【実施例】
【0028】
以下、実施例のコネクタ用端子について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0029】
(実施例1)
実施例1のコネクタ用端子について、
図1、
図2を用いて説明する。
図1、
図2に示すように、本例のコネクタ用端子1は、相手方コネクタ用端子(不図示)に電気的に接触させるための電気接点110を有する接触部11と、電線(不図示)の導体を圧着するための圧着部13とを有しており、CuまたはCu合金を母材10とする。本例では、接触部11と圧着部13との間は、具体的には、接触部11と圧着部13とを連結する連結部12とされている。
【0030】
本例では、コネクタ用端子1は、具体的には、メス型端子である。コネクタ用端子1は、自動車用ワイヤーハーネスが有するコネクタ(不図示)に用いられるものである。コネクタ用端子1は、詳細は図示しないが、より具体的には、電気接続すべき相手方コネクタ用端子としてのオス型端子が有するタブ部を挿入させるための挿入口が開口した筒状部を有している。筒状部の内部には、底面板が内側後方へ折り返されて形成された弾性接触片が設けられている。弾性接触片は、挿入されたオス型端子のタブ部に上向きの力を加える。オス型端子のタブ部は、弾性接触片によって筒状部の天井板の内側面に押し付けられる。これにより、オス型端子のタブ部が弾性接触片と天井板の内側面との間に挟圧状態で保持される。弾性接触片のオス型端子に接触する部分には、エンボス部が形成されている。エンボス部は、弾性接触片の表面を半球状に隆起させることにより形成された突起部である。エンボス部は、その頂部近傍にてオス型端子のタブ部と接触する。本例では、このエンボス部のうち、オス型端子と実質的に接触する部位が電気接点に該当する。また、コネクタ用端子1において、圧着部13は、より具体的には、一対の圧着片からなる。
【0031】
コネクタ用端子1において、電気接点110は、母材10上に、Ag−Sn合金層111と、Ag−Sn合金層111の表面に配置されるとともに電気接点110の最表面に露出するAg層112とを有している。
【0032】
本例では、具体的には、Ag−Sn合金層111およびAg層112は、接触部11における電気接点110の少なくとも周辺部まで延設されている。より具体的には、本例のコネクタ用端子1は、接触部11における母材10上に、Ag−Sn合金層111と、Ag−Sn合金層111の表面に配置されるとともに接触部11の最表面に露出するAg層112とを有する構成とされている。つまり、本例のコネクタ用端子1は、接触部11における電気接点110だけでなく、接触部11における電気接点110を除いた大部分もAg層112の表面が最表面とされ、Ag層112の下面に接するようにAg−Sn合金層111が配置されている。したがって、接触部11において、電気接点110と電気接点110を除いた部分における各Ag層112は、互いに連続している。同様に、接触部11において、電気接点110と電気接点110を除いた部分における各Ag−Sn合金層111は、互いに連続している。
【0033】
コネクタ用端子1において、圧着部13は、母材10上に、圧着部13の最表面に露出するSn層113を有している。なお、Sn層113は、Sn合金層に変更することができる。本例では、具体的には、Sn層は、圧着部13の圧着時に圧着治具(不図示)に接触する治具接触面と、導体と接触する導体接触面との両方に存在している。
【0034】
コネクタ端子1において、連結部12は、母材10上に、連結部12の最表面に露出するSn層113を少なくとも有している。なお、Sn層113は、Sn合金層に変更することができる。本例では、具体的には、連結部12のSn層113は、圧着部13のSn層113と連続している。
【0035】
本例のコネクタ端子1は、Ag−Sn合金層111と母材10との間、および、Sn層113と母材10との間に、さらに、Ni層114を有している。このNi層114は、Ni合金層に変更することができる。なお、接触部11、圧着部13、および、連結部12における各Ni層114は、互いに連続している。
【0036】
本例のコネクタ用端子1において、Ag層112の厚みは、具体的には、1μmである。Ag−Sn合金層111の厚みは、具体的には、4μmである。Sn層113の厚みは、具体的には、1.4μmである。Ni層114の厚みは、具体的には、1μmである。なお、本例のコネクタ用端子1は、板状の端子材料を打ち抜いた後、折り曲げ加工されて構成されたものであり、打ち抜き時に生じた切断面では母材が露出している。
【0037】
本例のコネクタ用端子1は、具体的には、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0038】
CuまたはCu合金を母材10とする板材を準備する。そして、
図2に示されるように、板材の表面に、電気めっき法により、例えば、厚み1μmのNiめっき21を形成する。次いで、Niめっき21により表面が覆われた板材において、後述する端子形状の打ち抜き後の折り曲げ加工により接触部11となる接触部形成部110に、例えば、厚み1.3μmのAgめっき22を形成する。なお、端子形状の打ち抜き後の折り曲げ加工により圧着部13になる圧着部形成部130と、端子形状の打ち抜き後の折り曲げ加工により連結部12になる連結部形成部120とは、Niめっき21の表面にAgめっき22が施されないように予めマスクしておく。次いで、接触部形成部110に施されたAgめっき22の表面と、圧着部形成部130と連結部形成部120とに施されたNiめっき21の表面とを覆うように、例えば、厚み1.4μmのSnめっき23を形成する。次いで、このSnめっき23の表面のうち、接触部形成部110におけるSnめっき23の表面を覆うように、例えば、厚み2.3μmのAgめっき24を形成する。なお、圧着部形成部130と連結部形成部120とは、Snめっき23の表面にAgめっき24が施されないように予めマスクしておく。このようにして、母材10上に、
図2に示されるような積層構造を有する積層めっき層25を形成する。次いで、例えば、200℃で30分間の加熱処理(リフロー処理)を実施する。次いで、上記のようにして得られた板状の端子材料を端子展開形状に打ち抜き、折り曲げ加工することにより、所定のコネクタ用端子とする。
【0039】
上記加熱処理により、Agめっき22、Snめっき23、および、Agめっき24とからAg−Sn合金層111が形成されるとともに、Ag−Sn合金層111の表面にAg層24が形成される。なお、条件によっては、Ag−Sn合金層111の下面にAg層が形成されることもある。また、上記加熱処理により、Snめっき23からSn層113が形成される。
【0040】
次に、本例のコネクタ用端子1の作用効果について説明する。
【0041】
コネクタ用端子1は、相手方コネクタ用端子に電気的に接触させる電気接点110が、母材10上に、Ag−Sn合金層111と、Ag−Sn合金層111の表面に配置されるとともに電気接点110の最表面に露出するAg層112とを有している。そのため、コネクタ用端子1は、電気接点110の最表面に露出するAg層112により、相手方コネクタ用端子との接触抵抗を低くすることができる。また、コネクタ用端子1は、Ag−Sn合金層111を有するので、熱的な安定性が高まり、電気接点110の耐熱性を高くすることができる。また、コネクタ用端子1は、Ag層112の下方にAg層112に比べて高い硬度を有するAg−Sn合金層111が配置されているので、Ag層112表面の摩擦係数が低下し、電気接点110の耐摩耗性を向上させることが可能となる。
【0042】
ここで、コネクタ用端子1は、圧着部13が、母材10上に、圧着部13の最表面に露出するSn層23を有している。つまり、コネクタ用端子1は、圧着部13にAg層110を有していないため、Agの使用面積が減少している。そのため、コネクタ用端子1は、従来に比べ、Ag使用量を削減することが可能となり、製造コストの低減に寄与することができる。さらに、圧着部13の最表面に露出するSnは、Agに比べ、凝着し難い金属である。そのため、コネクタ用端子1は、圧着時に、圧着部13のSn層113と圧着治具との間で凝着が発生し難く、圧着部13のかしめ形状の悪化に起因して圧着部13の接続信頼性が低下するおそれがない。その結果、コネクタ用端子1は、圧着部13の接続信頼性を向上させることができる。
【0043】
また、本例のコネクタ用端子1は、母材10表面にNi層が配置されている。そのため、本例のコネクタ用端子1は、大電流による発熱によりその温度が上昇した場合や、高温環境下に曝された場合等に、母材成分のCuが端子最表面に拡散して酸化物が形成されることにより接触抵抗が増大するのを抑制しやすい利点がある。
【0044】
(実施例2)
実施例2のコネクタ用端子について、
図3を用いて説明する。
【0045】
本例のコネクタ用端子1は、
図3に示されるように、接触部11における電気接点110の部分にだけ、Ag−Sn合金層111およびAg層112が配置されている例である。なお、接触部11における電気接点110以外の表面は、Sn層113で覆われている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0046】
本例のコネクタ用端子1は、実施例1のコネクタ用端子1に比べ、Agの使用面積がさらに減少している。そのため、本例のコネクタ用端子1は、さらなるAg使用量の削減により、製造コストの低減に有利である。その他の作用効果は、実施例1と同様である。
【0047】
(実施例3)
実施例3のコネクタ用端子について、
図4を用いて説明する。
【0048】
本例のコネクタ用端子1は、
図4に示されるように、実施例1のコネクタ端子1におけるNi層114が省略されている例である。また、本例のコネクタ用端子1は、接触部11の表面のうち、電気接点110と電気接点110の周辺部115とが、母材10上に、Ag−Sn合金層111と、Ag−Sn合金層111の表面に配置されたAg層112とを有している。つまり、本例のコネクタ用端子1は、電気接点110の周辺部115よりも外側の部分にAg−Sn合金層111およびAg層112が形成されていない。なお、接触部11における電気接点110以外の表面は、Sn層113で覆われている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0049】
本例のコネクタ用端子1は、電気接点110と電気接点110の周辺部115とが、母材10上に、Ag−Sn合金層111と、Ag−Sn合金層111の表面に配置されたAg層112とを有する。そのため、本例のコネクタ用端子1は、実施例2のコネクタ用端子1に比べ、相手方コネクタ用端子との接触抵抗の低減、電気接点の耐熱性向上、電気接点の耐摩耗性向上をより確実なものとすることができる。また、実施例1のコネクタ用端子1に比べ、Agの使用面積がさらに減少している。そのため、本例のコネクタ用端子1は、さらなるAg使用量の削減により、製造コストの低減に有利である。その他の作用効果は、Ni層114による作用効果を除いて実施例1と同様である。
【0050】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。