安全性に優れた全固体二次電池を可撓性基板に実装させた蓄電装置において、可撓性基板に実装された固体電池の脱落を防止し、発熱が抑制された、高信頼性で可撓性を有する蓄電装置を提供することにある。
可撓性基板の主面上に配置された固体電池群と、可撓性基板の主面と反対の裏面上に配置された固体電池群を有し、前記裏面に配置された固体電池群の実装領域が前記主面に配置された固体電池群の実装領域よりも小さく、前記裏面の固体電池群の実装領域は、前記裏面側から投影したとき、前記主面の固体電池群の実装領域の内側に配置することで、曲率の高くなる外側に固体電池が配置されないため、局所的な応力集中が回避でき、外側ほど実装密度が下がるので放熱性に優れるため、固体電池の脱落を防止し、放熱性に優れた蓄電装置を得ることが出来る。
樹脂基板に配線が施された可撓性基板の主面上に複数の第1固体電池が電気的につながって構成される第1固体電池群が実装され、前記可撓性基板の主面とは反対側の裏面上には複数の第2固体電池が電気的につながって構成される第2固体電池群が実装され、前記第2固体電池群の実装領域は、前記第1固体電池群の実装領域よりも小さく、前記第2固体電池群の実装領域は、前記裏面側から投影したとき前記第1固体電池群の実装領域の内側に配置されていることを特徴とする蓄電装置。
前記第2固体電池群は前記裏面側から投影したとき前記第1固体電池群中の互いに隣接する2つの前記第1固体電池をまたいで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
前記第2固体電池群は前記裏面側から投影したとき前記第1固体電池群中の互いに隣接する4つの前記第1固体電池をまたいで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照にしつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一または相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0021】
<構造に関して>
(蓄電装置)
図1、
図2は、本実施形態とする蓄電装置を示す平面図であり、蓄電装置を構成する可撓性基板99の裏面側から投影した投影図である。
図1に示すように、蓄電装置100は、主として、可撓性基板99、可撓性基板99の主面上に配置された第1固体電池群98、主面とは反対の裏面上に配置された第2固体電池群97で構成されている。また、第1固体電池群98は複数の第1固体電池96、第2固体電池群97は複数の第2固体電池95から構成されている。なお、主面とは凸に屈曲させた可撓性基板99の外側の面を指し、主面とは反対の裏面とは、凸に屈曲させた可撓性基板99の内側の面の事である。
(固体電池の配置に関して)
図2に示すように、第2固体電池群97の第2実装領域89は、第1固体電池群98の第1実装領域90よりも小さく、第2固体電池群97の第2実装領域89は裏面側から投影したとき、第1実装領域90の内側に配置され、第2固体電池群97は第1固体電池群98の中の互いに隣接する2つ又は4つの第1固体電池96をまたいでいる。ここで、第1実装領域90及び第2実装領域89とは、可撓性基板の外周に最も近い、第1固体電池96又は第2固体電池95の重心を結んでできる、第1実装ライン88又は第2実装ライン87で囲んだ領域の事である。
(配線とランドに関して)
図3は、本実施形態とする蓄電装置に用いられる可撓性基板99の上面(主面側)から見たときの図である。可撓性基板99には樹脂基板上に固体電池を電気的に接続するための配線(正極用配線93と負極用配線94を含んだ総称をいう。)が施されている。それらが外部と接続をとるために可撓性基板99の端部まで引き回されている。上記配線は、負極用配線94と、その配線と固体電池の端子電極55を接続するための負極用ランド92を有し、さらに、正極用配線93と、その配線と固体電池の端子電極55を接続するための正極用ランド91、を備えている。
(固体電池の配置に関して)
図4は、前記正極用ランド91と前記負極ランド92に第1固体電池96または、第2固体電池95をハンダ実装したときの断面図である。
図4に示すように、可撓性基板99の主面上には複数の第1固体電池96から構成される第1固体電池群98がハンダ実装され、可撓性基板99の主面とは反対側の裏面上には、複数の第2固体電池95から構成される第2固体電池群97が、第2固体電池群97の第2実装領域89が、第1固体電池群98の第1実装領域90の内側にハンダ実装されたものである。また、第1固体電池96及び第2固体電池95は、可撓性基板99に形成された負極用ランド92、正極用ランド91にハンダ実装され、外部と接続されている。
【0022】
本実施形態において蓄電装置100は、前記第2固体電池群97は前記裏面側から投影したとき、前記第1固体電池群98中の互いに隣接する2つの前記固体電池にまたいで配置されていることが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、前記可撓性基板を屈曲させた際に、曲率の高くなる外側に固体電池が配置されないため、局所的な応力が回避でき、外側ほど実装密度が下がるので、放熱性に優れるため、より固体電池の脱落を防止し、放熱性に優れるため好ましい。
【0024】
本実施形態において蓄電装置100は、前記第2固体電池群97は前記裏面側から投影したとき、前記第1固体電池群98の中の互いに隣接する4つの前記固体電池にまたいで配置されていることが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、前記可撓性基板を屈曲させた際に、曲率の高くなる外側に固体電池が配置されないため、局所的な応力が回避でき、外側ほど実装密度が下がるので、放熱性に優れるため、更に固体電池の脱落を防止し、放熱性に優れるため好ましい。
【0026】
本実施形態において
図3に示した前記配線は、4直列4並列の配線構造である。もちろん直列だけでも並列だけでも配線の引き回し次第で、所望の電圧、所望の容量を自由に設計できる。4直列4並列の場合には
図3に示すように負極用配線94と正極用配線93を所定間隔で隣接して形成すればよい。その隣接する負極用配線94と正極用配線93の間に前記固体電池を接続することで直列や並列の回路が構成可能である。
【0027】
また、極性の異なる配線(負極用配線94、正極用配線93)を
図3に示す通り互いに逆側に引き出すことにより並列回路が構成できる。
さらに互いに逆側に引き出された配線を複数結合させ櫛形状に形成することにより直列回路が構成できる。それら並列回路、直列回路を組み合わせることにより4直列4並列回路を構成可能である。
【0028】
さらに
図3では、負極用配線94、正極用配線93、正極用配線93、負極用配線94、負極用配線94、正極用配線93、正極用配線93、負極用配線94の順で櫛形状に形成されている。このように一部の配線において、同一極性の配線を隣接させることにより、固体電池間における短絡を防止し、より信頼性の高い蓄電装置とすることができる。
【0029】
樹脂基板上述した樹脂基板に用いることができる材料としては、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂材料を用いることが出来る。可撓性基板99には、フレキシブルプリント基板などの樹脂材料からなる基板を用いることができ、これによりガラスや金属材料を用いた場合に比べて、薄層、軽量で高強度を維持しつつ可撓性を具備させることが出来る。ひいては、蓄電装置の薄層化、軽量化が実現可能となり、ウェアラブルな携帯電子機器への適用に好ましい。
【0030】
(配線及びランド)
配線及びランドに用いることができる材料としては、導電性材料であれば特に限定されるものではないが、可撓性基板99を湾曲、屈曲させた際に追従を要するため、展性や延性に優れた材料であることが好ましい。例えば、金、白金、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス、鉄、亜鉛などの金属、及びこれらの合金を用いることが好ましい。
【0031】
(ランドと固体電池の接続)
第1固体電池96及び第2固体電池95をそれぞれ負極用ランド92及び正極用ランド91と電気的に接続させるには、公知の実装技術を用いることが出来る。具体的には、半田、半田ペースト、鉛フリー半田、鉛フリー半田ペースト、導電性ペースト、熱硬化性導電性ペースト、異方導電性ペースト、金属含有樹脂などを用い熱処理により接合すればよい。
【0032】
(固体電池の構造)
次に本実施形態の蓄電装置に用いられる固体電池について説明する。
図5は、本実施形態とする蓄電装置に実装された、第1固体電池96及び第2固体電池95の断面図を示したものである。
図5に示すように、第1固体電池96及び第2固体電池95は固体電解質層50、正極集電体層51、正極活物質層52、負極集電体層53、負極活物質層54、端子電極55から構成され、それぞれが積層された構造を有している。正極活物質層52と固体電解質層50、負極活物質層54と固体電解質層50の間に熱膨張係数を緩和するための中間層が設けられていても良い。
【0033】
正極集電体層51、負極集電体層53の組成は特に限定されないが、例えば導電性材料以外に、活物質や固体電解質、焼結助剤が含まれていても良い。
【0034】
正極活物質層52、負極活物質層54の組成は特に限定されないが、例えば活物質以外に、固体電解質や焼結助剤、導電性材料が含まれていても良い。
【0035】
固体電解質層50の組成は特に限定されないが、例えば固体電解質以外に、焼結助剤が含まれていても良い。
【0036】
正極活物質層52及び負極活物質層54を構成する活物質には明確な区別がなく、2種類の化合物の電位を比較して、より貴な電位を示す化合物を正極活物質層52として用い、より卑な電位を示す化合物を負極活物質層54として用いることができる。また、1種類の化合物で構成されていてもよい。
【0037】
<材料に関して>
(固体電解質)
第1固体電池96及び第2固体電池95の固体電解質層50を構成する固体電解質としては、電子の伝導性が小さく、リチウムイオンの伝導性が高い材料を用いるのが好ましい。例えば、La
0.5Li
0.5TiO
3などのペロブスカイト型化合物や、Li
14Zn(GeO
4)
4などのリシコン型化合物、Li
7La
3Zr
2O
12などのガーネット型化合物、Li
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO
4)
3やLi
1.5Al
0.5Ge
1.5(PO
4)
3などのナシコン型化合物、Li
3.25Ge
0.25P
0.75S
4やLi
3PS
4などのチオリシコン型化合物、Li
2S−P
2S
5やLi
2O−V
2O
5−SiO
2などのガラス化合物、Li
3PO
4やLi
3.5Si
0.5P
0.5O
4やLi
2.9PO
3.3N
0.46などのリン酸化合物、よりなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
【0038】
(集電体材料)
正極集電体層51及び負極集電体層53を構成する導電性材料の具体例としては、金(Au)、白金(Pt)、白金(Pt)−パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銀(Ag)−パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、インジウム−錫酸化膜(ITO)などを挙げることが出来る。
【0039】
(正極活物質及び負極活物質)
第1固体電池96及び第2固体電池95の正極活物質層52及び負極活物質層54を構成する正極活物質及び負極活物質としては、リチウムイオンを効率よく放出、吸着する材料を用いるのが好ましい。例えば、遷移金属酸化物、遷移金属複合酸化物を用いるのが好ましい。具体的には、リチウムマンガン複合酸化物Li
2Mn
x3Ma
1−x3O
3(0.8≦x3≦1、Ma=Co、Ni)、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn
2O
4)、及び、一般式:LiNi
x4Co
y4Mn
z4O
2(x4+y4+z4=1、0≦x4≦1、0≦y4≦1、0≦z4≦1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV
2O
5)、オリビン型LiMbPO
4(ただし、Mbは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素)、リン酸バナジウムリチウム(Li
3V
2(PO
4)
3又はLiVOPO
4)、Li過剰系固溶体正極Li
2MnO
3−LiMcO
2(Mc=Mn、Co、Ni)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、LiaNi
x5Co
y5Al
z5O
2(0.9<a<1.3、0.9<x5+y5+z5<1.1)で表される複合金属酸化物のいずれかであることが好ましい。
【0040】
(焼結助剤)
第1固体電池96及び第2固体電池95を構成する固体電解質層50、正極集電体層51、正極活物質層52、負極集電体層53及び負極活物質層54に添加する焼結助剤の種類は、焼結を低温化させることが可能であれば特に限定されないが、Li
2CO
3やLiOHなどのリチウム化合物や、H
3BO
3などのホウ素化合物、リチウムとホウ素からなる化合物を用いると良い。これらの材料は水や二酸化炭素により化合物形態が変化し難いため空気中で秤量することができ、簡便かつ正確にリチウム及びホウ素を添加することが出来るため好ましい。
【0041】
焼結助剤の添加量は特性を損なわない限りは限定されないが、特に、リチウム化合物の場合、正極活物質、負極活物質、及び固体電解質に対してリチウムが4.38mol%から13.34mol%の範囲であり、またホウ素からなる化合物の場合、0.37mol%から1.11mol%の範囲であれば、より好ましい。
【0042】
添加された焼結助剤の添加量は、走査透過型電子顕微鏡と電子エネルギー損失分光法を組み合わせたSTEM−EELS分析により分析可能である。
【0043】
<プロセスに関して>
(蓄電装置)
可撓性基板99の負極用配線94と正極用配線93に形成された、負極用ランド92と正極用ランド91に合わせて設計されたメタルマスクを用いて、スクリーン印刷により鉛フリー半田ペーストを主面上に形成する。
主面上のランドに形成された鉛フリー半田ペースト上に第1固体電池をマウントし、リフロー炉を通してはんだ付けを行う。リフロー炉内はおおむね3段階の温度プロファイルを有しており、第1のプレヒートゾーン、第2のメインヒートゾーン、第3の冷却ゾーンからなる。
第1固体電池が実装された主面を裏返し、裏面上の負極用配線94と正極用配線93に形成された、負極用ランド92と正極用ランド91に合わせて設計されたメタルマスクを用いて、スクリーン印刷により、鉛フリー半田ペーストを裏面上に形成する。
裏面上のランドに形成された鉛フリー半田ペースト上に第2固体電池をマウントし、リフロー炉を通してはんだ付けを行う。リフロー炉内はおおむね3段階の温度プロファイルを有しており、第1のプレヒートゾーン、第2のメインヒートゾーン、第3の冷却ゾーンからなる。このようにして蓄電装置を作製することが出来る。
(固体電池の製造方法)
本実施形態の第1固体電池96及び第2固体電池95は、正極集電体層51、正極活物質層52、固体電解質層50、及び、負極集電体層53、負極活物質層54の各材料をペースト化し、塗布乾燥してグリーンシートを作製し、係るグリーンシートを積層し、作製した積層体を同時焼成することにより製造する。
【0044】
ペースト化の方法は、特に限定されないが、例えば、ビヒクルに上記各材料の粉末を混合してペーストを得ることができる。ここで、ビヒクルとは、液相における媒質の総称である。ビヒクルには、溶媒、バインダーが含まれる。係る方法により、正極集電体層51用のペースト、正極活物質層52用のペースト、固体電解質層50用のペースト、負極集電体層53用のペースト、負極活物質層用54のペーストを作製する。
【0045】
正極集電体層51用のペースト、負極集電体53用のペーストの組成は特に限定されないが、例えば導電性材料以外に、活物質や固体電解質、焼結助剤が含まれていても良い。
【0046】
正極活物質層52用のペースト、負極活物質層54用のペーストの組成は特に限定されないが、例えば活物質以外に、固体電解質や焼結助剤、導電性材料が含まれていても良い。
【0047】
固体電解質層50用のペーストの組成は特に限定されないが、例えば固体電解質以外に、焼結助剤が含まれていても良い。
【0048】
作製したペーストをPET(ポリエチレンテレフタレート)などの基材上に所望の順序で塗布し、必要に応じ乾燥させた後、基材を剥離し、グリーンシートを作製する。ペーストの塗布方法は、特に限定されず、スクリーン印刷、塗布、転写、ドクターブレード等の公知の方法を採用することができる。
【0049】
作製したグリーンシートを所望の順序で、積層し積層基板を得る。
並列型又は直並列型の電池を作製する場合は、正極活物質層52の端面と負極活物質層54の端面が一致しないように精度よく積層するために、積層はアライメントを行い積み重ねることが好ましい。また、積層構造はこれに限定されるものではない。
【0050】
作製した積層基板を一括して圧着する。圧着は加熱しながら行うが、加熱温度は、例えば、40〜90℃とする。
【0051】
得られた積層基板を必要に応じてアライメントを行い、切断し、所望の寸法に個片化された積層体を作製する。切断の方法は限定されないが、ダイシングやナイフ切断などによって行うと良い。
【0052】
個片化された積層体を焼成する前に、乾式グリーンバレルもしくは湿式グリーンバレルによって角取りを行っても良い。
【0053】
乾式グリーンバレルの際は、アルミナやジルコニア、樹脂ビーズなどの研磨剤と共に行うとよい。
【0054】
湿式グリーンバレルの際は、アルミナやジルコニア、樹脂ビーズなどの研磨剤以外に、溶媒を用いる。その際の溶媒には例えば、イオン交換水、純水、フッ素系溶媒などを用いることが出来る。また、塩化リチウムなどのリチウム塩が溶解されていても良い。
【0055】
個片化された積層体を焼成する前に、端子電極55を形成してから焼成を行ってもよい。
【0056】
個片化された積層体を、例えば、大気雰囲気下で加熱し焼成を行い、焼結体を得る。本実施形態の第1固体電池96および第2固体電池95の製造では、焼成温度は、600〜1200℃の範囲とするのが好ましい。600℃未満では、焼成が十分進まず、1200℃を超えると、固体電解質が融解する、正極活物質、負極活物質の構造が変化するなどの問題が発生するためである。更に700〜1100℃の範囲とするのがより好ましい。700〜1100℃の範囲とするほうが、焼成の促進、製造コストの低減により好適である。焼成時間は、例えば、1〜3時間とする。
【0057】
得られた焼結体が、焼成前にグリーンバレルが施されていない場合は、乾式焼成後バレルもしくは湿式焼成後バレルによって角取りを行っても良い。
【0058】
乾式焼成後バレルの際は、アルミナやジルコニア、樹脂ビーズなどの研磨剤と共に行うとよい。
【0059】
湿式焼成後バレルの際は、アルミナやジルコニア、樹脂ビーズなどの研磨剤以外に、溶媒を用いる。その際の溶媒には例えば、イオン交換水、純水、フッ素系溶媒などを用いても良い。また、塩化リチウムなどのリチウム塩が溶解されていても良い。
【0060】
焼成前に端子電極55を形成していない場合は、得られた焼結体に端子電極55を形成し、再度熱処理を行い、端子電極55を具備させても良い。
【0061】
端子電極55の形成方法は限定されないが、公知の成膜技術を用いることが出来る。その端子電極55に用いることが出来る材料の具体例としては、金(Au)、白金(Pt)、白金(Pt)−パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銀(Ag)−パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、インジウム、インジウム−錫酸化膜(ITO)、などが挙げられる。
【0062】
また、その形成方法は上記導電性材料の粒子を熱硬化性樹脂と混合しペースト化させた熱硬化性導電性ペーストにより端子電極55を形成しても良い。
【0063】
端子電極55にはめっき被膜が施されても良い。めっきの方法と被膜の種類は特に限定されないが、例えば、無電解Niめっきまたは電解NiめっきによりNi被膜を形成した後に、電気錫メッキによりSn被膜を形成した、Ni−Sn被膜が形成されていると良い。
【0064】
また、スパッタにより、少なくとも1種のPtやAu、Cu、Ti、Ni、Sn等の金属、これらの合金による被膜を端子電極55に形成しても良い。
【0065】
本実施形態の第1固体電池96および第2固体電池95の表面にはっ水処理を施してもよい。はっ水処理の方法は特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂やシラン樹脂等からなる溶液に浸漬することにより形成できる。
【0066】
本実施形態の第1固体電池96および第2固体電池95の表面にガラス層を形成しても良い。形成方法は特に限定されないが、低融点ガラスを塗布し、所望の温度で熱処理を行うことで形成することが出来る。
【0067】
本実施形態の蓄電装置100は密閉性の高いケースに収容されても良い。収容するケースの形状は、角型、円柱型、コイン型、カード型など限定されない。
【0068】
本実施形態の蓄電装置100は樹脂で被覆されていても良い。
【0069】
本実施形態の蓄電装置100は、他のリチウムイオン二次電池や太陽光発電ユニットや風力発電ユニット、地熱発電ユニット、圧電素子、熱電素子などと組み合わせて用いられても良い。
【0070】
(実施例1)
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、部表示は、断りのない限り、重量部である。
【0071】
(活物質の作製)
活物質として、以下の方法で作製したLi
2MnO
3を用いた。Li
2CO
3とMnCO
3とを出発材料とし、これらをモル比2:1となるように秤量し、水を溶媒としてボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥した。得られた粉体を800℃で2時間、空気中で仮焼した。仮焼品を粗粉砕し、水を溶媒としてボールミルで16時間湿式粉砕を行った後、脱水乾燥して活物質粉末を得た。この粉体の平均粒径は0.40μmであった。作製した粉体の組成がLi
2MnO
3であることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0072】
(活物質ペーストの作製)
活物質ペーストは、この活物質粉末100部に、バインダーとしてエチルセルロース15部と、溶媒としてジヒドロターピネオール65部とを加えて、三本ロールで混練・分散して活物質ペーストを作製した。
【0073】
(固体電解質シートの作製)
固体電解質として、以下の方法で作製したLi
3.5Si
0.5P
0.5O
4を用いた。Li
2CO
3とSiO
2とLi
3PO
4を出発材料として、これらをモル比2:1:1となるように秤量し、水を溶媒としてボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥した。得られた粉体を950℃で2時間、空気中で仮焼した。仮焼品を粗粉砕し、水を溶媒としてボールミルで16時間湿式粉砕を行った後、脱水乾燥して固体電解質の粉末を得た。この粉体の平均粒径は0.49μmであった。作製した粉体の組成がLi
3.5Si
0.5P
0.5O
4であることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0074】
次いで、この粉末100部に、溶媒としてエタノール100部、トルエン200部をボールミルで加えて湿式混合した。その後ポリビニールブチラール系バインダー16部とフタル酸ベンジルブチル4.8部をさらに投入し、混合して固体電解質ペーストを調製した。この固体電解質ペーストをドクターブレード法でPETフィルムを基材としてシート成形し、厚さ9μmの固体電解質シートを得た。
【0075】
(集電体ペーストの作製)
集電体として重量比70/30のAg/PdとLi
2MnO
3とを体積比率で60:40となるように混合した後、バインダーとしてエチルセルロース10部と、溶媒としてジヒドロターピネオール50部を加えて三本ロールで混練・分散して集電体ペーストを作製した。ここで重量比70/30のAg/Pdは、Ag粉末(平均粒径0.3μm)及びPd粉末(平均粒径1.0μm)を混合したものを使用した。
【0076】
(端子電極ペーストの作製)
銀粉末とエポキシ樹脂、溶剤とを三本ロールで混錬・分散し、熱硬化型の導電ペーストを作製した。
【0077】
これらのペーストを用いて、以下のようにしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0078】
(正極活物質ユニットの作製)
上記の固体電解質シート上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで正極活物質ペーストを印刷した。次に、印刷した正極活物質ペーストを80℃で10分間乾燥し、その上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで正極集電体ペーストを印刷した。次に、印刷した正極集電体ペーストを80℃で10分間乾燥し、更にその上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで正極活物質ペーストを再度印刷した。印刷した正極活物質ペーストを80℃で10分間乾燥し、次いでPETフィルムを剥離した。このようにして、固体電解質シート上に、正極活物質ペースト、正極集電体ペースト、正極活物質ペーストがこの順に印刷・乾燥された正極活物質ユニットのシートを得た。
【0079】
(負極活物質ユニットの作製)
上記の固体電解質シート上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで負極活物質ペーストを印刷した。次に、印刷した負極活物質ペーストを80℃で10分間乾燥し、その上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで負極集電体ペーストを印刷した。次に、印刷した負極集電体ペーストを80℃で10分間乾燥し、更にその上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで負極活物質ペーストを再度印刷した。印刷した負極活物質ペーストを80℃で10分間乾燥し、次いでPETフィルムを剥離した。このようにして、固体電解質シート上に、負極活物質ペースト、負極集電体ペースト、負極活物質ペーストがこの順に印刷・乾燥された負極活物質ユニットのシートを得た。
【0080】
(積層体の作製)
正極活物質ユニット一枚と負極活物質ユニット一枚を、固体電解質を介するようにして積み重ねた。このとき、一枚目の正極活物質ユニットの正極集電体ペースト層が一方の端面にのみ延出し、二枚目の負極活物質ユニットの負極集電体ペースト層が他方の端面にのみ延出するように、各ユニットをずらして積み重ねた。この積み重ねられたユニットの両面に厚さ500μmとなるように固体電解質シートを重ね、その後、これを温度80℃で圧力1000kgf/cm2〔98MPa〕で成形し、次いで切断して積層体を作製した。
【0081】
(焼結体の作製)
積層体を同時焼成して焼結体を得た。同時焼成は、大気中で昇温速度200℃/時間で焼成温度800℃まで昇温して、その温度に2時間保持し、焼成後は自然冷却した。同時焼成後の電池外観サイズは、3.2mm×2.5mm×0.4mmであった。
【0082】
(端子電極形成工程)
積層体の端面に熱硬化性導電性端子電極ペーストを塗布し、150℃、30分の熱硬化を行い、一対の端子電極を形成した。
【0083】
端子電極以外の面にマスクを施し、スパッタにより端子電極上に、Ni、Cu、Snの順に被膜を形成し、固体電池を得た。
【0084】
本実施例について、
図6乃至
図12を参照して説明する。
【0085】
最外数とは、主面とは反対の裏面側から投影したときに、主面の実装ライン(
図6〜12にて太い実線で示す。)をまたいで実装された、裏面の固体電池の数を表す。
最外比率とは、主面とは反対側の裏面に実装した固体電池の数に対する、最外数の割合を表したものである。
脱落数とは、主面とは反対側の裏面に実装した固体電池が、試験後に脱落した数を表したものである。
不良率とは、実装数に対する脱落数の割合を表したものである。
【0086】
図6は本実施例1の模式投影図である。
図6に示すように、樹脂性基板の主面上に、負極用ランドが形成された負極用配線と、正極用ランドが形成された正極用配線を有し、主面と反対側の裏上面に、裏面の実装領域が主面の実装領域の内側にあり、最外比率が50%となるように負極用ランドと正極用ランドが設計された、負極用配線と正極配線を有する、幅30mm×長さ70mmの可撓性基板を用意した。この蓄電装置は、裏面に12個実装された固体電池が、表面に実装された同じ大きさの16個の固体電池の一部が重なるように実装されている。つまり、裏面の各固体電池は表面の固体電池2個をまたがる位置で実装されている。
はじめに、可撓性基板の主面上の負極用配線と正極用配線に形成された負極用ランドと正極用ランドに合わせて設計されたメタルマスクを用いて、スクリーン印刷により鉛フリー半田ペーストをそれぞれのランドに形成した。
ランドに形成された鉛フリー半田ペースト上に固体電池をマウントし、リフロー炉を通してはんだ実装を行った。リフロー炉はおおむね3段階の温度プロファイルを有しており、第1の170℃のプレヒートゾーンを300秒かけて通過させ、第2の270℃のメインヒートゾーンを60秒で通過し、第3の冷却ゾーンを600秒かけて冷却することで、主面上に固体電池を実装させた。
固体電池が実装された主面を裏返し、裏面上の負極用配線と正極用配線に形成された負極用ランドと正極用ランドに合わせて設計されたメタルマスクを用いて、スクリーン印刷により鉛フリー半田ペーストをそれぞれのランドに形成し、形成された鉛フリー半田ペースト上に固体電池をマウントし、はんだ実装を行った以外は、主面側と同様の方法で裏面上に固体電池を実装し、蓄電装置を得た。
【0087】
(実施例2)
図7は本実施例2の模式投影図である。
図7に示すように、樹脂性基板の主面上に、負極用ランドが形成された負極用配線と、正極用ランドが形成された正極用配線を有し、主面と反対側の裏面上に、裏面の実装領域が主面の実装領域の内側にあり、最外比率が0%となるように負極用ランドと正極用ランドが設計された、負極用配線と正極配線を有する可撓性基板を用いた以外は、実施例1と同様の方法で蓄電装置を作製した。この蓄電装置は、裏面に9個実装された固体電池が、表面に実装された同じ大きさの16個の固体電池のうち16個全てと一部が重なるように実装されている。つまり、裏面の各固体電池は表面の固体電池4個をまたがる位置で実装されている。
【0088】
(実施例3)
図8は本実施例3の模式投影図である。
図8に示すように、樹脂性基板の主面上に、負極用ランドが形成された負極用配線と、正極用ランドが形成された正極用配線を有し、主面と反対側の裏面上に、裏面の実装領域が主面の実装領域の内側にあり、最外比率が75%となるように負極用ランドと正極用ランドが設計された、負極用配線と正極配線を有する可撓性基板を用いた以外は、実施例1と同様の方法で蓄電装置を作製した。この蓄電装置は、表面に実装された固体電池と裏面に実装された固体電池とが、基板越しに一対一で対向する位置で実装されている。
【0089】
(実施例4)
図9は本実施例4の模式投影図である。
図9に示すように、樹脂性基板の主面上に、負極用ランドが形成された負極用配線と、正極用ランドが形成された正極用配線を有し、主面と反対側の裏面上に、裏面の実装領域が主面の実装領域の内側にあり、最外比率が56%となるように負極用ランドと正極用ランドが設計された、負極用配線と正極配線を有する可撓性基板を用いた以外は、実施例1と同様の方法で蓄電装置を作製した。この蓄電装置は、裏面に9個実装された固体電池が、表面に実装された同じ大きさの16個の固体電池のうち9個と重なる位置で実装されている。
【0090】
(実施例5)
図10は本実施例5の模式投影図である。
図10に示すように、樹脂性基板の主面上に、負極用ランドが形成された負極用配線と、正極用ランドが形成された正極用配線を有し、主面と反対側の裏面上に、裏面の実装領域が主面の実装領域の内側にあり、最外比率が33%となるように負極用ランドと正極用ランドが設計された、負極用配線と正極配線を有する可撓性基板を用いた以外は、実施例1と同様の方法で蓄電装置を作製した。この蓄電装置は、裏面に9個実装された固体電池が、表面に実装された同じ大きさの16個の固体電池のうち12個と一部が重なるように実装されている。つまり、裏面の各固体電池は表面の固体電池2個をまたがる位置で実装されている。
【0091】
(実施例6)
図11は本実施例6の模式投影図である。
図11に示すように、樹脂性基板の主面上に、負極用ランドが形成された負極用配線と、正極用ランドが形成された正極用配線を有し、主面と反対側の裏面上に、裏面の実装領域が主面の実装領域の内側にあり、最外比率が67%となるように負極用ランドと正極用ランドが設計された、負極用配線と正極配線を有する可撓性基板を用いた以外は、実施例1と同様の方法で蓄電装置を作製した。この蓄電装置は、裏面に12個実装された固体電池が、表面に実装された同じ大きさの16個の固体電池のうち12個と重なる位置で実装されている。
【0092】
(比較例1)
図12は本比較例1の模式投影図である。
図12に示すように、樹脂性基板の主面上に、負極用ランドが形成された負極用配線と、正極用ランドが形成された正極用配線を有し、主面と反対側の裏面上に、裏面の実装領域が主面の実装領域の外側にあり、最外比率が64%となるように負極用ランドと正極用ランドが設計された、負極用配線と正極配線を有する可撓性基板を用いた以外は、実施例1と同様の方法で蓄電装置を作製した。
【0093】
(試験方法)
可撓性基板に固体電池を実装させた蓄電装置の一端を固定し、それと反対側の端部を左右に90度、毎分60回の回数で6時間捻じり、不良率を評価した。その結果を表1に示す。
【表1】
【0094】
実施例1から6及び比較例1の試験後の蓄電装置において、可撓性基板から固体電池が脱落する不良が確認された。
【0095】
実施例1から6の蓄電装置では不良率が低く、捻じり耐性を示した。特に、主面とは反対の裏面側から投影したときに、主面の実装ラインに位置する、裏面の固体電池の数が少ないほど、不良率が低く、高い捻じり耐性を示した。
比較例1のように、主面の実装ラインの外側に位置する、裏面の固体電池の数が増加した場合には、不良率が顕著に高くなることが確認された。