特開2015-220030(P2015-220030A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-220030(P2015-220030A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】接続装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/533 20060101AFI20151110BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20151110BHJP
【FI】
   H01R13/533 A
   H01R13/03 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-101500(P2014-101500)
(22)【出願日】2014年5月15日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椋野 潤一
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE06
5E087FF02
5E087FF08
5E087FF12
5E087HH01
5E087MM08
5E087QQ04
5E087RR04
5E087RR11
(57)【要約】
【課題】雄型端子と雌型端子とが接続される接続装置において、接続装置を大型化することなく、端子の温度上昇を抑制すること。
【解決手段】接続装置1は、その一部に接触部28Aが設けられ、接触部28Aを除く一部の部位の表面に熱交換層30が配された雌型端子20と、雌型端子20との間に温度差が生じており、その一部が接触部28Aと接触することで雌型端子20と嵌合されて接続される雄型端子10であって、雌型端子20と嵌合された状態で熱交換層30と対向する部位の表面に熱交換層30が配された雌型端子20と、を備える。対向する熱交換層30の間で熱の交換が行われ、温度が高い側の端子の温度上昇を抑制することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に雌側熱交換層が配された雌型端子と、
前記雌型端子と嵌合されて接続される雄型端子であって、前記雌型端子と嵌合された状態で前記雌側熱交換層と対向する部位の表面に雄側熱交換層が配された雄型端子と、
を備える接続装置。
【請求項2】
前記雄側熱交換層と前記雌側熱交換層との少なくとも一方は、前記表面に塗装された有機物の層である、請求項1に記載の接続装置。
【請求項3】
前記雄側熱交換層と前記雌側熱交換層との少なくとも一方は、前記表面にめっき処理が施された層である、請求項1に記載の接続装置。
【請求項4】
前記雄側熱交換層と前記雌側熱交換層との少なくとも一方は、前記表面の金属層が酸化された層である、請求項1に記載の接続装置。
【請求項5】
前記雄側熱交換層と前記雌側熱交換層との少なくとも一方が黒色とされている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項6】
前記雄型端子と前記雌型端子とのうち、温度が低い側の一方の端子における他方の端子と対向しない部位の少なくとも一部が冷却環境下に晒されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄型端子と雌型端子とを雄雌嵌合させて両者を接続することで、両者の間を導通させる接続装置が知られている。このような接続装置では、雄型端子と雌型端子との間に大電流が通電されると、両端子間に温度差が生じることがある。この場合、温度が高い側の端子の熱が上昇し過ぎると、周辺機器等に影響を及ぼしかねないため、温度が高い側の端子の温度上昇を抑制することが要求される。
【0003】
下記特許文献1には、通電時の放射率が高められた雄型端子が開示されている。この雄型端子では、その一部を加工することで、雌型端子に挿入する挿入接触部内に中空部が形成されており、これにより、挿入接触部の表面積を大きくして放射率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−207501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される雄型端子では、挿入接触部内に中空部が形成されることで、挿入接触部の厚みが大きくなっている。このため、雌型端子における雄型端子の挿入接触部が挿入される部位の厚みも大きいものとなり、雄型端子と雌型端子とが接続される接続装置が全体として大型化する。
【0006】
本明細書で開示される技術は、上記の課題に鑑みて創作されたものであって、雄型端子と雌型端子とが接続される接続装置において、接続装置を大型化することなく、端子の温度上昇を抑制すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される技術は、表面に雌側熱交換層が配された雌型端子と、前記雌型端子と嵌合されて接続される雄型端子であって、前記雌型端子と嵌合された状態で前記雌側熱交換層と対向する部位の表面に雄側熱交換層が配された雄型端子と、を備える接続装置に関する。
【0008】
上記の接続装置では、雄型端子と雌型端子とが嵌合された状態において雄側熱交換層と雌側熱交換層とが対向する。このため、雄型端子と雌型端子との間に温度差が生じると、対向する両熱交換層の間で熱の交換が行われる。即ち、雄型端子と雌型端子とのうち、温度が高い側の端子に配された熱交換層から熱が放熱され、その放熱された熱が、温度が低い側の端子に配された熱交換層によって吸熱される。これにより、温度が高い側の端子の温度上昇を抑制することができる。このように上記の接続装置では、雄型端子及び雌型端子にそれぞれ熱交換層が配され、雄型端子及び雌型端子を加工等することがないため、接続装置を大型化することなく、端子の温度上昇を抑制することができる。
【0009】
上記の接続装置において、前記雄側熱交換層と前記雌側熱交換層との少なくとも一方は、前記表面に塗装された有機物の層であってもよい。または、前記雄側熱交換層と前記雌側熱交換層との少なくとも一方は、前記表面にめっき処理が施された層であってもよい。または、前記雄側熱交換層と前記雌側熱交換層との少なくとも一方は、前記表面の金属層が酸化された層であってもよい。
【0010】
これらによると、雄型端子の表面及び雌型端子の表面に雄側熱交換層及び雌側熱交換層を配するための具体的な構成を実現することができる。
【0011】
上記の接続装置において、前記雄側熱交換層と前記雌側熱交換層との少なくとも一方が黒色であってもよい。
【0012】
この構成によると、雄側熱交換層と雌側熱交換層との少なくとも一方が黒色とされることで雄側熱交換層と雌側熱交換層との両者が黒色以外の色とされている場合と比べて放射率が高められる。また、キルヒホッフの法則より、放射率と吸収率は等しいので、雄側熱交換層と雌側熱交換層との少なくとも一方が黒色とされることで雄側熱交換層と雌側熱交換層との両者が黒色以外の色とされている場合と比べて吸収率も高められる。このため、対向する両熱交換層の間で行われる熱交換の効率を高めることができ、温度が高い側の端子の温度上昇を一層抑制することができる。
【0013】
前記雄型端子と前記雌型端子とのうち、温度が低い側の一方の端子における他方の端子と対向しない部位の少なくとも一部が冷却環境下に晒されていてもよい。
【0014】
この構成によると、温度が高い側の端子から放熱されて温度が低い側の端子によって吸熱された熱が冷却環境下に晒され、熱引きされる。これにより、熱を吸熱した側の端子の温度が低下するため、温度が高い側の端子から放熱される熱が、温度が低い側の端子によってさらに吸熱される。このため、温度が高い側の端子から多くの熱を放熱させることができ、温度が高い側の端子の温度上昇を一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書で開示される技術によれば、雄型端子と雌型端子とが接続される接続装置において、接続装置を大型化することなく、端子の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態において、雄型端子と雌型端子とが接続された状態を示す接続装置の側断面図
図2】雌型端子の斜視図
図3】雄型端子と雌型端子とが接続された状態を示す接続装置の平断面図
図4】変形例において、雌型端子と雄型端子とが接続された状態を示す接続装置の側断面図
図5】雄型端子と雌型端子とが接続された状態を示す接続装置の平断面図
図6】雄型端子と雌型端子との接触部近傍を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から図3を参照して実施形態を説明する。本実施形態では、例えばハイブリッド自動車や電気自動車において、図示しないインバータと図示しないモータとの間を電気的に接続する接続装置1を例示する。本実施形態の接続装置1は、図1に示すように、雄型端子10と、雌型端子20とから構成され、両端子10,20を接続することで両端子10,20間を導通させる装置である。なお以下では、図1及び図3における左方を前方とし、図1における上方を上方とし、図3における上下方向を左右方向として説明する。
【0018】
雄型端子10は、金属板材を所定の形状にプレス加工することで形成されており、細長い板状の雄タブ12を有している。雄型端子10は、図示しない電線の端末に接続されていてもよく、また、図示しない機器に接続されている構成であってもよい。
【0019】
雌型端子20は、雄型端子10の雄タブ12が挿入される筒部22を有する。筒部22は、図1及び図2に示すように前後方向に開口する略角筒状をなしている。筒部22は、下側の壁をなす下壁23と、下壁23の両側縁から同寸法で上方に立ち上がる一対の側壁24と、上側の壁をなし、下壁23と平行に対向する上壁25と、を備える。
【0020】
上壁25は、一方の側壁24の上端から他方の側壁24の上端に向かって当該一方の側壁24に対して略直角に伸びており、その伸びる先端に係止部25Aが設けられている。一方、他方の側壁24の上端縁には係止孔24Aが設けられており、上壁25に設けられた係止部25Aがこの係止孔24Aに挿通されている。これにより、筒部22が略角筒状に保持されている。
【0021】
下壁23の前端には、図1及び図2に示すように、筒部22の前側の開口から前方にわずかに突出するとともに筒部22の内側に向かって屈曲して伸びる弾性片28が設けられている。また、上壁25の前端にも、筒部22の前側の開口から前方にわずかに突出するとともに筒部22の内側に向かって屈曲して伸びる弾性片28が設けられている。即ち、雌型端子20の筒部22は、筒部22の内部に向かって屈曲して伸びる一対の弾性片28を有している。
【0022】
一対の弾性片28は、対称の形状とされており、図3に示すように、筒部22の内部において左右方向に等間隔に3つに分かれて伸びている。一対の弾性片28におけるこの3つに分かれた部位は、左右方向の寸法が等しく形成されている。また、一対の弾性片28は、図1に示すように、筒部22の内部に向かって屈曲する部位からそれぞれ片持ち状をなして直線状に伸びており、弾性を有している。
【0023】
一対の弾性片28は、筒部22の内部において、その先端側に向かって互いに近づくように伸びており、その先端部の一部に、雄型端子10と接続された状態において雄型端子10の雄タブ12と接触する接触部28Aが設けられている。接触部28Aは、雄タブ12側に向かってエンボス状に突出しており、雄タブ12側に向けられた面が球面状となっている。また、この接触部28Aは、各弾性片28について、筒部22の内部において3つに分かれて伸びるそれぞれの先端部に設けられている。従って、雌型端子20は6つの接触部28Aを有している。
【0024】
上記のような構成とされた雌型端子20の筒部22内に、板状をなす雄型端子10の雄タブ12がその板面が筒部22の下壁23及び上壁25と略平行となるような姿勢で挿入されると、雄タブ12は一対の弾性片28の間に進入する。すると、各弾性片28は雄タブ12に押圧されて上下方向において雄タブ12から離れる方向に弾性変形する。
【0025】
そして雄タブ12が雌型端子20の筒部22内にさらに挿入されると、雄タブ12の先端部が一対の弾性片28に設けられた各接触部28Aの間に挟みこまれた状態(図1に示す状態)となる。この状態では、各弾性片28の弾性復帰力によって、雄タブ12における各接触部28Aとの接点に接圧が付与される。これにより、雄型端子10が雌型端子20の筒部22から抜け止めされるとともに、接触部28Aと雄タブ12との間で良好な接触が図られ、雄型端子10と雌型端子20との間が導通する。本実施形態の接続装置1では、このようにして雄型端子10と雌型端子20とが嵌合される。
【0026】
さて本実施形態の接続装置1では、上記のように雄型端子10と雌型端子20とが嵌合された状態で、図1及び図3に示すように、両端子10,20の対向する部位の表面、即ち雄タブ12の一部の表面と各弾性片28の一部の表面とにそれぞれ熱交換層(雄側熱交換層の一例、雌側熱交換層の一例)30が配されている。
【0027】
具体的には、雄タブ12の表面には、図1に示すように、雌型端子20の各弾性片28と対向する部位のうち、雌型端子20の接触部28Aと対向する部位の後方側に位置する部位の全域に亘って熱交換層30が配されている。一方、各弾性片28の表面には、図1及び図3に示すように、雄型端子10の雄タブ12と対向する部位のうち、各弾性片28の接触部28Aの後方側に位置する部位の全域に亘って熱交換層30が配されている。なお、雄タブ12に配された熱交換層30と各弾性片28に配された熱交換層30とは、同様の構成とされる。
【0028】
雄タブ12及び各弾性片28に配された各熱交換層30は、雄型端子10と雌型端子20との間での熱の交換を促進させるために配されている。接続装置1では、互いに対向する熱交換層30の間で熱の交換が行われる。即ち接続装置1では、温度が高い側の端子に配された熱交換層30から熱が放熱され、放熱された熱が、その熱交換層30と対向する温度が低い側の端子に配された熱交換層30によって吸熱される。
【0029】
ここで本実施形態の接続装置1では、雄型端子10のうち雌型端子20と対向しない図示しない部位の一部が図示しない冷却環境下に晒されており、雄型端子10に生じる熱がこの冷却環境によって熱引きされるようになっている。このため、雄型端子10と雌型端子20とが嵌合されて両端子10,20の間に大電流が通電された状態では、雄型端子10の温度が雌型端子20の温度よりも低くなり、両端子10,20の間に温度差(例えば30℃)が生じる。
【0030】
この点、本実施形態の接続装置1では、雄型端子10と雌型端子20とが嵌合された状態で互いに対向する部位の一部に上記のように熱交換層30が配されている。このため、両端子10,20の間に大電流が通電された状態において、温度が高い側の端子、即ち雌型端子20に配された熱交換層30から雌型端子20に生じる熱が放熱され、放熱された熱が、温度が低い側の端子、即ち雄型端子10に配された熱交換層30によって吸熱される。これにより、両端子10,20の温度が略均一なものとなり、雌型端子20の温度上昇が抑制される。
【0031】
雄タブ12及び各弾性片28にそれぞれ配されたこのような熱交換層30は、黒色とされ、例えば雄タブ12及び各弾性片28の表面を塗装すること、または雄タブ12及び各弾性片28の表面にめっき処理を施すこと、または雄タブ12及び各弾性片28の表面を酸化することにより形成されている。
【0032】
雄タブ12及び各弾性片28の表面を塗装することの一例としては、雄タブ12及び各弾性片28の表面にエナメル等の有機物を付着させることで雄タブ12及び各弾性片28の表面を黒色に塗装することが挙げられる。雄タブ12及び各弾性片28の表面にめっき処理を施すことの一例としては、雄タブ12及び各弾性片28の表面を黒色ニッケルにより無電解めっきすることが挙げられる。雄タブ12及び各弾性片28の表面を酸化することの一例としては、雄タブ12及び各弾性片28の表面に錫めっき処理又は銀めっき処理を施し、この錫めっき(金属層の一例)又は銀めっき(金属層の一例)を酸化することで黒色とすることが挙げられる。
【0033】
雄型端子10及び雌型端子20において、表面に熱交換層30が配された部位は、表面に熱交換層30が配されていない場合と比べて、当該部位の反射率(光沢度)が減少している。ここで、雄型端子10の各部位及び雌型端子20の各部位では、表面の反射率と表面の熱の放射率との間に、一方が減少するのにつれて他方が増加する負の相関関係がある。従って雌型端子20では、熱交換層30が配された部位の表面の反射率(光沢度)が減少することで、熱交換層30における熱の放射率が高められている。
【0034】
また、キルヒホッフの法則より、放射率と吸収率は等しいので、雌型端子20において熱交換層30が配された部位の熱の放射率が高められていることで、雄型端子10において熱交換層30が配された部位の熱の吸収率も高められている。その結果、接続装置1では、雄型端子10に配された熱交換層30と雌型端子20に配された熱交換層30との間で効果的に熱の交換が行われるようになっている。
【0035】
ここで、雄型端子10と雌型端子20との間で交換される熱の熱量Qは、雄型端子10の熱交換層30が配された部位における熱の吸収率をε1(ε1≦1)、雌型端子20の熱交換層30が配された部位における熱の放射率をε2(ε2≦1)、両端子10,20の間で対向する熱交換層30の面積をS、両端子10,20間の温度差をΔTとすると、Q=1/(1/ε1+1/ε2)×S×ΔTの式で表すことができる。この式からも、雌型端子20からの熱の放射率ε2及び雄型端子10による熱の吸収率ε1がそれぞれ大きくなることで、雄型端子10と雌型端子20との間で交換される熱の熱量Qが大きくなることがわかる。
【0036】
また、熱交換層30が配された部位における熱の放射率(=吸収率)は、当該部位が黒色である場合にその値が最大値である1とされる。この場合、上記の式における熱量Qは、雄型端子10と雌型端子20との間で対向する熱交換層30の面積Sと両端子10,20間の温度差ΔTにのみに比例する関数となる。この点、実施形態の接続装置1では、雄型端子10に配された熱交換層30及び雌型端子20に配された熱交換層30がいずれも黒色とされているので、各熱交換層30が黒色以外の色とされている場合と比べて雌型端子20における熱の放射率及び雄型端子10における熱の吸収率も高められている。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の接続装置1では、雄型端子10と雌型端子20とが嵌合された状態において雄型端子10に配された熱交換層30と雌型端子20に配された熱交換層30とが対向する。このため、雄型端子10と雌型端子20との間に温度差が生じると、対向する両熱交換層30の間で熱の交換が行われ、温度が高い側の端子である雌型端子20の温度上昇を抑制することができる。このように上記の接続装置1では、雄型端子10及び雌型端子20にそれぞれ熱交換層30が配されるのみで、雄型端子10及び雌型端子20を加工等することがないため、接続装置1を大型化することなく、雌型端子20の温度上昇を抑制することができる。
【0038】
なお雄型端子10と雌型端子20では、両端子10,20が接続された状態において両端子10,20が接触する部位を除く部位の一部にそれぞれ熱交換層30が配されているので、両端子10,20が接続された状態でも熱交換層30に影響を受けることなく、両端子10,20の間で良好な導通が図られるようになっている。
【0039】
また、本実施形態の接続装置1では、雄型端子10に配された熱交換層30と雌側端子20に配された熱交換層30とがいずれも黒色とされることで、上述したように、雌型端子20における熱の放射率及び雄型端子10における熱の吸収率が高められている。このため、対向する両熱交換層30の間で行われる熱交換の効率を高めることができ、雌型端子20の温度上昇を一層抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態の接続装置1では、雄型端子10のうち雌型端子20と対向しない部位の一部が冷却環境下に晒されており、雄型端子10の熱が熱引きされるようになっている。これにより、雄型端子10が熱を吸熱しても雄型端子10の温度が熱引きされて低下するため、雌型端子20から放熱される熱が雄型端子10によってさらに吸熱される。このため、雌型端子20から多くの熱を放熱させることができ、雌型端子20の温度上昇を一層抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態のようにハイブリッド自動車や電気自動車におけるインバータとモータとの間の接続に用いられる接続装置1においては、雄型端子10と雌型端子20との間に大電流が通電されることで一方の端子の温度が過度に上昇する虞があり、当該端子の温度上昇を抑制することが要求される。この点、本実施形態の接続装置1では、雌型端子20の温度上昇が効果的に抑制されるので、インバータとモータとの間の接続において本実施形態の接続装置1を用いることは好適である。
【0042】
<変形例>
次に、実施形態の変形例について、図4から図6を参照して説明する。本変形例では、雄型端子110及び雌型端子120において熱交換層130が配される領域が上記実施形態のものと異なっている。その他の構成については、上記実施形態のものと同様であるため、構造、作用、及び効果の説明は省略する。なお、図4及び図5において、図1及び図3の参照符号にそれぞれ数字100を加えた部位は、上記実施形態で説明した部位と同一である。
【0043】
本変形例では、図4に示すように、雄型端子110の雄タブ112の表面には、雌型端子120の各弾性片128と対向する部位のうち、雌型端子120の接触部128Aと対向する部位を除く部位の全域に亘って熱交換層130が配されている。一方、雌型端子120の各弾性片128の表面には、図4及び図5に示すように、雄型端子110の雄タブ112と対向する部位のうち、各弾性片128の接触部128Aの除く部位の全域に亘って熱交換層130が配されている。従って、各弾性片128では接触部128Aの前方側にも熱交換層130が配されている。
【0044】
さらに本変形例では、図6に示すように、雄型端子110の雄タブ112の表面のうち、雌型端子120の筒部122の各側壁124と対向する部位、即ち筒部122内に挿入された雄タブ112の両側面に熱交換層130が配されている。そして、図6に示すように、雌型端子120の筒部122の各側壁124の表面のうち、雄タブ112と対向する部位にも熱交換層130が配されている。
【0045】
本変形例では上記のように熱交換層130が配されることで、各弾性片128の雄タブ112と対向する部位のうち、接触部128Aを除く全域から熱が放熱され、その熱が雄タブ112に配された熱交換層130によって吸熱される。さらに、筒部122の両側壁の熱交換層130が配された部位からも熱が放熱され、その熱が雄タブ112の両側面に配された熱交換層130によって吸熱される。このように本変形例の接続端子102は、両端子110,120の間で対向する熱交換層130の面積が上記実施形態のものと比べて大きくなっており、その結果、雄型端子110と雌型端子120との間で交換される熱の熱量Qも大きくなっている。このため、雌型端子120の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0046】
上記の実施形態の他の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の実施形態及び変形例では、接続装置の一例としてインバータとモータとの間を接続するための接続装置を例示したが、これに限定されない。本明細書で開示される接続装置は、様々な接続装置として適用することができる。
【0047】
(2)上記の実施形態及び変形例では、雌型端子の温度が雄型端子の温度よりも高い例を示したが、雄型端子の温度が雌型端子の温度より高くてもよい。
【0048】
(3)上記の実施形態及び変形例では、熱交換層が、雄タブ及び各弾性片の表面に塗装された有機物の層であるか、または、雄タブ及び各弾性片の表面にめっき処理が施された層であるか、または、雄タブ及び各弾性片の表面が酸化された層である例を示したが、熱交換層の構成については限定されない。
【0049】
(4)上記の実施形態及び変形例では、熱交換層が黒色とされている構成を例示したが、放熱層の色については限定されない。
【0050】
(5)上記の実施形態及び変形例では、雄側熱交換層と雌側熱交換層とが同じ構成である例を示したが、雄側熱交換層と雌側熱交換層のいずれか一方が熱を放熱する層とされ、いずれか他方が熱を吸熱する層とされればよく、雄側熱交換層と雌側熱交換層とが異なる構成であってもよい。
【0051】
(6)上記の実施形態及び変形例では、雄型端子の雌型端子と対向しない部位の一部が冷却環境下に晒されている例を示したが、雌型端子の雄型端子と対向しない部位の一部が冷却環境下に晒されていてもよいし、両端子のいずれもこのような冷却環境下に晒されていなくてもよい。この場合であっても、雄型端子と雌型端子との間に温度差が生じていれば、各熱交換層によって両端子の間で熱交換が行われ、温度が高い側の端子の温度上昇を抑制することができる。
【0052】
(7)上記の実施形態及び変形例では、雄型端子については、雌型端子の各弾性片と対向する部位のうち雌型端子の接触部と対向する部位を除く部位の一部又は全域に熱交換層が配され、雌型端子については、雄型端子の雄タブと対向する部位のうち各弾性片の接触部を除く部位の一部又は全域に熱交換層が配された構成を例示したが、熱交換層が導電性を有する場合、雄型端子について雌型端子の接触部と対向する部位にも熱交換層が配されるとともに、雌型端子について各弾性片の接触部にも熱交換層が配された構成であってもよい。
【0053】
以上、本発明の各実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1,101…接続装置
10,110…雄型端子
12,112…雄タブ
20,120…雌型端子
22,122…筒部
28,128…弾性片
28A,128A…接触部
30,130…熱交換層
図1
図2
図3
図4
図5
図6