、また、流動性も大きく低下するため、操業性にも劣る。
【0030】
そして、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、結晶化速度指数が0.1〜10(分)であることが好ましい。本発明における結晶化速度指数とは、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、DSC装置「DSC7」)を用い、20℃→200℃(+500℃/分)で昇温後、200℃で5分間保持し、200℃→130℃(−500℃/分)で降温後、130℃で保持し結晶化させた時に、最終的に到達する結晶化度を1としたとき、結晶化度が0.5に達した時間を結晶化速度指数(分)とする。指数が小さいほど結晶化速度が速いことを意味するものである。
【0031】
結晶化速度指数が10(分)よりも高いと、通常の射出発泡方法では十分に結晶化し、機械強度や耐熱性に優れた発泡成形体を得ることが困難となる。一方、結晶化速度指数が0.1(分)よりも小さいと、結晶化速度が速すぎるため、十分に発泡させて比重の小さい発泡成形体を得ることが困難となりやすい。結晶化速度指数は、中でも0.1〜8(分)であることが好ましく、さらには0.1〜6(分)であることが好ましい。
【0032】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中には、上記のような特性値を適宜調整するために、以下のような結晶核剤(B)を用いることができる。本発明における結晶核剤(B)として、有機結晶核剤、無機結晶核剤のいずれも用いることができる。
【0033】
無機結晶核剤としては、タルク、酸化スズ、スメクタイト、ベントナイト、ドロマイト、セリサイト、長石粉、カオリン、マイカ、モンモリロナイト等が挙げられる。これらの中でも、結晶化速度向上、耐熱性などの観点からタルクが好ましい。
【0034】
有機結晶核剤として用いることができる具体的な化合物としては、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。これらの中でも結晶化速度の観点から、有機スルホン酸塩と有機アミド化合物が好ましい。
【0035】
有機スルホン酸塩としては、スルホイソフタル酸塩など、種々のものを用いることができるが、中でも、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩が、結晶化促進効果の点から好ましい。さらに、バリウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、ナトリウム塩などが好ましい。市販されているものとしては、例えば、竹本油脂社製のLAK403などが挙げられる。
【0036】
有機アミド化合物としては、種々の物を用いることができるが、中でも樹脂中への分散性および耐熱性の面から、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミドが好ましい。市販されているものとしては、例えば、伊藤製油社製のA−S−AT−530SFなどが挙げられる。
【0037】
結晶核剤(B)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜50質量部とすることが好ましく、中でも0.5〜40質量部とすることが好ましく、中でも0.5〜30質量部とすることが好ましい。結晶核剤(B)含有量が0.1質量部未満の場合、結晶核剤としての効果が少なく、特に結晶化速度指数を低くすることが困難となりやすい。一方、50質量部を超える場合、結晶核剤としての効果が飽和し、経済的に不利であるだけでなく、生分解後の残渣分が増大するため、環境面でも好ましくない。さらに、樹脂組成物のみかけ密度が大きくなる場合があり、得られる発泡成形体は発泡倍率が低いもの(みかけ密度が大きいもの)となる。
【0038】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中には、湿熱耐久性を格段に向上させるため、カルボジイミド化合物が含有されていることが好ましい。
【0039】
カルボジイミド化合物としては、種々のものを用いることができる。具体的な化合物として、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−トリルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド,N,N′−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミドなどが挙げられる
【0040】
そして、これらの化合物のうち市販されているものとしては、例えば、松本油脂社製EN-160、ラインケミー社製スタバックゾールIなどの同一分子内に1個のカルボジイミド基を有するモノカルボジイミドや、松本油脂社製EN-180、ラインケミー社製スタバックゾールP、日清紡績株式会社製カルボジライトLA−1などの同一分子内に2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミドが挙げられる。
【0041】
中でも、モノカルボジイミドは、ポリ乳酸樹脂の湿熱耐久性の向上効果が高く、特にN,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドを用いることが好ましい。このようなモノカルボジイミドで市販されているものとしては、松本油脂社製EN160やラインケミー社製スタバックゾールIなどが挙げられる。
【0042】
カルボジイミド化合物の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。中でも0.3〜8.0質量部であることが好ましく、0.5〜5.0質量%であることがより好ましい。カルボジイミド化合物の含有量が0.1質量部未満では、前記のような湿熱耐久性の向上効果を得ることが困難となる。一方、カルボジイミド化合物の含有量が10質量部を超えると、効果が飽和するだけでなく、強度低下などの他の物性に悪影響を及ぼす。
【0043】
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中には、効果を損なわない範囲であれば、樹脂成分として、ポリ乳酸樹脂(A)以外の他の樹脂を含有していてもよい。例えば、ポリアミド、ポリオレフィン ポリエステル、ポリスチレン、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0044】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、有機充填材、顔料、耐候剤、難燃剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
【0045】
可塑剤としては、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、燐酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびエポキシ系可塑剤等を用いることができる。
【0046】
熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物、ビタミンEが挙げられる。
有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ、ケナフ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品などが挙げられる。
【0047】
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤が使用できるが、環境を配慮した場合、非ハロゲン系難燃剤の使用が望ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)、N含有化合物(メラミン系、グアニジン系)、無機系化合物(硼酸塩、Mo化合物)が挙げられる。
滑剤としては、各種カルボン酸系化合物を用いることができ、中でも、各種脂肪酸金属塩、特に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが好ましい。
離型剤としては、各種カルボン酸系化合物、中でも、各種脂肪酸エステル、各種脂肪酸アミドなどが、好適に用いられる。
【0048】
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、押出機中に樹脂組成物を構成するそれぞれの成分を供給し、溶融混練することにより得ることができる。ただし、架橋剤や架橋助剤、必要に応じて用いる結晶核剤(B)や添加剤(カルボジイミド化合物など)は、ポリ乳酸樹脂(A)中に含有されていることが好ましいため、これらの剤をポリ乳酸樹脂(A)の重合時に添加する方法、これらの剤を予めポリ乳酸樹脂(A)に添加して溶融混練する方法等を採用することが好ましい。
【0049】
なお、ポリ乳酸樹脂(A)の重合時に添加する方法の場合は、溶融開環重合をおこなう反応容器として、ヘリカルリボン翼、高粘度用攪拌翼等を備えた縦型反応器、横型反応器を、単独または並列して用いることができる。また、反応容器は、連続式、回分式、半回分式いずれでもよく、これらの組み合わせであってもよい。
【0050】
ポリ乳酸樹脂(A)中に予め溶融混練で添加する方法の場合には、ポリ乳酸樹脂(A)と予めドライブレンドしておいてから、一般的な混練機や成形機に供給する方法や、サイドフィーダーを用いて溶融混練の途中から添加する方法などが挙げられる。
【0051】
溶融混練に際しては、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等の一般的な混練機を使用することができる。混合均一性や分散性を高める観点からは二軸押出機を使用することが好ましい。
【0052】
次に、本発明の射出発泡成形体について説明する。本発明の射出発泡成形体は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を用いてなるものである。つまり、本発明の射出発泡成形体は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を少なくとも一部に用いてなるものであり、中でも本発明のポリ乳酸系樹脂組成物からなるものであることが好ましい。
【0053】
本発明の射出発泡成形体は、結晶化度が5%以上であることが好ましく、中でも結晶化度が10%以上であることが好ましい。結晶化度が5%未満である場合、耐熱性が不十分となり、また、アニーリングなどの二次結晶化を行う際には収縮が生じる場合がある。
【0054】
ここで、射出発泡成形体の結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)を用いてJIS K7121に記載の測定方法に準拠して20℃/分の昇温速度にて昇温しながら測定された昇温結晶化熱量(ΔHc)と結晶融解熱量(ΔHm)に基づき、下式から結晶化度を算出するものである。
結晶化度=〔(|ΔHm|−|ΔHc|)/93〕×100(J/g)
【0055】
そして、本発明の射出発泡成形体はみかけ密度が1.1g/cm
3以下であることが好ましく、中でも0.90g/cm
3以下であることが好ましく、0.75g/cm
3以下であることがさらに好ましく、0.65g/cm
3以下であることが最も好ましい。みかけ密度が1.1g/cm
3を超える場合、発泡が不十分であるため、軽量化を図ることができない。
【0056】
本発明の射出発泡成形体の見かけ密度は以下のようにして測定するものである。
まず、射出発泡成形体の質量を測定し、次いでそれらの見かけ体積を、湿式電子比重計(アルファ・ミラージュ社製「EW−300SG」)を用いて測定する。質量と見かけ体積から見かけ密度を算出する。
【0057】
次に、本発明の射出発泡成形体の製造方法について説明する。本発明の射出発泡成形体の製造方法は、上記した本発明の射出発泡用ポリ乳酸系樹脂組成物100質量部に対して、発泡剤(C)を0.01〜2質量部含有させた後、射出成形を行うものである。
本発明で用いられる発泡剤(C)としては熱分解型の、例えば、アゾ、N−ニトロソ、複素環式窒素含有及びスルホニルヒドラジド基のような分解しうる基を含有する有機化合物、炭酸アンモニウムや炭酸水素ナトリウムなどの無機化合物を用いることができる。その具体例としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシ−ビス(ベンゼンスルホニル)ヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、4−トルエンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシ−ビス(ベンゼンスルホニル)セミカルバジド、4−トルエンスルホニルセミカルバジド、バリウムアゾジカルボキシレート、5−フェニルテトラゾール、トリヒドラジノトリアジン、4−トルエンスルフォニルアザイド、4,4’−ジフェニルジスルフォニルアザイドなどである。これらの中でも、発泡性の観点からアゾジカルボンアミドが好ましい。
【0058】
また、発泡剤としては、ガス状フルオロカーボン、窒素、二酸化炭素、空気、ヘリウム、アルゴンなど常温で気体のものや、液状フルオロカーボン、ペンタンなどの常温で液体のものも使用できる。これらの中では、樹脂への溶解性や発泡性の観点から、窒素や二酸化炭素が好ましい。
【0059】
発泡剤(C)の配合量は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物100質量部に対して0.01〜2質量部であり、中でも0.05〜1.5質量部であることが好ましい。
配合量が0.01質量部未満では発泡させるガスの量が少なく、本発明の樹脂組成物を十分に発泡させることができず、得られる発泡成形体のみかけ密度を小さくすることが出来ない。一方、配合量が2質量部を超えると、発泡時に破泡が生じるなど、得られる発泡成形体の強度が低下したり、シルバーストリークなどの外観不良などが生じる。
【0060】
前述の分解型の発泡剤を用いる場合は、発泡剤と熱可塑性樹脂とを混合した発泡剤マスターペレット形態とすることがより好ましい。マスターペレットを用いることで、ポリ乳酸系樹脂とマスターペレットが一緒に溶融され、発泡剤が分散しやすく、溶融したポリ乳酸系樹脂中で効率よく発泡ガスが発生するため、発泡性が向上する。
【0061】
マスターペレットの具体例としては、発泡剤の分解開始温度よりも低い融点の熱可塑性樹脂に溶融混練してペレット状にしたもの、熱可塑性樹脂の粉粒体と発泡剤の粉体を混合しペレット状に圧縮造粒したもの、熱可塑性樹脂ペレットの表面に発泡剤を混合添着したものが挙げられる。
【0062】
マスターペレットに用いる熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルスチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレン(AS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、スチレン―エチレンーブタジエンースチレン(SEBS)、エチレンーαオレフィンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。
【0063】
前述したマスターペレットには、発泡剤が3〜50質量%配合されていることが好ましく、5〜30質量%がより好ましい。発泡剤が3質量%未満では、発泡剤が少なすぎて得られる発泡成形体が十分に発泡しなかったり、マスターペレットの配合量が多くなるため、得られる発泡成形体の強度が低くなる場合がある。一方、発泡剤の配合量が50質量%を超えると、ポリ乳酸系樹脂組成物で発泡剤の分散にむらができ、発泡性が低下する場合があるため好ましくない。
【0064】
一方、窒素や二酸化炭素などを発泡剤として用いる場合、これらを超臨界流体とした上でポリ乳酸系樹脂と接触させながら、溶融混練し、その後金型に充填し、射出成形することが好ましい。
【0065】
発泡成形体の強度、表面の平滑性、外観性を向上させるためには、発泡セルが存在するコア部を発泡セルが存在しないスキン部で包括した形態とすることが好ましい。このような発泡成形体は、例えば、射出成形機において、発泡剤を含有するポリ乳酸系樹脂を溶融し、金型キャビティに射出し、溶融樹脂が流動末端付近に到達した時点で、金型キャビティに隣接した金型コア部(ダイプレート)を、中型キャビティの厚みが拡張する方向へ後退させる射出コアバック式の射出成形方法で得ることができる。ここで、ダイプレートの後退距離と金型キャビティの初期深さより次式を用いて求められる値を設定発泡倍率(X)と定義する。
設定発泡倍率(X)=(初期深さ+ダイプレートの後退距離)/(初期深さ)
【0066】
また、発泡成形時の実発泡倍率(Y)は、未発泡体の密度(ρ0)と発泡成形体の密度(ρ1)の比(ρ0/ρ1)として算出することができる。なお、未発泡体の密度(ρ0)は、ポリ乳酸系樹脂組成物の密度をいう。樹脂実発泡倍率は1.15〜6.00倍であることが好ましく、1.3〜4.5倍であることがより好ましい。実発泡倍率が1.15未満であると、得られる発泡成形体の軽量化効果が不十分であり、一方、6.00を超えると、発泡成形体中でコア部の発泡セルが粗大化する場合や、スキン部が薄くなる場合があり、発泡成形体の強度が低下しやすい。
【0067】
設定発泡倍率(X)、実発泡倍率(Y)より算出される発泡効率(Y/X)は、表面平滑性の指標となるものであり、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。発泡効率(Y/X)が85%以上であることにより、金型内で発泡する発泡成形体が、金型との密着性を増し、得られる発泡成形体の表面平滑性が向上する。
【0068】
コア部の発泡セルの平均気泡径は表面平滑性を高める上で、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、190μm以下であることがさらに好ましい。平均気泡径が300μmを超えると、発泡成形体の表面平滑性が低下し、また、発泡成形体の強度が低下する場合がある。
また、スキン部の厚みは50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。スキン部の厚みが50μm未満であると、発泡成形体の強度が低下する場合がある。
【0069】
本発明の射出発泡成形体は、低比重で曲げ特性に優れ、かつ表面平滑性にも優れるため、日用品や電気・電子機器分野や、自動車分野、あるいは機械分野などに好適に用いられる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例中の各種の特性値の測定及び評価は以下のとおりに行った。
(1)ポリ乳酸樹脂のD体含有量
得られた樹脂組成物を0.3g秤量し、1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した。次いで、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させ、サンプルとして5mLを計り取った。
このサンプルに純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard製HP−6890SeriesGCsystemを用いてガスクロマトグラフィー測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをポリ乳酸樹脂のD体含有量(モル%)とした。
(2)溶融張力
前記の方法で測定した。
(3)MFR−1、MFR−2
前記の方法で測定した。
【0071】
(4)歪み硬化係数
前記の方法で測定した。
(5)結晶化速度指数
前記の方法で測定した。
【0072】
(6)射出発泡成形体のみかけ密度
前記の方法により測定、算出した。
(7)射出発泡成形体の平均気泡径
得られた射出発泡成形体の断面を、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM−200CX)を用い、2万倍の倍率で、気泡が20以上観察される視野内で、各気泡の長軸径を目視で測定して平均値を算出した。この作業を20ヶ所の異なる視野で行い、平均値を算出して平均気泡径とした。
(8)射出発泡成形体の曲げ強度(MPa)
得られた射出発泡成形体を、ASTM D−790に準拠して測定した。
【0073】
(9)射出発泡成形体の表面平滑性
得られた射出発泡成形体の表面を観察し、発泡による膨張で表面が均一な厚みになっているか否かを目視により以下の3段階で評価した。なお、発泡性が悪い場合、得られる成形体は表面が波打った状態で厚みが均一ではないものとなる。
◎:厚みが均一で凹凸感が全くない。
○:厚みが均一であるが、やや凹凸感がある。
×:厚みが不均一である。
(10)射出発泡成形体の耐熱性
得られた射出発泡成形体を100℃の熱湯に3分間浸漬させた後、取り出した。その際の形状を目視にて観察し、以下の2段階で評価した。
○:変形が生じていない
×:変形が生じている
【0074】
〔原料〕
<ポリ乳酸樹脂>
A−1:D体含有量=0.4モル%、重量平均分子量=9万、MFR−1=25(ネイチャーワークス製;6260D) A−2:D体含有量=0.1モル%、重量平均分子量=13万、MFR−1=8(トヨタ自動車社製;S−12)
A−3:D体含有量=1.4モル%、重量平均分子量=9万、MFR−1=25、(ネイチャーワークス製;6251D)
A−4:D体含有量=1.4モル%、重量平均分子量=13万、MFR−1=8、(ネイチャーワークス製;3001D)
A−5:D体含有量=1.4モル%、重量平均分子量=16万、MFR−1=3、(ネイチャーワークス製;4032D)
X−1:D体含有量=10.0モル%、重量平均分子量=13万、MFR−1=10(ネイチャーワークス社製;6302D)
X−2:D体含有量=4.0モル%、重量平均分子量=16万、MFR−1=4(ネイチャーワークス社製;4042D)
X−3:D体含有量=0.2モル%、重量平均分子量=7万、MFR−1=35(下記方法で得たもの)
【0075】
〔ポリ乳酸樹脂(X−3)の製造〕
ガラス管に、L−ラクチド100質量部とデカノール0.3質量部を仕込み、系内を窒素置換した。次いで、重合触媒として、L−ラクチド100質量に対してオクチル酸スズ0.01質量部を投入後、窒素雰囲気下、150℃に昇温した。内容物が融解した時点で、攪拌を開始し、内温をさらに190℃に昇温して、2時間重合(溶融重合)させた後、重合反応物を取り出した。得られた重合反応物を、130℃、30時間真空乾燥処理することで、重合反応物に残存するラクチドを除去し、ポリ乳酸樹脂(X−3)を得た。
【0076】
<結晶核剤>
B−1:タルク(林化成社製、MW−HST)
B−2:有機スルホン酸バリウム系結晶核剤(竹本油脂社製;LAK403)
<発泡剤>
C−1:アゾジカルボンアミド(永和化成工業社製ビニホールAC#3)
【0077】
製造例1
二軸押出成形機(池貝社製PCM−30、ダイス直径;4mm×3孔、シリンダ温度:220℃、ダイ出口温度;210℃)に、ポリ乳酸樹脂A−1を100質量部供給した。混練機途中からポンプを用いてポリエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂社製)(PEGDMと略す)0.1質量部とジブチルパーオキサイド(日本油脂社製)(DBPOと略す)0.2質量部を注入し、溶融混練した。溶融混練の後0.4mm径×3孔のダイスよりストランドを押出して、ペレット状にカッティングし、真空乾燥機(ヤマト科学社製、商品名「真空乾燥機DP83」)にて、温度60℃で48時間乾燥処理したものを、架橋ポリ乳酸樹脂K−1とした。
【0078】
製造例2〜7、9〜12
各種成分の割合を表1に示すものに変更した以外は、製造例1と同様の方法で架橋ポリ乳酸樹脂K−2〜K−7、K−9〜K−12を得た。
【0079】
製造例8
二軸押出成形機(池貝社製PCM−30、ダイス直径;4mm×3孔、押出ヘッド温度;200℃、ダイ出口温度;180℃)に、ポリ乳酸樹脂A−2を100質量部供給した。混練機途中からポンプを用いて、PEGDM0.5質量部と3 ,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン(化薬アクゾ社製「トリゴノックス301」)0.5質量部を注入し、溶融混練した。溶融混練の後0.4mm径×3孔のダイスよりストランドを押出して、ペレット状にカッティングし、真空乾燥機(ヤマト科学社製、商品名「真空乾燥機DP83」)にて、温度60℃で48時間乾燥処理したものを架橋ポリ乳酸樹脂K−8とした。
【0080】
【表1】
【0081】
実施例1
上記製造例で得られた架橋ポリ乳酸樹脂K−1、100質量部に対して、結晶核剤B−1を2質量部用い、これらをドライブレンドして二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS型)の根元供給口から供給し、バレル温度190℃、スクリュー回転数150rpm、吐出15kg/hの条件で溶融混練した。溶融混練の後0.4mm径×3孔のダイスよりストランドを押出して、ペレット状にカッティングし、真空乾燥機(ヤマト科学社製、商品名「真空乾燥機DP83」)にて、温度60℃で48時間乾燥処理し、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
次に、得られたポリ乳酸系樹脂組成物100質量部に対して、発泡剤C−1を0.5質量部用い、これらをドライブレンドして射出成形機(FANUC社製S−2000i型)に投入し、射出成形を行った。射出成形は、シリンダー温度200℃、金型温度100℃で行った。射出成形には、長さ127mm、幅12.7mm、深さ1.6mmのキャビティを有する金型を用いた。ここで、発泡成形体の初期厚みは、1.6mmであり、ダイプレートを設定発泡倍率が2.5倍となるように後退させ、コア層とスキン層から構成された射出発泡成形体を得た。
【0082】
実施例2〜14、比較例1〜7
架橋ポリ乳酸樹脂、結晶核剤の種類や割合を表2に示すように種々変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして射出成形を行い、射出発泡成形体を得た。
【0083】
実施例1〜14、比較例1〜7で得られたポリ乳酸系樹脂組成物及び射出発泡成形体の特性値及び評価を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
実施例15〜17
実施例2で得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用い、射出成形時にダイプレートを設定発泡倍率が1.5倍、3倍、5倍となるように後退させた以外は、実施例1と同様にして射出発泡成形体を得た。
【0086】
実施例18
実施例5で得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用い、射出成形時にダイプレートを設定発泡倍率が3倍となるように後退させた以外は、実施例1と同様にして射出発泡成形体を得た。
【0087】
実施例15〜18で得られた射出発泡成形体の特性値と評価を表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
表2、3から明らかなように、実施例1〜14で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、本発明で規定する性能を有するものであったため、射出発泡用に適したものであり、設定発泡倍率を2.5倍としても良好に発泡した。そして、これらの樹脂組成物から得られた実施例1〜18の射出発泡成形体は、平均気泡径が小さく、表面平滑性に優れたものであり、さらに、曲げ強度、耐熱性にも優れていた。このため、電気電子機器部品や雑貨用成形品等の各種の用途に好適に用いることができるものであった。
【0090】
一方、比較例1〜3で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、架橋ポリ乳酸樹脂を用いたものではなかったため、本発明の(1)〜(3)の条件をいずれも満たしておらず、射出発泡成形体を得ることができなかった。比較例4で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、本発明の(1)の条件を満たしていないものであったため、樹脂が伸びず射出発泡成形体を得ることができなかった。比較例5、6で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量が2モル%を超えるものであったため、これらの樹脂組成物より得られた射出発泡成形体は、耐熱性に劣るものであった。比較例7で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、本発明の(1)〜(3)の条件をいずれも満たしていなかったため、発泡成形時に樹脂が切れたり破れたりして、得られた射出発泡成形体は気泡径の大きいものとなり、表面平滑性、曲げ強度ともに劣るものとなった。