【解決手段】可撓性を有する基板の少なくとも一方の主面に、所定方向に延びる導線と、複数の固体電池が前記所定方向に配列され並列接続した第一電池群と、複数の固体電池が前記所定方向に配列され並列接続した第二電池群と、を備え、
前記第一電池群と前記第二電池群は、互いに異なる極性を持った端子を同一の前記導線上に配置することで、直列接続されていることを特徴とする。本発明にかかる蓄電装置によれば、可撓性を有する基板上に固体電池が互い違いに配置されているため、湾曲または屈曲及びねじれに対応し容量の大きい蓄電装置および蓄電ユニットを提供することができる。
可撓性を有する基板の少なくとも一方の主面に、所定方向に延びる導線と、複数の固体電池が前記所定方向に配列され並列接続した第一電池群と、複数の固体電池が前記所定方向に配列され並列接続した第二電池群と、を備え、
前記所定方向、及びそれに直交する直交方向のいずれの方向から投影したときも第一電池群の固体電池と第二電池群の固体電池は互いに異なる位置に配置され、
前記第一電池群と前記第二電池群は、互いに異なる極性を持った端子電極を同一の前記導線上に配置することで、直列接続されていることを特徴とする蓄電装置。
前記蓄電装置を前記所定方向から投影したときに、前記第一電池群の固体電池の一部と前記第二電池群の固体電池の一部とが互いに重なり合う位置で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
前記主面とは反対側にシート状の太陽光発電素子を貼り合わせ、前記請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蓄電装置と前記太陽光発電素子とを電気的に接続させた蓄電ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施条件に付いて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。さらに、以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
【0021】
(蓄電装置)
図1は本実施形態とする蓄電装置50を示す平面図である。
図1のように蓄電装置50は主として、可撓性基板1と可撓性基板1の一方の主面上に配置された第一電池群2と第二電池群3からなる。第一電池群2および第二電池群3はそれぞれ複数の固体電池10から構成されている。導線4は所定方向に延びており、可撓性基板1の表面もしくは内部に複数備えられて、回路の一部を担っており、固体電池10は導線4に電気的に接続されている。
【0022】
(電池の配置)
第一電池群2と第二電池群3はそれぞれ所定方向に配列された複数の固体電池10で構成されている。第二電池群3は、所定方向及び所定方向に直交する直交方向のいずれの方向から投影した時も第一電池群2と第二電池群3の固体電池10は互いに異なる位置で配置されることで、可撓性基板1上に固体電池10を高密度実装できるため、好ましい。
【0023】
所定方向から投影した際の第一電池群2と第二電池群3の重なりが大きいと、蓄電装置の容量を大きくするために固体電池の実装密度を高くした場合であっても、可撓性基板1に湾曲及び屈曲、またはねじれが生じた際の固体電池にかかる負荷が分散し、小さくなるため好ましい。
【0024】
(3列目以降の配列)
図2乃至
図5は
図1とは電池の配列が異なる蓄電装置の例である。
図1乃至5のように、一列目に第一電池群2を配置し、直交方向に二列目として、第二電池群3を配列した時、三列目以降に複数の固体電池を所定方向に配列し接続した電池群を配置し、直交方向に並んだ第二電池群をはじめとした電池群と直列に接続することが好ましい。
図2乃至5には4直列―3並列の配置を持つ場合の固体電池の配置の例を模式的に示した。三列目以降には、
図2及び
図3のように第一電池群2と第二電池群3を交互に配列しても良いし、
図4及び
図5のように第一電池群2や第二電池群3と異なる電池群を配列してもよい。第一電池群2や第二電池群3と異なる電池群を直交方向に配列する場合は、第一電池群2を構成する一つの固体電池10と第二電池群3を構成する一つの固体電池10の重心を結んだ直線上に三列目以降の電池群の固体電池10が配列されていればよい。
【0025】
可撓性基板上に配列された固体電池10の配列の対称性が高いほど、高密度実装やねじれへの対応は容易になるので、第一電池群2と第二電池群3を交互に配列する方が好適である。また、直交方向に配列された電池群の間の間隔は特に定めないが、等間隔であることが好ましい。
【0026】
(配線)
図1に示す蓄電装置では、矩形状の可撓性基板1上の長手方向に平行に4本の配線が形成されている。そのうち、隣り合う2本の導線4にまたがるように固体電池が実装されている。
図1では、一つの第一電池群2を構成する6個の固体電池10は並列に接続されており、一つの第二電池群3を構成する6個の固体電池10も並列に接続されており、第一電池群2と第二電池群3は直列に接続されている。このようにして
図1では4直列―6並列の蓄電装置を構成している。この蓄電装置は第一電池群2と第二電池群3の互いに異なる極性を持った端子電極を同一導線上に配置させている点で、高密度実装と湾曲又は屈曲及びねじれに対応した優れたものとなる。また、固体電池10は充放電時にイオンが移動するため膨張や収縮をするが、固体電池10の可撓性基板1からの脱落を防ぐため、固体電池と導線が接触する面積は広い方が好ましく、導線の幅は固体電池10の端子電極間18の距離の3分の1以上であると好ましい。
【0027】
本実施形態にかかる配線は
図1に示すものに限らず、蓄電装置50に要求される容量や電流仕様に応じて幅広く変化させることが可能である。また、基板上に固体電池10以外の電子部品を搭載しても良く、例えば、整流回路や保護回路、ICチップなどを備えていても良いし、第一電池群2及び第二電池群3をはじめとする電池群に含まれていない固体電池などを備えていても良い。
【0028】
複数の固体電池10を並列接続して、第一電池群2や第二電池群3をはじめとする電池群を形成し、複数の電池群を直列接続するとき、並列接続された固体電池10が互いに異なる容量、あるいは、直列接続された電池群が互いに異なる容量を持つ場合、それらによって構成される蓄電装置50には、充放電効率の低下や過充電状態が生じる可能性がある。そのため、一つの電池群を構成する並列接続された固体電池10の容量は互いに同じであり、直列接続された電池群は互いに同じ容量であることが好ましい。
【0029】
一つの電池群を構成する並列接続された固体電池10の数や、直列接続された電池群の数は多い方が好ましい。複数の固体電池10が並列接続されて電池群を構成し、複数の電池群が、隣り合う電池群と導線を共有しながら直列接続されることで、湾曲及び屈曲、あるいはねじれによる導線の断線や回路の短絡、固体電池10に割れ接続不良や内部短絡等による電気抵抗値や容量の変化が生じても、蓄電装置を構成する固体電池10のうち、1つあたりに加わる負荷の変化量は小さくなるため、蓄電装置の電流値及び電圧値の維持が可能になるため好ましい。
【0030】
図1に示す蓄電装置は第一電池群2と第二電池群3が交互に配置されており、所定方向及び直交方向のいずれの方向に対しても固体電池10が等間隔で周期的に配列されている。さらに、第一電池群2と第二電池群3の配列は平行であり、第二電池群3を構成する固体電池10の配列は、第一電池群2を構成する固体電池10の所定方向の周期の半分だけ所定方向にずれ、第一電池群2と同じ周期で所定方向に配列されている。可撓性基板1上の固体電池10の配列は、高い対称性を有するため、同じ数の固体電池10を高密度に実装した場合であっても、湾曲及び屈曲またはねじれへの対応が容易となるため好適である。
【0031】
導線4に用いることができる材料としては、導電性材料であれば特に限定されるものではないが、可撓性基板1を湾曲、屈曲させた際に追従を要するため、展性や延性に優れた材料であることが好ましい。例えば、金、白金、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス、鉄、亜鉛などの金属、及びこれらの合金を用いることが好ましい。
【0032】
(可撓性基板の材料)
可撓性基板1にはフレキシブルプリント基板など樹脂材料からなる基板を用いることが好ましい。より具体的には、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエステル等のプラスチック材料を用いることができる。樹脂材料を用いることでガラスや金属材料を用いた場合と比べて、薄膜、軽量で高強度を維持しつつ可撓性を具備させることができる。ひいては蓄電装置の薄層化、軽量化が現実可能となり、ウェアラブルな機器への適用に好適である。
【0033】
(基盤との接続)
固体電池10の端子電極16と導線4の接続には、電子部品を回路基板に実装させる技術を用いることができる。その材料には、ハンダ、クリームハンダ、鉛フリーハンダ、鉛フリーハンダペースト、カーボンペースト、導電性ペースト、金属含有樹脂などを用いることができる。クリームハンダや鉛フリーハンダペーストを使用する場合、リフロー炉を通してそれを硬化させる。リフロー炉のピーク温度は200℃から280℃程度が好ましい。
【0034】
次に本実施形態の蓄電装置の製造方法について順に説明する。
【0035】
(固体電池の構造)
図6は本実施形態における蓄電装置に実装された固体電池10の断面の模式図である。固体電池10は、正極層11と負極層12との間に固体電解質層13を有しており、正極層11は正極集電体層14と正極活物質層15からなり、負極層12は負極集電体層16と負極活物質層17からなる。さらに正極集電体14と負極集電体16はそれぞれ外部と電気的接触をとるため、端子電極18が電気的に接続されている。大気中の水分と固体電池10が反応しないよう、固体電池10の表面に樹脂やセラミックス、ガラスなどからなる保護層があるとより好ましい。尚、
図6では、5個の電池セルが積層された並列型の固体電池10の断面図が示されている。しかし、本実施形態の固体電池10に関する技術は、
図1に示す5個の電池セルが積層された並列型の場合に限らず、任意の複数層からなる固体電池や直列型の固体電池にも適用できる。
図6に示すものに限らず、蓄電装置50に要求される容量や電流仕様に応じて幅広く変化させることが可能である。
【0036】
(固体電解質)
本実施形態の固体電解質層13を構成する固体電解質としては、電子の伝導性が小さく、リチウムイオンの伝導性が高い材料を用いるのが好ましい。また、大気雰囲気で高温焼成できる無機材料であることが好ましい。例えば、La
0.5Li
0.5TiO
3などのペロブスカイト型化合物や、Li
14Zn(GeO
4)
4などのリシコン型化合物、Li
7La
3Zr
2O
12などのガーネット型化合物、Li
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO
4)
3やLi
1.5Al
0.5Ge
1.5(PO
4)
3などのナシコン型化合物、Li
3.25Ge
0.25P
0.75S
4やLi
3PS
4などのチオリシコン型化合物、Li
2S−P
2S
5やLi
2O−V
2O
5−SiO
2などのガラス化合物、Li
3PO
4やLi
3.5Si
0.5P
0.5O
4やLi
2.9PO
3.3N
0.46などのリン酸化合物、よりなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
【0037】
(集電体材料)
正極集電体層15および負極集電体層17を構成する導電性材料の具体例としては、金(Au)、白金(Pt)、白金(Pt)−パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銀(Ag)−パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、インジウム−錫酸化膜(ITO)などを挙げることが出来る。
【0038】
(正極活物質及び負極活物質)
本実施形態の固体電池10を構成する正極活物質層14及び負極活物質層16を構成する正極活物質及び負極活物質としては、リチウムイオンを効率よく放出、吸蔵する材料を用いるのが好ましい。例えば、遷移金属酸化物、遷移金属複合酸化物を用いるのが好ましい。具体的には、リチウムマンガン複合酸化物Li
2Mn
x3Ma
1−x3O
3(0.8≦x3≦1、Ma=Co、Ni)、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn
2O
4)、及び、一般式:LiNi
x4Co
y4Mn
z4O
2(x4+y4+z4=1、0≦x4≦1、0≦y4≦1、0≦z4≦1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV
2O
5)、オリビン型LiMbPO
4(ただし、Mbは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素)、リン酸バナジウムリチウム(Li
3V
2(PO
4)
3又はLiVOPO
4)、Li過剰系固溶体正極Li
2MnO
3−LiMcO
2(Mc=Mn、Co、Ni)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、LiaNi
x5Co
y5Al
z5O
2(0.9<a<1.3、0.9<x5+y5+z5<1.1)で表される複合金属酸化物のいずれかであることが好ましい。
【0039】
ここで、正極活物質層14又は負極活物質層16を構成する活物質には明確な区別がなく、より貴な電位を示す化合物を正極活物質層16として用い、より卑な電位を示す化合物を負極活物質層16として用いることができる。また、正極活物質層14を構成している活物質と負極活物質層16を構成する活物質は同じ材料を用いても良いし、異なっても良い。
【0040】
(固体電池の製造)
本実施形態の固体電池10電解質層13、正極活物質層14、負極活物質層16、正極集電体層15、及び負極集電体層17の各材料をそれぞれペースト化し、その後、塗布、乾燥してグリーンシートを作製し、かかるグリーンシートを積層、圧着して積層体を作り、かかる積層体を同時焼成することによって製造する。
【0041】
(ペーストの作製)
ペースト化の方法は、特に限定されないが、例えば、ビヒクルに上記各材料の粉末を混合してペーストを得ることができる。ここで、ビヒクルとは、液相における媒質の総称である。ビヒクルには、溶媒、バインダーが含まれる。かかる方法により、正極集電体層14用のペースト、正極活物質層15用のペースト、固体電解質層13用のペースト、負極活物質層16用のペースト、及び、負極集電体層17用のペーストを作製する。
【0042】
ペーストの組成は特に限定されない。例えば、正極活物質層14用のペーストおよび負極活物質層16用のペーストには活物質のほかに固体電解質や焼結助剤、導電性材料が含まれていても良いし、正極集電体層15及び負極集電体17用のペーストに活物質や固体電解質、焼結助剤が含まれていても良い。
【0043】
作製したペーストをPET(ポリエチレンテレフタラート)などの基材上に所望の順序で塗布し、必要に応じ乾燥させた後、基材を剥離し、グリーンシートを作製する。ペーストの塗布方法は、特に限定されず、スクリーン印刷、塗布、転写、ドクターブレード等の公知の方法を採用することができる。
【0044】
作製した正極集電体層14用、正極活物質層15用、固体電解質層13用、負極活物質層17用、及び、負極集電体層16用のそれぞれのグリーンシートを所望の順序、積層数で積み重ね、必要に応じアライメント、切断等を行い、積層体を作製する。並列型又は直並列型の電池を作製する場合は、正極層の端面と負極層の端面が一致しないようにアライメントを行い積み重ねるのが好ましい。
【0045】
作製した積層体を一括して圧着する。圧着は加熱しながら行うが、加熱温度は、例えば、40〜90℃とする。
【0046】
得られた積層体は必要に応じて切断し、所望の寸法に切断する。切断方法は限定されないが、例えば、ダイシングソーやナイフ切断機で行うとよい。また、切断はアラインメントしてから行うことが好ましい。
【0047】
個片化された積層体を、例えば、大気雰囲気下で加熱し焼成を行い、焼結体を得る。焼成温度は、600〜1200℃の範囲とするのが好ましい。600℃未満では、焼成が十分進まず、1200℃を超えると、固体電解質が融解する、正極活物質、負極活物質の構造が変化するなどの問題が発生する可能性がある。更に、700〜1100℃の範囲とするほうが、焼成の促進、製造コストの低減により好適である。焼成時間は、例えば、0.1〜3時間が好ましい。
【0048】
積層体の焼結体に対し乾式バレル研磨や湿式バレル研磨を行っても良い。この時、アルミナやジルコニア、樹脂ビーズなどの研磨剤を用いて行うと好ましい。湿式バレルの場合、溶媒は特に限定されないが、イオン交換水、純水、フッ素系溶媒を主としたものが好ましい。
【0049】
端子電極18の形成方法は限定されないが、電子部品などに用いられている技術を用いることが出来る。たとえば、熱硬化性導電性ペーストのディッピングやスパッタ、真空蒸着、メッキで形成することが好ましい。このような形成方法にて端子電極18を形成し、固体電池10を得る。
【0050】
また、端子電極18の材料は導電性を有するものが好ましく、たとえば、金(Au)、白金(Pt)、白金(Pt)−パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銀(Ag)−パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、インジウム、インジウム−錫酸化膜(ITO)を主として含んだものを用いることができる。
【0051】
なお、信頼性向上のため、焼結体の表面には樹脂やガラス、セラミックによる被膜の形成をしても良いし、気密性の高いケースに収納しても良い。
【0052】
(蓄電装置の作製方法)
上述した固体電池10を用い、
図1に示す通り、可撓性基板1に配線4をあらかじめ施したものを準備し、その配線上に上述した実装方法にて固体電池10を実装する。このようにして蓄電装置を得る。
【0053】
(実装時の固体電池の向き)
固体電池10はリチウムイオンの吸蔵によって膨張収縮が生じることがある。固体電池10を可撓性基板に実装する際は、固体電池10を構成する積層体の積層方向への膨張収縮が大きいため、隣接する固体電池10との距離を短くすることができるので、固体電池10を構成する積層体の積層方向が可撓性基板に対して直交する向きに実装することが好ましい。平面内での固体電池の向きに関しては固体電池の端子電極18を結ぶ線が導線4に対して平行でも良いし、傾いていても良いが、すべての電池が同じ向きであるほうが、固体電池の実装密度を大きくしやすいため好ましい。
【0054】
また、固体電池が実装される面は可撓性基板の片面でもよいが両面でもよい。この時、可撓性基板の一方の主面側から裏面に向けて固体電池を投影した時、裏面に実装される固体電池の配列は主面と同じ、あるいは、主面の配置で所定方向に平行にずれた配置であることが好ましい。
【0055】
(固体電池周囲の余白)
固体電池の膨張によって隣接する固体電池との間の距離が狭くなることを防ぐため、固体電池の実装時に、固体電池の周りにはそれを想定した空間を保持していた方が好ましい
【0056】
(電子機器)
本発明にかかる蓄電装置は可撓性のある電子機器や、電子機器の屈曲部に用いることが好ましい。例えば、リストウォッチや、薄型電子機器と組み合わせるのが好ましい。
【0057】
(蓄電ユニット)
図7には本発明にかかる蓄電装置を太陽光発電素子20と組み合わせた蓄電ユニットの概念的模式図を示す。上述した蓄電装置と組み合わせる発電素子としては、太陽光発電素子以外にも圧電素子、熱電変換素子などを用いることができるが、可撓性を有する発電素子が好ましい。その中でもシート状の太陽光発電素子が好適である。固体電池は高温でも動作可能であり、また、温度が高いほど固体電池の電池特性は向上することが期待できる。太陽光により蓄電ユニットが温められることで、より安定的に駆動可能な蓄電ユニットが得られる。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、部表示は、断りない限り重量部である。
【0059】
(活物質の作製)
活物質として、以下の方法で作製したLi
3V
2(PO
4)
3を用いた。Li
2CO
3とV
2O
5とNH
4H
2PO
4とを出発材料とし、これらをモル比3:2:6となるように秤量し、水を溶媒としてボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥した。得られた粉体を850℃で2時間、窒素水素混合ガス中で仮焼した。仮焼品を粗粉砕し、水を溶媒としてボールミルで16時間湿式粉砕を行った後、脱水乾燥して活物質粉末を得た。作製した粉体の組成がLi
3V
2(PO
4)
3であることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0060】
(活物質ペーストの作製)
活物質ペーストは、この活物質粉末100部に、バインダーとしてエチルセルロース15部と、溶媒としてジヒドロターピネオール65部とを加えて、三本ロールで混練・分散して活物質ペーストを作製した。
【0061】
(固体電解質シートの作製)
固体電解質として、以下の方法で作製したLi
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO
4)
3を用いた。Li
2CO
3とAl
2O
3とTiO
2とNH
4H
2PO
4を出発材料として、これらをモル比0.65:0.15:1.7:3となるように秤量し、水を溶媒としてボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥した。得られた粉体を800℃で2時間、空気中で仮焼した。仮焼品を粗粉砕し、水を溶媒としてボールミルで24時間湿式粉砕を行った後、脱水乾燥して固体電解質の粉末を得た。作製した粉体の組成がLi
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO
4)
3であることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0062】
次いで、この粉末100部に、溶媒としてエタノール100部、トルエン200部をボールミルで加えて湿式混合した。その後ポリビニールブチラール系バインダー16部とフタル酸ベンジルブチル4.8部をさらに投入し、混合して固体電解質ペーストを調製した。この固体電解質ペーストをドクターブレード法でPETフィルムを基材としてシート成形し、厚さ15μmの固体電解質シートを得た。
【0063】
(集電体ペーストの作製)
集電体としてCuとLi
3V
2(PO
4)
3とを体積比率で6:4となるように混合した後、バインダーとしてエチルセルロース10部と、溶媒としてジヒドロターピネオール50部を加えて三本ロールで混練・分散して集電体ペーストを作製した。
【0064】
(端子電極ペーストの作製)
銀粉末とエポキシ樹脂、溶剤とを三本ロールで混錬・分散し、熱硬化型の導電ペーストを作製した。
【0065】
(活物質ユニットのグリーンシートの作製)
上記の固体電解質シート上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで活物質ペーストを印刷した。次に、印刷した活物質ペーストを80℃で5分間乾燥し、その上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで集電体ペーストを印刷した。次に、印刷した集電体ペーストを80℃で5分間乾燥し、更にその上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで活物質ペーストを再度印刷した。印刷した活物質ペーストを80℃で5分間乾燥し、次いでPETフィルムを剥離した。このようにして、固体電解質シート上に、活物質ペースト、集電体ペースト、活物質ペーストがこの順に印刷・乾燥された活物質ユニットのグリーンシートを得た。
【0066】
(積層体の作製)
活物質ユニットのグリーンシート二枚を、活物質層の間に固体電解質を介するようにして積み重ねた。このとき、一枚目の活物質ユニットの集電体ペースト層が一の端面にのみ延出し、二枚目の活物質ユニットの集電体ペースト層が他の面にのみ延出するように、各活物質ユニットのグリーンシートをずらして積み重ねた。この積み重ねられた活物質ユニットのグリーンシートの両面に、積層したグリーンシートの合計の厚さが500μmとなるように固体電解質シートを重ねた。その後、これを温度80℃で圧力1000kgf/cm
2〔98MPa〕で一軸プレスを用いて成形した。次いで切断して積層ブロックを作製し、その後、積層ブロックを同時焼成して積層体を得た。同時焼成は、窒素中で昇温速度200℃/時間で焼成温度840℃まで昇温して、その温度に2時間保持し、焼成後は自然冷却した。同時焼成後の積層体のサイズは3.2mm×2.5mm×0.4mmであった。
【0067】
(端子電極形成工程)
積層体の端面に端子電極ペーストを塗布した。150℃で30分間の熱硬化を行い、一対の端子電極を形成した。
【0068】
(実装のための端子電極仕上げ)
端子電極以外の面にマスクを施し、端子電極上にNi、Cu、Sn、の順に被膜を形成し、固体電池を得た。
【0069】
(実装工程)
可撓性基板上に固体電池を配置し、ハンダ付けをした。具体的には、可撓性基板の主面上の導線上に形成されたランドに合わせて設計されたメタルマスクを用いて、鉛フリーハンダペーストをランド上に印刷した。さらに、印刷されたランド上に固体電池を配置し、それを窒素雰囲気に置換したリフロー炉に通した。リフロー炉には温度の異なる3つの領域あり、基板とその上に配置された固体電池を順番に通過させた。一つ目の予熱ゾーンでは150℃から200℃の炉内を300秒かけて通過させ、二つ目のメインヒートゾーンでは240℃から270℃であり、ここを60秒で通過させた。3つ目の冷却ゾーンは600秒かけて通過させ、室温付近までの温度を下げた。
【0070】
(実施例1の配置)
実施例1では、第二電池群を第一電池群に対して、所定方向に3.5mm、配列と垂直方向に2.25mmずらして配置し、第一電池群と第二電池群の近接する固体電池間の距離は1mmとした。第一電池群を構成する固体電池の間隔及び第二電池群を構成する固体電池の間隔はそれぞれ4.5mmとした。可撓性基板及びメタルマスクはその固体電池の配置に基づいて設計したものを使用した。第一電池群及び第二電池群を構成する電池の数はそれぞれ6個とし、第一電池群と第二電池群を交互にそれぞれ3回繰り返して、基板上に合計36個の固体電池を実装した。これにより蓄電装置を得た。
【0071】
(比較例1)
比較例1は固体電池の配置と、可撓性基板上のランドの位置以外は実施例1と同様にして作製した。比較例1では、従来技術と同様に、縦方向に3個、横方向に6個の合計36個の固体電池を規則的に配置し格子状に実装し、隣接する固体電池の間隔は1mmとした。
【0072】
(ねじれ対応の評価方法)
可撓性基板の短辺の片方を固定し、ねじれに対する耐久試験をおこなった。まず、固定した短辺に対し他方の短辺が90度をなすまでねじった。つぎに、ねじれをもとに戻し、先にねじった方とは逆の向きに、固定していない短辺を90度ひねった。一連の動作を1回とし、これを複数回繰り返した。少なくとも一つの端子電極が可撓性基板から外れた固体電池や割れやひび、欠けが生じた固体電池を不良とし、不良か否かを目視で判断した。
【0073】
(試験結果)
実施例1及び比較例1に対し、ねじれに対する耐久試験を行った。表1には実施例1及び比較例1のねじり回数に対する不良の発生数を示す。
【表1】
【0074】
表1より、実施例1の蓄電装置の方が比較例1に比べてねじれに対する耐久性が高いことがわかる。これは、ねじれによって生じる端子電極と可撓性基板間の負荷が本実施形態の配置を取ることによって従来の配置に比べ軽減されたためだと考えられる。