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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-219975(P2015-219975A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】コネクタ用端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/03 20060101AFI20151110BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20151110BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20151110BHJP
【FI】
   H01R13/03 D
   C25D5/12
   C25D7/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-100543(P2014-100543)
(22)【出願日】2014年5月14日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 暁博
(72)【発明者】
【氏名】坂 喜文
(72)【発明者】
【氏名】須永 隆弘
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024AA03
4K024AA10
4K024AA21
4K024AA24
4K024AB03
4K024BA09
4K024BB10
4K024BC10
4K024GA16
(57)【要約】
【課題】従来に比べ、Ag使用量を削減することができ、かつ、圧着部における接続信頼性を向上させることが可能なコネクタ用端子を提供する。
【解決手段】コネクタ用端子1は、相手方コネクタ用端子に電気的に接触させるための電気接点110を有する接触部11と、電線の導体を圧着するための圧着部13とを有しており、CuまたはCu合金を母材10とする。電気接点110は、母材10上に、Ag−Sn合金層111と、Ag−Sn合金層111の表面に配置されるとともに電気接点110の最表面に露出するAg層112とを有している。圧着部13は、母材10上に、圧着部13の最表面に露出するSn層またはSn合金層113を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方コネクタ用端子に電気的に接触させるための電気接点を有する接触部と、電線の導体を圧着するための圧着部とを有しており、CuまたはCu合金を母材とするコネクタ用端子であって、
上記電気接点は、上記母材上に、Ag−Sn合金層と、該Ag−Sn合金層の表面に配置されるとともに上記電気接点の最表面に露出するAg層とを有しており、
上記圧着部は、上記母材上に、上記圧着部の最表面に露出するSn層またはSn合金層を有していることを特徴とするコネクタ用端子。
【請求項2】
上記Ag−Sn合金層と上記母材との間、上記Sn層または上記Sn合金層と上記母材との間に、さらに、Ni層またはNi合金層を有していることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ用端子。
【請求項3】
上記圧着部の圧着時に圧着治具に接触する治具接触面および上記電気接点以外における端子部分の最表面には、上記母材、上記Sn層、上記Sn合金層、上記Ag層、上記Ag−Sn合金層、上記Ni層、および、上記Ni合金層からなる群より選択される少なくとも1つが露出していることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ用端子。
【請求項4】
上記Ag−Sn合金層および上記Ag層は、上記接触部における上記電気接点の少なくとも周辺部まで延設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタ用端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ用端子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車等の普及に伴い、モーター等へ電力を供給する電力供給線等に大電流用のコネクタ用端子が使用されるようになっている。この種のコネクタ用端子は、大電流が流れるため発熱量が大きい。また、上記コネクタ用端子は、電流容量に合わせて端子サイズも大きくなるため、コネクタ嵌合時における相手方コネクタ用端子との嵌合力が大きくなりやすい。そのため、上記コネクタ用端子は、高い耐熱性、摩擦係数の低減による耐摩耗性の向上などが望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、高い耐熱性、低い摩擦係数を有するコネクタ用端子として、端子を形成するためのCuまたはCu合金よりなる母材と、母材表面を被覆するAg−Sn合金層と、Ag−Sn合金層を被覆し、端子最表面に露出するAg層とを有するコネクタ用端子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−5549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコネクタ用端子は、端子最表面の全てにAg層が露出している。そのため、上記コネクタ用端子は、高価なAgの使用量が多くなるという問題がある。また、電線の導体を圧着するための圧着部を有するコネクタ用端子では、端子最表面の全てにAg層が露出している場合、次の問題が生じる。すなわち、Agは、凝着しやすい金属である。そのため、上記圧着部の圧着時に、圧着部のAg層と圧着治具との間で強い凝着が発生しやすくなる。その結果、圧着部のかしめ形状が悪化し、これに起因して圧着部の接続信頼性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、従来に比べ、Ag使用量を削減することができ、かつ、圧着部における接続信頼性を向上させることが可能なコネクタ用端子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、相手方コネクタ用端子に電気的に接触させるための電気接点を有する接触部と、電線の導体を圧着するための圧着部とを有しており、CuまたはCu合金を母材とするコネクタ用端子であって、
上記電気接点は、上記母材上に、Ag−Sn合金層と、該Ag−Sn合金層の表面に配置されるとともに上記電気接点の最表面に露出するAg層とを有しており、
上記圧着部は、上記母材上に、上記圧着部の最表面に露出するSn層またはSn合金層を有していることを特徴とするコネクタ用端子にある。
【発明の効果】
【0008】
上記コネクタ用端子は、相手方コネクタ用端子に電気的に接触させる電気接点が、母材上に、Ag−Sn合金層と、Ag−Sn合金層の表面に配置されるとともに電気接点の最表面に露出するAg層とを有している。そのため、上記コネクタ用端子は、電気接点の最表面に露出するAg層により、相手方コネクタ用端子との接触抵抗を低くすることができる。また、上記コネクタ用端子は、Ag−Sn合金層を有するので、熱的な安定性が高まり、電気接点の耐熱性を高くすることができる。また、上記コネクタ用端子は、Ag層の下方にAg層に比べて高い硬度を有するAg−Sn合金層が配置されているので、Ag層表面の摩擦係数が低下し、電気接点の耐摩耗性を向上させることができる。
【0009】
ここで、上記コネクタ用端子は、圧着部が、母材上に、圧着部の最表面に露出するSn層またはSn合金層を有している。つまり、上記コネクタ用端子は、圧着部にAg層を有していないため、従来に比べ、Agの使用面積が減少している。そのため、上記コネクタ用端子は、従来に比べ、Ag使用量を削減することが可能となり、製造コストの低減に寄与することができる。さらに、圧着部の最表面に露出するSnまたはSn合金は、Agに比べ、凝着し難い金属である。そのため、上記コネクタ用端子は、圧着時に、圧着部のSn層またはSn合金層と圧着治具との間で凝着が発生し難く、圧着部のかしめ形状の悪化に起因して圧着部の接続信頼性が低下するおそれがない。その結果、上記コネクタ用端子は、圧着部の接続信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のコネクタ用端子の構成を模式的に示した説明図である。
図2】実施例1のコネクタ用端子の構成を製造する方法の一例を説明するための説明図である。
図3】実施例2のコネクタ用端子の構成を模式的に示した説明図である。
図4】実施例3のコネクタ用端子の構成を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記コネクタ用端子は、相手方コネクタ用端子に電気的に接触させるための電気接点を有する接触部と、電線の導体を圧着するための圧着部とを有している。接触部と圧着部との間は、具体的には、接触部と圧着部とを連結する連結部とすることができる。
【0012】
上記コネクタ用端子の形状は、例えば、公知のメス型端子、オス型端子、中継端子の形状などを適用可能である。具体的には、上記コネクタ用端子は、例えば、オス型端子のタブ部に弾性接触させるための弾性接触片を内部に備える筒状の接触部と、電線の導体を圧着するための一対の圧着片を備えた圧着部とを有するメス型端子などとして構成することができる。この場合、電気接点は、弾性接触片に形成された突起部に含まれる構成とすることができる。また、上記コネクタ用端子は、例えば、メス型端子の弾性接触片と弾性接触する平板状、ピン状等の形状を呈するタブ部を備える接触部と、電線の導体を圧着するための一対の圧着片を備えた圧着部とを有するオス型端子などとして構成することができる。この場合、電気接点は、タブ部に含まれる構成とすることができる。
【0013】
上記コネクタ用端子は、CuまたはCu合金を母材とする。つまり、上記コネクタ用端子は、CuまたはCu合金を基にして全体が形成されている。
【0014】
上記コネクタ用端子において、電気接点は、母材上に、Ag−Sn合金層と、Ag−Sn合金層の表面に配置されるとともに電気接点の最表面に露出するAg層とを少なくとも有している。つまり、電気接点は、Ag層の表面が電気接点の最表面とされており、Ag層の下面に接するようにAg−Sn合金層が配置されている。電気接点は、Ag−Sn合金層と母材との間に、例えば、Ni層、Ni合金層、Ag層等の他の層を有することができる。他にも、電気接点は、Ag−Sn合金層と母材との間に、他の層を有することなく、Ag−Sn合金層の下面と母材表面とが接していてもよい。
【0015】
Ag層の厚みは、良好な導通性の確保、Ag使用量の削減による製造コストの低減などの観点から、0.5μm〜3μm程度とすることができる。Ag−Sn合金層の厚みは、良好な耐熱性の確保、Ag層表面の摩擦係数の低減効果を確実にするなどの観点から、1μm〜9μm程度とすることができる。
【0016】
上記コネクタ用端子において、圧着部は、母材上に、圧着部の最表面に露出するSn層またはSn合金層を少なくとも有している。Sn層またはSn合金層は、具体的には、圧着部の圧着時に圧着治具に接触する治具接触面に少なくとも存在すればよい。Sn層またはSn合金層は、好ましくは、導体との良好な電気接続が得られるなどの観点から、導体と接触する導体接触面にも存在しているとよい。圧着部は、Sn層またはSn合金層と母材との間に、例えば、Ni層、Ni合金層等の他の層を有することができる。他にも、圧着部は、Sn層またはSn合金層と母材との間に、他の層を有することなく、Sn層またはSn合金層の下面と母材表面とが接していてもよい。
【0017】
Sn層またはSn合金層の厚みは、圧着部における接続信頼性の向上、耐腐食性の確保などの観点から、0.1μm〜10μm程度とすることができる。
【0018】
上記コネクタ用端子において、Ag−Sn合金層と母材との間、Sn層またはSn合金層と母材との間に、さらに、Ni層またはNi合金層を有していることが好ましい。
【0019】
この場合には、大電流による発熱によりコネクタ用端子の温度が上昇した場合や、コネクタ用端子が高温環境下に曝された場合等に、母材成分のCuが端子最表面に拡散して酸化物が形成されることによって接触抵抗が増大するのを抑制しやすくなる。Ni層またはNi合金層の厚みは、Cuの拡散を効果的に抑制するなどの観点から、0.5μm〜2μm程度とすることができる。
【0020】
上記コネクタ用端子において、電気接点におけるAg−Sn合金層およびAg層は、接触部における電気接点の少なくとも周辺部まで延設されている構成とすることができる。なお、電気接点の周辺部とは、接触部における電気接点を除いた部分のうち、電気接点の周りの面部分をいう。
【0021】
この場合には、電気接点と電気接点の周辺部とが、母材上に、Ag−Sn合金層と、Ag−Sn合金層の表面に配置されたAg層とを有する。そのため、相手方コネクタ用端子との接触抵抗の低減、電気接点の耐熱性向上、電気接点の耐摩耗性向上をより確実なものとすることができる。
【0022】
上記コネクタ用端子において、接触部は、母材上に、Ag−Sn合金層と、Ag−Sn合金層の表面に配置されるとともに接触部の最表面に露出するAg層とを有する構成とすることができる。
【0023】
この場合には、接触部における電気接点だけでなく、電気接点を除いた大部分において、Ag層の表面が最表面とされ、Ag層の下面に接するようにAg−Sn合金層が配置される。このような構成は、電気めっき法を用いて比較的簡易に形成することができる。そのため、この場合には、製造性に優れたコネクタ用端子が得られる。
【0024】
上記コネクタ用端子において、圧着部の圧着時に圧着治具に接触する治具接触面および電気接点以外における端子部分の最表面には、母材、Sn層、Sn合金層、Ag層、Ag−Sn合金層、Ni層、および、Ni合金層からなる群より選択される少なくとも1つが露出している構成とすることができる。
【0025】
上記端子部分の最表面に母材が露出する場合としては、例えば、コネクタ用端子の製造時に生じた切断面等を典型例として例示することができる。
【0026】
母材上にAg−Sn合金層、Ag層が順に積層された構成は、例えば、電気めっき法を用い、母材上に、Agめっき、Snめっき、Agめっきをこの順に積層してなる積層構造を含む積層めっき層を形成した後、加熱処理することにより形成することができる。また、母材上に、Sn層またはSn合金層が積層された構成は、例えば、電気めっき法を用い、母材上に、SnめっきまたはSn合金めっきを施し、必要に応じて、加熱処理することにより形成することができる。また、母材上に、NiまたはNi合金層を形成する場合も、上記と同様に、電気めっき法を適用すればよい。
【0027】
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例のコネクタ用端子について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0029】
(実施例1)
実施例1のコネクタ用端子について、図1図2を用いて説明する。図1図2に示すように、本例のコネクタ用端子1は、相手方コネクタ用端子(不図示)に電気的に接触させるための電気接点110を有する接触部11と、電線(不図示)の導体を圧着するための圧着部13とを有しており、CuまたはCu合金を母材10とする。本例では、接触部11と圧着部13との間は、具体的には、接触部11と圧着部13とを連結する連結部12とされている。
【0030】
本例では、コネクタ用端子1は、具体的には、メス型端子である。コネクタ用端子1は、自動車用ワイヤーハーネスが有するコネクタ(不図示)に用いられるものである。コネクタ用端子1は、詳細は図示しないが、より具体的には、電気接続すべき相手方コネクタ用端子としてのオス型端子が有するタブ部を挿入させるための挿入口が開口した筒状部を有している。筒状部の内部には、底面板が内側後方へ折り返されて形成された弾性接触片が設けられている。弾性接触片は、挿入されたオス型端子のタブ部に上向きの力を加える。オス型端子のタブ部は、弾性接触片によって筒状部の天井板の内側面に押し付けられる。これにより、オス型端子のタブ部が弾性接触片と天井板の内側面との間に挟圧状態で保持される。弾性接触片のオス型端子に接触する部分には、エンボス部が形成されている。エンボス部は、弾性接触片の表面を半球状に隆起させることにより形成された突起部である。エンボス部は、その頂部近傍にてオス型端子のタブ部と接触する。本例では、このエンボス部のうち、オス型端子と実質的に接触する部位が電気接点に該当する。また、コネクタ用端子1において、圧着部13は、より具体的には、一対の圧着片からなる。
【0031】
コネクタ用端子1において、電気接点110は、母材10上に、Ag−Sn合金層111と、Ag−Sn合金層111の表面に配置されるとともに電気接点110の最表面に露出するAg層112とを有している。
【0032】
本例では、具体的には、Ag−Sn合金層111およびAg層112は、接触部11における電気接点110の少なくとも周辺部まで延設されている。より具体的には、本例のコネクタ用端子1は、接触部11における母材10上に、Ag−Sn合金層111と、Ag−Sn合金層111の表面に配置されるとともに接触部11の最表面に露出するAg層112とを有する構成とされている。つまり、本例のコネクタ用端子1は、接触部11における電気接点110だけでなく、接触部11における電気接点110を除いた大部分もAg層112の表面が最表面とされ、Ag層112の下面に接するようにAg−Sn合金層111が配置されている。したがって、接触部11において、電気接点110と電気接点110を除いた部分における各Ag層112は、互いに連続している。同様に、接触部11において、電気接点110と電気接点110を除いた部分における各Ag−Sn合金層111は、互いに連続している。
【0033】
コネクタ用端子1において、圧着部13は、母材10上に、圧着部13の最表面に露出するSn層113を有している。なお、Sn層113は、Sn合金層に変更することができる。本例では、具体的には、Sn層は、圧着部13の圧着時に圧着治具(不図示)に接触する治具接触面と、導体と接触する導体接触面との両方に存在している。
【0034】
コネクタ端子1において、連結部12は、母材10上に、連結部12の最表面に露出するSn層113を少なくとも有している。なお、Sn層113は、Sn合金層に変更することができる。本例では、具体的には、連結部12のSn層113は、圧着部13のSn層113と連続している。
【0035】
本例のコネクタ端子1は、Ag−Sn合金層111と母材10との間、および、Sn層113と母材10との間に、さらに、Ni層114を有している。このNi層114は、Ni合金層に変更することができる。なお、接触部11、圧着部13、および、連結部12における各Ni層114は、互いに連続している。
【0036】
本例のコネクタ用端子1において、Ag層112の厚みは、具体的には、1μmである。Ag−Sn合金層111の厚みは、具体的には、4μmである。Sn層113の厚みは、具体的には、1.4μmである。Ni層114の厚みは、具体的には、1μmである。なお、本例のコネクタ用端子1は、板状の端子材料を打ち抜いた後、折り曲げ加工されて構成されたものであり、打ち抜き時に生じた切断面では母材が露出している。
【0037】
本例のコネクタ用端子1は、具体的には、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0038】
CuまたはCu合金を母材10とする板材を準備する。そして、図2に示されるように、板材の表面に、電気めっき法により、例えば、厚み1μmのNiめっき21を形成する。次いで、Niめっき21により表面が覆われた板材において、後述する端子形状の打ち抜き後の折り曲げ加工により接触部11となる接触部形成部110に、例えば、厚み1.3μmのAgめっき22を形成する。なお、端子形状の打ち抜き後の折り曲げ加工により圧着部13になる圧着部形成部130と、端子形状の打ち抜き後の折り曲げ加工により連結部12になる連結部形成部120とは、Niめっき21の表面にAgめっき22が施されないように予めマスクしておく。次いで、接触部形成部110に施されたAgめっき22の表面と、圧着部形成部130と連結部形成部120とに施されたNiめっき21の表面とを覆うように、例えば、厚み1.4μmのSnめっき23を形成する。次いで、このSnめっき23の表面のうち、接触部形成部110におけるSnめっき23の表面を覆うように、例えば、厚み2.3μmのAgめっき24を形成する。なお、圧着部形成部130と連結部形成部120とは、Snめっき23の表面にAgめっき24が施されないように予めマスクしておく。このようにして、母材10上に、図2に示されるような積層構造を有する積層めっき層25を形成する。次いで、例えば、200℃で30分間の加熱処理(リフロー処理)を実施する。次いで、上記のようにして得られた板状の端子材料を端子展開形状に打ち抜き、折り曲げ加工することにより、所定のコネクタ用端子とする。
【0039】
上記加熱処理により、Agめっき22、Snめっき23、および、Agめっき24とからAg−Sn合金層111が形成されるとともに、Ag−Sn合金層111の表面にAg層24が形成される。なお、条件によっては、Ag−Sn合金層111の下面にAg層が形成されることもある。また、上記加熱処理により、Snめっき23からSn層113が形成される。
【0040】
次に、本例のコネクタ用端子1の作用効果について説明する。
【0041】
コネクタ用端子1は、相手方コネクタ用端子に電気的に接触させる電気接点110が、母材10上に、Ag−Sn合金層111と、Ag−Sn合金層111の表面に配置されるとともに電気接点110の最表面に露出するAg層112とを有している。そのため、コネクタ用端子1は、電気接点110の最表面に露出するAg層112により、相手方コネクタ用端子との接触抵抗を低くすることができる。また、コネクタ用端子1は、Ag−Sn合金層111を有するので、熱的な安定性が高まり、電気接点110の耐熱性を高くすることができる。また、コネクタ用端子1は、Ag層112の下方にAg層112に比べて高い硬度を有するAg−Sn合金層111が配置されているので、Ag層112表面の摩擦係数が低下し、電気接点110の耐摩耗性を向上させることが可能となる。
【0042】
ここで、コネクタ用端子1は、圧着部13が、母材10上に、圧着部13の最表面に露出するSn層23を有している。つまり、コネクタ用端子1は、圧着部13にAg層110を有していないため、Agの使用面積が減少している。そのため、コネクタ用端子1は、従来に比べ、Ag使用量を削減することが可能となり、製造コストの低減に寄与することができる。さらに、圧着部13の最表面に露出するSnは、Agに比べ、凝着し難い金属である。そのため、コネクタ用端子1は、圧着時に、圧着部13のSn層113と圧着治具との間で凝着が発生し難く、圧着部13のかしめ形状の悪化に起因して圧着部13の接続信頼性が低下するおそれがない。その結果、コネクタ用端子1は、圧着部13の接続信頼性を向上させることができる。
【0043】
また、本例のコネクタ用端子1は、母材10表面にNi層が配置されている。そのため、本例のコネクタ用端子1は、大電流による発熱によりその温度が上昇した場合や、高温環境下に曝された場合等に、母材成分のCuが端子最表面に拡散して酸化物が形成されることにより接触抵抗が増大するのを抑制しやすい利点がある。
【0044】
(実施例2)
実施例2のコネクタ用端子について、図3を用いて説明する。
【0045】
本例のコネクタ用端子1は、図3に示されるように、接触部11における電気接点110の部分にだけ、Ag−Sn合金層111およびAg層112が配置されている例である。なお、接触部11における電気接点110以外の表面は、Sn層113で覆われている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0046】
本例のコネクタ用端子1は、実施例1のコネクタ用端子1に比べ、Agの使用面積がさらに減少している。そのため、本例のコネクタ用端子1は、さらなるAg使用量の削減により、製造コストの低減に有利である。その他の作用効果は、実施例1と同様である。
【0047】
(実施例3)
実施例3のコネクタ用端子について、図4を用いて説明する。
【0048】
本例のコネクタ用端子1は、図4に示されるように、実施例1のコネクタ端子1におけるNi層114が省略されている例である。また、本例のコネクタ用端子1は、接触部11の表面のうち、電気接点110と電気接点110の周辺部115とが、母材10上に、Ag−Sn合金層111と、Ag−Sn合金層111の表面に配置されたAg層112とを有している。つまり、本例のコネクタ用端子1は、電気接点110の周辺部115よりも外側の部分にAg−Sn合金層111およびAg層112が形成されていない。なお、接触部11における電気接点110以外の表面は、Sn層113で覆われている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0049】
本例のコネクタ用端子1は、電気接点110と電気接点110の周辺部115とが、母材10上に、Ag−Sn合金層111と、Ag−Sn合金層111の表面に配置されたAg層112とを有する。そのため、本例のコネクタ用端子1は、実施例2のコネクタ用端子1に比べ、相手方コネクタ用端子との接触抵抗の低減、電気接点の耐熱性向上、電気接点の耐摩耗性向上をより確実なものとすることができる。また、実施例1のコネクタ用端子1に比べ、Agの使用面積がさらに減少している。そのため、本例のコネクタ用端子1は、さらなるAg使用量の削減により、製造コストの低減に有利である。その他の作用効果は、Ni層114による作用効果を除いて実施例1と同様である。
【0050】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 コネクタ用端子
10 母材
11 接触部
13 圧着部
110 電気接点
111 Ag−Sn合金層
112 Ag層
113 Sn層またはSn合金層
図1
図2
図3
図4