(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-218915(P2015-218915A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
F22D 5/26 20060101AFI20151110BHJP
F22D 11/06 20060101ALI20151110BHJP
F22D 11/00 20060101ALI20151110BHJP
【FI】
F22D5/26 C
F22D11/06 Z
F22D11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-100653(P2014-100653)
(22)【出願日】2014年5月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】森 直樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】因幡 英浩
(57)【要約】
【課題】ボイラ内の水位を低下させる場合であっても、ドレンがエコノマイザ等の熱交換器内で沸騰することを確実に防止する。
【解決手段】ボイラと、ボイラ1への給水を、ボイラ1からの排気ガスにより予熱する熱交換器7と、熱交換器7への給水量を調整する流量調整手段11と、ボイラ1内の水位を低下させる場合、熱交換器7への給水温度の違いに応じて、熱交換器7への給水量が、沸騰限界量を超え、かつ、実際蒸発量を超えない範囲となるように流量調整手段11を制御する制御手段14とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラと、
前記ボイラへの給水を、前記ボイラからの排気ガスにより予熱する熱交換器と、
前記熱交換器への給水量を調整する流量調整手段と、
前記ボイラ内の水位を低下させる場合、前記熱交換器への給水温度の違いに応じて、前記熱交換器への給水量が、沸騰限界量を超え、かつ、実際蒸発量を超えない範囲となるように前記流量調整手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするボイラシステム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記熱交換器への給水温度が低いほど、前記熱交換器への給水量が少なくなるように前記流量調整手段を制御することを特徴とする請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記熱交換器への給水量が、前記沸騰限界量よりも大きい給水下限値を超え、前記実際蒸発量よりも小さくて前記給水下限値よりも大きい給水上限値を超えない範囲となるように前記流量調整手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のボイラシステム。
【請求項4】
前記ボイラへの給水はクローズド方式で回収されたドレンであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のボイラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラシステムとして、給水用モータバルブの開度を制御して、ドレンタンクに回収したドレンを、エコノマイザへ連続的に給水することにより、エコノマイザ内でドレンが沸騰しないようにしたものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記従来のボイラシステムでは、ボイラ内の水位を低下させる場合、目標流量となるように給水用モータバルブの開度を調整しているだけである。目標流量はバーナの燃焼状態に応じて設定されているものの、冷態起動時等、給水温度の変化が生じた際には適切な量とすることは難しい。
【0004】
通常、ドレンの給水温度は高温(例えば、130℃)であるが、冷態起動時等で低温(例えば、20℃)となる場合がある。このとき、高温の給水温度を基準に決定した目標給水量によりボイラに給水すると、給水量がボイラでの蒸発量を超え、逆に水位が上昇するという問題が発生する(
図3中、2点鎖線の丸を結ぶ線で示す。これは、体積流量が一定で、130℃を基準とした場合の目標流量を示す線である。)。特に、小型ボイラの場合、この問題は顕著なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−2385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、給水温度の違いに拘わらず、ドレンがエコノマイザ等の熱交換器内で沸騰することを防止しつつ、ボイラ内の水位を確実に低下させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
ボイラと、
前記ボイラへの給水を、前記ボイラからの排気ガスにより予熱する熱交換器と、
前記熱交換器への給水量を調整する流量調整手段と、
前記ボイラ内の水位を低下させる場合、前記熱交換器への給水温度の違いに応じて、前記熱交換器への給水量が、沸騰限界量を超え、かつ、実際蒸発量を超えない範囲となるように前記流量調整手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするボイラシステムを提供する。
【0008】
この構成により、実際蒸発量を超えない範囲で流量を調整するので、ボイラ内の水位を低下させることができる。また、沸騰限界量を超える範囲で流量を調整するので、熱交換器で沸騰することを確実に防止することができる。特に、熱交換器への給水温度の違いに応じて、その給水量を調整するようにしているので、ボイラ内での水位を低下させつつ、熱交換器内での沸騰をより一層適切に防止することができる。
【0009】
この場合、前記制御手段は、前記熱交換器への給水温度が低いほど、前記熱交換器への給水量が少なくなるように前記流量調整手段を制御するのが好ましい。
【0010】
この構成により、冷態起動時等の水温が低い状態での過給水をより一層確実に防止することができる。
【0011】
前記制御手段は、前記熱交換器への給水量が、前記沸騰限界量よりも大きい給水下限値を超え、前記実際蒸発量よりも小さくて前記給水下限値よりも大きい給水上限値を超えない範囲となるように前記流量調整手段を制御するのが好ましい。
【0012】
この構成により、ボイラ内での水位の低下と熱交換器での沸騰の防止とを確実に行わせることができ、誤動作が発生することがない。
【0013】
前記ボイラへの給水はクローズド方式で回収されたドレンであれば、前記構成による効果はより有効なものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、実際蒸発量と沸騰限界量の範囲内で、熱交換器への給水温度の違いに応じて熱交換器への給水量を調整するようにしたので、給水温度の違いに拘わらず、熱交換器での沸騰を防止しつつ、ボイラへの給水量を抑制して確実に水位を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係るボイラシステムの概略説明図である。
【
図2】
図1の制御装置で実行する処理内容を示すフローチャートである。
【
図3】給水温度と給水量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0017】
図1は本実施形態に係るボイラシステムを示す。このボイラシステムでは、ボイラ1で発生させた蒸気をスチームヘッダ2を介して熱交換器等の負荷機器3に供給し、負荷機器3で発生したドレンを、スチームトラップ3aを介してドレンタンク4に回収してボイラ1に還流させるように構成されている。
【0018】
ボイラ1には、例えば、多管貫流ボイラ等が使用され、そこには内部の圧力を検出する圧力センサ5及び内部の水位を検出する水位センサ6が設けられている。各センサの出力は、後述する制御装置14(例えば、マイコン)に入力される。また、ボイラ1にはエコノマイザ7が取り付けられている。エコノマイザ7は、ボイラ1への給水をボイラ1からの排ガスによって予備加熱(予熱)するための熱交換器の一例である。なお、ボイラ1には、流量調整弁1aを有する燃料供給ライン1bを介して燃料が供給されるようになっている。
【0019】
スチームヘッダ2は、ボイラ1で発生した蒸気を一時的に貯留して負荷機器3に供給するために設けられている。
【0020】
負荷機器3は、例えば、ボイラ1から供給された蒸気の熱を利用して他の機器でその熱を利用可能とする熱交換器等で構成されている。
【0021】
ドレンタンク4はクローズド方式の密閉型であり、その底部とエコノマイザ7の底部とは給水配管8で接続されている。給水配管8の途中には、ドレンタンク4側から順に、給水ポンプ9、流量センサ10、給水用モータバルブ11、及び、逆止弁12が設けられている。また、エコノマイザ7の入口温度は温度センサ13によって検出されるようになっている。ドレンタンク4の上部は、圧力調整弁15を介して、後述する補給水タンク16の上部に接続されており、発生したフラッシュ蒸気が排出される。なお、フラッシュ蒸気とは、高温高圧の凝縮水(復水またはドレン水ともいう)が低圧の雰囲気に晒されたときに、凝縮水の一部が蒸気になったものをいい、再蒸発蒸気とも呼ばれる。
【0022】
制御装置14は、水位センサ6、流量センサ10、温度センサ13等から各種検出信号の入力を受け、給水ポンプ9、給水用モータバルブ11等を駆動制御する。
【0023】
なお、16は補給水タンクであり、送水ポンプ17、逆止弁18を介してドレンタンク4に接続されている。ドレンの使用量が多く、ドレンタンク4内の水位が下限水位より低下すれば、送水ポンプ17を駆動して補給水タンク16からドレンタンク4に補給水を給水できるようになっている。また補給水タンク16は、送水ポンプ19、逆止弁20を介してボイラ1に接続されている。ドレンタンク4の水位が低下し、ボイラ1への給水が間に合わない場合等に、直接、補給水タンク16からボイラ1へと給水できるようになっている。
【0024】
次に、前記構成からなるボイラシステムの動作について、
図2のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0025】
ボイラ1内でバーナを燃焼させていない待機状態であれば、エコノマイザ7内でドレンが沸騰する恐れがないので、後述する給水信号「無」に対応する信号を出力し、給水用モータバルブ11を全閉とする。
【0026】
また、ボイラ1内のバーナを、例えば、燃焼(例えば、高又は低の2段階、高、中又は低の3段階等)させた状態であれば、次のようにして給水用モータバルブ11の開度を調整する。
【0027】
すなわちまず、ボイラ1内の水位を検出する水位センサ6からの検出信号を読み込み(ステップS1)、読み込んだ検出水位に基づいて給水要求の有無を判断する(ステップS2)。給水要求の有無は、水位センサでの検出水位が予め設定した下限水位以下であるか否かを判断することにより行う。
【0028】
検出水位が下限水位以下であれば(ステップS2:YES)、給水要求有りであると判断し、給水用モータバルブ11に給水信号「有」を送信し、給水配管8を全開とする(ステップS3)。これにより、ボイラ1内の水位が上昇する。ここで、検出水位が上限水位に到達したか否かを判断する(ステップS4)。そして、ボイラ1内の水位が上限水位に到達するまで、給水配管8を全開とした状態での給水が続行される。
【0029】
検出水位が上限水位を超えれば(ステップS4:YES)、給水要求無しであると判断し、給水用モータバルブ11に給水信号「無」を送信し、次のようにして給水配管8の開度を調整する。すなわち、給水量が給水温度の違いに応じて実際蒸発量と沸騰限界量の間で変化するように目標給水量を決定し、この目標給水量に基づいて給水配管8の開度を調整する給水量調整処理を実行する(ステップS5)。なお、この給水量調整処理は、検出水位が下限水位を超えている間(ステップS2:NO)、続行される。
【0030】
具体的には、
図3のグラフに示すように、予め実験等により実際蒸発量(
図3中、黒塗り四角(◆)を結ぶ線で示す)と沸騰限界量(
図3中、黒塗り三角(▲)を結ぶ線で示す)とを決定し、両グラフの間で変化する1次関数(
図3中、実線で示す)を、ある給水温度に対する目標給水量に決定する。実際蒸発量は、給水温度を変化させた場合、その給水温度で蒸発量に到達する給水量を予め実験等により求めておく。沸騰限界量は、給水温度を変化させた場合、その給水温度でエコノマイザ7の出口で飽和温度に到達する給水量を予め実験等により求めておく。1次関数は、例えば、最高給水温度での給水量の中間値と、最低給水温度での給水量の中間値を結んだ直線とすればよい。但し、1次関数の決定方法はこれに限らず、実際蒸発量及び沸騰限界量のグラフに交差しなければ、いずれの直線としてもよい。また1次関数に限らず、例えば、ある給水温度での実際蒸発量と沸騰限界量の差分の何%というように決定してもよい。
【0031】
このように、ボイラ1内で燃焼させているときに、給水要求が無く、ボイラ1内の水位を低下させる必要がある場合には、給水量が実際蒸発量を超えないように調整することによりこの要求に応えることができる。すなわち、給水温度が変化したとしても、その変化に応じた適切な値に目標給水量を変更するようにしている。したがって、給水温度が高くなったとしても実際蒸発量を超えることのない給水量とすることができる。しかも、たとえ給水温度が低くなったとしてもその温度低下に応じた給水量とすることができる。この結果、給水温度の違いに拘わらず、ボイラ1への過給水を確実に防止することが可能となる。また、目標給水量が沸騰限界量を超えるように調整することにより、エコノマイザ7内での沸騰を防止することができる。この場合も、給水温度の変化に応じた給水量とできるので、給水温度が高くて沸騰限界量が実際蒸発量に接近している場合であってもエコノマイザ7での沸騰を確実に防止することが可能となる。
【0032】
特に、小型クローズドのドレンタンク4(例えば、貯留可能なドレンの重量が10kg程度のもの)では、給水温度と、使用圧力範囲での飽和温度とが接近しているが、前述の方法によりエコノマイザ7内での沸騰を防止しつつ、給水温度の違いに拘わらず、確実に過給水を防止することができる。
【0033】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0034】
例えば、前記実施形態では、実際蒸発量と沸騰限界量を実験等により決定するようにしたが、給水温度を変数とする数式を利用して決定するようにしてもよい。要するに、給水温度に違いにより変化する実際蒸発量と沸騰限界量を把握可能となっていればよい。
【0035】
また、前記実施形態では、目標給水量を、実際蒸発量と沸騰限界量のほぼ中央値を狙って決定するようにしたが、給水温度が低いほど、目標給水量を小さい値とするのが好ましい。そして、この目標給水量に基づいて給水用モータバルブ11を駆動制御することにより、ボイラ1への給水量を給水温度が低いほど抑制することができる。これによれば、冷態起動時等の水温が低い状態で、エコノマイザ7を介してボイラ1に給水される量が過剰となってその水位が上昇してしまうといった不具合の発生をより一層確実に防止することができる。
【0036】
また、前記実施形態では、目標給水量を、給水温度の違いに応じて実際蒸発量と沸騰限界量の間で変化させるようにしたが、給水上限値と給水下限値を決めて、その間で変化させるようにしてもよい。給水上限値は、実際蒸発量よりも所定値(例えば、50kg/h)だけ小さい値を使用すればよい。また、給水下限値は、給水上限値よりも小さくて沸騰限界量よりも所定値(例えば、50kg/h)だけ大きい値を使用すればよい。
【0037】
これによれば、目標給水量を給水上限値と給水下限値の間で変化させるのであれば、給水上限値又は給水下限値となるような変化であっても、一時的にでもボイラ1への実際給水量が実際蒸発量を上回ったり、沸騰限界量を下回ったりすることを確実に防止することができる。すなわち、ボイラ1内での水位が上昇する過給水の状態や、エコノマイザ7でドレンが沸騰してしまう状態を確実に阻止することが可能となる。
【0038】
また、前記実施形態では、熱交換器の例としてエコノマイザ7の説明を行ったが、内部での沸騰を防止しつつボイラ1への給水量を抑制できるのであれば、他のタイプの熱交換器であっても採用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…ボイラ
2…スチームヘッダ
3…負荷機器
4…ドレンタンク
5…圧力センサ
6…水位センサ
7…エコノマイザ(熱交換器)
8…給水配管
9…給水ポンプ
10…流量センサ
11…給水用モータバルブ(流量調整手段)
12…逆止弁
13…温度センサ
14…制御装置(制御手段)
15…圧力調整弁
16…補給水タンク
17…送水ポンプ
18…逆止弁
19…送水ポンプ
20…逆止弁