特開2015-220161(P2015-220161A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-220161コネクタ付ワイヤハーネスの防水構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-220161(P2015-220161A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】コネクタ付ワイヤハーネスの防水構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20151110BHJP
【FI】
   H01R13/52 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-104039(P2014-104039)
(22)【出願日】2014年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】蓮井 宏介
(72)【発明者】
【氏名】西村 直也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴章
(72)【発明者】
【氏名】芦田 大地
(72)【発明者】
【氏名】寺内 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】坂本 幸康
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF06
5E087FF13
5E087LL03
5E087LL12
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR12
5E087RR29
(57)【要約】
【課題】コネクタ自体の大型化を伴うことなく、簡便に接続端子との接続部分の防水を図ることができる、新規なコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造を提案すること。
【解決手段】ワイヤハーネスを構成する複数の電線18の電線端末に接続された接続端子28が、コネクタ10内に設けられた複数のキャビティ22にそれぞれ収容保持されており、複数の電線18がコネクタ10の後方側キャビティ開口部14から外方に突出しているコネクタ付ワイヤハーネス12の防水構造であって、後方側キャビティ開口部14において、複数の電線18のうち少なくとも1つの電線18と少なくとも1つの電線18を収容保持するキャビティ22との隙間に吸水性ポリマー16が配設されているようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを構成する複数の電線の電線端末に接続された接続端子が、コネクタ内に設けられた複数のキャビティにそれぞれ収容保持されており、前記複数の電線が前記コネクタの後方側キャビティ開口部から外方に突出しているコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造であって、
前記後方側キャビティ開口部において、前記複数の電線のうち少なくとも1つの電線と該少なくとも1つの電線を収容保持する前記キャビティとの隙間に吸水性ポリマーが配設されている
ことを特徴とするコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造。
【請求項2】
前記吸水性ポリマーが前記少なくとも1つの電線の電線端末に巻き付けられて構成されている請求項1に記載のコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造。
【請求項3】
前記接続端子が圧着端子を含んで構成されており、前記圧着端子の被覆電線加締め部において前記吸水性ポリマーが加締め固定されている請求項2に記載のコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造。
【請求項4】
前記吸水性ポリマーが、前記後方側キャビティ開口部の全周に亘って前記複数の電線と前記キャビティとの前記隙間に配設されている挿入筒部と、前記後方側キャビティ開口部が開口する前記コネクタの後面の外周縁部から前記コネクタの側面に沿って延出された延出部と、前記挿入筒部と前記延出部を連結する連結部と、を含んで構成されている請求項1に記載のコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線からなるワイヤハーネスの端末にコネクタが設けられたコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の電装系に用いられるワイヤハーネスの端末部には、ワイヤハーネスを構成する複数の電線端末に接続された接続端子を内部のキャビティに収容保持したコネクタが取り付けられている。そして、かかるコネクタを各種電装品に設けられた相手側となるコネクタに接続することにより、バッテリーから電装品への給配電が容易且つ確実に行われるようになっている。このようなコネクタ付ワイヤハーネスは、例えば、特開昭62−188186号公報(特許文献1)等に記載されている。
【0003】
ところで、最近では、車両の軽量化のために、ワイヤハーネスを構成する電線として、銅電線の代わりにアルミニウム電線の使用が検討されている。しかしながら、アルミニウム電線と銅を主成分とする金属材料からなる接続端子との接続部分においては、液体が浸入することにより、異種金属腐食などの電食が生じやすい。そのため、例えば、特開2013−161702号公報(特許文献2)に示されるように、液体の浸入を防ぐエポキシ樹脂等の防水又は防食材でアルミニウム電線と接続端子との接続部分を覆蓋することが提案されている。
【0004】
ところが、このような従来の防水構造では、各電線の接続端子の接続部分を確実に防水することができるものの、電線毎に防水加工を施す必要があり、製造工程が複雑になると共に工数も増え、コストアップが避けられないという問題があった。また、各電線における接続端子の接続部分が防水又は防食材によって太くなることから、それらを装着するコネクタのキャビティやコネクタ全体の大型化も避けられないという問題もあった。
【0005】
なお、コネクタ付ワイヤハーネスが車室内に配設される場合等、コネクタ付ワイヤハーネスに要求される防水基準が比較的低い場合もあり、そのような場合に安価且つ小型にコネクタ付ワイヤハーネスの防水性を向上させることができる構造は、未だ提案されていないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−188186号公報
【特許文献2】特開2013−161702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、コネクタ自体の大型化を伴うことなく、簡便に接続端子との接続部分の防水を図ることができる、新規なコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、ワイヤハーネスを構成する複数の電線の電線端末に接続された接続端子が、コネクタ内に設けられた複数のキャビティにそれぞれ収容保持されており、前記複数の電線が前記コネクタの後方側キャビティ開口部から外方に突出しているコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造であって、前記後方側キャビティ開口部において、前記複数の電線のうち少なくとも1つの電線と該少なくとも1つの電線を収容保持する前記キャビティとの隙間に吸水性ポリマーが配設されていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、電線を伝った外部からの水入りが懸念される、後方側キャビティ開口部において、防水が必要とされる少なくとも1つの電線とかかる電線を収容保持するキャビティとの隙間に吸水性ポリマーが配設されている。それ故、外部から電線を伝って後方側キャビティ開口部に到達した水滴は、速やかに吸水性ポリマーに吸収されて外部に排出されることがない。しかも吸水性ポリマーは吸水することで膨張することから、電線とキャビティの隙間がより完全に密封される。
【0010】
要するに、後方側キャビティ開口部において電線とキャビティの隙間に吸水性ポリマーが配設するという簡易な防水構造にかかわらず、吸水性ポリマーの吸水膨張性を巧く利用することで、外部からの水を吸水性ポリマー内に閉じ込めると共に、吸水に伴う膨張により電線とキャビティの隙間をより完全に密封することができることから、防水性能を飛躍的に向上させることができるのである。
【0011】
その結果、従来の接続端子やコネクタの形状の変更や大型化などを一切必要とすることなく、あらゆるコネクタ付ワイヤハーネスに対して簡易な防水構造を付与することができるのである。従って、例えば、車室内に配設されるアルミ電線を使用したコネクタ付ワイヤハーネスに本発明の防水構造を適用することで、簡易且つ確実にコネクタ付ワイヤハーネスの防水性を向上させることができるのである。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記吸水性ポリマーが前記少なくとも1つの電線の電線端末に巻き付けられて構成されているものである。
【0013】
本態様によれば、吸水性ポリマーが電線の電線端末に巻き付けられて構成されていることから、防水が必要とされる電線に吸水性ポリマーを巻き付けるという簡単な作業により、簡易且つ確実にコネクタ付ワイヤハーネスの防水性を向上させることができるのである。なお、吸水性ポリマーは、電線に巻き付け可能なものであれば何れでもよく、例えば、帯状で片面に接着剤が塗布された接着テープ等任意のものが採用可能である。
【0014】
本発明の第三の態様は、前記第二の態様に記載のものにおいて、前記接続端子が圧着端子を含んで構成されており、前記圧着端子の被覆電線加締め部において前記吸水性ポリマーが加締め固定されているものである。
【0015】
本態様によれば、接続端子を圧着端子により構成することにより、圧着端子の被覆電線加締め部を利用してそこに吸水性ポリマーを加締め固定することができる。それ故、電線に固定するための接着剤等の固定手段が不要とできることから、コストの低減を図ることができる。
【0016】
本発明の第四の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記吸水性ポリマーが、前記後方側キャビティ開口部の全周に亘って前記複数の電線と前記キャビティとの前記隙間に配設されている挿入筒部と、前記後方側キャビティ開口部が開口する前記コネクタの後面の外周縁部から前記コネクタの側面に沿って延出された延出部と、前記挿入筒部と前記延出部を連結する連結部と、を含んで構成されているものである。
【0017】
本態様によれば、このような構成とされた吸水性ポリマーをコネクタの後面に取り付けるだけで、一括して全ての後方側キャビティ開口部に対して電線とキャビティとの隙間に吸水性ポリマーを配設することができる。しかも、吸水性ポリマーを配設する電線と吸水性ポリマーを配設しない電線を区別するといった煩雑さを排除することができる。それ故、大幅に作業効率を向上することができるのである。また、例えば、テープ巻きにより延出部を介して吸水性ポリマーを容易にコネクタに固定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、防水が必要とされる少なくとも1つの電線とかかる電線を収容保持するキャビティとの隙間に吸水性ポリマーが配設されている。それ故、外部から電線を伝って後方側キャビティ開口部に到達した水滴は、速やかに吸水性ポリマーに吸収されて外部に排出されることがない。しかも吸水性ポリマーは吸水することで膨張することから、電線とキャビティの隙間がより完全に密封される。それ故、防水性能を飛躍的に向上させることができるのである。しかも、従来の接続端子やコネクタの形状の変更や大型化などを一切必要とすることなく、あらゆるコネクタ付ワイヤハーネスに対して簡易な防水構造を付与することができるのである。従って、例えば、車室内に配設されるアルミ電線を使用したコネクタ付ワイヤハーネスに本発明の防水構造を適用することで、簡易且つ確実にコネクタ付ワイヤハーネスの防水性を向上させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一の実施形態としてのコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造を示す斜視図。
図2図1におけるII−II断面拡大図。
図3】本発明の第二の実施形態としてのコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造を示す断面図であって、図2に相当する図。
図4】本発明の第三の実施形態としてのコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造を示す斜視図。
図5図4におけるV−V断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
先ず、図1及び図2には、本発明の第一の実施形態に従うコネクタ付ワイヤハーネスの防水構造を用いて、外部からコネクタ10内部への水入りが懸念されるコネクタ付ワイヤハーネス12のコネクタ10の後方側キャビティ開口部14を吸水性ポリマー16により防水する構造が示されている。コネクタ付ワイヤハーネス12は、ワイヤハーネスを構成する複数の電線18と、複数の電線18の電線端末に設けられたコネクタ10を含んで構成されている。そして、コネクタ10の前方側(図1及び図2中、左側)より図示しない各種車載電装品に設けられた相手側コネクタが連結されるようになっている。なお、以下の説明において、上方とは、図2中の上方、下方とは、図2中の下方、前方とは、図2中の左方、後方とは、図2中の右方を言うものとする。
【0022】
図1に示されているように、コネクタ10を構成するコネクタハウジング20は略ブロック形状とされており、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって一体形成されている。コネクタハウジング20の内部には、6個のキャビティ22が貫通形成されている。具体的には、コネクタハウジング20の前面24側および後面26側において、前方及び後方に向かって開口する略矩形断面形状の6個のキャビティ22が形成されており、コネクタハウジング20の後面26には接続端子たる圧着端子28が挿入可能な6個の後方側キャビティ開口部14が形成されている。そして、コネクタハウジング20の各キャビティ22にはそれぞれ圧着端子28が収容保持されるようになっている。圧着端子28には電線18が接続されており、電線18は圧着端子28の後方に延び出して、後方側キャビティ開口部14から外方に突出されるようになっている。加えて、図2に示されているように、コネクタハウジング20のキャビティ22の内面30には、内方斜め前方に向かって片持ち状に突出する係合突起32が設けられており、後述する圧着端子28の接点部42の後端部44に係合して、圧着端子28のキャビティ22からの抜けが防止されるようになっている。なお、理解を容易とするために、図2において圧着端子28と電線18と吸水性ポリマー16を仮想線で示している。
【0023】
図2に示されているように、電線18の電線端末には圧着端子28が接続されており、かかる圧着端子28がコネクタ10のコネクタハウジング20内に設けられたキャビティ22に後方側からそれぞれ収容保持されるようになっている。より詳細には、電線18の電線端末の先端側の絶縁被覆34を剥いで芯線36を露出させ、芯線36を圧着端子28の芯線加締め部38に、また芯線36が露出された電線18の先端部分を圧着端子28の被覆電線加締め部40に加締め加工することにより、電線18が圧着端子28に固定・接続されている。さらに、圧着端子28の先端部(図2中、左側)には、前後方向に開口する筒状の接点部42が形成されている。これにより、圧着端子28の接点部42の後端部44がキャビティ22内に設けられた係合突起32に係合して、抜けが防止されている。さらに、コネクタ10を相手側コネクタに挿入することにより、圧着端子28の筒状の接点部42に相手側コネクタの図示しないコネクタ端子が挿入され、各電線18が相手側コネクタと電気的に接続されるようになっている。なお、圧着端子28は、導電性を有し且つプレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を用いて一体的に形成されている。
【0024】
なお、本実施形態においては、例えば、6本の電線18のうち、コネクタハウジング20の上段の両側に位置するキャビティ22に挿通された2本の電線18がアルミ電線18aとされている一方、残りの4本の電線18が銅電線18bとされている。アルミ電線18aと銅電線18bは、それぞれアルミニウムやアルミニウム合金等のアルミニウム系材料と銅や銅合金等の銅系材料からなる金属線の複数を束ね合わせた芯線36a,36bが、エチレン系樹脂やスチレン系樹脂等の電気絶縁性を有する絶縁被覆34で覆われた構造とされている。図2に示されているように、アルミ電線18aの電線端末において、被覆電線加締め部40の後方から後方側キャビティ開口部14の外方に亘って、アルミ電線18aの外周面上の全周に吸水性ポリマー16が巻き付けられている。これにより、アルミ電線18aとアルミ電線18aを収容保持するキャビティ22の後方側キャビティ開口部14との隙間に吸水性ポリマー16が配設されるようになっている。なお、吸水性ポリマー16は、例えば、片面に接着剤が貼付された帯状の吸水性ポリマーを所定の長さにカットすることにより構成されている。
【0025】
吸水性ポリマー16は、水分を吸収して膨張固形化する物質により構成されるものであり、架橋構造を持つ親水性のポリマーで、自重の10倍以上の吸水力を有し、加圧されても離水し難い性質を有している。そして、架橋構造を持つポリマーとしては、グラフト重合或いはカルボキシメチル化によるデンプン系及びセルロース系、ポリアクリル酸塩系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリルアミド系、ポリオキシエチレン系等の合成ポリマー系等の公知の任意のポリマーが採用され得る。
【0026】
このような本実施形態に従うコネクタ付ワイヤハーネス12の防水構造によれば、電線18を伝った外部からの水入りが懸念される、後方側キャビティ開口部14において、防水が必要とされるアルミ電線18aとかかるアルミ電線18aを収容保持するキャビティ22との隙間に吸水性ポリマー16が配設されている。より詳細には、電線18の電線端末に接続される圧着端子28は通常銅や銅合金等の銅系材料によって構成されていることから、アルミ電線18aの芯線加締め部38ではアルミ系材料(芯線36a)と銅系材料(圧着端子28)の異種金属同士が接続されており、被水によって腐食(アルミ電線18aの芯線36aの腐食)が生じ易いことから、防水が必要とされている。本実施形態では、アルミ電線18aとキャビティ22との隙間に吸水性ポリマー16を配設するという簡易な防水構造にかかわらず、吸水性ポリマー16の吸水膨張性を巧く利用することで、外部からアルミ電線18aを伝って後方側キャビティ開口部14に到達した水滴を速やかに吸水性ポリマー16に吸収して閉じ込めると共に、吸水に伴う膨張によりアルミ電線18aとキャビティ22の隙間をより完全に密封することができ、防水性能を飛躍的に向上させることができるようになっている。それ故、アルミ電線18aの芯線加締め部38が被水して腐食が生じることが有利に防止されるようになっているのである。なお、本実施形態で例示の防水構造は、防水が必要とされるアルミ電線18aに吸水性ポリマー16を巻き付けるという簡単な作業により、簡易且つ確実にコネクタ付ワイヤハーネスの防水性を向上させることができる。それ故、かかる防水構造は、従来の接続端子やコネクタの形状の変更や大型化などを一切必要とすることなく、あらゆるコネクタ付ワイヤハーネスに対して付与することができるのである。
【0027】
次に、図3を用いて、本発明の第二の実施形態としてのコネクタ付ワイヤハーネス46の防水構造について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。本実施形態は、上記実施形態に比べて、圧着端子28の被覆電線加締め部40において吸水性ポリマー16が加締め固定されている点に関して、上記実施形態と異なる実施形態を示すものである。
【0028】
本実施形態では、圧着端子28の被覆電線加締め部40を利用してそこに吸水性ポリマー16を加締め固定していることから、アルミ電線18aに固定するための接着剤等の固定手段が不要とでき、コストの低減を図ることができる。また、上記実施形態と異なる点は、圧着端子28の被覆電線加締め部40を利用してそこに吸水性ポリマー16を固定したことだけであることから、上記実施形態と同様、簡易且つ確実にコネクタ付ワイヤハーネスの防水性を向上させることができ、従来の接続端子やコネクタの形状の変更や大型化などを一切必要とすることなく、あらゆるコネクタ付ワイヤハーネスに対して付与することができる。
【0029】
続いて、図4及び図5を用いて、本発明の第三の実施形態としてのコネクタ付ワイヤハーネス50の防水構造について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。本実施形態は、上記実施形態に比べて、全ての電線18に対して電線18とキャビティ22との隙間に吸水性ポリマー52を配設するようにした点に関して、上記実施形態と異なる実施形態を示すものである。
【0030】
より詳細には、吸水性ポリマー52は、挿入筒部54と、延出部56と、かかる挿入筒部54と延出部56を連結する連結部58と、を含んで構成されている。挿入筒部54は角筒状とされており、全てのキャビティ22の後方側キャビティ開口部14において、後方側キャビティ開口部14の全周に亘って電線18とキャビティ22との隙間に配設されている。一方、延出部56も角筒状とされており、後方側キャビティ開口部14が開口するコネクタ10の後面26の外周縁部からコネクタ10の側面に沿って延出されている。そして、かかる挿入筒部54と延出部56が、格子状の連結部58によって連結されることにより、吸水性ポリマー52が構成されている。そして、このような構成とされた吸水性ポリマー52がコネクタ10の後面26に取り付けられ、結束テープ60によってコネクタ10に固定されるようになっている。なお、理解を容易とするために、図4においては結束テープ60を、また図5においては結束テープ60に加えて圧着端子28と電線18を仮想線で示している。
【0031】
本実施形態では、このように、吸水性ポリマー52をコネクタ10の後面26に取り付けた後、結束テープ60によりコネクタ10に固定するという簡単な作業により、一括して全ての後方側キャビティ開口部14に対して電線18とキャビティ22との隙間に吸水性ポリマー52を配設することができるようになっている。これにより、吸水性ポリマー52を配設する電線18と吸水性ポリマー52を配設しない電線18を区別するといった煩雑さを排除することができることから、大幅に作業効率を向上することができる。また、本実施形態が上記実施形態と異なる点は、全ての電線18に対して電線18とキャビティ22との隙間に吸水性ポリマー52が配設されているようにした点であることから、上記実施形態と同様、簡易且つ確実にコネクタ付ワイヤハーネスの防水性を向上させることができ、従来の接続端子やコネクタの形状の変更や大型化などを一切必要とすることなく、あらゆるコネクタ付ワイヤハーネスに対して付与することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、上記第一及び第二の実施形態では、吸水性ポリマー16は、接着剤や被覆電線加締め部40によって電線18に対して固定されていたが、電線18に対して固定可能なものであれば何れでもよく、結束テープ等任意のものが採用可能である。また、上記第三の実施形態では、挿入筒部54は角筒状とされていたが、円筒状等任意の形状のものが採用可能である。
【符号の説明】
【0033】
10:コネクタ、12,46,50:コネクタ付ワイヤハーネス、14:後方側キャビティ開口部、16,52:吸水性ポリマー、18:電線、22:キャビティ、26:後面、28:圧着端子(接続端子)、40:被覆電線加締め部、54:挿入筒部、56:延出部、58:連結部
図1
図2
図3
図4
図5