【解決手段】本発明の全固体二次電池は、第一電極層と第二電極層との間に第一のイオン導電性固体電解質層を有する第一積層体と、第三電極層と第四電極層との間に第二のイオン導電性固体電解質層を有する第二積層体と、を有し、第一電極層の第一集電体層と第三電極層の第三集電体層とが同一階層において接続され、第二電極層の第二集電体層が第一積層体の端面から露出し、第四電極層の第四集電体層が第二積層体の端面から露出し、第二集電体層が露出した第一積層体の端面には第一端子電極を有し、第四集電体層が露出した第二積層体の端面には第二端子電極を有していることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス技術の発達はめざましく、携帯電子機器の小型軽量化、薄型化、多機能化が図られている。それに伴い、電子機器の電源となる電池に対し、小型軽量化、薄型化、信頼性の向上が強く望まれており、電解質が固体電解質から成る全固体二次電池が注目されている。
【0003】
一般に、全固体二次電池は、薄膜型とバルク型の2種類に分類される。薄膜型は、PVD法やゾルゲル法などの薄膜技術により、またバルク型は活物質や粒界抵抗の低い硫化物系固体電解質の粉末成型により作製される。しかしながら、薄膜型は活物質層を厚くすることや高積層化することが困難であるため容量が小さく、また製造コストが高いという問題がある。一方、バルク型には硫化物系固体電解質が用いられているため、露点の管理されたグローブボックス内で電池を作製する必要がある。また、シート化するのが困難なため固体電解質層の薄層化や電池の高積層化が課題となっている。
【0004】
このような問題を鑑みて、特許文献1において、空気中で安定な酸化物系固体電解質を用い、各部材をシート化し、積層した後、同時に焼成するという、工業的に採用し得る量産可能な製造方法により作製される全固体電池が提唱されている。しかし、並列に接続された構造体であり、積層数により容量は任意に制御可能であるものの、電圧は制御できない。
【0005】
一方、特許文献2では、セル単位が複数個、直列接合された直列ブロックを、さらに並列接合された全固体二次電池が提唱されており、直列ブロックのセル単位数を変動させることで電圧を調整可能であり、また、並列接合する直列ブロック数を変動させることで容量も調節可能である。しかしながら、同一方向に直列接続も並列接続も行うため薄型化することが困難であるという課題があった。
【0006】
なお、一般に電池電圧を変化させる方法として、外部電子回路による電圧変換も良く使用されているが、外部電子回路の電圧変換効率は、外部電子回路で費やされる電力等があるために電力ロスを生じる。したがって、外部電子回路による電圧変換を行うよりは、全固体二次電池の設計において、電圧、蓄電容量を自由にコントロールできる方が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたもので、全固体二次電池の電圧と容量を任意に制御できる構造体ならびにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明にかかる全固体二次電池は、第一電極層と第二電極層との間に第一のイオン導電性固体電解質層を有する第一積層体と、第三電極層と第四電極層との間に第二のイオン導電性固体電解質層を有する第二積層体と、を有し、第一電極層の第一集電体層と第三電極層の第三集電体層とが同一階層において接続され、第二電極層の第二集電体層が第一積層体の端面から露出し、第四電極層の第四集電体層が第二積層体の端面から露出し、第二集電体層が露出した第一積層体の端面には第一端子電極を有し、第四集電体層が露出した第二積層体の端面には第二端子電極を有していることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る全固体二次電池によれば、一つの全固体二次電池内に直列接続と並列接続が存在するため、容量と電圧を任意に制御することができる。また、異なる方向に直列接続と並列接続が行われるため全固体二次電池を薄型化することができる。
【0011】
上記発明においては、第一積層体及び第二積層体は、第一のイオン導電性固体電解質層及び第二のイオン導電性固体電解質層が接することにより隣接していることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、接続部が外部に露出することがないため、全固体二次電池の信頼性を向上することができる。
【0013】
上記発明においては、第一集電体層と第三集電体層とが同一部材にて一体に形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、第一集電体層と第三集電体層とが同一部材で形成されているため、全固体二次電池をさらに低抵抗化することができる。
【0015】
上記発明においては、第一電極層の第一活物質層と第三電極層の第三活物質層とが、絶縁層または金属層を介して対向配置されていることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、第一活物質層と第三活物質層とが絶縁層または金属層を介して対向配置されているため、イオンの移動によるリークを抑制することができる。
【0017】
上記発明においては、正極活物質層及び正極集電体層を有する正極層と、負極活物質層と負極集電体層とを有する負極層と、正極層及び負極層との間に介在するイオン導電性固体電解質層と、を含む積層体を複数有し、複数の積層体のそれぞれは側面において互いに接続され、複数の積層体のうち少なくとも一つの積層体は、当該積層体の正極集電体層が、当該積層体の一の側面において接続される積層体の負極集電体層と同一階層となるように接続され、かつ、当該積層体の負極集電体層が、当該積層体の他の側面において接続される積層体の正極集電体層と同一階層となるように接続されることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、一つの全固体二次電池内に直列接続と並列接続が存在するため、容量と電圧を任意に制御することができる。また、異なる方向に直列接続と並列接続が行われるため全固体二次電池を薄型化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、全固体二次電池の電圧と容量を任意に制御できる構造体ならびにその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
【0022】
<第一実施形態>
(全固体二次電池の構造)
図1は、第一実施形態に係る全固体二次電池101の概念的構造を示す断面図である。本実施形態の全固体二次電池101は、第一電極層1と第二電極層2とが第一のイオン導電性固体電解質層3とを介して積層した第一積層体21と、第三電極層4と第四電極層5とが第二のイオン導電性固体電解質層6とを介して積層した第二積層体22とを有する。
【0023】
第一電極層1は第一活物質層11と第一集電体層12からなり、第二電極層は第二活物質層13と第二集電体層14からなり、第三電極層は第三活物質層15と第三集電体層16からなり、第四電極層は第四活物質層17と第四集電体層18からなる。
【0024】
そして、第一電極層1の第一集電体層12と第三電極層4の第三集電体層16とが同一階層において接続され、第二電極層2の第二集電体層14が第一積層体21の端面から露出し、第四電極層5の第四集電体層18が第二積層体22の端面から露出し、第二集電体層14が露出した第一積層体21の端面には第一端子電極31を有し、第四集電体層18が露出した第二積層体22の端面には第二端子電極32を有している。
【0025】
以上のように、本発明の全固体二次電池101は、一つの全固体二次電池101内において、並列接続された第一積層体21と並列接続された第二積層体22とが、直列接続されているため、第一積層体21及び第二積層体22の並列接続の数と第一積層体21と第二積層体22による直列接続の数を調整することにより、全固体二次電池101の容量と電圧を任意に制御することができる。
【0026】
また、積層体の積層方向に並列接続、面内方向に直列接続しており、異なる方向に直列接続と並列接続が行われているため全固体二次電池101を薄型化することができる。
【0027】
尚、
図1に示す、第一積層体21と第二積層体22は、全固体二次電池101を分けて捉えた場合の表現であり、全固体二次電池101は第一積層体21と第二積層体22がくっついたものではない。
【0028】
(イオン導電性固体電解質)
本実施形態の全固体二次電池101の第一のイオン導電性固体電解質層3及び第二のイオン導電性固体電解質層6を構成するイオン導電性固体電解質としては、電子の導電性が小さく、イオンの導電性が高い材料を用いるのが好ましい。イオンの種類は限定されず、既知のリチウムイオン導電性固体電解質、ナトリウムイオン導電性固体電解質やマグネシウムイオン導電性固体電解質を用いることができる。例えば、La
0.5Li
0.5TiO
3などのペロブスカイト型化合物や、Li
14Zn(GeO
4)
4などのリシコン型化合物、Li
7La
3Zr
2O
12などのガーネット型化合物、Li
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO
4)
3やLi
1.5Al
0.5Ge
1.5(PO
4)
3などのナシコン型化合物、Li
3.25Ge
0.25P
0.75S
4やLi
3PS
4などのチオリシコン型化合物、75Na
2S・25P
2S
5、Li
2S−P
2S
5やLi
2O−V
2O
5−SiO
2などのガラス化合物、Li
3PO
4やLi
3.5Si
0.5P
0.5O
4やLi
2.9PO
3.3N
0.46やMgZr
4(PO
4)
6などのリン酸化合物、よりなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
【0029】
(正極活物質及び負極活物質)
本実施形態の全固体二次電池101の第一活物質層11、第二活物質層13、第三活物質層15、及び第四活物質層17を構成する正極活物質又は負極活物質としては、イオンを効率よく挿入、脱離できる材料を用いるのが好ましい。イオンの種類は限定されず、既知のリチウムイオンインターカレーション材料、ナトリウムイオンインターカレーション材料やマグネシウムイオンインターカレーション材料を用いることができる。
【0030】
例えば、遷移金属酸化物、遷移金属複合酸化物を用いるのが好ましい。具体的には、リチウムマンガン複合酸化物Li
2Mn
x3Ma
1−x3O
3(0.8≦x3≦1、Ma=Co、Ni)、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn
2O
4)、及び、一般式:LiNi
x4Co
y4Mn
z4O
2(x4+y4+z4=1、0≦x4≦1、0≦y4≦1、0≦z4≦1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV
2O
5)、オリビン型LiMbPO
4(ただし、Mbは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素)、リン酸バナジウムリチウム(Li
3V
2(PO
4)
3又はLiVOPO
4)、Li過剰系固溶体正極Li
2MnO
3−LiMcO
2(Mc=Mn、Co、Ni)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、Li
aNi
x5Co
y5Al
z5O
2(0.9<a<1.3、0.9<x5+y5+z5<1.1)、NaFeO
2、NaCrO
2、NaNi
1/2Co
1/2O
2、Na(Fe
0.4Ni
0.3Mn
0.3)O
2、NaFe
1/2Co
1/2O
2、Na
2/3(Fe
1/2Mn
1/2)O
2、MgMo
3S
4で表される複合金属酸化物のいずれかであることが好ましい。
【0031】
第一活物質層11、第二活物質層13、第三活物質層15、及び第四活物質層17を構成する活物質には明確な区別がなく、第一活物質層11と第四活物質層17の活物質が同一であり、第二活物質層13と第三活物質層15の活物質が同一であれば、2種類の化合物の電位を比較して、より貴な電位を示す化合物を正極活物質として用い、より卑な電位を示す化合物を負極活物質として用いることができる。また、イオン放出能とイオン吸蔵能を同時に併せ持つ化合物であれば、第一活物質層11、第二活物質層13、第三活物質層15、及び第四活物質層17に同一の化合物を用いてもよい。
【0032】
(正極集電体及び負極集電体)
本実施形態の全固体二次電池101の第一集電体層12、第二集電体層14、第三集電体層16、及び第四集電体層18を構成する正極集電体及び負極集電体としては、導電率が大きい材料を用いるのが好ましく、例えば、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅、ニッケルなどを用いるのが好ましい。また、第一集電体層12、第二集電体層14、第三集電体層16、及び第四集電体層を構成する正極集電体及び負極集電体は、正極と負極で同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
また、本実施形態における全固体二次電池101の第一集電体層12、第二集電体層14、第三集電体層16、及び第四集電体層18は、隣接する第一活物質層11、第二活物質層13、第三活物質層15、及び第四活物質層17との密着性を向上させるために、第一活物質層11、第二活物質層13、第三活物質層15、及び第四活物質層17に含まれる正極活物質又は負極活物質を含むことが好ましい。
【0034】
さらに、本実施形態における全固体二次電池101の第一集電体層12、第二集電体層14、第三集電体層16、及び第四集電体層18における正極活物質又は負極活物質の比率は、集電体として機能する限り特に限定はされない。
【0035】
(端子電極)
本実施形態の全固体二次電池101の端子電極31としては、導電率が大きい材料を用いるのが好ましく、例えば、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅、ニッケル、スズなどを用いるのが好ましい。
【0036】
(保護層)
本実施形態の全固体二次電池101の保護層は、既知の絶縁性と耐湿性に優れる材料を用いることができる。例えば、樹脂や無機のガラスを用いることが好ましく、イオン導電性固体電解質の絶縁性や耐湿性が十分に高い場合においては、製造効率の点からイオン伝導性固体電解質と同一の材料を用いてもよい。
【0037】
(全固体二次電池の製造方法)
本実施形態の全固体二次電池101は、膜を形成するための種々の製造方法が使用可能である。例えば、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法などに代表される薄膜製造技術やドクターブレード法、スクリーン印刷法などの厚膜製造技術により製造できる。
【0038】
また、本実施形態の全固体二次電池101は、第一のイオン導電性固体電解質層3、第二のイオン導電性固体電解質層6、第一活物質層11、第一集電体層12、第二活物質層13、第二集電体層14、第三活物質層15、第三集電体層16、第四活物質層17、第四集電体層18、端子電極41、及び保護層の各材料をペースト化し、塗布乾燥してグリーンシートを作製し、係るグリーンシートを積層し、作製した積層体を同時に焼成することにより製造することもできる。
【0039】
ペースト化の方法は、特に限定されないが、例えば、ビヒクルに上記各材料の粉末を混合してペーストを得ることができる。ここで、ビヒクルとは、液相における媒質の総称である。ビヒクルには、溶媒、バインダーが含まれる。係る方法により、第一のイオン導電性固体電解質層3、第二のイオン導電性固体電解質層6、第一活物質層11、第一集電体層12、第二活物質層13、第二集電体層14、第三活物質層15、第三集電体層16、第四活物質層17、第四集電体層18、端子電極31、及び保護層のペーストを作製する。
【0040】
作製したペーストをPETなどの基材上に所望の順序で塗布し、必要に応じ乾燥させた後、基材を剥離し、グリーンシートを作製する。ペーストの塗布方法は、特に限定されず、スクリーン印刷、塗布、転写、ドクターブレード等の公知の方法を採用することができる。
【0041】
作製した第一のイオン導電性固体電解質層3、第二のイオン導電性固体電解質層6、第一活物質層11、第一集電体層12、第二活物質層13、第二集電体層14、第三活物質層15、第三集電体層16、第四活物質層17、第四集電体層18、端子電極31、及び保護層のそれぞれのグリーンシートを所望の順序、積層数で積み重ね、必要に応じアライメント、切断等を行い、積層体を作製する。
【0042】
作製した積層体を一括して圧着する。圧着は加熱しながら行うが、加熱温度は、例えば、40〜90℃とする。
【0043】
圧着した積層体を、例えば、大気雰囲気下で加熱し熱処理を行う。熱処理条件は、用いる材料により適宜選択する。
【0044】
以下、
図1に示す全固体二次電池101の作製方法の一例について説明する。第一のイオン導電性固体電解質層3、第二のイオン導電性固体電解質層6、第一活物質層11、第一集電体層12、第二活物質層13、第二集電体層14、第三活物質層15、第三集電体層16、第四活物質層17、第四集電体層18、及び端子電極31のペーストを作製する。
【0045】
(第一、第三電極層ユニットの作製)
図3のように第一イオン導電性固体電解質層3のペースト、第二イオン導電性固体電解質層6のペーストを、この順にスクリーン印刷しては90℃で10分間乾燥することを繰り返す。
【0046】
次に、
図4のように第一活物質層11のペースト、第三活物質層15のペースト、第一イオン導電性固体電解質層3のペースト、及び第二イオン導電性固体電解質層6のペーストを、この順にスクリーン印刷しては90℃で10分間乾燥することを繰り返す。
【0047】
次に、
図5のように第一集電体層12のペースト、第三集電体層16のペーストを、この順にスクリーン印刷しては90℃で10分間乾燥することを繰り返す。
【0048】
次に、
図6のように第一活物質層3のペースト、第三活物質層15のペースト、第一イオン導電性固体電解質層3のペースト、及び第二イオン導電性固体電解質層6のペーストを、この順にスクリーン印刷しては90℃で10分間乾燥することを繰り返す。
【0049】
次に、
図7のように第一イオン導電性固体電解質層3のペースト、第二イオン導電性固体電解質層6のペーストを、この順にスクリーン印刷しては90℃で10分間乾燥することを繰り返す。このようにして、第一、第三電極層ユニット51を得る。
【0050】
(第二、第四電極層ユニットの作製)
基材として用いたPETフィルム上に、
図8のように第一イオン導電性固体電解質層3のペースト、第二イオン導電性固体電解質層6のペーストを、この順にスクリーン印刷しては90℃で10分間乾燥することを繰り返す。
【0051】
次に、
図9のように第二活物質層13のペースト、第四活物質層17のペースト、第一イオン導電性固体電解質層3のペースト、及び第二イオン導電性固体電解質層6のペーストを、この順にスクリーン印刷しては90℃で10分間乾燥することを繰り返す。
【0052】
次に、
図10のように第二集電体層14のペースト、第四集電体層18のペースト、第一イオン導電性固体電解質層3のペースト、及び第二イオン導電性固体電解質層6のペーストを、この順にスクリーン印刷しては90℃で10分間乾燥することを繰り返す。
【0053】
次に、
図11のように第二活物質層13のペースト、第四活物質層17のペースト、第一イオン導電性固体電解質層3のペースト、及び第二イオン導電性固体電解質層6のペーストを、この順にスクリーン印刷しては90℃で10分間乾燥することを繰り返す。このようにして、第二、第四電極層ユニット52を得る。
【0054】
第一、第三電極層ユニット51と第二、第四電極層ユニット52を交互に積み重ね、この積み重ねられたシートを温度80℃で圧力1000kgf/cm
2〔98MPa〕で成形する。その後、熱処理することにより、
図2に示す3並列、2直列の接続を含む電池素体102が得られる。
【0055】
電池素体102の端面に端子電極31のペーストを塗布し、150℃、30分の熱硬化を行い、一対の端子電極を形成し、全固体二次電池101が得られる。
【0056】
以下、他の実施形態について説明する。
【0057】
<第二実施形態>
図12は、第二実施形態に係る全固体二次電池103の概念的構造を示す断面図である。第一実施形態とは第一積層体25の第一電極層7と第二積層体26の第三電極層9及び第四電極層8が異なる。第二実施形態では、第一集電体層19、第二集電体層14、第三集電体層19、及び第四集電体層20が同一部材であり、第一集電体層19と第三集電体層19とが同一部材にて一体に形成されている。このように第一集電体層19と第三集電体層19とが同一部材にて一体に形成されていると、第一集電体層19と第三集電体層19との間の接触抵抗を小さくすることができ、結果として全固体二次電池をさらに低抵抗化することができるためより好ましい。
【0058】
<第三実施形態>
図13は、第三実施形態に係る全固体二次電池104の概念的構造を示す断面図である。第二実施形態とは第一電極層7の第一活物質層11と第三電極層9の第三活物質層15とが、絶縁層又は金属層33を介して対向配置されていることのみ異なる。このように第一活物質層11と第三活物質層15との間にイオン導電性のない絶縁層又は金属層33を介して対向配置することにより、第一活物質層11と第三活物質層15との間のイオンの移動によるリークを抑制することができるため好ましい。
【0059】
<第四実施形態>
図14は、第四実施形態に係る全固体二次電池105の概念的構造を示す断面図である。正極活物質層71及び正極集電体層72を有する正極層61と、負極活物質層73と負極集電体層74とを有する負極層62と、正極層61及び負極層62との間に介在するイオン導電性固体電解質層63と、を含む3つの積層体67、68及び69を有している。
【0060】
積層体67の負極集電体層74は、第一端子電極79に接続され、積層体69の正極集電体層75は、第二端子電極80に接続されている。
【0061】
そして、複数の積層体67、68及び69のそれぞれは側面において互いに接続され、複数の積層体67、68及び69のうち一つの積層体68は、当該積層体68の正極集電体層72が、当該積層体68の一の側面において接続される積層体67の負極集電体層74と同一階層となるように接続され、かつ、当該積層体68の負極集電体層75が、当該積層体68の他の側面において接続される積層体69の正極集電体層72と同一階層となるように接続されている。
【0062】
以上のように、本発明の全固体二次電池105は、一つの全固体二次電池105内に、3つの並列接続された積層体が、さらに3つの直列接続されることで全固体二次電池105を形成している。積層体内の正極層61、負極層62、及びイオン導電性固体電解質層63の積層数と積層体の数を調整することにより、全固体二次電池105の容量と電圧を任意に制御することができる。
【0063】
また、積層体の積層方向に並列接続、面内方向に直列接続しており、異なる方向に直列接続と並列接続が行われているため全固体二次電池105を薄型化することができる。
【0064】
<第五実施形態>
第五実施形態に係る全固体二次電池は、
固体電解質層を有する電池素体と、前記電池素体に設けられた第1端子電極及び第2端子電極と、前記電池素体に設けられ、第1集電体を介して前記第1端子電極に接続された第1電極層と、前記電池素体に設けられ、第2集電体を介して前記第2端子電極に接続された第2電極層と、前記第1端子電極および前記第2端子電極に直接接続されないように、前記電池素体に設けられた少なくとも1つ以上の中間電極層とを備え、
前記中間電極層の一端は、前記固体電解質層を介して、前記第1電極層又は他の前記中間電極層に対向し、
前記中間電極層の他端は、前記固体電解質層を介して、前記第2電極層又は前記一端が対向している電極層とは異なる他の前記中間電極層に対向している
ことを特徴とする全固体二次電池である。
【0066】
図15は、全固体二次電池107の概念的構造を示す断面図である。全固体二次電池107は、電池素体106と、電池素体106に設けられた第1端子電極91及び第2端子電極92を備える。
電池素体106は、第1電極層95,123及び第2電極層98,126及び中間電極層111,112,113,114を備える。これらの電極層は、固体電解質層90を介して対向している。
【0067】
第1端子電極91は、第1電極層95,123と第1集電体93,94を介して接続している。また、第2端子電極98,126は第2集電体96,124を介して第2電極層98,126と接続している。ここで、第1電極層95及び123は第1集電体93及び121上に活物質層94,122を有している。
【0068】
中間電極層111,112,113,114は、第1端子電極91及び第2端子電極92と接続していない。
【0069】
ここで、中間電極層111の一端129は、第1電極層95,123と固体電解質90を介して対向している。中間電極層111の他端135は、固体電解質90を介して他の中間電極層112,113と対向している。ここで他端135は、中間電極層112,113の電極層138,147と固体電解質90を介して対向している。
中間電極層111の一端129及び他端135は、中間電極層111の端部ではあるが、それぞれ集電体127,133及び活物質層128,134を有する電極層と捉えることもできる。
【0070】
そして、中間電極層112の一端141は、第2電極層98と固体電解質90を介して対向している。中間電極層112の他端138は、固体電解質90を介して中間電極層111と対向している。ここで、他端138は、中間電極層111の電極層135と対向している。
【0071】
同様に中間電極層114の一端132は、第1電極層123と固体電解質90を介して対向している。中間電極層114の他端144は、固体電解質90を介して他の中間電極層113と対向している。ここで他端144は、中間電極層113の電極層147と固体電解質90を介して対向している。
【0072】
そして、中間電極層113の一端150は、第2電極層98,126と固体電解質90を介して対向している。中間電極層113の他端147は、固体電解質90を介して中間電極層111,114と対向している。ここで、他端147は、中間電極層111の電極層135と対向している。さらに他端147は、中間電極層114の電極層144と対向している。
【0073】
以上のように、本発明の全固体二次電池107は、中間電極層111、112、113及び114により並列接続及び直列接続される。したがって、第1端子電極91に接続される第1電極層95及び第3電極層123の数、第2端子電極92に接続される第2電極層98及び第4電極層126の数、さらに中間電極層111、112、113及び114の数を調整することにより、全固体二次電池107の容量と電圧を任意に制御することができる。
【0074】
また、積層体の積層方向に並列接続、面内方向に直列接続しており、異なる方向に直列接続と並列接続が行われているため全固体二次電池107を薄型化することができる。
【0075】
尚、中間電極層111、112、113及び114の一端又は他端とは、積層体の面内方向における端部である。本実施形態では電極層として説明したが、
図15の中間電極層111、112、113及び114のように、ある程度の長さをもったもの、言い換えれば、一方の面又は他方の面とも表現できるものである。
【0076】
図1、
図12、
図13、
図14及び
図15では、保護層を設けていないが、全固体二次電池101、103、104、105及び107と外部との不用意な電気短絡を抑えると共に、外部環境湿分等からの影響を抑制するために保護層を設けた方が好ましい。