【解決手段】中筒部63、下鍔部62および上鍔部61から構成される巻枠部66を備えるトランスボビン60Aであって、端子台部65および下鍔部62を切り欠くと共に中筒部63側に向かう中心接離方向に延伸するスリット部67が設けられていて、スリット部67には、中筒部63から離間する側よりも中筒部63側の方が下鍔部62側に位置しているガイド壁面68aが設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の構成においては、一次巻線の巻始め側および巻終わり側が、二次巻線と近接した状態で配置されていると、放電等が生じる場合があるので、好ましくない。そのため、一次巻線の巻始め側は、ボビン10の最も底面側か、またはそれに近い部分に沿わせて、二次巻線側と離すように配置するようにするのが通常である。その場合、一次巻線の巻始め側は、ボビン10の円筒形の巻軸12の下端側から上方に向かって巻軸12に沿うような配置となる。
【0005】
しかし、このような配置とする場合、一次巻線の巻始め側は、E形コア70に近接してしまう。その場合、一次巻線の巻始め側は、E形コア70に対して、円筒形の巻軸12の厚み分しか離されない状態となる。すると、一次巻線の巻始め側は、E形コア70に近づき過ぎてしまい、放電等が生じてしまう場合がある。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コア中脚部から一次巻線の巻始め側の端末を離間させることが可能なトランスボビンおよびトランスを提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のトランスボビンは、コア部が挿通される挿通孔を有する中筒部と、中筒部の軸線中心から離間する方向に突出して設けられると共に、当該中筒部のうち実装基板に実装される側に位置する下鍔部と、中筒部の軸線中心から離間する方向に突出して設けられると共に、当該中筒部のうち実装基板から離間する側に位置する上鍔部と、下鍔部と一体的または別体的に設けられると共に、端子部材を支持する端子台部と、を有し、さらに中筒部、下鍔部および上鍔部から構成される巻枠部を備えるトランスボビンであって、端子台部および下鍔部を切り欠くと共に中筒部側に向かう中心接離方向に延伸するスリット部が設けられていて、スリット部には、中筒部から離間する側よりも中筒部側の方が下鍔部側に位置しているガイド壁面が設けられている、ことを特徴としている。
【0008】
また、本発明のトランスボビンの他の側面は、上述の発明に加えて更に、ガイド壁面は、下鍔部よりも実装基板側に突出しているガイド壁部に設けられている、ことが好ましい。
【0009】
さらに、本発明のトランスボビンの他の側面は、上述の発明に加えて更に、端子台部のうち実装基板と対向する対向面側には、当該対向面よりも実装基板から離間する側に向かい窪むと共に、巻枠部に巻回される導線を端子部材にガイドするためのガイド溝部が設けられている、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明のトランスボビンの他の側面は、上述の発明に加えて更に、ガイド壁面のうち、中心接離方向において中筒部から離間する端部である外端部は、実装基板から離間する基板接離方向においてガイド溝部の溝底面の位置よりも実装基板側に位置している、ことが好ましい。
【0011】
さらに、本発明のトランスボビンの他の側面は、上述の発明に加えて更に、ガイド壁部のうち、中筒部から離間する側には、実装基板から離間する基板接離方向に延伸すると共に外端部と接続される外側ストレート壁面が設けられていて、外側ストレート壁面のうち、基板接離方向において実装基板から離間する端部側の位置は、基板接離方向におけるガイド溝部の溝底面の位置よりも、実装基板側に位置し、かつ外側ストレート壁面の中心接離方向における位置は、ガイド溝部のうちスリット部に面しかつ中筒部側の隅部の位置よりも、中筒部側に位置している、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明のトランスボビンの他の側面は、上述の発明に加えて更に、外側ストレート壁面のうち実装基板から離間する端部側の位置と、ガイド溝部の溝底面の位置との間の距離であって、基板接離方向における距離は、導線の直径の1〜3倍に設けられている、ことが好ましい。
【0013】
さらに、本発明のトランスボビンの他の側面は、上述の発明に加えて更に、ガイド壁面のうち中筒部側の内側端部は、下鍔部のうち巻枠部側から離間していると共に、当該内側端部と下鍔部の巻枠部側の間には、中筒部の外面に沿う内側ストレート壁面が存在している、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明のトランスの一側面は、上述した各発明に係るトランスボビンを用いると共に、さらに、巻枠部に配置されると共に中筒部側に位置する一次巻線と、巻枠部に配置されると共に一次巻線の外側に位置する二次巻線と、を具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、コア中脚部から一次巻線の巻始め側の端末を離間させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る、トランス10Aおよびトランスボビン60Aについて、図面を参照しながら説明する。
【0018】
なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を用いて説明することがある。そのうち、X方向はトランスボビン60Aのうち一対の端子台部65を結ぶ方向とし、X1側は
図1において右手前側とし、X2側は
図1において左奥側とする。また、Y方向はX方向に直交すると共にE形コア20および蓋コア30の長手方向とし、Y1側は
図1において右奥側とし、Y2側は
図1において左手前側とする。また、Z方向はトランス10Aの厚み方向とし、Z1側は
図1における上側とし、Z2側は
図1における下側とする。
【0019】
<トランス10Aの全体構成について>
図1は、トランス10Aの全体構成を示す斜視図である。
図2は、トランス10Aの構成を示す側面断面図である。
図1および
図2に示すように、トランス10Aは、E形コア20と、蓋コア30と、一次巻線40と、二次巻線50と、を有し、これらがトランスボビン60Aに取り付けられている。
【0020】
図1および
図2に示すように、E形コア20は、蓋コア30よりも下方側(Z2側)に位置している。
図3は、E形コア20の形状を示す斜視図である。
図4は、トランス10AのX方向の中心において、YZ平面で切断した状態を示す半断面状態の斜視図である。
図3および
図4に示すように、E形コア20は、コア底部21と、コア中脚部22と、コア端面部23とを有していて、側面視したときの形状がE形となるように設けられている。これら各部位のうち、コア底部21は、Y方向に長く設けられていて、そのコア底部21の長手方向(Y方向)の中央部分にコア中脚部22が上方側(Z1側)に向かうように設けられている。
【0021】
また、コア中脚部22は、E形コア20の長手方向(Y方向)よりもE形コア20の短手方向(X方向)に長く設けられている。それにより、コア中脚部22の外周側には、トランスボビン60Aの中筒部63を介して、一次巻線40が配置され、さらにその一次巻線40の外側に二次巻線50が配置される。なお、コア中脚部22は、コア部に対応する。
【0022】
また、
図3および
図4に示すように、コア端面部23は、E形コア20の長手方向(Y方向)の両端側にそれぞれ設けられている。このコア端面部23は、コア底部21から上方側(Z1側)に向かうように突出している。また、コア端面部23は、コア底部21の幅方向(X方向)の全体に亘って設けられている。ただし、コア端面部23の内周壁部は平面状には設けられておらず、その内周壁部の幅方向(X方向)の中央側よりも端部側の方が中央側に向かって若干突出するような形状に設けられており、二次巻線50との間の隙間が低減されるようにしている。
【0023】
また、コア底部21の長手方向(Y方向)の中央部分には、切欠部24が設けられている。切欠部24は、コア底部21の幅方向(X方向)に沿って、当該コア底部21を切り欠いた部分であり、幅方向(X方向)の両端側からコア中脚部22に向かうように窪んでいる部分である。この切欠部24には、後述するトランスボビン60Aの中筒部63に導線を導くためのガイド壁部68が位置する。
【0024】
なお、コア中脚部22のY方向における中央部分と、切欠部24のY方向における中央部分とは、
図2に示すように上下方向(Z方向)において同一直線上に位置することが好ましい。すなわち、上述のように面一ではなく切欠部24側がコア中脚部22に食い込むように形成される場合には、コア中脚部22での磁路の断面積が減じられてしまう。また、上述のように面一ではなく切欠部24がコア中脚部22に食い込まずに切欠部24の窪みが小さい場合には、後述するガイド壁部68が薄肉化されてしまう。しかし、
図2に示すように、コア中脚部22のY方向における中央部分と、切欠部24のY方向における中央部分とが上下方向(Z方向)において同一直線上に位置する場合には、コア中脚部22での磁路の断面積が減じられることなく、かつ後述するガイド壁部の肉厚を最大化させることができる。また、トランスボビン60Aの中筒部63の内壁側を面一とすることができ、トランスボビン60Aの製造が行い易くなる。
【0025】
なお、
図2に示すように、磁気飽和を防ぐために、コア端面部23の上端面の高さは、コア中脚部22の上端面の高さよりも高く設けられている。そのため、コア端面部23は、蓋コア30と当接するが、コア中脚部22は、蓋コア30と当接しない構成が好ましい。しかしながら、大電流を使用せず、そのため磁気飽和への心配がない限り、コア端面部23の上端面の高さを、コア中脚部22の上端面の高さと同じ高さとしても良い。
【0026】
また、磁気飽和を防ぐために、それぞれのコア端面部23の上端面の高さは、コア中脚部22の上端面の高さより低く設けられていても良い。このとき、それぞれのコア端面部23と蓋コア30との間に、合計二つのギャップが形成される。そのため、たとえ大電流を流しても、磁気飽和しにくいという特徴がある。勿論、このギャップは空気ギャップでも良いし、非磁性かつ非導体である材料からなるスペーサを用いて、ギャップを形成しても良い。スペーサを用いる場合、空気ギャップに比べて、蓋コア30とE形コア20のコア中脚部22との位置を精度良く定めることができ、更に、蓋コア30がE形コア20に対してガタ付くという問題をなくすことができる。なお、スペーサを用いる場合、コア中脚部22と蓋コア30との間にギャップが形成されても良い。
【0027】
さらに、本実施の形態に係るトランス10Aの小型化を図ることができるように、一枚の平らな板状スペーサを用いても良い。この場合、このスペーサが蓋コア30とE形コア20との間に設けるようにする。すると、そのスペーサの上面が蓋コア30の下面と接し、またそのスペーサの下面がE形コア20のコア中脚部22の上端面及びコア端面部23の上端面と接する。この構造によれば、たとえ本実施例のトランス10Aの小型化につれてコア中脚部22の上端面またはコア端面部23の上端面の面積が小さくなっても、精密な磁気ギャップを形成することができる。なお、コア端面部23が接触する部位とコア中脚部22が接触する部位とで、スペーサの板厚を変えるようにしても良いが、同じ板厚としても良い。
【0028】
また、蓋コア30は、
図1および
図2に示すような、板状のコア部材であり、E形コア20のコア端面部23と突き合わされる。そして、蓋コア30は、コア中脚部22とは、磁気飽和を防ぐためのギャップを有して対向する。しかしながら、大電流を使用せず、そのため磁気飽和への心配がない限り、蓋コア30がコア中脚部22と直接突き合わされる構成を採用しても良い。
【0029】
また、
図2には空気ギャップの例が示されているが、蓋コア30とE形コア20のコア中脚部22との位置を精密に定め、更に、ガタ付きが生じるという問題をなくすためには、非磁性かつ非導体である材料からなるスペーサを用いることもできる。この場合、例えば、エポキシ樹脂からなる一定の高さを有する柱状の部材を用いることができる。
【0030】
なお、E形コア20および蓋コア30は、それらの材質を磁性材としているが、磁性材としては、例えば、ニッケル系のフェライトまたはマンガン系のフェライト等の種々のフェライト、パーマロイ、センダスト等、各種の磁性材料および各種の磁性材料の混合物を用いることが可能である。
【0031】
次に、一次巻線40および二次巻線50について説明する。一次巻線40は、導線41(
図2参照)の巻始め側を後述するトランスボビン60Aの中筒部63に接触させる状態で巻回を開始して形成される。そして、導線41の巻回の進行により、一次巻線40は、導線41が外周側に向かって複数層積層された状態となっている。そのため、一次巻線40の巻終わり側は、巻始め側よりも外周側に位置している。
【0032】
また、二次巻線50は、導線41の巻始め側を、一次巻線40の外周に接触させる状態で巻回を開始して形成される。そして、導線41の巻回の進行により、二次巻線50も、導線41が外周側に向かって複数層積層された状態となっており、その巻終わり側は、巻始め側よりも外周側に位置している。そして、これら一次巻線40と二次巻線50との間では、電磁誘導を利用して電圧を変換可能としている。
【0033】
<トランスボビン60Aについて>
次に、トランスボビン60Aについて説明する。
図5は、トランスボビン60Aを上方側から見たときの構成を示す斜視図である。
図6は、トランスボビン60Aを下方側から見たときの状態を示す斜視図である。トランスボビン60Aは、端子部材70を金型内部に配置して、金型内部に溶融した樹脂を注入する、インサート成型によって形成されている。ただし、トランスボビン60Aは、予め端子部材70を差し込みための穴部を有する形状として、インサート成型を行わずに形成しても良い。
図2、
図5および
図6に示すように、トランスボビン60Aは、上鍔部61と、下鍔部62と、中筒部63と、上方掛止部64と、端子台部65とを有している。
【0034】
上鍔部61、下鍔部62および中筒部63は、一次巻線40および二次巻線50が位置する巻枠部66を構成する。これらのうち、上鍔部61は、巻枠部66のうち上方側に位置する鍔状の部分である。また、下鍔部62は、巻枠部66のうち下方側に位置する鍔状の部分である。なお、上鍔部61および下鍔部62は、中筒部63の軸線中心から離間する方向に突出している。
【0035】
また、中筒部63は、巻枠部66のうち上鍔部61と下鍔部62とを連結する筒状の部分である。そして、この中筒部63の内周側には、挿通孔63aが設けられていて、その挿通孔63aには、E形コア20のコア中脚部22が挿通される。また、中筒部63の外周側には、一次巻線40および二次巻線50が配置される。なお、本実施の形態では、中筒部63は、平面視したときの形状が長楕円形状に設けられている。
【0036】
また、上方掛止部64は、上鍔部61のX方向の両端側から上方側(Z1側)に向かい突出している部分である。
図1、
図2および
図4に示すように、上鍔部61の上方側(Z1側)には、蓋コア30が位置しているが、その蓋コア30の幅方向(Y方向)における位置決めを行うために、上方掛止部64が設けられている。なお、
図5および
図6に示すように、上鍔部61および下鍔部62の外周縁部は、一次巻線40および二次巻線50に倣うように湾曲している。しかし、上方掛止部64は、蓋コア30の位置決めを行う関係上、Y方向に長い長方形状に設けられている。
【0037】
また、端子台部65は、下鍔部62のX方向の両端側から下方側(Z2側)に向かい突出している部分である。この端子台部65には、複数の端子部材70の一部が内挿されている。端子部材70は、金属製であり、端子台部65の付け根側に導線41の端末(スタート端末41aを含む)を絡げて当該導線41と電気的に接続可能としている。また、端子部材70の下方には、実装端子部71が設けられていて、この実装端子部71が外部の実装基板等と電気的に接続される。
【0038】
ここで、
図6に示すように、端子台部65の下方側には、ガイド溝部651が設けられている。ガイド溝部651は、端子台部65の下面(対向面)側から所定深さだけ上方に向かうように窪ませた部分である。このガイド溝部651は、Y方向の中央に位置するスリット部67から端子台部65のY1側の端部に亘るように設けられている。また、ガイド溝部651は、Y1側の端子部材70の付け根部分にも差し掛かっている。ガイド溝部651とY1側の端子部材70の付け根部分との間には、傾斜部652が設けられている。このため、Y1側の端子部材70に絡げられる導線41の端末を一層良好にガイドすることが可能となっている。
【0039】
また、下鍔部62および端子台部65の長手方向(Y方向)の中央部分には、スリット部67が設けられている。スリット部67は、端子台部65のうちX方向における外側から、中筒部63側(トランスボビン60Aの中央側)に向かうように端子台部65を切り欠いた部分である。また、スリット部67は、上述したガイド溝部651と接続されている。なお、スリット部67が延伸するX方向は、中心接離方向に対応する。
【0040】
図2に示すように、トランスボビン60Aのうち、スリット部67の奥側(トランスボビン60Aの中央側)には、ガイド壁部68が設けられている。
図6に示すように、ガイド壁部68は、トランスボビン60Aのうち端子台部65よりも挿通孔63aに位置していて、このガイド壁部68が、E形コア20の切欠部24に位置する部分となっている。すなわち、ガイド壁部68は、下鍔部62よりも下方に突出している。また、ガイド壁部68には、トランスボビン60Aのうち端子台部65の外側からトランスボビン60Aの中央側に向かうにつれて、上方に向かうようなテーパ状のガイド壁面68aが設けられている。
【0041】
ここで、
図2に示すように、ガイド壁面68aの中筒部63側(すなわち上方側)の付け根は、巻枠部66の内周側の隅部か、またはその付近となっている。そのため、一次巻線40の巻始め側の端末(スタート端末41aとする)は、巻枠部66に入る前の下方側の部位では、ガイド壁面68aによって、挿通孔63aに位置するコア中脚部22から離間されている。すなわち、一次巻線40のスタート端末41aは、ガイド壁面68aによって支持されることで、そのスタート端末41aがコア中脚部22に近づくのを防いでいる。特に、スタート端末41aが緩んだままの状態であっても、ガイド壁面68aによってスタート端末41aがコア中脚部22に近づくのが防止されている。そのため、巻枠部66よりも下方側の部位において、スタート端末41aがコア中脚部22に近づいて配置される場合のような、放電等の不具合が生じるのを防止可能となっている。
【0042】
しかしながら、スタート端末41aが二次巻線50に近接してしまうと、スタート端末41aと二次巻線50との間で放電等の不具合が生じてしまう。そのため、ガイド壁面68aは、二次巻線50から離れるように水平方向(
図2におけるX方向)に対しては十分な傾斜角度を有していて、スタート端末41aを支持した場合でも、そのスタート端末41aを二次巻線50から十分に離間させることを可能としている。なお、ガイド壁面68aの傾斜角度の一例としては、たとえば45度とするものがあるが、30度〜60度の間の任意の傾斜角度とすることが好ましい。
【0043】
また、ガイド壁部68には、ガイド壁面68aの他に、外側ストレート壁面68bも設けられている。外側ストレート壁面68bは、ガイド壁面68aのうち、挿通孔63aから離間した外側の端部(外端部)と連続するように設けられている。また、外側ストレート壁面68bは、上下方向(Z方向)に沿って延伸するように設けられている。外側ストレート壁面68bは、さほど長くは設けられておらず、この外側ストレート壁面68bを省略する構成を採用しても良い。
【0044】
図7は、ガイド溝部651とガイド壁面68aの外端部(中筒部63から離れる側の端部)の位置関係を拡大して示す部分的な断面図である。
図2および
図7に示すように、外側ストレート壁面68bの上端側の高さ位置は、ガイド溝部651の溝底面651aの高さ位置に対して、少なくともスタート端末41aの直径以上である距離Lだけ低くなるように設けられている。また、外側ストレート壁面68bは、隅部651bよりも内側(挿通孔63a側)に位置している。そのため、スタート端末41aは、ガイド溝部651のうちスリット部67に開口している部位の内側(挿通孔63a側)の隅部651bを、曲げ部位としている。すなわち、隅部651bは、スタート端末41aの引っ掛け部位となっている。
【0045】
また、上述のような位置関係の外側ストレート壁面68bと隅部651bを設けることにより、スタート端末41aは、隅部651b付近で比較的緩やかに曲げる構成とすることができる。そのため、たとえば外側ストレート壁面68bの上端側の高さ位置が溝底面651aの高さ位置よりも高い構成等と比較して、スタート端末41aに急激な折り曲げ箇所が形成されるのを防ぐことができ、スタート端末41aの断線等が生じるのを防止可能となる。
【0046】
なお、外側ストレート壁面68bの上端側の高さ位置は、ガイド溝部651の溝底面651aの高さ位置に対して、スタート端末41aの直径の1〜3倍程度低いことが好ましく、2倍程度低いことが更に好ましい。
【0047】
図8は、トランス10Aを底面側から見た状態を示す底面図である。
図8に示すように、隅部651bは、E形コア20から離れるように設けられている。しかも、ガイド溝部651は、隅部651bからY1側に向かうにつれて、X方向の両端側に向かうように設けられている。そのため、ガイド溝部651にスタート端末41a等の導線41が位置しても、その導線41は、E形コア20に対して絶縁距離以上に離間させることが可能となっている。
【0048】
以上のような構成を有するトランス10Aにおいては、一次巻線40を形成する場合、スタート端末41aは、スリット部67を介して巻枠部66に導入されるが、一次巻線40を形成した後には、スタート端末41aは中筒部63とガイド壁面68aの境界付近に位置する状態となる。また、スリット部67に位置するスタート端末41aは、隅部651bを介してガイド溝部651に導入されているが、そのスタート端末41aは、傾斜部652を通過後にY1側の端子部材70に絡げられている。なお、端子部材70へのスタート端末41aの絡げを行うのは、一次巻線40の形成前でも良く、一次巻線40を形成した後でも良い。
【0049】
ここで、スリット部67に位置するスタート端末41aが緩んだとしても、スタート端末41aは、ガイド壁面68aにより、このガイド壁面68aよりも下方側に向かうのが防止される。そのため、スタート端末41aをコア中脚部22から離間させることを可能としている。また、スリット部67においてスタート端末41aが緩んだとしても、スタート端末41aが二次巻線50に近づくのが防止される。
【0050】
なお、スタート端末41aが緩んでいなく、そのスタート端末41aにテンションが付与されている状態では、スタート端末41aは、隅部651bと、中筒部63とガイド壁面68aの境界付近との間に亘って存在するが、この場合、スタート端末41aがガイド壁面68aにさほど接触しない状態となっている。
【0051】
<効果について>
以上のような構成を有するトランスボビン60Aおよびこのトランスボビン60Aを用いるトランス10Aによると、トランスボビン60Aにはスリット部67が設けられていて、そのスリット部67には、中筒部63側の方が、それとは逆の側(外側)よりも上方側(Z1側)に位置しているガイド壁面68aが設けられている。そのため、一次巻線40のスタート端末41aは、ガイド壁面68aによって支持され、それによって、スタート端末41aがコア中脚部22に近づくのを防止可能となる。特に、スタート端末41aが緩んだままの状態であっても、ガイド壁面68aによってスタート端末41aがコア中脚部22に近づくのが防止されるので、スタート端末41aがコア中脚部22に近づいて配置される場合のような、放電等の不具合が生じるのを防止可能となる。
【0052】
また、本実施の形態では、ガイド壁面68aは、下鍔部62よりも実装基板側(下側;Z2側)に突出しているガイド壁部68に設けられている。それにより、ガイド壁部68の斜面長さを大きく取ることが可能となり、コア中脚部22からスタート端末41aを良好に離間させることができる。
【0053】
さらに、本実施の形態では、端子台部65の下面側には、上方に向かって窪んだガイド溝部651が設けられている。このため、スタート端末41aは、端子部材70からガイド壁面68aを経て巻枠部66へと良好にガイドすることが可能となる。
【0054】
また、本実施の形態では、ガイド壁面68aのうち外側の端部(外端部)は、ガイド溝部651の溝底面651aよりも下方側(Z2側)に位置している。このため、ガイド溝部651から導出されるスタート端末41aは、ガイド壁面68aに近接させた状態でスリット部67に入り込ませることが可能となる。
【0055】
加えて、ガイド壁部68のうち中筒部63から離間する外側には、上下方向(Z方向)に延伸する外側ストレート壁面68bが設けられている。さらに、外側ストレート壁面68bの上端側の位置は、ガイド溝部651の溝底面651aの位置よりも、下方側に位置すると共に、外側ストレート壁面68bのX方向の位置は、ガイド溝部651のうちスリット部67に面しかつ中筒部63側の隅部651bの位置よりも、中筒部63側に位置している。このため、スタート端末41aは、隅部651b付近で比較的緩やかに曲げる構成とすることができる。そのため、たとえば外側ストレート壁面68bの上端側の高さ位置が溝底面651aの高さ位置よりも高い構成等と比較して、スタート端末41aに急激な折り曲げ箇所が形成されるのを防ぐことができ、スタート端末41aの断線等が生じるのを防止可能となる。
【0056】
また、外側ストレート壁面68bを設けることにより、導線41と実装基板との間の距離を離間させることができる。それにより、トランス10Aと実装基板との間で、絶縁性を高めることができる。また、外側ストレート壁面68bが存在しない構成と比較すると、ガイド壁部68に鋭角的な部位が形成されるのを防止可能となる。それにより、スタート端末41aが鋭角的な部位に接触して、断線したり絶縁被膜が剥がれてしまうのを防止可能となる。また、外側ストレート壁面68bの存在により、折れ易い鋭角的な部位が形成されるのを防止可能となる。さらに、樹脂を用いた成型時には、金型内部に位置する雄型スライダが抜け易くなり、成型を行い易くなる。
【0057】
また、本実施の形態では、外側ストレート壁面68bのうち上端側の位置と、溝底面651aの位置との間の上下方向の距離は、導線41の直径の1〜3倍に設けることもできる。このように構成する場合には、ガイド溝部651を通ったスタート端末41aを、一層容易にスリット部67に導出させることが可能となる。また、スタート端末41aに急激な角度で折り曲げる部位が形成されるのを防止可能となる。
【0058】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態に係るトランス10Bおよびトランスボビン60Bについて説明する。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態におけるトランス10Aおよびトランスボビン60Aと同様の構成となる部分については、同一の符号を用いると共に、説明を省略するものとする。
【0059】
図9は、第2の実施の形態に係るトランス10Bの構成を示す側面断面図である。なお、
図9では、導線41(スタート端末41aを含む)の図示は省略している。この
図9に示すように、本実施の形態では、トランスボビン60Bの構成が若干相違している。具体的には、トランスボビン60Bのうちスリット部67には、内側ストレート壁面69が設けられている。内側ストレート壁面69は、ガイド壁面68aの内側端部(中筒部63側の端部)から上方に向かって延伸している部分であり、中筒部63の外面に沿う部分である。
【0060】
なお、本実施の形態のトランスボビン60Bにおけるガイド壁面68aは、第1の実施の形態のトランスボビン60Aにおけるガイド壁面68aよりも、傾斜角度が緩やかとなっている。しかしながら、両者の傾斜角度が同等となるように構成しても良い。
【0061】
このような内側ストレート壁面69をトランスボビン60Bに設けることにより、本実施の形態のガイド壁面68aは、第1の実施の形態におけるガイド壁面68aよりも、下方側に位置する状態となる。そのため、本実施の形態では、一次巻線40から延出しているスタート端末41aと、二次巻線50との間の距離が、第1の実施の形態の構成におけるスタート端末41aと、二次巻線50との間の距離よりも大きく確保することができ、スタート端末41aと二次巻線50との間の絶縁性を、一層向上させることができる。
【0062】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0063】
上述の実施の形態では、スリット部67のうち端子台部65よりも外側は、開放して設けられている。すなわち、スリット部67は、外側から突っ切った形状に設けられている。しかしながら、スリット部67の外側が、外部から閉塞された構成としても良い。この場合でも、端子台部65の内側にスリット部67が存在し、このスリット部67がガイド溝部651と連通していれば、上述したトランスボビン60A,60Bと同様の作用効果を生じさせることができる。
【0064】
また、上述の実施の形態では、ガイド壁面68aは、テーパ状かつ平面状に設けられているものについて説明している。しかしながら、ガイド壁面68aは、テーパ状かつ平面状には限られない。たとえば、ガイド壁面68aは、曲面形状であっても良く、また隅部がR面状に形成された段形状であっても良い。
【0065】
また、上述の実施の形態では、端子台部65は、下鍔部62と一体的に設けられている。しかしながら、端子台部65は、下鍔部62と別体的に設ける構成を採用しても良い。
【0066】
また、上述の実施の形態では、コアとして、E形コア20および蓋コア30を用いる構成(EI形)について説明している。しかしながら、本発明に用いられるコアは、これらには限られない。たとえば、2つのE形コアを用いても良く、その他の形状のコアを適宜組み合わせて用いても良い。
【0067】
また、上述の実施の形態では、一次巻線40が巻枠部66の内径側に位置し、二次巻線50が巻枠部66の外径側に位置した構成となっている。しかしながら、二次巻線50が巻枠部66の内径側に位置し、一次巻線40が巻枠部66の外径側に位置する構成を採用しても良い。この場合、スタート端末41aは、二次巻線50を構成する導線41の端末となる。