【課題】防水層と全固体リチウムイオン二次電池の素体材料との反応を抑制し、かつ、水蒸気による影響を抑制した、プリント基板への表面実装が可能な全固体リチウムイオン二次電池の提供。
【解決手段】正極層1及び負極層2の間に電解質層3を有する電池素体と、前記電池素体の端部に電極7とを有する全固体リチウムイオン二次電池10であって、前記電池素体は、厚さが5〜1000nmの無機材料からなる水蒸気防止層8で被覆され、更に水蒸気防止層8は、無機フィラーを含む樹脂によって構成された防水層9で被覆されている全固体リチウムイオン二次電池10。
【背景技術】
【0002】
近年、電解質をセラミックスから構成する全固体型リチウムイオン二次電池は、本質的に不燃であることから注目されている。このような全固体リチウムイオン二次電池は、その活物質材料は例えば、LiCoO
2、LiMn
2O
4、LiFePO
4、LiNiO
2等であり、固体電解質もLi
3.5Si
0.6P
0.4O
4、Li
2S・P
2S
5等で水分と反応しやすい。このため、空気中の水分と反応して劣化が起こり、ショートしたり電池として機能しなくなる不安があった。
【0003】
特許文献1では、全固体リチウム二次電池を樹脂で覆う、または表面に撥水処理を施す、あるいは表面にガラス層を形成して、全固体リチウム二次電池が水分と接触することを防止している。これにより、例えば、集電体金属などと水分が反応することにより生じる内部短絡等を防ぐことを可能としている。しかしながら、樹脂による被覆や撥水処理は、水分をはじく効果は得られるものの水蒸気の透過を完全に防ぐことはできない。ガラス層による被覆であれば透湿を防止する効果はあるが、熱処理を伴うため、溶融状態のガラスと全固体リチウム二次電池の材料が反応して電池としての特性が劣化する恐れがあった。
【0004】
特許文献2では、電子部品を実装した基板上に、有機樹脂を上下2層構造で設けることにより防湿性を持たせているが、下層は電子部品の交換作業であるリペア作業の際に有機樹脂を剥離しやすくするためのものであり、また、基板から放出される水分に対する防湿ついては記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水蒸気による影響を抑制した、プリント基板への表面実装が可能な全固体リチウムイオン二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、正極層及び負極層の間に電解質層を有する電池素体と、前記電池素体の端部に電極とを有する全固体リチウムイオン二次電池であって、
前記電池素体は、厚さが5〜1000nmの無機材料からなる水蒸気防止層で被覆されていることを特徴とする。
【0008】
これによれば、水蒸気防止層を有するため、水蒸気による影響を抑制することができる。さらに、水蒸気防止層が5〜1000nmと薄層であるため、高温での処理を行う必要が無く、電池素体と水蒸気防止層の反応を抑制することができる。
【0009】
上記目的を達成するため、正極層及び負極層の間に電解質層を有する電池素体と、電池素体の端部に電極とを有する全固体リチウムイオン二次電池であって、
電池素体は、厚さが5〜1000nmの無機材料からなる水蒸気防止層で被覆され、さらに水蒸気防止層は防水層で被覆されていることを特徴とする。
【0010】
これによれば、防水層を有するため、水分による影響を抑制でき、水蒸気防止層を有するため、水蒸気による影響を抑制することができる。さらに、水蒸気防止層が5〜1000nmの無機材料からなるため、高温での処理を行う必要が無く、電池素体と水蒸気防止層及び電池素体と防水層の反応を抑制することができる。
【0011】
上記防水層は樹脂であることが好ましい。これにより低温で作製でき、電池素体との反応をより効果的に抑制することができる。
【0012】
上記目的を達成するため、上記防水層を構成する樹脂に無機フィラーを含んでも良い。これにより一層の防水効果を発揮する。
【0013】
上記目的を達成するため、電池素体の電極は、水蒸気防止層及び防水層で被覆されていないことが好ましい。これにより、電極が露出しているので、防水、水蒸気防止効果を有する全固体リチウムイオン二次電池をプリント基板へ実装することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水蒸気による影響を抑制した、プリント基板への表面実装が可能な全固体リチウムイオン二次電池を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
【0017】
<全固体リチウムイオン二次電池>
第1の実施形態の全固体リチウムイオン二次電池は、正極層と負極層の間に固体電解質層を有する焼結体からなる全固体リチウムイオン二次電池において、正極層、負極層、固体電解質層、電極、水蒸気防止層を有する。
【0018】
(全固体リチウムイオン二次電池の構造)
図1は、本実施形態の一例に係る全固体リチウムイオン二次電池10の概念的構造を示す断面図である。
図1に示す全固体リチウムイオン二次電池10は、正極層1と負極層2の間に固体電解質層3を有しており、正極層1は正極活物質4と集電体層5を有し、また負極層2は負極活物質6と集電体層5を有す。さらに正極層1、負極層2と接続する電極7、水蒸気防止層8から構成される。
【0019】
(正極活物質及び負極活物質)
本実施形態の全固体リチウムイオン二次電池10の正極層1及び負極層2を構成する正極活物質4及び負極活物質6としては、リチウムイオンを効率よく放出、吸着する材料を用いるのが好ましい。例えば、遷移金属酸化物、遷移金属複合酸化物を用いるのが好ましい。具体的には、リチウムマンガン複合酸化物Li
2Mn
x3Ma
1−x3O
3(0.8≦x3≦1、Ma=Co、Ni)、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn
2O
4)、及び、一般式:LiNi
x4Co
y4Mn
z4O
2(x4+y4+z4=1、0≦x4≦1、0≦y4≦1、0≦z4≦1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV
2O
5)、オリビン型LiMbPO
4(ただし、Mbは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素)、リン酸バナジウムリチウム(Li
3V
2(PO
4)
3又はLiVOPO
4)、Li過剰系固溶体正極Li
2MnO
3−LiMcO
2(Mc=Mn、Co、Ni)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、Li
aNi
x5Co
y5Al
z5O
2(0.9<a<1.3、0.9<x5+y5+z5<1.1)で表される複合金属酸化物のいずれかであることが好ましい。
【0020】
ここで、正極層1又は負極層2を構成する活物質には明確な区別がなく、2種類の化合物の電位を比較して、より貴な電位を示す化合物を正極活物質4として用い、より卑な電位を示す化合物を負極活物質6として用いることができる。
【0021】
(水蒸気防止層)
本実施形態の水蒸気防止層8は、外部からの水蒸気が電池素体と接触して反応することを防止するために設けられ、用いられる無機材料として、例えばマグネシウム、アルミニウム、シリコン、ストロンチウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、亜鉛、錫、ジルコニウム、バリウム、ハフニウム、またはタンタルの酸化膜あるいは窒化膜が好ましく用いられ、必要に応じてこれらの無機材料を2種以上併用して用いてもよい。水蒸気防止層8は、厚みを5〜1000nmとすることにより、高温での処理を行う必要がなくなるので、電池素体と水蒸気防止層の反応を抑制することができる。
【0022】
図2は、第2の実施形態の一例に係る全固体リチウムイオン二次電池20の概念的構造を示す断面図である。
図2に示す全固体リチウムイオン二次電池20は、正極層1と負極層2の間に固体電解質層3を有しており、正極層1は正極活物質4と集電体層5を有し、また負極層2は負極活物質6と集電体層5を有す。さらに正極層、負極層と接続する電極7、水蒸気防止層8、防水層9から構成される。
【0023】
(正極活物質及び負極活物質)
本実施形態の全固体リチウムイオン二次電池20の正極層1及び負極層2を構成する正極活物質4及び負極活物質6としては、第一の実施形態と同様の材料を用いることができる。
【0024】
ここで、正極層1又は負極層2を構成する活物質には明確な区別がなく、2種類の化合物の電位を比較して、より貴な電位を示す化合物を正極活物質4として用い、より卑な電位を示す化合物を負極活物質6として用いることができる。
【0025】
(水蒸気防止層)
本実施形態の水蒸気防止層8は、防水層9を透過してくる外部からの水蒸気が電池素体と接触して反応することを防止するために設けられ、用いられる無機材料として、例えばマグネシウム、アルミニウム、シリコン、ストロンチウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、亜鉛、錫、ジルコニウム、バリウム、ハフニウム、またはタンタルの酸化膜あるいは窒化膜が好ましく用いられ、必要に応じてこれらの無機材料を2種以上併用して用いてもよい。水蒸気防止層8は、厚みを5〜1000nmとすることにより、高温での処理を行う必要がなくなるので、電池素体と水蒸気防止層及び電池素体と防水層の反応を抑制することができる。
【0026】
(防水層)
図2に示すように、防水層9は全固体リチウムイオン二次電池20の最外層に設けられるもので、全固体リチウムイオン二次電池20を外部の水分から保護するものであり、防水機能を備えた有機樹脂を水蒸気防止層8に被覆して防水層9を設ける。防水層9を設ける方法は特に限定されないが、例えばディッピング法による保護膜形成方法で、全固体リチウムイオン二次電池20を防水層9で被覆することができる。防水層9は有機樹脂で形成することで、電池素体との反応をより効果的に抑制することができる。有機樹脂の種類は特に限定されないが、耐腐食性を有するものが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロチレン等のフッ素樹脂等が使用出来る。
【0027】
防水層9の樹脂が無機フィラーを含むと一層防水効果を高めることができる。このような無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイカ、ゼオライト、活性炭が用いられる。平均粒径は1〜50μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。樹脂に対して1〜30重量%の配合比が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
【0028】
(全固体リチウムイオン二次電池の製造方法)
本実施形態の全固体リチウムイオン二次電池10及び20は、正極層1、固体電解質層3、及び、負極層2の各材料をペースト化し、塗布乾燥してグリーンシートを作製し、係るグリーンシートを積層し、作製した積層体を同時焼成することにより製造する。
【0029】
ペースト化の方法は、特に限定されないが、例えば、ビヒクルに上記各材料の粉末を混合してペーストを得ることができる。ここで、ビヒクルとは、液相における媒質の総称である。ビヒクルには、溶媒、バインダーが含まれる。係る方法により、正極層1用のペースト、固体電解質層3用のペースト、負極層2用のペーストを作製する。
【0030】
作製したペーストをPETなどの基材上に所望の順序で塗布し、必要に応じ乾燥させた後、基材を剥離し、グリーンシートを作製する。ペーストの塗布方法は、特に限定されず、スクリーン印刷、塗布、転写、ドクターブレード等の公知の方法を採用することができる。
【0031】
作製した正極層1用、固体電解質層3用、負極層2用のそれぞれのグリーンシートを所望の順序、積層数で積み重ね、必要に応じアライメント、切断等を行い、積層体を作製する。並列型又は直並列型の電池を作製する場合は、正極層1の端面と負極層2の端面が一致しないようにアライメントを行い積み重ねるのが好ましい。
【0032】
作製した積層体を一括して圧着する。圧着は加熱しながら行うが、加熱温度は、例えば、40〜90℃とする。
【0033】
圧着した積層体を、例えば、大気雰囲気下で加熱し焼成を行う。本実施形態の全固体リチウムイオン二次電池10の製造では、焼成温度は、600〜1200℃の範囲とするのが好ましい。600℃未満では、焼成が十分進まず、1200℃を超えると、固体電解質7が融解する、正極活物質4、負極活物質6の構造が変化するなどの問題が発生するためである。更に700〜1100℃の範囲とするのがより好ましい。700〜1100℃の範囲とするほうが、焼成の促進、製造コストの低減により好適である。焼成時間は、例えば、1〜3時間とする。
【0034】
(水蒸気防止層の作製)
本発明に係る水蒸気防止層8は、外部からの水蒸気が電池素体と接触して反応することを防止するために設けられる。用いられる無機材料として、例えばマグネシウム、アルミニウム、シリコン、ストロンチウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、亜鉛、錫、ジルコニウム、バリウム、ハフニウム、またはタンタルの酸化膜あるいは窒化膜が好ましく用いられ、CVD法、スパッタリング法、蒸着法等を用いて作製することができる。
【0035】
(防水層の作製)
防水層9は全固体リチウムイオン二次電池20の最外層に設けられ、全固体リチウムイオン二次電池20を外部の水分から保護するものであり、防水機能を備えた有機樹脂を水蒸気防止層8に被覆して防水層9を設ける。防水層9は、ディッピング法、スプレー法、塗布法、印刷法等の方法で作製することができる。また、より一層の防水効果を得るため、有機樹脂に対して例えば5重量%の無機フィラーを添加した樹脂を用いて上記の方法で防水層を作製してもよい。
【0036】
(電極の作製)
電極7は、全固体リチウムイオン二次電池11からの電気を外部に取り出すためのものであり正極層、負極層と導通しており、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の公知の金属種が好ましい。電極の作製方法は、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法、ペースト等の既存の方法を用いることができる。
【0037】
(表面実装)
図3及び
図4は、本発明の全固体リチウムイオン二次電池10及び20をプリント基板13に接合した断面図である。電極部7が設けられた全固体リチウムイオン二次電池10及び20は、プリント基板13に表面実装して接続する。表面実装とは、プリント基板13上に接続したい部品を載せて、部品実装面の表面の接合材11で部品を固定し接続することである。全固体リチウムイオン二次電池10及び20のプリント基板13への実装は、あらかじめ水蒸気防止層8あるいは防水層9で被覆された全固体リチウムイオン二次電池10及び20を、プリント基板13の基板端子12の上に接合材11を塗布した位置に、電極部7の位置を合わせて配置する。接合材11は、電気配線用のはんだを使用することが好ましい。その後、接合部を外部熱源で局部的に加熱することで、接合材11により電極7と基板13が接合され、電池実装基板30及び40が得られる。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、部表示は、断りのない限り、重量部である。
【0039】
(活物質の作製)
活物質として、以下の方法で作製したLi
2MnO
3を用いた。Li
2CO
3とMnCO
3とを出発材料とし、これらをモル比2:1となるように秤量し、水を溶媒としてボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥した。得られた粉体を800℃で2時間、空気中で仮焼した。仮焼品を粗粉砕し、水を溶媒としてボールミルで16時間湿式粉砕を行った後、脱水乾燥して活物質粉末を得た。この粉体の平均粒径は0.40μmであった。作製した粉体の組成がLi
2MnO
3であることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0040】
(活物質ペーストの作製)
活物質ペーストは、この活物質粉末100部に、H
3BO
3粉末及びLi
2CO
3粉末、バインダーとしてエチルセルロース15部と、溶媒としてジヒドロターピネオール65部とを加えて、三本ロールで混練・分散して活物質ペーストを作製した。
【0041】
(固体電解質シートの作製)
固体電解質として、以下の方法で作製したLi
3.5Si
0.5P
0.5O
4を用いた。Li
2CO
3とSiO
2とLi
3PO
4を出発材料として、これらをモル比2:1:1となるように秤量し、水を溶媒としてボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥した。得られた粉体を950℃で2時間、空気中で仮焼した。仮焼品を粗粉砕し、水を溶媒としてボールミルで16時間湿式粉砕を行った後、脱水乾燥して固体電解質の粉末を得た。この粉体の平均粒径は0.49μmであった。作製した粉体の組成がLi
3.5Si
0.5P
0.5O
4であることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0042】
次いで、この粉末100部に、H
3BO
3粉末及びLi
2CO
3粉末、溶媒としてエタノール100部、トルエン200部をボールミルで加えて湿式混合した。その後ポリビニールブチラール系バインダー16部とフタル酸ベンジルブチル4.8部をさらに投入し、混合して固体電解質ペーストを調製した。この固体電解質ペーストをドクターブレード法でPETフィルムを基材としてシート成形し、厚さ9μmの固体電解質シートを得た。
【0043】
(集電体ペーストの作製)
集電体として重量比70/30のAg/PdとLi
2MnO
3とを体積比率で60:40となるように混合した後、Li
2MnO
3に対してH
3BO
3粉末及びLi
2CO
3粉末、バインダーとしてエチルセルロース10部と、溶媒としてジヒドロターピネオール50部を加えて三本ロールで混練・分散して集電体ペーストを作製した。ここで重量比70/30のAg/Pdは、Ag粉末(平均粒径0.3μm)及びPd粉末(平均粒径1.0μm)を混合したものを使用した。
【0044】
(電極ペーストの作製)
銀粉末とエポキシ樹脂、溶剤とを三本ロールで混錬・分散し、熱硬化型の導電ペーストを作製した。
【0045】
これらのペーストを用いて、以下のようにして全固体リチウムイオン二次電池を作製した。
【0046】
(活物質ユニットの作製)
上記の固体電解質シート上に、スクリーン印刷により厚さ7μmで活物質ペーストを印刷した。次に、印刷した活物質ペーストを100℃で10分間乾燥し、その上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで集電体ペーストを印刷した。次に、印刷した集電体ペーストを100℃で10分間乾燥し、更にその上に、スクリーン印刷により厚さ7μmで活物質ペーストを再度印刷した。印刷した活物質ペーストを100℃で10分間乾燥し、次いでPETフィルムを剥離した。このようにして、固体電解質シート上に、活物質ペースト、集電体ペースト、活物質ペーストがこの順に印刷・乾燥された活物質ユニットのシートを得た。
【0047】
(積層体の作製)
活物質ユニット二枚を、固体電解質を介するようにして積み重ねた。このとき、一枚目の活物質ユニットの集電体ペースト層が一の端面にのみ延出し、二枚目の活物質ユニットの集電体ペースト層が他の面にのみ延出するように、各ユニットをずらして積み重ねた。この積み重ねられたユニットの両面に厚さ500μmとなるように固体電解質シートを重ね、その後、これを温度80℃で圧力1000kgf/cm
2〔98MPa〕で成形し、次いで切断して積層ブロックを作製した。その後、積層ブロックを同時焼成して積層体を得た。同時焼成は、空気中で昇温速度200℃/時間で800℃まで昇温して、その温度に2時間保持し、焼成後は自然冷却した。同時焼成後の電池外観サイズは、3.7mm×3.2mm×0.35mmであった。
【0048】
(水蒸気防止層の作製)
できあがった全固体リチウムイオン二次電池の電極を設ける2面を耐熱テープでマスクし、Siターゲットを使用した反応性RFスパッタリングを行った。バックグラウンド圧力0.3Pa、RF電力500W、アルゴン流量50sccm、酸素流量16sccm、窒素流量65sccmに設定して酸化窒化ケイ素薄膜を100nmの膜厚で成膜した。
【0049】
(電極の作製)
水蒸気防止層を作製した全固体リチウムイオン二次電池の電極面をマスクしていた耐熱テープを剥がしてから電極ペーストを塗布し、150℃、30分の熱硬化を行い、一対の電極を作製した。
【0050】
(実装)
プリント基板の、全固体リチウムイオン二次電池をはんだ付けする部分の基板パターンに、鉛フリークリームはんだを載せ、全固体リチウムイオン二次電池を搭載位置にセットしたのち、クリームはんだにはんだコテ先を当て、クリームはんだを熔かしながら電極部と基板パターンの接合を行なった。
【0051】
(実施例2)
(防水層の作製)
実施例1と同様に作製して水蒸気防止層を設けた全固体リチウムイオン二次電池に、フッ素樹脂をディッピング法にて塗布した。水平に保持した全固体リチウムイオン二次電池を、全固体リチウムイオン二次電池底面から0.5mmの高さまで、フッ素樹脂溶液に浸漬し2秒保持したのち、10mm/secの引き上げ速度で引き上げた。そのまま5分間保持したのち、恒温槽で200℃、60分間加熱処理し、樹脂を完全に硬化させた。塗膜乾燥後、塗膜を含む積層体の断面を切断し断面SEM観察したところ、塗膜膜厚は15μmであった。
【0052】
次いで、防水層を作製した全固体リチウムイオン二次電池の電極面をマスクしていた耐熱テープを剥がし、実施例1と同様に一対の電極を形成してプリント基板に実装した。
【0053】
(実施例3)
防水層のフッ素樹脂に、無機フィラーとして5重量%のシリカを含有して防水層を形成した以外は実施例2と同様にして全固体リチウムイオン二次電池を作製してプリント基板に実装した。
【0054】
(比較例1)
水蒸気防止層、防水層のいずれも設けないで全固体リチウムイオン二次電池を作製してプリント基板に実装し、比較例1とした。
【0055】
(比較例2)
電池素体に電極を作製してから、電極を含む全面を覆って水蒸気防止層、防水層を付与した全固体リチウムイオン二次電池を作製した。
【0056】
(電池特性の評価)
実施例1、2、3および比較例1の電池実装基板の電極端子から、それぞれの電池実装基板に搭載した全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗を測定した。測定は、初期、及び、60℃90%保存試験の、保存12時間後、保存24時間後、保存48時間後に行った。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1より、いずれの実施例の場合も、保存48時間後の内部抵抗値が、初期内部抵抗値とほぼ変わらなかったのに対し、水蒸気防止層、防水層の無い比較例1では内部抵抗値が大きく上昇してしまうことを確認できた。
【0059】
(実装評価)
比較例2の全固体リチウムイオン二次電池を、実施例2と同様に実装しようと試みたが、はんだ付けされず、実装できなかった。