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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-220017(P2015-220017A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】雌端子金具、端子金具
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20151110BHJP
   H01R 13/04 20060101ALI20151110BHJP
【FI】
   H01R13/11 A
   H01R13/11 C
   H01R13/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-101322(P2014-101322)
(22)【出願日】2014年5月15日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城 崇人
(57)【要約】
【課題】雌端子金具及び端子金具において、振動などによる傾きを抑制することを目的とする。
【解決手段】雄端子金具50を挿入可能な開口部35を有する筒状の端子接続部30と、前記端子接続部30の前記開口部35の奥側に設けられ、前記端子接続部30の内側に突出することで前記雄端子金具50と接触部37Aで接触する弾性接触片37と、前記接触部37Aから前記雄端子金具50の軸線方向に離間した位置に設けられ、前記雄端子金具50を挿入可能な孔部43を有し、該孔部43の周縁が前記弾性接触片37と接触する前記雄端子金具50の周囲に接触することで前記雄端子金具50の傾きを抑制する傾き抑制部40と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端子金具を挿入可能な開口部を有する筒状の端子接続部と、
前記端子接続部の前記開口部の奥側に設けられ、前記端子接続部の内側に突出することで前記雄端子金具と接触部で接触する弾性接触片と、
前記接触部から前記雄端子金具の軸線方向に離間した位置に設けられ、前記雄端子金具を挿入可能な孔部を有し、該孔部の周縁が前記弾性接触片と接触する前記雄端子金具の周囲に接触することで前記雄端子金具の傾きを抑制する傾き抑制部と、を備える雌端子金具。
【請求項2】
前記端子接続部は角筒状をなしており、その一側面に設けた切り起こし片によって前記傾き抑制部が形成されている請求項1に記載の雌端子金具。
【請求項3】
前記傾き抑制部が別体の樹脂製部品である請求項1に記載の雌端子金具。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の雌端子金具と、該雌端子金具に挿入可能な雄端子金具とを備える一対の端子金具であって、
前記雄端子金具の先端には、先細のテーパー部が形成されており、
前記孔部はその径寸法が前記雄端子金具の最大外形寸法より小さい端子金具。
【請求項5】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の雌端子金具と、該雌端子金具に挿入可能な雄端子金具とを備える一対の端子金具であって、
前記雄端子金具は、その先端が複数に分岐した分岐先端部を有しており、
前記傾き抑制部には、前記雄端子金具の分岐先端部に対応する数の前記孔部が形成されている端子金具。
【請求項6】
前記雄端子金具の前記分岐先端部には、先細の分岐テーパー部が形成されており、
前記孔部はその径寸法が前記分岐先端部の最大径寸法より小さくなっている請求項5に記載の端子金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌端子金具及びこの雌端子金具を含んだ一対の端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に雌端子金具は、タブ状の雄端子金具を挿入可能な端子接続部を有し、この端子接続部内に設けられた弾性片を雄端子金具に押し当てて両者が電気的に接続される構成である。弾性片には、雄端子金具側に突出する接触部が設けられ、その接触部が雌端子金具の平板部分の一方の側面に圧接し、他方の側面が雌端子金具の端子接続部の内面に押し当てられる。
ところで、この種の端子金具をコネクタハウジング内に装着して構成したコネクタでは、雄端子金具や雌端子金具とコネクタのキャビティとの間には僅かな隙間があり、また防水コネクタでは、端子金具の端部に設けられた防水ゴム栓がキャビティ内で弾性変形可能となっている。このため、このコネクタが車両等に搭載されて電線やコネクタに車両からの振動が作用すると、端子金具はコネクタハウジング内で僅かにがたつくような動きが許容されている。
【0003】
しかるに、従来の雌端子金具では、雄端子金具を接触部によって1点で支持する構造であるため、コネクタや電線が振動を受けて、雌雄の両端子金具が接触部を支点として、両者の軸線が相対的に傾くように動くことがある。このため、端子接続部の内面との接触状態が変化したり、摩耗が生じたり、様々な不具合が生ずることがあり、接続信頼性が損なわれることがあった。
【0004】
このような問題を解決する雌端子金具として、特開2012−84338号公報(下記特許文献1)に開示される雌型端子金具が知られている。この雌型端子金具は、筒形の端子接続体に設けられた弾性接触片と、この弾性接触片と対向する筒内面に突設されるビード部と、ビード部の前端側及び後端側の少なくともどちらか一方に筒内面に突出するインデント部を備えている。そのため、タブ状の雄型端子が振動などにより上下方向に傾いても、インデント部に雄型端子が当接することで、雄型端子の傾動が制御される。これにより、雄型端子と雌型端子との良好な接続状態を保持することができ、接続信頼性を向上させることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−84338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2012−84338号公報(上記特許文献1)の構成では、雄型端子金具が上下方向に傾く動きはインデント部によってある程度の制御はできるものの雄端子金具がインデント部に当接するまでは傾きを許容せざるを得ず、雄端子金具の傾きを十分に抑えることはできない。上下方向の傾動を避けるためにインデント部の高さをビード部(端子接続部の内面)の高さと全く同じ値にすることも考えられるが、製造上の公差を考慮すると、そのような設定は困難であり、実際にはインデント部がビード部よりも確実に低くなるようにしてビード部のみが確実に雄端子金具に接触する設計にしなくてはならない。また、上記の構成では、振動などにより雄端子金具が左右方向に傾動(雄端子金具のタブ面に沿った動き)しようとした場合には、その傾きを抑制することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される雌端子金具は、雄端子金具を挿入可能な開口部を有する筒状の端子接続部と、前記端子接続部の前記開口部の奥側に設けられ、前記端子接続部の内側に突出することで前記雄端子金具と接触部で接触する弾性接触片と、前記接触部から前記雄端子金具の軸線方向に離間した位置に設けられ、前記雄端子金具を挿入可能な孔部を有し、該孔部の周縁が前記弾性接触片と接触する前記雄端子金具の周囲に接触することで前記雄端子金具の傾きを抑制する傾き抑制部と、を備える。
【0008】
このような構成によると、雄端子金具が開口から挿入され所定位置に配されると、雄端子金具が孔部の周縁と接触することになる。そのため、弾性接触片の接触部と孔部の周縁との2か所以上で支持されることから、振動などによって端子金具同士が相対的に移動して雄端子金具が傾こうとしても、2か所で支持されているために、雄端子金具の傾きを抑制することができ、雄端子金具との接続信頼性を高めることができる。
【0009】
本明細書に開示される雌端子金具の実施の態様として、以下の構成としてもよい。
前記端子接続部は角筒状をなしており、その一側面に設けた切り起こし片によって前記傾き抑制部が形成されている構成としても良い。
このような構成によると、傾き抑制部を雌端子金具に一体の部品とできるから、部品点数の削減につながる。また、傾き抑制部を切り起こしにより形成すると、切り起こし片は片持ち状態となるから変形の自由度が高くなる。このため、製造上の誤差に起因して孔部の中心と雄端子金具の中心軸線とがずれたとしても、雄端子金具の先細の先端が孔部に進入さえすれば、その後に切り起こし片を押し曲げながら雄端子金具を挿入可能となる場合もあり、誤差に対する許容度が広くなる。
【0010】
前記傾き抑制部が別体の樹脂製部品である構成としても良い。
このような構成では、端子接続部等に傾き抑制部を一体に形成する場合に比して、雌端子金具の成形が容易であり、しかも傾き抑制部を精度良く形成したり、端子接続部等の強度的に配慮したりした構造とすることができる。
【0011】
また、本明細書に開示される雌端子金具と雄端子金具を組み合わせた端子金具の態様として、以下の構成としても良い。
前記雌端子金具と、該雌端子金具に挿入可能な雄端子金具とを備える一対の端子金具であって、前記雄端子金具の先端には、先細のテーパー部が形成されており、前記孔部はその径寸法が前記雄端子金具の最大外形寸法より小さい構成としても良い。
このような構成によると、孔部に雄端子金具を挿入する際に圧接気味に固定されることになる。そのため、強固に雄端子金具を固定することができる。
【0012】
前記雌端子金具と、該雌端子金具に挿入可能な雄端子金具とを備える一対の端子金具であって、前記雄端子金具は、その先端が複数に分岐した分岐先端部を有しており、前記傾き抑制部には、前記雄端子金具の分岐先端部に対応する数の前記孔部が形成されている構成としても良い。
このような構成によると、雄端子金具の先端を複数箇所で保持することになるから、雄端子金具又は雌端子金具にそれらの軸線周りに回転するひねり方向の力が加わっても、端子金具が同方向に傾動することを抑制することができる。
【0013】
前記雄端子金具の前記分岐先端部には、先細の分岐テーパー部が形成されており、前記孔部はその径寸法が前記分岐先端部の最大径寸法より小さくなっている構成としても良い。
このような構成によると、孔部に雄端子金具を挿入する際に圧接気味に固定されることになる。そのため、強固に雄端子金具を固定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本明細書に開示される雌端子金具及び端子金具によれば、振動などによる傾きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1における端子金具の平面図
図2】雌端子金具をコネクタハウジングに装着した状態での一部切欠断面図
図3図1のIII−III断面での断面図
図4】雄端子金具を挿入した状態での雌端子金具が装着されたコネクタの一部切欠断面図
図5図3と同じ断面位置における雄端子金具を挿入した状態での断面図
図6】実施形態2における端子金具の平面図
図7図6のVII−VII断面での断面図
図8図7と同じ断面位置における雄端子金具を挿入した状態での断面図
図9図8のIX−IX断面での断面図
図10】実施形態3における雄端子金具を挿入した状態での雌端子金具が装着されたコネクタの一部切欠断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
実施形態1を図1から図5によって説明する。
本実施形態の一対の端子金具10は、雌端子金具20と雄端子金具50とを備えている。雄端子金具50は、図示しない雄コネクタに収容されており、雌端子金具20は、図2に示すように、雌コネクタ60のコネクタハウジング61のキャビティ63内において、ランス65により抜け止めされる。
【0017】
雌端子金具20は、図示しない導電性金属板にプレス加工等の成形加工を施すことで、一体的に形成されており、前後方向に開口する端子接続部30と、この端子接続部30の後方に設けられ被覆電線70と接続される電線接続部21とを備える。
【0018】
電線接続部21は、被覆電線70の芯線71の端末に圧着されるワイヤバレル23と、被覆電線70の被覆73の端末に圧着されるインシュレーションバレル25とを備えている。
【0019】
端子接続部30は、図2に示すように、全体として角筒状をなしており、上方に位置する天井壁31と、互いに対向する一対の側面壁32と、下方に位置する底壁33とからなり、前端側(図示左端側)には、雄端子金具50を挿入する開口部35が設けられている。また、端子接続部30の内部には、底壁33の前縁から後方に山型に折り返すことによって、弾性接触片37が形成されている。この山型に折り返された頂点部分の上面が、雄端子金具50と接触する接触部37Aとされている。
【0020】
端子接続部30の天井壁31には、図1及び図2に示すように、ビード部39が設けられている。ビード部39は、天井壁31が下方に叩き出されることで形成され、正面視略台形状をなして端子接続部30の内方に突出している。ビード部39は、前後方向に延びる形態をなし、弾性接触片37の後端よりも後方まで延びている。また、ビード部39は、雄端子金具50との当接面である下端面39Aにおいて、雄端子金具50の幅寸法よりもその幅方向の寸法が大きくなっており、雄端子金具50と確実に接触する。そして、端子接続部30に雄端子金具50が前方から挿入されると、雄端子金具50が接触部37Aとビード部39の下端面39Aとの間で上下方向から挟持され、雌端子金具20と雄端子金具50とが導通状態になる。
【0021】
ここで、雄端子金具50は、図1及び図2に示すように、同じ幅寸法で細長い平板形状をなす雄端子本体部51と、その先端側(雌端子金具20に挿入される側)に形成される先細のテーパー部53とを備える。雄端子本体部51の厚さ寸法(図2における上下方向の寸法)は、ビード部39が自由状態にあるときのその下端面39Aと弾性接触片37の接触部37Aとの間の上下方向寸法より若干大きくなっており、雄端子金具50を端子接続部30内に挿入すると、弾性接続片37を押し下げて弾性的に変形させるようになっている。テーパー部53は四面とも先端側が細くなるように勾配がつけられている。そして、テーパー部53の先端は、後述する貫通孔43に挿入しやすいように、貫通孔43の寸法よりも十分小さくなっている。雄端子金具50の後方には、電線と接続される雄側電線接続部が設けられている(図示せず)。
【0022】
また、端子接続部30の天井壁31には、図2及び図3に示すように、ビード部39の後方に切り起こし片40が設けられている。切り起こし片40は、天井壁31の一部を切り抜いて内側に起こすことで形成されている。切り起こし片40が切り抜かれた天井壁31には、切り起こし孔41がある。切り起こし片40は、天井壁31に対して略垂直に曲げられており、片持ち状態となっているため、折り曲げられた位置を中心に変形の自由度が高くなっている。切り起こし片40の幅寸法(図3及び図5における左右方向の寸法)は、雄端子金具50の幅寸法より大きく、ビード部39の幅寸法より若干小さくなっている。
【0023】
切り起こし片40には、図3に示すように、略中央付近に雄端子金具50のテーパー部53を挿入可能な矩形の貫通孔43が設けられている。貫通孔43の上下及び左右方向の寸法は、雄端子本体部51のそれらよりも若干小さくしてあるため、雄端子金具50のテーパー部53を貫通孔43内に挿入すると、その外周部が貫通孔43の内周縁に圧接して雄端子金具50が切り起こし片40に固定されることになる。貫通孔43の上端面43Aの上下方向における位置は、ビード部39の下端面39Aの位置とほぼ同一となっており、ビード部39に雄端子金具50を沿わせて挿入させることで、ビード部39が貫通孔43へのガイドの役割を果たしている。
【0024】
なお、ビード部39と貫通孔43との位置公差は、貫通孔43がビード部39に対して下にずれる方が好ましい。仮に貫通孔43が若干ビード部39に対して下側にずれている場合には、ビード部39に沿わせて雄端子金具50を端子接続部30内に挿入していくと、テーパー部53の先端が貫通孔43に挿入されて、テーパー部53の上面が貫通孔43の上端面43Aに当接する。そして、そのまま雄端子金具50を押し込んでいくと、切り起こし片40が後方に押し曲げられて、貫通孔43の位置が上方に移動し、雄端子金具50が貫通可能となる。
【0025】
このように雄端子金具50がビード部39に沿って雌端子金具20の端子接続部30内に挿入されて、雄端子金具50を押し込む力によって雄端子金具50が貫通孔43に圧入されると、雄端子金具50は切り起こし片40の貫通孔43の周縁部によって雄端子金具50の全周と接触して上下左右方向で支持されることになる。また、雄端子金具50が圧接気味に固定されることで、前後方向への力に対しても雄端子金具50が移動しようとするのを抑制することができる。同時に、雄端子金具50は、弾性接触片37のバネ力によって、接触部37Aとビード部39との間で挟持されることで、接触部37Aによっても雄端子金具50は支持される。このように、雄端子金具50は所定位置に配されると、貫通孔43の周縁部と弾性接触片37の接触部37Aとの2か所によって支持されることになる。
【0026】
以上のように本実施形態によれば、雄端子金具50が雌端子金具20の開口部35から挿入され所定位置に配されると、雄端子金具50が貫通孔43の周縁と接触することになる。そのため、弾性接触片37の接触部37Aと貫通孔43の周縁との2か所以上で支持されることから、振動などによって端子金具同士が相対的に移動して雄端子金具50が傾こうとしても、2か所で支持されているために、雄端子金具50の傾きを抑制することができ、雄端子金具50との接続信頼性を高めることができる。
【0027】
また、端子接続部30は角筒状をなしており、その一側面(天井壁31)に設けた切り起こし片40によって傾き抑制部が形成されている。
このような構成によると、傾き抑制部を雌端子金具20に一体の部品とできるから、部品点数の削減につながる。また、傾き抑制部を切り起こしにより形成すると、切り起こし片40は片持ち状態となるから変形の自由度が高くなる。このため、製造上の誤差に起因して貫通孔43の中心と雄端子金具50の中心軸線とがずれたとしても、雄端子金具50(テーパー部53)の先細の先端が孔部に進入さえすれば、その後に切り起こし片40を押し曲げながら雄端子金具50を挿入可能となる場合もあり、誤差に対する許容度が広くなる。
【0028】
また、本実施形態の雌端子金具20と、雌端子金具20に挿入可能な雄端子金具50とを備える一対の端子金具10であって、雄端子金具50の先端には、先細のテーパー部53が形成されており、貫通孔43はその径寸法が雄端子金具50の最大外形寸法より小さい。
このような構成によると、貫通孔43に雄端子金具50を挿入する際に圧接気味に固定されることになる。そのため、強固に雄端子金具50を固定することができる。
【0029】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図6ないし図9によって説明する。
本実施形態の一対の端子金具110では、雄端子金具150の先端が二股になっている点及び貫通孔143が2つ設けられている点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同一機能を有する部材、部位については、同一の符号を付すことで、説明を省略しまたは簡略化する。
【0030】
本実施形態における一対の端子金具110は、雌端子金具120と雄端子金具150とを備えている。雄端子金具50は、図示しない雄コネクタに収容されており、雌端子金具120は、雌コネクタ60に収容される。
【0031】
雌端子金具120は、図6に示すように、端子接続部130と、被覆電線70と接続される電線接続部21とを備えている。
端子接続部130は、図7に示すように、天井壁131と一対の側面壁32と、底壁33とから形成されており、その内部には弾性接触片37が形成されている。天井壁131には、ビード部39と、切り起こし片140とが設けられている。
【0032】
雄端子金具150は、図6に示すように、雄端子本体部51と、二股に分岐した分岐先端部155とを備えている。分岐先端部155は、各々は最大幅寸法が雄端子本体部51よりも幅狭とされているが、2つの分岐先端部155を合わせると、その最大幅は大きくなっている。また、2つ形成された分岐先端部155のそれぞれが、先細に形成される分岐テーパー部157とされている。分岐テーパー部157は四面とも先端側が細くなるように勾配がつけられている。そして、分岐テーパー部157の先端は、後述する貫通孔143に挿入しやすいように、貫通孔143の寸法よりも十分小さくなっている。
【0033】
また、端子接続部130の天井壁131には、図6及び図7に示すように、ビード部39の後方に切り起こし片140が設けられている。切り起こし片140は、天井壁131の一部を切り抜いて内側に起こすことで形成されており、切り起こし片140が切り抜かれた天井壁131には、切り起こし孔41がある。切り起こし片140は、天井壁131に対して略垂直に曲げられている。切り起こし片140の幅寸法(左右方向の寸法)は、雄端子金具150の幅寸法より大きく、ビード部39の幅寸法とほぼ同じになっている。また、切り起こし片140の上下方向の寸法は、端子接続部30の天井壁131と底壁33の内面の間の寸法の約半分程度を占めている。
【0034】
切り起こし片140には、図3に示すように、略中央付近に雄端子金具150の分岐テーパー部157を挿入可能な矩形の貫通孔143が左右方向に2つ並んで設けられている。貫通孔143の上下及び左右方向の寸法は、分岐先端部155のそれらの最大値よりも若干小さくなっているため、雄端子金具150の分岐先端部155(分岐テーパー部157)を貫通孔143内にそれぞれ挿入すると、分岐先端部155の外周部がが貫通孔143の内周縁に圧接して雄端子金具150が切り起こし片140に固定されることになる。なお、貫通孔143の上端面143Aの上下方向における位置は、ビード部39の下端面39Aの位置とほぼ同一となっており、ビード部39に雄端子金具150を沿わせて挿入させることで、ビード部39が貫通孔143へのガイドの役割を果たしている。
【0035】
このように雄端子金具150がビード部39に沿って雌端子金具120の端子接続部130内に挿入されて、雄端子金具150を押し込む力によって雄端子金具150の分岐先端部155が貫通孔143に圧入されると、雄端子金具150の分岐先端部155は切り起こし片140の貫通孔143の周縁部によって分岐先端部155の全周と接触して上下左右方向で支持されることになる。また、分岐先端部155が2つあることで、雄端子金具150の先端を複数個所で固定することから、雄端子金具150又は雌端子金具120にそれらの軸線周りに回転するひねり方向の力が加わっても、同方向に傾動することを抑制することができる。このように、雄端子金具150は所定位置に配されると、貫通孔143の周縁部と弾性接触片37の接触部37Aとの2か所によって支持され、さらに雄端子金具150の先端を分岐先端部155の2か所で保持することで、端子金具の軸線方向へ回転するひねり方向の力に対しても傾動を抑制することができる。
【0036】
以上のように本実施形態では、雌端子金具120と、雌端子金具120に挿入可能な雄端子金具150とを備える一対の端子金具110であって、雄端子金具150は、その先端が複数に分岐した分岐先端部155を有しており、切り起こし片140には、雄端子金具150の分岐先端部155に対応する数の貫通孔143が形成されている。
このような構成によると、切り起こし片140が雄端子金具150の先端を複数箇所で保持することになるから、雄端子金具150又は雌端子金具120にそれらの軸線周りに回転するひねり方向の力が加わっても、端子金具が同方向に傾動することを抑制することができる。
【0037】
また、雄端子金具150の分岐先端部155には、先細の分岐テーパー部157が形成されており、貫通孔143はその径寸法が分岐先端部155の最大径寸法より小さくなっている。
このような構成によると、貫通孔143に雄端子金具150を挿入する際に圧接気味に固定されることになる。そのため、強固に雄端子金具150を固定することができる。
【0038】
<実施形態3>
次に、実施形態3を図10によって説明する。
本実施形態では、傾き抑制部が雌端子金具220とは別体の樹脂製部品である点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同一機能を有する部材、部位については、同一の符号を付すことで、説明を省略しまたは簡略化する。
【0039】
本実施形態における一対の端子金具210は、雌端子金具220と雄端子金具50とを備えている。雄端子金具50は、図示しない雄コネクタに収容されており、雌端子金具220は、雌コネクタ60に収容される。
【0040】
雌端子金具220は、端子接続部230と、被覆電線70と接続される電線接続部21と、端子固定部245を備えている。
端子接続部230は、図10に示すように、天井壁231と一対の側面壁232と、底壁233とから形成されており、その内部には弾性接触片37が形成されている。天井壁231には、ビード部39が設けられている。端子接続部230は、実施形態1に比べるとその前後方向の長さが短くなっており、雄端子金具50を所定位置まで挿入すると、テーパー部53が一部はみ出す程度の前後方向の長さとされている。
【0041】
端子接続部230の後方には、端子固定部245が配される。端子固定部245は、樹脂製であって、雌端子金具220の端子接続部230と当接する位置に接着剤などによって固定されている。端子固定部245の上面は、端子接続部230の天井壁231の上面と略面一であって、端子固定部245の側面は、側面壁232の内面とほぼ同じ位置である。
【0042】
端子固定部245の前面(端子接続部230と当接する面)には、雄端子金具50の先端部であるテーパー部53を挿入可能な非貫通の挿入穴部247が設けられている。挿入穴部247の上下及び左右方向の寸法は、雄端子本体部51のそれらよりも若干小さくしてあるため、雄端子金具50のテーパー部53を挿入穴部247内に挿入すると、その外周部が挿入穴部247の内周縁に圧接して雄端子金具50が端子固定部245に固定されることになる。なお、挿入穴部247は、雄端子金具50の先端部が露出しないように、非貫通の穴とされている。
【0043】
このように雄端子金具50がビード部39に沿って雌端子金具220の端子接続部230内に挿入されて、雄端子金具50の先端が挿入穴部247に挿入される。そして、雄端子金具150を押し込む力によって雄端子金具50のテーパー部53が挿入穴部247に圧入されると、雄端子金具50の先端部(テーパー部53の先端部)は挿入穴部247の周縁部によってテーパー部53の全周と接触して上下左右方向で支持されることになる。また、折り曲げなどによって端子固定部245を形成していないため、精度を出しやすく、端子接続部230に切り起こし孔を形成しなくても良くなることから、端子接続部230の強度を向上させることができる。
【0044】
以上のように本実施形態では、傾き抑制部である端子固定部245が端子接続部230等とは別体の樹脂製部品である。
このような構成では、端子接続部230等に傾き抑制部を一体に形成する場合に比して、雌端子金具220の成形が容易であり、しかも傾き抑制部を精度良く形成したり、端子接続部230等の強度的に配慮したりした構造とすることができる。
【0045】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では、雄端子金具50のテーパー部53もしくは雄端子金具150の分岐テーパー部157等の先端で切り起こし片40もしくは端子固定部245によって保持されていたが、雄端子金具50、150の雄端子本体部51で保持するようにされていても良い。
(2)上記実施形態では、雄端子金具50、150はテーパー部53もしくは分岐テーパー部157等のテーパー面を有していたが、テーパー面を有さず全体が同じ幅寸法とされていても良い。
【0046】
(3)上記実施形態では、貫通孔43、143及び挿入穴部247は、雄端子金具50、150の最大外径寸法よりもその内径寸法が小さくなっていたが、同じ大きさとされていても良い。
(4)上記実施形態では、ビード部39が形成されていたが、ビード部がなく端子接続部の内面に雄端子金具50、150が当接するようにされていても良い。また、ビード部の形状は、正面視台形状以外の他の形状であっても良いし、1つではなく2つ以上形成されていても良い。
(5)上記実施形態では、弾性接触片37は山型で片持ち状のものであったが、両持ち状のもの等周知の他の形状であっても良い。
【0047】
(6)上記実施形態1及び2では、天井壁31、131から切り起こし片40、140が切り起こされていたが、側面壁や底壁から切り起こされていても良い。
(7)上記実施形態1及び2では、切り起こしにより切り起こし片40、140を形成していたが、端子接続部の後端の曲げなどにより作成しても良い。
【0048】
(8)上記実施形態3では、端子固定部245は樹脂製とされていたが、雄端子金具50を固定できるものであれば、他の素材であっても良い。
(9)上記実施形態3では、端子固定部245は端子接続部230の外側に設けられていたが、端子接続部の前後方向の長さを長くした上で内部に収容するようにしても良い。その場合には、孔部は貫通孔であっても良いし、非貫通であっても良い。
【0049】
(10)上記実施形態3では、雄端子金具50は分岐していないが、実施形態2のように分岐していても良い。その場合には分岐した先端の数だけ挿入穴部を端子固定部に設けるようにすればよい。
(11)上記実施形態2では、雄端子金具150はその先端が2つに分岐していたが、3つ以上に分岐していても良い。また、同一面上で分岐する以外にも上下左右など立体的に分岐していても良い。
【符号の説明】
【0050】
10、110、210…一対の端子金具
20、120、220…雌端子金具
30、130、230…端子接続部
35…開口部
37…弾性接触片
37A…接触部
39…ビード部
40、140…切り起こし片(傾き抑制部)
43、143…貫通孔(孔部)
245…端子固定部(傾き抑制部)
247…挿入穴部(孔部)
50、150…雄端子金具
51…雄端子本体部
53…テーパー部
155…分岐先端部
157…分岐テーパー部
60…雌コネクタ
61…コネクタハウジング
63…キャビティ
70…被覆電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10