【実施例1】
【0015】
[本発明の構成]
<1>水中構造物(
図1)。
水中構造物1は、波浪の軽減や海浜の安定化のために、水底に設置される構造物であり、例えば、人工リーフ等である。
水中構造物1は、後述するサンドパック10を、袋体11が水底に広げた前記アンカーシート13の上部に位置するように、設置して製作する。
水中構造物1の構築方法については後に説明する。
【0016】
<2>サンドパック(
図1)。
サンドパック10は、水中構造物1の主要部材である。
サンドパック10は、袋体11と、中詰材12と、アンカーシート13とからなり、袋体11の底部に、袋体11の長手方向に沿ってアンカーシート13を接続し、袋体11に中詰材12を充填して製作する。
サンドパック10は、両端を閉じたチューブ形状を呈する。
【0017】
<2.1>袋体。
袋体11は、サンドパック10の外層部分である。
袋体11は、例えば、周辺を相互に縫製した2枚の織布の上面に、中詰材12を充填するための注入口と排出口を設けて製作することができる。
袋体11の素材は、中詰材12として浚渫土砂等を注入した際に水分のみを排出できるように、通水性に優れ、中詰材12の透過を阻止できる素材とする。また、中詰材12を充填した形状を保持するのに充分な強度と、水中の砂に対する耐摩耗性を有する素材とする。
袋体11の表面には、海藻が付着して繁殖しやすいように、毛状体14を植設することができる。
【0018】
<2.2>中詰材。
中詰材12は、袋体11に充填してサンドパック10を形成する材料である。
中詰材12は、袋体11の全域にまんべんなく充填でき、サンドパック10の設置後、サンドパック10が潮力によって水底を移動しないように、水より重い粒状物を採用する。
本例では、中詰材12に、浚渫土砂を採用する。
【0019】
<3>アンカーシート。
アンカーシート13は、袋体11へ中詰材12を充填する際、袋体11を釣り下げる機能と、サンドパック10を水底へ敷設した後に、サンドパック10を海底に固定することで転がりを防止し、サンドパック10周辺の洗掘を防止する機能と、を併有する部材である。
アンカーシート13は、方形のシート材であり、袋体11の底部に、袋体11の長手方向に沿って、全長に亘って接続する。
アンカーシート13の幅、すなわち袋体11の長手方向に直交する辺の長さは、サンドパック10を水底に設置する際、サンドパック10を水底に吊り下ろすのに十分な長さとする。
アンカーシート13は、一枚もののアンカーシート13の中央を袋体11の底部に敷いて接続するほか、二枚のアンカーシート13、13を、袋体11の底部から両側に延出するように接続することができる。
アンカーシート13には、格子状の繊維補強シートを採用することができる。
アンカーシート13に格子状のシート材を採用することによって、アンカーシート13の沈降時、シート下方の水が格子を通り抜けるため、シートの下面に水をはらまず、アンカーシート13をサンドパック10の両側に平らに敷設することができる。
水底に敷設したアンカーシート13の周辺部分には、潮力によるアンカーシート13の捲れを防止するために、ウエイト15を設置することができる。
本例では、後述する、アンカーシート13の巻き芯となるコンクリートパイルを、ウェイト15として利用する。このほかコンクリート塊等とすることもできる。
【0020】
[水中構造物の構築方法]
引き続き、図面を参照しながら本発明の、水中構造物の構築方法について説明する。
【0021】
<1>台船の連結(
図2)。
水中構造物1の設置場所上の水面に、2隻の台船20A、20Bを設置し、連結材21で相互に連結する。
本例では、台船20A、20Bの間にH鋼を掛け渡し、連結材21とする。
また、台船20A、20Bからスパッド22を水底に垂直に下ろすことで、台船20A、20Bの位置を固定することができる。
【0022】
<2>アンカーシートの水面への設置(
図3)。
2隻の台船20A、20Bの間にアンカーシート13を掛け渡す。
アンカーシート13は、コンクリートパイルや鋼材等を巻き芯にして、両辺をウインチ等で巻き取り、台船20A、20Bから水中に繰り出せるようにしておく。
そして、アンカーシート13と、アンカーシート13に連結した空の袋体11を、台船20A、20B間の水面に設置する。
【0023】
<3>サンドパックの形成(
図4)。
水面に敷設したアンカーシート13上の袋体11に、中詰材12を充填してサンドパック10を形成する。
中詰材12の充填には、サンドポンプ23等の公知の手段を用いる。
袋体11に中詰材12が充填されるに伴って、袋体11の形状が円形に近づき、重量が増すので、これに合わせて、台船20A、20Bの側面からアンカーシート13を繰り出してゆく。
こうして、アンカーシート13を水中に繰り出しながら、袋体11に中詰材12を充填して、水中でサンドパック10を形成する。
この方法によれば、水中に吊り下げた状態で袋体11に中詰材12を充填するので、サンドパック10が重力の影響を受けにくい。そのため、袋体11の全域に、サンドパック10が円形状に近くなるまで中詰材12を充填することができる。
よって、設置後、サンドパック10が十分な消波効果を発揮できる。
【0024】
<3.1>サンドパックを曳航する例。
水中構造物1の設置場所以外の場所で、予めサンドパック10を形成した後、台船20A、20Bでサンドパック10を曳航し、水中構造物1の設置場所で沈降させることもできる。
この方法によれば、中詰材12の採収場所と水中構造物1の設置場所が離れている場合に、予め中詰材12の採収場所でサンドパック10を形成した後に搬送でき、作業の効率化をはかれる。
また、水中に沈めたまま搬送するため、搬送・設置時にサンドパック10にかかる応力が小さく、サンドパック10に破損が生じにくい。
【0025】
<4>サンドパックの水底への設置。
アンカーシート13を繰り出してサンドパック10を水底に着床させる。
従来技術では、水底への設置時、サンドパックをベルトやワイヤー等で吊り下ろすため、吊り具で袋体を部分的に絞ることになり、袋体が破損することがあった。
これに対し、本願の水中構造物の構築方法は、袋体11をアンカーシート13に乗せた状態で吊り下ろすため、サンドパック10の特定部分に力が集中にくく、袋体11が破損しにくい。
【0026】
<4.1>サンドパックを水底に設置した状態(
図1)。
サンドパック10を水底に設置した状態において、アンカーシート13は水底に平面状に広がり、サンドパック10はアンカーシート13の中央部分に、長手方向がアンカーシート13の辺に平行する方向に載置される。
サンドパック10はその底部がアンカーシート13と連結されているため、サンドパック10が潮の流れによる力を受けても、アンカーシート13が、アンカーシート13の底面と水底との摩擦によってこれに抵抗する。そのため、潮力によるサンドパック10の転がりや移動を防止することができる。
【0027】
<5>アンカーシートの展開。
巻き芯からアンカーシート13の両端を取り外して水中に沈降させ、サンドパック10の両側に広げる。
本例では、アンカーシート13に格子状のシートを採用しているため、アンカーシート13の沈降時に、シートが水をはらまず、アンカーシート13を、サンドパック10の両側に平らに敷設することができる。
【0028】
<6>アンカーシートの固定。
水底に敷設したアンカーシート13の周縁部を水底に固定する。
固定手段として例えば、アンカーシート13の周縁部をウエイト15でおさえたり、ピンを打設する方法がある。
本例では、アンカーシート13の巻き芯のコンクリートパイルをそのままウエイト15として利用する。
【0029】
<7>水中構造物の形成(
図5)。
サンドパック10の水底への設置後、時間経過とともに、アンカーシート13上に漂砂が堆積し、サンドパック10の安定性が増す。
サンドパック10の表面に毛状体14を植設する場合、海藻が付着やすく、繁殖しやすいため、より自然に近い環境を短時間で形成することができる。
また、サンドパック10と水底との間にアンカーシート13がひいてあるため、サンドパック10下の水底が洗掘されにくい。そのため、洗掘防止のためのブラケット等を別途設置する作業が必要なく、施工効率がよい。