特開2015-218973(P2015-218973A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015218973-管群構造ボイラ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-218973(P2015-218973A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】管群構造ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/10 20060101AFI20151110BHJP
   F22B 17/12 20060101ALI20151110BHJP
【FI】
   F22B37/10 X
   F22B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-103775(P2014-103775)
(22)【出願日】2014年5月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊池 太希
(72)【発明者】
【氏名】池上 毅
(72)【発明者】
【氏名】森 光義
(72)【発明者】
【氏名】越智 一喜
(57)【要約】
【課題】ボイラ本体1での高温ガス流路の途中に流路断面積を拡大している拡大空間7を設けている管群構造ボイラにおいて、ボイラ本体部分における熱の吸収量を増加する。
【解決手段】
左右に設けた壁面11と上下に設けた管寄せによって囲まれる略直方体の空間内に多数の垂直水管8を設置したボイラ本体を持ち、高温ガスをボイラ本体の一方の側面から対向する他方の側面に向けて流す構成としている管群構造ボイラにおいて、ボイラ本体部における高温ガス流路の途中に前記の垂直水管8の設置密度を減らすことによって高温ガス流路の断面積を拡大している拡大空間7を設けておき、前記拡大空間における左右の壁面11には高温ガス流路の中心方向へ向けて延びる突起体10を設ける。また、前記の突起体10は縦方向に長い板状部材であって壁面から垂直に立設する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に設けた壁面と上下に設けた管寄せによって囲まれる略直方体の空間内に多数の垂直水管を設置したボイラ本体を持ち、高温ガスをボイラ本体の一方の側面から対向する他方の側面に向けて流す構成としている管群構造ボイラにおいて、ボイラ本体部における高温ガス流路の途中に前記の垂直水管の設置密度を減らすことによって高温ガス流路の断面積を拡大している拡大空間を設けておき、前記拡大空間における左右の壁面には高温ガス流路の中心方向へ向けて延びる突起体を設けていることを特徴とする管群構造ボイラ。
【請求項2】
請求項1に記載の管群構造ボイラにおいて、前記の拡大空間は脱硝用触媒などを挿入するために高温ガス流路内の垂直水管をなくした空間であって、拡大空間の下流に後段側の垂直水管を設置しているものであり、前記突起体は後段側の垂直水管設置部の入口側における左右の壁面に設けていることを特徴とする管群構造ボイラ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の管群構造ボイラにおいて、前記の突起体は縦方向に長い板状部材であって壁面から垂直に立設しているものであることを特徴とする管群構造ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直水管を多数設けたボイラ本体を持ち、垂直水管と交差するようにボイラ本体の一端側から他端側へ高温ガスを流すことで垂直水管の加熱を行うようにしている管群構造ボイラに関するものであり、より詳しくは、ボイラ本体部の高温ガス流路途中に垂直水管の設置密度を少なくすることで流路断面積を拡大している拡大空間を持っている管群構造ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスエンジンなどで燃焼を行って発電を行い、ガスエンジンなどから排出される高温排ガスはボイラへ供給し、ボイラで高温排ガスから熱の回収を行うようにしたコージェネレーションが近年増加している。この場合のボイラとしては、特開2001−124301号公報に記載しているように、左右に設けた壁面と上下に設けた管寄せによって囲まれる略直方体の空間内に多数の垂直水管を設置した管群構造ボイラがよく用いられている。このボイラでは、ボイラ本体の側部に入口ダクト、ボイラ本体の入口ダクトとは反対側に出口ダクトを設置しておき、高温ガスをボイラ本体の一方の側面から対向する他方の側面に向けて流す構成としている。
【0003】
図3・4に記載しているような高温排ガスから熱回収を行う管群構造ボイラでは、入口ダクト3の上部に排ガス入口5を設けており、入口ダクト3には下向きに高温排ガスを導入する。入口ダクトと隣り合う位置にボイラ本体1を設けており、入口ダクト3とボイラ本体4は側面を開口してつなげておくことで、入口ダクト内に入った高温排ガスは入口ダクトの側面からボイラ本体の伝熱部へ入る。高温排ガスは入口ダクト内を下向きに流れ、入口ダクト内の底部まで達すると流れの方向を90度変化させ、ボイラ本体側へ向けて流れる。
【0004】
ボイラ本体1部分では、上部に上部管寄せ、下部に下部管寄せを設けており、上下の管寄せ間に多数の垂直水管8を設けている。ボイラ本体部分での高温排ガスは、垂直水管8を設けた部分で垂直水管8とは交差するように横向きに流れる。高温排ガスを垂直水管に接触させると、高温排ガスは垂直水管を加熱し、水管内の缶水を加熱して蒸気を発生する。ボイラ本体の入口ダクトとは逆側の側面には出口ダクト4を設けており、ボイラ本体部分を通過して温度の低下した排ガスは出口ダクト内に入る。出口ダクト4にも上部に排ガス出口6を設けているため、出口ダクト内に入った排ガスは、出口ダクト内で流れ方向を再び変更し、上向きの流れとなって出口ダクトから出ていく。
【0005】
また、燃焼を行うと窒素酸化物が発生するが、窒素酸化物は有害であるために高温排ガス中に尿素水などの還元剤を噴射し、窒素酸化物を分解することを行う場合がある。特にボイラが別に設置したエンジンなどの燃焼装置によって発生している排ガスから熱を回収する排熱回収ボイラでは、脱硝装置を設けることが必要になることがよくある。脱硝装置は、排ガス中に脱硝用の還元剤を噴射し、その後に脱硝触媒の層に通すことによって窒素酸化物の分解を行う。脱硝触媒は適切な温度域に設置することで効果を発揮するため、図4に記載しているようにボイラ本体での流路途中に垂直水管を設置していない拡大空間を作っておき、拡大空間内に脱硝触媒を設置することができるようにしている。脱硝装置を設置するか否かは、窒素酸化物の発生量やボイラの設置環境によって決められており、脱硝装置を設置する場合には拡大空間内に脱硝触媒を設置する。脱硝装置を設置しない場合は、この拡大空間はそのまま何もない空間となる。
【0006】
ところでボイラ本体部分を流れる高温排ガスは、ボイラ本体での高温排ガス流路の全体を均一に流れることが理想である。高温排ガスの流れに片寄りが発生し、高温排ガス流れの多い部分と少ない部分ができると、高温排ガス流れの少ない部分で熱の吸収量が低下し、全体として熱吸収効率が低下することになる。図4に記載している管群構造ボイラでは、ボイラ本体の高温ガス流路途中に拡大空間を設けているが、この拡大空間を設けていることにより、高温排ガス流に片寄りが発生することになっていた。
【0007】
ボイラ本体部の上流域では、高温排ガスの流路に垂直水管があり、この水管によって複数の流路に分割されているため、高温排ガスは分割された流路に分散して流れる。この場合、各分割流路を流れる高温排ガスの量には大きな差は発生せず、ほぼ均等に流れる。しかし、水管を無くしている拡大空間部分に高温排ガスが流れ込むと、高温排ガス流は自由に流れることができるため、進行方向に対して末広がりになるように流れ、一部の高温排ガスは壁面へ向けて流れて壁面に沿って流れる。壁面に沿って流れることになった高温排ガス流は、壁面から離れにくくなるため、拡大空間の部分では、中央部から壁面側へ向かう高温排ガスの流れよりも壁面側から中央部へ向かう高温排ガスの流れが少なくなり、高温排ガス流は壁面付近で多く流れ、高温排ガス流路の中央部分を流れる高温排ガス流は少なくなっていた。その状態で下流側の垂直水管設置部分に高温排ガスが入ると、高温排ガスは壁面に近い部分の分割流路内に多く流れ、高温排ガス通路の中央部分を流れる排ガス流が少なくなる。このように高温排ガス流に片寄りが発生すると、高温排ガス流量が低下する中央部分で熱吸収量が低下することになり、ボイラ全体としての熱吸収量が低下することになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−124301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ボイラ本体での高温ガス流路の途中に流路断面積を拡大している拡大空間を設けている管群構造ボイラにおいて、ボイラ本体部分における熱の吸収量を増加することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、左右に設けた壁面と上下に設けた管寄せによって囲まれる略直方体の空間内に多数の垂直水管を設置したボイラ本体を持ち、高温ガスをボイラ本体の一方の側面から対向する他方の側面に向けて流す構成としている管群構造ボイラにおいて、ボイラ本体部における高温ガス流路の途中に前記の垂直水管の設置密度を減らすことによって高温ガス流路の断面積を拡大している拡大空間を設けておき、前記拡大空間における左右の壁面には高温ガス流路の中心方向へ向けて延びる突起体を設けていることを特徴とする。請求項2に記載の発明は、前記の管群構造ボイラにおいて、前記の拡大空間は脱硝用触媒などを挿入するために高温ガス流路内の垂直水管をなくした空間であって、拡大空間の下流に後段側の垂直水管を設置しているものであり、前記突起体は後段側の垂直水管設置部の入口部分における左右の壁面に設けていることを特徴とする。請求項3に記載の発明は、前記の突起体は縦方向に長い板状部材であって壁面から垂直に立設しているものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明を実施することにより、ボイラ本体部の高温ガス流路途中に配置した拡大空間より下流側において、高温ガス流路の中央部における熱吸収量を多くすることができる。そのため、ボイラ本体での熱吸収効率が向上し、より多くの熱を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を実施している管群構造ボイラのフローを示した説明図
図2図1のA−Aにおける断面平面図
図3】本発明を実施していない管群構造ボイラフローを示した説明図
図4図3のB−Bにおける断面平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1図2は本発明を実施している管群構造ボイラでのフローを示した説明図であり、図2図1のA−Aにおける断面を示した平面図である。実施例のボイラは、ガスエンジンなどから排出されている高温の排ガスから熱を回収して蒸気を発生する管群構造ボイラである。発電を行うガスエンジンなどの燃焼装置と、燃焼装置から排出される高温排ガスを熱源としたボイラからなるコジェレーションシステムは、エネルギの有効活用が図れるために近年増加傾向にある。このボイラの構成は大きく分けると、高温の排ガスを導入する入口ダクト3、導入した高温排ガスの熱によってボイラ水の加熱を行うボイラ本体1、ボイラ本体を通過した後の排ガスをボイラから取り出す出口ダクト4からなる。
【0014】
入口ダクト3は、上部に排ガス入口5を持ち、入口ダクト3の側面で接しているボイラ本体1との間は開口するようにしている。ボイラ本体1には、上部に上部管寄せ12、下部に下部管寄せ9を設け、上下の管寄せ間に多数の垂直水管8を設置している。ボイラ本体1の左右は、水管壁と炉筒によって壁面11を作っており、ボイラ本体1では上下の管寄せと左右の壁面11に囲まれた略直方体の空間に高温排ガスを流す。
【0015】
ボイラ本体内に設けている垂直水管8は、上部より見た場合に碁盤目状となるように設置しており、垂直水管8の外側表面には、熱吸収用のフィンを多数設けることで伝熱面積を拡大している。高温排ガスの流れる流路は、水管によって分割されており、高温排ガスは垂直水管8によって分割された水管間の分割流路内を流れる。この時の高温排ガス流は、分割流路間で多少の入れ替わりはあるが、ほとんどの高温排ガス流は分割流路ごとに分割された状態で直線状に流れ、垂直水管8を加熱する。
【0016】
ボイラ本体1部分での垂直水管8は、高温排ガス流の上流側と下流側に分けて設置しており、その間には脱硝触媒収容用の拡大空間7を設けている。拡大空間7の部分は、脱硝装置を設置する場合には脱硝触媒が入るが、脱硝装置を設けない場合には何もない空間となる。なお、拡大空間部分の壁面は水管壁であってもよく、その場合は壁面部分には水管が存在することになる。
【0017】
拡大空間7の壁面11には、高温排ガスを中心部分へ戻すための突起体10を設ける。突起体10は、拡大空間7の壁面11から中心方向に向けて突出するものであり、拡大空間7部分の下流域に設けている。流路の壁面11に設ける突起体10は、根本側で流路の壁面に接続した縦方向に長い板であって、壁面11より垂直に立設している。突起体10の壁面11からの高さは、垂直水管群の設置位置までは達しないものとしている。
【0018】
出口ダクト4には、ボイラ本体部分での熱交換を終えた後の排ガスとボイラ給水の間で熱交換を行う給水予熱装置2を設けている。給水予熱装置2は、排ガス通路内で水平方向に延びる多数の給水予熱管からなる。給水予熱管は出口ダクト4内を通る排ガス流とは交差するように設置しており、給水予熱管の外側表面には熱吸収用のフィンを多数設けることで伝熱面積を拡大している。多数の給水予熱管は、連結することによって長い流路を形成しており、給水予熱管内にボイラ給水を通すと、ボイラ給水は排ガスの熱を吸収することで温度が上昇する。給水予熱装置2で温度を上昇させたボイラ給水は、ボイラ本体1に供給する。
【0019】
ボイラ本体1での高温排ガスの流れを説明する。入口ダクト3は上部に排ガス入口5を設けているため、排ガス入口から入ってきた高温排ガスは入口ダクト3内を下向きに流れる。高温排ガスが入口ダクト3の底部に衝突すると、流動方向をボイラ本体1の方向へ変えてイラ本体1内へ流れる。
【0020】
入口ダクト3からボイラ本体1へ入った高温排ガスは、ボイラ本体1で垂直水管8と熱交換を行い、垂直水管8内の缶水を加熱することで蒸気を発生する。高温排ガスはまず拡大空間7よりも上流側の垂直水管8を加熱する。垂直水管8は碁盤目状に設置しており、高温排ガスが流れる流路は水管に分割されている。そのため、高温排ガスは垂直水管8によって分割された水管間の分割流路内を流れる。この時の高温排ガス流は、分割流路内で直線状に流れ、垂直水管8を加熱する。
【0021】
高温排ガス流が拡大空間7まで来ると、拡大空間7では垂直水管8がなく、水管によって分割していた流路はなくなって一つの大きな空間になっているため、拡大空間7では高温排ガス流は自由に流れる。拡大空間7の部分で流路が広くなると、高温排ガスは広がりながら流れ、一部の高温排ガス流は壁面11に達してそのまま壁面11に沿って流れる。壁面11が平らであった場合、壁面11に沿って流れる高温排ガス流は壁面から離れずに流れ続けるものが多くなる。すると、壁面側から流路の中心側へ戻る高温排ガス量は中心側から壁面側に向かう高温排ガス流よりも少なくなり、高温排ガスは流路の壁面11近くに流れるものが多くなる反面、流路の中心部分を流れる高温排ガス量は少なくなる。
【0022】
高温排ガスが流路の壁面11近くに多く流れ、流路の中心部分を流れる高温排ガス量は少なくなった状態で、高温排ガス流が拡大空間7から垂直水管8の設置部に入ると、図4に記載しているように高温排ガスは壁面11に近い部分の分割流路に多く流れ、中心付近の分割流路に流れる高温排ガス量は少なくなる。このような状態になると、流路の中心に近い垂直水管8では接触する高温排ガスの流量が減少するために熱の吸収量が低下することになっていた。
【0023】
拡大空間7の壁面11に高温排ガスを中心部分へ戻すための突起体10を設けておくと、拡大空間7の壁面に沿って流れてきた高温排ガス流は、突起体10に衝突することで壁面からはく離し、流れの方向が流路の中心方向へ変化する。突起体10の壁面からの高さは、低すぎると高温排ガス流を中心側へ送る作用が少なくなるが、高くなりすぎた場合には流れにとって抵抗となり、壁面近くに位置する垂直水管8へ流れる高温排ガス量が少なくなる。そのため突起体10は、垂直水管8の間にできる各分割流路に流れる高温排ガス量がほぼ均等になるような高さに設定しておく。突起体10によって壁面付近の高温排ガスを中心側に送り、各分割流路にはほぼ均等に高温排ガスを流すようにすることで、中心付近に配置している垂直水管8での熱吸収量が増加し、ボイラ本体全体での熱吸収量を多くすることができる。
【0024】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。例えば突起体の形状は、流路中心側となる先端の辺が根本側の壁面との接合している辺よりも流路下流側となるように傾斜を設けたものであってもよい。この場合、突起体の形状は上面から見た平面図が三角形となるものであると安定するために好ましい。
【符号の説明】
【0025】
1 ボイラ本体
2 給水予熱装置
3 入口ダクト
4 出口ダクト
5 排ガス入口
6 排ガス出口
7 拡大空間
8 垂直水管
9 下部管寄せ
10 突起体
11 壁面
12 上部管寄せ


図1
図2
図3
図4