【解決手段】当接面21は、無荷重時において、マウント装置100のフランジ部103に当接部21aが当接し、当接部21aの径方向外側に位置する隙間形成部21bがフランジ部103と隙間Gを形成する。軸方向荷重を受けると当接面21が弾性変形され、隙間形成部21bは当接部21aより余分に軸方向に変形する。隙間形成部21bの径方向外側への弾性変形量を小さくできるので、フランジ部103に隙間形成部21bを乗り上げ難くできる。よって、スプリングシートラバー1の耐久性を向上できる。また、フランジ部103とコイルスプリング107の端部との間のゴムボリュームを確保できるので、制振性能を確保できる。
ゴム状弾性体から構成されると共に、筒状の内嵌部に連設されるフランジ部を備えるマウント装置の前記フランジ部とコイルスプリングの端部との間に介設されるスプリングシートラバーにおいて、
軸方向視円環状の本体部と、
前記本体部の軸方向の一端側の外周側から径方向外側に張り出して形成される張出部とを備え、
前記本体部および前記張出部は、軸方向の一端側に位置し前記マウント装置のフランジ部と当接する当接面と、軸方向の他端側に位置し前記当接面に対向すると共に前記コイルスプリングの端部を受け止める受圧面とを備え、
前記当接面は、前記マウント装置の内嵌部に前記本体部が嵌合される一方で前記コイルスプリングから軸方向荷重を受けていない無荷重時において、前記マウント装置のフランジ部に当接する当接部と、前記当接部の径方向外側に位置し前記マウント装置のフランジ部と隙間を形成する隙間形成部とを備えていることを特徴とするスプリングシートラバー。
前記隙間形成部は、前記無荷重時において、少なくとも一部が、前記本体部の外周を軸方向に延長した仮想の第1円筒の径方向外側に位置することを特徴とする請求項1記載のスプリングシートラバー。
前記隙間形成部は、前記無荷重時において、径方向内側から径方向外側へ向かうにつれて前記受圧面と前記当接面との間の軸方向の厚さが小さくなることを特徴とする請求項1又は2に記載のスプリングシートラバー。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1はマウント装置100に取り付けられた第1実施の形態におけるスプリングシートラバー1の軸方向断面図である。なお、
図1に示すスプリングシートラバー1はマウント装置100の取付金具101に取り付けられてはいるが、コイルスプリング107から軸方向荷重を受けていない無荷重時の状態を示している。また、マウント装置100は、2つの取付金具の間に、ゴム状弾性体から構成される防振基体が介設されるが、
図1では、図面を簡略化して理解を容易にするため、一方の取付金具101を図示して、他方の取付金具および防振基体の図示を省略する。
【0017】
図1に示すように、スプリングシートラバー1が取り付けられるマウント装置100の取付金具101は、円筒状に形成された内嵌部102と、その内嵌部102の軸方向の一端側(
図1上側端部)の外周側から径方向外側に張り出して円環状に連設されるフランジ部103とを備え、車体フレーム(図示せず)側へ接続される部材である。さらにマウント装置100は、取付金具101の内嵌部102の内周面から径方向内側へ向けて張り出すリング状の仕切部105と、仕切部105に固定されると共に軸方向の他端側(
図1下側)へ向けて突設されるカラー106とを備えている。内嵌部102及びフランジ部103は金属材料から一体に形成されており、内嵌部102にフランジ部103が連設される連設部104(フランジ部103の一部)は、軸方向の他端側(
図1下側)に湾入した平坦面を有する円環状の部位である。
【0018】
スプリングシートラバー1は、コイルスプリング107を介して車輪(図示せず)側から車体(図示せず)側へ伝達される振動を低減するための部材であり、軸心Oを有する略円筒状に形成された本体部10と、その本体部10の軸方向の一端側(
図1上側端部)から軸方向外側にフランジ状に張り出して略円環状に形成された張出部20とを備えている。本体部10及び張出部20は、適宜なばね定数を有するゴム状弾性体から一体に加硫成形されている。
【0019】
本体部10は、マウント装置100の内嵌部102が内周10a側に内嵌される部位であり、コイルスプリング107の内周に嵌合し得る外径を有している。本体部10によってコイルスプリング107と内嵌部102との干渉が防止される。本体部10は、軸方向の他端側(
図1下側)へ向かうにつれ内周10aの直径(内径)が漸次小さくなるように形成されている。本体部10の外周10bの直径(外径)は、軸方向の他端側(
図1下側)の軸方向端部に位置する小径部11で小さく設定されている以外は、軸方向に亘って略同一に設定されている。小径部11は、本体部10(軸方向端部を除く)の径方向厚さと比較して、径方向厚さが薄くなるように形成されている。
【0020】
張出部20は、コイルスプリング107とマウント装置100のフランジ部103との干渉を防止するため、コイルスプリング107とフランジ部103との間に介設される部位である。本体部10及び張出部20によってコイルスプリング107から車体(図示せず)側への振動入力が抑制される。張出部20は、本体部10の内周10aに連成される面として構成される当接面21と、その当接面21に対向すると共に本体部10に連成される平坦面として構成される受圧面22とを備えている。
【0021】
本体部10及び張出部20は、筒状金具30が埋設されている。筒状金具30は、金属材料から形成される部材であり、円筒状に形成される円筒部31と、円筒部31の軸方向の一端側(
図1上側端部)から径方向外側に張り出して鍔状に形成される鍔部32とを備えている。円筒部31は、軸方向長さが、本体部10の軸方向長さに張出部20の軸方向厚さの略1/2を加えた長さに設定され、内径が、軸方向の他端側(
図1下側)に向かうにつれて漸次小さくなるように形成されている。
【0022】
鍔部32は、張出部20の軸方向略中央に埋設される。本体部10の軸方向の端部側(
図1下側)に円筒部31が埋設されることにより、円筒部31が埋設された部分(本体部10の軸方向端部)の剛性を上げることができる。その結果、コイルスプリング107による受圧面22への軸方向荷重の入力で本体部10の軸方向の位置が内嵌部102からフランジ部103側へずれることを防ぎ、マウント装置100からスプリングシートラバー1が捲れたり脱落したりすることを防止できる。
【0023】
鍔部32は、円筒部31に連成されると共に張出部20に埋設される。フランジ部103とコイルスプリング107の端部との間に鍔部32が配置され、内嵌部102とコイルスプリング107の端部との間に円筒部31が配置される。その結果、スプリングシートラバー1の軸直角方向および軸方向の剛性を上げることができる。コイルスプリング107から横力および軸方向荷重(車両の自重分の荷重)を受けているときのスプリングシートラバー1の軸直角方向および軸方向の剛性を上げられるので、車両の操縦安定性を向上させることができる。
【0024】
マウント装置100の内嵌部102に本体部10が嵌合され、スプリングシートラバー1が軸方向荷重を受けていない状態で、当接面21は、フランジ部103(連設部104)と当接する当接部21aと、その当接部21aの径方向外側に位置しフランジ部103と隙間Gを形成する隙間形成部21bとを備えている。隙間形成部21bは、軸方向に荷重を受けていない状態で、軸方向の一端側(
図1上側)の軸方向端面が、当接部21aの軸方向端面より軸方向の他端側(
図1下側)に位置するように形成され、当接部21aから径方向外側に向かうにつれて軸方向の他端側(
図1下側)に向かって傾斜する傾斜面を形成している。
【0025】
なお、張出部20は、隙間形成部21bが形成される部位において、軸心Oと直交する断面積が下方(
図1下方)へ向かうにつれて増加するように形成されている。これによりマウント装置100は、張出部20に入力される軸方向荷重が大きくなるに従い、張出部20とフランジ部103との接触面積が増加して適度なばね定数を得ることができる。
【0026】
次に
図2及び
図3を参照して、スプリングシートラバー1の詳細な構成について説明する。
図2はスプリングシートラバー1(無荷重時)の斜視図であり、
図3はスプリングシートラバー1(無荷重時)の平面図である。
図2及び
図3に示すようにスプリングシートラバー1は、当接面21(
図1参照)の周方向の6箇所に等間隔に当接部21aが形成される。当接部21aは平面視して略扇状に形成され、放射状に位置し、その当接部21aの径方向外側に隙間形成部21bが形成される。隙間形成部21bは、凹陥部25(後述する)が形成される部位を除いて、当接部21a及び凹溝23の径方向外側に形成されている。凹溝23は、張出部20のばね定数を調整するための部位であり、当接面21の当接部21aの間に放射状に形成される。
【0027】
本体部10は、内周10aの周方向の3箇所に等間隔に、径方向外側に向かう凹部24が凹設されている。凹部24は、当接部21aの径方向内側端部から軸方向の他端側(
図3紙面奥側)へ向けて、本体部10に埋設された筒状金具30(円筒部31)の位置まで延設される。ここで、スプリングシートラバー1をマウント装置100に取り付けると、内嵌部102と本体部10の内周10aとの間に凹部24による空間が形成される。スプリングシートラバー1に軸方向荷重が作用したときには、凹部24によって形成される空間に、弾性変形したスプリングシートラバー1の一部が収容される。これにより、スプリングシートラバー1の全体を略一様に弾性変形させられるので、大きな荷重が局所的にスプリングシートラバー1に作用することを防止できる。その結果、スプリングシートラバー1の耐久性を向上できる。
【0028】
ここで、
図4を参照して、スプリングシートラバー1が外嵌されるマウント装置100の取付金具101について説明する。
図4はマウント装置100の取付金具101の底面図である。取付金具101はマウント装置100の一部であって、円筒状に形成される内嵌部102と、内嵌部102の径方向外側に連設されるフランジ部103とを備えている。内嵌部102の外径は、スプリングシートラバー1の本体部10及び張出部20の内径より大きく(本体部10及び張出部20が弾性変形して内嵌部102に外嵌される程度に大きく)設定され、フランジ部103の外径は、スプリングシートラバー1の張出部20の外径より大きな寸法に設定されている。
【0029】
フランジ部103は、車体(図示せず)側に締結されるボルト(図示せず)が挿通される挿通孔103aが3箇所に形成されている。挿通孔103aは、フランジ部103の厚さ方向に貫通する孔部であり、周方向の3箇所に等間隔に形成されている。また、内嵌部102は、外周の周方向の3箇所に、径方向内側へ向かう凹部102aが等間隔に凹設されている。凹部102aは、内嵌部102の軸方向(
図4紙面垂直方向)に沿って凹溝状に形成される部位である。
【0030】
図3に戻ってスプリングシートラバー1について説明する。スプリングシートラバー1は、マウント装置100(取付金具101)の挿通孔103a(
図4参照)に対応する位置に凹陥部25が形成されている。凹陥部25は、マウント装置100の挿通孔103aに挿通されたボルト(図示せず)の頭部が収容される部位であり、張出部20の周方向の3箇所(凹溝23の径方向外側)に凹設されている。凹陥部25が、張出部20のばね定数を調整する凹溝23の径方向外側に凹設されているので、予め設定される当接部21a及び隙間形成部21bによる動ばねが、凹陥部25及び凹陥部25に収容されるボルトの頭部(図示せず)の干渉によって変動することを防止できる。
【0031】
スプリングシートラバー1は、本体部10の周方向の3箇所に、内周から軸心Oへ向けて突設される突条状の凸部12を備えている。凸部12は、マウント装置100(取付金具101)の内嵌部102に凹設された凹部102aに係合する部位であり、本体部10の軸方向(
図3紙面垂直方向)に沿って延在する突条状に形成されている。本実施の形態では、凸部12は、軸方向端面に当接部21aが形成される内周10aの径方向内側に突設される。
【0032】
スプリングシートラバー1の凸部12とマウント装置100の凹部102aとを一致させると共に、スプリングシートラバー1の軸心Oを内嵌部102の軸心Oの延長上に一致させて、スプリングシートラバー1を内嵌部102からフランジ部103側へ向かって移動させると、スプリングシートラバー1がマウント装置100(取付金具101)に外嵌され、スプリングシートラバー1の当接面21aがフランジ部103(連設部104)に当接する。
【0033】
このとき、スプリングシートラバー1の凸部12とマウント装置100の凹部102aとが係合されるので、マウント装置100(取付金具101)に対してスプリングシートラバー1が周方向に相対移動することが防止される。また、凸部12は、本体部10の軸方向端面に当接部21aが形成される内周10aの径方向内側に突設されるので、スプリングシートラバー1の受圧面22がコイルスプリング107から軸方向荷重を受けて当接部21が軸方向に圧縮変形されると、凸部12が径方向内側へ向かって突出するように変形する。これにより、スプリングシートラバー1に軸方向荷重が入力されたときのスプリングシートラバー1の凸部12とマウント装置100の凹部102aとの係合を確実かつ強固にできる。
【0034】
次に
図5及び
図6を参照して、マウント装置100(取付金具101)とスプリングシートラバー1との関係について説明する。
図5はマウント装置100に取り付けられたスプリングシートラバー1(無荷重時)の軸方向断面図であり、
図6はコイルスプリング107から荷重を受けたときのスプリングシートラバー1の軸方向断面図である。なお、
図5及び
図6では、図面を簡略化して理解を容易にするため、軸心Oを中心とした片側の断面を図示する。
【0035】
図5に示すようにスプリングシートラバー1は、マウント装置100の内嵌部102に本体部10が嵌合される一方でコイルスプリング107から軸方向荷重を受けていない無荷重時において、当接面21が、マウント装置100のフランジ部103に当接する当接部21aと、当接部21aの径方向外側に位置しマウント装置100のフランジ部103と隙間Gを形成する隙間形成部21bとを備えている。
【0036】
本実施の形態では、当接部21aは、無荷重時において、フランジ部103の径方向内側に位置する連設部104に当接する。また、隙間形成部21bは、無荷重時において、少なくとも一部が、本体部10の外周10bを軸方向に延長した仮想の第1円筒C1の径方向外側(
図5左側)に位置し、径方向内側から径方向外側へ向かうにつれて受圧面22と当接面21との間の軸方向の厚さが小さくなるように設定される。また、隙間形成部21bは、無荷重時において、少なくとも一部が、筒状金具30の円筒部31を軸方向に延長した仮想の略円錐台状の第2円筒C2の径方向外側に位置し、径方向内側から径方向外側へ向かうにつれて筒状金具30の鍔部32と当接面21との間の軸方向の厚さが小さくなるように設定される。
【0037】
図6に示すように、本体部10の外周10bにコイルスプリング107が嵌合されて車両(図示せず)にサスペンション機構が構成される。車両(図示せず)を接地させると、車両の自重によってサスペンション機構に軸方向荷重が入力される。その結果、ショックアブソーバ(図示せず)に外嵌されたコイルスプリング107の端部が軸方向の一端側(
図6上方向)へ移動する。そうすると、スプリングシートラバー1の受圧面22がコイルスプリング107から軸方向荷重を受け、受圧面22と対向する当接面21が弾性変形する。本体部10はマウント装置100の内嵌部102に嵌合されるので、当接面21は、内嵌部102によって径方向内側への弾性変形が制限される。そのため、当接面21は軸方向および径方向外側へ向かって弾性変形する。
【0038】
スプリングシートラバー1は、軸方向荷重が入力されていないときは(
図5参照)、当接部21aの径方向外側に位置する隙間形成部21bとフランジ部103との間に隙間Gがある。そのため軸方向荷重を受けたときは、隙間形成部21bは当接部21aより余分に軸方向に変位する。その結果、隙間形成部21bの径方向外側への弾性変形量を小さくできるので、張出部20を径方向外側へ広がり難くできる。
【0039】
ここで、張出部20が径方向外側へ広がってマウント装置100のフランジ部103に乗り上げると、フランジ部103のエッジが張出部20に接触して張出部20が損傷し易くなる。そうすると、スプリングシートラバー1の耐久性が低下するおそれがある。また、張出部20が弾性変形して径方向外側に広がると、マウント装置100のフランジ部103とコイルスプリング107の端部との間に介設される張出部20のゴムボリュームが小さくなる。そうすると、スプリングシートラバー1(張出部20)の剛性が大きくなってスプリングシートラバー1による制振性能が低下するおそれがある。
【0040】
これに対し本実施の形態によれば、隙間形成部21bによって張出部20の径方向外側への弾性変形量を小さくできるので、マウント装置100のフランジ部103に隙間形成部21b(張出部20)を乗り上げ難くすることができる。その結果、張出部20がフランジ部103のエッジに接触することを抑制できる。よって、スプリングシートラバー1の耐久性を向上できる。また、隙間形成部21bの径方向外側への弾性変形量を小さくできるので、マウント装置100のフランジ部103とコイルスプリング107の端部との間に介設される張出部20のゴムボリュームを確保できる。よって、スプリングシートラバー1の制振性能を確保できる。
【0041】
また、スプリングシートラバー1は、無荷重時において、隙間形成部21bは、少なくとも一部が、本体部10の外周10bを軸方向に延長した仮想の第1円筒C1の径方向外側に位置する。本体部10の外周10bに端部が配置されたコイルスプリング107から受圧面22が軸方向荷重を受けると、仮想の第1円筒C1の径方向外側に位置する隙間形成部21bが軸方向へ弾性変形する。その結果、マウント装置100のフランジ部103とコイルスプリング107の端部との間に介設される張出部20のゴムボリュームを確保できる。よって、フランジ部103とコイルスプリング107との間に介設されるスプリングシートラバー1(張出部20)の剛性の増加を抑制できる。その結果、スプリングシートラバー1の制振性能を向上できる。
【0042】
特に本実施の形態では、仮想の第1円筒C1上に当接部21aが位置するので、隙間形成部21bの全てを第1円筒C1の径方向外側に位置させることができる。その結果、コイルスプリング107の端部により入力される軸方向荷重によって、隙間形成部21bの全てが軸方向に変位される。これにより、当接部21aの剛性を確保しつつ隙間形成部21bの剛性の増加を抑制できる。その結果、当接部21aによって車両の操縦安定性を確保しつつ、隙間形成部21bによって制振性能を向上できる。
【0043】
ここで隙間形成部21bは、無荷重時において、径方向内側から径方向外側へ向かうにつれて受圧面22と当接面21との間の張出部20の軸方向の厚さが小さくなるように設定されている。よって、コイルスプリング107から受圧面22が軸方向荷重を受けたときに、径方向外側へ拡大する張出部20のゴムボリュームを小さくできる。その結果、マウント装置100のフランジ部103に張出部20を乗り上げ難くできるので、スプリングシートラバー1の耐久性を向上できる。
【0044】
なお、スプリングシートラバー1の張出部20は、無荷重時において、外径が、フランジ部103の外径より小さい寸法に設定されている。これにより、張出部20が径方向外側に弾性変形して拡径されたとしても、フランジ部103のエッジと張出部20とを干渉させ難くできる。その結果、フランジ部103のエッジによって張出部20に亀裂が生じたり張出部20が損傷したりすることを抑制できる。よって、スプリングシートラバー1の耐久性を向上できる。
【0045】
また本実施の形態によれば、筒状金具30の円筒部31が、本体部10の軸方向の他端側(
図5下側)に埋設されている。そのため、コイルスプリング107から受圧面22が軸方向荷重を受けたときに、当接面21は、マウント装置100の内嵌部102及び筒状金具30の円筒部31によって径方向内側への弾性変形が制限される。さらに、本体部10に埋設された円筒部31によって本体部10の軸直角方向(
図5左右方向)の剛性を上げて、車両の操縦安定性を向上できる。
【0046】
なお、隙間形成部21bは、無荷重時において、少なくとも一部が、筒状金具30の円筒部31を軸方向に延長した仮想の第2円筒C2の径方向外側(
図5左側)に位置するので、コイルスプリング107から受圧面22が軸方向荷重を受けたときに、隙間形成部21bは軸方向および径方向外側へ向かって弾性変形する。隙間形成部21bはフランジ部103と隙間があるので、隙間形成部21bが当接部21aより余分に軸方向に変形することで、隙間形成部21bの径方向外側への弾性変形量を小さくできる。その結果、マウント装置100のフランジ部103に隙間形成部21bを乗り上げ難くすることができる。よって、本体部10に円筒部31が埋設されたスプリングシートラバー1の耐久性を向上できる。
【0047】
この場合、隙間形成部21bの径方向外側への弾性変形量を小さくできるので、マウント装置100のフランジ部103とコイルスプリング107の端部との間に介設される張出部20のゴムボリュームを確保できる。よって、本体部10に円筒部31が埋設されたスプリングシートラバー1(張出部20)の制振性能を確保できる。
【0048】
特に本実施の形態では、仮想の第2円筒C2上に当接部21aが位置するので、隙間形成部21bの全てを第2円筒C2の径方向外側に位置させることができる。円筒部31によって本体部10の変位はある程度規制されるが、コイルスプリング107の端部により入力される軸方向荷重によって、隙間形成部21bの全てが軸方向に変位される。これにより、当接部21aの剛性を確保しつつ隙間形成部21bの剛性の増加を抑制できる。その結果、当接部21aによって車両の操縦安定性を確保しつつ、隙間形成部21bによって制振性能を向上できる。
【0049】
さらに本実施の形態によれば、円筒部31の軸方向の一端側から径方向外側に張り出す鍔部32が、張出部20に埋設されている。隙間形成部21bは、無荷重時において、径方向内側から径方向外側へ向かうにつれて鍔部32と当接面21との間の張出部20の軸方向の厚さが小さく設定されるので、コイルスプリング107から受圧面22を介して鍔部32が軸方向荷重を受けたときに、隙間形成部21bを径方向外側へ広がり難くできる。その結果、マウント装置100のフランジ部103に張出部20をさらに乗り上げ難くできるので、スプリングシートラバー1の耐久性をさらに向上できる。
【0050】
特に本実施の形態では、張出部20の外周20aと隙間形成部21bとが、張出部20に埋設された鍔部32に対して軸方向の一端側(
図5上側)で交わるので、マウント装置100のフランジ部103と鍔部32の径方向外側との間に介設される張出部20のゴムボリュームを確保できる。よって、張出部20に鍔部32が埋設されたスプリングシートラバー1の制振性能を確保できる。
【0051】
また本実施の形態では、マウント装置100(取付金具101)は、内嵌部102側に湾入する連設部104がフランジ部103の径方向内側に形成され、無荷重時に、連設部104に当接部21aが当接する。連設部104が形成されていない平坦面状のフランジ部と比較して、連設部104の分だけフランジ部103と隙間形成部21bとの隙間Gを大きくできるので、隙間形成部21bの軸方向の変位量を大きくできる。その結果、軸方向荷重が入力されたときの張出部20の径方向外側への拡径量を抑制できると共に、張出部20の剛性が過大になることを防止できる。
【0052】
次に
図7を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、筒状金具30が埋設されたスプリングシートラバー1について説明した。これに対し第2実施の形態では、筒状金具が埋設されていないスプリングシートラバー41について説明する。なお、第2実施の形態におけるスプリングシートラバー41は、筒状金具が埋設されていない以外は第1実施の形態と同一なので、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図7は第2実施の形態におけるスプリングシートラバー41(無荷重時)の軸方向断面図である。なお、
図7では、図面を簡略化して理解を容易にするため、軸心Oを中心とした片側の断面を図示する(
図8において同じ)。
【0053】
図7に示すスプリングシートラバー41によれば、無荷重時において、隙間形成部21bは、少なくとも一部が、本体部10の外周10bを軸方向に延長した仮想の第1円筒C1の径方向外側に位置する。また、隙間形成部21bは、無荷重時において、径方向内側から径方向外側へ向かうにつれて受圧面22と当接面21との間の張出部20の軸方向の厚さが小さくなるように設定されている。よって、第1実施の形態と同様の作用・効果を実現できる。
【0054】
次に
図8を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、円筒部31及び鍔部32を備える筒状金具30が埋設されるスプリングシートラバー1について説明した。これに対し第3実施の形態では、鍔部が省略された筒状金具60(円筒部)が本体部10に埋設されるスプリングシートラバー51について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図8は第3実施の形態におけるスプリングシートラバー51の軸方向断面図である。
【0055】
スプリングシートラバー51は、コイルスプリング107を介して車輪(図示せず)側から車体(図示せず)側へ伝達される振動を低減するための部材であり、軸心Oを有する略円筒状に形成された本体部10と、その本体部10の軸方向の一端側(
図8上側端部)から軸方向外側にフランジ状に張り出して略円環状に形成された張出部52とを備えている。張出部52は、本体部10の内周10aに連成される面として構成される当接面53と、その当接面53に対向すると共に本体部10に連成される平坦面として構成される受圧面55とを備えている。
【0056】
本体部10は、金属材料から円筒状に形成される筒状金具60が埋設されている。筒状金具60は、軸方向長さが、張出部52を除く本体部10の軸方向長さ(受圧面55から本体部10の軸方向端部(
図8下側端部)までの長さ)と略同一に設定されている。
【0057】
マウント装置100の内嵌部102に本体部10が嵌合され、スプリングシートラバー51が軸方向荷重を受けていない状態で、当接面53は、フランジ部103(連設部104)と当接する当接部21aと、その当接部21aの径方向外側に位置しフランジ部103と隙間Gを形成する隙間形成部54とを備えている。隙間形成部54は、軸方向に荷重を受けていない状態で、軸方向の一端側(
図8上側)の軸方向端面が、当接部21aの軸方向端面より軸方向の他端側(
図8下側)に位置するように形成され、当接部21aから径方向外側に向かうにつれて軸方向の他端側(
図1下側)に向かって傾斜する湾曲面(フランジ部103に向かって凸の湾曲面)を形成している。
【0058】
なお、張出部52は、隙間形成部54が形成される部位において、軸心Oと直交する断面積が下方(
図8下方)へ向かうにつれて増加するように形成されている。これによりマウント装置100は、張出部52に入力される軸方向荷重が大きくなるに従い、張出部52とフランジ部103との接触面積が増加して適度なばね定数を得ることができる。
【0059】
隙間形成部54は、無荷重時において、少なくとも一部が、本体部10の外周10bを軸方向に延長した仮想の第1円筒C1の径方向外側(
図8左側)に位置し、径方向内側から径方向外側へ向かうにつれて受圧面55と当接面53との間の張出部52の軸方向の厚さが小さくなるように設定される。また、隙間形成部54は、無荷重時において、少なくとも一部が、筒状金具60を軸方向に延長した仮想の第2円筒C2の径方向外側に位置する。なお、本実施の形態では、無荷重時において、隙間形成部54及び当接部21aが第2円筒C2の径方向外側に位置する。
【0060】
スプリングシートラバー51においても、隙間形成部54によって第1実施の形態と同様の作用・効果を実現できる。特に、スプリングシートラバー51は、無荷重時において、隙間形成部54及び当接部21aが第2円筒C2の径方向外側に位置するので、軸方向荷重が入力されたときの隙間形成部54の動ばねが過大になることを防止することができ、制振性能を確保できる。
【0061】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた当接部21a、凹溝23の数や形状、隙間形成部21b,54の形状や寸法は一例であり、他の形状や数値を採用することは当然可能である。
【0062】
上記各実施の形態では、スプリングシートラバー1,41,51のばね定数を調整するための凹溝23が当接面21,53に放射状に形成される場合について説明した。その結果、凹溝23によって当接部21aが周方向に分断されていた。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、適宜のゴム状弾性体を選択することによりスプリングシートラバーのばね定数を調整し、凹溝を省略することで当接部21aを周方向に連続して形成することは当然可能である。これにより、スプリングシートラバーの軸方向の弾性変形を周方向で略一様にすることができ、大きな荷重が局所的にスプリングシートラバーに作用することを防止できる。その結果、スプリングシートラバーの耐久性を向上できる。
【0063】
上記各実施の形態では、当接面21,53に放射状に凹溝23が形成され、隙間形成部21b,54が、凹陥部25が形成される部位を除いて、当接部21a及び凹溝23の径方向外側に形成される場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、凹溝23の軸方向深さが隙間形成部21b,54の傾斜に対して相対的に大きい場合には、凹溝23の径方向外側に隙間形成部21b,54が形成されないようにすることは当然可能である。この場合も本実施の形態と同様に、凹溝23によってばね定数を調整しつつ、隙間形成部21b,54によって張出部20,53のフランジ部103への乗り上げを防止できる。
【0064】
上記各実施の形態では、マウント装置100のフランジ部103に連設部104が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、連設部104を省略してフランジ部103をフラット状(平坦面状)にすることは当然可能である。この場合も本実施の形態と同様に、隙間形成部21b,54があるので、張出部20,53のフランジ部103への乗り上げを防止できる。
【0065】
上記各実施の形態では、無荷重時に、本体部10の外周10bを軸方向に延長した仮想の第1円筒C1、及び、円筒部31や筒状金具60(円筒部)を軸方向に延長した仮想の第2円筒C2の径方向外側に、隙間形成部21b,54の全部が位置する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではない。隙間形成部21b,54の少なくとも一部が、第1円筒C1や第2円筒C2の径方向外側に位置するように設定すれば、軸方向荷重が入力されたときの張出部20,53の径方向外側への弾性変形量を抑制できるので、上記各実施の形態と同様の作用・効果を実現できるからである。