(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-218823(P2015-218823A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】ゴム軸継手
(51)【国際特許分類】
F16D 3/74 20060101AFI20151110BHJP
F16D 3/68 20060101ALI20151110BHJP
【FI】
F16D3/74 A
F16D3/74 E
F16D3/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-103144(P2014-103144)
(22)【出願日】2014年5月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077780
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 泰甫
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】藤田 順一
(57)【要約】
【課題】ゴム製継手本体の交換が容易で、かつ脱落に対する安全性を高めることのできるゴム軸継手の提供。
【解決手段】駆動軸2a及び従動軸2bの端部に一対のフランジ3a、3bを装着する。一対のフランジ3a、3bの外周部に筒形状のゴム製継手本体4を掛け渡す。一対のフランジ3a、3bの中心軸方向外側に、これらとの間に継手本体4の端部4a、4bを挟持する圧力リング5a、5bをボルト締結する。継手本体4に、これを周方向に分断する分断部6を形成する。継手本体4の外周側に環状部材7を着脱可能に設ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸及び従動軸の端部に装着されて径方向外向きに突出すると共に中心軸方向内側が互いに対向する一対のフランジと、該一対のフランジの外周部に掛け渡される筒形状のゴム製継手本体と、前記一対のフランジの中心軸方向外側にボルト締結されて前記フランジとの間に前記継手本体の端部を挟持する圧力リングと、を備え、前記継手本体に、当該継手本体を周方向に分断する分断部が形成され、前記継手本体の外周側に環状部材が着脱可能に設けられたことを特徴とするゴム軸継手。
【請求項2】
前記環状部材は、剛性を有する円形リングとされたことを特徴とする請求項1に記載のゴム軸継手。
【請求項3】
前記継手本体の外周部に、前記環状部材を配置する環状溝が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム軸継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動軸と従動軸との間に介装されて動力を伝達するゴム軸継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、モーターなどの原動機側の駆動軸と油圧ポンプなどの被動機側の従動軸との間には、動力を伝達する軸継手が介装され、さらに、その軸継手として、可撓性を有するゴム軸継手を採用することがある。
【0003】
ゴム軸継手には、駆動軸及び従動軸の端部に装着した一対のフランジにタイヤ形状のゴム製継手本体を止着した構造を採用することがある。このタイヤ形状のゴム製継手本体は、駆動軸及び従動軸の軸心の位置や角度のずれ、あるいは軸方向間隔の設置誤差を容易に吸収することができると共に、駆動軸及び従動軸の回転に伴う振動や衝撃、騒音を効果的に吸収することができる。
【0004】
タイヤ形状のゴム製継手本体は、例えば、中心軸方向両端部にリング状金具を加硫接着した構造として、一対のフランジ間に配置し、そのリング状金具をフランジの中心軸方向内側にボルト締結することによって、駆動軸及び従動軸に装着することができる。ただ、この構造のゴム軸継手は、継手本体にリング状金具を加硫接着する分、ゴム軸継手を交換する際、継手本体だけでなく、リング状金具をも交換する必要があり、ゴム軸継手の交換コストが高くなる。
【0005】
これに対し、
図3に示すように、駆動軸101a及び従動軸101bのフランジ102a、102bにタイヤ形状の継手本体103を掛け渡し、継手本体103の小径の端部を中心軸方向外側に位置させて、その端部をフランジ102a、102bと圧力リング104a、104bとで挟持する構成を採用することにより、継手本体103のみの交換が可能になる(例えば、特許文献1)。
【0006】
さらに、継手本体103を分断部105で周方向に分断したC形状に構成して、その分断部105を広げることにより、駆動軸101a及び従動軸101bに装着したフランジ102a、102bに、その側方から継手本体101を装着することができ、ゴム軸継手の着脱作業を容易にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−318275号公報(段落0013、0015、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、C形状の継手本体は、駆動軸及び従動軸のフランジへの着脱作業が容易であるものの、ゴム軸継手の使用期間や使用環境、使用条件によっては、フランジからの脱落を生じ得るので、その分、保守点検に要する手間とコストを増加させるおそれがある。
【0009】
本発明は、ゴム製継手本体の交換が容易で、かつ脱落に対する安全性を高めることのできるゴム軸継手の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るゴム軸継手は、駆動軸及び従動軸の端部に装着されて径方向外向きに突出すると共に中心軸方向内側が互いに対向する一対のフランジと、この一対のフランジの外周部に掛け渡される筒形状のゴム製継手本体と、一対のフランジの中心軸方向外側にボルト締結されてフランジとの間に継手本体の端部を挟持する圧力リングと、を備えたものであり、その継手本体に、継手本体を周方向に分断する分断部を形成し、継手本体の外周側に環状部材を着脱可能に設けたものである。
【0011】
上記構成によれば、ゴム製継手本体を筒形状にして一対のフランジの外周部に掛け渡すので、継手本体の筒形状によって、駆動軸から従動軸への強いトルクの伝達を可能にすることができると共に、筒形状を構成するゴムによって、振動などを効果的に吸収することができる。
【0012】
また、継手本体をその端部をフランジと圧力リングとで挟持して装着するので、継手本体に取付金具を加硫接着した構造とは違い、継手本体の交換に伴う取付金具の交換を不要にすることができる。しかも、継手本体に分断部を形成して周方向に分断するので、分断部を広げることにより、フランジに側方から継手本体を着脱することができ、フランジへの継手本体の着脱作業を容易にすることができる。
【0013】
さらに、継手本体に分断部を形成した上で、継手本体の外周側に環状部材を着脱可能に設けるので、フランジに継手本体を着脱する際には、環状部材を取り外して、継手本体の分断部を広げることができ、フランジに継手本体を装着した状態では、継手本体の外周側に環状部材を装着して、継手本体の分断部の広がりを阻止することができる。これにより、フランジへの継手本体の着脱作業を容易にしつつ、フランジに継手本体を装着した状態では、フランジからの継手本体の脱落を防止することができる。
【0014】
なお、継手本体の形状は、全体として筒形状であれば、特に限定されるものではないが、駆動軸及び従動軸の設置誤差や振動、衝撃、騒音などを効果的に吸収するには、中心軸方向の中央が大径で両端が小径のタイヤ形状を採用するのが好適である。また、分断部は1つに限らず、複数の分断部を形成することもできるが、分断部を広げてフランジへの継手本体の着脱を容易にするには、1つの分断部を形成して継手本体をC形状に構成するだけで十分である。
【0015】
また、環状部材を、剛性を有する円形リングとするようにしてもよい。この構成によると、環状部材を円形に維持することができるので、環状部材を装着した状態の継手本体の真円度を高めて、ゴム軸継手を周方向に沿って均一な状態にすることができる。なお、環状部材は、継手本体の外周側に着脱可能なものであればよく、剛性を有する円形リングに代えて、柔軟性を有するワイヤなどであってもよい。
【0016】
また、継手本体の外周部に、環状部材を配置する環状溝を形成するようにしてもよい。この構成によると、環状部材を環状溝に嵌めることができるので、環状部材を位置決めすることができると共に、駆動軸及び従動軸の回転時などにおける環状部材の位置ずれを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によると、筒形状のゴム製継手本体に分断部を形成した上で、継手本体の外周側に環状部材を着脱可能に設けるようにしている。これにより、駆動軸及び従動軸のフランジに継手本体を着脱する際には、環状部材を取り外して継手本体の分断部を広げ、その着脱作業を容易にすることができる。一方、フランジへの装着状態では、継手本体の外周側に環状部材を装着して分断部の広がりを阻止し、フランジからの継手本体の脱落を防止することができる。その結果、ゴム製継手本体の交換を容易にすると共に、フランジからの脱落に対する安全性を高めて、保守点検に要する手間とコストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るゴム軸継手を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
ゴム軸継手1は、例えば、モーターなどの原動機側の駆動軸2aと、油圧ポンプなどの被動機側の従動軸2bと、の間に介装されて、駆動軸2aから従動軸2bに動力を伝達しつつ、駆動軸2a及び従動軸2bの偏心や偏角、軸方向間隔の設置誤差を吸収すると共に、両軸2a、2bに生じる振動や衝撃、騒音を吸収するためのものである。
【0021】
図1、
図2に示すように、ゴム軸継手1は、駆動軸2a及び従動軸2bの端部に装着されて径方向外向きに突出すると共に中心軸方向内側が互いに対向する一対のフランジ3a、3bと、一対のフランジ3a、3bの外周部に掛け渡される筒形状のゴム製継手本体4と、一対のフランジ3a、3bの中心軸方向外側にボルト締結されてフランジ3a、3bとの間に継手本体4の端部4a、4bを挟持する圧力リング5a、5bと、継手本体4を周方向に分断する分断部6と、継手本体4の外周側に着脱可能な環状部材7と、を備えている。
【0022】
フランジ3a、3bは、中央部から中心軸方向外側に突出するボス部8a、8bを有する例えば金属製の円盤状とされ、そのボス部8a、8bを駆動軸2a及び従動軸2bの端部に外嵌されて、互いに間隔をあけつつ中心軸方向内側面を対向させて装着される。ボス部8a、8bの内周面には、駆動軸2a及び従動軸2bの外周面のキー溝9aに合わせて位置決めされるキー溝9bが形成され、両キー溝9a、9bに、駆動軸2a及び従動軸2bに対するフランジ3a、3bの回転を規制するキー9が挿入される。
【0023】
フランジ3a、3bの外周縁のうちの中心軸方向外側部分には、周方向に連続する保持溝10が形成され、この保持溝10に継手本体4の端部4a、4bを配置して保持するようになっている。
【0024】
継手本体4は、ゴム製の筒形状で、さらに、中心軸方向の中央が大径で両端が小径のタイヤ形状とされ、その端部4a、4bがフランジ3a、3bと圧力リング5a、5bとで挟持されて、継手本体4が一対のフランジ3a、3bに掛け渡されて止着される。このタイヤ形状の継手本体4は、高いトルク伝達機能を維持しつつ、ゴム軸継手1の可撓性を高め、駆動軸2a及び従動軸2bの設置誤差を吸収する機能や、駆動軸2a及び従動軸2bに生じる振動などを吸収する機能を向上させる。
【0025】
圧力リング5a、5bは、例えば金属性でフランジ3a、3bとほぼ同じ外径を有するドーナツ状の円板とされ、その中央穴をボス部8a、8bに外嵌するようにして、フランジ3a、3bの中心軸方向外側にボルト11及び共通座金12を用いて締結される。この圧力リング5a、5bは、ボルト11を締めることにより、外周部とフランジ3a、3bの保持溝10との間に端部4a、4bを挟持して継手本体4を止着し、ボルト11を緩めることにより、端部4a、4bの挟持を解除して継手本体4のみの交換を可能にする。
【0026】
分断部6は、継手本体4を径方向に切除した形状とされ、継手本体4を一箇所で周方向に分断したC形状に構成する。C形状の継手本体4は、その分断部6を広げることにより、小径の端部4a、4bを有するタイヤ形状であっても、フランジ3a、3bの側方から掛け渡すことができる。
【0027】
環状部材7は、例えば、継手本体4の外周面と同程度の曲率を有する断面円弧状で、剛性を有する金属製の円形リングとされ、継手本体4の外周部に形成された環状溝13に着脱自在に配置される。この環状部材7は、環状溝13に嵌って継手本体4を外周側から拘束することにより、フランジ3a、3bへの着脱が容易なC形状の継手本体4がフランジ3a、3bから脱落するのを阻止すると共に、継手本体4の真円度を高める。
【0028】
次に、本発明に係るゴム軸継手1を取り付ける手順を説明する。まず、フランジ3a、3bの中心軸方向外側に、圧力リング5a、5bを共通座金12と共にボルト11で緩く取り付ける。次いで、フランジ3a、3bの中心軸方向内側面を所定の間隔をあけて対向させ、ボス部8a、8bを駆動軸2a及び従動軸2bの端部に外嵌して、そのキー溝9a、9bの位置を合わせてキー9を挿入してフランジ3a、3bを装着し、それと共に、駆動軸2a又は従動軸2bに、その端部を通すように環状部材7を掛ける。
【0029】
継手本体4をそのC形状の分断部6を広げてフランジ3a、3bの外周部に側方から掛け渡すように配置し、圧力リング5a、5bをボルト11で締め付けて、継手本体4の端部4a、4bをフランジ3a、3bと圧力リング5a、5bとで挟持する。その後、駆動軸2a又は従動軸2bに掛けた環状部材7を中心軸方向に移動させて環状溝13に嵌め込んで、環状部材7で継手本体4を外周側から拘束し、ゴム軸継手1の取付けが完了する。
【0030】
なお、環状部材7を環状溝13から外した後、ボルト11を緩めて、フランジ3a、3bと圧力リング5a、5bとによる継手本体4の端部4a、4bの挟持を解除することにより、継手本体4を取り外して交換することができる。
【0031】
上記構成によれば、継手本体4の外周側を環状部材7で拘束するので、継手本体4を着脱が容易なC形状にしつつ、その脱落を防止することができ、しかも、環状部材7を剛性を有する円形リングとするので、継手本体4の真円度を高めることができる。
【0032】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、継手本体4は、全体として筒形状であればよく、タイヤ形状に限らず、他の形状であってもよい。また、継手本体4は、一箇所に分断部6を有するC形状に限らず、複数個所に分断部6を有して複数に分割された形状であってもよい。また、環状部材7は、金属製で剛性を有する円形リングに限らず、ワイヤなどの可撓性を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 ゴム軸継手
2a 駆動軸
2b 従動軸
3a、3b フランジ
4 継手本体
4a、4b 端部
5a、5b 圧力リング
6 分断部
7 環状部材
8a、8b ボス部
9 キー
9a、9b キー溝
10 保持溝
11 ボルト
12 共通座金
13 環状溝